JP3703737B2 - 光半導体気密封止容器及び光半導体モジュール - Google Patents

光半導体気密封止容器及び光半導体モジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光半導体素子を内部に収容するための光透過窓を備えた光半導体気密封止容器、及びその光半導体気密封止容器を用いた光半導体モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信においては、高信頼性を確保するために、光半導体モジュールの気密性が重要視されている。これは、高温高湿状態では光半導体素子の電極部が劣化することと、容器内部に進入した水分が結露して光学特性が劣化し、10年以上の光半導体素子の寿命を補償できなくなるからである。
【0003】
一方、光半導体モジュールでは、容器内部の光半導体素子と外部の光ファイバーを光学的に結合する必要性がある。そこで、容器の気密性を確保したまま、容器内部の光半導体素子と外部の光ファイバーを光学的に結合するために、光半導体気密封止容器には光透過型の窓構造を採用している。
【0004】
特開平6−151629号公報では、光透過型の窓にサファイアを使用している。サファイアは光透過性に優れており且つ強度も高いことから、光半導体モジュール用の筐体(気密封止容器)によく使用されている。このサファイアは円形にドリル加工して使用されている。
【0005】
特開平11−54642号公報では窓板にほぼ正6角形のホウ珪酸ガラスを使用した、光半導体モジュールの窓構造を提案している。ホウ珪酸ガラスは安価で且つ光透過性についてもサファイアより優れている他、等方的材料であって複屈折を生じない材料である。熱等の応力によって弾性歪みが生じるために偏光面が崩れるが、特開平11−54642号公報にあるようにガラスに均一に応力をかけることで、その量は偏光消光比が40dB程度と大きくなって問題にならないことがわかってきている。また、正6角形の形状では低コストなダイシングプロセスが使用できるため窓材に低コスト化の効果も同時に得ている。ところが、ホウ珪酸ガラスは、強度が低いといった欠点もあり、より粗悪な条件での使用にはまだ注意が必要であった。
【0006】
偏光面の崩れは偏光消光比で表わされるのが一般的である。クロスニコルの実験系において、光射出側の偏光子を90度回転させて、最大となる光強度をImax、最小となる光強度をIminとし、偏光消光比を10×log10(Imin/Imax)で定義する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年の光通信では、光半導体モジュールの低コスト化が重要になってきている。このために光半導体モジュールの筺体である気密封止容器の窓材の改良が必要である。しかし、前記特開平6−151629号公報にあるように、サファイアの結晶を円形に加工するにはドリル研削が必要であり、且つこの場合には窓材にキズの発生が起こり、歩留まり率をおとしてしまう。このために高コストとなっていた。
【0008】
一方で、高密度波長多重技術と高速化技術の高度化にともない、次の課題が発生している。光の偏光面を維持することと波長の均一性を得ることである。このうち、後者を解決するためには光ファイバーグレーティング等の気密封止容器の外にファイバーを介して外部共振器構造を形成することが好ましいが、この時にも光の偏光面の維持が必要となる。これを強度レベルの偏光消光比で示すと、−30dBといったImaxがIminの1000倍を上回る厳しい条件が必要となってくる。特開平11−54642号公報では、実績が少ないことから海底ケーブル用の超信頼性が必要な分野での使用がまだ避けられているのが現状である。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、製造が容易で低コストであり、信頼性が高く、偏光面が崩れない光半導体気密封止容器及び光半導体モジュールを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、容器側壁の筒状部に半田鑞材で接合しており、光透過面が容器底板の垂線から6度以上傾いた光透過窓を有する光半導体気密封止容器であって、該窓材が中央に円形の光透過部を残して周囲にメタライズ部が形成された透光性セラミックス製の板からなることを特徴とする光半導体気密封止容器、更に、前記板がアルミニウムを含む酸化物(アルミナ、スピネル等)の焼結体であることを特徴とする光半導体気密封止容器を提供するものである。なお、透光性スピネル焼結体の製造方法に関しては、特許第26202873号公報、特許第2620288号公報に開示している。
【0011】
また、本発明の光半導体モジュールは、上記本発明の光半導体気密封止容器の内部に光半導体素子を、外部に光ファイバーを有することを特徴とする光半導体モジュールである。
【0012】
透光性セラミックスは、サファイアに比べて加工性が良好なため、ドリル加工による円板が容易に作製でき、低コスト化が図れる。また、ホウ珪酸ガラスと同様に、正六角形へのダイシング加工が容易にできる。
【0013】
正6角形は低コストなダイシング加工を行う場合に、最も収率が高くなる。従来のドリル加工に比較しても、ドリル刃先よりもダイシングの刃先のほうが小さいのでこの点でも収率が高くなる。ダイシング加工では粘着性のウエハシートを使用できるために、チップのとびはねがなく、歩留まり率が高く窓材を作製することができるために、低コスト化が図れる。
【0014】
サファイアのように一軸性の結晶では、光軸とC軸とを一致させることで複屈折は起きない。もし、入射する光が直線偏光であれば偏光面とC軸が同一面にあることで複屈折が生じない。光通信の分野で必要な十分条件である偏光消光比−30dBを確保するには、偏光面とC軸面を合わせなくてはならない。偏光消光比が小さいと、ロスや雑音の原因となる。しかし、窓材を、透光性セラミックスの焼結体とすることで、微小な結晶性の集合体の多結晶体状態となり、光学的に等方性となり光が透過する時の偏光面の崩れを窓材の向きに関係なくなくすことができる。このため、位置合わせをせずに容易に光半導体気密封止容器を作製でき、低コスト化が図れる。
【0015】
本発明の光半導体気密封止容器を用いると、低コストで且つ信頼性が高く、偏光面が崩れない光半導体モジュールを作製することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の光半導体気密封止容器を図を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の光半導体気密封止容器の光透過窓の一例を示す概略の斜視図、図2は、窓材となる透光性セラミックス製の板を示す平面図で、aは6角形窓材、bは円板形窓材である。気密封止容器1の容器側壁2に設けた穿孔に円形状の筒状部3を組み合わせて鑞付けし、これに金めっき等を施して容器中間品を作製する。5は底板である。更に、この筒状部3に窓材4を接合して光透過窓を構成するのであるが、本発明では、図2に示すように、窓材4が中央に円形の光透過部を残して周囲にメタライズ部が形成されたほぼ正6角形または円板状の透光性セラミックス製の板を接合する。また、この板をアルミニウムを含む酸化物(アルミナ、スピネル等)の焼結体とすることにより、光学的に等方性となり光が透過するときの偏光面の崩れを窓材の向きに関係なくなくすることができ、低コスト化が図れる。
【0018】
透光性セラミックスの中でも、アルミニウムを含む酸化物(アルミナ、スピネル等)の焼結体は、高強度であり、ホウ珪酸ガラスに比べて耐久性の高い窓材が可能となる。また、これらの酸化物セラミックスは、鑞付けに必要なメタライズ(Ti/Pt/Au)などが可能であるという利点がある。
更に、窓材として最も重要な光透過特性に関しても、これらの酸化物セラミックスは、実用的な0.3mm付近の厚さにおいて、鏡面研磨加工とARコーティング(MgF等)により、95%以上、望ましくは98%以上の光透過率を得ることができる。
【0019】
上述した光半導体気密封止容器を用いて、その内部に光半導体素子を、外部に光ファイバーを接続することによって、光半導体モジュールを作製することができる。
【0020】
実施例1
光半導体気密封止容器は、底板をコバール、側壁材をコバール、光透過型の窓の筒状のパイプにもコバールを用いて銀鑞付けにより作製した。これに端子部はコバールのピンを低融点ガラスにて封止した構造のものに、ニッケルめっき及び金めっきを施した。側壁部には透光性セラミックス(スピネル焼結体)製板材をはめ込むために、側壁に対して6度以上の角度面を有するパイプを、6度以上の角度面が偏光面に対しての傾きが5度以内になるように銀鑞付けした。実際には側壁に円筒形の孔を開けて、円柱形のパイプをはめ込み、カーボン治具で位置合わせした。窓材にはMgFのARコートを施した。これはTiOとSiOの多層膜でも良い。透光性セラミックス上のメタライズは、透光性セラミックス側からTi/Pt/Auである。透光性セラミックス(スピネル焼結体)の加工はダイシングを用いた。この時にダイシングラインにメタライズを施さない事により、メタライズ強度を向上させた。透光性セラミックス(スピネル焼結体)はAuSn鑞材で筐体に封止接合した。本窓材の使用により窓材のコストを半減させることができた。
【0021】
ここで、窓材に透光性セラミックス(スピネル焼結体)の微小な結晶性の集合体の多結晶体を用いると光学的に等方性のために、複屈折と角度の関係がなくなり、どの角度でも偏光消光比は−30dB以下であった。このために、パイプの高度な位置合わせが必要無くなった。このために、歩留まり率を10%向上させることができ、更に低コスト化が図れた。
【0022】
実施例2
実施例1の窓構造を有する光半導体モジュールにPANDAファイバーを接続することによって、直線偏光を高度に保ったまま光を伝送することができた。この場合には、光ファイバーアンプに必要な複数の励起光を偏波合成して、効率よく光ファイバーアンプを使用することが可能となった。また、アイソレーターの構造を簡略化することが可能で、低コスト化も可能となった。
【0023】
実施例3
実施例1の容器を用いて異方性光学材料であるLNで変調機モジュールを作製した。作製した変調機モジュールはマッハテンダー型の素子を使用した。窓の偏光消光比が小さいために、LN変調機内部で生じる複屈折を抑えることが可能で、S/N比の良い光信号を得ることができた。
【0024】
実施例4
半導体レーザに実施例1の窓構造を使用すると、窓の外に接続したアイソレーターでの光損失を抑制することができた。
【0025】
実施例5
半導体光増幅器では偏波依存が問題であったが、λ/4板によって直線偏光とした後で、実施例1の構造の窓を有する筐体を使用したモジュールでは増幅特性を向上させることができた。このことは、半導体増幅器を利用した波長変換素子や高速動作可能な光−光スイッチング素子のインサーションロスを低減させ、S/N比の良い信号光を得ることができた。
【0026】
実施例6
実施例1の容器の外側に選択的に特定の波長を反射する反射機構、例えばファイバーグレーティングを設けることにより、筐体内部の光素子と共振させることができた。この時に窓の複屈折によって生じる発振モードの乱れを抑制することが可能で、更に波長選択性に優れた光半導体モジュールが提供できる。また、ロスも小さくなり、光強度が増した。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、製造が容易で低コストであり、信頼性が高く、偏光面の崩れない窓構造を有した光半導体気密封止容器を提供することができる。また、本窓を採用した光半導体気密封止容器を使用すると光強度が大きく、またモード安定性に優れた光半導体モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体気密封止容器の光透過窓の一例を示す概略の斜視図である。
【図2】本発明の窓材となる透光性セラミックス(アルミナ又はスピネル)製の板を示す平面図である。a:6角形窓材、b:円板形窓材である。
【符号の説明】
1 気密封止容器
2 容器側壁
3 筒状部
4 透光性セラミックス(アルミナ又はスピネル)製の板(窓材)
5 底板

Claims (6)

  1. 容器側壁の筒状部に半田鑞材で接合しており、光透過面が容器底板の垂線から6度以上傾いた光透過窓を有する光半導体気密封止容器であって、該窓材が中央に円形の光透過部を残して周囲にメタライズ部が形成された透光性セラミックス製の板からなることを特徴とする光半導体気密封止容器。
  2. 前記板がアルミニウム(Al)を含む酸化物の焼結体であることを特徴とする請求項1記載の光半導体気密封止容器。
  3. 前記焼結体が、透光性アルミナ(Al23)又は透光性スピネル(MgAl24)を主成分とする焼結体であることを特徴とする請求項2記載の光半導体気密封止容器。
  4. 前記窓材中央の光透過部には反射防止コーティングが施され、光透過率が95%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体気密封止容器。
  5. 前記窓材の形状が円板又は、ほぼ正六角形の板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光半導体気密封止容器。
  6. 容器側壁の筒状部に半田鑞材で接合しており、光透過面が容器底板の垂線から6度以上傾いた光透過窓を有する光半導体気密封止容器が、該窓材が中央に円形の光透過部を残して周囲にメタライズ部が形成された透光性セラミックス製の板からなり、この内部に光半導体素子を、外部に光ファイバーを有することを特徴とする光半導体モジュール。
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