JP3700465B2 - 塗型剤の塗布方法および塗布装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鋳型に対して塗型剤を塗布するための塗布方法および塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、互いに対向するように配置した鋳型間に形成された容積部内に金属溶湯を注入・充填して鋳造品を得る場合、鋳型内表面での湯廻りを良好にするため、あるいは溶湯凝固後の鋳造品取り出し時の離型を容易にするために、鋳込み前に予め鋳型内表面に塗型剤を塗布しておくのが一般的である。
例えば、坩堝内の金属溶湯の湯面を加圧エア等で加圧してストーク内の溶湯を押し上げ、この押し上げられた溶湯を鋳型キャビティ内に供給して鋳造する、所謂、低圧鋳造法では、上下の金型のうち下型側に湯口が設けられることが多く、溶湯温度が低下し易い上型側での良好な湯廻り性を確保するために、特に、上型の内面への塗型剤の塗布を適正に行うが重要である。
【0003】
また、鋳造完了後に上型を上昇させて型開きを行った際には、通常、得られた鋳造品は上型とともに上昇するのでこの鋳造品を上型から離型させる必要があるが、このときの離型性が良くない場合には、エジェクタピンの突き出し力をより大きく設定する必要があるので、エジェクタ機構が大掛かりとなり、また、鋳造品に損傷を与える惧れもある。従って、この点においても、上型の内面への塗型剤の塗布を適正に行うことが強く求められることになる。
かかる低圧鋳造法における鋳型(上型)内面への塗型剤の塗布方法に関連して、本願出願人らは、粉体塗型剤を上型内面に塗布するに際して、上型内表面に十分に付着しないで落下してしまった塗型剤を、再度上型内表面に付着させることができるようにし、塗型剤の付着効率を高めて適正な塗布が行えるようにした塗布方法を提案した(特開平9−225589号公報参照)。
【0004】
ところで、例えば自動車用エンジンのシリンダヘッドの鋳造を行う場合、上下の一対の金型に加えてシリンダヘッド側面に対応した鋳型面を形成する複数の側壁部が設けられる。上記従来公報に係るシリンダヘッドの鋳造装置では、これら側壁部は下型瓦側に砂壁として形成されていたが、これら側壁部を、金型として製作し、上下の主鋳型の開閉方向(上下方向)に略直交する方向(横方向)にスライド可能な可動側壁鋳型とすることは、一般に良く知られている。
このように、複数の側壁部を横方向にスライド可能な可動の側壁鋳型とする場合、かかる可動側壁鋳型の全て、あるいは少なくとも一部(例えば、側壁部が4面であれば、そのうちの少なくとも2面に対応する側壁鋳型)を下型側に支持させるように配置するのが、従来、一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、側壁鋳型をこのように配置した場合には、塗型剤を塗布する際に、上型の内面とは別途に側壁鋳型の内面への塗布作業を行う必要があるので、塗布作業を2回に分けて(つまり2工程で)行うことになり、非常に作業効率が低くなるという難点があった。
また、塗型剤を鋳型内面に塗布する場合、塗型剤の鋳型内表面への良好な付着性(密着性)を確保することが重要であるが、この塗型剤の付着性は鋳型温度によって影響を受けるので、塗布時の鋳型温度を適正に管理する必要がある。
【0006】
また、例えば上記シリンダヘッドの鋳造を行う際には、シリンダ部への給排気ポートやエンジン冷却水の通路(ウォータジャケット)およびエンジンオイルの通路(オイルジャケット)などの通路部に対応する中子を鋳型内に組み付けて鋳造が行われるが、この中子の組付作業と塗型剤の塗布作業はともに鋳型を対象として行う作業である。
従って、このように、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布と中子の組付とを行う場合には、これら両作業をタイミング良く行うことが、鋳造プロセス全体の生産効率を高める上で重要である。
【0007】
そこで、この発明は、可動側壁鋳型を備えた鋳型の内面に塗型剤を塗布するに際して塗布作業の効率を高め、また、塗型剤の鋳型内面への付着性を高め、あるいは、この塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを行う必要がある場合における鋳造プロセス全体の生産効率を高めることができるようにすることを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本願の請求項1の発明(以下、これを本願の第1の発明という。)に係る塗型剤の塗布方法は、互いに対向するように配設された第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とで密閉した容積部を形成し、第2主鋳型に設けた湯口から上記容積部内に溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する方法であって、上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持され、各側壁鋳型は、上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、これを本願の第2の発明という。)は、上記第1の発明において、上記第1主鋳型と第2主鋳型とが上下方向に接離可能に設けられ、これら主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、これを本願の第3の発明という。)は、上記第2の発明において、上記塗型剤塗布手段が上記第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布している間に、上記第2主鋳型への中子の組み付けが行われることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項4に係る発明(以下、これを本願の第4の発明という。)は、上記第3の発明において、上記塗型剤塗布手段は、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項5に係る発明(以下、これを本願の第5の発明という。)は、上記第1〜第4のいずれか一の発明において、上記第1主鋳型に、その温度に応じて該鋳型を冷却する型冷却手段を設け、第1主鋳型の型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項6に係る発明(以下、これを本願の第6の発明という。)は、上記第1〜第5のいずれか一の発明において、上記第1主鋳型に電極を接続し、第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を静電塗布する
ことを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項7に係る発明(以下、これを本願の第7の発明という。)は、上記第1〜第6のいずれか一の発明において、第1および第2の主鋳型が型開きされ且つ各側壁鋳型が型開きされた状態で、前サイクルで得られた鋳造品を取り出し、次いで、上記各側壁鋳型を型閉じし、鋳型温度が冷却制御された下で各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するとともに、上記第2主鋳型に中子を組み付け、その後、第1および第2主鋳型を閉じ合わせ、鋳造キャビティ内に金属溶湯を注入・充填して該溶湯を加圧するとともに、各鋳型を所定の温度範囲に冷却制御し、その後、第1および第2の主鋳型を型開きし且つ各側壁鋳型を型開きして鋳造品を取り出すことを特徴としたものである。
【0015】
また、本願の請求項8の発明(以下、これを本願の第8の発明という。)に係る塗型剤の塗布装置は、上下方向に接離可能に設けられた第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とを備え、これら主鋳型と側壁鋳型とで形成された密閉した容積部内に、上記第2主鋳型に設けた湯口から溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する塗布装置であって、上記第1および第2の主鋳型が離間した状態で両者の型開き空間内に移動し得る塗型剤塗布手段が設けられるとともに、上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持されて上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型が上記型閉じ状態にセットされた下で、上記両主鋳型間に位置する塗型剤塗布手段が、各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0016】
更に、本願の請求項9に係る発明(以下、これを本願の第9の発明という。)は、上記第8の発明において、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドの鋳造に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本実施の形態に係る鋳造装置の正面説明図および側面説明図である。この鋳造装置Aは、所謂、低圧鋳造プロセス用のもので、下型DLおよび上型DUがそれぞれ下プラテン1および上プラテン2に取り付けられ、該上プラテン2は下プラテン1に対して上下方向に駆動される。つまり、上型DUは下型DLに対して上下方向に移動でき、これにより両者が接離可能(両者の型合わせ面どうしが当接した型閉じ状態と両者が離間した型開き状態とを選択的に取り得る)とされている。尚、後で詳しく説明するように、上記上型DUには、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型が取り付けられている。
【0018】
上記下プラテン1の下側方には、鋳造時に金属溶湯を供給するための保持炉FHが配設され、溶湯は下型DL側から供給されるようになっている。本実施の形態では、シリンダヘッド鋳造用の材料として、例えばアルミニウム(Al)合金が用いられ、上記保持炉FH内にはAl合金の溶湯が貯えられる。この保持炉FHは、好ましくは台車4(保持炉台車)上に固定されており、この保持炉台車4を駆動することにより必要に応じて下プラテン1に対して移動できるようになっている。尚、上記保持炉FHの内部構造等およびかかる保持炉FHを用いて行う低圧鋳造法の概略については後述する。
【0019】
上記鋳造装置Aには、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたときに該型開き空間K内に進退出可能な2つの台車BC,BPが備えられている(図2においては、図面の複雑化を回避するために、その図示は省略されている)。
第1の台車BPは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLの湯口への金網のセットと上型DUからの鋳造製品の取り出しとを行うもので、以下、適宜、製品取り出し台車と称する。また、第2の台車BCは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLへの中子等のセットと上型DUへの塗型剤の塗布とを行うもので、以下、適宜、中子台車と称する。また、これら第1および第2台車BP及びBCは、共通のレール3上を走行できるようになっている。尚、これら第1および第2台車BP及びBCの構造・作動等の詳細については後述する。
【0020】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた保持炉FHについて説明する。
図3は、保持炉FHの内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。この図に示すように、上記保持炉FHは、上部が開放された箱状に形成され、その内部には溶湯(金属溶湯)を貯える坩堝5が担台5B上に支持された状態で収納されている。保持炉FHの内壁面には、坩堝5内の溶湯を所定温度に加熱保持するヒータ8が配設されている。
また、保持炉FHの上部開放口は着脱可能な炉蓋7によって気密状に閉塞されており、これにより、保持炉FHの内部に上記坩堝5を覆う気密状の加圧室Rpが形成されている。
【0021】
上記炉蓋7の中央部には貫通孔7hが形成され、この貫通孔7hにはストーク6が嵌装されている。このストーク6は、その上側がデストリビュータ9に連通する一方、その下部が坩堝5内の溶湯に浸漬せしめられている。上記デストリビュータ9は、鋳型Dに複数の湯口Diが設けられている場合に、坩堝5からの溶湯を各湯口Diに分配して供給するもので、保持炉FHの上面(つまり炉蓋7の上面)と鋳型Dの下面(つまり下型DLの下面)との間に配置される。尚、本実施の形態では、下型DLに複数(例えば4個)の湯口Diが設けられている。
上記鋳型Dは、後述するように、上型DUと下型DLと複数のサイド型DSとで構成され、これら各型のこれら上型DU,下型DL及び各サイド型DSの各内面により形成される鋳造キャビティМcの内部には、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが配置されている。このキャビティМcは、下型DLに形成された湯口Diを介してデストリビュータ9の内部に連通している。
【0022】
上記保持炉FHには、加圧室Rpに加圧エアを供給するエア供給路81が設けられており、このエア供給路81を介して供給される加圧エアの圧力が坩堝FH内の溶湯の湯面に作用することによりストーク6内の溶湯が押し上げられる。そして、この押し上げられた溶湯は、ストーク6からデストリビュータ9及び湯口Diを介して、鋳型Dの鋳造キャビティМc内に供給・充填されるようになっている。
上記エア供給路81には加圧エアの供給及び停止の切換えを行う開閉式給気弁82が介設されると共に、この開閉式給気弁82よりも上流側のエア供給路81には、加圧エアの圧力を調整する圧力制御弁83が介設されている。また、この圧力制御弁83にはその開度を制御するサーボ機構84が付設されており、これら圧力制御弁83及びサーボ機構84により、坩堝FH内の溶湯の湯面に加えられる圧力の加圧パターンを変化させる圧力可変制御手段85が構成されている。
【0023】
一方、鋳型Dの上型DUにはリング状の絶縁体86が挿着され、この絶縁体86の両側における上型DUの各々の上部に、鋳造キャビティМc内に溶湯が充填されたときに導通する2本の配線87が接続されている。更に、両配線87は、これら両配線87が互いに導通したときに充填信号を送出する溶湯充填検知回路88に電気的に接続されている。上記絶縁体86、配線87及び溶湯充填検知回路88によって、溶湯のキャビティМc内への充填を検出する充填検知センサ89が構成されている。
また、上記溶湯充填検知回路88は、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させる加圧パターン制御手段90に電気的に接続され、該加圧パターン制御手段90には、溶湯の鋳造キャビティМc内への供給開始後、予め設定された所定時間が経過したときに経過信号を送出するタイマ94が電気的に接続されている。上記加圧パターン制御手段90は、例えば所謂CPU(中央演算処理装置)を内蔵しており、充填検知センサ89からの充填信号またはタイマ94からの経過信号に基づいて、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させるようになっている。
【0024】
図4は、上記鋳造装置Aの加圧制御系統の概略を示すブロック構成図である。この図に示すように、上記加圧制御系統には、開閉式給気弁82がОN(オン)操作されて加圧室Rpへの加圧エアの供給が開始されたときにオン信号を出力する加圧開始信号スイッチ95と、溶湯が鋳造キャビティМc内に充填されたとき充填検知センサ89より送出される充填信号によりオン信号を出力する充填信号スイッチ96と、鋳造が完了したときにオン信号を出力する鋳造完了スイッチ97とが設けられ、これら各スイッチ95,96及び97は加圧パターン制御手段90に電気的に接続されている。
上記タイマ94は、この加圧パターン制御手段90に接続されると共に、加圧開始信号スイッチ95及び鋳造完了スイッチ97が繋ぎ込まれている。そして、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると起動すると共に、起動後、所定時間t2が経過するとオン信号を出力し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けるとリセットするよう設定されている。
【0025】
上記加圧パターン制御手段90は、より好ましくは、第1および第2の二つのCPU91及び92を有している。
第1CPU91は、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると圧力可変制御手段85を制御して加圧室Rp内の圧力を急速に上昇させる一方、加圧開始後、所定時間t1が経過した後は圧力上昇速度を遅くし、充填信号スイッチ96又はタイマ94の何れかからオン信号を受けるとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第1加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
【0026】
また、第2CPU92は、充填信号スイッチ96又はタイマ94のいずれかからオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を上昇させ、この圧力が所定値に達するとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第2加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
このように加圧パターンが互いに異なる第1,第2の加圧信号をそれぞれ出力する第1,第2のCPU91,92と加算回路93とで加圧パターン制御手段90が構成されている。上記加算回路93は、第1CPU91からの第1加圧信号と第2CPU92からの第2加圧信号とを加算する回路であり、その加算信号を上述のサーボ機構84に送出するようになっている。
【0027】
次に、上記低圧鋳造装置Aで用いられる鋳型Dについて説明する。
図5は、上型DU側を型合わせ面側から(つまり下側から)見てその構造を模式的に示した底面説明図である。上型DUは、前述のように、下型DLに対して上下方向に接離可能に設けられ、この上型DUに、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3)が取り付けられている。また、本実施の形態では、鋳型Dは、より好ましくは、1回の鋳造工程で2個の鋳造品得るようにした、所謂、2個取り用の鋳型とされ、図5から分かるように、上型DUにおいても、1つの型盤110に左右対称に2つの型部が形成されている。
【0028】
これら左右の各型部には、その中央部に複数(本実施の形態では4個)のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数(本実施の形態ではそれぞれ5個)のボルト孔形成用の突出部112が設けられている。上記プラグ孔形成用の突出部111は、シリンダヘッドに点火プラグを挿入させる孔部を形成するためのものであり、また、ボルト孔形成用の突出部112はシリンダヘッドにボルト孔を形成するためのものである。
尚、上記各鋳型(上型DU,下型DL及びサイド型)は、いずれも例えば鋼製とされている。
【0029】
上型DUには、複数(本実施の形態では合計6個)のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3がそれぞれ2組)が取り付けられ、これら各サイド型DS1,DS2及びDS3にはそれぞれシリンダ装置121,122及び123(サイド型駆動シリンダ)が付設されている。
そして、これらシリンダ装置121,122及び123を駆動することによって、各サイド型DS1,DS2及びDS3をそれぞれ上型DUの型盤110に沿って(つまり、上型DUと下型DLの型閉じ方向と略直交する方向に)スライドできるようになっている。
【0030】
これらサイド型DS1,DS2及びDS3は、後述するように鋳造時および塗型剤塗布時など、鋳型Dを閉じて鋳造キャビティを形成する際には、図5に示されるように、それぞれ内方にスライド駆動されて閉じ合わされる。一方、鋳造完了後に鋳造品を鋳型D内から取り出す際には、上型DUを上昇させて上下の鋳型DU,DLを型開きした後、これらサイド型DS1,DS2及びDS3も、それぞれ外方にスライド駆動されて型開きされるようになっている。
【0031】
尚、後述するように、下型DLについても、上型DUに対応して1つの型盤130に左右対称に2つの型部が形成されており、その左右の型部の中央には、両型部を仕切るようにして砂壁138が取り付けられる。この砂壁138は、より好ましくは、下型DLに中子CО,CW及びCPを組み付ける際に同一の組付工程で下型DLに組み付けられる。
そして、このように、下型DLに中子CО,CW及びCP並びに砂壁138を組み付けた状態で、上型DUを下降させて上下の鋳型DU,DLを閉じ合わせると、上型DUの左右の型部の中央には、下型DLに組み付けられた砂壁138が位置して、左右の各シリンダヘッドの鋳造キャビティの側壁の一つが形成されることになる。すなわち、各シリンダヘッドの鋳造キャビティは、上型DUに設けられた3個の可動サイド型DS1,DS2及びDS3と、下型DLにセットされた固定砂壁130とで、その側面に対応した鋳型面(側壁面)が形成されるようになっている。
【0032】
図6は、下型DLの平面説明図である。尚、この下型DLについても、1つの型盤に左右対称に2つの型部が形成されているが、図6においては、片側(右側)の型部のみを図示し、左右が対象である点を除いてはこれと全く同一に形成されている他側(左側)の型部については、その詳細な図示は省略されている。
この下型DLには、図7にも示すように、左右の各型部に、後述するように中子CО,CW及びCPを組み付けるための巾木受け部が設けられている。すなわち、各型部の長手方向に所定間隔を隔てて配置された第1および第2の巾木受け部131及び132と、各型部の長手方向に沿って延びるように互いに所定間隔を隔てて配置された第3および第4の巾木受け部133及び134とが設けられている。
【0033】
上記第1および第2の巾木受け部131及び132は、前述のウォータジャケット中子CWを組み付けるための巾木受け部であり、該ウォータジャケット中子CWの巾木を受け合うものである。また、上記第3および第4の巾木受け部133及び134は、前述のポート中子CPの巾木を組み付けるための巾木受け部であり、該ポート中子CPの巾木を受け合うものである。
以上の巾木受け部131〜134を用いて、図8に詳しく示すように、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが、下型DLに対して組み付けられる。
【0034】
以下、これら各中子CО,CW及びCPの下型DLへの組付方法について説明する。
本実施の形態では、共にシリンダヘッドの長手方向に延びるように、且つ、上下に配置されるオイルジャケット中子CОとウォータジャケット中子CWについて、下側に配置されるウォータジャケット中子CWは、その両端部に設けられた第1および第2の巾木部141及び142を介して下型DLに組み付けられ、オイルジャケット中子CОは、その両端部に設けられた巾木143及び144が上記ウォータジャケット中子CWに支持されることにより下型DLに組み付けられている。
尚、本明細書において「巾木」というときは、中子本体部と一体に設けられたもの、及び別体に設けて中子本体と組み合わせて用いられるもののいずれをも含むものとする。
【0035】
すなわち、図11に示すように、下側にセットされるウォータジャケット中子CWは、その両端部に第1及び第2の巾木部141及び142が設けられ、各巾木部141,142には、下方に開口する凹状の第1および第2の係合部141h及び142hがそれぞれ形成されている。一方、下型DLの第1および第2の巾木受け部131及び132には、上方に突出する凸状の第1および第2の巾木係止部131a及び132aがそれぞれ形成されている。そして、第1および第2の巾木部141及び142の各係合部(第1および第2の係合部141h及び142h)を第1および第2の巾木受け部131及び132の各巾木係止部(第1および第2の巾木係止部131a及び132a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、ウォータジャケット中子CWが下型DLに組み付けられている。
【0036】
また、上側にセットされるオイルジャケット中子CОについても、その両端部に巾木部143及び144(第3および第4巾木部)が設けられ、各巾木部143,144には、ウォータジャケット中子CWの場合と同様の下方に開口する凹状の第3および第4の係合部143h及び144hがそれぞれ形成されている。一方、ウォータジャケット中子CWの第1および第2の巾木部141及び142の上面には、上方に突出する凸状の第3および第4の巾木係止部141a及び142aがそれぞれ形成されている。
【0037】
そして、第3および第4の巾木部143及び144の各係合部(第3および第4の係合部143h及び144h)を第1および第2の巾木部141及び142の上面に形成された各巾木係止部(第3および第4の巾木係止部141a及び142a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、オイルジャケット中子CОが、ウォータジャケット中子CWの各巾木部141及びB142を介して下型DLに組み付けられている。
尚、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際には、上記オイルジャケット中子CОの巾木部143及び144の上面側に、上型DUと共に下降して来たサイド型DS1及びDS2の上内面が当接するようになっている。
【0038】
このように、2本の長尺状の中子CW,CОのうち、上側に配置されるオイルジャケット中子CОはその巾木143及び144が、下側に配置されるウォータジャケット中子CWの巾木141及び142に支持されることによって下型DLに組み付けられているので、両中子CW,CОは互いの巾木を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられることになり、両者CW,CОをそれぞれ個別に鋳型に組み付ける場合に比べて、両中子CW,CОの軸芯間の距離を極めて安定して一定値に保つことができる。これにより、各中子CW,CОに対応する通路(ウォータジャケット及びオイルジャケット)間の肉厚管理を確実に行うことができるのである。
【0039】
また、かかる構成を採用することにより、予め両中子CW,CОを一体的に組み合わせておき、この組み合わせた中子(CW+CО)を下型DLに組み付けるようにすることも可能になり、中子組付工数を削減でき、また、自動組付を行う場合にあっては、アクチュエータの数も少なくて済み、中子組付装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0040】
更に、本実施の形態では、図12及び図13に詳しく示すように、上記第1係合部141hの内面と第1巾木係止部131aの外面とは、その形状および寸法が実質的に略同じになるように設定されており、第1係合部141hは第1巾木係止部131aに対して、その全面(テーパ面を含めて4面)について隙間無く、従って、全面について移動不能に係合するようになっている。
また、上記第2巾木係止部132aは、中子CWの長手方向についてのみ、その凸部の厚さ寸法が第2係合部142hの凹部幅よりも所定量だけ小さく設定され、かつ、中子CWを下型DLに組み付けた時点で、第2巾木係止部132aの長手方向における両側に一定量以上の隙間が設けられるように、両者の位置関係が設定されている。
【0041】
一方、図12から良く分かるように、中子CWの横方向につては、上記第2係合部142hの内面寸法と第2巾木係止部132aの外面寸法とが実質的に略同じになるように設定されており、第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して、その横方向について隙間無く、従って、この方向について移動不能に係合するようになっている。
すなわち、上記第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0042】
このように、下型DLに対して直接に組み付けられるウォータジャケット中子CWの一端側に設けられた第1係合部141hは鋳型(下型DL)の第1巾木係止部131aに対して移動不能に係合する一方、上記ウォータジャケット中子CWの他端側に設けられた第2係合部142hは下型DLの第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するので、中子CWの位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、中子CWの長手方向については、当該中子CWと下型DLの熱膨脹量の差を有効に吸収することができ、この熱膨脹量の相違に起因して、中子CWにクラックや折損等の不具合が生じることを防止できるのである。
【0043】
また、上記ウォータジャケット中子CWの両端部の各巾木141及び142に設けた第3および第4の巾木係止部141a及び142aと、ウォータジャケット中子CWの上方に配置されるオイルジャケット中子CОの両端部の各巾木143及び144に設けた第3および第4の係合部143h及び144hとについても、下型DLに設けた第1および第2巾木係止部131a及び132aとウォータジャケット中子CWに設けた第1および第2の係合部141h及び142hとの組み合わせにおける場合と同様の構成により、第3係合部143hは上記第3巾木係止部141aに対して移動不能に係合する一方、第4係合部144hは上記第4巾木係止部142aに対して中子の長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0044】
これにより、オイルジャケット中子CОのウォータジャケット中子CWに対する位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、これら中子の長手方向については、両者CО,CWの熱膨脹量の差を有効に吸収することができる。その結果、中子CО,CWどうしを予めセットする際あるいは鋳造時などにおいて、両者CО,CWの熱膨脹量の相違に起因して、中子CО及び/又はCWにクラックや折損等の不具合が生じることも防止できるのである。
【0045】
また、本実施の形態では、鋳造時に上記2本の長尺の中子(オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CW)で発生するガスを各中子CО,CWの巾木部分から吸引して外部に排出するようにしている。
すなわち、図14に詳しく示すように、例えば、オイルジャケット中子CОの第4巾木部144及びウォータジャケット中子CWの第2巾木部142側では、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際に、上記各巾木部144及び142の外面と、第2巾木受け部132の外面を含む下型DLの表面と、オイルジャケット中子CОの巾木部144の上面側に当接するサイド型DS1の内面とで、密閉空間101が形成される。
【0046】
上記サイド型DS2の側面には、この密閉空間101に連通する例えば可撓性のホース102の一端が繋ぎ込まれており、該ホース102の他端側はガス吸引手段としての真空ポンプ103に接続されている。
そして、この真空ポンプ103を駆動して密閉空間101内を吸引することにより、オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CWのバインダが鋳造時にガス化することによって生じたガスが吸引されて鋳造キャビティの外部に排出されるようになっている。
【0047】
このように、上記両中子CО及びCWの巾木部分144及び142から、鋳造時にこれら中子CО及びCWで発生するガスを吸引する吸引手段103(真空ポンプ)が設けられているので、中子CО及びCWが長尺物であっても、その内部に発生したガスをその巾木部分144及び142から強制的に吸引して迅速に鋳造キャビティの外部に排出させ、得られた鋳物にガス欠陥が生じることを効果的に防止できるのである。
【0048】
尚、この場合において、両中子CО及びCWは互いの巾木部分144及び142を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられているので、たとえ一方の中子が上記密閉空間101内に面しておらず、真空ポンプ103から実質的に遮断されている場合であっても、他方の中子の巾木からガスの吸引が行われるので、上記一方の中子の内部で発生したガスも有効に鋳型外部に排出することが可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、上述のようにしてウォータジャケット中子CWとオイルジャケット中子CОとを下型DLに対して組み付けることにより、これら中子CWおよびCОの各巾木の内側面によってシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されているようになっている。
すなわち、ウォータジャケット中子CWの巾木部分141及び142の各内面141f及び142f(図11参照)とオイルジャケット中子CО巾木部分143及び144の各内面143f及び144fが、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部をなしている。
【0050】
このように、上記各中子CW及びCОの巾木141〜144の内側面141f〜144fによりシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部を形成することにより、中子CW及びCОの巾木141〜144を利用して鋳型面の一部を形成することができる。
この場合、鋳物砂を主原料とする中子の側面で鋳型面の一部が形成された鋳型部分への伝熱は他の鋳型部分に比べて大幅に抑制されるので、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
【0051】
これにより、上記ウォータジャケット中子CWが組み付けられる側の鋳型(下型DL)に設けられた湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)への熱の伝達を抑制し、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
すなわち、鋳込み工程後の金属溶湯をこのような指向性の下に冷却・凝固させることにより、鋳造キャビティ内に存在するガスは次第に湯口Di側に押しやられ、最終的にはこの湯口部分に溜まった状態で凝固を終えるようにすることが可能となる。この湯口部分は、鋳造完了後に不要部分として切断除去されるものであるので、鋳造製品自体については、ガスが残存する惧れがそれだけが少なくて済み、鋳造欠陥の発生を有効に抑制できるのである。
【0052】
更に、図7〜図9から良く分かるように、下型DLには、上記ウォータジャケット中子CW及びオイルジャケット中子CОと略直交する方向へ延びる第3の中子として、シリンダヘッドの給排気ポートに対応したポート中子CPが、その巾木145,146を巾木受け部135,136を含む鋳型側壁に支持させた状態で組み付けられており、これらポート中子CPの巾木145,146の内側面145f,146fによりシリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されている。
また、特に、図7における左側(つまり、下型DLの中央側で、図8においては右側)のポート中子CPについては、その巾木145を支持する鋳型側壁の少なくとも一部が砂壁138で構成されている。
【0053】
従って、シリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面を含む鋳型部分についても、上記と同様の理由により、他の鋳型部分に比べて伝熱が大幅に抑制されるので、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性が与えられ、鋳造欠陥の発生の抑制に貢献することができる。
【0054】
また、更に、本実施の形態では、図11から良く分かるように、上記ウォータジャケット中子CWの巾木141の外側面およびオイルジャケット中子CОの巾木143の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS1のテーパ状内面127をスムースに案内するガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられている。
上記各中子CW及びCОの巾木141及び143の外側面にこのようなガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができるのである。
【0055】
また、更に、本実施の形態では、図8から良く分かるように、上記ポート中子CPの巾木146の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS3のテーパ状内面126をスムースに案内するガイド用のテーパ部146gが設けられている。また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられている。
上記ポート中子CPの巾木146の外側面にこのようなガイド用のテーパ部146gが設けられ、また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができる。
【0056】
また、更に、本実施の形態では、上型DU及び下型DLの型閉じ方向と略直交する方向にスライド可能なサイド型DS(DS1〜DS3)が上型DUに設けられているが、図10(a)及び図10(b)に示すように、この上型DUには、上記サイド型DSの下側に位置して該サイド型DSのスライド動作を案内する下ガイド部119aが設けられている。
この下ガイド部119aの両端部はそれぞれ横ガイド部119bに連結されており、これら一対の横ガイド部119bと上記下ガイド部119aとで、サイド型DSのスライド動作を案内するためのフレーム状のスライドガイド119が形成されている。これにより、特にガイド部を別設する必要なしに、上記サイド型DSのスライド動作をスムースに行わせることができる。
【0057】
本実施の形態では、上記鋳型Dに、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御するようにしている。
次に、本実施の形態に係る鋳型Dの冷却制御について説明する。
まず、上型DUの冷却制御について説明する。前述のように、上型DUの左右の各型部には、その中央部に複数のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数のボルト孔形成用の突出部112が設けられている(図5参照)。本実施の形態では、これら突出部111及び112に上型DUの冷却制御機構が設けられている。
【0058】
すなわち、図15および図16に示すように、プラグ孔形成用の突出部111の内部には、その軸線方向に伸長する空洞部111hが設けられ、各空洞部111hには、特に図16に詳しく示すように、冷却媒体を空洞部111hの内部に導入する導入パイプ114と、冷却媒体を空洞部111hの外部に排出する排出パイプ115とが、それぞれ挿入されている。上記導入パイプ114は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ115は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記導入パイプ114及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ115及び冷却媒体の回収装置(不図示)を含む冷却媒体循環系が上記プラグ孔形成用の突出部111における冷却手段を構成している。
【0059】
また、図17に詳しく示すように、ボルト孔形成用の突出部112の内部にも、その軸線方向に伸長する空洞部112hが設けられ、各空洞部112hには、冷却媒体を空洞部112hの内部に導入する導入パイプ116が挿入されている。このボルト孔成形用の突出部112の場合には、空洞部112h内に導入された冷却媒体は、空洞部112hの開口から外部に排出されるようになっている。上記導入パイプ116は、プラグ孔形成用の突出部111用のものとは異なる冷却媒体供給源(不図示)に接続されており、この冷却媒体供給源および導入パイプ116を含む冷却媒体供給系によって、上記ボルト孔形成用の突出部112における冷却手段が構成されている。
【0060】
本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の冷却に適正な指向性を持たせ、欠陥の少ない高品質の鋳造品を得られるようにするために、各突出部111,112にそれぞれ設けられた冷却手段について、鋳型DUの中央に比較的近い内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)のものが、型周囲に比較的近い外側の突出部(つまり、ボルト孔形成用の突出部112)のものよりも冷却能力が大きく設定されている。
具体的には、上記プラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体に液体(例えば水)が用いられ、ボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体には気体(例えばエア)が用いられている。
【0061】
このように、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側のプラグ孔形成用の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側のボルト孔形成用の突出部112のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0062】
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0063】
特に、上記内側のプラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体が液体(水)であり、外側のボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体は気体(エア)であるので、液体と気体の熱伝達特性の違いを利用して、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段に関し、型中央に比較的近い内側の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112のものよりも冷却能力が大きくなるような設定を確実に行うことができる。
【0064】
また、特に、上記各突出部111及び112は、少なくとも、シリンダヘッドの中央に比較的近いプラグ孔とシリンダヘッドの周囲に比較的近いボルト孔にそれぞれ対応しているので、シリンダヘッドに特有のプラグ孔およびボルト孔を利用して、鋳込み後の金属溶湯に適正な指向性を持った冷却凝固を行わせることができるのである。
【0065】
更に、本実施の形態では、上記内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)について、これに設けた冷却手段の冷却作動休止後、突出部111の空洞部111h内に残留した冷却媒体(つまり液体)を排除するために、具体的には図示しなかったが、空洞部111h内をエアパージするパージエア供給パイプ(残留液体排除手段)が設けられている。
このような残留液体排除手段を設けたことにより、冷却媒体としての液体が突出部111の空洞部111h内に温度制御されない状態で残留することにより、次サイクルの鋳造時に当該突出部111の冷却手段を作動させた際に温度制御の精度が低下することを確実に防止できるのである。また、突出部111の空洞部111h内での錆の発生も防止できる。
【0066】
次に、下型DLの冷却制御について説明する。
本実施の形態では、図15に示すように、下型DLに、特定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられている。
該スポット冷却機構151は、下型DLの所定部位に形成された取付穴156に嵌合される本体部152と、該本体部152内に形成された冷却媒体通路152hに冷却媒体を供給する供給パイプ153と、上記冷却媒体通路152hから冷却媒体を排出させる排出パイプ154とを備えている。上記本体部152は、その内部に冷却媒体通路152hが設けられることにより略筒状に形成されている。
【0067】
上記供給パイプ153は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ154は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記本体部152の内部に形成された冷却媒体通路152hと、上記供給パイプ153及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ154及び冷却媒体の回収装置(不図示)とで、スポット冷却機構151の冷却媒体循環系が構成されている。
【0068】
上記スポット冷却機構151は、その本体部152の外周部が下型DLに設けられた取付穴156に嵌合し、上記本体部152の先端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいる。
このように、上記スポット冷却機構151は、その一端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいるので、この部分の金属溶湯を本体部152の長手軸方向に指向性を持たせて選択的に冷却することができる。また、上記本体部152は外周部が下型DLに設けた取付穴156に嵌合しているので、この嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させることが可能となる。
【0069】
本実施の形態では、下型DLが鋼製であるのに対して、上記本体部152を例えばアルミニウム合金製として、両者の材質を変えることにより、両者の嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させ、スポット冷却機構151による冷却に上述の指向性を持たせるようにしている。
尚、この替わりに或いはこれに加えて、両者の嵌合部に隙間を設けて嵌合部からの熱伝達を抑制するようにしても良い。また、両者の嵌合部に例えばセラミック溶射層などの断熱層を設けることなどにより、本体部152の長手軸方向以外の方向における熱伝播が抑制されるようにしても良い。
【0070】
以上のように、下型DLに所定方向(本体部152の長手軸方向で鋳造キャビティМcに臨む方向)以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151を設けたことにより、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0071】
また、前述のように、本実施の形態では、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の一部が砂壁で形成され、下型DLに砂壁138が組み付けられるが、上記スポット冷却機構151はこの砂壁138の近傍に設けられている(図6及び図7参照)。尚、このスポット冷却機構151は、砂壁138の近傍でも湯口Diからできるだけ離れた部位に設けられる。
このように、砂壁138の近傍に上記スポット冷却機構151を設けることにより、熱伝達性が低く冷却されにくい砂壁138の近傍を選択的に強制冷却することができる。
【0072】
更に、本実施の形態では、前述のように、下型DLの下方に、各湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される金属溶湯を供給する溶湯供給部としてのデスとリビュータ9が設けられている。一方、下型DLの下面側には所定深さの凹部105が形成されており、この凹状の空間部105に上記スポット冷却手機構151の冷却媒体経路としての上記供給パイプ153及び排出パイプ154が配置されている。また、この凹状の空間部105に、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が配設されている。
尚、各湯口Diには、鋳造キャビティМc内に鋳造品の機械的特性に悪影響を及ぼす異物等が混入することを防止するために、スクリーンメッシュ(金網109)が取り付けられる。この金網109は、通常、鋳造品の取り出しに伴なって除去されるものであり、各鋳造サイクル毎に新たに取り付けられる。
【0073】
このように、下型DLの下方に湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される溶湯を供給する溶湯供給部9(デストリビュータ)が設けられており、該デストリビュータ9と下型DLとの間に所定の空間部105を設け、該空間部105に上記スポット冷却機構151用の冷却媒体経路153及び154を配置するとともに、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が設けられているので、通常、スペースを確保することが難しい下型DLの下方に支障無く冷却媒体経路153及び154を設けることができ、上記スポット冷却機構151を容易に下型DL側に設けることができる。
【0074】
以上のように、上型DU側には、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側の突出部111(プラグ孔形成用の突出部)のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112(ボルト孔形成用の突出部)のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティМcの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0075】
一方、下型DL側には所定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられているので、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について下型DL側から所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができる。
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記各冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0076】
尚、本実施の形態では、スポット冷却機構151は下型DLのみに設けられていたが、これを上型DUのみ或いは両方の鋳型DU及びDLに設けるようにしても良い。
【0077】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた第1および第2の台車BP及びBC、特に、第2台車(中子台車)BCについて説明する。
これら台車BP及びBCは、前述のように、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたとき(図1参照)、この型開き空間K内に進退出可能とされたもので、中子台車BCは、型開き空間Kの外部で中子および砂壁を保持した後、型開き空間K内に進出(前進)し、保持した中子および砂壁を下降させて下型DLにセットする。
【0078】
また、中子台車BCは、後述するように、粉体塗型剤を上型DUおよびサイド型DSの鋳型内表面に塗布するための塗布ボックスTを搭載しており、型開き空間K内において塗布ボックスTを上昇させて、後述のようにして上型内表面(下型DLに対する合わせ面で、下向きの面となる)およびサイド型DSの内面に対して粉体塗型剤が塗布される。尚、本実施の形態では、この塗型剤として、例えば珪藻土を主原料とするものを用いた。この替わりに、例えばカーボンを主原料とするものなど、他の好適な塗型剤を用いることができる。
上型DUおよびサイド型DSを下降させて下型DLに型合わせし、その後、これら鋳型DU,DS及びDLにより形成されるキャビティМc内に溶湯を供給・充填することにより、所定の鋳造品(シリンダヘッド)が鋳造される。そして、得られた鋳造品は、上型DUが上昇して型開き空間Kが構成された状態で、製品取り出し台車BPによって、中子台車BCの待機位置とは反対方向へ取り出されるのである。
【0079】
上記中子台車(第2台車)BCについて、図19〜図21を参照しながら、より詳細に説明する。この中子台車BCは、その下部に中子セット装置10を搭載している。この中子セット装置10は、ガイドロッド12によってガイドされつつ上下動し得るベースプレート13を有し、このベースプレート13は、中子セット装置10の上下駆動手段となるシリンダ装置14によって上下駆動される。上記ベースプレート13には、その下方部分において、図19における紙面方向に開閉される複数の保持爪15が支持されると共に、該保持爪15を開閉するためのアクチュエータを含む開閉機構16が設けられている。
【0080】
上記中子セット装置10は、保持爪15と並列に配置されて上下方向に伸びる位置決めピン17aを有している。この位置決めピン17aは、実質的に上下方向のシリンダ装置17のピストンロッドによって構成されており、中子台車BCが型開き空間K内の所定位置に移動して来て、位置決めピン17aが下降し下型DLの位置決め孔(不図示)に挿入されることにより、中子台車BCの型開き空間K内での位置決めが行われる。この位置決めされた状態で、前述した下型DLへの各中子および砂壁のセットと上型DUおよびサイド型DSの内表面への粉体塗型剤の塗布とが行われる。
【0081】
上記塗布ボックスTは、その外殻が実質的に覆い部材21によって構成され、その内部には、図21〜図23に示すように、粉体塗型剤吹きつけ用のスプレーノズル22およびブローエア吹出用のブローノズル23が保持されている。覆い部材21は、上方のみが開口された箱形形状とされて、底壁部と左右前後の側壁部とを有しており、型開き空間K内に位置させられたときに、その上方開口が上型内表面に臨むようになっている。
上記覆い部材21は、中子セット装置10(ベースプレート13)よりも高い位置、より具体的には中子台車BCの上フレームより高い位置において、上下動可能に中子台車BCに保持されている。すなわち、覆い部材21の外壁にプレート24が設けられ、このプレート24と中子台車BCのフレームとの間に、上下駆動手段としてのシリンダ装置25が架設されている。上記プレート24には、中子台車BCから上方へ伸びるガイドロッド26が上下方向に摺動自在に貫通しており、シリンダ装置25の伸縮に応じて、覆い部材21が上下方向へ滑らかに駆動されるようになっている。
【0082】
上記覆い部材21,スプレーノズル22およびブローノズル23等の構成要素について、図22〜図25を参照しながらより詳細に説明する。
上記覆い部材21には、その上端縁全長に渡ってフランジ部21aが形成されており、このフランジ部21aの全面にわたって、例えばゴム等の弾性部材からなるパッキン31が固定されている。これにより、図22に示されるように、覆い部材21が型開き空間Kにおいて上昇させられ、パッキン31が上型DUの下面に当接・押圧されたとき、上記覆い部材21と上型DUおよびサイド型DSとが共働して、覆い部材21内に密閉空間Mが形成されることになる。
【0083】
このとき、本実施の形態では、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数のサイド型DSが、上述のように、全て上型DUに支持されおり、全サイド型DSを上記型閉じ状態にセットした上で、これら各サイド型DSおよび上型DUの内面に塗型剤が塗布されるので、湯口Diが設けられている下型DLに少なくとも一部のサイド型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で上型DUおよび全てのサイド型DSの内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができるのである。
【0084】
上記覆い部材21の前後側壁の下部には、互いに平行に長く伸びるスリット32が形成され、このスリット32は、覆い部材21の左右方向ほぼ全長にわたって伸びている。覆い部材21内には、細長棒状の保持部材33が配設され、この保持部材33の各端部がそれぞれ上記スリット32を摺動自在に貫通している。上記保持部材33の一端部33aには、覆い部材21の外部における走行輪としてのローラ34が回転自在に取り付けられ、このローラ34は、覆い部材21の側壁外部に固定されたガイドレール35上を走行できるようになっている。
【0085】
一方、上記保持部材33の他端部33bには、覆い部材21の外部においてナット部材36が固定され、このナット部材36が、スリット32に沿って長く伸びるねじ棒37の外周に螺合されている。該ねじ棒37は、覆い部材21に回転可能に保持されているもので、その一端部が駆動手段としての回転式のアクチュエータ(本実施の形態では、例えば電動モータ)38に連結されている。これにより、アクチュエータ38を例えば正転させることによって、ナット部材36つまり保持部材33が図23における下方ヘ駆動され、アクチュエータ38を逆転させることによって、保持部材33が図23における上方へ駆動される。
【0086】
この保持部材33に対して上記スプレーノズル22およびブローノズル23が固定されている。スプレーノズル22は、図24および図25に詳しく示されるように、両端が閉じられた細長い筒状本体22aを有し、この筒状本体22aは、内部の細長い共通空間22bと、該共通空間22bにそれぞれ連通する複数の連通孔22cとを有している。各連通孔22cは筒状本体22aの長手方向に間隔を開けて直列に形成され、これら各連通孔22cにはそれぞれノズル部材22dが取り付けられている。
かかるスプレーノズル22が、保持部材33の長手方向に沿うように、かつ互いに間隔をあけて一対設けられ、ともに保持部材33に固定されている。各スプレーノズル22には、保持部材33に対する固定用のねじ孔39が設けられている。スプレーノズル22の保持部材33に対する取り付けは、ノズル部材22dが上向きとなるように設定して行われる。
【0087】
ブローノズル23も上記スプレーノズル22と実質的に同様の構造として形成されているが、ノズル部材22dに相当する部材は無く、連通孔22cに対応する開口がそのままブローエア吹出口23c(図22参照)とされている。
そして、このブローエア吹出口23cが下向きつまり覆い部材21の底壁に向くように設定して、ブローノズル23が保持部材33に対して固定されている。このブローノズル23も、スプレーノズル22の場合と同様に、保持部材33の長手方向に沿うように、かつ互いに間隔をあけて一対設けられている。
【0088】
以上のように、本実施の形態では、中子台車BCに設けられた塗型剤塗布手段は、上型DUおよび型閉じ状態の複数のサイド型DSと組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材としての覆い部材21と、塗布空間М形成時に塗布空間М内に位置する塗布機構としてのスプレーノズル22とを備えているので、覆い部材21を用いて密閉空間(塗布空間)Мを形成した状態で、スプレーノズル22により塗型剤を上型DUおよび各サイド型DSの内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、上下の鋳型DU/DLの型開き空間K内に進退動可能な第2台車(中子)BCに取り付けられており、該台車BCには、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して下型DLに中子を組み付ける中子組付装置10が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【0089】
スプレーノズル22に対する粉体塗型剤の供給は、覆い部材21の底壁に取り付けた接続部材41から、覆い部材21内に配設した長いフレキシブルホース42を介して行われる。このホース42は、スプレーノズル22の長手方向における略中間部において、その内部の共通空間22bに連通するように接続されている(図24および図25参照)。
ブローノズル23に対するブローエアの供給は、前述のスリット32を通る細長いフレキシブルホース43を介して行われる。また、覆い部材21の底壁には、その略中央部分に2つの吸引口44が形成されている。この吸引口44は、ホース45を介して吸引装置46(図26参照)に接続されている。
【0090】
図26は、上記スプレーノズル22,ブローノズル23及び吸引口44に対する接続系路を説明するためのものである。この図26に示すように、エアー供給源(不図示)から供給された元エアは、レギュレータ51,フィルタ52及びドライヤ53を順次経て、所定圧力に調整された清浄な乾燥エアとされる。
上記ドライヤ53の下流側は、互いに並列な5系統の分岐系路に分岐されている。分岐系路61は、粉体塗型剤の供給系路となるもので、電磁式開閉弁62,エゼクタ63および高電圧印加部64を順次経てスプレーノズル22に繋がっている。前記エゼクタ63には、空気式開閉弁65を介して粉体塗型剤の貯溜タンク66が接続され、開閉弁65が開いている状態で系路61から供給されるエアによってタンク66から粉体塗型剤を吸い上げて、粉体塗型剤をスプレーノズル22へ圧送するようになっている。
【0091】
上記空気式の開閉弁65には分岐系路67が接続され、この系路67には電磁式の開閉弁68が接続されている。これにより、電磁式の開閉弁68の開閉に応じて、空気式の開閉弁65が開閉される。
尚、高電圧印加部64は、高電圧発生器64Aによって、例えば+(プラス)電極)に繋がれた上型DUと所定の高電圧差が生じるように粉体塗型剤を印加するもので、いわゆる静電吸着をも利用した粉体塗型剤の付着(つまり、塗型剤の静電塗布)を行うようになっている。
このように上型DUに電極を接続し、この上型DUおよび各サイド型DSの内面に塗型剤を静電塗布するようにしたので、通常のスプレー塗布だけの場合に比べて、塗型剤の鋳型内表面への塗布状態の均一性と付着性とを十分に高めることができるのである。
【0092】
上記タンク66には分岐系路69が接続され、該分岐系路69には電磁式の開閉弁70が介設されている。この開閉弁70が開かれると、タンク66内の粉体塗型剤が攪拌されて、エゼクタ63へ向けての粉体塗型剤の移送が効果的に補助される。
上記エゼクタ63の先端部には分岐系路71が接続され、この分岐系路71には電磁式の開閉弁72が介設されている。これにより、開閉弁72を開くと、パージエアがエゼクタ23を経てスプレーノズル22へ供給される。
また、ブローノズル23には分岐系路73が接続され、この分岐系路73には電磁式の開閉弁74が介設されている。そして、この開閉弁74を開くことにより、ブローノズルからブローエアが吹き出されるようになっている。
【0093】
図27は、スプレーノズル22の移動とスプレーノズル22からの粉体塗型剤の吹き付けとブローノズル23からのブローエア吹出と吸引口44からの吸引とパージエアの供給との関係の一例を示すタイムチャートである。
この図27に示された例では、スプレーノズル22は、覆い部材21の一端となる原位置から前進端へと移動させられた後、再び原位置へ向かって戻るような動作を行い、この1往復の動作で粉体塗型剤の上型およびサイド型の内表面への塗布が完了する。尚、この場合、スプレーノズル22の移動速度は例えば定速とされている。
スプレーノズル22からの粉体塗型剤の塗布は、スプレーノズル22が原位置から若干進んだ位置から開始され、前進端の若干前位置から若干後位置にかけて一旦休止された後、再び粉体塗型剤の吹きつけが再開され、原位置へ戻る若干手前で粉体塗型剤の吹きつけが終了する。また、ブローエアの吹出態様は、粉体塗型剤の吹きつけと同様に行われる。
【0094】
吸引口44からの吸引は、その開始が粉体塗型剤の吹き付け開始時期と同じである。ただし、吸引の終了時期は、覆い部材21により形成さる密閉空間M内に残留した粉体塗型剤を吸引して回収する関係上、粉体塗型剤の吹きつけ終了よりもかなり遅い時期とされる。つまり、スプレーノズル22が原位置へ復帰した後もしばらくの間は吸引が行われるようになっている。
一方、パージエアの供給は、粉体塗型剤の吹きつけ終了する時期よりもやや前の時期から開始される。このパージエアの供給は、スプレーノズル22が原位置へ復帰した後もしばらくの間継続して行われるが、吸引終了よりも早い時期に供給停止とされる。
【0095】
尚、本実施の形態では、より好ましくは、中子保持用の保持爪15を上下方向に駆動するシリンダ装置14は、フローティング機構によって支持されている。すなわち、従来では、例えば図31に示すように、中子211の巾木212の上面に突設された突起部213をクランパ215で水平方向に把持して、中子211を鋳型219に対して組み付けるのが一般的である。
【0096】
このとき、巾木212の係合部212hが鋳型219に設けた巾木係止部219aに正しく係合するように位置決めして組付作業が行われるのであるが、実際には、鋳型219と中子211との熱膨張量の相違などに起因して、両者間に位置ずれが生じる。そして、この位置ずれが生じた状態で組付が行われると(図31における破線参照)、この従来例では、クランパ215の把持状態を解除して中子211の重力の利用により組付を行うので、上記係合部212hを巾木係止部219aに正しく(正確に嵌まり込むように)係合させることが難しい。このため、中子211が浮き上がった状態で組み付けられ、そのまま鋳造が行われると、鋳造品に不良が生じるという問題があった。
【0097】
また、他の従来例では、例えば図32に示すように、巾木222の上面を押さえ具227で当て止めた状態で、シリンダ226によって開閉させられる保持爪225を用いて巾木222を上下方向に力を作用させてクランプされる。
この場合には、巾木222を押さえながら組み付けることができるのであるが、巾木222の係合部222hと鋳型229の巾木係止部229aの間に位置ずれが生じた場合には、中子221が損傷あるいは折損するという問題があった。
【0098】
本実施の形態では、図30に模式的に示すように、中子181を保持するための保持爪15を開閉動作させるシリンダ装置16aはフローティング装置19によって支持されている。また、巾木182の上面には圧縮スプリング18が配設され、この圧縮スプリング18の上端側は上記フローティング装置19に取り付けられている。従って、巾木182は、上記スプリング18の弾性力によって常時下方に付勢されることになる。
【0099】
上記フローティング装置19は、従来から良く知られ広く市販されているもので、例えば内蔵されたボール体と加圧エアの作用によって、エア圧が加えられた状態でロック(固定)され、エア圧が作用しない状態では、ロックが解除されてフローティング状態(浮動可能に支持する状態)が得られるものである。
上記スプリング18の上端をこのフローティング装置19を介して支持することにより、スプリング18の上端支持部は(従って、巾木182も)、フローティング範囲内でその位置が自在に移動できることになる。
【0100】
以上の構成を採用することにより、巾木182の係合部182hを鋳型189の巾木係止部189aに係合させて中子181を鋳型189にセットする際、上記係合部182hと巾木係止部189aとの間に位置ずれが生じても、フローティング装置19のフローティング機能を利用して、或いはこれに加えて更にスプリング18の水平方向の弾性作用を利用して、巾木182の位置を微細に自動調節でき、上記係合部182hのテーパ面が巾木係止部189aのテーパ面に案内されながら、また、圧縮スプリング18の付勢力で下方に付勢されながら、スムースで且つ正確な係合状態が得られる。
これにより、従来のように、中子の浮き上がりや損傷が生じる惧れを無くすることができるのである。
【0101】
図28および図29は、以上の中子保持/組付機構を具体化した装置を示している。中子保持用の保持爪15を開閉動作させるシリンダ装置16aは、その上方に位置するフローティング装置19によって支持されており、また、中子CОの巾木部143の上面には圧縮スプリング18が配設されている。
尚、このような保持爪15およびシリンダ装置14並びにフローティング装置18等で構成される中子保持機構は、中子CОの長手方向の両端側に一対に設けられている。
【0102】
次に、以上のように構成された鋳造装置Aを用いて行われる鋳造プロセスについて、図33〜図35のフローチャートを参照しながら説明する。
この鋳造プロセスは一連の工程が繰り返して行われるものであるが、ここでは、例えば、前サイクルの鋳造品(製品)が鋳造され、これを鋳型Dから取り出す時点から、説明を始める。
鋳造が完了して上下の鋳型DU/DLが型開きされた後、まず、ステップ#1で、第1台車(製品取り出し台車)BPが型開き空間K内に前進し、ステップ#2で、サイド型DS(DS1〜DS3)が型開きされる。尚、このステップ#2の型開きをステップ#1と並行して行うようにしても良い。
【0103】
次に、ステップ#3で、上型DU側のエジェクタ機構(不図示)を駆動させて製品を上型DUから取り出す。このとき、上型DUの内面には塗型剤が塗布されているので、容易に製品を上型DUから離型させることができる。取り出された製品は第1台車BPの上側で受け取られる。
一方、第1台車BPの下部では、上記ステップ#2及び/又はステップ#3と並行して、金網ホルダ(不図示)に保持された金網109が下型DLに設けられた湯口Diにセットされる(ステップ#4)。尚、上型DUには、前サイクルで使用された金網109の断片あるいは前回サイクルでの鋳造による残存アルミニウム塊が湯口Diを塞いでいないことを確かめるための棒状センサが設けられており、金網109のセットに先立って湯口Diが正常に開口していることを確かめるようにしている。
その後、ステップ#5で、第1台車BPが上下方向の型開き空間K内から後退する。そして、これと入れ替わりに、第2台車(中子台車)BCが型開き空間K内に前進してくる(ステップ#6)。
【0104】
そして、この第2台車BCの上部側では、ステップ#7で全てのサイド型DSを閉じ合わされた後、全てのサイド型DS及び上型DUの内面に塗型剤が塗布される(ステップ#8)。
一方、第2台車BCの下部では、上記ステップ#7及びステップ#8の工程と並行して、中子セット装置10による中子の下型DLへのセット(組み付け)が行われる(ステップ#9)。このとき、第2台車BCの下部には、3種の中子CW,CО及びCPと砂壁138とが保持されており、これら中子CW,CО及びCPと砂壁138とが下型DLにセットされる。尚、中子セット装置10には、前サイクルで用いた中子が折損等によって下型DLに残存していないことを確かめるための棒状センサが設けられており、中子セット作業に先立って、下型DLの中子セット箇所に中子の破損した断片が残っていないことが確認されるようになっている。
【0105】
この塗型剤の塗布工程(ステップ#8)および中子セット工程(ステップ#9)の詳細を、第2台車BCの動きに着目しつつ、図34のフローチャートを参照しながら説明する。
すなわち、上述のように、上型DUが上昇されて型開きされると、型開き空間Kに向けて中子台車BCが移動される(SP1)。次いで、型開き空間K内において、位置決めピン17aを利用して中子台車BCの位置決めが行われる(SP2)。この後、中子のセットと、粉体塗型剤の塗布とが並行して行われ、中子セットが図34のSP3〜SP5の処理とされ、粉体塗型剤の塗布がSP8〜SP10の処理とされる。
【0106】
下型DLへの中子セットに際しては、まず、シリンダ装置14によって、ベースプレート13つまり中子が下降される(SP3)。この後、保持爪15が開かれて、中子が下型DLにセットされる(SP4)。そして、シリンダ装置14によりベースプレート13が上昇される(SP5)。
粉体塗型剤の塗布に際しては、まずシリンダ装置25によって、塗布ボックスTつまり覆い部材21が上昇される(SP8)。次いで、前述したようにして、上型内表面に対して粉体塗型剤の塗布が行われる(SP9)、そして、シリンダ装置25によって塗布ボックスTが下降される(SP10)。
【0107】
SP5の工程およびSP10の工程がそれぞれ終了すると、位置決めピン17aが上昇されて、中子台車BCと下型DLとの位置決め関係が解除される(SP6)。そして、その後、中子台車BCが後退、つまり型開き空間Kの外側へ移動される(SP7)。
尚、以上の塗型剤塗布工程においては、図示された態様に限定されるものではなく、例えば、粉体塗型剤を吹きつけるスプレーノズル22の向きは、粉体塗型剤が塗布されるべき鋳型内表面の向きに応じて適宜の向きとすることができる。また、ブローノズル23の向きも粉体塗型剤の飛散効果を勘案して適宜の向きとすることができる。更に、塗布ボックスTつまり覆い部材21は、中子台車BCとは別途独立させて構成するようにしてもよい。
【0108】
以上のように、複数のサイド型DSが全て上型DUに支持され、全サイド型DSを型閉じ状態にセットした上で、これら各サイド型DSおよび上型DUの内面に塗型剤を塗布するようにしたので、下型DLに少なくとも一部のサイド型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で上型DUおよび全てのサイド型DSの内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
【0109】
また、特に、上下方向に接離可能に設けられた上下の鋳型DU/DLが離間した状態で、第2台車BCの塗型剤塗布手段が両鋳型の型開き空間K内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型DU/DLの型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
更に、上記塗型剤塗布手段が上型DUおよび各サイド型DSの内面に塗型剤を塗布している間に、下型DLへの中子の組み付けが行われるので、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができ、鋳造プロセス全体の生産効率の向上を図ることができるのである。
【0110】
以上のような塗型剤の塗布工程(ステップ#8)および中子セット工程(ステップ#9)を終えて第2台車BCが後退(ステップ#10)した後、上型DUを下降させて下型DLに対して閉じ合わせる(ステップ#11)。
そして、ステップ#12で、保持炉FH内を加圧して低圧鋳造が行われる。この加圧工程(ステップ#12)における加圧制御の詳細について、図35のフローチャート及び図36〜図38の線図を参照しながら説明する。
【0111】
まず、ステップST1で、エア供給路42から加圧室20へ加圧エアを供給し、るつぼ12内の溶湯を押し上げ、この溶湯をストーク22を介して鋳型30のキャビティ32へ供給して鋳型を開始すると共に、ステップST2でタイマ60が起動する。
この場合、図36における加圧パターン(a)に示すように、加圧エアの供給開始後、溶湯が鋳型30の湯口40に達する予定の時間t1が経過するまでの間は、圧力を急速に上昇させて溶湯を速やかに押し上げ、溶湯の温度低下を防止し、溶湯が湯口40に達する予定時間t1経過後は、溶湯が砂中子同志の間にスムーズに充填されるよう圧力上昇速度を低下させる。
【0112】
次に、ステップST3で、充填信号の有無により、充填検知センサ58が溶湯の充填を検知したか否かを判断し、充填検知センサ58が充填を検知した場合には、ガスが砂中子から溶湯中に噴出するのを防止するため、ステップST4で、図36の加圧パターン(b)に示すように加圧室20内の圧力を高めると共に、充填検知センサ58が正常に機能しているため、ステップST5でタイマ60を停止する。
また、ステップST3で充填検知センサ58が溶湯の充填を検知しない場合は、ステップST6で、加圧エア供給開始後、所定時間t2経過後にタイマ60から出力される経過信号を受けて図36の加圧パターン(c)に示すように加圧室20内の圧力を高める。このようにすると、充填検知センサ58が検知不良の場合でも、加圧エアの供給開始後、所定時間t2の経過と共に加圧室20内の圧力を高めることができるので、製品不良の発生を防止できる。
次に、ステップST7でタイマ30をリセットして次の鋳造工程に備えると共に、ステップST8で鋳造を完了する。
【0113】
図37は、上記実施例における加圧制御方法の具体的な加圧パターンを示している。すなわち、加圧室20内の加圧開始と同時に第1CPU70及びタイマ60が起動し、加圧開始8秒後に第1CPU70は圧力上昇速度を遅くし、充填検知センサ58が充填信号を出力すると(通常、加圧開始13秒後)、第1CPU70がそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72が加圧室20の圧力を上昇させ、加圧室20内の圧力が所定値に達すると(通常、加圧開始20秒後)、第2CPU72もそのときの圧力を維持する。この場合、タイマ60は加圧開始18秒後にオン信号を出力して第2CPU72を起動させるよう設定されており、充填検知センサ58が検知不良の場合でも加圧開始18秒後には第2CPU72が起動する。
【0114】
また、図38は、上記加圧制御方法の変形例の加圧パターンを示している。この変形例においては、鋳型30の下型26に、溶湯が湯口40を通過するときに通過信号を出力する湯口通過センサを配置すると共に、第1CPU70及び第2CPU72の他に第3CPUを設置しておく。そして、湯口通過センサが通過信号を出力すると(通常、加圧開始9秒後)、第1CPU70はそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72は加圧室20内の圧力を上昇させ、充填検知センサ58からの充填信号(通常、加圧開始13秒後)に基づき、第2CPU72はそのときの圧力を維持する一方、第3CPUは加圧室20内の圧力を上昇させるような加圧パターンに設定しておく。この場合、タイマ60を、加圧開始15秒後及び湯口通過センサからの通過信号を受けてから5秒後のうちのいずれか早いときにオン信号を出力して第3CPUを起動させるよう設定しておく。
【0115】
この変形例のように加圧パターンを設定すると、時間の経過と溶湯の上昇程度との間に発生する誤差を少なく設定することができるため、第3CPUを加圧開始15秒後に起動でき、前記具体例の場合(加圧開始18秒後)よりも早く起動できるので、充填検知センサ58が検知不良の場合でも製品の品質を高く維持できる。また、湯口通過センサが設けられているため、溶湯が湯口40を通過するまでの圧力上昇速度を具体例の場合よりも早くすることができるので、溶湯の温度低下を防止できる。さらに、湯口通過センサが必要になる反面、第1CPU70として単純な機能のCPUを使用できるのでコスト的に有利にもなる。
【0116】
以上のように、上記低圧鋳造装置Aでは、充填検知センサが正常の場合には充填信号により、充填検知センサが検知不良の場合には経過信号により、加圧パターンを変えるよう圧力可変制御手段が作動するので、充填検知センサの検知状態の正常、不良を問わず加圧パターンが変えられる。このため、充填検知センサに検知不良が発生した場合でも、製品の品質を許容レベル以上に維持することができるので、製品不良の発生を防止できる。
【0117】
以上のような加圧工程(ステップ#12)を終えた後、或いはその終盤における途中において、ステップ#13で、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御する冷却工程が行われる。これにより、鋳造工程が終了し、上下の鋳型DU/DLが開かれ(ステップ#14)、ステップ#1に戻って同様の鋳造サイクルが繰り返されるようになっている。
【0118】
以上の一連の鋳造サイクルにおいて、各工程で要する時間は例えば以下の通りである。すなわち、加圧工程(ステップ#12)が最も長く約200秒であり、次に冷却工程(ステップ#13)が約40秒、また、中子セット工程(ステップ#9)が約20秒であった。そして、これら以外の工程については、全てを合計して約60〜70秒であった。従って、ステップ#13の冷却工程を終えた後、塗型剤の塗布(ステップ#8)を行うまでの時間は、約60〜70秒程度しかないことになる。
【0119】
つまり、このような短い間隔で、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却を行い、その後に、塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための鋳型の冷却制御を行ったのでは、両方の制御が干渉して良好な冷却制御を行うことはできない。
そこで、本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却(ステップ#13)において、前述のように上型DUの突出部111及び112に設けた冷却手段により、上型DUの温度に応じて、塗型剤塗布時の上型DUの最適温度範囲(例えば、260〜320℃)を考慮した上で、具体的には、上型DUの型温がこの260〜320℃の範囲となるように、該上型DUの型温を冷却制御するようにしている。ちなみに、湯口Diが設けられ、また、塗型剤の塗布を行わない下型DLの場合には、型温の制御範囲としては、例えば450〜510℃が好ましい。
【0120】
すなわち、本実施の形態では、上型DUについて、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却制御で、その後(約60〜70秒後)に行う塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための冷却制御を兼用していることになる。
このように、上型DUの型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われるので、適正な鋳型温度で塗布を行うことができ、上型DU及びサイド型DSの内面への塗型剤の付着性を高めることができるのである。
【0121】
尚、以上の実施の形態では、鋳型Dは所謂2個取り用のものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、通常の1個取り用のものであっても有効に適用することができる。また、上記実施の形態では、複数のサイド型DSは全て可動型であったが、その一部のものが上型に固定された固定型であっても良い。更に、上記実施の形態は、エンジンのシリンダブロックを鋳造する場合を例にとって説明したものであったが、本発明は、シリンダブロックに限らず、他の種々の鋳造品を鋳造する場合にも有効に適用することができる。
このように、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更等が可能であることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】
本願の第1の発明に係る塗型剤の塗布方法によれば、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数の側壁鋳型が第1主鋳型に支持され、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するようにしたので、湯口が設けられている第2主鋳型に少なくとも一部の側壁鋳型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で第1主鋳型および全ての側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
【0123】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上下方向に接離可能に設けられた両主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型の型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
【0124】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には上記第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段が上記第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布している間に、上記第2主鋳型への中子の組み付けが行われるので、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができ、鋳造プロセス全体の生産効率の向上を図ることができる。
【0125】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には上記第3の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段は、第1主鋳型および型閉じ状態の複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えているので、閉塞部材を用いて塗布空間を形成した状態で、塗布機構により塗型剤を第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【0126】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には上記第1〜第4のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第1主鋳型に、その温度に応じて該鋳型を冷却する型冷却手段が設けられ、第1主鋳型の型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われるので、適正な鋳型温度で塗布を行うことができ、鋳型内面への塗型剤の付着性を高めることができる。
【0127】
また更に、本願の第6の発明によれば、基本的には上記第1〜第5のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第1主鋳型に電極を接続し、第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を静電塗布するようにしたので、通常のスプレー塗布だけの場合に比べて、塗型剤の鋳型内表面への塗布状態の均一性と付着性とを十分に高めることができる。
【0128】
また更に、本願の第7の発明によれば、基本的には上記第1〜第6のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前サイクルの鋳造品の取り出しから今回サイクルの鋳造品の取り出しに至る一連の工程の中で、各側壁鋳型の型閉じ工程と第1および第2主鋳型の閉じ合わせ(型閉じ)工程との間に、各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するとともに第2主鋳型に中子を組み付けることにより、塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができる。
【0129】
また、本願の第8の発明に係る塗型剤の塗布装置よれば、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数の側壁鋳型が第1主鋳型に支持され、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤が塗布されるので、湯口が設けられている第2主鋳型に少なくとも一部の側壁鋳型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で第1主鋳型および全ての側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
また、上下方向に接離可能に設けられた両主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型の型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
【0130】
更に、本願の第9の発明によれば、基本的には上記第8の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段は、第1主鋳型および型閉じ状態の複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えているので、閉塞部材を用いて塗布空間を形成した状態で、塗布機構により塗型剤を第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる鋳造装置の一例を概略的に示す正面説明図である。
【図2】 上記鋳造装置の側面説明図である。
【図3】 上記鋳造装置の保持炉の内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。
【図4】 上記鋳造装置の加圧制御系統を概略的にを示すブロック構成図である。
【図5】 上記鋳造装置の上型の底面説明図である。
【図6】 上記鋳造装置の下型の平面説明図である。
【図7】 上記下型のポート中子セット状態を示す平面説明図である。
【図8】 上記下型への中子セット状態を示す縦断面説明図である。
【図9】 図8のY9−Y9方向からの矢視図である。
【図10】(a) サイド型のスライドガイド機構を示す上型およびサイド型の縦断面説明図である。
(b) 図10(a)のY10B−Y10B方向からの矢視図である。
【図11】 ウォータジャケット中子とオイルジャケット中子の下型へのセット状態を示す部分縦断面説明図である。
【図12】 上記下型とウォータジャケット中子の巾木との係合部分を拡大して示す平面説明図である。
【図13】 図12のY13−Y13線に沿った縦断面説明図である。
【図14】 上記鋳型のガス抜き機構を示す中子支持部分の拡大縦断面説明図である。
【図15】 上記上型と下型の組み合わせ状態を示す鋳型の縦断面説明図である。
【図16】 上型のプラグ孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図17】 上型のボルト孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図18】 上記下型のスポット冷却機構を拡大して示す縦断面説明図である。
【図19】 本実施の形態に係る第2台車(中子台車)を示す正面説明図である。
【図20】 上記第2台車の塗布ボックスの上下駆動部分を拡大して示す説明図である。
【図21】 上記第2台車に搭載された覆い部材の平面説明図である。
【図22】 鋳型と覆い部材とスプレーノズルとブローノズルとの関係を示す縦断面説明図である。
【図23】 覆い部材内に配置されたスプレーノズルとブローノズルとスプレーノズル駆動部分を示す断面上面図である。
【図24】 スプレーノズルを平面説明図である。
【図25】 図24のY25−Y25線に沿った縦断面説明図である。
【図26】 スプレーノズル,ブローノズル及び吸引口の系統図である。
【図27】 スプレーノズルの動きと粉体塗型剤の吹き付けとブローエアの吹き出しと吸引とパージエア供給との関係を示すタイムチャートである。
【図28】 中子セット装置の中子保持爪の駆動機構の側面説明図である。
【図29】 上記中子保持爪の駆動機構の正面説明図である。
【図30】 上記中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図31】 従来例に係る中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図32】 他の従来例に係る中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図33】 上記低圧鋳造装置を用いた鋳造プロセスを示すフローチャートである。
【図34】 中子セット工程と塗型剤塗布工程とを中子台車の作動に関連して示すフローチャートである。
【図35】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示すフローチャートである。
【図36】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図37】 上記低圧鋳造装置の具体的な加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図38】 上記低圧鋳造装置の加圧制御方法の変形例を示す加圧パターン図である。
【符号の説明】
10…中子セット装置
21…覆い部材
22…スプレーノズル
23…ブローノズル
64…高圧印加部
64A…高電圧発生機
111…プラグ孔形成用突出部
112…ボルト孔形成用突出部
114…導入パイプ(プラグ孔形成用突出部)
115…排出パイプ(プラグ孔形成用突出部)
116…導入パイプ(ボルト孔形成用突出部)
BC…中子台車(第2台車)
DL…下型
DS(DS1,DS2,DS3)…サイド型
DU…上型
Mc…鋳造キャビティ
【発明の属する技術分野】
この発明は、鋳型に対して塗型剤を塗布するための塗布方法および塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、互いに対向するように配置した鋳型間に形成された容積部内に金属溶湯を注入・充填して鋳造品を得る場合、鋳型内表面での湯廻りを良好にするため、あるいは溶湯凝固後の鋳造品取り出し時の離型を容易にするために、鋳込み前に予め鋳型内表面に塗型剤を塗布しておくのが一般的である。
例えば、坩堝内の金属溶湯の湯面を加圧エア等で加圧してストーク内の溶湯を押し上げ、この押し上げられた溶湯を鋳型キャビティ内に供給して鋳造する、所謂、低圧鋳造法では、上下の金型のうち下型側に湯口が設けられることが多く、溶湯温度が低下し易い上型側での良好な湯廻り性を確保するために、特に、上型の内面への塗型剤の塗布を適正に行うが重要である。
【0003】
また、鋳造完了後に上型を上昇させて型開きを行った際には、通常、得られた鋳造品は上型とともに上昇するのでこの鋳造品を上型から離型させる必要があるが、このときの離型性が良くない場合には、エジェクタピンの突き出し力をより大きく設定する必要があるので、エジェクタ機構が大掛かりとなり、また、鋳造品に損傷を与える惧れもある。従って、この点においても、上型の内面への塗型剤の塗布を適正に行うことが強く求められることになる。
かかる低圧鋳造法における鋳型(上型)内面への塗型剤の塗布方法に関連して、本願出願人らは、粉体塗型剤を上型内面に塗布するに際して、上型内表面に十分に付着しないで落下してしまった塗型剤を、再度上型内表面に付着させることができるようにし、塗型剤の付着効率を高めて適正な塗布が行えるようにした塗布方法を提案した(特開平9−225589号公報参照)。
【0004】
ところで、例えば自動車用エンジンのシリンダヘッドの鋳造を行う場合、上下の一対の金型に加えてシリンダヘッド側面に対応した鋳型面を形成する複数の側壁部が設けられる。上記従来公報に係るシリンダヘッドの鋳造装置では、これら側壁部は下型瓦側に砂壁として形成されていたが、これら側壁部を、金型として製作し、上下の主鋳型の開閉方向(上下方向)に略直交する方向(横方向)にスライド可能な可動側壁鋳型とすることは、一般に良く知られている。
このように、複数の側壁部を横方向にスライド可能な可動の側壁鋳型とする場合、かかる可動側壁鋳型の全て、あるいは少なくとも一部(例えば、側壁部が4面であれば、そのうちの少なくとも2面に対応する側壁鋳型)を下型側に支持させるように配置するのが、従来、一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、側壁鋳型をこのように配置した場合には、塗型剤を塗布する際に、上型の内面とは別途に側壁鋳型の内面への塗布作業を行う必要があるので、塗布作業を2回に分けて(つまり2工程で)行うことになり、非常に作業効率が低くなるという難点があった。
また、塗型剤を鋳型内面に塗布する場合、塗型剤の鋳型内表面への良好な付着性(密着性)を確保することが重要であるが、この塗型剤の付着性は鋳型温度によって影響を受けるので、塗布時の鋳型温度を適正に管理する必要がある。
【0006】
また、例えば上記シリンダヘッドの鋳造を行う際には、シリンダ部への給排気ポートやエンジン冷却水の通路(ウォータジャケット)およびエンジンオイルの通路(オイルジャケット)などの通路部に対応する中子を鋳型内に組み付けて鋳造が行われるが、この中子の組付作業と塗型剤の塗布作業はともに鋳型を対象として行う作業である。
従って、このように、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布と中子の組付とを行う場合には、これら両作業をタイミング良く行うことが、鋳造プロセス全体の生産効率を高める上で重要である。
【0007】
そこで、この発明は、可動側壁鋳型を備えた鋳型の内面に塗型剤を塗布するに際して塗布作業の効率を高め、また、塗型剤の鋳型内面への付着性を高め、あるいは、この塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを行う必要がある場合における鋳造プロセス全体の生産効率を高めることができるようにすることを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本願の請求項1の発明(以下、これを本願の第1の発明という。)に係る塗型剤の塗布方法は、互いに対向するように配設された第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とで密閉した容積部を形成し、第2主鋳型に設けた湯口から上記容積部内に溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する方法であって、上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持され、各側壁鋳型は、上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、これを本願の第2の発明という。)は、上記第1の発明において、上記第1主鋳型と第2主鋳型とが上下方向に接離可能に設けられ、これら主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、これを本願の第3の発明という。)は、上記第2の発明において、上記塗型剤塗布手段が上記第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布している間に、上記第2主鋳型への中子の組み付けが行われることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項4に係る発明(以下、これを本願の第4の発明という。)は、上記第3の発明において、上記塗型剤塗布手段は、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項5に係る発明(以下、これを本願の第5の発明という。)は、上記第1〜第4のいずれか一の発明において、上記第1主鋳型に、その温度に応じて該鋳型を冷却する型冷却手段を設け、第1主鋳型の型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項6に係る発明(以下、これを本願の第6の発明という。)は、上記第1〜第5のいずれか一の発明において、上記第1主鋳型に電極を接続し、第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を静電塗布する
ことを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項7に係る発明(以下、これを本願の第7の発明という。)は、上記第1〜第6のいずれか一の発明において、第1および第2の主鋳型が型開きされ且つ各側壁鋳型が型開きされた状態で、前サイクルで得られた鋳造品を取り出し、次いで、上記各側壁鋳型を型閉じし、鋳型温度が冷却制御された下で各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するとともに、上記第2主鋳型に中子を組み付け、その後、第1および第2主鋳型を閉じ合わせ、鋳造キャビティ内に金属溶湯を注入・充填して該溶湯を加圧するとともに、各鋳型を所定の温度範囲に冷却制御し、その後、第1および第2の主鋳型を型開きし且つ各側壁鋳型を型開きして鋳造品を取り出すことを特徴としたものである。
【0015】
また、本願の請求項8の発明(以下、これを本願の第8の発明という。)に係る塗型剤の塗布装置は、上下方向に接離可能に設けられた第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とを備え、これら主鋳型と側壁鋳型とで形成された密閉した容積部内に、上記第2主鋳型に設けた湯口から溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する塗布装置であって、上記第1および第2の主鋳型が離間した状態で両者の型開き空間内に移動し得る塗型剤塗布手段が設けられるとともに、上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持されて上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型が上記型閉じ状態にセットされた下で、上記両主鋳型間に位置する塗型剤塗布手段が、各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴としたものである。
【0016】
更に、本願の請求項9に係る発明(以下、これを本願の第9の発明という。)は、上記第8の発明において、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドの鋳造に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本実施の形態に係る鋳造装置の正面説明図および側面説明図である。この鋳造装置Aは、所謂、低圧鋳造プロセス用のもので、下型DLおよび上型DUがそれぞれ下プラテン1および上プラテン2に取り付けられ、該上プラテン2は下プラテン1に対して上下方向に駆動される。つまり、上型DUは下型DLに対して上下方向に移動でき、これにより両者が接離可能(両者の型合わせ面どうしが当接した型閉じ状態と両者が離間した型開き状態とを選択的に取り得る)とされている。尚、後で詳しく説明するように、上記上型DUには、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型が取り付けられている。
【0018】
上記下プラテン1の下側方には、鋳造時に金属溶湯を供給するための保持炉FHが配設され、溶湯は下型DL側から供給されるようになっている。本実施の形態では、シリンダヘッド鋳造用の材料として、例えばアルミニウム(Al)合金が用いられ、上記保持炉FH内にはAl合金の溶湯が貯えられる。この保持炉FHは、好ましくは台車4(保持炉台車)上に固定されており、この保持炉台車4を駆動することにより必要に応じて下プラテン1に対して移動できるようになっている。尚、上記保持炉FHの内部構造等およびかかる保持炉FHを用いて行う低圧鋳造法の概略については後述する。
【0019】
上記鋳造装置Aには、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたときに該型開き空間K内に進退出可能な2つの台車BC,BPが備えられている(図2においては、図面の複雑化を回避するために、その図示は省略されている)。
第1の台車BPは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLの湯口への金網のセットと上型DUからの鋳造製品の取り出しとを行うもので、以下、適宜、製品取り出し台車と称する。また、第2の台車BCは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLへの中子等のセットと上型DUへの塗型剤の塗布とを行うもので、以下、適宜、中子台車と称する。また、これら第1および第2台車BP及びBCは、共通のレール3上を走行できるようになっている。尚、これら第1および第2台車BP及びBCの構造・作動等の詳細については後述する。
【0020】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた保持炉FHについて説明する。
図3は、保持炉FHの内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。この図に示すように、上記保持炉FHは、上部が開放された箱状に形成され、その内部には溶湯(金属溶湯)を貯える坩堝5が担台5B上に支持された状態で収納されている。保持炉FHの内壁面には、坩堝5内の溶湯を所定温度に加熱保持するヒータ8が配設されている。
また、保持炉FHの上部開放口は着脱可能な炉蓋7によって気密状に閉塞されており、これにより、保持炉FHの内部に上記坩堝5を覆う気密状の加圧室Rpが形成されている。
【0021】
上記炉蓋7の中央部には貫通孔7hが形成され、この貫通孔7hにはストーク6が嵌装されている。このストーク6は、その上側がデストリビュータ9に連通する一方、その下部が坩堝5内の溶湯に浸漬せしめられている。上記デストリビュータ9は、鋳型Dに複数の湯口Diが設けられている場合に、坩堝5からの溶湯を各湯口Diに分配して供給するもので、保持炉FHの上面(つまり炉蓋7の上面)と鋳型Dの下面(つまり下型DLの下面)との間に配置される。尚、本実施の形態では、下型DLに複数(例えば4個)の湯口Diが設けられている。
上記鋳型Dは、後述するように、上型DUと下型DLと複数のサイド型DSとで構成され、これら各型のこれら上型DU,下型DL及び各サイド型DSの各内面により形成される鋳造キャビティМcの内部には、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが配置されている。このキャビティМcは、下型DLに形成された湯口Diを介してデストリビュータ9の内部に連通している。
【0022】
上記保持炉FHには、加圧室Rpに加圧エアを供給するエア供給路81が設けられており、このエア供給路81を介して供給される加圧エアの圧力が坩堝FH内の溶湯の湯面に作用することによりストーク6内の溶湯が押し上げられる。そして、この押し上げられた溶湯は、ストーク6からデストリビュータ9及び湯口Diを介して、鋳型Dの鋳造キャビティМc内に供給・充填されるようになっている。
上記エア供給路81には加圧エアの供給及び停止の切換えを行う開閉式給気弁82が介設されると共に、この開閉式給気弁82よりも上流側のエア供給路81には、加圧エアの圧力を調整する圧力制御弁83が介設されている。また、この圧力制御弁83にはその開度を制御するサーボ機構84が付設されており、これら圧力制御弁83及びサーボ機構84により、坩堝FH内の溶湯の湯面に加えられる圧力の加圧パターンを変化させる圧力可変制御手段85が構成されている。
【0023】
一方、鋳型Dの上型DUにはリング状の絶縁体86が挿着され、この絶縁体86の両側における上型DUの各々の上部に、鋳造キャビティМc内に溶湯が充填されたときに導通する2本の配線87が接続されている。更に、両配線87は、これら両配線87が互いに導通したときに充填信号を送出する溶湯充填検知回路88に電気的に接続されている。上記絶縁体86、配線87及び溶湯充填検知回路88によって、溶湯のキャビティМc内への充填を検出する充填検知センサ89が構成されている。
また、上記溶湯充填検知回路88は、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させる加圧パターン制御手段90に電気的に接続され、該加圧パターン制御手段90には、溶湯の鋳造キャビティМc内への供給開始後、予め設定された所定時間が経過したときに経過信号を送出するタイマ94が電気的に接続されている。上記加圧パターン制御手段90は、例えば所謂CPU(中央演算処理装置)を内蔵しており、充填検知センサ89からの充填信号またはタイマ94からの経過信号に基づいて、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させるようになっている。
【0024】
図4は、上記鋳造装置Aの加圧制御系統の概略を示すブロック構成図である。この図に示すように、上記加圧制御系統には、開閉式給気弁82がОN(オン)操作されて加圧室Rpへの加圧エアの供給が開始されたときにオン信号を出力する加圧開始信号スイッチ95と、溶湯が鋳造キャビティМc内に充填されたとき充填検知センサ89より送出される充填信号によりオン信号を出力する充填信号スイッチ96と、鋳造が完了したときにオン信号を出力する鋳造完了スイッチ97とが設けられ、これら各スイッチ95,96及び97は加圧パターン制御手段90に電気的に接続されている。
上記タイマ94は、この加圧パターン制御手段90に接続されると共に、加圧開始信号スイッチ95及び鋳造完了スイッチ97が繋ぎ込まれている。そして、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると起動すると共に、起動後、所定時間t2が経過するとオン信号を出力し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けるとリセットするよう設定されている。
【0025】
上記加圧パターン制御手段90は、より好ましくは、第1および第2の二つのCPU91及び92を有している。
第1CPU91は、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると圧力可変制御手段85を制御して加圧室Rp内の圧力を急速に上昇させる一方、加圧開始後、所定時間t1が経過した後は圧力上昇速度を遅くし、充填信号スイッチ96又はタイマ94の何れかからオン信号を受けるとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第1加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
【0026】
また、第2CPU92は、充填信号スイッチ96又はタイマ94のいずれかからオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を上昇させ、この圧力が所定値に達するとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第2加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
このように加圧パターンが互いに異なる第1,第2の加圧信号をそれぞれ出力する第1,第2のCPU91,92と加算回路93とで加圧パターン制御手段90が構成されている。上記加算回路93は、第1CPU91からの第1加圧信号と第2CPU92からの第2加圧信号とを加算する回路であり、その加算信号を上述のサーボ機構84に送出するようになっている。
【0027】
次に、上記低圧鋳造装置Aで用いられる鋳型Dについて説明する。
図5は、上型DU側を型合わせ面側から(つまり下側から)見てその構造を模式的に示した底面説明図である。上型DUは、前述のように、下型DLに対して上下方向に接離可能に設けられ、この上型DUに、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3)が取り付けられている。また、本実施の形態では、鋳型Dは、より好ましくは、1回の鋳造工程で2個の鋳造品得るようにした、所謂、2個取り用の鋳型とされ、図5から分かるように、上型DUにおいても、1つの型盤110に左右対称に2つの型部が形成されている。
【0028】
これら左右の各型部には、その中央部に複数(本実施の形態では4個)のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数(本実施の形態ではそれぞれ5個)のボルト孔形成用の突出部112が設けられている。上記プラグ孔形成用の突出部111は、シリンダヘッドに点火プラグを挿入させる孔部を形成するためのものであり、また、ボルト孔形成用の突出部112はシリンダヘッドにボルト孔を形成するためのものである。
尚、上記各鋳型(上型DU,下型DL及びサイド型)は、いずれも例えば鋼製とされている。
【0029】
上型DUには、複数(本実施の形態では合計6個)のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3がそれぞれ2組)が取り付けられ、これら各サイド型DS1,DS2及びDS3にはそれぞれシリンダ装置121,122及び123(サイド型駆動シリンダ)が付設されている。
そして、これらシリンダ装置121,122及び123を駆動することによって、各サイド型DS1,DS2及びDS3をそれぞれ上型DUの型盤110に沿って(つまり、上型DUと下型DLの型閉じ方向と略直交する方向に)スライドできるようになっている。
【0030】
これらサイド型DS1,DS2及びDS3は、後述するように鋳造時および塗型剤塗布時など、鋳型Dを閉じて鋳造キャビティを形成する際には、図5に示されるように、それぞれ内方にスライド駆動されて閉じ合わされる。一方、鋳造完了後に鋳造品を鋳型D内から取り出す際には、上型DUを上昇させて上下の鋳型DU,DLを型開きした後、これらサイド型DS1,DS2及びDS3も、それぞれ外方にスライド駆動されて型開きされるようになっている。
【0031】
尚、後述するように、下型DLについても、上型DUに対応して1つの型盤130に左右対称に2つの型部が形成されており、その左右の型部の中央には、両型部を仕切るようにして砂壁138が取り付けられる。この砂壁138は、より好ましくは、下型DLに中子CО,CW及びCPを組み付ける際に同一の組付工程で下型DLに組み付けられる。
そして、このように、下型DLに中子CО,CW及びCP並びに砂壁138を組み付けた状態で、上型DUを下降させて上下の鋳型DU,DLを閉じ合わせると、上型DUの左右の型部の中央には、下型DLに組み付けられた砂壁138が位置して、左右の各シリンダヘッドの鋳造キャビティの側壁の一つが形成されることになる。すなわち、各シリンダヘッドの鋳造キャビティは、上型DUに設けられた3個の可動サイド型DS1,DS2及びDS3と、下型DLにセットされた固定砂壁130とで、その側面に対応した鋳型面(側壁面)が形成されるようになっている。
【0032】
図6は、下型DLの平面説明図である。尚、この下型DLについても、1つの型盤に左右対称に2つの型部が形成されているが、図6においては、片側(右側)の型部のみを図示し、左右が対象である点を除いてはこれと全く同一に形成されている他側(左側)の型部については、その詳細な図示は省略されている。
この下型DLには、図7にも示すように、左右の各型部に、後述するように中子CО,CW及びCPを組み付けるための巾木受け部が設けられている。すなわち、各型部の長手方向に所定間隔を隔てて配置された第1および第2の巾木受け部131及び132と、各型部の長手方向に沿って延びるように互いに所定間隔を隔てて配置された第3および第4の巾木受け部133及び134とが設けられている。
【0033】
上記第1および第2の巾木受け部131及び132は、前述のウォータジャケット中子CWを組み付けるための巾木受け部であり、該ウォータジャケット中子CWの巾木を受け合うものである。また、上記第3および第4の巾木受け部133及び134は、前述のポート中子CPの巾木を組み付けるための巾木受け部であり、該ポート中子CPの巾木を受け合うものである。
以上の巾木受け部131〜134を用いて、図8に詳しく示すように、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが、下型DLに対して組み付けられる。
【0034】
以下、これら各中子CО,CW及びCPの下型DLへの組付方法について説明する。
本実施の形態では、共にシリンダヘッドの長手方向に延びるように、且つ、上下に配置されるオイルジャケット中子CОとウォータジャケット中子CWについて、下側に配置されるウォータジャケット中子CWは、その両端部に設けられた第1および第2の巾木部141及び142を介して下型DLに組み付けられ、オイルジャケット中子CОは、その両端部に設けられた巾木143及び144が上記ウォータジャケット中子CWに支持されることにより下型DLに組み付けられている。
尚、本明細書において「巾木」というときは、中子本体部と一体に設けられたもの、及び別体に設けて中子本体と組み合わせて用いられるもののいずれをも含むものとする。
【0035】
すなわち、図11に示すように、下側にセットされるウォータジャケット中子CWは、その両端部に第1及び第2の巾木部141及び142が設けられ、各巾木部141,142には、下方に開口する凹状の第1および第2の係合部141h及び142hがそれぞれ形成されている。一方、下型DLの第1および第2の巾木受け部131及び132には、上方に突出する凸状の第1および第2の巾木係止部131a及び132aがそれぞれ形成されている。そして、第1および第2の巾木部141及び142の各係合部(第1および第2の係合部141h及び142h)を第1および第2の巾木受け部131及び132の各巾木係止部(第1および第2の巾木係止部131a及び132a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、ウォータジャケット中子CWが下型DLに組み付けられている。
【0036】
また、上側にセットされるオイルジャケット中子CОについても、その両端部に巾木部143及び144(第3および第4巾木部)が設けられ、各巾木部143,144には、ウォータジャケット中子CWの場合と同様の下方に開口する凹状の第3および第4の係合部143h及び144hがそれぞれ形成されている。一方、ウォータジャケット中子CWの第1および第2の巾木部141及び142の上面には、上方に突出する凸状の第3および第4の巾木係止部141a及び142aがそれぞれ形成されている。
【0037】
そして、第3および第4の巾木部143及び144の各係合部(第3および第4の係合部143h及び144h)を第1および第2の巾木部141及び142の上面に形成された各巾木係止部(第3および第4の巾木係止部141a及び142a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、オイルジャケット中子CОが、ウォータジャケット中子CWの各巾木部141及びB142を介して下型DLに組み付けられている。
尚、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際には、上記オイルジャケット中子CОの巾木部143及び144の上面側に、上型DUと共に下降して来たサイド型DS1及びDS2の上内面が当接するようになっている。
【0038】
このように、2本の長尺状の中子CW,CОのうち、上側に配置されるオイルジャケット中子CОはその巾木143及び144が、下側に配置されるウォータジャケット中子CWの巾木141及び142に支持されることによって下型DLに組み付けられているので、両中子CW,CОは互いの巾木を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられることになり、両者CW,CОをそれぞれ個別に鋳型に組み付ける場合に比べて、両中子CW,CОの軸芯間の距離を極めて安定して一定値に保つことができる。これにより、各中子CW,CОに対応する通路(ウォータジャケット及びオイルジャケット)間の肉厚管理を確実に行うことができるのである。
【0039】
また、かかる構成を採用することにより、予め両中子CW,CОを一体的に組み合わせておき、この組み合わせた中子(CW+CО)を下型DLに組み付けるようにすることも可能になり、中子組付工数を削減でき、また、自動組付を行う場合にあっては、アクチュエータの数も少なくて済み、中子組付装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0040】
更に、本実施の形態では、図12及び図13に詳しく示すように、上記第1係合部141hの内面と第1巾木係止部131aの外面とは、その形状および寸法が実質的に略同じになるように設定されており、第1係合部141hは第1巾木係止部131aに対して、その全面(テーパ面を含めて4面)について隙間無く、従って、全面について移動不能に係合するようになっている。
また、上記第2巾木係止部132aは、中子CWの長手方向についてのみ、その凸部の厚さ寸法が第2係合部142hの凹部幅よりも所定量だけ小さく設定され、かつ、中子CWを下型DLに組み付けた時点で、第2巾木係止部132aの長手方向における両側に一定量以上の隙間が設けられるように、両者の位置関係が設定されている。
【0041】
一方、図12から良く分かるように、中子CWの横方向につては、上記第2係合部142hの内面寸法と第2巾木係止部132aの外面寸法とが実質的に略同じになるように設定されており、第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して、その横方向について隙間無く、従って、この方向について移動不能に係合するようになっている。
すなわち、上記第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0042】
このように、下型DLに対して直接に組み付けられるウォータジャケット中子CWの一端側に設けられた第1係合部141hは鋳型(下型DL)の第1巾木係止部131aに対して移動不能に係合する一方、上記ウォータジャケット中子CWの他端側に設けられた第2係合部142hは下型DLの第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するので、中子CWの位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、中子CWの長手方向については、当該中子CWと下型DLの熱膨脹量の差を有効に吸収することができ、この熱膨脹量の相違に起因して、中子CWにクラックや折損等の不具合が生じることを防止できるのである。
【0043】
また、上記ウォータジャケット中子CWの両端部の各巾木141及び142に設けた第3および第4の巾木係止部141a及び142aと、ウォータジャケット中子CWの上方に配置されるオイルジャケット中子CОの両端部の各巾木143及び144に設けた第3および第4の係合部143h及び144hとについても、下型DLに設けた第1および第2巾木係止部131a及び132aとウォータジャケット中子CWに設けた第1および第2の係合部141h及び142hとの組み合わせにおける場合と同様の構成により、第3係合部143hは上記第3巾木係止部141aに対して移動不能に係合する一方、第4係合部144hは上記第4巾木係止部142aに対して中子の長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0044】
これにより、オイルジャケット中子CОのウォータジャケット中子CWに対する位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、これら中子の長手方向については、両者CО,CWの熱膨脹量の差を有効に吸収することができる。その結果、中子CО,CWどうしを予めセットする際あるいは鋳造時などにおいて、両者CО,CWの熱膨脹量の相違に起因して、中子CО及び/又はCWにクラックや折損等の不具合が生じることも防止できるのである。
【0045】
また、本実施の形態では、鋳造時に上記2本の長尺の中子(オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CW)で発生するガスを各中子CО,CWの巾木部分から吸引して外部に排出するようにしている。
すなわち、図14に詳しく示すように、例えば、オイルジャケット中子CОの第4巾木部144及びウォータジャケット中子CWの第2巾木部142側では、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際に、上記各巾木部144及び142の外面と、第2巾木受け部132の外面を含む下型DLの表面と、オイルジャケット中子CОの巾木部144の上面側に当接するサイド型DS1の内面とで、密閉空間101が形成される。
【0046】
上記サイド型DS2の側面には、この密閉空間101に連通する例えば可撓性のホース102の一端が繋ぎ込まれており、該ホース102の他端側はガス吸引手段としての真空ポンプ103に接続されている。
そして、この真空ポンプ103を駆動して密閉空間101内を吸引することにより、オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CWのバインダが鋳造時にガス化することによって生じたガスが吸引されて鋳造キャビティの外部に排出されるようになっている。
【0047】
このように、上記両中子CО及びCWの巾木部分144及び142から、鋳造時にこれら中子CО及びCWで発生するガスを吸引する吸引手段103(真空ポンプ)が設けられているので、中子CО及びCWが長尺物であっても、その内部に発生したガスをその巾木部分144及び142から強制的に吸引して迅速に鋳造キャビティの外部に排出させ、得られた鋳物にガス欠陥が生じることを効果的に防止できるのである。
【0048】
尚、この場合において、両中子CО及びCWは互いの巾木部分144及び142を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられているので、たとえ一方の中子が上記密閉空間101内に面しておらず、真空ポンプ103から実質的に遮断されている場合であっても、他方の中子の巾木からガスの吸引が行われるので、上記一方の中子の内部で発生したガスも有効に鋳型外部に排出することが可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、上述のようにしてウォータジャケット中子CWとオイルジャケット中子CОとを下型DLに対して組み付けることにより、これら中子CWおよびCОの各巾木の内側面によってシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されているようになっている。
すなわち、ウォータジャケット中子CWの巾木部分141及び142の各内面141f及び142f(図11参照)とオイルジャケット中子CО巾木部分143及び144の各内面143f及び144fが、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部をなしている。
【0050】
このように、上記各中子CW及びCОの巾木141〜144の内側面141f〜144fによりシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部を形成することにより、中子CW及びCОの巾木141〜144を利用して鋳型面の一部を形成することができる。
この場合、鋳物砂を主原料とする中子の側面で鋳型面の一部が形成された鋳型部分への伝熱は他の鋳型部分に比べて大幅に抑制されるので、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
【0051】
これにより、上記ウォータジャケット中子CWが組み付けられる側の鋳型(下型DL)に設けられた湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)への熱の伝達を抑制し、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
すなわち、鋳込み工程後の金属溶湯をこのような指向性の下に冷却・凝固させることにより、鋳造キャビティ内に存在するガスは次第に湯口Di側に押しやられ、最終的にはこの湯口部分に溜まった状態で凝固を終えるようにすることが可能となる。この湯口部分は、鋳造完了後に不要部分として切断除去されるものであるので、鋳造製品自体については、ガスが残存する惧れがそれだけが少なくて済み、鋳造欠陥の発生を有効に抑制できるのである。
【0052】
更に、図7〜図9から良く分かるように、下型DLには、上記ウォータジャケット中子CW及びオイルジャケット中子CОと略直交する方向へ延びる第3の中子として、シリンダヘッドの給排気ポートに対応したポート中子CPが、その巾木145,146を巾木受け部135,136を含む鋳型側壁に支持させた状態で組み付けられており、これらポート中子CPの巾木145,146の内側面145f,146fによりシリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されている。
また、特に、図7における左側(つまり、下型DLの中央側で、図8においては右側)のポート中子CPについては、その巾木145を支持する鋳型側壁の少なくとも一部が砂壁138で構成されている。
【0053】
従って、シリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面を含む鋳型部分についても、上記と同様の理由により、他の鋳型部分に比べて伝熱が大幅に抑制されるので、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性が与えられ、鋳造欠陥の発生の抑制に貢献することができる。
【0054】
また、更に、本実施の形態では、図11から良く分かるように、上記ウォータジャケット中子CWの巾木141の外側面およびオイルジャケット中子CОの巾木143の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS1のテーパ状内面127をスムースに案内するガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられている。
上記各中子CW及びCОの巾木141及び143の外側面にこのようなガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができるのである。
【0055】
また、更に、本実施の形態では、図8から良く分かるように、上記ポート中子CPの巾木146の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS3のテーパ状内面126をスムースに案内するガイド用のテーパ部146gが設けられている。また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられている。
上記ポート中子CPの巾木146の外側面にこのようなガイド用のテーパ部146gが設けられ、また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができる。
【0056】
また、更に、本実施の形態では、上型DU及び下型DLの型閉じ方向と略直交する方向にスライド可能なサイド型DS(DS1〜DS3)が上型DUに設けられているが、図10(a)及び図10(b)に示すように、この上型DUには、上記サイド型DSの下側に位置して該サイド型DSのスライド動作を案内する下ガイド部119aが設けられている。
この下ガイド部119aの両端部はそれぞれ横ガイド部119bに連結されており、これら一対の横ガイド部119bと上記下ガイド部119aとで、サイド型DSのスライド動作を案内するためのフレーム状のスライドガイド119が形成されている。これにより、特にガイド部を別設する必要なしに、上記サイド型DSのスライド動作をスムースに行わせることができる。
【0057】
本実施の形態では、上記鋳型Dに、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御するようにしている。
次に、本実施の形態に係る鋳型Dの冷却制御について説明する。
まず、上型DUの冷却制御について説明する。前述のように、上型DUの左右の各型部には、その中央部に複数のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数のボルト孔形成用の突出部112が設けられている(図5参照)。本実施の形態では、これら突出部111及び112に上型DUの冷却制御機構が設けられている。
【0058】
すなわち、図15および図16に示すように、プラグ孔形成用の突出部111の内部には、その軸線方向に伸長する空洞部111hが設けられ、各空洞部111hには、特に図16に詳しく示すように、冷却媒体を空洞部111hの内部に導入する導入パイプ114と、冷却媒体を空洞部111hの外部に排出する排出パイプ115とが、それぞれ挿入されている。上記導入パイプ114は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ115は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記導入パイプ114及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ115及び冷却媒体の回収装置(不図示)を含む冷却媒体循環系が上記プラグ孔形成用の突出部111における冷却手段を構成している。
【0059】
また、図17に詳しく示すように、ボルト孔形成用の突出部112の内部にも、その軸線方向に伸長する空洞部112hが設けられ、各空洞部112hには、冷却媒体を空洞部112hの内部に導入する導入パイプ116が挿入されている。このボルト孔成形用の突出部112の場合には、空洞部112h内に導入された冷却媒体は、空洞部112hの開口から外部に排出されるようになっている。上記導入パイプ116は、プラグ孔形成用の突出部111用のものとは異なる冷却媒体供給源(不図示)に接続されており、この冷却媒体供給源および導入パイプ116を含む冷却媒体供給系によって、上記ボルト孔形成用の突出部112における冷却手段が構成されている。
【0060】
本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の冷却に適正な指向性を持たせ、欠陥の少ない高品質の鋳造品を得られるようにするために、各突出部111,112にそれぞれ設けられた冷却手段について、鋳型DUの中央に比較的近い内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)のものが、型周囲に比較的近い外側の突出部(つまり、ボルト孔形成用の突出部112)のものよりも冷却能力が大きく設定されている。
具体的には、上記プラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体に液体(例えば水)が用いられ、ボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体には気体(例えばエア)が用いられている。
【0061】
このように、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側のプラグ孔形成用の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側のボルト孔形成用の突出部112のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0062】
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0063】
特に、上記内側のプラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体が液体(水)であり、外側のボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体は気体(エア)であるので、液体と気体の熱伝達特性の違いを利用して、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段に関し、型中央に比較的近い内側の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112のものよりも冷却能力が大きくなるような設定を確実に行うことができる。
【0064】
また、特に、上記各突出部111及び112は、少なくとも、シリンダヘッドの中央に比較的近いプラグ孔とシリンダヘッドの周囲に比較的近いボルト孔にそれぞれ対応しているので、シリンダヘッドに特有のプラグ孔およびボルト孔を利用して、鋳込み後の金属溶湯に適正な指向性を持った冷却凝固を行わせることができるのである。
【0065】
更に、本実施の形態では、上記内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)について、これに設けた冷却手段の冷却作動休止後、突出部111の空洞部111h内に残留した冷却媒体(つまり液体)を排除するために、具体的には図示しなかったが、空洞部111h内をエアパージするパージエア供給パイプ(残留液体排除手段)が設けられている。
このような残留液体排除手段を設けたことにより、冷却媒体としての液体が突出部111の空洞部111h内に温度制御されない状態で残留することにより、次サイクルの鋳造時に当該突出部111の冷却手段を作動させた際に温度制御の精度が低下することを確実に防止できるのである。また、突出部111の空洞部111h内での錆の発生も防止できる。
【0066】
次に、下型DLの冷却制御について説明する。
本実施の形態では、図15に示すように、下型DLに、特定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられている。
該スポット冷却機構151は、下型DLの所定部位に形成された取付穴156に嵌合される本体部152と、該本体部152内に形成された冷却媒体通路152hに冷却媒体を供給する供給パイプ153と、上記冷却媒体通路152hから冷却媒体を排出させる排出パイプ154とを備えている。上記本体部152は、その内部に冷却媒体通路152hが設けられることにより略筒状に形成されている。
【0067】
上記供給パイプ153は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ154は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記本体部152の内部に形成された冷却媒体通路152hと、上記供給パイプ153及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ154及び冷却媒体の回収装置(不図示)とで、スポット冷却機構151の冷却媒体循環系が構成されている。
【0068】
上記スポット冷却機構151は、その本体部152の外周部が下型DLに設けられた取付穴156に嵌合し、上記本体部152の先端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいる。
このように、上記スポット冷却機構151は、その一端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいるので、この部分の金属溶湯を本体部152の長手軸方向に指向性を持たせて選択的に冷却することができる。また、上記本体部152は外周部が下型DLに設けた取付穴156に嵌合しているので、この嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させることが可能となる。
【0069】
本実施の形態では、下型DLが鋼製であるのに対して、上記本体部152を例えばアルミニウム合金製として、両者の材質を変えることにより、両者の嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させ、スポット冷却機構151による冷却に上述の指向性を持たせるようにしている。
尚、この替わりに或いはこれに加えて、両者の嵌合部に隙間を設けて嵌合部からの熱伝達を抑制するようにしても良い。また、両者の嵌合部に例えばセラミック溶射層などの断熱層を設けることなどにより、本体部152の長手軸方向以外の方向における熱伝播が抑制されるようにしても良い。
【0070】
以上のように、下型DLに所定方向(本体部152の長手軸方向で鋳造キャビティМcに臨む方向)以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151を設けたことにより、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0071】
また、前述のように、本実施の形態では、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の一部が砂壁で形成され、下型DLに砂壁138が組み付けられるが、上記スポット冷却機構151はこの砂壁138の近傍に設けられている(図6及び図7参照)。尚、このスポット冷却機構151は、砂壁138の近傍でも湯口Diからできるだけ離れた部位に設けられる。
このように、砂壁138の近傍に上記スポット冷却機構151を設けることにより、熱伝達性が低く冷却されにくい砂壁138の近傍を選択的に強制冷却することができる。
【0072】
更に、本実施の形態では、前述のように、下型DLの下方に、各湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される金属溶湯を供給する溶湯供給部としてのデスとリビュータ9が設けられている。一方、下型DLの下面側には所定深さの凹部105が形成されており、この凹状の空間部105に上記スポット冷却手機構151の冷却媒体経路としての上記供給パイプ153及び排出パイプ154が配置されている。また、この凹状の空間部105に、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が配設されている。
尚、各湯口Diには、鋳造キャビティМc内に鋳造品の機械的特性に悪影響を及ぼす異物等が混入することを防止するために、スクリーンメッシュ(金網109)が取り付けられる。この金網109は、通常、鋳造品の取り出しに伴なって除去されるものであり、各鋳造サイクル毎に新たに取り付けられる。
【0073】
このように、下型DLの下方に湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される溶湯を供給する溶湯供給部9(デストリビュータ)が設けられており、該デストリビュータ9と下型DLとの間に所定の空間部105を設け、該空間部105に上記スポット冷却機構151用の冷却媒体経路153及び154を配置するとともに、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が設けられているので、通常、スペースを確保することが難しい下型DLの下方に支障無く冷却媒体経路153及び154を設けることができ、上記スポット冷却機構151を容易に下型DL側に設けることができる。
【0074】
以上のように、上型DU側には、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側の突出部111(プラグ孔形成用の突出部)のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112(ボルト孔形成用の突出部)のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティМcの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0075】
一方、下型DL側には所定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられているので、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について下型DL側から所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができる。
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記各冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0076】
尚、本実施の形態では、スポット冷却機構151は下型DLのみに設けられていたが、これを上型DUのみ或いは両方の鋳型DU及びDLに設けるようにしても良い。
【0077】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた第1および第2の台車BP及びBC、特に、第2台車(中子台車)BCについて説明する。
これら台車BP及びBCは、前述のように、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたとき(図1参照)、この型開き空間K内に進退出可能とされたもので、中子台車BCは、型開き空間Kの外部で中子および砂壁を保持した後、型開き空間K内に進出(前進)し、保持した中子および砂壁を下降させて下型DLにセットする。
【0078】
また、中子台車BCは、後述するように、粉体塗型剤を上型DUおよびサイド型DSの鋳型内表面に塗布するための塗布ボックスTを搭載しており、型開き空間K内において塗布ボックスTを上昇させて、後述のようにして上型内表面(下型DLに対する合わせ面で、下向きの面となる)およびサイド型DSの内面に対して粉体塗型剤が塗布される。尚、本実施の形態では、この塗型剤として、例えば珪藻土を主原料とするものを用いた。この替わりに、例えばカーボンを主原料とするものなど、他の好適な塗型剤を用いることができる。
上型DUおよびサイド型DSを下降させて下型DLに型合わせし、その後、これら鋳型DU,DS及びDLにより形成されるキャビティМc内に溶湯を供給・充填することにより、所定の鋳造品(シリンダヘッド)が鋳造される。そして、得られた鋳造品は、上型DUが上昇して型開き空間Kが構成された状態で、製品取り出し台車BPによって、中子台車BCの待機位置とは反対方向へ取り出されるのである。
【0079】
上記中子台車(第2台車)BCについて、図19〜図21を参照しながら、より詳細に説明する。この中子台車BCは、その下部に中子セット装置10を搭載している。この中子セット装置10は、ガイドロッド12によってガイドされつつ上下動し得るベースプレート13を有し、このベースプレート13は、中子セット装置10の上下駆動手段となるシリンダ装置14によって上下駆動される。上記ベースプレート13には、その下方部分において、図19における紙面方向に開閉される複数の保持爪15が支持されると共に、該保持爪15を開閉するためのアクチュエータを含む開閉機構16が設けられている。
【0080】
上記中子セット装置10は、保持爪15と並列に配置されて上下方向に伸びる位置決めピン17aを有している。この位置決めピン17aは、実質的に上下方向のシリンダ装置17のピストンロッドによって構成されており、中子台車BCが型開き空間K内の所定位置に移動して来て、位置決めピン17aが下降し下型DLの位置決め孔(不図示)に挿入されることにより、中子台車BCの型開き空間K内での位置決めが行われる。この位置決めされた状態で、前述した下型DLへの各中子および砂壁のセットと上型DUおよびサイド型DSの内表面への粉体塗型剤の塗布とが行われる。
【0081】
上記塗布ボックスTは、その外殻が実質的に覆い部材21によって構成され、その内部には、図21〜図23に示すように、粉体塗型剤吹きつけ用のスプレーノズル22およびブローエア吹出用のブローノズル23が保持されている。覆い部材21は、上方のみが開口された箱形形状とされて、底壁部と左右前後の側壁部とを有しており、型開き空間K内に位置させられたときに、その上方開口が上型内表面に臨むようになっている。
上記覆い部材21は、中子セット装置10(ベースプレート13)よりも高い位置、より具体的には中子台車BCの上フレームより高い位置において、上下動可能に中子台車BCに保持されている。すなわち、覆い部材21の外壁にプレート24が設けられ、このプレート24と中子台車BCのフレームとの間に、上下駆動手段としてのシリンダ装置25が架設されている。上記プレート24には、中子台車BCから上方へ伸びるガイドロッド26が上下方向に摺動自在に貫通しており、シリンダ装置25の伸縮に応じて、覆い部材21が上下方向へ滑らかに駆動されるようになっている。
【0082】
上記覆い部材21,スプレーノズル22およびブローノズル23等の構成要素について、図22〜図25を参照しながらより詳細に説明する。
上記覆い部材21には、その上端縁全長に渡ってフランジ部21aが形成されており、このフランジ部21aの全面にわたって、例えばゴム等の弾性部材からなるパッキン31が固定されている。これにより、図22に示されるように、覆い部材21が型開き空間Kにおいて上昇させられ、パッキン31が上型DUの下面に当接・押圧されたとき、上記覆い部材21と上型DUおよびサイド型DSとが共働して、覆い部材21内に密閉空間Mが形成されることになる。
【0083】
このとき、本実施の形態では、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数のサイド型DSが、上述のように、全て上型DUに支持されおり、全サイド型DSを上記型閉じ状態にセットした上で、これら各サイド型DSおよび上型DUの内面に塗型剤が塗布されるので、湯口Diが設けられている下型DLに少なくとも一部のサイド型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で上型DUおよび全てのサイド型DSの内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができるのである。
【0084】
上記覆い部材21の前後側壁の下部には、互いに平行に長く伸びるスリット32が形成され、このスリット32は、覆い部材21の左右方向ほぼ全長にわたって伸びている。覆い部材21内には、細長棒状の保持部材33が配設され、この保持部材33の各端部がそれぞれ上記スリット32を摺動自在に貫通している。上記保持部材33の一端部33aには、覆い部材21の外部における走行輪としてのローラ34が回転自在に取り付けられ、このローラ34は、覆い部材21の側壁外部に固定されたガイドレール35上を走行できるようになっている。
【0085】
一方、上記保持部材33の他端部33bには、覆い部材21の外部においてナット部材36が固定され、このナット部材36が、スリット32に沿って長く伸びるねじ棒37の外周に螺合されている。該ねじ棒37は、覆い部材21に回転可能に保持されているもので、その一端部が駆動手段としての回転式のアクチュエータ(本実施の形態では、例えば電動モータ)38に連結されている。これにより、アクチュエータ38を例えば正転させることによって、ナット部材36つまり保持部材33が図23における下方ヘ駆動され、アクチュエータ38を逆転させることによって、保持部材33が図23における上方へ駆動される。
【0086】
この保持部材33に対して上記スプレーノズル22およびブローノズル23が固定されている。スプレーノズル22は、図24および図25に詳しく示されるように、両端が閉じられた細長い筒状本体22aを有し、この筒状本体22aは、内部の細長い共通空間22bと、該共通空間22bにそれぞれ連通する複数の連通孔22cとを有している。各連通孔22cは筒状本体22aの長手方向に間隔を開けて直列に形成され、これら各連通孔22cにはそれぞれノズル部材22dが取り付けられている。
かかるスプレーノズル22が、保持部材33の長手方向に沿うように、かつ互いに間隔をあけて一対設けられ、ともに保持部材33に固定されている。各スプレーノズル22には、保持部材33に対する固定用のねじ孔39が設けられている。スプレーノズル22の保持部材33に対する取り付けは、ノズル部材22dが上向きとなるように設定して行われる。
【0087】
ブローノズル23も上記スプレーノズル22と実質的に同様の構造として形成されているが、ノズル部材22dに相当する部材は無く、連通孔22cに対応する開口がそのままブローエア吹出口23c(図22参照)とされている。
そして、このブローエア吹出口23cが下向きつまり覆い部材21の底壁に向くように設定して、ブローノズル23が保持部材33に対して固定されている。このブローノズル23も、スプレーノズル22の場合と同様に、保持部材33の長手方向に沿うように、かつ互いに間隔をあけて一対設けられている。
【0088】
以上のように、本実施の形態では、中子台車BCに設けられた塗型剤塗布手段は、上型DUおよび型閉じ状態の複数のサイド型DSと組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材としての覆い部材21と、塗布空間М形成時に塗布空間М内に位置する塗布機構としてのスプレーノズル22とを備えているので、覆い部材21を用いて密閉空間(塗布空間)Мを形成した状態で、スプレーノズル22により塗型剤を上型DUおよび各サイド型DSの内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、上下の鋳型DU/DLの型開き空間K内に進退動可能な第2台車(中子)BCに取り付けられており、該台車BCには、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して下型DLに中子を組み付ける中子組付装置10が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【0089】
スプレーノズル22に対する粉体塗型剤の供給は、覆い部材21の底壁に取り付けた接続部材41から、覆い部材21内に配設した長いフレキシブルホース42を介して行われる。このホース42は、スプレーノズル22の長手方向における略中間部において、その内部の共通空間22bに連通するように接続されている(図24および図25参照)。
ブローノズル23に対するブローエアの供給は、前述のスリット32を通る細長いフレキシブルホース43を介して行われる。また、覆い部材21の底壁には、その略中央部分に2つの吸引口44が形成されている。この吸引口44は、ホース45を介して吸引装置46(図26参照)に接続されている。
【0090】
図26は、上記スプレーノズル22,ブローノズル23及び吸引口44に対する接続系路を説明するためのものである。この図26に示すように、エアー供給源(不図示)から供給された元エアは、レギュレータ51,フィルタ52及びドライヤ53を順次経て、所定圧力に調整された清浄な乾燥エアとされる。
上記ドライヤ53の下流側は、互いに並列な5系統の分岐系路に分岐されている。分岐系路61は、粉体塗型剤の供給系路となるもので、電磁式開閉弁62,エゼクタ63および高電圧印加部64を順次経てスプレーノズル22に繋がっている。前記エゼクタ63には、空気式開閉弁65を介して粉体塗型剤の貯溜タンク66が接続され、開閉弁65が開いている状態で系路61から供給されるエアによってタンク66から粉体塗型剤を吸い上げて、粉体塗型剤をスプレーノズル22へ圧送するようになっている。
【0091】
上記空気式の開閉弁65には分岐系路67が接続され、この系路67には電磁式の開閉弁68が接続されている。これにより、電磁式の開閉弁68の開閉に応じて、空気式の開閉弁65が開閉される。
尚、高電圧印加部64は、高電圧発生器64Aによって、例えば+(プラス)電極)に繋がれた上型DUと所定の高電圧差が生じるように粉体塗型剤を印加するもので、いわゆる静電吸着をも利用した粉体塗型剤の付着(つまり、塗型剤の静電塗布)を行うようになっている。
このように上型DUに電極を接続し、この上型DUおよび各サイド型DSの内面に塗型剤を静電塗布するようにしたので、通常のスプレー塗布だけの場合に比べて、塗型剤の鋳型内表面への塗布状態の均一性と付着性とを十分に高めることができるのである。
【0092】
上記タンク66には分岐系路69が接続され、該分岐系路69には電磁式の開閉弁70が介設されている。この開閉弁70が開かれると、タンク66内の粉体塗型剤が攪拌されて、エゼクタ63へ向けての粉体塗型剤の移送が効果的に補助される。
上記エゼクタ63の先端部には分岐系路71が接続され、この分岐系路71には電磁式の開閉弁72が介設されている。これにより、開閉弁72を開くと、パージエアがエゼクタ23を経てスプレーノズル22へ供給される。
また、ブローノズル23には分岐系路73が接続され、この分岐系路73には電磁式の開閉弁74が介設されている。そして、この開閉弁74を開くことにより、ブローノズルからブローエアが吹き出されるようになっている。
【0093】
図27は、スプレーノズル22の移動とスプレーノズル22からの粉体塗型剤の吹き付けとブローノズル23からのブローエア吹出と吸引口44からの吸引とパージエアの供給との関係の一例を示すタイムチャートである。
この図27に示された例では、スプレーノズル22は、覆い部材21の一端となる原位置から前進端へと移動させられた後、再び原位置へ向かって戻るような動作を行い、この1往復の動作で粉体塗型剤の上型およびサイド型の内表面への塗布が完了する。尚、この場合、スプレーノズル22の移動速度は例えば定速とされている。
スプレーノズル22からの粉体塗型剤の塗布は、スプレーノズル22が原位置から若干進んだ位置から開始され、前進端の若干前位置から若干後位置にかけて一旦休止された後、再び粉体塗型剤の吹きつけが再開され、原位置へ戻る若干手前で粉体塗型剤の吹きつけが終了する。また、ブローエアの吹出態様は、粉体塗型剤の吹きつけと同様に行われる。
【0094】
吸引口44からの吸引は、その開始が粉体塗型剤の吹き付け開始時期と同じである。ただし、吸引の終了時期は、覆い部材21により形成さる密閉空間M内に残留した粉体塗型剤を吸引して回収する関係上、粉体塗型剤の吹きつけ終了よりもかなり遅い時期とされる。つまり、スプレーノズル22が原位置へ復帰した後もしばらくの間は吸引が行われるようになっている。
一方、パージエアの供給は、粉体塗型剤の吹きつけ終了する時期よりもやや前の時期から開始される。このパージエアの供給は、スプレーノズル22が原位置へ復帰した後もしばらくの間継続して行われるが、吸引終了よりも早い時期に供給停止とされる。
【0095】
尚、本実施の形態では、より好ましくは、中子保持用の保持爪15を上下方向に駆動するシリンダ装置14は、フローティング機構によって支持されている。すなわち、従来では、例えば図31に示すように、中子211の巾木212の上面に突設された突起部213をクランパ215で水平方向に把持して、中子211を鋳型219に対して組み付けるのが一般的である。
【0096】
このとき、巾木212の係合部212hが鋳型219に設けた巾木係止部219aに正しく係合するように位置決めして組付作業が行われるのであるが、実際には、鋳型219と中子211との熱膨張量の相違などに起因して、両者間に位置ずれが生じる。そして、この位置ずれが生じた状態で組付が行われると(図31における破線参照)、この従来例では、クランパ215の把持状態を解除して中子211の重力の利用により組付を行うので、上記係合部212hを巾木係止部219aに正しく(正確に嵌まり込むように)係合させることが難しい。このため、中子211が浮き上がった状態で組み付けられ、そのまま鋳造が行われると、鋳造品に不良が生じるという問題があった。
【0097】
また、他の従来例では、例えば図32に示すように、巾木222の上面を押さえ具227で当て止めた状態で、シリンダ226によって開閉させられる保持爪225を用いて巾木222を上下方向に力を作用させてクランプされる。
この場合には、巾木222を押さえながら組み付けることができるのであるが、巾木222の係合部222hと鋳型229の巾木係止部229aの間に位置ずれが生じた場合には、中子221が損傷あるいは折損するという問題があった。
【0098】
本実施の形態では、図30に模式的に示すように、中子181を保持するための保持爪15を開閉動作させるシリンダ装置16aはフローティング装置19によって支持されている。また、巾木182の上面には圧縮スプリング18が配設され、この圧縮スプリング18の上端側は上記フローティング装置19に取り付けられている。従って、巾木182は、上記スプリング18の弾性力によって常時下方に付勢されることになる。
【0099】
上記フローティング装置19は、従来から良く知られ広く市販されているもので、例えば内蔵されたボール体と加圧エアの作用によって、エア圧が加えられた状態でロック(固定)され、エア圧が作用しない状態では、ロックが解除されてフローティング状態(浮動可能に支持する状態)が得られるものである。
上記スプリング18の上端をこのフローティング装置19を介して支持することにより、スプリング18の上端支持部は(従って、巾木182も)、フローティング範囲内でその位置が自在に移動できることになる。
【0100】
以上の構成を採用することにより、巾木182の係合部182hを鋳型189の巾木係止部189aに係合させて中子181を鋳型189にセットする際、上記係合部182hと巾木係止部189aとの間に位置ずれが生じても、フローティング装置19のフローティング機能を利用して、或いはこれに加えて更にスプリング18の水平方向の弾性作用を利用して、巾木182の位置を微細に自動調節でき、上記係合部182hのテーパ面が巾木係止部189aのテーパ面に案内されながら、また、圧縮スプリング18の付勢力で下方に付勢されながら、スムースで且つ正確な係合状態が得られる。
これにより、従来のように、中子の浮き上がりや損傷が生じる惧れを無くすることができるのである。
【0101】
図28および図29は、以上の中子保持/組付機構を具体化した装置を示している。中子保持用の保持爪15を開閉動作させるシリンダ装置16aは、その上方に位置するフローティング装置19によって支持されており、また、中子CОの巾木部143の上面には圧縮スプリング18が配設されている。
尚、このような保持爪15およびシリンダ装置14並びにフローティング装置18等で構成される中子保持機構は、中子CОの長手方向の両端側に一対に設けられている。
【0102】
次に、以上のように構成された鋳造装置Aを用いて行われる鋳造プロセスについて、図33〜図35のフローチャートを参照しながら説明する。
この鋳造プロセスは一連の工程が繰り返して行われるものであるが、ここでは、例えば、前サイクルの鋳造品(製品)が鋳造され、これを鋳型Dから取り出す時点から、説明を始める。
鋳造が完了して上下の鋳型DU/DLが型開きされた後、まず、ステップ#1で、第1台車(製品取り出し台車)BPが型開き空間K内に前進し、ステップ#2で、サイド型DS(DS1〜DS3)が型開きされる。尚、このステップ#2の型開きをステップ#1と並行して行うようにしても良い。
【0103】
次に、ステップ#3で、上型DU側のエジェクタ機構(不図示)を駆動させて製品を上型DUから取り出す。このとき、上型DUの内面には塗型剤が塗布されているので、容易に製品を上型DUから離型させることができる。取り出された製品は第1台車BPの上側で受け取られる。
一方、第1台車BPの下部では、上記ステップ#2及び/又はステップ#3と並行して、金網ホルダ(不図示)に保持された金網109が下型DLに設けられた湯口Diにセットされる(ステップ#4)。尚、上型DUには、前サイクルで使用された金網109の断片あるいは前回サイクルでの鋳造による残存アルミニウム塊が湯口Diを塞いでいないことを確かめるための棒状センサが設けられており、金網109のセットに先立って湯口Diが正常に開口していることを確かめるようにしている。
その後、ステップ#5で、第1台車BPが上下方向の型開き空間K内から後退する。そして、これと入れ替わりに、第2台車(中子台車)BCが型開き空間K内に前進してくる(ステップ#6)。
【0104】
そして、この第2台車BCの上部側では、ステップ#7で全てのサイド型DSを閉じ合わされた後、全てのサイド型DS及び上型DUの内面に塗型剤が塗布される(ステップ#8)。
一方、第2台車BCの下部では、上記ステップ#7及びステップ#8の工程と並行して、中子セット装置10による中子の下型DLへのセット(組み付け)が行われる(ステップ#9)。このとき、第2台車BCの下部には、3種の中子CW,CО及びCPと砂壁138とが保持されており、これら中子CW,CО及びCPと砂壁138とが下型DLにセットされる。尚、中子セット装置10には、前サイクルで用いた中子が折損等によって下型DLに残存していないことを確かめるための棒状センサが設けられており、中子セット作業に先立って、下型DLの中子セット箇所に中子の破損した断片が残っていないことが確認されるようになっている。
【0105】
この塗型剤の塗布工程(ステップ#8)および中子セット工程(ステップ#9)の詳細を、第2台車BCの動きに着目しつつ、図34のフローチャートを参照しながら説明する。
すなわち、上述のように、上型DUが上昇されて型開きされると、型開き空間Kに向けて中子台車BCが移動される(SP1)。次いで、型開き空間K内において、位置決めピン17aを利用して中子台車BCの位置決めが行われる(SP2)。この後、中子のセットと、粉体塗型剤の塗布とが並行して行われ、中子セットが図34のSP3〜SP5の処理とされ、粉体塗型剤の塗布がSP8〜SP10の処理とされる。
【0106】
下型DLへの中子セットに際しては、まず、シリンダ装置14によって、ベースプレート13つまり中子が下降される(SP3)。この後、保持爪15が開かれて、中子が下型DLにセットされる(SP4)。そして、シリンダ装置14によりベースプレート13が上昇される(SP5)。
粉体塗型剤の塗布に際しては、まずシリンダ装置25によって、塗布ボックスTつまり覆い部材21が上昇される(SP8)。次いで、前述したようにして、上型内表面に対して粉体塗型剤の塗布が行われる(SP9)、そして、シリンダ装置25によって塗布ボックスTが下降される(SP10)。
【0107】
SP5の工程およびSP10の工程がそれぞれ終了すると、位置決めピン17aが上昇されて、中子台車BCと下型DLとの位置決め関係が解除される(SP6)。そして、その後、中子台車BCが後退、つまり型開き空間Kの外側へ移動される(SP7)。
尚、以上の塗型剤塗布工程においては、図示された態様に限定されるものではなく、例えば、粉体塗型剤を吹きつけるスプレーノズル22の向きは、粉体塗型剤が塗布されるべき鋳型内表面の向きに応じて適宜の向きとすることができる。また、ブローノズル23の向きも粉体塗型剤の飛散効果を勘案して適宜の向きとすることができる。更に、塗布ボックスTつまり覆い部材21は、中子台車BCとは別途独立させて構成するようにしてもよい。
【0108】
以上のように、複数のサイド型DSが全て上型DUに支持され、全サイド型DSを型閉じ状態にセットした上で、これら各サイド型DSおよび上型DUの内面に塗型剤を塗布するようにしたので、下型DLに少なくとも一部のサイド型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で上型DUおよび全てのサイド型DSの内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
【0109】
また、特に、上下方向に接離可能に設けられた上下の鋳型DU/DLが離間した状態で、第2台車BCの塗型剤塗布手段が両鋳型の型開き空間K内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型DU/DLの型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
更に、上記塗型剤塗布手段が上型DUおよび各サイド型DSの内面に塗型剤を塗布している間に、下型DLへの中子の組み付けが行われるので、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができ、鋳造プロセス全体の生産効率の向上を図ることができるのである。
【0110】
以上のような塗型剤の塗布工程(ステップ#8)および中子セット工程(ステップ#9)を終えて第2台車BCが後退(ステップ#10)した後、上型DUを下降させて下型DLに対して閉じ合わせる(ステップ#11)。
そして、ステップ#12で、保持炉FH内を加圧して低圧鋳造が行われる。この加圧工程(ステップ#12)における加圧制御の詳細について、図35のフローチャート及び図36〜図38の線図を参照しながら説明する。
【0111】
まず、ステップST1で、エア供給路42から加圧室20へ加圧エアを供給し、るつぼ12内の溶湯を押し上げ、この溶湯をストーク22を介して鋳型30のキャビティ32へ供給して鋳型を開始すると共に、ステップST2でタイマ60が起動する。
この場合、図36における加圧パターン(a)に示すように、加圧エアの供給開始後、溶湯が鋳型30の湯口40に達する予定の時間t1が経過するまでの間は、圧力を急速に上昇させて溶湯を速やかに押し上げ、溶湯の温度低下を防止し、溶湯が湯口40に達する予定時間t1経過後は、溶湯が砂中子同志の間にスムーズに充填されるよう圧力上昇速度を低下させる。
【0112】
次に、ステップST3で、充填信号の有無により、充填検知センサ58が溶湯の充填を検知したか否かを判断し、充填検知センサ58が充填を検知した場合には、ガスが砂中子から溶湯中に噴出するのを防止するため、ステップST4で、図36の加圧パターン(b)に示すように加圧室20内の圧力を高めると共に、充填検知センサ58が正常に機能しているため、ステップST5でタイマ60を停止する。
また、ステップST3で充填検知センサ58が溶湯の充填を検知しない場合は、ステップST6で、加圧エア供給開始後、所定時間t2経過後にタイマ60から出力される経過信号を受けて図36の加圧パターン(c)に示すように加圧室20内の圧力を高める。このようにすると、充填検知センサ58が検知不良の場合でも、加圧エアの供給開始後、所定時間t2の経過と共に加圧室20内の圧力を高めることができるので、製品不良の発生を防止できる。
次に、ステップST7でタイマ30をリセットして次の鋳造工程に備えると共に、ステップST8で鋳造を完了する。
【0113】
図37は、上記実施例における加圧制御方法の具体的な加圧パターンを示している。すなわち、加圧室20内の加圧開始と同時に第1CPU70及びタイマ60が起動し、加圧開始8秒後に第1CPU70は圧力上昇速度を遅くし、充填検知センサ58が充填信号を出力すると(通常、加圧開始13秒後)、第1CPU70がそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72が加圧室20の圧力を上昇させ、加圧室20内の圧力が所定値に達すると(通常、加圧開始20秒後)、第2CPU72もそのときの圧力を維持する。この場合、タイマ60は加圧開始18秒後にオン信号を出力して第2CPU72を起動させるよう設定されており、充填検知センサ58が検知不良の場合でも加圧開始18秒後には第2CPU72が起動する。
【0114】
また、図38は、上記加圧制御方法の変形例の加圧パターンを示している。この変形例においては、鋳型30の下型26に、溶湯が湯口40を通過するときに通過信号を出力する湯口通過センサを配置すると共に、第1CPU70及び第2CPU72の他に第3CPUを設置しておく。そして、湯口通過センサが通過信号を出力すると(通常、加圧開始9秒後)、第1CPU70はそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72は加圧室20内の圧力を上昇させ、充填検知センサ58からの充填信号(通常、加圧開始13秒後)に基づき、第2CPU72はそのときの圧力を維持する一方、第3CPUは加圧室20内の圧力を上昇させるような加圧パターンに設定しておく。この場合、タイマ60を、加圧開始15秒後及び湯口通過センサからの通過信号を受けてから5秒後のうちのいずれか早いときにオン信号を出力して第3CPUを起動させるよう設定しておく。
【0115】
この変形例のように加圧パターンを設定すると、時間の経過と溶湯の上昇程度との間に発生する誤差を少なく設定することができるため、第3CPUを加圧開始15秒後に起動でき、前記具体例の場合(加圧開始18秒後)よりも早く起動できるので、充填検知センサ58が検知不良の場合でも製品の品質を高く維持できる。また、湯口通過センサが設けられているため、溶湯が湯口40を通過するまでの圧力上昇速度を具体例の場合よりも早くすることができるので、溶湯の温度低下を防止できる。さらに、湯口通過センサが必要になる反面、第1CPU70として単純な機能のCPUを使用できるのでコスト的に有利にもなる。
【0116】
以上のように、上記低圧鋳造装置Aでは、充填検知センサが正常の場合には充填信号により、充填検知センサが検知不良の場合には経過信号により、加圧パターンを変えるよう圧力可変制御手段が作動するので、充填検知センサの検知状態の正常、不良を問わず加圧パターンが変えられる。このため、充填検知センサに検知不良が発生した場合でも、製品の品質を許容レベル以上に維持することができるので、製品不良の発生を防止できる。
【0117】
以上のような加圧工程(ステップ#12)を終えた後、或いはその終盤における途中において、ステップ#13で、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御する冷却工程が行われる。これにより、鋳造工程が終了し、上下の鋳型DU/DLが開かれ(ステップ#14)、ステップ#1に戻って同様の鋳造サイクルが繰り返されるようになっている。
【0118】
以上の一連の鋳造サイクルにおいて、各工程で要する時間は例えば以下の通りである。すなわち、加圧工程(ステップ#12)が最も長く約200秒であり、次に冷却工程(ステップ#13)が約40秒、また、中子セット工程(ステップ#9)が約20秒であった。そして、これら以外の工程については、全てを合計して約60〜70秒であった。従って、ステップ#13の冷却工程を終えた後、塗型剤の塗布(ステップ#8)を行うまでの時間は、約60〜70秒程度しかないことになる。
【0119】
つまり、このような短い間隔で、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却を行い、その後に、塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための鋳型の冷却制御を行ったのでは、両方の制御が干渉して良好な冷却制御を行うことはできない。
そこで、本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却(ステップ#13)において、前述のように上型DUの突出部111及び112に設けた冷却手段により、上型DUの温度に応じて、塗型剤塗布時の上型DUの最適温度範囲(例えば、260〜320℃)を考慮した上で、具体的には、上型DUの型温がこの260〜320℃の範囲となるように、該上型DUの型温を冷却制御するようにしている。ちなみに、湯口Diが設けられ、また、塗型剤の塗布を行わない下型DLの場合には、型温の制御範囲としては、例えば450〜510℃が好ましい。
【0120】
すなわち、本実施の形態では、上型DUについて、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却制御で、その後(約60〜70秒後)に行う塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための冷却制御を兼用していることになる。
このように、上型DUの型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われるので、適正な鋳型温度で塗布を行うことができ、上型DU及びサイド型DSの内面への塗型剤の付着性を高めることができるのである。
【0121】
尚、以上の実施の形態では、鋳型Dは所謂2個取り用のものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、通常の1個取り用のものであっても有効に適用することができる。また、上記実施の形態では、複数のサイド型DSは全て可動型であったが、その一部のものが上型に固定された固定型であっても良い。更に、上記実施の形態は、エンジンのシリンダブロックを鋳造する場合を例にとって説明したものであったが、本発明は、シリンダブロックに限らず、他の種々の鋳造品を鋳造する場合にも有効に適用することができる。
このように、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更等が可能であることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】
本願の第1の発明に係る塗型剤の塗布方法によれば、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数の側壁鋳型が第1主鋳型に支持され、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するようにしたので、湯口が設けられている第2主鋳型に少なくとも一部の側壁鋳型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で第1主鋳型および全ての側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
【0123】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上下方向に接離可能に設けられた両主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型の型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
【0124】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には上記第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段が上記第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布している間に、上記第2主鋳型への中子の組み付けが行われるので、共に鋳型を対象とした塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができ、鋳造プロセス全体の生産効率の向上を図ることができる。
【0125】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には上記第3の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段は、第1主鋳型および型閉じ状態の複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えているので、閉塞部材を用いて塗布空間を形成した状態で、塗布機構により塗型剤を第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【0126】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には上記第1〜第4のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第1主鋳型に、その温度に応じて該鋳型を冷却する型冷却手段が設けられ、第1主鋳型の型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われるので、適正な鋳型温度で塗布を行うことができ、鋳型内面への塗型剤の付着性を高めることができる。
【0127】
また更に、本願の第6の発明によれば、基本的には上記第1〜第5のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記第1主鋳型に電極を接続し、第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を静電塗布するようにしたので、通常のスプレー塗布だけの場合に比べて、塗型剤の鋳型内表面への塗布状態の均一性と付着性とを十分に高めることができる。
【0128】
また更に、本願の第7の発明によれば、基本的には上記第1〜第6のいずれか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前サイクルの鋳造品の取り出しから今回サイクルの鋳造品の取り出しに至る一連の工程の中で、各側壁鋳型の型閉じ工程と第1および第2主鋳型の閉じ合わせ(型閉じ)工程との間に、各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するとともに第2主鋳型に中子を組み付けることにより、塗型剤の塗布作業と中子の組付作業とを並行して行うことができる。
【0129】
また、本願の第8の発明に係る塗型剤の塗布装置よれば、密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられた複数の側壁鋳型が第1主鋳型に支持され、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤が塗布されるので、湯口が設けられている第2主鋳型に少なくとも一部の側壁鋳型を支持させた場合のように塗型剤の塗布作業を2回に分けて行う必要はない。すなわち、1回の塗布作業で第1主鋳型および全ての側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布することができ、塗布作業の効率を高めることができる。
また、上下方向に接離可能に設けられた両主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布するので、両主鋳型の型開き動作を利用して塗型剤の塗布を行うことができる。
【0130】
更に、本願の第9の発明によれば、基本的には上記第8の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記塗型剤塗布手段は、第1主鋳型および型閉じ状態の複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えているので、閉塞部材を用いて塗布空間を形成した状態で、塗布機構により塗型剤を第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に自動塗布することができる。
また、上記塗型剤塗布手段は、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられているので、塗型剤の自動塗布作業と並行して、中子の自動組付を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる鋳造装置の一例を概略的に示す正面説明図である。
【図2】 上記鋳造装置の側面説明図である。
【図3】 上記鋳造装置の保持炉の内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。
【図4】 上記鋳造装置の加圧制御系統を概略的にを示すブロック構成図である。
【図5】 上記鋳造装置の上型の底面説明図である。
【図6】 上記鋳造装置の下型の平面説明図である。
【図7】 上記下型のポート中子セット状態を示す平面説明図である。
【図8】 上記下型への中子セット状態を示す縦断面説明図である。
【図9】 図8のY9−Y9方向からの矢視図である。
【図10】(a) サイド型のスライドガイド機構を示す上型およびサイド型の縦断面説明図である。
(b) 図10(a)のY10B−Y10B方向からの矢視図である。
【図11】 ウォータジャケット中子とオイルジャケット中子の下型へのセット状態を示す部分縦断面説明図である。
【図12】 上記下型とウォータジャケット中子の巾木との係合部分を拡大して示す平面説明図である。
【図13】 図12のY13−Y13線に沿った縦断面説明図である。
【図14】 上記鋳型のガス抜き機構を示す中子支持部分の拡大縦断面説明図である。
【図15】 上記上型と下型の組み合わせ状態を示す鋳型の縦断面説明図である。
【図16】 上型のプラグ孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図17】 上型のボルト孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図18】 上記下型のスポット冷却機構を拡大して示す縦断面説明図である。
【図19】 本実施の形態に係る第2台車(中子台車)を示す正面説明図である。
【図20】 上記第2台車の塗布ボックスの上下駆動部分を拡大して示す説明図である。
【図21】 上記第2台車に搭載された覆い部材の平面説明図である。
【図22】 鋳型と覆い部材とスプレーノズルとブローノズルとの関係を示す縦断面説明図である。
【図23】 覆い部材内に配置されたスプレーノズルとブローノズルとスプレーノズル駆動部分を示す断面上面図である。
【図24】 スプレーノズルを平面説明図である。
【図25】 図24のY25−Y25線に沿った縦断面説明図である。
【図26】 スプレーノズル,ブローノズル及び吸引口の系統図である。
【図27】 スプレーノズルの動きと粉体塗型剤の吹き付けとブローエアの吹き出しと吸引とパージエア供給との関係を示すタイムチャートである。
【図28】 中子セット装置の中子保持爪の駆動機構の側面説明図である。
【図29】 上記中子保持爪の駆動機構の正面説明図である。
【図30】 上記中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図31】 従来例に係る中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図32】 他の従来例に係る中子保持爪の駆動機構の作動を説明するための模式図である。
【図33】 上記低圧鋳造装置を用いた鋳造プロセスを示すフローチャートである。
【図34】 中子セット工程と塗型剤塗布工程とを中子台車の作動に関連して示すフローチャートである。
【図35】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示すフローチャートである。
【図36】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図37】 上記低圧鋳造装置の具体的な加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図38】 上記低圧鋳造装置の加圧制御方法の変形例を示す加圧パターン図である。
【符号の説明】
10…中子セット装置
21…覆い部材
22…スプレーノズル
23…ブローノズル
64…高圧印加部
64A…高電圧発生機
111…プラグ孔形成用突出部
112…ボルト孔形成用突出部
114…導入パイプ(プラグ孔形成用突出部)
115…排出パイプ(プラグ孔形成用突出部)
116…導入パイプ(ボルト孔形成用突出部)
BC…中子台車(第2台車)
DL…下型
DS(DS1,DS2,DS3)…サイド型
DU…上型
Mc…鋳造キャビティ
Claims (9)
- 互いに対向するように配設された第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とで密閉した容積部を形成し、第2主鋳型に設けた湯口から上記容積部内に溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する方法であって、
上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持され、各側壁鋳型は、上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型を上記型閉じ状態にセットした上で、これら各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴とする塗型剤の塗布方法。 - 上記第1主鋳型と第2主鋳型とが上下方向に接離可能に設けられ、これら主鋳型が離間した状態で、塗型剤塗布手段が両主鋳型の型開き空間内に移動して塗型剤を塗布することを特徴とする請求項1記載の塗型剤の塗布方法。
- 上記塗型剤塗布手段が上記第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布している間に、上記第2主鋳型への中子の組み付けが行われることを特徴とする請求項2記載の塗型剤の塗布方法。
- 上記塗型剤塗布手段は、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴とする請求項3記載の塗型剤の塗布方法。
- 上記第1主鋳型に、その温度に応じて該鋳型を冷却する型冷却手段を設け、第1主鋳型の型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の塗型剤の塗布方法。
- 上記第1主鋳型に電極を接続し、第1主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を静電塗布することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一に記載の塗型剤の塗布方法。
- 第1および第2の主鋳型が型開きされ且つ各側壁鋳型が型開きされた状態で、前サイクルで得られた鋳造品を取り出し、次いで、上記各側壁鋳型を型閉じし、鋳型温度が冷却制御された下で各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布するとともに、上記第2主鋳型に中子を組み付け、その後、第1および第2主鋳型を閉じ合わせ、鋳造キャビティ内に金属溶湯を注入・充填して該溶湯を加圧するとともに、各鋳型を所定の温度範囲に冷却制御し、その後、第1および第2の主鋳型を型開きし且つ各側壁鋳型を型開きして鋳造品を取り出すことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一に記載の塗型剤の塗布方法。
- 上下方向に接離可能に設けられた第1および第2の主鋳型と複数の側壁鋳型とを備え、これら主鋳型と側壁鋳型とで形成された密閉した容積部内に、上記第2主鋳型に設けた湯口から溶湯を注入・充填して鋳造品を得るに際し、所定の主鋳型および各側壁鋳型の内面に塗型剤を塗布する塗布装置であって、
上記第1および第2の主鋳型が離間した状態で両者の型開き空間内に移動し得る塗型剤塗布手段が設けられるとともに、上記複数の側壁鋳型が上記第1主鋳型に支持されて上記密閉した容積部を形成する型閉じ状態と該容積部を開放する型開き状態とに切換可能に設けられており、全側壁鋳型が上記型閉じ状態にセットされた下で、上記両主鋳型間に位置する塗型剤塗布手段が、各側壁鋳型および上記第1主鋳型の内面に塗型剤を塗布することを特徴とする塗型剤の塗布装置。 - 上記塗型剤塗布手段は、上記第1主鋳型および型閉じ状態にセットされた複数の側壁鋳型と組み合わされて密閉された塗布空間を形成する閉塞部材と、上記塗布空間形成時に塗布空間内に位置する塗布機構とを備えるとともに、第1,第2の主鋳型の型開き空間内に進退動可能な移動台車に取り付けられており、該移動台車には、上記塗型剤塗布手段が取り付けられた側と反対側に、中子を保持して上記第2主鋳型に中子を組み付ける中子組付手段が設けられていることを特徴とする請求項8記載の塗型剤の塗布装置。
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