JP3701374B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マレイミド系共重合体とメタクリル系共重合体とからなり、透明性が優れ、さらに成形性、低吸水性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、メタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル系樹脂は、耐候性、光学的性質に優れ、かつ、機械的性質、熱的性質および成形加工性においても比較的バランスのとれた各特性を有しているので、これら各特性を生かして自動車部品、電気機器部品、銘板、看板、照明用カバー、装飾用樹脂板、または雑貨品等の多くの分野で実用化されている。
【0003】
しかしながら、上記従来のメタクリル系樹脂は、耐熱性については必ずしも十分ではないので、高温での形状安定性が要求される分野では、その使用が制限されている。このことから、上記メタクリル系樹脂における耐熱性向上に対する要求には根強いものがある。
【0004】
そこで、メタクリル系樹脂の耐熱性を改善させる方法としては、例えばメタクリル酸メチルとN−アリールマレイン酸イミドとを共重合させる方法(特公昭43−9753号公報参照)、メタクリル酸メチル、α−メチルスチレンおよび無水マレイン酸イミドとの共重合体と、メタクリル酸メチル共重合体とをブレンドする方法(特開昭59−122536号公報参照)が開示されている。
【0005】
また、一般に、メタクリル系樹脂で問題とされる吸湿性や吸水性についても、改善方法が提案されており、例えば、メタクリル酸メチルと、シクロヘキシルメタクリレートとの共重合体(特開昭57−186241号公報参照)が知られている。
【0006】
さらに、耐熱性を改善させたメタクリル系樹脂として、特開昭62−270648号公報では、メチルメタクリレートとN−シクロヘキシルマレイミドと芳香族ビニル化合物からなる単量体混合物の共重合体(I)と、メタクリル系樹脂とからなる耐熱性メタクリル樹脂組成物が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の各公報に記載されたメタクリル系樹脂では、耐熱安定性や耐熱性が不十分であったり、吸水性があまり改善されていなかったりし、これら物性のバランスのよい、広範囲の分野に容易に用いることができるメタクリル系樹脂の熱可塑性樹脂組成物が得られていないという問題を生じている。
【0008】
また、上記従来の特開昭62−270648号公報に記載されたメタクリル系樹脂の製造方法では、耐熱性をさらに向上させるために、N−シクロヘキシルマレイミドの使用量を増加させると、得られたメタクリル系樹脂組成物において、白濁を生じる等の光学的性質が劣化するという問題を生じている。
【0009】
本発明の目的は、上記各問題点を解決した、光学的性質、機械的性質に優れ、さらに耐熱性、低吸水性、成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以上の課題を解決するために、メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜90重量%、N−シクロヘキシルマレイミド(B)10〜50重量%、芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%、および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)30〜65重量%、芳香族ビニル類単量体(C)35〜70重量%、および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなる共重合体(2)とからなることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、耐熱性を改善することに有効なN−シクロヘキシルマレイミド(B)を10〜50重量%というように多量に用いて共重合させたマレイミド系共重合体(1)と共重合体(2)とを含む熱可塑性樹脂組成物においても、芳香族ビニル類単量体(C)を35〜70重量%含む各単量体から得られた共重合体(2)を含むことから、メタクリル系樹脂が有する優れた透明性等の光学的性質、機械的性質および成形性と、N−シクロヘキシルマレイミド(B)による耐熱性とを確保しながら、従来より、低吸水性を実現できるものとなっている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜90重量%、N−シクロヘキシルマレイミド(B)10〜50重量%、より好ましくは19〜50重量%、必要に応じて、芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%、並びに、必要に応じて、メタクリル酸エステル類単量体(A)、N−シクロヘキシルマレイミド(B)および芳香族ビニル類単量体(C)と共重合可能な、それらと異なる他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)40〜90重量%、芳香族ビニル類単量体(C)10〜60重量%、および、必要に応じて、上記単量体(D)0〜20重量%を共重合してなる共重合体(2)とからなる。
【0014】
上記熱可塑性樹脂組成物では、上記各単量体、特にN−シクロヘキシルマレイミド(B)の配合比によって、耐熱性に優れると共に、光学的性質、低吸水性および成形性にも優れたものとなっている。
【0015】
上記のN−シクロヘキシルマレイミド(B)は、本願発明の熱可塑性樹脂組成物中における、単量体単位の含有量として13.0重量%を越えるように設定されていることが好 ましい。このようにN−シクロヘキシルマレイミド(B)の配合量を多くしても、上記各熱可塑性樹脂組成物における各単量体単位の配合比では、優れた光学的性質、低吸水性および成形性を維持しながら、高い耐熱性が得られるものとなっている。
【0016】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜80重量%、N−シクロヘキシルマレイミド(B)20〜50重量%、芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%と、並びに、メタクリル酸エステル類単量体(A)、N−シクロヘキシルマレイミド(B)および芳香族ビニル類単量体(C)と共重合可能な、それらと異なる他の単量体(D)0〜20重量%からなる各単量体成分(a)を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)40〜90重量%、芳香族ビニル類単量体(C)10〜60重量%、および上記単量体(D)0〜20重量%からなる各単量体成分(b)を共重合してなる共重合体(2)とを含むものであってもよい。
【0017】
本願発明の熱可塑性樹脂組成物が、高い全光線透過率、低い濁度(Haze)、低い黄変度(YI)等の優れた光学特性を発揮するために、マレイミド系共重合体(1)と共重合体(2)とは、互いに熱力学的に相溶なものであることが好ましい。
【0018】
マレイミド系共重合体(1)は、その重量平均分子量が50,000〜300,000の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量が上記範囲を越える場合、成形加工性が悪くなることがあり、また、上記範囲を下回るときには、耐熱性、機械的性質が悪くなる等の欠点を生じる。
【0019】
上記マレイミド系共重合体(1)による成型品の黄変度が3.0以下、さらに好ましくは2.0以下であることが望ましい。また、各単量体成分(a)に対し、芳香族ビニル類単量体(C)を含むことが望ましい。
【0020】
このようなマレイミド系共重合体(1)は、任意の重合法にて重合して得られるが、N−シクロヘキシルマレイミド(B)の単量体単位での含有量が、各単量体成分(a)の全量に対し、20重量%を越える場合、上記重合法として、例えば懸濁重合法を用いると、上記マレイミド系共重合体(1)中に残存量が多くなることがあり、得られたマレイミド系共重合体(1)が着色して透明度が低下するおそれがある。また、乳化重合法を用いた場合では、乳化剤等が残存して、得られた樹脂組成物においてにごりが生じたり、熱着色が生じたりして、透明度が低下するおそれがある。
【0021】
一方、上記重合法として溶液重合法を用いると、N−シクロヘキシルマレイミド(B)の残存量を低減できて上記おそれを回避できるので、黄変度が3.0以下の共重合体(1)の製造方法としては、溶液重合法を用いることが望ましい。このような溶液重合法に用いられる有機溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアルデヒド、2−メチルピロリドン、メチルエチルケトン等の有機溶媒を適宜用いればよい。
【0022】
なお、本明細書では、重量%の表示は、その配合量の合計が常に100重量%となるように各単量体成分が配合されることを意味し、例えば、各単量体成分(a)において、メタクリル酸エステル類単量体(A)が80重量%配合されると、N−シクロヘキシルマレイミド(B)20重量%と一義的に設定され、例えば、メタクリル酸エステル類単量体(A)が70重量%配合されると、N−シクロヘキシルマレイミド(B)20重量%、単量体(D)10重量%というように一義的に設定されることを意味する。
【0023】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜95重量%、N−シクロヘキシルマレイミド(B)5〜50重量%、芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%、並びに、メタクリル酸エステル類単量体(A)、N−シクロヘキシルマレイミド(B)および芳香族ビニル類単量体(C)と共重合可能な、それらと異なる他の単量体(D)0〜20重量%からなる各単量体成分(a)を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)40〜90重量%、芳香族ビニル類単量体(C)10〜60重量%、および、必要に応じて、上記単量体(D)0〜20重量%からなる各単量体成分(b)を共重合してなる共重合体(2)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物中におけるN−シクロヘキシルマレイミド(B)の単量体単位と芳香族ビニル類単量体(C)の単量体単位との合計含有量が30重量%を越えるように設定されているものであってもよい。
【0024】
上記熱可塑性樹脂組成物では、このようなN−シクロヘキシルマレイミド(B)と芳香族ビニル類単量体(C)との合計含有量が、30重量%を越えていれば、メタクリル系樹脂が有する優れた光学的性質を維持しながら耐熱性および低吸水性を発揮することが可能となる。
【0025】
上記各熱可塑性樹脂組成物におけるマレイミド系共重合体(1)と、共重合体(2)の配合比(重量比)は、1/99から99/1までの範囲内が好ましく、さらに好ましくは5/95から95/5までの範囲内であり、必要な耐熱性に応じ、上記範囲内にて自由に配合比を代えても、光学的性質等の他の物性を損なわない。
【0026】
メタクリル酸エステル類単量体(A)としては、シクロヘキシル基、ベンジル基を含むアルキル基の炭素数1〜18を有するメタクリル酸エステル類であり、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸3−フェニルプロピル等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上の混合物を用いることができ、これらの中ではメタクリル酸メチルが好ましい。
【0027】
N−シクロヘキシルマレイミド(B)を用いることによって所望の耐熱性および光学的性質を付与することができる。
【0028】
芳香族ビニル類単量体(C)としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、イソプロペニルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上の混合物を用いることができ、これらの中で、特にスチレンが好ましい。
【0029】
単量体(D)としては、不飽和ニトリル類;シクロヘキシル基、ベンジル基を含むアルキル基の炭素数1〜18を有するアクリル酸エステル類;オレフィン類;ジエン類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;フッ化ビニル類;プロピオン酸アリル等の飽和脂肪酸モノカルボン酸のアリルエステル類またはメタクリルエステル類;多価(メタ)アクリレート類;多価アリレート類;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸類等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
前記不飽和ニトリル類としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等を挙げることができる。前記アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等を挙げることができる。
【0031】
前記のオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン等を挙げることができる。前記ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。前記ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等を挙げることができる。前記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。前記フッ化ビニル類としては、フッ化ビニリデン等を挙げることができる。
【0032】
前記多価(メタ)アクリレート類としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールトリ、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジもしくはトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0033】
前記の多価アリレート類としては、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。前記のグリシジル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。前記の不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、あるいはそれらの半エステル化物や無水物を挙げることができる。
【0034】
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の一例について説明すると、メタクリル酸エステル類単量体(A)とN−シクロヘキシルマレイミド(B)とを少なくとも含む各単量体成分(a)を、好ましくは溶液重合によって共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)と、芳香族ビニル類単量体(C)とを少なくとも含む各単量体成分(b)を共重合してなる共重合体(2)とを混合して熱可塑性樹脂組成物を得る方法が好ましい。
【0035】
上記の方法によれば、マレイミド系共重合体(1)において用いるN−シクロヘキシルマレイミド(B)を、20重量%を越えて用いても、溶液重合を用いたことによって、上記マレイミド系共重合体(1)におけるN−シクロヘキシルマレイミド(B)の残存量を軽減できて、残存N−シクロヘキシルマレイミド(B)による光学的性質の低下を抑制できる。
【0036】
また、上記方法では、熱可塑性樹脂組成物中のN−シクロヘキシルマレイミド(B)の単量体単位としての使用量を、13重量%を越えるように多く設定しても、共重合体(2)を得るための各単量体成分において、芳香族ビニル類単量体(C)を配合したので、上記マレイミド系共重合体(1)と共重合体(2)とを混合した際、得られた熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹脂が有する光学的性質を保持しながら、N−シクロヘキシルマレイミド(B)に起因する耐熱性を付与でき、かつ、優れた低吸水性を発揮できるものとなる。
【0037】
【実施例】
(参考例1)
本発明を、参考例1に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下において、「部」の記載は、重量部を示す。
【0038】
まず、内容量20リットルの攪拌機付きステンレス製重合槽に、15.75部のメタクリル酸メチル、6.25部のN−シクロヘキシルマレイミド、25部のトルエンを仕込み、攪拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、0.015部のt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを加えた。
【0039】
続いて、上記重合槽に対し、15.75部のメタクリル酸メチル、6.25部のN−シクロヘキシルマレイミド、6部のスチレン、25部のトルエン、0.081部のt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの混合液を、予め窒素ガスでバブリングしておき、3.5時間かけて滴下しながら、重合温度110℃で溶液重合法による重合反応を7時間行った。
【0040】
この重合液を、シリンダー温度240℃にてコントロールしたベント付きの30mmφの2軸押出機に供給し、ベントロより真空脱気し、押し出されたストランドをペレット化して、マレイミド系共重合体(1)としての共重合体1−1を得た。その共重合体1−1の組成を表1に示した。また、上記共重合体1−1のガラス転移温度(Tg)、分子量(Mw)および黄変度(YI)を、下記の測定方法にてそれぞれ測定し、それらの結果を表1に合わせて示した。
【0041】
次に、80部のメタクリル酸メチル、20部のスチレンを用いて、上記の重合操作と同様に重合を行い、共重合体(2)としての共重合体2−1を得た。その共重合体2−1の組成を表1に示した。また、上記共重合体2−1のガラス転移温度(Tg)、分子量(Mw)および黄変度(YI)を、下記の測定方法にてそれぞれ測定し、それらの結果を表1に合わせて示した。
【0042】
続いて、20部の上記共重合体1−1と、80部の上記共重合体2−1とを、オムニミキサーにて混合した後、シリンダー温度240℃にコントロールした30mmφの2軸押出機を用いて溶融混練し、本参考例1の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(以下、MFRという)が、230℃、3.8kgの測定条件において、4.2g/10分と流動性に優れていた。
【0043】
この熱可塑性樹脂組成物をシリンダー温度240℃、金型温度60℃にてコントロールした射出成形機を用いて成形し、各物性測定用の試験片(50×50×3mm)を得た。この試験片の各物性を、下記の各評価方法にてそれぞれ測定した。それらの結果を表2に合わせて示した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
(1) ガラス転移温度(Tg)
上記試験片のガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(理学電気(株)製、商品名:DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、α−アルミナをリファレンスとして用いて、常温より220℃まで昇温速度10℃/分で測定したDSC(Differential Scanning Colorimetry)曲線から中点法にて算出された。
【0047】
(2) 分子量(Mw)
上記試験片の分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により、分子量測定用の標準ポリスチレン換算にて、測定した重量平均分子量として算出された。
【0048】
(3) 光学的性質
上記試験片の全光線透過率および濁度(Haze)は、ASTM D1003に準じて測定され、上記試験片の黄変度(YI)は、JIS K7103に準じて測定された。
【0049】
(4) 吸水率
上記試験片の吸水率は、ASTM D570に準じ、23℃/水中での1000時間以上経過した後の飽和吸水率にて測定された。
【0050】
(5) MFR(メルトフローレート)
上記試験片のMFRは、ASTM D1238に準じ、230℃、3.8kgfの条件にて測定された。
【0051】
(6) 熱可塑性樹脂組成物中のN−シクロヘキシルマレイミド(B)成分の単量体単位としての含有量(重量%)
N−シクロヘキシルマレイミド(B)成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物に対する、元素分析による窒素含有量N(重量%)の測定と、赤外吸収スペクトル(IR)測定とに基づいて測定された。
【0052】
(実施例2〜7)
次に、本発明の実施例を、実施例2〜7として説明すれば、以下の通りである。
【0053】
各実施例2〜7では、表1に記載したマレイミド系共重合体(1)としての共重合体1−2の組成、および共重合体(2)としての各共重合体2−2ないし4の組成となるように各組成を配合した以外は参考例1と同様の操作条件にて、各共重合体1−2、2−2および2−3をそれぞれ調製した。それらの各物性値を参考例1と同様に測定し、それらを表1に合わせて示した。
【0054】
続いて、各共重合体1−1、1−2、2−1、2−2、2−3を用い、それらを表2に記載した配合量にて、参考例1と同様に調製して各実施例2〜7の各熱可塑性樹脂組成物をそれぞれ得た。上記の各熱可塑性樹脂組成物の各物性値を参考例1と同様に測定し、それらの結果を表2に合わせて示した。
【0055】
次に、本発明の特徴点を示すための各比較例を、各比較例1および2として説明すると、以下の通りである。
【0056】
(比較例1)
この比較例1では、表1に記載の共重合体2−4の組成を用いた他は、参考例1と同様に操作して比較組成物(1)を得た。上記共重合体2−4および上記比較組成物(1)の各物性を、参考例1と同様に測定し、それらの結果を表1および表2に合わせて示した。なお、比較組成物(1)では、そのTgを測定した際、表2に示すように、Tgが2点観測されたことから、熱力学的に非相溶な熱可塑性樹脂組成物となっており、光学的性質が著しく劣っていることが判る。
【0057】
また、比較組成物(1)のMFRを測定した結果、230℃、3.8kg荷重の測定条件において、比較組成物(1)のMFRが2.1g/10分であり、上記比較組成物(1)の流動性も劣っていることが判った。
【0058】
(比較例2)
この比較例2では、表1に記載の組成を有するメタクリル系樹脂を共重合体として用いた他は、参考例1と同様に操作して比較組成物(2)を得た。上記メタクリル系樹脂および比較組成物(2)の各物性を、参考例1と同様に測定し、それらの結果を表1および表2に合わせて示した。
【0059】
比較例1の結果から明らかなように、共重合体(2)を得るための各単量体成分中における芳香族ビニル類単量体であるスチレンの含有量が70重量%を越えると、上記共重合体(2)とマレイミド系共重合体(1)との相溶性が低下して、上記共重合体(2)とマレイミド系共重合体(1)とから得られた熱可塑性樹脂組成物において、著しい光学的性質の低下が見られた。このことから、共重合体(2)を得るための各単量体成分中における芳香族ビニル類単量体の含有量は70重量%以下が好ましいことが判る。
【0060】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、表2から明らかなように、例えば光ディスク等の光学材料の基材として用いる場合のように透明性が必要な素材として用いても、優れた光学的性質を有することが判る。その上、各実施例の熱可塑性樹脂組成物は、黄変度が低いことから、優れた光学的性質を有し、かつ、耐熱性を示す指標となるガラス転移温度が112℃以上という優れた耐熱性を備えていることが判る。
【0061】
さらに、各実施例の熱可塑性樹脂組成物は、吸水性試験の結果、比較例2の結果から明らかなように、特開昭62−270648号公報に記載の耐熱性メタクリル樹脂組成物に相当する比較例2の組成物と比べて、著しい低吸水性を示し、経時的な寸法安定性が改善されたものであることが判る。
【0062】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以上のように、メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜90重量%、N−シクロヘキシルマレイミド(B)10〜50重量%、芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%、および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、メタクリル酸エステル類単量体(A)30〜65重量%、芳香族ビニル類単量体(C)35〜70重量%、および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなる共重合体(2)とからなる。
【0063】
それゆえ、上記構成は、マレイミド系共重合体(1)におけるN−シクロヘキシルマレイミド(B)の使用量を10〜50重量%というように多く設定しても、共重合体(2)において、芳香族ビニル類単量体(C)を35〜70重量%となるように配合したので、上記マレイミド系共重合体(1)と共重合体(2)との相溶性を維持できる。
【0064】
このことから、上記マレイミド系共重合体(1)と共重合体(2)とを、例えば混合して含む熱可塑性樹脂組成物に対し、メタクリル系樹脂が有する光学的性質を保持しながら、N−シクロヘキシルマレイミド(B)に起因する耐熱性を付与でき、かつ、優れた低吸水性を発揮できるものとなる。
【0065】
したがって、上記構成では、透明性等の光学的性質、成形性、機械的性質および耐熱性といった優れた物性を確保しながら、優れた低吸水性を実現できるものとなっている。
【0066】
この結果、上記構成は、優れた物性と低吸水性とを実現できることから、電気機器部品としての光学用成形物、例えば光ディスクの材料として用いた場合、優れた物性を有する上記光学用成形物の経時的な寸法安定性を、低吸水性によって改善することが可能となり、上記光学用成形物の素材として好適に用いることができるという効果を奏する。
Claims (2)
- メタクリル酸エステル類単量体(A)50〜90重量%、
N−シクロヘキシルマレイミド(B)10〜50重量%、
芳香族ビニル類単量体(C)0〜20重量%、
および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなるマレイミド系共重合体(1)と、
メタクリル酸エステル類単量体(A)30〜65重量%、
芳香族ビニル類単量体(C)35〜70重量%、
および、共重合可能なその他の単量体(D)0〜20重量%を共重合してなる共重合体(2)とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - N−シクロヘキシルマレイミド(B)が、熱可塑性樹脂組成物中の単量体単位の含有量として13.0重量%以上となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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