JP3708161B2 - 電子式燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、車両用内燃機関のための電子式燃料噴射装置に係り、特に内燃機関の負荷状態に応じて燃料噴射量の大気圧補正係数を異ならしめることで、多連スロットルバルブタイプの内燃機関においても精度の良い大気圧補正を行なえるようにした電子式燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平1−100335号公報には、大気圧センサを用いることなく燃料噴射量の大気圧補正を行なえるようにした燃料噴射装置が提案されている。この従来の燃料噴射装置は、所定の大気状態における変数の基準値を、少なくとも回転数をパラメータとして記憶し、パラメータに対応する信号を入力すると共に空気量計測手段又は限定手段の出力を入力し、所定の運転状態時の大気圧補正値を演算する大気圧補正演算手段を設け、限定手段が変数の限定値を大気圧補正値で補正するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
燃料噴射量をエンジン回転数と吸入空気量、特に吸入負圧に基づいて演算するものにおいて、高地で大気圧が減少した割合で演算に用いる吸入負圧を補正した場合、吸入負圧に対する燃料噴射量が直線的に変化していないものにおいては、精度の良い補正がかけられないことがあった。特に、多連スロットルバルブタイプの内燃機関では、高負荷時に吸入空気量と吸入負圧とのリニアな関係がくずれる為、正確な大気圧補正がなされないと、高地で所望のエンジン出力が得られないことがある。
【0004】
図19は上述の内容の一具体例を示す説明図である。図19(a)に示す1スロットルバルブタイプのエンジンでは、吸入負圧センサで検出した吸入負圧PBと図示しない大気圧センサで検出した大気圧とに基づいて、図19(b)に示すように、基準(平地)大気圧と実際の大気圧(例えば高地大気圧)との比に応じて、高地でのPB補正値を算出し、算出したPB補正値を基に燃料噴射量を設定することでほぼ良好な大気圧補正ができる。
【0005】
しかしながら、図19(c)に示す多連スロットルバルブタイプのエンジンでは、高負荷側で吸入空気量と吸入負圧PBとのリニアな関係がくずれる為、燃料噴射量を補正する必要がある。また、吸入負圧値に基づいてエンジンの負荷状態を検出し、低負荷時の燃料噴射量特性Lと高低負荷時の燃料噴射量特性Hとを切り替える構成をとる場合、各特性の切換点を大気圧の変動に応じて可変しないと、例えば高地走行時に必要とする燃料量が供給されなくなる。
【0006】
この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、燃料噴射量の大気圧補正を低負荷状態から高負荷状態の全領域に亘って高精度に行なうことのできる電子式燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1に係る電子式燃料噴射制御装置は、少なくとも吸入負圧に基づいて設定した基本噴射量に対し大気圧に応じて燃料噴射量の補正を行なう多連スロットルバルブを備える内燃機関の電子式燃料噴射制御装置において、低負荷時用と高負荷時用の大気圧補正係数を設定する大気圧補正係数設定手段を備え、エンジンの負荷状態に応じて大気圧補正係数を異ならしめる構成とし、大気圧補正係数設定手段は、吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なう負荷状態判断手段を備え、負荷状態判断手段での判断基準値は大気圧の変化に連動する構成としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る電子式燃料噴射制御装置は、負荷状態判断手段は、吸入負圧に基づいてエンジンが高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを判断し、その判断出力に基づいて該当する大気圧補正係数を出力する適用テーブル選択手段を備えることを特徴とする。
【0009】
【作用】
低負荷時と高負荷時で吸入負圧に対する燃料噴射量の要求量が変化する。低負荷時用と高負荷時用の大気圧補正係数を備え、エンジンの負荷状態に応じて大気圧補正係数を異ならしめることで、各種の負荷状態に亘って燃料噴射量の大気圧補正を好適に行なうことができる。
【0010】
吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なうとともに、その判断基準値は大気圧の変化に連動する構成とすることで、低地から高地までの幅広い大気圧変動に対して、燃料噴射量を的確に補正できる。
【0011】
特に、多連スロットルバルブタイプのエンジンは、高負荷側で吸入空気量と吸入負圧とのリニアな関係がくずれる為、燃料噴射量を補正する必要がある。そこで、負荷状態に応じて特性の異なる大気圧補正係数を備え、負荷状態に応じて選択使用することで、精度良い大気圧補正が可能となる。
【0012】
また、吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なう際に、負荷状態の判断に用いる判断基準値を大気圧の変動に連動させることで、例えば大気圧の低い高地での走行であっても、負荷状態を的確に判断し適正な大気圧補正が可能となる。
【0013】
【実施例】
以下この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1はこの発明に係る電子式燃料噴射制御装置の電気系統図、図2は同電子式燃料噴射制御装置を備えた自動二輪車の主要構成部品配置図である。
この電子式燃料噴射制御装置1は、例えば4個のインジェクタ(燃料噴射弁)2への通電タイミングを制御して燃料噴射量を制御する電子式燃料噴射制御ユニット3と、エンジン4の運転状態を検出するための各種センサを備える。エンジン4はV型4気筒で多連スロットルバルブタイプのものを用いている。
【0014】
バッテリ電源BATの負極側は車体アースへ接続している。コンビネーションスイッチ(イグニッションスイッチ)CSWがオンされると、ヒューズF1,コンビネーションスイッチCSW,ヒューズF2 を介してキルセンサKSへバッテリ電源BATが供給され、キルセンサKSが動作状態になる。このキルセンサKSは傾斜角センサを備え、自動二輪車が予め設定した所定角度を越えて傾斜した場合は、キルリレーKRの励磁電流を遮断する。
【0015】
コンビネーションスイッチCSWがオン状態にあり、さらに、ヒューズF2とキルリレーKRとの間に介設したキルスイッチKSWがオン状態にあり、自動二輪車が転倒等していない状態にあれば、キルセンサKSを介してキルリレーKRの励磁巻線に励磁電流が供給され、その接点がオン状態となって、電子式燃料噴射制御ユニット3の電源入力端子B+、ならびに、各インジェクタ2のソレノイド,可変吸気ソレノイドバルブ5へバッテリ電源BATが供給される。したがって、キルスイッチKSWをオフした状態では車両の運転ができない。なお、この実施例では、遮断特性の異なる2種類のヒューズF3,F4を介して電子式燃料噴射制御ユニット3等への給電を行なうようにしている。
【0016】
電子式燃料噴射制御ユニット3内には、図示しないフューエル(燃料)ポンプ駆動回路を設けており、その出力端子FPCからフューエルカットリレーFCRの励磁巻線に励磁電流を供給し、その接点を閉状態に駆動してフューエルポンプFPへバッテリ電源BATを供給し、フューエルポンプFPを動作させる。したがって、車体が所定以上傾斜した場合は、キルセンサKSの作動によって、電子式燃料噴射制御ユニット3への給電が停止されると、フューエルポンプFPへの給電も同時に停止される。
【0017】
電子式燃料噴射制御ユニット3内には、図示しない可変吸気バルブ駆動回路を設けており、その出力端子T5からの駆動信号5aに基づいて可変吸気ソレノイドバルブ5を駆動するようにしている。
【0018】
電子式燃料噴射制御ユニット3内のインジェクタ駆動手段(図3の符号52参照)から端子T2nを介して出力されるインジェクタ駆動信号に基づいて各インジェクタ2からの燃料噴射を制御する。
【0019】
電子式燃料噴射制御ユニット3内には、負側電位VR−を共通にした2系統の基準電圧VR1,VR2を供給する基準電源(図示しない)を設けている。第1の基準電圧VR1を大気圧センサS1,リヤインテークマニホールド負圧センサS2,フロントインテークマニホールド負圧センサS3へそれぞれ供給し、大気圧,リヤインテークマニホールド負圧,フロントインテークマニホールド負圧に係る電圧信号VPA,VPBR,VPBFをそれぞれ得るようにしている。
【0020】
第1の基準電圧VR1を電子式燃料噴射制御ユニット3に設けた吸気温検出用の基準抵抗(図示しない)を介して吸気温(吸入空気温度)センサS4へ供給し、基準抵抗と吸気温センサS4内の感熱抵抗素子との分圧電圧に基づいて、吸気温に係る電圧信号VTaを得るようにしている。なお、吸気温センサS4は、エンジンの近傍に設けたエアクリーナ内に配置している。
【0021】
第1の基準電圧VR1を電子式燃料噴射制御ユニット3に設けた水温検出用の基準抵抗(図示しない)を介して水温センサS5へ供給し、基準抵抗と水温センサS5内の感熱抵抗素子との分圧電圧に基づいて、エンジンの冷却水の温度に係る電圧信号VTwを得るようにしている。
【0022】
エアクリーナからエンジン4の各気筒に至る各吸気通路内には、スロットル弁SVをそれぞれ配設し、その近傍に各インジェクタ2を設けている。スロットル開度θTHを検出するためのスロットル開度センサS6をスロットル弁SVの回動軸に接続している。そして、第2の基準電圧VR2をスロットル開度センサS6へ供給し、スロットル開度に係る電圧信号VθTHを得るようにしている。
【0023】
第2の基準電圧VR2をアイドルミクスチャアジャスタ6へ供給し、各気筒毎に対応して設けられた可変抵抗器6a〜6dで分圧された電圧を電子式燃料噴射制御ユニット3のアイドル噴射量調整入力端子ID1〜ID4へそれぞれ供給する構成にしている。電子式燃料噴射制御ユニット3は、アイドルミクスチャアジャスタ6から供給される各電圧に基づいて、各気筒毎のアイドル時の燃料噴射量を規定するようにしている。
【0024】
電子式燃料噴射制御ユニット3は、カムパルサーロータ7と協働して動作するカムパルスジェネレータ8から出力される吸気弁の開閉タイミングパルス信号8aを端子T8から取り込み、燃料の噴射タイミングを検出するようにしている。また、クランクパルサーロータ9と協働して動作するクランクパルスジェネレータ10から出力されるクランク回転パルス信号10aを端子T10から取り込み、エンジン回転数を算出するようにしている。なお、端子DGはデジタル信号系統のグランド端子である。
【0025】
電子式燃料噴射制御ユニット3は、クランク回転パルス信号10aに基づいてエンジン回転数を演算し、演算によって得られたエンジン回転数に基づいてタコメータ駆動信号11aを生成出力してタコメータ11を駆動する。電子式燃料噴射制御ユニット3は、水温センサS5の検出出力に基づいて水温計駆動信号12aを生成出力して水温計12を駆動するようにしている。また、電子式燃料噴射制御ユニット3は、表示制御信号13aを出力してインジケータ13の表示を制御するようにしている。
【0026】
また、この実施例では、コンビネーションスイッチCSWがオンした状態で、ヒューズF5を介してスピードセンサ14へバッテリ電源BATを供給し、このスピードセンサ14のスピード検出信号14aでメータ部15に設けたスピードメータ16を直接駆動するようにしている。したがって、コンビネーションスイッチCSWがオン状態になっていれば、電子式燃料噴射制御ユニット3等へ電源が供給されていなくても、スピードメータ16による車速表示は行なえる。
【0027】
図3は電子式燃料噴射制御ユニットの全体構成を示すブロック図である。
電子式燃料噴射制御ユニット3は、マイクロコンピュータシステムを利用して構成しており、各種補正係数設定手段20と、基本噴射量演算手段30と、加速増量係数演算手段40と、燃料噴射量設定手段51と、インジェクタ駆動手段52と、A/D変換器53と、平均負圧演算手段54と、回転速度演算手段55と、マップ指定手段56を備える。
【0028】
各センサS1〜S6で検出した大気圧,吸入負圧(リア),吸入負圧(フロント),吸気温,冷却水温,スロットル開度に係る各電圧信号VPA,VPBR,VPBF,VTa,VTw,VθTHは、A/D変換器53を介して対応するデジタルデータPA,PBR,PBF,Ta,Tw,θTHへそれぞれ変換される。
【0029】
平均負圧演算手段54は、リアおよびフロントマニホールド吸入負圧PBR,PBFに基づいてそれらの平均負圧PBHを算出し、算出した平均負圧PBHを基本噴射量演算手段30ならびに加速増量係数演算手段40へ供給する。
【0030】
回転速度演算手段55は、クランク回転パルス信号10aのパルス周期に基づいてエンジン回転速度を演算し、エンジン回転速度データ(以下エンジン回転速度と記す)NEを出力する。
【0031】
図4は電子式燃料噴射制御ユニットの基本機能を示す機能ブロック図である。電子式燃料噴射制御ユニット3は、図3にも示したように、各種補正係数Kpa,Kta,Ktwを出力する各種補正係数設定手段20と、基本噴射量Tiを算出する基本噴射量演算手段30と、加速増量係数Kaccを算出する加速増量係数演算手段40と、基本噴射量Tiに加速増量係数Kaccを乗じて燃料噴射量Toutを出力する燃料噴射量設定手段51と、燃料噴射量Toutに基づいて各インジェクタ2の通電時間(または通電デューティ)を制御するインジェクタ駆動手段52とからなる。
【0032】
各種補正係数設定手段20は、大気圧Aに基づいて大気圧補正係数Kpaを設定する大気圧補正係数設定手段21と、吸気温Taに基づいて吸気温補正係数Ktaを設定する吸気温補正係数設定手段22と、冷却水温Twに基づいて冷却水温補正係数Ktwを設定する冷却水温補正係数設定手段23とを備える。
【0033】
基本噴射量演算手段30は、予め登録した噴射量マップまたは噴射量演算式等を備え標準的な運転条件(例えば大気圧が1気圧で、所定の吸気温,冷却水温)での基本噴射量Timを出力する基本噴射量設定手段31と、基本噴射量Timに総合補正係数Ktotalを乗じて現在の運転条件に適した基本噴射量Tiを出力する基本噴射量補正手段32と、大気圧補正係数設定手段21、吸気温補正係数設定手段22、冷却水温補正係数設定手段23の各補正係数設定手段から出力される大気圧補正係数Kpa、吸気温補正係数Kta、冷却水温補正係数Ktwの各補正係数を乗じて総合補正係数Ktotalを出力する基本噴射量補正係数設定手段33とを備える。
【0034】
図5は電子式燃料噴射制御ユニットの基本動作を示すフローチャートである。燃料噴射量Toutを演算する処理は、クランク回転パルス信号10aに基づく割込みで起動される。ステップP1で大気圧補正係数Kpaが、ステップP2で吸気温補正係数Ktaが、ステップP3で冷却水温補正係数Ktwがそれぞれ算出される。ステップP4で、各補正係数Kpa,Kta,Ktwの乗算がなされ総合補正係数Ktotalが求められる。ステップP5で基本噴射量Timの設定がなされ、ステップP6で基本噴射量Timに総合補正係数Ktotalが乗算されて補正された基本噴射量Tiが求められる。ステップP7で加速増量係数Kaccが算出され、ステップP8で補正された基本噴射量Tiに加速増量係数Kaccが乗算されて燃料噴射量Toutが求められる。
【0035】
図6は大気圧補正係数設定手段の機能ブロック図である。
大気圧補正係数設定手段21は、低負荷時用と高負荷時用の2系統の大気圧補正係数テーブル21a,21bと、適用テーブル選択手段21cと、エンジンの運転状態が低負荷状態であるか高負荷状態であるかを判断する負荷状態判断手段21dと、負荷状態の判断しきい値PBsudを演算する負荷状態判断しきい値演算手段21eを備える。
【0036】
図7は大気圧補正係数テーブルの内容の一例を示すグラフである。
低負荷時用大気圧補正係数テーブル21aには低負荷時用大気圧補正係数KpaLが、高負荷時用大気圧補正係数テーブル21bには高負荷時用大気圧補正係数KpaHがそれぞれ格納される。グラフの横軸は大気圧Pで単位はmmHg(水銀柱高さ)である。大気圧が760mmHg以上ではいずれの補正係数KpaL,KpaHとも1.0に設定している。低負荷時用の大気圧補正係数KpaLは、大気圧の低下に伴って最大1.2程度まで緩やかに増加する。高負荷時用の大気圧補正係数KpaHは、大気圧の低下に伴って最大1.8程度まで増加する。
【0037】
負荷状態判断手段21dは、吸入負圧に基づいてエンジンが高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを判断し、その判断出力(低負荷/高負荷)21fに基づいて適用テーブル選択手段21cは該当する大気圧補正係数を大気圧補正係数Kpaとして出力する。
【0038】
エンジンの負荷状態が一定であっても大気圧が変動すれば吸入負圧も変動するので、低負荷/高負荷を判断する吸入負圧値(負荷状態判断しきい値 )PBsudを大気圧に連動して可変する構成をとっている。このため、負荷状態判断しきい値演算手段21eは、大気圧PAに基づいて次式の演算を行ない、演算によって求めた負荷状態判断しきい値PBsudを負荷状態判断手段21dへ供給する構成としている。
PBsud=(PA/760)×PBsud0
PBsud:負荷状態判断しきい値
PA:大気圧
PBsud0:大気圧760mmHgのときの負荷状態判断しきい値
(例えば608mmHg)
【0039】
図8は大気圧補正係数設定手段の動作を示すフローチャートである。
ステップP11で大気圧−低負荷用大気圧補正係数(PA−KpaL)テーブルを参照して、大気圧センサS1で検出した大気圧に応じた補正係数を算出する。図に示したように、4点の大気圧(例えば480,580,670,760mmHg)における補正係数をテーブルに格納しておき、2点間の間は補間計算によって補正係数を求める。同様に、ステップP12で高負荷時用大気圧補正係数KpaHを算出する。
【0040】
ステップP13で現在の大気圧PAに応じた負荷状態判断しきい値PBsudを算出する。ステップP14で吸入負圧PBと負荷状態判断しきい値PBsudとの大小比較を行ない、吸入負圧PBが負荷状態判断しきい値PBsud以上の場合はエンジンが高負荷状態にあると判断し、ステップP15で高負荷時用大気圧補正係数KpaHを大気圧補正係数Kpaとして設定する。吸入負圧PBが負荷状態判断しきい値PBsud未満の場合はエンジンが低負荷状態にあると判断し、ステップP16で低負荷時用大気圧補正係数KpaLを大気圧補正係数Kpaとして設定する。なお、負荷状態の判断を先に行ない、判断した負荷状態に応じて大気圧補正係数を算出するようにしてもよい。
【0041】
図9は吸気温補正係数の一例を示すグラフである。吸気温補正係数Ktaもエンジンの負荷状態に応じて異なる特性が設定される。
【0042】
図10は冷却水温補正係数の一例を示すグラフである。冷却水温補正係数もエンジンの負荷状態に応じて異なる特性が設定される。
【0043】
図11は基本噴射量演算手段ならびに加速増量係数演算手段の一具体例を示すブロック図である。
基本噴射量Timを出力する基本噴射量設定手段31は、2種類の噴射量マップ(テーブル)31a,31bと、マップ指定手段56から供給される使用マップ指令56aに基づいて使用するマップを選択切替えする基本噴射量マップ選択手段31cとを備える。基本噴射量マップ選択手段31cは、各噴射量マップ31a,31bからの出力を選択する構成を図示したが、検索するマップを切替える構成としてもよい。
【0044】
平均吸入負圧PBH,エンジン回転速度NEと基本噴射量Tim(PB)との関係を吸入負圧−噴射量マップ31aに予め登録している。スロットル開度θTH,エンジン回転速度NEと基本噴射量Tim(θTH)との関係をスロットル開度−噴射量マップ31bに予め登録している。各噴射量マップ31a,31bには、所定の大気圧,所定の吸気温ならびに所定の冷却水温のときの基本噴射量を登録している。
【0045】
図12はマップ指定手段の動作説明図である。
マップ指定手段56は、スロットル開度θTHが比較的大きな領域では、スロットル開度に基づくマップの使用を要求する指令56aを出力し、スロットル開度θTHが比較的小さな領域では、吸入負圧に基づくマップの使用を要求する指令56aを出力する。スロットル開度θTHが大の状態では吸入負圧がほぼ大気圧に近くなり、吸入負圧の変化が小となるので、このような領域ではスロットル開度θTHをパラメータとして噴射量を求めるようにし、吸入負圧の変化が顕著な領域では吸入負圧をパラメータとして噴射量を求めるようにすることで、広い運転状態に亘って好適な噴射量を得ることができる。
【0046】
図11に示すように、加速増量係数演算手段40は、スロットル変化量演算手段41と、加速状態判別手段42と、2種類の増量係数マップ(テーブル)43a,43bと、マップ指定手段56から供給される使用マップ指令56aに基づいて使用する増量係数マップを選択切替えする増量係数マップ選択手段43cと、マップ検索によって求めた加速増量係数KAMに対してエンジンの運転状態に即して加速増量係数KAMを修正する加速補正手段44と、段階補正手段45とを備える。
【0047】
スロットル変化量演算手段41は、所定の単位時間当りのスロットル開度の変化量(変化速度)を算出し、スロットル開度変化量(変化速度)データ(以下スロットル開度変化量と記す)ΔθTHを出力する。
【0048】
加速状態判別手段42は、エンジン回転速度NEとスロットル開度θTHならびにスロットル開度変化量ΔθTHとに基づいて車両が加速状態にあるか判別し、燃料噴射量の増量を要求する加速補正要求指令42a、ならびに、加速が継続している状態であるか加速が終了した状態であるかを示す加速継続/終了状態判別情報42bを出力する。
【0049】
この加速状態判別手段42は、エンジンが停止している状態、エンジン回転速度NEが極めて高速の状態(例えば毎分10000回転以上)、ならびに、スロットル開度θTHが比較的高開度となっていない状態(例えばスロットル開度が15度未満)では、加速補正要求指令42aの出力を停止する。
【0050】
そして、この加速状態判別手段42は、エンジンが所定の回転速度で運転されており(例えば毎分10000回転未満)、スロットル開度θTHが所定の範囲(例えば15度以上でほぼ全開までには至らない範囲)であって、スロットル開度変化量ΔθTHが比較的大きい(例えば10〜20ミリ秒当り数度以上)場合は、車両が加速状態にあると判断し、加速状態を示す判別出力42bを出力する。
【0051】
また、この加速状態判別手段42は、加速状態となった以降に、スロットル開度θTHがほぼ全開に近い状態(例えばスロットル開度約85度)になった場合、ならびに、スロットル開度変化量ΔθTHが比較的小さくなった(例えば10〜20ミリ秒当り数度未満)場合は、加速が終了した状態にあると判断して、加速終了状態を示す判別出力42bを出力する。
【0052】
吸入負圧−増量係数マップ43aには、エンジン回転速度NE,吸入負圧PBと加速増量係数,加速増量補正を行なう噴射回数(以下加速増量噴射回数と記す)との関係を予め登録してあり、スロットル開度−増量係数マップ43bにはエンジン回転速度NE,スロットル開度θTHと加速増量係数,加速増量噴射回数との関係を予め登録してある。エンジン回転速度NEに基づいて加速増量係数を設定するようにしているので、低回転速度から加速する場合や、中・高回転速度から加速する場合であっても、それぞれのエンジン回転速度に応じた加速増量補正ができる。よって、エンジン回転速度にかかわらず増量分を設定するものと比較してより適量の増量が可能である。
【0053】
加速補正手段44は、エンジン回転速度NEが中速で、スロットル開度θTHが所定の開度範囲にある場合に、スロットル開度θTHに応じて設定される加速補正係数KHをマップ検索で得た加速増量係数KAMに乗じて補正加速増量係数KAHを求め、求めた補正加速増量係数KAHを段階補正手段45へ供給する。
【0054】
図13は加速補正手段の動作を示すフローチャート、図14はスロットル開度と加速補正係数との関係を示すグラフである。
加速補正手段44は、エンジン回転速度NEが予め設定した所定の中回転速度領域(例えば毎分4800〜10000回転)にあり(P21)、スロットル開度θTHが所定開度範囲(例えばアイドル時の開度を越えており、かつ、最大開度に至っていない範囲)にある場合に(P22)、図14に示したスロットル開度θTHと加速補正係数KHとの関係を登録したマップを検索し(P23)、加速増量補正を行なう噴射回数が0でない限り(P24)、マップ検索で得られた増量係数KAMに加速補正係数KHを乗算して得た補正加速増量係数KAHを出力する(P25)。
【0055】
また、エンジン回転速度NEならびにスロットル開度θTHが前述の補正条件を満足しない場合は、補正係数KHを1.0とすることで(P26)、マップ検索で得られた加速増量係数KAMをそのまま補正後の加速増量係数KAHとして出力する(P25)。
【0056】
図14に示すように、スロットル開度θTHが全開に対して10〜90パーセントの範囲に亘って、マップ検索で得られた増量係数KAMを1.05倍するように補正係数KHを設定しているので、スロットル開度θTHが極めて小さい領域ならびにほぼ最大開度となる領域を除いて加速時の燃料噴射量を増加させ、加速性能を向上させることができる。
【0057】
段階補正手段45は、実際に増量噴射する燃料量が急激に変化しないように補正加速増量係数KAHに補正を施し、加速増量係数KACCを乗算器等を用いて構成した燃料噴射量設定手段51へ供給する。この段階補正手段45は、加速増量を必要としない状態、すなわち、加速状態判別手段42から加速補正要求指令42aが供給されていない状態では、加速増量係数KACCとして1.0を出力する。
【0058】
そして、加速補正要求指令42aならびに加速が継続している状態であることを示す加速継続/終了状態判別出力42bが供給されると、段階補正手段45は、前回の出力値1.0に予め設定した変化分データΔKACC(例えば0.047)を加算した値(例えば1.047)と、加速補正手段44から出力される補正加速増量係数KAHとを比較し、加算した値(例えば1.047)よりも補正加速増量係数KAHが大きい場合は、加算した値(例えば1.047)を加速増量係数KACCとして出力する。
【0059】
加算した値(例えば1.047)よりも補正加速増量係数KAHが小さい場合は、補正加速増量係数KAHを加速増量係数KACCとして出力する。この動作を加速が継続している状態であることを示す加速継続/終了状態判別出力42bが供給されている間、繰り返す。これにより、加速増量係数KACCは、加速補正手段44で求めた補正加速増量係数KAHを目標値として、予め設定した変化分データ(例えば0.047)ずつ増加することになり、加速増量係数KACCが急激に増加するのを防止することができる。
【0060】
なお、前回の加速増量係数KACCと加速補正手段44から供給される補正加速増量係数KAHとの差に所定の係数(例えば0.5)を乗じた分だけ増加するようにして、短時間で補正加速増量係数KAHに近づけるようにしてもよい。
【0061】
段階補正手段45は、インジェクタ駆動手段52から供給される噴射信号52bに基づいて増量噴射を行なった回数を監視しており、その増量噴射回数が増量噴射回数KNで指定された回数に達した時点で加速増量係数KACCを1.0に戻すようにしている。
【0062】
さらに、増量噴射回数KNで指定された回数の増量噴射が終了する前に、加速が終了した状態であることを示す加速継続/終了状態判別出力42bが供給されると、段階補正手段45は、前回出力した加速増量係数KACCから予め設定した変化分データ(例えば0.047)を減算した値を加速増量係数KACCとして出力するようにしている。予め設定した変化分データ(例えば0.047)ずつ減少する処理を、減算した値が1.0以下になるまで繰り返し、1.0以下になった場合は1.0を出力するようにしている。
【0063】
燃料噴射量設定手段51は、基本噴射量演算手段30から出力される基本噴射量Tiに、段階補正手段40を介して供給される加速増量係数KACCを乗算し、乗算結果を燃料噴射量Toutとして出力する。
【0064】
インジェクタ駆動手段52は、吸気弁開閉タイミング信号8aに同期して、燃料噴射量Toutに基づいて決定される噴射時間(またはデューティ)を有するインジェクタ駆動信号52aを生成し、各インジェクタ2へ順次出力する。これにより、吸気弁の開閉タイミングに同期して各インジェクタ2から所定量の燃料が噴射される。
【0065】
図15は電子式燃料噴射制御装置の全体動作を示すフローチャートである。
ステップP31で基本噴射量Tiの演算が基本噴射量演算手段30によってなされた後に、ステップP32以降の加速補正増量処理が実行される。
ステップP32ではエンジンの運転状態を判断し、エンジンストップ等でエンジンが停止している場合は、ステップP50の初期化処理がなされる。エンジンが運転状態にあれば、ステップP33でエンジン回転速度NEが高速回転域にあるか否かを判断する。エンジン回転速度NEが例えば毎分10000回転以上の場合は、ステップP50の初期化処理へ移行する。エンジン回転速度NEが例えば毎分10000回転未満であれば、ステップP34でスロットル開度θTHが比較的高開度となっているか判断する。スロットル開度θTHが例えば15度未満であれば、ステップP50の初期化処理へ移行する。
【0066】
スロットル開度が15度以上であれば、車両が加速状態もしくは加速終了状態にあるものとみなして、ステップP35以降の処理を行なう。ステップP35ではスロットル開度θTHがほぼ全開に近い状態になっているか否か判断する。スロットル開度θTHが全開に至ってなく(例えば85度未満)、スロットル開度変化大きい(例えばスロットル開度変化量が8度/100ミリ秒)場合(ステップP36)、車両が加速状態にあると判断し、ステップP37以降の加速増量処理を行なう。
【0067】
ステップP37では、増量係数マップの検索ならびに補正係数マップの検索がなされ、マップ検索で得た加速増量係数KAMに補正係数KHが乗算されて補正加速増量係数KAHが算出される。次いで、ステップP38で加速増量係数KACCの前回値(以下単に前回値と記す)に予め設定した変化量の加算を行ない、ステップP39で加算値と補正加速増量係数KAHとの大小関係を比較する。補正加速増量係数KAHが加算値よりも大の場合は加算値を今回値とし(P40)、補正加速増量係数KAHが加算値よりも小の場合は補正加速増量係数KAHを今回値とする処理を行なう(P41)。
【0068】
ついで、ステップP42で増量フラグを1にセットし、ステップP43で基本噴射量(ステップP31での演算値)Tiに今回値を乗算し、ステップP44で乗算値に応じた燃料をインジェクタ2から噴射させる。そして、ステップP31からの一連の処理を繰り返す。
【0069】
スロットル開度がθTHが例えば85度以上で全開に近い状態にある場合(P35)、ならびに、スロットル開度変化量ΔθTHが小さい場合(P36)は加速終了状態にあると判断し、ステップ45以降の処理を行なう。
ステップP45で増量フラグの状態を判断する。増量フラグが0であれば、加速後の加速終了状態ではないので、ステップP50の初期化処理へ移行する。増量フラグが1であれば、ステップP46で増量回数をチェックし、加速増量係数マップの検索で得た燃料噴射増量回数分の増量噴射が終了していれば、ステップP50の初期化処理へ移行する。増量回数が1以上の場合、ステップP47で前回値から予め設定した変化量を減算する。減算値が1以下となった場合は(P48)、ステップP50へ移行し、加速後の増量補正を終了する。減算値が1以上の場合は、ステップP49で減算値を今回値とし、ステップP42移行の処理を行なう。
【0070】
したがって、ステップP35,P36で、スロットル開度θTHが急速に大となったことを検出すると加速状態にあると判断し、加速のための燃料噴射量の増量処理が開始されるが、ステップP39〜P41でマップ演算値を目標値として増量値を予め設定した変化分づつ増加させるようにしているので、燃料噴射量が急激に増量されることはない。
【0071】
エンジンの回転速度NEが極めて高速(例えば毎分10000回転以上)となった場合(P33)や、スロットル開度θTHが例えば15度未満に戻された場合は(P34)、ステップP50で前回値を0に、今回値を1.0に、増量回数を0に、増量フラグを0に設定する初期化処理がなされ、燃料噴射量の加速補正増量が停止される。
【0072】
スロットル開度θTHがほぼ全開に近い状態となった場合(P35)、ならびに、スロットル開度の開き方向の変化量ΔθTHが小さく(遅く)なった場合は(P36)、加速が終了した状態と判断し、加速状態で増量した分を予め設定した変化分づつ減少させるので(P47〜P49)、加速終了直後に燃料噴射量が急激に減少され、噴射量が不足するようなことはない。
【0073】
なお、この実施例ではマップ検索によって噴射量を求め、その噴射量に基づいて燃料の噴射時間を制御する構成について説明したが、マップ検索によって噴射時間を求める構成としてもよい。
【0074】
図16は大気圧補正の一具体例を示すフローチャートである。
図16に示したものは、大気圧変動時の性能確保と始動性能の向上を図ったものである。ステップP51で低負荷時用大気圧補正係数KpaLを、ステップP52で高負荷時用大気圧補正係数KpaHを図7に示した大気圧補正係数(PA−Kpa)テーブルを参照して算出する。ステップP53で始動大気圧補正係数Kpacrを始動大気圧補正係数(PA−Kpacr)テーブルを参照して算出する。
【0075】
図17は始動大気圧補正係数の一例を示すグラフである。
始動大気圧補正係数Kpacrは、平地で1.0とし、大気圧の減少に伴って始動大気圧補正係数Kpacrを低下させている。大気圧の低い高地ではエンジンの要求燃料の減少に伴って燃料の噴射量が低減されるので、始動性が改善される。
【0076】
ステップP54でマップ指定指令56aをチェックする。吸入負圧(PB)マップが指定されていれば、ステップP55で現在の大気圧に応じた負荷状態判断しきい値PBsudを算出し、現在の平均吸入負圧PBHに基づいて負荷状態を判断する。エンジンが高負荷状態であれば高負荷時用大気圧補正係数KpaHを大気圧補正係数Kpaに設定し(ステップP57)、エンジンが低負荷状態であれば低負荷時用大気圧補正係数KpaLを大気圧補正係数Kpaに設定する(ステップP58)。
【0077】
ステップP59でエンジンのバンク状態をチェックする。リヤバンク(例えばV4型エンジンの#1,#3気筒)であればステップP60でリヤ吸入負圧PBRを使用して第2大気圧補正係数テーブル(PB−CPABテーブル)を検索し、第2大気圧補正係数CPABを算出する。フロントバンク(例えばV4型エンジンの#2,#4気筒)であればステップP61でフロント吸入負圧PBFを使用して第2大気圧補正係数テーブル(PB−CPABテーブル)を検索し、第2大気圧補正係数CPABを算出する。排気ポートに作用する背圧は負荷により変化するが、低地と高地ではその割合が異なるため第2大気圧補正係数CPABを用いて補正する。
【0078】
図18は第2大気圧補正係数の一例を示すグラフである。
吸入負圧PBが大きい程第2大気圧補正係数CPABは大きい値となるよう設定している。
【0079】
ステップP62でエンジンの負荷状態に応じて求めた大気圧補正係数Kpaに第2大気圧補正係数CPABを乗じて総合大気圧補正係数KPAを算出する。
【0080】
ステップP54でスロットル(TH)マップ使用状態と判断された場合は、総合大気圧補正係数KPAに始動大気圧補正係数Kpacrを設定する。ステップP63で総合大気圧補正係数KPAに始動大気圧補正係数Kpacrを設定することで、大気圧に応じてスロットルマップ使用時の燃料噴射量を調整する。これにより、大気圧の低い高地等においてもエンジンの性能を確保できる。始動大気圧補正係数Kpacrは、始動時ならびにスロットルマップ使用時の両方で使用する。
【0081】
そして、このようにして算出された総合大気圧補正係数KPAを用いて総合補正係数Ktotalが算出されるので、大気圧が変動してもエンジンの負荷状態に応じた燃料量が噴射される。よって、大気圧の低い高地を走行する場合でも、エンジンの性能を確保できる。また、エンジンの始動時においても燃料噴射量を大気圧に応じて制御しているので、高地でも良好な始動ができる。さらに、吸入負圧(PB)マップを用いて基本噴射量を求めている状態でも、大気圧補正がなされエンジンの負荷状態に応じた燃料量が噴射される。よって、大気圧の低い高地を走行する場合でも、エンジンの性能を確保できる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る電子式燃料噴射制御装置は、低負荷時用と高負荷時用の大気圧補正係数を備え、エンジンの負荷状態に応じて大気圧補正係数を異ならしめる構成としたので、各種の負荷状態に亘って燃料噴射量の大気圧補正を好適に行なうことができる。
【0083】
大気圧補正手段は、吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なうとともに、その判断基準値は大気圧の変化に連動する構成としたので、低地から高地までの幅広い大気圧変動に対して、燃料噴射量を的確に補正できる。
【0084】
特に、多連スロットルバルブタイプのエンジンは、スロットルバルブの開度が大となった高負荷状態で吸入空気量と吸入負圧とのリニアな関係がくずれる為、燃料噴射量を補正する必要がある。そこで、負荷状態に応じて特性の異なる大気圧補正係数を備え、負荷状態に応じて選択使用することで、精度良い大気圧補正が可能となる。
【0085】
また、吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なう際に、負荷状態の判断に用いる判断基準値を大気圧の変動に連動させることで、例えば大気圧の低い高地での走行であっても、負荷状態を的確に判断し適正な大気圧補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る電子式燃料噴射制御装置の電気系統図
【図2】この発明に係る電子式燃料噴射制御装置を備えた自動二輪車の主要構成部品配置図
【図3】電子式燃料噴射制御ユニットの全体構成を示すブロック図
【図4】電子式燃料噴射制御ユニットの基本機能を示す機能ブロック図
【図5】電子式燃料噴射制御ユニットの基本動作を示すフローチャート
【図6】大気圧補正係数設定手段の機能ブロック図
【図7】大気圧補正係数テーブルの内容の一例を示すグラフ
【図8】大気圧補正係数設定手段の動作を示すフローチャート
【図9】吸気温補正係数の一例を示すグラフ
【図10】冷却水温補正係数の一例を示すグラフ
【図11】基本噴射量演算手段ならびに加速増量係数演算手段の一具体例を示すブロック図
【図12】マップ指定手段の動作説明図
【図13】加速補正手段の動作を示すフローチャート
【図14】スロットル開度と加速補正係数との関係を示すグラフ
【図15】電子式燃料噴射制御装置の全体動作を示すフローチャート
【図16】大気圧補正の一具体例を示すフローチャート
【図17】始動大気圧補正係数の一例を示すグラフ
【図18】第2大気圧補正係数の一例を示すグラフ
【図19】従来技術の課題を示す説明図
【符号の説明】
1 電子式燃料噴射制御装置
2 インジェクタ
3 電子式燃料噴射制御ユニット
4 エンジン
20 各種補正係数設定手段
21 大気圧補正係数設定手段
21a 低負荷時用大気圧補正係数テーブル
21b 高負荷時用大気圧補正係数テーブル
21c 適用テーブル選択手段
21d 負荷状態判断手段
21e 負荷状態判断しきい値演算手段
21f 負荷状態の判断出力
30 基本噴射量演算手段
40 加速増量係数演算手段
51 燃料噴射量設定手段
52 インジェクタ駆動手段
KPa 大気圧補正係数
KpaL 低負荷時用大気圧補正係数
KpaH 高負荷時用大気圧補正係数
PA 大気圧
PBF,PBF 吸入負圧
PBsud 負荷状態判断しきい値
S1 大気圧センサ
S2,S3 インテークマニホールド負圧センサ

Claims (2)

  1. 少なくとも吸入負圧に基づいて設定した基本噴射量に対し大気圧に応じて燃料噴射量の補正を行なう多連スロットルバルブを備える内燃機関の電子式燃料噴射制御装置において、
    低負荷時用と高負荷時用の大気圧補正係数を設定する大気圧補正係数設定手段を備え、エンジンの負荷状態に応じて大気圧補正係数を異ならしめる構成とし、
    前記大気圧補正係数設定手段は、吸入負圧に基づいて低負荷時と高負荷時の判断を行なう負荷状態判断手段を備え、
    前記負荷状態判断手段での判断基準値は大気圧の変化に連動する構成としたことを特徴とする電子式燃料噴射制御装置。
  2. 前記負荷状態判断手段は、吸入負圧に基づいてエンジンが高負荷状態にあるか低負荷状態にあるかを判断し、その判断出力に基づいて該当する前記大気圧補正係数を出力する適用テーブル選択手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電子式燃料噴射制御装置。
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