JP3699143B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、転がり抵抗を低減した軽量空気入りラジアルタイヤの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
低燃費を目的とするタイヤの転がり抵抗低減のためには先ず軽量化が図られるが、ラジアルタイヤにおいてはカ−カス、ベルト層など骨格部分の過剰な補強を見直し、トレッドを含む被覆ゴム層についても余分と考えられる部分は削り落とすことによってスリムな構造が適用される。このスリム化に関し乗用車用ラジアルタイヤのカ−カスについて述べると、通常繊維コ−ドプライの2枚で構成されるところを1枚に減じ、その結果低下する、特に剛性に関しては、必要な部分に限定して補うことが行われる。例えばサイドウォ−ルの領域について、道路の縁石による外傷および衝撃よりの保護を目的とし、サイドォ−ルの中央から径方向内側の区域における適宜位置に外被ゴムを部分的肉厚にし、この肉厚部分が周方向に延びる環状隆起を設けることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのようなサイドウォ−ルの補強構造は、対外傷についてはともかく、コ−ナリング走行時に作用する横力に対する剛性不足は免れず、操縦安定性を犠牲にした構造といえる。
本発明はかかる問題点に鑑みなされたもので、サイドウォ−ルの外的異物または障害物に対し必要な保護能力を有すると共に、操縦安定性に優れた軽量ラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円筒状クラウン部の両端から径方向内側に向かってビ−ドリングを先端部に埋設したサイドウォ−ルが夫々連なり、繊維コ−ドラジアルプライの1枚から成るカ−カスを上記両ビ−ドリング間に、また非伸長性ベルト層およびトレッドを上記カ−カスのクラウン部周上に順次配置して補強すると共に、上記カ−カスプライの両端部をビ−ドリングの回りに軸方向外側に向かって巻上げ、この巻上げ端部とカ−カス間に硬質ゴムのスティフナ−をビ−ドリング上から先細りに配置しサイドウォ−ル外表面をゴムで被覆したタイヤにおいて、上記カ−カスプライの巻上げ先端およびスティフナ−の先細り先端はタイヤ断面高さの30% を越えない位置に止まり、この位置からタイヤ断面高さの少なくとも30% のクラウン部側区域を残すサイドウォ−ル域内にのみ、厚みが0.5〜3mmのシ−ト状硬ゴム層を埋設し補強したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤである。
【0005】
【作用】
本発明におけるタイヤは、ラジアルカ−カスプライ(1枚)のビ−ドリング回り巻上げ先端、およびカ−カスと同プライ巻上げ端部の間に配置されるスティフナ−の先細り先端がタイヤ断面高さの30% を越えない位置に止まり、この位置からタイヤ断面高さの少なくとも30% のクラウン部側区域を残すサイドウォ−ル域内にのみ、厚みが0.5〜3mmのシ−ト状硬ゴム層を埋設し補強し強化したことを構造上の特徴とする。ラジアルタイヤの軽量化のための手段として、カ−カスにつき通常2枚で構成されるカ−カスプライを1枚で構成し、更にプライ巻上げ端部の高さを上記の通りタイヤ断面高さの最大限30% と低い位置に止め、またカ−カスとプライ巻上げ端部の間に形成される空所を埋めるように配置されるスティフナ−の高さも同様に低い位置に止めることによってサイドウォ−ルの全体的肉厚を抑えている。そしてこの場合懸念される剛性の低下をシ−ト状硬質ゴム層の埋設によって防止し、この種のタイヤの操縦安定性の向上、並びに外的異物または障害物に対し必要な保護能力を高めることができる。
【0006】
操縦安定性に対する横剛性向上のために従来とられていたコ−ド層のサイドウォ−ル下方域への追加配置、硬質ゴムに成るスティフナ−のボリュ−ム増、そして外傷によるダメ−ジ対策としてのサイドウォ−ル外被ゴム膨出による環状隆起の配置は何れも重量増加を伴うため、カ−カスプライ削減等を施しても軽量化による利点が失われてしまう。
【0007】
発明者が操縦安定性についてタイヤ剛性との関係を解析したところによると、横剛性のみならず捩じり剛性(垂直軸回りの剛性)も大きく影響していくことが分かった。そこで軽量化の必要条件としてのタイヤ断面高さの最大30% 位置に止まるカ−カスプライ巻上げ端、並びにスティフナ−端から上方のサイドウォ−ル中央領域にシ−ト状硬ゴム層を埋設することによって、重量増加を抑えつつタイヤの捩じり剛性を有利に向上させることができるのである。
【0008】
硬ゴム層の厚みにつき、必要な捩じり剛性向上のためには最低限0.5mmであり、またタイヤ重量抑制の観点から3mmが限度である。
硬ゴム層の配置区域はタイヤ断面高さの少なくとも30% のクラウン部側区域を残し、即ち、硬ゴム層の径方向上端がタイヤ断面高さの70% 位置を越えない範囲でカ−カスプライ巻上げ端およびスティフナ−端より上方のサイドウォ−ル中央領域に配置する必要があるが、上記上端位置70% は重量の面より限界である。
【0009】
【実施例】
以下図面に基づき説明する。図1は本発明における一実施例を示すタイヤの断面図である。
本発明においてタイヤ1 は円筒状クラウン部2 の両端から径方向内側に向かってビ−ドリング3 を先端部に埋設したサイドウォ−ル4 が夫々連なり、繊維コ−ドラジアルプライの1枚から成るカ−カス5 を両ビ−ドリング3 間に、また非伸長性ベルト層6 およびトレッド7 をカ−カス5 におけるクラウン部2 の周上に順次配置し補強している。カ−カスプライの両端部はビ−ドリング3 の回りに軸方向外側に向かって巻上げ、この巻上げ端部8 とカ−カス5 との間に硬質ゴムのスティフナ−9 をビ−ドリング3 上を基部として先細りに配置し、またサイドウォ−ル4 の外表面を外被ゴム10により被覆している。
そしてカ−カスプライの巻上げ端部8 の先端およびスティフナ−9 の先細り先端の各高さHR、HSは、タイヤ断面高さHTの30% を越えない位置に止まり、この位置からタイヤ断面高さHTの最大70% の高さHU領域におけるサイドウォ−ル4 内に0.5〜3mmの厚みのシ−ト状硬ゴム層11を埋設し補強するものとする。
【0010】
図1には赤道面O より左側半分を省略しているが左右対称である。
カ−カス5 はポリエステル、レ−ヨンで代表される繊維コ−ドを赤道面O と実質上直交する方向に配列したプライから成る公知の構造であり、ベルト層6 も、スチ−ルコ−ドなどの非伸長性コ−ドを赤道面O に対し浅い角度(15〜35°)で傾斜配列したプライの複数枚、通常2枚を、それらのコ−ドが交差するように重ね合わせたもので、必要によっては更にその周囲全体、若しくは両端部に限定してナイロンなどの熱収縮性コ−ドを複数本並べてゴム引きしたストリップの周方向螺旋巻きによって形成した補助層を含む公知の構造である。
【0011】
図1に基づき165SR13 サイズ乗用車用タイヤの実施例において、カ−カス5 は1500d/2 ポリエステルコ−ドのラジアル配列プライ(1枚)より成り、ビ−ドリング3 の回りに図示の如く巻上げた巻上げ端部8 の高さHRとスティフナ−9 の高さHSは、断面高さHTの夫々20% および25% である。
上記巻上げ端部8 の高さHRはビ−ドリングに対しカ−カスプライの固定を確実にする必要性からタイヤ断面高さHTに対し最低限10% であり、スティフナ−9 の高さHSも実質上これに準じて設けることが好ましい。なおスティフナ−9 の硬度(JIS 硬度、以下同じ)は70〜90°が好ましい。
【0012】
さて硬ゴム層11であるが、この実施例においては硬度80°、厚み1mmのゴムシ−トを、回転軸と平行なビ−ド部における基線J からタイヤ断面高さHTの40〜60% の領域におけるカ−カス5 と外被ゴム10との間に配置した。そのため硬ゴム層11の径方向内側端とスティフナ−9 の上端との間に外被ゴム10が介在している。なお硬ゴム層11の硬度は少なくとも60°が好ましく、一方外被ゴム10は耐屈曲性に優れ柔軟性に富むゴム(この実施例では50°)が使用される。
【0013】
【効果】
本発明に成るタイヤの効果を確かめるべく図1に基づき述べた165SR13 サイズによる実施例のタイヤ(重量5.85Kg)に、硬ゴム層を使用しない点においてのみ異なる比較例1(重量5.80Kg)、および片方のサイドウォ−ルの外被ゴムがタイヤ最大幅位置からリムフランジ上端部にかけ1mmから4mmに厚みが漸増する環状隆起を設けた比較例2(重量6.40Kg)を交えて操縦安定性およびサイドカットテストを行い評価した。
テストタイヤは13×5Jリムに組み、操縦安定性テストは2.0Kg/Cm2の内圧を充填した後、実車によりアスファルト舗装の周回路上を80〜100Km/Hの速度で直進、レ−ンチェンジ、および旋回走行を行い、ドライバ−のフィ−リングによって10点を最高点とする指数にて評価した。
一方サイドカットテストは、路面より11Cmの高さに突出した鉄製の四角柱に対し、25°の角度で実車によりフロントタイヤのサイドウォ−ルに種々の内圧において衝撃を加え(速度10Km/H)サイドウォ−ルがバ−ストしたときの内圧を測定し評価した。この場合、内圧は1.8Kg/Cm2より始め、バ−ストしないときは内圧を0.1Kg/Cm2刻みで減らして行き、各内圧毎上記衝撃テストを行った。テスト結果は表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
このようにラジアル単一プライより成るカ−カスを備え、プライ巻上げ端部およびスティフナ−がタイヤ断面高さの30% を越えない低い位置に止まる構造の軽量タイヤにおいて、上記プライ巻上げ端およびスティフナ−上端よりタイヤ断面高さの70% を越えない領域にシ−ト状硬ゴム層を埋設することによって、操縦安定性、並びに外的異物または障害物に対する補強が著しく改善されるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例のタイヤの断面図。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 クラウン部
3 ビ−ドリング
4 サイドウォ−ル
5 カ−カス
6 ベルト層
7 トレッド
8 プライ巻上げ端部
9 スティフナ−
10 外被ゴム
11 硬ゴム層
Claims (1)
- 円筒状クラウン部の両端から径方向内側に向かってビ−ドリングを先端部に埋設したサイドウォ−ルが夫々連なり、繊維コ−ドラジアルプライの1枚から成るカ−カスを上記両ビ−ドリング間に、また非伸長性ベルト層およびトレッドを上記カ−カスのクラウン部周上に順次配置して補強すると共に、上記カ−カスプライの両端部をビ−ドリングの回りに軸方向外側に向かって巻上げ、この巻上げ端部とカ−カス間に硬質ゴムのスティフナ−をビ−ドリング上から先細りに配置しサイドウォ−ル外表面をゴムで被覆したタイヤにおいて、上記カ−カスプライの巻上げ先端およびスティフナ−の先細り先端はタイヤ断面高さの30% を越えない位置に止まり、この位置からタイヤ断面高さの少なくとも30% のクラウン部側区域を残すサイドウォ−ル域内にのみ、厚みが0.5〜3mmのシ−ト状硬ゴム層を埋設し補強したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
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