JP3709784B2 - 磁気式ロータリエンコーダとその回転体 - Google Patents

磁気式ロータリエンコーダとその回転体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気式ロータリエンコーダに関し、特に、車輪速の検出のために車両に搭載されるなど、磁性体からなる物質が侵入しやすい環境下で使用される際に有効な磁気式ロータリエンコーダに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気式ロータリエンコーダは、例えば、特開平11−223640号公報に記載されているように、周面上にN極とS極とが交互に着磁されて回転方向に沿って当該複数のN極とS極とが交互に且つ無端環状に配置されたドラム状の回転体と、その回転体の周面と所定間隙をあけて対向し回転体の回転に伴う磁束変化をパルスとして検出する磁気センサとを備えている。なお、上記N極やS極は、一般に永久磁石から構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば磁気式ロータリエンコーダを自動車の車輪速検出装置として使用する場合、色々な環境下での車両走行が想定され、車両の外に存在していた鉄粉や屋外に飛散している小さな鉄片等の磁性体が、磁気式ロータリエンコーダ内に侵入する可能性がある。
【0004】
上記侵入した鉄片(磁性体)は、永久磁石からなるN極及びS極に吸引されて当該N極及びS極に付着した状態となる可能性もある。このとき、上記鉄片がN極とS極との両方に接触すると、そのN極とS極とが磁気短絡することとなり、鉄片が付着している極数分だけ極欠け(歯欠けと同様)が生じるという問題がある。
【0005】
ここで、極欠けが生じると、その分だけロータリエンコーダの検出精度が悪くなる。
また、一度、N極やS極に付着した鉄粉や鉄片は、磁力により付着しているため、自然には除去できないことが多いという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、外部から磁性体が侵入するような環境下での使用であっても、当該磁性体による検出精度の劣化を防止可能な磁気式ロータリエンコーダを提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、磁束変化をパルスとして検出する磁気センサと、その磁気センサと対向可能な表面にN極とS極とが交互に連続して配置された回転体とを備える磁気式ロータリエンコーダにおいて、
上記回転体における上記N極とS極との境界部分に対し、当該N極及びS極よりも上記磁気センサ側に突出した突起部を設け、上記突起部は、撓み可能な材料から構成されることを特徴とするものである。
【0007】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記突起部の断面形状は、根元側よりも先端部側の方が剛性の低い形状となっていることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記突起部の少なくとも先端部形状は、断面三角形状若しくは断面半円形形状となっていることを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記突起部と上記磁気センサとのクリアランスを、負とすることを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項に記載した発明は、磁束変化をパルスとして検出する磁気センサと対向可能な表面にN極とS極とが交互に連続して配置された磁気式ロータリエンコーダの回転体に、上記N極とS極との境界部分に対し、当該N極及びS極よりも上記磁気センサ側に突出した突起部を設け、上記突起部は、撓み可能な材料から構成されることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の効果】
請求項1及び請求項に係る発明によれば、N極とS極の境界部に、当該N極及びS極よりも突起(隆起)する突起部があるので、外部から飛来した鉄片等の磁性体が回転体表面に付着しても、当該突起部によって上記鉄片がN極とS極の両方に接触することが防止若しくは大幅に低減する。このように、磁性体が侵入するような環境で使用しても磁気短絡を起すことが防止されて、磁性体によるロータリエンコーダの検出精度劣化が回避される。
また、上記突起部は、ゴム体など弾性変形可能な部材で形成すれば、磁気センサと接触しても撓むことで破損しにくくなる。特に、請求項2のように、先端部側の剛性が低いように設定すると、より撓み易くなって有利である。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、何らかの影響(構成部品のばらつきや外力によるクリアランス変動)によって突起部の先端部が磁気センサの先端部と接触することがあっても、突起部の断面形状を、根元よりも先端部の剛性を低い形状としているので、当該突起部が根元から破損することが回避される。このように根元からの破損を防止することで、突起部が破損しても突起としての機能は依然として確保できる。
【0012】
次に、請求項3に係る発明によれば、突起部の少なくとも先端部の断面形状が、三角形または半円形となるので、突起部の先端部の剛性が根元側より低くなり、何らかの影響(部品のバラツキや外力によるクリアランス変動)によって突起先端部が磁気センサ先端と接触しても、突起部が根元から折れて欠落することが避けられる。
【0013】
次に、請求項に係る発明によれば、突起部の先端と磁気センサとの間のクリアランスが負、つまり当該突起部の先端と磁気センサとの間にすき間がないので、少なくとも一部が突起部の上に載った状態で付着している磁性体は、磁気センサと突起部の先端部とが接触する際に弾き飛ばされ、付着した鉄片を除去することができる。
【0014】
また、突起部は磁気センサと接触する蓋然性が高いが、当該突起部は、ゴムなどの撓み可能な部材で構成されているので、当該突起部が撓むことで磁気センサと接触してもその外力を逃がすことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の磁気式ロータリエンコーダは、自動車の車輪速を検出するために車両に搭載される磁気式ロータリエンコーダを想定している。
図1は、本実施形態に係る磁気式ロータリエンコーダを示す図であり、図2及び図3は、そのA部詳細図である。
【0016】
まず構成について説明すると、ドラム状の回転体1と、その回転体1の周面に対し間隙をもって対向する磁気センサ2とを備える。磁気センサ2は、MR素子やホール素子などからなり、磁束変化をパルスとして検出するものである。
上記回転体1は、ゴムなどの弾性体に磁性体を練り込んで成形された弾性回転体である。その回転体1の周面には、図2に示すように、周方向に沿ってN極1AとS極1Bとが交互に且つ連続して形成されている。当該N極1A及びS極1Bは、例えば回転体1の周面に着磁することで形成する。なお、回転体1と、N極1A及びS極1Bを形成する周面部分とは必ずしも一体に成形する必要はない。
【0017】
また、本実施形態では、隣り合うN極1AとS極1Bとの境界部分(磁力の弱い部分)が外径方向に隆起して突起部3を形成している。各突起部3の高さL2は、N極1A及びS極1Bを形成する表面と磁気センサ2とのクリアランスであるエアギャップL1よりもほんの僅か小さくなるように設定してある。
なお、本実施形態では、回転体1と突起部3とを一体成形した場合を例示しているが、回転体1と突起部3とを別々に作製して結合しても良い。もっとも一体成形した方が、安価に製造することができる。特に、本実施形態の回転体1は弾性体で構成しているため型成形で加工が可能である。なお、本発明は、回転体1が弾性体でなくても適用可能である。
【0018】
次に、本実施形態の磁気式ロータリエンコーダの作用・効果等について説明する。
ロータリエンコーダ内に鉄片が侵入すると、その鉄片は回転体1の磁力に吸引されて当該回転体1に付着する。侵入した鉄片は、N極1A及びS極1Bが形成された回転体1の周面に付着することもあるが、本実施形態においては、その周面に付着した鉄片M、Nは、図4に示すように、突起部3に遮られてN極1AとS極1Bの両方に接触することが無い。すなわち、回転体1の周面に鉄片M、Nが付着することがあっても磁気短絡の発生が防止できる。
【0019】
また、付着した鉄片が符号Mのような斜めの状態では、鉄片Mの一端部側が突起部3よりも外径側に突き出た状態となり、相対的に磁気センサ2と接触することで、当該鉄片Mは弾き飛ばされて除去される。なお、図4等では回転体1表面を平面展開しているが、実際には、図3中で上側に凸となる円弧形状となっている。また、符号Nのような状態に鉄片が付着していても、突起部3先端と磁気センサ2との間のクリアランスが鉄片Nの厚さよりも小さければ、同様に、磁気センサ2と接触することで当該鉄片Nは弾き飛ばされて除去される。
【0020】
この観点からは、突起部3と磁気センサ2とのクリアランスはできるだけ小さいことが望ましい。
また、仮に、なんらかの影響によって磁気センサ2が突起部3の先端部と接触することがあっても、突起部3が弾性体であることから、突起部3が弾性変形することで接触時の衝撃を逃がすことができる。特に、本実施形態では、回転体1自体も弾性体であるので、当該回転体1自体の弾性変形によっても衝撃を吸収することが可能となっている。
【0021】
なお、上記実施形態では、磁性体として一番多い鉄片を例に説明しているが、鉄片以外の磁性体であっても同様な作用を有する
【0022】
また、本実施形態では、回転体1の周面にスケール(N極、S極が形成される部分)が形成され、当該回転体1の周面と磁気センサ2が半径方向で対向する場合のロータリエンコーダで説明しているが、これに限定されない。回転体1の側面と磁気センサ2とが対向するタイプのロータリエンコーダであっても、本発明は適用可能である。
【0023】
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様であり、突起部3の形状及び大きさのみが異なる。
すなわち、本実施形態の突起部3は、図5に示すように、その断面形状を三角形形状として、つまり根元よりも先端部側の周方向の厚さを薄くして先端部側の剛性が低い形状に設計したものである。
【0024】
また、突起部3の高さL3を、N極1A及びS極1Bを形成する表面と磁気センサ2とのクリアランスであるエアギャップL1よりも大きく設定してある。すなわち、突起部3と磁気センサ2とのクリアランスを負として、磁気センサ2が、突起部3の先端部と接触するように形成してある。
次に、本実施形態の磁気式ロータリエンコーダの作用・効果等について説明する。
【0025】
本実施形態では、確実に磁気センサ2が突起部3の先端部と接触するので、回転体1周面に付着した鉄片を確実に弾き飛ばして除去することが可能となる。
また、磁気センサ2が突起部3の先端部に接触しても、当該突起部3は撓むことで接触時の衝撃を逃がすことができる。
しかも、先端部ほど剛性が低い形状となっているので、より先端部が撓み易く、破損しにくくなる。また、たとえ、接触の衝撃で突起部3が破損する場合があっても、根元からではなく、先端部側の方が破損しやすい。このため、破損後であってもN極1AとS極1Bとの境界部に短絡を防止する突起が存在する。
【0026】
ここで、突起部3の形状を、根元側よりも先端部側の剛性を低くする断面形状は、上記断面三角形形状に限定されず、図6のような、外径側(磁気センサ側2)に凸の半円形形状などであっても良い。要は、根元側よりも先端部側の周方向(回転方向)での厚みを薄く設定すれば、根元側よりも先端部側の剛性が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る磁気式ロータリエンコーダを示す図である。
【図2】図1におけるA部を半径方向から見た図である。
【図3】図1におけるA部を側面方向見た図であり周方向に展開した状態を示す図である。
【図4】鉄片M、Nの付着状態を示す図である。
【図5】本発明に基づく第2実施形態に係る突起部を示す側面図である。
【図6】別の突起部を示す側面図である。
【符号の説明】
1 回転体
1A N極
1B S極
2 磁気センサ
3 突起部

Claims (5)

  1. 磁束変化をパルスとして検出する磁気センサと、その磁気センサと対向可能な表面にN極とS極とが交互に連続して配置された回転体とを備える磁気式ロータリエンコーダにおいて、
    上記回転体における上記N極とS極との境界部分に対し、当該N極及びS極よりも上記磁気センサ側に突出した突起部を設け、上記突起部は、撓み可能な材料から構成されることを特徴とする磁気式ロータリエンコーダ。
  2. 上記突起部の断面形状は、根元側よりも先端部側の方が剛性の低い形状となっていることを特徴とする請求項1に記載した磁気式ロータリエンコーダ。
  3. 上記突起部の少なくとも先端部形状は、断面三角形状若しくは断面半円形形状となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した磁気式ロータリエンコーダ。
  4. 上記突起部と上記磁気センサとのクリアランスを、負とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した磁気式ロータリエンコーダ。
  5. 磁束変化をパルスとして検出する磁気センサと対向可能な表面にN極とS極とが交互に連続して配置された磁気式ロータリエンコーダの回転体に、上記N極とS極との境界部分に対し、当該N極及びS極よりも上記磁気センサ側に突出した突起部を設け、上記突起部は、撓み可能な材料から構成されることを特徴とする磁気式ロータリエンコーダの回転体。
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