JP3797018B2 - シリンダヘッドの鋳造装置および鋳造方法 - Google Patents

シリンダヘッドの鋳造装置および鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンのシリンダヘッドを鋳造するための鋳造装置および鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、自動車等のエンジンのシリンダヘッドは、シリンダ部への給排気ポートやエンジン冷却水の通路(ウォータジャケット)およびエンジンオイルの通路(オイルジャケット)などの複雑な形状の通路の他、気筒数に応じた点火プラグ用のプラグ孔や、シリンダボディへの組付用の多数のボルト孔などが設けられる関係上、全体として切削加工等の機械加工が適用し難いかなり複雑な形状を備えており、通常、アルミニウム合金等を材料に用いた鋳造品としてその素材を得るようにしている。
【0003】
かかるシリンダヘッドを鋳造する鋳造方法として、坩堝内の金属溶湯の湯面を加圧エア等で加圧してストーク内の溶湯を押し上げ、この押し上げられた溶湯を鋳型キャビティ内に供給して鋳造する、所謂、低圧鋳造法が知られている(例えば、特開平1−53755号公報参照)。この低圧鋳造法によれば、溶湯を加圧エア等で加圧するので、安定した高品質の鋳造品が得られる他、所謂、押し湯がほとんど不要か若しくは極めて少なくて済み、材料の歩留まりを大幅に向上させることができるなど、種々のメリットが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、金属溶湯が注入・充填された鋳造キャビティ内にガスやエヤ等の気体が存在する場合、かかる気体が鋳物製品内に残存することによる「鋳巣」などの鋳造欠陥の発生を防止する上で、金属溶湯が湯口にできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが有効であることが知られている。金属溶湯をこのような指向性の下に冷却・凝固させることにより、鋳造キャビティ内に存在するガスは次第に湯口側に押しやられ、最終的にはこの湯口部分に溜まった状態で凝固を終えるようにすることが可能となる。この湯口部分は、鋳造完了後に不要部分として切断除去されるものであるので、鋳造製品自体については、ガスが残存する惧れがそれだけが少なくて済み、鋳造欠陥の発生を有効に抑制できるのである。
【0005】
特に、上述の低圧鋳造法では、上下の金型のうち下型側に湯口が設けられることが多く、この場合、金属溶湯で満たされたキャビティ内に存在するガスは湯口から遠い上型側に上昇するのが一般的であるので、金属溶湯ができるだけ湯口から遠い上型側から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことがより重要となる。
【0006】
また、鋳造キャビティ内の金属溶湯が冷却されて凝固する場合、通常、鋳型外部への自然放熱のため、鋳造キャビティの中央側よりも鋳型表面に近い外側のほうが冷却され易く、従って、鋳造キャビティの中央側にガスが残留し易くなる。このため、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことが好ましい。
すなわち、一般に、鋳造プロセスにおいては、その生産性を向上させることなどを目的として、鋳込み後に金属溶湯を凝固させる際に、冷却工程を設けて溶湯の凝固を促進するようにしているが、この冷却工程では、単に凝固速度を高めるだけでなく、上述のような指向性を持った冷却を行わせるようにすることが求められるのである。
【0007】
そこで、この発明は、エンジンのシリンダヘッドを鋳造するに際して、シリンダヘッドの形状を利用して鋳込み後の金属溶湯の冷却に適正な指向性を持たせ、高品質の鋳造品を得られるようにすることを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本願の請求項1の発明(以下、これを本願の第1の発明という。)に係るシリンダヘッドの鋳造装置は、接離可能に設けられた一対の上型および下型を備え、両型間に形成された鋳造キャビティ内に上記下型に設けた湯口から溶湯を注入・充填し該溶湯を凝固させてエンジンのシリンダヘッドを鋳造するようにした鋳造装置であって、上記上型の型合わせ面における周縁部の近傍に、該周縁部に沿って所定の間隔をあけて複数のボルト孔形成用の突出部が設けられるとともに、これらボルト孔形成用の突出部よりも内側には、複数のプラグ孔形成用の突出部が設けられ、上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段が設けられる一方、上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段が設けられている、ことを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2の発明(以下、これを本願の第2の発明という。)に係るシリンダヘッドの鋳造方法は、接離可能に設けられた一対の上型および下型間に形成された鋳造キャビティ内に上記下型に設けた湯口から溶湯を注入・充填し該溶湯を凝固させてエンジンのシリンダヘッドを鋳造するようにした鋳造方法であって、上記上型の型合わせ面における周縁部の近傍に、該周縁部に沿って所定の間隔をあけて複数のボルト孔形成用の突出部を設けるとともに、これらボルト孔形成用の突出部よりも内側には、複数のプラグ孔形成用の突出部を設け、上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段を設ける一方、上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段を設けることにより、上記周縁部の近傍の上記ボルト孔形成用の突出部の冷却手段に比して、上記ボルト孔形成用の突出部よりも内側の上記プラグ孔形成用の突出部の冷却手段の方が、冷却能力が大きくなるように設定して鋳造を行う、ことを特徴としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドの鋳造に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本実施の形態に係る鋳造装置の正面説明図および側面説明図である。この鋳造装置Aは、所謂、低圧鋳造プロセス用のもので、下型DLおよび上型DUがそれぞれ下プラテン1および上プラテン2に取り付けられ、該上プラテン2は下プラテン1に対して上下方向に駆動される。つまり、上型DUは下型DLに対して上下方向に移動でき、これにより両者が接離可能(両者の型合わせ面どうしが当接した型閉じ状態と両者が離間した型開き状態とを選択的に取り得る)とされている。尚、後で詳しく説明するように、上記上型DUには、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型が取り付けられている。
【0011】
上記下プラテン1の下側方には、鋳造時に金属溶湯を供給するための保持炉FHが配設され、溶湯は下型DL側から供給されるようになっている。本実施の形態では、シリンダヘッド鋳造用の材料として、例えばアルミニウム(Al)合金が用いられ、上記保持炉FH内にはAl合金の溶湯が貯えられる。この保持炉FHは、好ましくは台車4(保持炉台車)上に固定されており、この保持炉台車4を駆動することにより必要に応じて下プラテン1に対して移動できるようになっている。尚、上記保持炉FHの内部構造等およびかかる保持炉FHを用いて行う低圧鋳造法の概略については後述する。
【0012】
上記鋳造装置Aには、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたときに該型開き空間K内に進退出可能な2つの台車BC,BPが備えられている(図2においては、図面の複雑化を回避するために、その図示は省略されている)。
第1の台車BPは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLの湯口への金網のセットと上型DUからの鋳造製品の取り出しとを行うもので、以下、適宜、製品取り出し台車と称する。また、第2の台車BCは、後で詳しく説明するように、基本的には下型DLへの中子等のセットと上型DUへの塗型剤の塗布とを行うもので、以下、適宜、中子台車と称する。また、これら第1および第2台車BP及びBCは、共通のレール3上を走行できるようになっている。尚、これら第1および第2台車BP及びBCの構造・作動等の詳細については後述する。
【0013】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた保持炉FHについて説明する。
図3は、保持炉FHの内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。この図に示すように、上記保持炉FHは、上部が開放された箱状に形成され、その内部には溶湯(金属溶湯)を貯える坩堝5が担台5B上に支持された状態で収納されている。保持炉FHの内壁面には、坩堝5内の溶湯を所定温度に加熱保持するヒータ8が配設されている。
また、保持炉FHの上部開放口は着脱可能な炉蓋7によって気密状に閉塞されており、これにより、保持炉FHの内部に上記坩堝5を覆う気密状の加圧室Rpが形成されている。
【0014】
上記炉蓋7の中央部には貫通孔7hが形成され、この貫通孔7hにはストーク6が嵌装されている。このストーク6は、その上側がデストリビュータ9に連通する一方、その下部が坩堝5内の溶湯に浸漬せしめられている。上記デストリビュータ9は、鋳型Dに複数の湯口Diが設けられている場合に、坩堝5からの溶湯を各湯口Diに分配して供給するもので、保持炉FHの上面(つまり炉蓋7の上面)と鋳型Dの下面(つまり下型DLの下面)との間に配置される。尚、本実施の形態では、下型DLに複数(例えば4個)の湯口Diが設けられている。
上記鋳型Dは、後述するように、上型DUと下型DLと複数のサイド型DSとで構成され、これら各型のこれら上型DU,下型DL及び各サイド型DSの各内面により形成される鋳造キャビティМcの内部には、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが配置されている。このキャビティМcは、下型DLに形成された湯口Diを介してデストリビュータ9の内部に連通している。
【0015】
上記保持炉FHには、加圧室Rpに加圧エアを供給するエア供給路81が設けられており、このエア供給路81を介して供給される加圧エアの圧力が坩堝FH内の溶湯の湯面に作用することによりストーク6内の溶湯が押し上げられる。そして、この押し上げられた溶湯は、ストーク6からデストリビュータ9及び湯口Diを介して、鋳型Dの鋳造キャビティМc内に供給・充填されるようになっている。
上記エア供給路81には加圧エアの供給及び停止の切換えを行う開閉式給気弁82が介設されると共に、この開閉式給気弁82よりも上流側のエア供給路81には、加圧エアの圧力を調整する圧力制御弁83が介設されている。また、この圧力制御弁83にはその開度を制御するサーボ機構84が付設されており、これら圧力制御弁83及びサーボ機構84により、坩堝FH内の溶湯の湯面に加えられる圧力の加圧パターンを変化させる圧力可変制御手段85が構成されている。
【0016】
一方、鋳型Dの上型DUにはリング状の絶縁体86が挿着され、この絶縁体86の両側における上型DUの各々の上部に、鋳造キャビティМc内に溶湯が充填されたときに導通する2本の配線87が接続されている。更に、両配線87は、これら両配線87が互いに導通したときに充填信号を送出する溶湯充填検知回路88に電気的に接続されている。上記絶縁体86、配線87及び溶湯充填検知回路88によって、溶湯のキャビティМc内への充填を検出する充填検知センサ89が構成されている。
また、上記溶湯充填検知回路88は、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させる加圧パターン制御手段90に電気的に接続され、該加圧パターン制御手段90には、溶湯の鋳造キャビティМc内への供給開始後、予め設定された所定時間が経過したときに経過信号を送出するタイマ94が電気的に接続されている。上記加圧パターン制御手段90は、例えば所謂CPU(中央演算処理装置)を内蔵しており、充填検知センサ89からの充填信号またはタイマ94からの経過信号に基づいて、圧力可変制御手段85の加圧パターンを変化させるようになっている。
【0017】
図4は、上記鋳造装置Aの加圧制御系統の概略を示すブロック構成図である。この図に示すように、上記加圧制御系統には、開閉式給気弁82がОN(オン)操作されて加圧室Rpへの加圧エアの供給が開始されたときにオン信号を出力する加圧開始信号スイッチ95と、溶湯が鋳造キャビティМc内に充填されたとき充填検知センサ89より送出される充填信号によりオン信号を出力する充填信号スイッチ96と、鋳造が完了したときにオン信号を出力する鋳造完了スイッチ97とが設けられ、これら各スイッチ95,96及び97は加圧パターン制御手段90に電気的に接続されている。
上記タイマ94は、この加圧パターン制御手段90に接続されると共に、加圧開始信号スイッチ95及び鋳造完了スイッチ97が繋ぎ込まれている。そして、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると起動すると共に、起動後、所定時間t2が経過するとオン信号を出力し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けるとリセットするよう設定されている。
【0018】
上記加圧パターン制御手段90は、より好ましくは、第1および第2の二つのCPU91及び92を有している。
第1CPU91は、加圧開始信号スイッチ95からオン信号を受けると圧力可変制御手段85を制御して加圧室Rp内の圧力を急速に上昇させる一方、加圧開始後、所定時間t1が経過した後は圧力上昇速度を遅くし、充填信号スイッチ96又はタイマ94の何れかからオン信号を受けるとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第1加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
【0019】
また、第2CPU92は、充填信号スイッチ96又はタイマ94のいずれかからオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を上昇させ、この圧力が所定値に達するとその時点での圧力を維持し、鋳造完了スイッチ97からオン信号を受けると加圧室Rp内の圧力を常圧に戻す加圧パターンの第2加圧信号を出力するように設定されたCPUである。
このように加圧パターンが互いに異なる第1,第2の加圧信号をそれぞれ出力する第1,第2のCPU91,92と加算回路93とで加圧パターン制御手段90が構成されている。上記加算回路93は、第1CPU91からの第1加圧信号と第2CPU92からの第2加圧信号とを加算する回路であり、その加算信号を上述のサーボ機構84に送出するようになっている。
【0020】
次に、上記低圧鋳造装置Aで用いられる鋳型Dについて説明する。
図5は、上型DU側を型合わせ面側から(つまり下側から)見てその構造を模式的に示した底面説明図である。上型DUは、前述のように、下型DLに対して上下方向に接離可能に設けられ、この上型DUに、鋳造キャビティの側壁部を形成するスライド動作可能な複数のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3)が取り付けられている。また、本実施の形態では、鋳型Dは、より好ましくは、1回の鋳造工程で2個の鋳造品得るようにした、所謂、2個取り用の鋳型とされ、図5から分かるように、上型DUにおいても、1つの型盤110に左右対称に2つの型部が形成されている。
【0021】
これら左右の各型部には、その中央部に複数(本実施の形態では4個)のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数(本実施の形態ではそれぞれ5個)のボルト孔形成用の突出部112が設けられている。上記プラグ孔形成用の突出部111は、シリンダヘッドに点火プラグを挿入させる孔部を形成するためのものであり、また、ボルト孔形成用の突出部112はシリンダヘッドにボルト孔を形成するためのものである。
尚、上記各鋳型(上型DU,下型DL及びサイド型)は、いずれも例えば鋼製とされている。
【0022】
上型DUには、複数(本実施の形態では合計6個)のサイド型DS(DS1,DS2及びDS3がそれぞれ2組)が取り付けられ、これら各サイド型DS1,DS2及びDS3にはそれぞれシリンダ装置121,122及び123(サイド型駆動シリンダ)が付設されている。
そして、これらシリンダ装置121,122及び123を駆動することによって、各サイド型DS1,DS2及びDS3をそれぞれ上型DUの型盤110に沿って(つまり、上型DUと下型DLの型閉じ方向と略直交する方向に)スライドできるようになっている。
【0023】
これらサイド型DS1,DS2及びDS3は、後述するように鋳造時および塗型剤塗布時など、鋳型Dを閉じて鋳造キャビティを形成する際には、図5に示されるように、それぞれ内方にスライド駆動されて閉じ合わされる。一方、鋳造完了後に鋳造品を鋳型D内から取り出す際には、上型DUを上昇させて上下の鋳型DU,DLを型開きした後、これらサイド型DS1,DS2及びDS3も、それぞれ外方にスライド駆動されて型開きされるようになっている。
【0024】
尚、後述するように、下型DLについても、上型DUに対応して1つの型盤130に左右対称に2つの型部が形成されており、その左右の型部の中央には、両型部を仕切るようにして砂壁138が取り付けられる。この砂壁138は、より好ましくは、下型DLに中子CО,CW及びCPを組み付ける際に同一の組付工程で下型DLに組み付けられる。
そして、このように、下型DLに中子CО,CW及びCP並びに砂壁138を組み付けた状態で、上型DUを下降させて上下の鋳型DU,DLを閉じ合わせると、上型DUの左右の型部の中央には、下型DLに組み付けられた砂壁138が位置して、左右の各シリンダヘッドの鋳造キャビティの側壁の一つが形成されることになる。すなわち、各シリンダヘッドの鋳造キャビティは、上型DUに設けられた3個の可動サイド型DS1,DS2及びDS3と、下型DLにセットされた固定砂壁130とで、その側面に対応した鋳型面(側壁面)が形成されるようになっている。
【0025】
図6は、下型DLの平面説明図である。尚、この下型DLについても、1つの型盤に左右対称に2つの型部が形成されているが、図6においては、片側(右側)の型部のみを図示し、左右が対象である点を除いてはこれと全く同一に形成されている他側(左側)の型部については、その詳細な図示は省略されている。
この下型DLには、図7にも示すように、左右の各型部に、後述するように中子CО,CW及びCPを組み付けるための巾木受け部が設けられている。すなわち、各型部の長手方向に所定間隔を隔てて配置された第1および第2の巾木受け部131及び132と、各型部の長手方向に沿って延びるように互いに所定間隔を隔てて配置された第3および第4の巾木受け部133及び134とが設けられている。
【0026】
上記第1および第2の巾木受け部131及び132は、前述のウォータジャケット中子CWを組み付けるための巾木受け部であり、該ウォータジャケット中子CWの巾木を受け合うものである。また、上記第3および第4の巾木受け部133及び134は、前述のポート中子CPの巾木を組み付けるための巾木受け部であり、該ポート中子CPの巾木を受け合うものである。
以上の巾木受け部131〜134を用いて、図8に詳しく示すように、上から順にオイルジャケット中子CО、ウォータージャケット中子CW及びポート中子CPが、下型DLに対して組み付けられる。
【0027】
以下、これら各中子CО,CW及びCPの下型DLへの組付方法について説明する。
本実施の形態では、共にシリンダヘッドの長手方向に延びるように、且つ、上下に配置されるオイルジャケット中子CОとウォータジャケット中子CWについて、下側に配置されるウォータジャケット中子CWは、その両端部に設けられた第1および第2の巾木部141及び142を介して下型DLに組み付けられ、オイルジャケット中子CОは、その両端部に設けられた巾木143及び144が上記ウォータジャケット中子CWに支持されることにより下型DLに組み付けられている。
尚、本明細書において「巾木」というときは、中子本体部と一体に設けられたもの、及び別体に設けて中子本体と組み合わせて用いられるもののいずれをも含むものとする。
【0028】
すなわち、図11に示すように、下側にセットされるウォータジャケット中子CWは、その両端部に第1及び第2の巾木部141及び142が設けられ、各巾木部141,142には、下方に開口する凹状の第1および第2の係合部141h及び142hがそれぞれ形成されている。一方、下型DLの第1および第2の巾木受け部131及び132には、上方に突出する凸状の第1および第2の巾木係止部131a及び132aがそれぞれ形成されている。そして、第1および第2の巾木部141及び142の各係合部(第1および第2の係合部141h及び142h)を第1および第2の巾木受け部131及び132の各巾木係止部(第1および第2の巾木係止部131a及び132a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、ウォータジャケット中子CWが下型DLに組み付けられている。
【0029】
また、上側にセットされるオイルジャケット中子CОについても、その両端部に巾木部143及び144(第3および第4巾木部)が設けられ、各巾木部143,144には、ウォータジャケット中子CWの場合と同様の下方に開口する凹状の第3および第4の係合部143h及び144hがそれぞれ形成されている。一方、ウォータジャケット中子CWの第1および第2の巾木部141及び142の上面には、上方に突出する凸状の第3および第4の巾木係止部141a及び142aがそれぞれ形成されている。
【0030】
そして、第3および第4の巾木部143及び144の各係合部(第3および第4の係合部143h及び144h)を第1および第2の巾木部141及び142の上面に形成された各巾木係止部(第3および第4の巾木係止部141a及び142a)にそれぞれ上方から嵌め込んで係合させることにより、オイルジャケット中子CОが、ウォータジャケット中子CWの各巾木部141及びB142を介して下型DLに組み付けられている。
尚、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際には、上記オイルジャケット中子CОの巾木部143及び144の上面側に、上型DUと共に下降して来たサイド型DS1及びDS2の上内面が当接するようになっている。
【0031】
このように、2本の長尺状の中子CW,CОのうち、上側に配置されるオイルジャケット中子CОはその巾木143及び144が、下側に配置されるウォータジャケット中子CWの巾木141及び142に支持されることによって下型DLに組み付けられているので、両中子CW,CОは互いの巾木を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられることになり、両者CW,CОをそれぞれ個別に鋳型に組み付ける場合に比べて、両中子CW,CОの軸芯間の距離を極めて安定して一定値に保つことができる。これにより、各中子CW,CОに対応する通路(ウォータジャケット及びオイルジャケット)間の肉厚管理を確実に行うことができるのである。
【0032】
また、かかる構成を採用することにより、予め両中子CW,CОを一体的に組み合わせておき、この組み合わせた中子(CW+CО)を下型DLに組み付けるようにすることも可能になり、中子組付工数を削減でき、また、自動組付を行う場合にあっては、アクチュエータの数も少なくて済み、中子組付装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0033】
更に、本実施の形態では、図12及び図13に詳しく示すように、上記第1係合部141hの内面と第1巾木係止部131aの外面とは、その形状および寸法が実質的に略同じになるように設定されており、第1係合部141hは第1巾木係止部131aに対して、その全面(テーパ面を含めて4面)について隙間無く、従って、全面について移動不能に係合するようになっている。
また、上記第2巾木係止部132aは、中子CWの長手方向についてのみ、その凸部の厚さ寸法が第2係合部142hの凹部幅よりも所定量だけ小さく設定され、かつ、中子CWを下型DLに組み付けた時点で、第2巾木係止部132aの長手方向における両側に一定量以上の隙間が設けられるように、両者の位置関係が設定されている。
【0034】
一方、図12から良く分かるように、中子CWの横方向につては、上記第2係合部142hの内面寸法と第2巾木係止部132aの外面寸法とが実質的に略同じになるように設定されており、第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して、その横方向について隙間無く、従って、この方向について移動不能に係合するようになっている。
すなわち、上記第2係合部142hは第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0035】
このように、下型DLに対して直接に組み付けられるウォータジャケット中子CWの一端側に設けられた第1係合部141hは鋳型(下型DL)の第1巾木係止部131aに対して移動不能に係合する一方、上記ウォータジャケット中子CWの他端側に設けられた第2係合部142hは下型DLの第2巾木係止部132aに対して中子CWの長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するので、中子CWの位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、中子CWの長手方向については、当該中子CWと下型DLの熱膨脹量の差を有効に吸収することができ、この熱膨脹量の相違に起因して、中子CWにクラックや折損等の不具合が生じることを防止できるのである。
【0036】
また、上記ウォータジャケット中子CWの両端部の各巾木141及び142に設けた第3および第4の巾木係止部141a及び142aと、ウォータジャケット中子CWの上方に配置されるオイルジャケット中子CОの両端部の各巾木143及び144に設けた第3および第4の係合部143h及び144hとについても、下型DLに設けた第1および第2巾木係止部131a及び132aとウォータジャケット中子CWに設けた第1および第2の係合部141h及び142hとの組み合わせにおける場合と同様の構成により、第3係合部143hは上記第3巾木係止部141aに対して移動不能に係合する一方、第4係合部144hは上記第4巾木係止部142aに対して中子の長手方向にのみ移動可能でその他の方向には移動不能に係合するようになっている。
【0037】
これにより、オイルジャケット中子CОのウォータジャケット中子CWに対する位置ずれを招くことなく正確に位置決めを行った上で、これら中子の長手方向については、両者CО,CWの熱膨脹量の差を有効に吸収することができる。その結果、中子CО,CWどうしを予めセットする際あるいは鋳造時などにおいて、両者CО,CWの熱膨脹量の相違に起因して、中子CО及び/又はCWにクラックや折損等の不具合が生じることも防止できるのである。
【0038】
また、本実施の形態では、鋳造時に上記2本の長尺の中子(オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CW)で発生するガスを各中子CО,CWの巾木部分から吸引して外部に排出するようにしている。
すなわち、図14に詳しく示すように、例えば、オイルジャケット中子CОの第4巾木部144及びウォータジャケット中子CWの第2巾木部142側では、上型DUを下降させて上下の鋳型DU及びDLを閉じ合わせた際に、上記各巾木部144及び142の外面と、第2巾木受け部132の外面を含む下型DLの表面と、オイルジャケット中子CОの巾木部144の上面側に当接するサイド型DS1の内面とで、密閉空間101が形成される。
【0039】
上記サイド型DS2の側面には、この密閉空間101に連通する例えば可撓性のホース102の一端が繋ぎ込まれており、該ホース102の他端側はガス吸引手段としての真空ポンプ103に接続されている。
そして、この真空ポンプ103を駆動して密閉空間101内を吸引することにより、オイルジャケット中子CО及びウォータジャケット中子CWのバインダが鋳造時にガス化することによって生じたガスが吸引されて鋳造キャビティの外部に排出されるようになっている。
【0040】
このように、上記両中子CО及びCWの巾木部分144及び142から、鋳造時にこれら中子CО及びCWで発生するガスを吸引する吸引手段103(真空ポンプ)が設けられているので、中子CО及びCWが長尺物であっても、その内部に発生したガスをその巾木部分144及び142から強制的に吸引して迅速に鋳造キャビティの外部に排出させ、得られた鋳物にガス欠陥が生じることを効果的に防止できるのである。
【0041】
尚、この場合において、両中子CО及びCWは互いの巾木部分144及び142を介して一体的に鋳型(下型DL)内に組み付けられているので、たとえ一方の中子が上記密閉空間101内に面しておらず、真空ポンプ103から実質的に遮断されている場合であっても、他方の中子の巾木からガスの吸引が行われるので、上記一方の中子の内部で発生したガスも有効に鋳型外部に排出することが可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、上述のようにしてウォータジャケット中子CWとオイルジャケット中子CОとを下型DLに対して組み付けることにより、これら中子CWおよびCОの各巾木の内側面によってシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されているようになっている。
すなわち、ウォータジャケット中子CWの巾木部分141及び142の各内面141f及び142f(図11参照)とオイルジャケット中子CО巾木部分143及び144の各内面143f及び144fが、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部をなしている。
【0043】
このように、上記各中子CW及びCОの巾木141〜144の内側面141f〜144fによりシリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の少なくとも一部を形成することにより、中子CW及びCОの巾木141〜144を利用して鋳型面の一部を形成することができる。
この場合、鋳物砂を主原料とする中子の側面で鋳型面の一部が形成された鋳型部分への伝熱は他の鋳型部分に比べて大幅に抑制されるので、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
【0044】
これにより、上記ウォータジャケット中子CWが組み付けられる側の鋳型(下型DL)に設けられた湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)への熱の伝達を抑制し、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。
すなわち、鋳込み工程後の金属溶湯をこのような指向性の下に冷却・凝固させることにより、鋳造キャビティ内に存在するガスは次第に湯口Di側に押しやられ、最終的にはこの湯口部分に溜まった状態で凝固を終えるようにすることが可能となる。この湯口部分は、鋳造完了後に不要部分として切断除去されるものであるので、鋳造製品自体については、ガスが残存する惧れがそれだけが少なくて済み、鋳造欠陥の発生を有効に抑制できるのである。
【0045】
更に、図7〜図9から良く分かるように、下型DLには、上記ウォータジャケット中子CW及びオイルジャケット中子CОと略直交する方向へ延びる第3の中子として、シリンダヘッドの給排気ポートに対応したポート中子CPが、その巾木145,146を巾木受け部135,136を含む鋳型側壁に支持させた状態で組み付けられており、これらポート中子CPの巾木145,146の内側面145f,146fによりシリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面の少なくとも一部が形成されている。
また、特に、図7における左側(つまり、下型DLの中央側で、図8においては右側)のポート中子CPについては、その巾木145を支持する鋳型側壁の少なくとも一部が砂壁138で構成されている。
【0046】
従って、シリンダヘッドの他の側面に対応する鋳型面を含む鋳型部分についても、上記と同様の理由により、他の鋳型部分に比べて伝熱が大幅に抑制されるので、金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性が与えられ、鋳造欠陥の発生の抑制に貢献することができる。
【0047】
また、更に、本実施の形態では、図11から良く分かるように、上記ウォータジャケット中子CWの巾木141の外側面およびオイルジャケット中子CОの巾木143の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS1のテーパ状内面127をスムースに案内するガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられている。
上記各中子CW及びCОの巾木141及び143の外側面にこのようなガイド用のテーパ部141g及び143gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができるのである。
【0048】
また、更に、本実施の形態では、図8から良く分かるように、上記ポート中子CPの巾木146の外側面に、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際に、サイド型DS3のテーパ状内面126をスムースに案内するガイド用のテーパ部146gが設けられている。また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられている。
上記ポート中子CPの巾木146の外側面にこのようなガイド用のテーパ部146gが設けられ、また、より好ましくは、巾木受け部136の外側面にも同様のテーパ部136gが設けられているので、上型DUを下型DLに対して閉じ合わせる際には、特にガイド部を別設する必要なしに、両型の閉じ合わせ動作をスムースに行わせることができる。
【0049】
また、更に、本実施の形態では、上型DU及び下型DLの型閉じ方向と略直交する方向にスライド可能なサイド型DS(DS1〜DS3)が上型DUに設けられているが、図10(a)及び図10(b)に示すように、この上型DUには、上記サイド型DSの下側に位置して該サイド型DSのスライド動作を案内する下ガイド部119aが設けられている。
この下ガイド部119aの両端部はそれぞれ横ガイド部119bに連結されており、これら一対の横ガイド部119bと上記下ガイド部119aとで、サイド型DSのスライド動作を案内するためのフレーム状のスライドガイド119が形成されている。これにより、特にガイド部を別設する必要なしに、上記サイド型DSのスライド動作をスムースに行わせることができる。
【0050】
本実施の形態では、上記鋳型Dに、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御するようにしている。
次に、本実施の形態に係る鋳型Dの冷却制御について説明する。
まず、上型DUの冷却制御について説明する。前述のように、上型DUの左右の各型部には、その中央部に複数のプラグ孔形成用の突出部111が設けられるとともに、その両側にそれぞれ複数のボルト孔形成用の突出部112が設けられている(図5参照)。本実施の形態では、これら突出部111及び112に上型DUの冷却制御機構が設けられている。
【0051】
すなわち、図15および図16に示すように、プラグ孔形成用の突出部111の内部には、その軸線方向に伸長する空洞部111hが設けられ、各空洞部111hには、特に図16に詳しく示すように、冷却媒体を空洞部111hの内部に導入する導入パイプ114と、冷却媒体を空洞部111hの外部に排出する排出パイプ115とが、それぞれ挿入されている。上記導入パイプ114は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ115は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記導入パイプ114及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ115及び冷却媒体の回収装置(不図示)を含む冷却媒体循環系が上記プラグ孔形成用の突出部111における冷却手段を構成している。
【0052】
また、図17に詳しく示すように、ボルト孔形成用の突出部112の内部にも、その軸線方向に伸長する空洞部112hが設けられ、各空洞部112hには、冷却媒体を空洞部112hの内部に導入する導入パイプ116が挿入されている。このボルト孔成形用の突出部112の場合には、空洞部112h内に導入された冷却媒体は、空洞部112hの開口から外部に排出されるようになっている。上記導入パイプ116は、プラグ孔形成用の突出部111用のものとは異なる冷却媒体供給源(不図示)に接続されており、この冷却媒体供給源および導入パイプ116を含む冷却媒体供給系によって、上記ボルト孔形成用の突出部112における冷却手段が構成されている。
【0053】
本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の冷却に適正な指向性を持たせ、欠陥の少ない高品質の鋳造品を得られるようにするために、各突出部111,112にそれぞれ設けられた冷却手段について、鋳型DUの中央に比較的近い内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)のものが、型周囲に比較的近い外側の突出部(つまり、ボルト孔形成用の突出部112)のものよりも冷却能力が大きく設定されている。
具体的には、上記プラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体に液体(例えば水)が用いられ、ボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体には気体(例えばエア)が用いられている。
【0054】
このように、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側のプラグ孔形成用の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側のボルト孔形成用の突出部112のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0055】
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0056】
特に、上記内側のプラグ孔形成用の突出部111に設けた冷却手段の冷却媒体が液体(水)であり、外側のボルト孔形成用の突出部112に設けた冷却手段の冷却媒体は気体(エア)であるので、液体と気体の熱伝達特性の違いを利用して、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段に関し、型中央に比較的近い内側の突出部111のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112のものよりも冷却能力が大きくなるような設定を確実に行うことができる。
【0057】
また、特に、上記各突出部111及び112は、少なくとも、シリンダヘッドの中央に比較的近いプラグ孔とシリンダヘッドの周囲に比較的近いボルト孔にそれぞれ対応しているので、シリンダヘッドに特有のプラグ孔およびボルト孔を利用して、鋳込み後の金属溶湯に適正な指向性を持った冷却凝固を行わせることができるのである。
【0058】
更に、本実施の形態では、上記内側の突出部(つまり、プラグ孔形成用の突出部111)について、これに設けた冷却手段の冷却作動休止後、突出部111の空洞部111h内に残留した冷却媒体(つまり液体)を排除するために、具体的には図示しなかったが、空洞部111h内をエアパージするパージエア供給パイプ(残留液体排除手段)が設けられている。
このような残留液体排除手段を設けたことにより、冷却媒体としての液体が突出部111の空洞部111h内に温度制御されない状態で残留することにより、次サイクルの鋳造時に当該突出部111の冷却手段を作動させた際に温度制御の精度が低下することを確実に防止できるのである。また、突出部111の空洞部111h内での錆の発生も防止できる。
【0059】
次に、下型DLの冷却制御について説明する。
本実施の形態では、図15に示すように、下型DLに、特定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられている。
該スポット冷却機構151は、下型DLの所定部位に形成された取付穴156に嵌合される本体部152と、該本体部152内に形成された冷却媒体通路152hに冷却媒体を供給する供給パイプ153と、上記冷却媒体通路152hから冷却媒体を排出させる排出パイプ154とを備えている。上記本体部152は、その内部に冷却媒体通路152hが設けられることにより略筒状に形成されている。
【0060】
上記供給パイプ153は冷却媒体の供給源(不図示)に接続され、一方、上記排出パイプ154は冷却媒体の回収装置(不図示)に接続されている。上記本体部152の内部に形成された冷却媒体通路152hと、上記供給パイプ153及び冷却媒体の供給源(不図示)並びに排出パイプ154及び冷却媒体の回収装置(不図示)とで、スポット冷却機構151の冷却媒体循環系が構成されている。
【0061】
上記スポット冷却機構151は、その本体部152の外周部が下型DLに設けられた取付穴156に嵌合し、上記本体部152の先端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいる。
このように、上記スポット冷却機構151は、その一端面が鋳造キャビティМc内に臨んでいるので、この部分の金属溶湯を本体部152の長手軸方向に指向性を持たせて選択的に冷却することができる。また、上記本体部152は外周部が下型DLに設けた取付穴156に嵌合しているので、この嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させることが可能となる。
【0062】
本実施の形態では、下型DLが鋼製であるのに対して、上記本体部152を例えばアルミニウム合金製として、両者の材質を変えることにより、両者の嵌合部を境界として熱の伝達特性を変化させ、スポット冷却機構151による冷却に上述の指向性を持たせるようにしている。
尚、この替わりに或いはこれに加えて、両者の嵌合部に隙間を設けて嵌合部からの熱伝達を抑制するようにしても良い。また、両者の嵌合部に例えばセラミック溶射層などの断熱層を設けることなどにより、本体部152の長手軸方向以外の方向における熱伝播が抑制されるようにしても良い。
【0063】
以上のように、下型DLに所定方向(本体部152の長手軸方向で鋳造キャビティМcに臨む方向)以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151を設けたことにより、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0064】
また、前述のように、本実施の形態では、シリンダヘッドの側面に対応する鋳型面の一部が砂壁で形成され、下型DLに砂壁138が組み付けられるが、上記スポット冷却機構151はこの砂壁138の近傍に設けられている(図6及び図7参照)。尚、このスポット冷却機構151は、砂壁138の近傍でも湯口Diからできるだけ離れた部位に設けられる。
このように、砂壁138の近傍に上記スポット冷却機構151を設けることにより、熱伝達性が低く冷却されにくい砂壁138の近傍を選択的に強制冷却することができる。
【0065】
更に、本実施の形態では、前述のように、下型DLの下方に、各湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される金属溶湯を供給する溶湯供給部としてのデスとリビュータ9が設けられている。一方、下型DLの下面側には所定深さの凹部105が形成されており、この凹状の空間部105に上記スポット冷却手機構151の冷却媒体経路としての上記供給パイプ153及び排出パイプ154が配置されている。また、この凹状の空間部105に、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が配設されている。
尚、各湯口Diには、鋳造キャビティМc内に鋳造品の機械的特性に悪影響を及ぼす異物等が混入することを防止するために、スクリーンメッシュ(金網109)が取り付けられる。この金網109は、通常、鋳造品の取り出しに伴なって除去されるものであり、各鋳造サイクル毎に新たに取り付けられる。
【0066】
このように、下型DLの下方に湯口Diを介して鋳造キャビティМc内に注入される溶湯を供給する溶湯供給部9(デストリビュータ)が設けられており、該デストリビュータ9と下型DLとの間に所定の空間部105を設け、該空間部105に上記スポット冷却機構151用の冷却媒体経路153及び154を配置するとともに、上記デストリビュータ9と湯口Diとを連通させる連通筒106が設けられているので、通常、スペースを確保することが難しい下型DLの下方に支障無く冷却媒体経路153及び154を設けることができ、上記スポット冷却機構151を容易に下型DL側に設けることができる。
【0067】
以上のように、上型DU側には、上型DUに設けられた孔部形成用の各突出部111及び112に冷却手段を設けたので、湯口Diから遠い側の鋳型(上型DU)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口Diにできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部111及び112に設けた冷却手段について、型中央に比較的近い内側の突出部111(プラグ孔形成用の突出部)のものが型周囲に比較的近い外側の突出部112(ボルト孔形成用の突出部)のものよりも冷却能力が大きく設定されているので、鋳造キャビティМcの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
【0068】
一方、下型DL側には所定方向以外の方向における熱伝播が抑制されるように設定したスポット冷却機構151が設けられているので、鋳型キャビティМc内の金属溶湯の特定部分について下型DL側から所定方向の指向性を持った冷却凝固を行わせることができる。
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記各冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることができるのである。
【0069】
尚、本実施の形態では、スポット冷却機構151は下型DLのみに設けられていたが、これを上型DUのみ或いは両方の鋳型DU及びDLに設けるようにしても良い。
【0070】
次に、上記低圧鋳造装置Aに備えられた第1および第2の台車BP及びBC、特に、第2台車(中子台車)BCについて説明する。
これら台車BP及びBCは、前述のように、上型DUが上昇して下型DLとの間に型開き空間Kが形成されたとき(図1参照)、この型開き空間K内に進退出可能とされたもので、中子台車BCは、型開き空間Kの外部で中子および砂壁を保持した後、型開き空間K内に進出(前進)し、保持した中子および砂壁を下降させて下型DLにセットする。
【0071】
また、中子台車BCは、粉体塗型剤を上型DUおよびサイド型DSの鋳型内表面に塗布するための塗布ボックスTを搭載しており、型開き空間K内において塗布ボックスTを上昇させて、後述のようにして上型内表面(下型DLに対する合わせ面で、下向きの面となる)およびサイド型DSの内面に対して粉体塗型剤が塗布される。尚、本実施の形態では、この塗型剤として、例えば珪藻土を主原料とするものを用いた。この替わりに、例えばカーボンを主原料とするものなど、他の好適な塗型剤を用いることができる。
上型DUおよびサイド型DSを下降させて下型DLに型合わせし、その後、これら鋳型DU,DS及びDLにより形成されるキャビティМc内に溶湯を供給・充填することにより、所定の鋳造品(シリンダヘッド)が鋳造される。そして、得られた鋳造品は、上型DUが上昇して型開き空間Kが構成された状態で、製品取り出し台車BPによって、中子台車BCの待機位置とは反対方向へ取り出されるのである。
【0072】
次に、以上のように構成された鋳造装置Aを用いて行われる鋳造プロセスについて、図19〜図20のフローチャートを参照しながら説明する。
この鋳造プロセスは一連の工程が繰り返して行われるものであるが、ここでは、例えば、前サイクルの鋳造品(製品)が鋳造され、これを鋳型Dから取り出す時点から、説明を始める。
鋳造が完了して上下の鋳型DU/DLが型開きされた後、まず、ステップ#1で、第1台車(製品取り出し台車)BPが型開き空間K内に前進し、ステップ#2で、サイド型DS(DS1〜DS3)が型開きされる。尚、このステップ#2の型開きをステップ#1と並行して行うようにしても良い。
【0073】
次に、ステップ#3で、上型DU側のエジェクタ機構(不図示)を駆動させて製品を上型DUから取り出す。このとき、上型DUの内面には塗型剤が塗布されているので、容易に製品を上型DUから離型させることができる。取り出された製品は第1台車BPの上側で受け取られる。
一方、第1台車BPの下部では、上記ステップ#2及び/又はステップ#3と並行して、金網ホルダ(不図示)に保持された金網109が下型DLに設けられた湯口Diにセットされる(ステップ#4)。尚、上型DUには、前サイクルで使用された金網109の断片あるいは前回サイクルでの鋳造による残存アルミニウム塊が湯口Diを塞いでいないことを確かめるための棒状センサが設けられており、金網109のセットに先立って湯口Diが正常に開口していることを確かめるようにしている。
その後、ステップ#5で、第1台車BPが上下方向の型開き空間K内から後退する。そして、これと入れ替わりに、第2台車(中子台車)BCが型開き空間K内に前進してくる(ステップ#6)。
【0074】
そして、この第2台車BCの上部側では、ステップ#7で全てのサイド型DSを閉じ合わされた後、全てのサイド型DS及び上型DUの内面に塗型剤が塗布される(ステップ#8)。
一方、第2台車BCの下部では、上記ステップ#7及びステップ#8の工程と並行して、中子セット装置10による中子の下型DLへのセット(組み付け)が行われる(ステップ#9)。このとき、第2台車BCの下部には、3種の中子CW,CО及びCPと砂壁138とが保持されており、これら中子CW,CО及びCPと砂壁138とが下型DLにセットされる。尚、中子セット装置10には、前サイクルで用いた中子が折損等によって下型DLに残存していないことを確かめるための棒状センサが設けられており、中子セット作業に先立って、下型DLの中子セット箇所に中子の破損した断片が残っていないことが確認されるようになっている。
【0075】
塗型剤の塗布工程(ステップ#8)および中子セット工程(ステップ#9)を終えて第2台車BCが後退(ステップ#10)した後、上型DUを下降させて下型DLに対して閉じ合わせる(ステップ#11)。
そして、ステップ#12で、保持炉FH内を加圧して低圧鋳造が行われる。この加圧工程(ステップ#12)における加圧制御の詳細について、図20のフローチャート及び図21〜図23の線図を参照しながら説明する。
【0076】
まず、ステップST1で、エア供給路42から加圧室20へ加圧エアを供給し、るつぼ12内の溶湯を押し上げ、この溶湯をストーク22を介して鋳型30のキャビティ32へ供給して鋳型を開始すると共に、ステップST2でタイマ60が起動する。
この場合、図21における加圧パターン(a)に示すように、加圧エアの供給開始後、溶湯が鋳型30の湯口40に達する予定の時間t1が経過するまでの間は、圧力を急速に上昇させて溶湯を速やかに押し上げ、溶湯の温度低下を防止し、溶湯が湯口40に達する予定時間t1経過後は、溶湯が砂中子同志の間にスムーズに充填されるよう圧力上昇速度を低下させる。
【0077】
次に、ステップST3で、充填信号の有無により、充填検知センサ58が溶湯の充填を検知したか否かを判断し、充填検知センサ58が充填を検知した場合には、ガスが砂中子から溶湯中に噴出するのを防止するため、ステップST4で、図21の加圧パターン(b)に示すように加圧室20内の圧力を高めると共に、充填検知センサ58が正常に機能しているため、ステップST5でタイマ60を停止する。
また、ステップST3で充填検知センサ58が溶湯の充填を検知しない場合は、ステップST6で、加圧エア供給開始後、所定時間t2経過後にタイマ60から出力される経過信号を受けて図21の加圧パターン(c)に示すように加圧室20内の圧力を高める。このようにすると、充填検知センサ58が検知不良の場合でも、加圧エアの供給開始後、所定時間t2の経過と共に加圧室20内の圧力を高めることができるので、製品不良の発生を防止できる。
次に、ステップST7でタイマ30をリセットして次の鋳造工程に備えると共に、ステップST8で鋳造を完了する。
【0078】
22は、上記実施例における加圧制御方法の具体的な加圧パターンを示している。すなわち、加圧室20内の加圧開始と同時に第1CPU70及びタイマ60が起動し、加圧開始8秒後に第1CPU70は圧力上昇速度を遅くし、充填検知センサ58が充填信号を出力すると(通常、加圧開始13秒後)、第1CPU70がそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72が加圧室20の圧力を上昇させ、加圧室20内の圧力が所定値に達すると(通常、加圧開始20秒後)、第2CPU72もそのときの圧力を維持する。この場合、タイマ60は加圧開始18秒後にオン信号を出力して第2CPU72を起動させるよう設定されており、充填検知センサ58が検知不良の場合でも加圧開始18秒後には第2CPU72が起動する。
【0079】
また、図23は、上記加圧制御方法の変形例の加圧パターンを示している。この変形例においては、鋳型30の下型26に、溶湯が湯口40を通過するときに通過信号を出力する湯口通過センサを配置すると共に、第1CPU70及び第2CPU72の他に第3CPUを設置しておく。そして、湯口通過センサが通過信号を出力すると(通常、加圧開始9秒後)、第1CPU70はそのときの圧力を維持する一方、第2CPU72は加圧室20内の圧力を上昇させ、充填検知センサ58からの充填信号(通常、加圧開始13秒後)に基づき、第2CPU72はそのときの圧力を維持する一方、第3CPUは加圧室20内の圧力を上昇させるような加圧パターンに設定しておく。この場合、タイマ60を、加圧開始15秒後及び湯口通過センサからの通過信号を受けてから5秒後のうちのいずれか早いときにオン信号を出力して第3CPUを起動させるよう設定しておく。
【0080】
この変形例のように加圧パターンを設定すると、時間の経過と溶湯の上昇程度との間に発生する誤差を少なく設定することができるため、第3CPUを加圧開始15秒後に起動でき、前記具体例の場合(加圧開始18秒後)よりも早く起動できるので、充填検知センサ58が検知不良の場合でも製品の品質を高く維持できる。また、湯口通過センサが設けられているため、溶湯が湯口40を通過するまでの圧力上昇速度を具体例の場合よりも早くすることができるので、溶湯の温度低下を防止できる。さらに、湯口通過センサが必要になる反面、第1CPU70として単純な機能のCPUを使用できるのでコスト的に有利にもなる。
【0081】
以上のように、上記低圧鋳造装置Aでは、充填検知センサが正常の場合には充填信号により、充填検知センサが検知不良の場合には経過信号により、加圧パターンを変えるよう圧力可変制御手段が作動するので、充填検知センサの検知状態の正常、不良を問わず加圧パターンが変えられる。このため、充填検知センサに検知不良が発生した場合でも、製品の品質を許容レベル以上に維持することができるので、製品不良の発生を防止できる。
【0082】
以上のような加圧工程(ステップ#12)を終えた後、或いはその終盤における途中において、ステップ#13で、鋳込み後の金属溶湯の凝固を促進し、また、鋳型Dに塗型剤を塗布する際の鋳型Dの温度(型温)を適正に保つために、鋳型Dの型温を所定範囲に冷却制御する冷却工程が行われる。これにより、鋳造工程が終了し、上下の鋳型DU/DLが開かれ(ステップ#14)、ステップ#1に戻って同様の鋳造サイクルが繰り返されるようになっている。
【0083】
以上の一連の鋳造サイクルにおいて、各工程で要する時間は例えば以下の通りである。すなわち、加圧工程(ステップ#12)が最も長く約200秒であり、次に冷却工程(ステップ#13)が約40秒、また、中子セット工程(ステップ#9)が約20秒であった。そして、これら以外の工程については、全てを合計して約60〜70秒であった。従って、ステップ#13の冷却工程を終えた後、塗型剤の塗布(ステップ#8)を行うまでの時間は、約60〜70秒程度しかないことになる。
【0084】
つまり、このような短い間隔で、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却を行い、その後に、塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための鋳型の冷却制御を行ったのでは、両方の制御が干渉して良好な冷却制御を行うことはできない。
そこで、本実施の形態では、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却(ステップ#13)において、前述のように上型DUの突出部111及び112に設けた冷却手段により、上型DUの温度に応じて、塗型剤塗布時の上型DUの最適温度範囲(例えば、260〜320℃)を考慮した上で、具体的には、上型DUの型温がこの260〜320℃の範囲となるように、該上型DUの型温を冷却制御するようにしている。ちなみに、湯口Diが設けられ、また、塗型剤の塗布を行わない下型DLの場合には、型温の制御範囲としては、例えば450〜510℃が好ましい。
【0085】
すなわち、本実施の形態では、上型DUについて、鋳込み後の金属溶湯の凝固促進のための冷却制御で、その後(約60〜70秒後)に行う塗型剤の型面への付着性(密着性)向上のための冷却制御を兼用していることになる。
このように、上型DUの型温が所定の温度範囲に冷却制御された下で、塗型剤の塗布が行われるので、適正な鋳型温度で塗布を行うことができ、上型DU及びサイド型DSの内面への塗型剤の付着性を高めることができるのである。
【0086】
尚、以上の実施の形態では、鋳型Dは所謂2個取り用のものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、通常の1個取り用のものであっても有効に適用することができる。また、上記実施の形態では、複数のサイド型DSは全て可動型であったが、その一部のものが上型に固定された固定型であっても良い。更に、上記実施の形態は、エンジンのシリンダブロックを鋳造する場合を例にとって説明したものであったが、本発明は、シリンダブロックに限らず、他の種々の鋳造品を鋳造する場合にも有効に適用することができる。
このように、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更等が可能であることは言うまでもない。
【0087】
【発明の効果】
本願の第1の発明に係るシリンダヘッドの鋳造装置によれば、上型に設けられたボルト孔形成用およびプラグ孔形成用の各突出部に冷却手段を設けたので、湯口から遠い側の鋳型(上型)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口にできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部に設けた冷却手段について、型合わせ面における周縁部近傍に設けた上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段が設けられる一方、ボルト孔形成用の突出部よりも内側(つまり型中央に近い側)に設けた上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段が設けられているので、型中央に比較的近い側の突出部のものが周縁部近傍に位置する外側の突出部のものよりも冷却能力が大きく設定されることとなり、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることが可能になる。
この場合において、液体と気体の熱伝達特性の違いを利用して、複数の突出部に設けた冷却手段に関し、型中央に比較的近い側の突出部のものが周縁部近傍に位置する外側の突出部のものよりも冷却能力が大きくなるような設定を確実に行うことができる。また、シリンダヘッドに特有のプラグ孔およびボルト孔を利用して、鋳込み後の金属溶湯に適正な指向性を持った冷却凝固を行わせることができる。
【0088】
また、本願の第2の発明に係るシリンダヘッドの鋳造方法によれば、上型に設けられたボルト孔形成用およびプラグ孔形成用の各突出部に冷却手段を設けたので、湯口から遠い側の鋳型(上型)を積極的に冷却して金属溶湯が湯口にできるだけ遠い部分から凝固するように、鋳込み工程後の溶湯の冷却に指向性を与えることが可能となる。また、複数の突出部に設けた冷却手段について、型合わせ面における周縁部近傍に設けた上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段を設ける一方、ボルト孔形成用の突出部よりも内側(つまり型中央に近い側)に設けた上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段を設けることにより、周縁部近傍の上記ボルト孔形成用の突出部の冷却手段に比して、上記ボルト孔形成用の突出部よりも内側の上記プラグ孔形成用の突出部の冷却手段の方が、冷却能力が大きくなるように設定して鋳造を行うので、鋳造キャビティの中央側部分と外側部分とについても、金属溶湯ができるだけ中央側部分から徐々に冷却されるような指向性を持った溶湯の冷却を行うことができるようになる。
すなわち、鋳込み後の金属溶湯を凝固させるに際して、上記冷却手段を設けることによって溶湯の凝固を促進するとともに、単に凝固速度を高めるだけでなく、シリンダヘッド特有の形状を利用して、適正な指向性を持った冷却を行わせるようにすることができ、ガス欠陥等の不具合の発生を有効に抑制して高品質の鋳造品をより安定して得ることが可能になる。
この場合において、液体と気体の熱伝達特性の違いを利用して、複数の突出部に設けた冷却手段に関し、型中央に比較的近い側の突出部のものが周縁部近傍に位置する外側の突出部のものよりも冷却能力が大きくなるような設定を確実に行うことができる。また、シリンダヘッドに特有のプラグ孔およびボルト孔を利用して、鋳込み後の金属溶湯に適正な指向性を持った冷却凝固を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる鋳造装置の一例を概略的に示す正面説明図である。
【図2】 上記鋳造装置の側面説明図である。
【図3】 上記鋳造装置の保持炉の内部構造を模式的に示す保持炉および鋳型の縦断面説明図である。
【図4】 上記鋳造装置の加圧制御系統を概略的にを示すブロック構成図である。
【図5】 上記鋳造装置の上型の底面説明図である。
【図6】 上記鋳造装置の下型の平面説明図である。
【図7】 上記下型のポート中子セット状態を示す平面説明図である。
【図8】 上記下型への中子セット状態を示す縦断面説明図である。
【図9】 図8のY9−Y9方向からの矢視図である。
【図10】(a) サイド型のスライドガイド機構を示す上型およびサイド型の縦断面説明図である。
(b) 図10(a)のY10B−Y10B方向からの矢視図である。
【図11】 ウォータジャケット中子とオイルジャケット中子の下型へのセット状態を示す部分縦断面説明図である。
【図12】 上記下型とウォータジャケット中子の巾木との係合部分を拡大して示す平面説明図である。
【図13】 図12のY13−Y13線に沿った縦断面説明図である。
【図14】 上記鋳型のガス抜き機構を示す中子支持部分の拡大縦断面説明図である。
【図15】 上記上型と下型の組み合わせ状態を示す鋳型の縦断面説明図である。
【図16】 上型のプラグ孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図17】 上型のボルト孔成形部を拡大して示す縦断面説明図である。
【図18】 上記下型のスポット冷却機構を拡大して示す縦断面説明図である。
【図19】 上記低圧鋳造装置を用いた鋳造プロセスを示すフローチャートである。
【図20】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示すフローチャートである。
【図21】 上記低圧鋳造装置における加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図22】 上記低圧鋳造装置の具体的な加圧制御方法を示す加圧パターン図である。
【図23】 上記低圧鋳造装置の加圧制御方法の変形例を示す加圧パターン図である。
【符号の説明】
9…デストリビュータ
105…凹状空間部
106…連通筒
111…プラグ孔形成用突出部
112…ボルト孔形成用突出部
114…導入パイプ(プラグ孔形成用突出部)
115…排出パイプ(プラグ孔形成用突出部)
116…導入パイプ(ボルト孔形成用突出部)
138…砂壁
A…鋳造装置
D…鋳型
Di…湯口
DL…下型
DS(DS1,DS2,DS3)…サイド型
DU…上型
Mc…鋳造キャビティ

Claims (2)

  1. 接離可能に設けられた一対の上型および下型を備え、両型間に形成された鋳造キャビティ内に上記下型に設けた湯口から溶湯を注入・充填し該溶湯を凝固させてエンジンのシリンダヘッドを鋳造するようにした鋳造装置であって、
    上記上型の型合わせ面における周縁部の近傍に、該周縁部に沿って所定の間隔をあけて複数のボルト孔形成用の突出部が設けられるとともに、これらボルト孔形成用の突出部よりも内側には、複数のプラグ孔形成用の突出部が設けられ、
    上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段が設けられる一方、上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段が設けられている、
    ことを特徴とするシリンダヘッドの鋳造装置。
  2. 接離可能に設けられた一対の上型および下型間に形成された鋳造キャビティ内に上記下型に設けた湯口から溶湯を注入・充填し該溶湯を凝固させてエンジンのシリンダヘッドを鋳造するようにした鋳造方法であって、
    上記上型の型合わせ面における周縁部の近傍に、該周縁部に沿って所定の間隔をあけて複数のボルト孔形成用の突出部を設けるとともに、これらボルト孔形成用の突出部よりも内側には、複数のプラグ孔形成用の突出部を設け、
    上記ボルト孔形成用の突出部に冷却媒体が気体である冷却手段を設ける一方、上記プラグ孔形成用の突出部には冷却媒体が液体である冷却手段を設けることにより、
    前記周縁部の近傍の上記ボルト孔形成用の突出部の冷却手段に比して、上記ボルト孔形成用の突出部よりも内側の上記プラグ孔形成用の突出部の冷却手段の方が、冷却能力が大きくなるように設定して鋳造を行う、
    ことを特徴とするシリンダヘッドの鋳造方法。
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