JP3707899B2 - 複室容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末剤、液剤、固形剤等を封入する可撓性複室容器の改良に関するものである。本発明の複室容器は、例えば吸湿性や易酸化性を有する薬剤等を収容するのに使用すれば、特に有効である。
【0002】
【従来の技術】
従来より吸湿性や易酸化性を有する薬剤等と、溶解液や希釈液等とを隣合う別の室に分離して収容し、使用時にシール部を連通させて混合するようにした複室容器が用いられているが、複室容器には吸湿性や易酸化性を有する薬剤等を収容した室を水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで覆って密封し、内側の空間部に脱酸素剤や乾燥剤等を封入することが行われている。例えば、特開平4ー364851号の複室容器等がこれである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような複室容器は、吸湿性や易酸化性を有する薬剤等を収容した室を水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで覆う二重構造であり、かつ前記フィルムで形成される空間部内に脱酸素剤や乾燥剤等を収容するので、構造が複雑であるという問題点があった。
本発明はこのような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は構造を簡単にすると共に、室内の水分や酸素の影響を少なくなし得る複室容器を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような目的を達成するためになされたものであり、本発明は下記の通り構成されている。
可撓性フィルムで粉末剤、液剤、固形剤を収容するための複数の室が形成され、かつ隣合う室を密封状態に仕切る手段として剥離可能なシール部を含むようにし、さらに該複数の室の内の1または2以上の室を水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで少なくとも構成するようにした複室容器において、水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで構成された前記1または2以上の室内には粉末剤、液剤、固形剤を収容すると共に、酸素吸収性シートまたは水分吸収性シートのいずれか一方または両方を収容し、かつ前記酸素吸収性シートおよび水分吸収性シートは前記室内で前記水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムに溶着されて固定されるようにしたことを特徴とする複室容器。
ここに、「非密封性仕切部」とは溶着部が列状に配置された場合に限らず、ジグザグ状や散点状もしくは帯状等をなすように配置された場合も含むものであり、「粉末剤、液剤、固形剤を収容する」とはこれらのいずれか1または2以上を収容することを意味する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を記載した図面に基づいて、発明の実施の形態を詳細に説明する。 図1において、2は液剤を収容するための室4を構成するフィルム、6は粉末剤等を収容するための室8を構成するフィルムである。室8には粉末剤と共に、小袋14に入れられた乾燥剤16と脱酸素剤18が封入され、室4には液剤が封入されると共に口部22が取り付けられている。小袋14は水分透過性とガス透過性を有するフィルムで構成され、かつ小袋14の一端部は室8内の上端側に溶着され、固定されている。室8は2枚重ね合わせたフィルム6の周縁を溶着して形成される。すなわち、フィルム6は図1(ハ)に示すように、内層28がポリエチレン(以下PEと略記する)とポリプロピレン(以下PPと略記する)との混合樹脂で、外層26が水分非透過性、ガス非透過性のバリアーフィルムからなる多層フィルムであり、バリアーフィルムとして例えばポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)とポリ塩化ビニリデンとPEの3重層または、PETとポリビニルアルコールのシリカ蒸着フィルムとPEとの3重層が使用されている。重ね合わせた2枚のフィルム6が周縁で溶着されて室8が形成される。また、小袋14は図1(ホ)に示すように、吊下げ用シート31等の連結部材で室8内に固定してもよい。なお、乾燥剤16と脱酸素剤18は室8内に収容する薬剤等の種類、性質等に応じていずれか一方を省略することも可能である。
【0006】
一方室4は、多層フィルムである前記フィルム6が下方に伸び、溶着されて構成される。すなわち、前記多層フィルムを2枚重ね合わせ、その周縁部を溶着すると共に、その中間部において横方向に、周縁部より強度が小さくなる状態に溶着し、図1(ニ)に示すように剥離可能なシール部としての弱シール部30を形成し、これを境にして室8、室4が形成される。なお、前記フィルム2とフィルム6は連続した同じフィルムである。
【0007】
乾燥剤としては、例えばシリカゲル、ゼオライト、シリカゲル成形物、脱酸素剤一体物等が使用されている。また、脱酸素剤としても、市販のもの、例えば三菱瓦斯化学社製「エージレス(登録商標)」や、アモルファス銅を用いた脱酸素剤等が使用できる。
【0008】
上記各部の溶着温度は、室8、室4の周縁部が最も高く、約170〜200℃であり、弱シール部30はこれより低く、約110〜130℃に設定される。その結果溶着強度は、室2、室8の各周縁部の溶着部が最も強く、弱シール部30はこれらより弱くなる。
【0009】
以上のように構成された実施例においては、粉末剤、液剤、固形剤等が封入された室内に乾燥剤、脱酸素剤等が封入されるので、吸湿性や易酸化性を有する薬剤等の吸湿防止や酸化防止を効率よく行なうことができる。また、乾燥剤、脱酸素剤等は小袋14内に入れられているので、薬剤類と直接接触するおるれはなく、しかも小袋14は水分透過性、ガス透過性のフィルムで構成されているので、湿気や酸素の通過の妨げとならない。
【0010】
なお、上記実施例の粉末剤として例えば、抗生剤、抗癌剤、ステロイド剤、血栓溶解剤またはビタミン剤等の吸湿性、易酸化性および易熱変性の物質が挙げられ、液剤としてこれらの溶解液または希釈液、例えば生理食塩液や、ブドウ糖液および注射用蒸留水などが挙げられる。粉末剤の抗生剤等の中には、下部の液剤で溶解する前に、炭酸ナトリウム等のアルカリ溶剤や他の溶解補助剤で溶解しなければならないものがあるが、このような場合には、この粉末剤を収容した室に溶剤等を混注するための注入口(図示省略)を設ける。
【0011】
フィルム6は外層26のバリアーフィルムとして、ポリ塩化ビニリデン、PET、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、シリカ蒸着フィルムの単層もしくは多層のシートを使用することも可能である。
【0012】
前記実施例では乾燥剤等が収容された室8内に粉末剤を封入し、乾燥剤等を収容しない室4内に液体を封入したが、目的に応じて粉末剤を液剤に、液剤を粉末剤に変えて封入することも可能である。
室8内に液剤を封入し、他の室内に粉末剤を封入する例として、例えば液剤としてシステインまたはトリプトファンをそれぞれ添加したアミノ酸製剤等の易酸化性の物質が挙げられ、粉末剤として糖もしくは電解質、またはこれらの混合物等が挙げられる。この場合室8には脱酸素剤のみを封入する。室8内に液剤を封入し、他の室内に他の液剤を封入する例としては、例えば前者の液剤としてシステインまたはトリプトファンをそれぞれ添加したアミノ酸製剤あるいはビタミン剤の易酸化性の物質が挙げられ、後者の液剤としては糖・電解質液が挙げられる。
【0013】
また他の例としては、前者の液剤として脂肪乳剤等の易酸化性の物質が、後者の液剤としては糖・電解質液等が挙げられる。
さらに、いずれか一方の室内に固形剤を、他の室内に液剤を封入することも可能である。さらにまた、上記粉末剤、液剤、固形剤の例として、経静脈または経腸(経管、経口)投与する他の種々の栄養剤や治療剤等が挙げられる。
また、室8内に封入した乾燥剤と脱酸素剤は、必要に応じていずれか一方のみ使用することも可能である。水分吸収性シートや酸素吸収性シートについても同様である。
【0014】
前記実施例は液剤と1種の粉末剤とを封入する2室容器の例であるが、2室以上でも適用可能である。例えば、フィルム10で覆われた空間部12内に粉末剤、固形剤、液剤等を封入する室を複数個設けたり、フィルム10で覆われない室を複数設けることも可能である。
【0015】
また、前記実施例では、弱シール部30の形成は室8を構成する2枚のフィルム10の内面同士を直接溶着する、いわゆる直接溶着方式で行なっているが、これに代えてこのシート間に多層インサートフィルムを挟んだ状態で溶着し、弱シール部を形成させる、いわゆる多層インサートフィルム挟持溶着方式で行なってもよい。図2は2層インサートフィルムを使用した例を示す。この場合48は室8を構成する多層フィルムであり、50はフィルム48の最内層のシートに対して熱接着力の強いシート、52は反対側のフィルム48の最内層のシートに対して熱接着力の弱いシートであり、弱シール部54が形成されている。
【0016】
例えば、フィルム48が直鎖状低密度ポリエチレンを主体とした多層フィルムである場合には、50はこれと同じ直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンのシートであり、52は直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂である。この例ではフィルム48を2枚重ね合せて周縁を溶着して袋状にしているが、これに代えてチューブ状のフィルムを使用し、中間部に孔をあけ、そこからシート50、52を挿入し、しかる後チューブ状フィルムの外側から押付けた状態で溶着し、弱シール部を形成させることも可能である。
【0017】
図3は本発明の他の実施例を示す。なお、前記実施例と変更を要しない部分は同じ番号を付して詳しい説明は省略する(以下同じ)。乾燥剤16、脱酸素剤18を入れた小袋14を使用しないで、水分吸収性シート42と酸素吸収性シート44を室8内に直接溶着して固定したものである。なお、前記実施例のように小袋14を使用しないので、室8内の水分や酸素を直接効率よく吸収できる利点がある。水分吸収性シート42と酸素吸収性シート44は、室8内に収容する薬剤等の種類、性質等に応じていずれか一方を省略することも可能である。
【0018】
図4は本発明のさらに他の実施例を示す。フィルム6として図4(ロ)や図4(ハ)に示すように、吸水層58や酸素吸収層60を有するフィルムを使用したものである。なお、62は内層、64は外層であり、66は外層、68は内層である。これは、図1(ハ)に示す多層フィルム6の内層26と外層28の間に吸水層や酸素吸収層を配置したのと同様な組成である。
なお、水分吸収性シートの水分吸収層を構成するものとしては、例えば佐々木化学薬品株式会社製ドライキープ(登録商標)等が、酸素吸収性シートの酸素吸収層を構成するものとしては、例えば東洋製罐株式会社製オキシガード(OXYGUARD)(登録商標)等が好適に使用できる。
【0019】
図5は本発明の他の実施例を示す。室4、弱シール部30は前記実施例と同様に構成されているが、室72は補助剤収容区74と対象物収容区76とに区分されている点で前記実施例と相違する。すなわち、室72は溶着部78と非溶着部80が交互に配置される非密封性仕切部82により2つに区分されて、補助剤収容区74と対象物収容区76が形成されている。そして、両区74、76は図5(ハ)に示すように非溶着部80の隙間Sを通じて互いに連通されている。こでは、補助剤収容区74には乾燥剤16と脱酸素剤18が、対象物収容区76には粉末剤が収容されている。なお、室72を形成する前後のフィルムは、それぞれ図4(ロ)、(ハ)に示すような吸水層や酸素吸収層を有する多層フィルムとすることも可能である。
【0020】
前記各実施例の水分非透過性、ガス非透過性のバリアーフィルムで覆われた空間部内に位置する室には、吸湿性や易酸化性の粉末剤、液剤、固形剤等が収容される。前記各実施例では、室8や室72は室4を構成するフィルムと連続したフィルムで構成されるが、図1(ヘ)に示すように水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルム84と、他の水分透過性および/またはガス透過性のフィルム86を弱シール部30付近で接合して構成してもよい。
以上本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。
【0021】
【発明の効果】
本発明は上述の通り構成されているので、次に記載する効果を奏する。
本発明の複室容器によれば、水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで構成された室内に粉末剤、液剤、固形剤等を収容するものであり、その室をさらに覆うフィルムは不要であるから、構造が簡単になるという利点がある。
また、酸素吸収性シートや水分吸収性シートは小袋等に入れられていないので、室内の水分や酸素の吸収がさらに効率よく行われるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)〜(ニ)は本発明の一実施例を示す正面図、縦断面図、A部拡大断面図、B部拡大断面図、(ホ)〜(ヘ)はそれぞれ同実施例の変形例を示す部分断面図である。
【図2】同実施例の他の変形例を示す部分断面図である。
【図3】(イ)、(ロ)は本発明の他の実施例を示す正面図、縦断面図である。
【図4】(イ)、(ロ)、(ハ)は本発明のさらに他の実施例を示す断面図、C部拡大断面図、D部拡大断面図である。
【図5】(イ)、(ロ)、(ハ)は本発明のさらに別の実施例を示す正面図、縦断面図、E部拡大断面図である。
【符号の説明】
2 フィルム
4 室
6 フィルム
8 室
14 小袋
16 乾燥剤
18 脱酸素剤
30 弱シール部
42 水分吸収性シート
44 酸素吸収性シート
48 フィルム
54 弱シール部
58 吸水層
60 酸素吸収層
72 室
74 補助剤収容区
76 対象物収容区
78 溶着部
80 非溶着部
82 非密封性仕切部
Claims (1)
- 可撓性フィルムで粉末剤、液剤、固形剤を収容するための複数の室が形成され、かつ隣合う室を密封状態に仕切る手段として剥離可能なシール部を含むようにし、さらに該複数の室の内の1または2以上の室を水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで少なくとも構成するようにした複室容器において、水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムで構成された前記1または2以上の室内には粉末剤、液剤、固形剤を収容すると共に、酸素吸収性シートまたは水分吸収性シートのいずれか一方または両方を収容し、かつ前記酸素吸収性シートおよび水分吸収性シートは前記室内で前記水分非透過性および/またはガス非透過性のフィルムに溶着されて固定されるようにしたことを特徴とする複室容器。
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