JP3705829B2 - 水素化フルオロカーボンから成る組成物 - Google Patents
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Description
本発明はランキンサイクルに従って作動する冷蔵回路、特に空調設備を備えた自動車で作動する冷蔵回路において使用され得る混合物に関する。
周知のように、R12(ジクロロジフルオロメタン)はこれらの用途において今日まで最も広汎に使用されてきた冷媒である。しかしながら、この製品は成層圏に存在するオゾンを著しく破壊する可能性があるため、総ての用途について様々な態様および時間で施行されている法律(モントリオールプロトコールおよびその後の修正)により、周知のようにその生産が停止されることになることを覚えていなければならない。
【0002】
HFC134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)は、その代替品として当該技術分野において提案されている。しかしながら、この生成物の使用は、R12で作動するシステムの新たな計画を前提としており、別の種類の潤滑油の利用も前提としている。R12と共に従来用いられてきた潤滑油はナフテン系のものであるが、HFC134aが必要とするものはポリアルキレングリコールの種類に属している。これら2つの潤滑剤は相溶性ではなく、またR12の分解によって生成する微量塩素はポリアルキレングリコール系の潤滑剤を修復不可能なほどに損なう。
それ故、R12を利用する現存の装置では、避けられない損失が起こるため必要となる冷媒の充填を行うことは最早できなくなる。そのような装置は更に何年間も用いることができると思われるので、それを利用できる解決法を見出すことが望ましい。
【0003】
従って、代替品を見つける必要があるが、これには作動することになる系の要素、材料および一般的には成分の改質を幾らかでも実質的に必要とするものであってはならないということを覚えているべきである。実際には、この解決法は当該技術分野では「ドロップ・イン(drop in) 」として知られている。
本発明は、それ自身を「ドロップ・イン」領域に置き、冷媒R12の置換だけを考慮し、平均的な冷蔵、特に空調設備を備えた自動車の装置に関して現存の装置を利用する。
【0004】
自動車の空調の分野における装置の基本的問題点の一つは、冷凍ガスの損失の問題である。この問題は、平均的圧または高圧で総ての冷蔵装置にとって共通であるが、自動車の空調の具体的な場合には特に重大である。
当該技術分野では、フルオロカーボンから成る冷凍混合物の使用も知られている。しかしながら、冷媒が通常の混合物である場合には、液相から気相までの変化において分別が起こり、損失の場合にはある一種類若しくは複数の成分が優先的に損失しやすいので、最初の混合物を続いて充填することはできず、充填前に残存混合物の正確な組成を同定する必要がある。これは、実際には損失がどこで起こるか判らないからであり、損失する一種類または複数の成分が極めて揮発性の高いものであることがあり、また揮発性が余り高くないものであることもあるからである。
【0005】
混合物が可燃性成分を含み、損失が起こるときには、蒸発した気体は可燃性気体の濃度が高くなり、気相で引火限界に達することがある。同様に、不燃性成分が損失するときには、液体中の可燃性成分が濃縮して、可燃性液体を生じる。
更に、共沸性でない任意の混合物を用い、液体状態から気体状態への変化においてかなりの分別が起こり、状態変化中の濃縮または蒸発温度が著しく変化した場合、ランキンサイクルで作動する従来の交換器の効率はかなり減少し、全回路の効率を減少させる。
当該技術分野では、共沸またはほぼ共沸性の混合物を用いて、前記の欠点をなくすことが提案されている。例えば、冷蔵分野ではR12の代替品として欧州特許第299614号明細書に記載の所定の重量比での混合物R22(クロロジフルオロメタン)+R124(1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン)+R152a(1,1−ジフルオロエタン)を用いて、ほぼ共沸性の混合物を得ることが提案されている。
【0006】
しかしながら、冷蔵におけるこの種の混合物の使用には不都合があり、R12と共に用いた潤滑油とは異なる特定の潤滑油を使用する必要がある。これらの混合物にとって必要な油分は、R12と共に用いられるナフテン系油分と相溶性でないアルキルベンゼン系のものである。
この事実から、混合物と対応する油分を供給する前に、完全に空にし、精確に洗浄して、乾燥する操作が必要である。従って、このような解決法は、前記の意味において「ドロップ・イン」ではない。
【0007】
本出願人は、予想外のことでしかも驚くべきことに、前記の不都合を総て解決し、同時に混合物に典型的な柔軟性の利点を有する下記のようなほぼ共沸性の組成物を見出した。
必須成分としてのR22(クロロジフルオロメタン)、R124(1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン)および/またはR124a(1−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン)、R600(n−ブタン)および/またはR600a(イソブタン)の適当な濃度でのほぼ共沸性の混合物から成る冷蔵混合物によって前記の問題を解決することができた。これは、分別が極めて限定されており、環境上の影響がR12の場合よりも明らかに低く、現在用いられているR12により作動する冷蔵回路に含まれる無機潤滑油と極めて良好な相溶性を有するという極めて重要な特性を有するので、自動車の空調分野で特に有用であり、不燃性であり、ほぼ共沸性である、R12に対する「ドロップ・イン」混合物である。
すなわち、本発明による混合物は、潤滑油を取り替える必要なく、R12と容易に交換できる。更に、この混合物は可燃性ではなく、可燃性成分を含んでいても、回路からの不可避的な損失による可燃性液体または蒸気を生じない。
本発明によるほぼ共沸性の混合物とは、大気圧での操作において総ての液体が蒸発した時、初期の沸点に対して沸点の上昇が10℃未満である混合物を意味する。
【0008】
本発明によるほぼ共沸性の混合物は、重量でR600および/またはR600aを2〜13.5%、R124および/またはR124aを34〜56%、およびR22を38〜53%を本質的に含み、3成分の比率の和は100である。好ましい混合物はR600および/またはR600aを8〜11%、R124および/またはR124aを43〜45%、およびR22を43〜47%含むものであり、また、成分b)がR124であり、成分c)がR600である混合物が好ましく、R124がR124aと一緒に含まれている混合物が更に好ましく、R124aは、R124とR124aの和の1〜10%の量であるのが好ましく、更に好ましくは前記の和の5%であり、更に好ましくは混合物がR600とR600aの和の1〜30重量%の量でR600を含むときの最後に述べた混合物である。
本発明による混合物は複数の冷媒によって形成されており、可燃性のような負の特性を有する成分の様な様々な成分の特徴を利用し、且つ柔軟性があり、冷凍回路の所定の設計に対して得られる熱力学的および熱物理学的特性に対して単一成分生成物より一層良好に応答するといった幾つかの利点を有する。従って、本発明による混合物はR12の代わりの非常に有効な「ドロップ・イン」である。
【0009】
周知のように、特に本発明によれば、冷凍回路とは、冷媒の状態変化を利用して熱を一方から取り去り、他方に与え、連続的に熱移動を行う装置の本質的な部分を意味する。消費されたエネルギーは、冷媒をコンプレッサーを通って凝縮装置および蒸発装置に循環させるのに必要な量であり、これらの装置は交換器であって、その内側で状態変化が実質的に一定温度および圧で起こる。
冷媒自身は、効率(COP、性能の系数)、冷凍容量、および凝縮および蒸発温度および圧力値に要約される固有の熱力学的特性を有する。
冷媒のもう一つの極めて重要な固有の特性は、圧縮段階での気体の加熱に関連している。このような加熱を行うことにより、冷媒自身の化学的安定性が危くなる一方、加熱することにより冷蔵サイクルのエネルギー効率が損われる。気体はエネルギーを消費しながら凝縮装置温度まで冷却しなければならないからである。コンプレッサーの出口圧も重要であり、これは凝縮装置および一般的には高圧で作動する回路部分に関する設計データーに関して余り高くないものでなければならない。
【0010】
交換器の内部表面を通る熱貫流の特性も、潤滑剤を含んでなり自動車の空調回路中をこれもまた凝縮装置の内側で無視し得ない量で循環する循環流体の重要な固有の特性である。熱交換器(蒸発装置および凝縮装置)は、一般的には一定温度および圧での状態変化について検討される。従って、最高の効率で熱移動の目的を得るためのその設計は、循環流体の熱貫流特性と同様に重要である。
これらの総ての要素が回路の全般的効率に影響する。本発明の混合物は、総ての特性の最適なバランスを有し、最良の態様で各種の要件に合致する。
本発明による混合物はODP値(オゾン枯渇可能性)が0.03未満であるという利点も有している。このような値は極めて低く、他の既知の混合物に匹敵しまたはこれよりも良好であるが、既知混合物は前記の様に「ドロップ・イン」ではないという欠点を有する。
【0011】
驚くべきことに、本発明の混合物はODP値が極めて良好であることに加えて、他の既知の混合物と比較してR12と共に用いられる鉱油と良好な混和性を示し、従ってR12に対する「ドロップ・イン」規準に適合する。
本発明混合物のもう一つの利点は、R12の代替品として当該技術分野で知られている総ての混合物の価格よりも廉価であることである。この利点は、混合物自身の非可燃性を確保する本発明で用いられる濃度のために、純粋な炭化水素の可燃性によって損なわれることはない。
更に、前記混合物がほぼ共沸性の挙動を有するため、それらの混合物が50重量%を上回る蒸発を経た場合であっても、決して液体または可燃性蒸気に十分に分別されることはない。この非可燃性は、ASTM E−681規格に従っている。
【0012】
本発明による組成物のもう一つの利点は、炭化水素が多量に利用できることであり、一方R12の代替品として当該技術分野で用いられるフッ化炭素は高度技術の高価な工程で得られ、入手は極めて限定されている。従って、本発明は工業上の観点からかなり有利である。
本発明の混合物によって提供される更にもう一つの利点は、鉱油に溶解し、通常は自動車の空調回路の一部である金属と高温で長時間に亙り接触しても、R12の場合に生じるほどには任意の成分に対する分解および/または化学的または物理的攻撃が生じないことである。試験は、方法ASHRAE97−1983(RA89)に記載の規格に従って行った。
更に、本発明の混合物の自動車空調用回路のパイプを高圧で通る透過性は、同じ条件下でR12によって示される透過性より大きくない。
更に、本発明の混合物は、驚くべきことに、0〜100℃の温度範囲で最大分散が絶対値で25%で、R12によって達成される圧を再現する。
下記の実施例は、単に説明のためのものであり、本発明の目的を制限するものではない。
【0013】
実施例1
R22/R124/R600aによって形成される混合物であって、R22、R124およびR600aの重量%の比率が47.5/43.7/8.8であるものを、共沸挙動の側面から特性決定した。この混合物の一般的特性を第1表に示し、当該技術分野の典型的な混合物の特性およびR12の特性と比較する。
【表1】
表記の組成を有する混合物を、容量が550mlの気密セル中に秤量した量で入れ、容積の80%を満たした。セルは流体によって加えられる圧の測定および温度測定装置を備えていた。
次に、セルに含まれている流体を、液体と平衡状態にある蒸気を放出することによって極めてゆっくりと蒸発させ、セルに含まれている流体の量を最初に充填した量の正確に半分とした。操作中に流体はその温度を変更しがちであるので、セルにサーモスタットを取り付けて、セルに含まれる液体の温度が常に22℃となるようにした。次に、初期圧Piの値に対して百分率での圧の降下を記録して、DP/Pi%(−50重量%)として表わした。ほぼ共沸化合物に対するこのような値は、真の共沸化合物の場合に0にずっと近くなることを考慮すれば、できるだけ低い値でなければならない。
次に、同じ組成の混合物を、前記の態様で同じセルに充填した。今回は、サーモスタットの温度を調整して、セル内部の圧を1.25ata となるようにした。次に、セルの温度を次第に上昇させることによって流体を完全に放出させ、圧の値を一定の1.25ata に保持した。次に、これらの条件下で測定したDTの値を記録した。実験は2回目に高圧水準(12.5ata )で繰返し、この時も温度変化を記録した。第2表に示す、このようにして測定した値は、混合物のほぼ共沸性の挙動につき有意に特性決定している。
【表2】
【0014】
実施例2
組成がR22/R124/R600=48.4/43/8.6重量%の混合物について、自動車空調回路で通常用いられるナフテン系鉱油を用いて溶解度試験を行い、温度に対する溶解度の範囲を確認した。試験では、冷媒中のそれぞれの油分の濃度、その温度以上で該2成分間の溶解性が得られる臨界溶解温度を測定する。
試験を行うため、油1gを低温の冷凍混合物(T=−30℃)に、厚い壁で圧に耐えるようにした同じ温度に冷却したガラス容器中で加えた。次に、ガラス容器を溶封した。
次に、試験管に含まれた油/冷媒混合物を、完全に温度制御したガラスサーモスタットに浸漬した。温度を最初に65℃の値に上昇させた後、曇りが認められるまでゆっくりと低下させ、この温度を系の臨界T(曇り点)として記録した。温度を更に減少させることによって、曇りは一層強くなり、臨界値より2〜3℃低い温度で、2種類の流体の分離の古典的メニスカスを有する相分離が明確に現れた。記録したデーターを第3表に示す。本発明の混合物が均質な条件下(完全な溶解性)で作用する温度範囲はかなり広く、油/R12の混合物について同じ油で測定した臨界温度は更に低いものの、R12(−10/+90℃)で作動する自動車空調用の従来の冷蔵回路の要件に完全に適応することができる。同じ表に比較のために記載した従来の混合物は、これとは対照的に該鉱油と典型的な非相溶性を示し、非「ドロップ・イン」として特徴付けられる。
【表3】
炭化水素R600の混合物R22/R124への添加による、この極めて重要な特性について認められる正の相乗効果は、まさに驚くべきことであり、予想外のことである。混合物の成分に対する溶解度試験を、第4表に記載する。
【表4】
第3表に記載された値を検討することにより、R152aをR600に代えると、本発明の混合物R22/R124/R600が著しく有利になり、作動範囲は明らかに優れていると思われる。
【0015】
実施例3
混合物R22/R124/R600a=48.4/43/8.6重量%について、方法ASHRAE97−1983(RA89)に記載の化学安定性試験を行い、幾つかの相違点は下記に示した。
容積が約10cm3 のガラス管に2種類の金属クーポン(銅および鉄)と、実施例2で使用した同じナフテン系鉱油約1mlを入れた。次に、ガラス管(直径=3mm、高さ=30mm)を、スチール製シリンダーの内側に適合させた。シリンダーの上部に十分に気密を行うことができる手動弁をねじでとめた。弁を開放して、ガラス管の内部に真空を設定した。次に、T<−30℃に温度制御した液体中で冷却し、充填のため同じ温度に冷却した冷蔵混合物と連結した。冷媒約1mlを素早く充填し、できるだけ早く弁を閉じ、閉じたガラス管を温度制御したオーブンに入れ、同じ方法で調整し、冷媒の種類だけを変化させ、すなわち第二の管にR12を入れ、第三の管に混合物R22/R124/R152a=30/47/23重量%を入れた他の2種類の試料と共に175℃で14日間放置した。
14日間経過後、試験管を開放し、冷媒を鉱油の軽質分解生成物と共にガスクロマトグラフィ分析用サンプルホルダー内で蒸発させた。
次に、3つの試料の油分について酸度測定のための分析を行い、色の変化を目視により分析した。
金属クーポンを観察して、所期腐蝕の存在について調べ、スチール製クーポンは「銅めっき」の現象の有無を調べた。冷蔵/油/金属系の品質は、0〜8の尺度(効果なしから顕著な効果まで)でそれぞれのパラメーターについて解釈し、この尺度は分解現象が0から顕著までを意味し、着色および/または酸度および/または副生成物および/または銅めっきとして同定した。結果を第5表に示す。
【表5】
【0016】
実施例4
2つの極端な比率条件R22/R124における可燃性炭化水素の最大量を含む組成がR22/R124/R600a=51.9/34.6/13.5およびR22/R124/R600a=38.4/48.1/13.5の2種類の混合物を、2相、即ち液体および蒸気のそれぞれについて規格ASTM E−681に記載の方法に従って可燃性試験を行った。4種の試料のいずれも可燃ではなかった。
更に、500cm3 のシリンダーに入れた後、これらのそれぞれの混合物を空気中で蒸発させ、それぞれの混合物につき最初の液体の50%および90%を損失させた。4種類の液体および4種類の蒸気を得て、可燃性になり得る蒸気または可燃性になり得る液体の放出による貯蔵容器または供給ラインからの損失の結果生じるであろう効果をシュミレートした。8種類の試料について可燃性試験を行ったところ、いずれも不燃性であった。
Claims (8)
- a) 組成物の総量に対して38〜53重量%の量のR22、
b) 組成物の総量に対して34〜56重量%の量のR124および/またはR124a、および
c) 組成物の総量に対して2〜13.5重量%の量のR600および/またはR600a
を必須成分として含有して成り、上記3成分が常に含まれており、且つそれらの百分率の和が100であり、大気圧において組成物に含まれる全ての液体を蒸発させた時、初期の沸点に対して沸点の上昇が10℃未満であることを特徴とする、組成物。 - 組成物の総量に対して、成分a)が43〜47重量%、成分b)が43〜45重量%、成分c)が8〜11重量%ある、請求項1に記載の組成物。
- 成分b)がR124によって形成され、成分c)がR600によって形成される、請求項2に記載の組成物。
- 成分b)が、R124aをR124とR124aの和の1〜10重量%の量で含む、請求項1または2に記載の組成物。
- 成分b)が、R124aをR124とR124aの和の5重量%の量で含む、請求項4に記載の組成物。
- 成分c)が、R600をR600とR600aの和の1〜30重量%の量で含む、請求項4または5に記載の組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含む、R12の使用に適した冷蔵回路。
- 自動車の空調回路である、請求項7に記載の冷蔵回路。
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