JP3699130B2 - 強化された硬化性能を持つパーフルオロエラストマー組成物 - Google Patents

強化された硬化性能を持つパーフルオロエラストマー組成物 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、優れた加工性を持ち、硬化した際に優れた熱安定性および耐薬品性を呈する硬化性パーフルオロエラストマー組成物に関する。
発明の背景
パーフルオロエラストマー(エラストマー系パーフルオロポリマー)は、高分子材料であり、優れた耐高温性および耐薬品性を示す。したがって、そのような組成物は、高温および(または)腐食性薬品に遭遇する装置内のシールおよびガスケットとしての使用に特に適している。パーフルオロポリマーの優れた特性は、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニル)エチレンなどのポリマー主鎖の主要部を作る共重合過弗素化モノマー・ユニットの安定性および不活性に大きく貢献する。弾性特性を完全に発達させるために、パーフルオロポリマーは一般に架橋結合、すなわち加硫されている。この末端に、少ない割合で硬化部位モノマーを、パーフルオロ化モノマー単位と共重合させる。少なくとも一つのニトリル基、例えばパーフルオロ−8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテンを含む硬化部位モノマーが特に好ましい。そのような組成物は、米国特許第4,281,092号および第4,394,489号、さらに国際出願WO95/22575に記述されている。
カルボニル含有官能基を持つパーフルオロエラストマーの最近開発された種類は、米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号AD−6425として、かつ「Fast-curing Perfluoroelastomer Compositions」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに開示されている。これらのポリマーは、カルボキシル基、カルボキシレート基、カルボキシアミド基、およびそれらの混合物等のカルボニル含有官能基を持つ。好ましくは、カルボニル含有官能基は、重合反応を過硫酸塩でイニシエーションした結果として生ずるもので、該反応は亜硫酸または亜硫酸水素塩還元剤がない状態で実行される。カルボニル含有パーフルオロエラストマーは、優れた硬化特性を示すが、粘度が相対的に高いためある種のエンドユーズにおいて加工するのが困難である。脱カルボキシル化によってカルボニル含有パーフルオロエラストマーの粘度を減少させる方法が、米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号DW−005として、かつ「Perfluoroelastomer Composition Having Improved Processability」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに開示されている。有機錫化合物を利用した場合に、完全に脱カルボニル化、あるいは部分的に脱カルボニル化したパーフルオロエラストマーが見いだされる。有機錫化合物によって硬化したパーフルオロエラストマーは、例外的に良好な高温度特性を示すことから、有機錫硬化剤と組合わさって完全または部分的に脱カルボキシル化したパーフルオロエラストマーにもとづいた急速硬化組成物が求められよう。さらに、ある種のエンドユーズ用途のために別の種のパーフルオロエラストマーの硬化速度を高めるための手段を持つことが有益であろう。
発明の要約
本発明は、硬化組成物を提供する。この組成物は、
(A)(1)パーフルオロオレフィン、(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテル、さらに(3)少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化オレフィン、少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化ビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのニトリル基を持つ硬化部位モノマーの共重合ユニットを含むパーフルオロエラストマーと、
(B)硬化剤と、
(C)120℃から225℃で分解する有機または無機のアンモニウム塩と、
を含む。
本発明の好ましい実施形態例は、硬化組成物からなるもので、パーフルオロエラストマーは、(1)パーフルオロオレフィン、および(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテルを含むパーフルオロエラストマーであって、該パーフルオロエラストマーは、(i)イオン化またはイオン性末端基、(ii)臭素含有基、および(iii)ヨウ素含有基を実質的に含まない。
本発明のさらに好ましい実施形態例は、硬化組成物からなるもので、パーフルオロエラストマーは、(1)パーフルオロオレフィン、(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテル、(3)少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化オレフィン、少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化ビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも一つのニトリル基を持つ硬化部位モノマーからなる共重合ユニットを有するパーフルオロエラストマーであり、該パーフルオロエラストマーは、(i)カルボキシル末端基、カルボキシレート末端基、カルボキシアミド末端基、およびそれらの混合物からなる群から選択される複数のカルボニル含有末端基を有し、(ii)カルボニル含有官能基を持つもの以外のイオン化またはイオン性末端基を実質的に含まず、前記カルボニル含有末端基の積分吸光度比は0.1を上回り、該積分吸光度比は、パーフルオロエラストマーのフーリエ変換赤外線スペクトラムで測定されるように、2220〜2740cm-1の範囲内の積分ピーク強度に対する1620〜1840cm-1の範囲内の積分ピーク強度の比を計算することによって決定される。
本発明の別の実施形態例は硬化組成物からなるもので、パーフルエラストマーは、カルボキシル基、カルボキシレート基、およびカルボキシアミド基からなる群から選択される複数のカルボニル含有官能基を持つパーフルオロエラストマーであり、該パーフルオロエラストマーは(1)パーフルオロオレフィンと、(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテルと、(3)カルボキシル含有およびカルボキシレート含有コモノマーからなる群から選択される弗素化コモノマーと、(4)少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化オレフィン、少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化ビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも一つのニトリル基を持つ硬化部位モノマーとからなる共重合ユニットを有するパーフルオロエラストマーであり、カルボニル含有末端基の積分吸光度比は0.1を上回り、該積分吸光度比は、パーフルオロエラストマーのフーリエ変換赤外線スペクトラムで測定されるように、2220〜2740cm-1の範囲内の積分ピーク強度に対する1620〜1840cm-1の範囲内の積分ピーク強度の比を計算することによって決定される。
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、硬化速度の向上を特徴とするパーフルオロエラストマーを含む。この組成物は、3種類の成分、すなわち(a)少なくともニトリル基を持つ硬化部位モノマーからなる共重合ユニットを持つパーフルオロエラストマー、(b)パーフルオロエラストマーの硬化剤として作用する化合物、および(c)有機または無機のアンモニウム塩を含む。
パーフルオロエラストマーは、少なくとも2種類の主パーフルオロ化モノマーからなる共重合ユニットを有する。一般に、主共重合体の一つはパーフルオロオレフィンであり、もう一方はパーフルオロビニルエーテルである。代表的な過弗素化オレフィンはテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンを含む。適当な過弗素化ビニルエーテルは、以下の式を有するものである。
CF2=CFO(Rf'O)n(Rf''O)mRf (I)
式中、Rf'およびRf''は2〜6個の炭素元素からなる異なる直鎖状または分岐状パーフルオロアルキレン基、mおよびnは単独で0〜10、さらにRfは1〜6個の炭素原子からなるパーフルオロアルキル基である。
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルの好ましい種類として、
CF2=CFO(CF2CFXO)nRf (II)
式中、XはFまたはCF3、nは0〜5、さらにRfは1〜6個の炭素原子からなるパーフルオロアルキル基である。
最も好ましいパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルは、nが0または1で、Rfが1〜3個の炭素原子を含むものである。そのような過弗素化エーテルの例としては、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが挙げられる。他の有用なモノマーとしては以下の式で表される化合物が挙げられる。
CF2=CFO[(CF2)mCF2CFZO]nRf (III)
式中、Rfは1〜6個の炭素原子を持つパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、およびZ=FまたはCF3である。
この種の中で好ましいものは、RfがC37、m=0、およびn=1である。その他のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーとしては、以下の式の化合物が挙げられる。
CF2=CFO[(CF2CFCF3O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2)p]CxF2x+1 (IV)
式中、mおよびn=1〜10、p=0〜3、さらにx=1〜5である。
この種類の好ましい仲間は、n=0〜1、m=0〜1、およびx=1の化合物が含まれる。
パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルの例としては以下の式の化合物が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1 (V)
式中、n=1〜5、m=1〜3、さらに好ましくはn=1である。
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとパーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルとの混合物もまた使用することができよう。
好ましい共重合体は、主モノマーユニットとしてテトラフルオロエチレンと少なくとも一種類のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとから構成される。そのような共重合体では、共重合過弗素化エーテルユニットはポリマー内の全モノマーユニットのうち約15〜50モルパーセントを構成する。
本発明の組成物のパーフルオロエラストマー成分は、ニトリル含有硬化部位モノマーの共重合体ユニットを持つクラスのパーフルオロエラストマーであり、一般に量は0.1〜5モルパーセントである。この範囲は、好ましくは0.4〜1.5モルパーセントである。2種類以上の硬化部位モノマーが存在したとしても、最も共通の一つの硬化部位モノマーが使用され、それには少なくとも1種類のニトリル置換基を含有する。適当な硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有弗素化オレフィンおよびニトリル含有弗素化ビニルエーテルが挙げられる。有用なシアノ置換硬化部位モノマーとしては以下の式で表されるものが含まれる。すなわち、
CF2=CF-O(CF2)n-CN (VI)
式中、n=2〜12、好ましくは2〜6;
CF2=CF-O[CF2-CF(CF3)O]n-CF2-CF(CF3)CN (VII)
式中、n=0〜4、好ましくは0〜2;および
CF2=CF-[OCF2CF(CF3)]x-O-(CF2)n-CN (VIII)
式中、x=1〜2、およびn=1〜4である。式(VIII)のものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を持つ過弗素化ポリマーである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (IX)
すなわち、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
パーフルオロエラストマー主鎖に付加的に共重合することが可能な他の硬化部位モノマーとしては、式R1CH=CR23で表されるオレフィンが挙げられ、該式中、R1およびR2はそれぞれが独立して水素および弗素から選択され、R3は独立して水素、弗素、アルキル、およびパーフルオロアルキルから選択される。パーフルオロアルキルは、最大で約12個の炭素原子を含むものであってもよい。しかし、最大で4個の炭素原子からなるパーフルオロアルキル基が好ましい。さらに、硬化部位モノマーは好ましくは3個以上の水素原子を含む。そのようなオレフィンの例としては、エチレン、ビニリデンフルオリド、ビニルフルオリド、トリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、および2−ヒドロペンタフルオロプロペンが挙げられる。
特に好ましいパーフルオロエラストマーは53.0〜79.9モルパーセントのテトラフルオロエチレン、20.0〜46.9モルパーセントのパーフルオロ(メチルビニル)エーテル、および0.4〜1.5モルパーセントのニトリル含有硬化部位モノマーを含む。
本発明の好ましい実施形態例では、パーフルオロエラストマー成分はイオン化(ionized)またはイオン性(ionizable)ポリマー末端基を含まないもの、もしくはカルボキシル末端基、カルボキシレート末端基、またはそれらの混合物から選択されるイオン化またはイオン性ポリマー末端基を含むことができる。
例えば、パーフルオロエラストマーの好ましいクラスは、(a)イオン化またはイオン性末端基、(b)臭素含有末端基、および(c)ヨウ素含有末端基を実質的に含まないパーフルオロエラストマー組成物より構成されている。パーフルオロエラストマー組成物のこの種類に関して、イオン化またはイオン性末端基を実質的に含まないということをは、5%未満のポリマー末端基がイオン化またはイオン性となっていることを意味する。イオン化またはイオン性末端基の例としては、カルボン酸末端基、カルボキシレート末端基、スルホン酸末端基、およびスルホン酸エステル末端基が挙げられる。臭素含有末端基およびヨウ素含有末端基を実質的に含まないということは、0.01重量パーセント未満のヨウ素または臭素がポリマー末端基に含まれることを意味する。この種のパーフルオロエラストマーは、米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号DW−005として、かつ「Perfluoroelastomer Composition Having Improved Processability」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに開示されている。
パーフルオロエラストマー成分の第2の好ましい種類は、ある種のイオン化またはイオン性カルボニル含有末端基が存在する。イオン化またはイオン性カルボニル含有末端基とは、各々がカルボキシレート末端基またはカルボン酸末端基を含むことを意味する。好ましくは、80%未満の末端基がイオン化またはイオン性含有末端基によって表されることを意味する。なぜなら、そのような末端基の濃度がよりいっそう高くなると、ポリマーの加工性という点では害となるからである。さらに、そのような化合物は、カルボニル含有イオン化またはイオン性末端基以外の別の種のイオン化またはイオン性末端基を実質的に含まないことを特徴とする。別の種のイオン化またはイオン性末端基を実質的に含まないことは、そのような別の種のイオン化またはイオン性末端基のポリマーが0.75ミリモル以下であることを意味する。そのような別の種のイオン化またはイオン性末端基としては、スルホン酸およびスルホネート末端基が挙げられる。もしそれらの非カルボニルまたは非カルボキシレート基がかなりの量存在しているならば、ポリマーの粘度は上昇し、ポリマーの加工が困難となる。この第2の種類のパーフルオロエラストマー組成物は、イオン化またはイオン性カルボニル含有官能基を持つパーフルオロエラストマーの部分的脱カルボキシル化によって調製することができよう。この種のパーフルオロエラストマー組成物もまたケース番号DW−005として1996年11月25日に出願された同時係属中の米国特許出願(一連番号未知)に開示されている。
第3の種類のパーフルオロエラストマーは、米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号AD−6425、かつ「Fast-curing Perfluoroelastomer Composition」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに開示されている。この種のパーフルオロエラストマーは、弗素化カルボニル含有コモノマーによって導入されたカルボニル含有末端基またはペンダントカルボニル含有官能基として存在する複数のカルボニル含有官能基を持つ。カルボニル含有末端基とは、カルボン酸末端基、カルボキシレート末端基、さらにカルボキシアミド末端基を意味する。カルボニル含有コモノマーとは、共重合可能な二重結合と、少なくとも一つのペンダントカルボン酸基(その塩も含む)、ペンダントカルボン酸エステル基、またはペンダントカルボキシアミド基とを持つ。そのようなコモノマーは、式(X)および(XI)によって表される化合物によって表示される。
CF2=CFO(CF2)nX (X)
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]n(CF2)xX (XI)
式中、n=1〜4、
x=2〜5、および
X=CO2H、CO2 -、CONH2、またはCO2CH3
カルボキシルまたはカルボキシレート末端基を持つパーフルオロエラストマーは、パーフルオロオレフィンとパーフルオロビニルエーテルとの混合物を遊離基発生阻害剤がバルク、不活性溶媒に含まれる溶液、水溶性懸濁掖、あるいは水溶性エマルジョンのいずれかとして存在するものとで重合させることで合成することができる。パーフルオロエラストマー重合方法は、おおむねLogothetis, Prog. Polymn. Sci, Vol. 14, 252-296(1989)や米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号AD−6425、かつ「Fast-curing Perfluoroelastomer Composition」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに開示されている。他のもののなかで、Logothetisの論文では、過硫酸塩、例えばアンモニウムあるいはカリウム過硫酸塩による還元剤不在下の誘導が含まれる。還元剤不在下、過硫酸塩を用いて熱的に誘導されたラジカル重合によって、イオン化することでカルボキシレート基を形成するカルボン酸末端基が生産される。還元剤としては、そのような化合物を硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。
米国特許出願一連番号が未知ではあるが、ケース番号AD−6425、かつ「Fast-curing Perfluoroelastomer Composition」という発明の名称でもって1996年11月25日に出願された同時係属中のものに記載されているように、優れた硬化特性を持つカルボキシレート化ポリマーは、パーフルオロオレフィンとパーフルオロビニルエステルとを共重合することによって得られるもので、還元剤なしで、連続的に十分撹拌した反応器内の水溶性エマルジョン中、残留時間2〜4時間、温度75℃〜90℃、さらに圧力2〜8MPaで、過硫酸塩アンモニウムによる共重合の開始する。好ましくは、残留時間は3.0〜3.7時間、温度は80℃〜85℃、さらに圧力は6.0〜8.0MPaである。もし、過硫酸塩アンモニウムを基礎として還元剤の濃度が5モルパーセントを上回るならば、スルホネート末端基の濃度は加工性に対して悪影響を及ぼす濃度に達する。さらに、開示した組成物の硬化速度を速くするために、重合反応混合物のpHを一般に3.5〜7.0、好ましくは4.5〜6.5とする。テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテルモノマーが好ましく、コンプレッサによって供給される。もし硬化部位モノマーを使用するならば、液体計量ポンプによって供給することが好ましい。この重合方法によってカルボキシル含有末端基、カルボキシレート含有末端基、カルボキシアミド末端基、またはそれらの混合物をかなりの比率で持つパーフルオロエラストマー共重合体組成物が生成される。ニトリル含有パーフルオロエラストマーに存在するカルボキシル、カルボキシレート、およびカルボキシアミド基の数は、カルボニル含有量を説明し、さらに重合速度に対する発生したラジカルの比率に関係している。特に、重合速度に対し、熱分解速度論から計算したラジカル発生速度の比率は、ポリマーのカルボニル含量の目安を提供する。過硫酸塩に対する熱分解速度論は、F. A. Bovey, et al., ″Emulsion Polymerization″, Interscience Publishers, New York 1995において互いに関連づけられている。85℃で、一次分解速度係数は0.011/分である。85℃、かつ残留時間218分の連続撹拌タンク反応器では、供給された過硫酸塩の約70%のが分解され、硫酸ラジカルのラジカルフラックスRi(mmol/時間)が供給された過硫酸塩(mmol/時間)の1.4倍に等しい。実際のイニシエータ効率はこの計算で仮定されたものよりも著しく低く、ポリマーの状態や関与するモノマーの種類に応ずる。重合速度Rp(kg/時間)は容易に測定されるので、比Ri/Rpは観察されたカルボキシレート濃度との相関について計算することができる。一般に本発明の目的のために、比Ri/Rpは約10〜50mmol/kg、好ましくは20〜40mmol/kgの範囲内とすべきである。
カルボニル含有官能基もまた、弗素化カルボキシル含有共重合体と、主パーフルオロオレフィンおよびパーフルオロビニルエーテルコモノマーとの共重合によって導入してもよい。硬化部位モノマーもまた同様にポリマーに共重合させてもよい。そのような共重合は実質的に上記したようにして行ってもよい。もし単独のイニシエータが過硫酸塩であるならば、カルボニル含有末端基もまた結果として生じるであろう。もし還元剤が付加的に存在するならば、結果として生ずる共重合体は硫酸塩またはスルホネート末端基を含むであろうし、またカルボキシルまたはカルボキシレート基はペンダント官能価としてのみ存在するであろう。
現存の反応器において、ポリマーエマルジョンは、硫酸マグネシウム等の多価金属塩の水溶性溶液と凝固する。つぎに、凝固ポリマーを脱イオン水で洗浄し、循環空気オーブン内で70〜100℃で乾燥する。
イオン化またはイオン性のカルボニル含有末端基を実質的に含まないパーフルオロエラストマーを生成するために、すでに述べたようなカルボキシル化パーフルオロエラストマーの脱カルボキシル化は、単離およびオーブン乾燥された固形のカルボキシル化パーフルオロエラストマーを熱処理することによってうまい具合に行える。ポリマーを完全に乾燥させる必要はない。すなわち、脱カルボキシル化プロセスに先立ってポリマーを完全に、あるいは部分的に乾燥させてもよい。脱カルボキシル化をもたらすために、パーフルオロポリマーを十分に高い温度に、かつ十分に長い時間にわたって加熱することで、末端基のすべてを脱カルボキシル化して非イオン性置換基、例えばジフルオロメチル基、トリフルオロビニル基、またはカルボキシアミド基に変換する。このことによってポリマーの粘度が低下する。部分的に脱カルボキシル化したパーフルオロエラストマーもまた有用な組成物であり、カルボキシル化パーフルオロエラストマーをより短い時間加熱処理することで合成することができよう。一般に、数分間にわたる250℃〜325℃は、ポリマーの部分的脱カルボキシル化にとっては十分である。約250℃〜325℃の温度でポリマーのクラム(crumb)またはシートを循環空気オーブン処理することは、カルボニル含有官能基の分画または実質的に全てを除去する効力がある。好ましくは、ポリマーを30分間にわたり280℃〜320℃の温度で加熱する。もし温度が250℃を下回るならば、脱カルボキシル化はたいへん遅くなる。もし温度が325℃を上回るならば、ポリマーの硬化部位モノマーの量は加熱処理によって減少すると思われる。もっとも低い温度で、所要加熱時間はもっとも高い温度の場合よりもかなく長く、通常の加熱時間は約5分から約24時間である。脱カルボキシル化もまた加熱された押出機、圧縮成型用金型、または任意の他の従来の加熱エラストマー処理装置で実施することができる。当業者は、ポリマーの内部温度を増加させる別の手段(例えばマイクロウェーブ照射に曝すこと)を使用することが可能であることを容易に理解することができよう。
本発明の硬化性組成物の第2の成分は、パーフルオロエラストマーの架橋をプロモートする硬化剤である。
有機錫化合物を主成分とする硬化系は一般にニトリル含有共重合ユニットを持つパーフルオロエラストマーを硬化させることに利用される。適当な有機錫化合物としては、アリル−、プロパルギル−、トリフェニル−、およびアレニル錫硬化剤が挙げられる。テトラアルキル錫化合物またはテトラアリル錫化合物は、ニトリル置換硬化部位とともに使用する上で好ましい硬化剤である。使用する硬化剤の量は、パーフルオロエラストマーの反応部位の種類および濃度と同様に最終産物で求められる架橋の度合に必然的に依存する。一般に約0.5〜10phrの硬化剤を使用することができ、さらに1〜4phrがほとんどの目的にとって申し分のないものである。ニトリル基が三量体化することで、有機錫化合物等の硬化剤の存在下、トリアジン環が形成され、それによってパーフルオロエラストマーが架橋される。架橋はたとえ275℃以上の温度でも熱的に安定である。
パーフルオロエラストマー含有ニトリルが有硬化部位に有用な好ましい硬化系は、以下の式のビス(アミノフェノール)、すなわち
Figure 0003699130
および
Figure 0003699130
と、以下の式のテトラアミン
Figure 0003699130
とを利用する。式中、AはSO2、O、CO、炭素原子が1〜6個のアルキレン炭素原子が1〜10個のパーフルオロアルキレン、または2つの芳香族環を結ぶ炭素−炭素結合である。上記式IおよびIIのアミノおよびヒドロキシル基は、基Aに対してメタおよびパラ位に交換可能なかたちで置かれている。好ましくは、硬化剤は、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−エチルイデン]ビス(2−アミノフェノール); 4,4’−スルホニルビス(2−アミノフェノール); 3,3’−ジアミノベンジジン;および3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノンからなる群から選択される化合物である。それらのうちの最初のものがもっとも好ましく、ビス(アミノフェノール)AFと呼ばれる。硬化剤は、Angeloの米国特許第3,332,907号に開示されたようにして合成することもできる。ビス(アミノフェノール)AFは、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルイデン]ビスフェノール(すなわち、ビスフェノールAF)を、好ましくは硝酸カリウムおよびトリフルオロ酢酸でニトロ化し、続いて触媒性水素添加、好ましくは溶媒としてエタノールを用い、触媒として炭素に対する触媒量のパラジウムを用いることで、合成することができる。硬化剤の濃度は、加硫ゴムの所望の特性を最適化するために選択されるべきである。一般に、ポリマーに存在する全ての硬化部位との反応に必要とされる量よりもわずかながら過剰の硬化剤が必要である。好ましい範囲は、1.0〜2.0部である。
過酸化物(ペルオキシド)もまた硬化剤として使用してもよい。有用な過酸化水素は硬化温度でフリーラジカルを生ずるものである。ジアルキルペルオキシドまたは50℃を上回る温度で分解するビス(ジアルキルペルオキシド)が特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を持つジ−tert−ブチルペルオキシドを用いることが好ましい。この種の最も有用なペルオキシドは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン−3と2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである。他のペルオキシドもまた、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネートのような化合物から選択することができる。一般に、パーフルオロエラストマー100部あたり約1〜3部のペルオキシドが使われる。硬化系の一部として組成物と一般に配合される他の材料は、有用な硬化を提供するためにペルオキシドと協動することが可能な多価不飽和化合物からなる助剤(coagent)である。そのような助剤は、パーフルオロエラストマー100部あたり0.1ないし10部、好ましくはパーフルオロエラストマー100部あたり2〜5部に等しい量で添加することがでる。助剤は1つ以上の以下の化合物であってもよい。すなわち、トリアリルシアヌレート、トリアルリイソシアヌレート、トリ(メチルアリルイソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスファイト、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホラミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、およびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートである。特に有用なものは、トリアリルイソシアヌレートである。
存在する硬化部位モノマーに応じて、二重硬化系を用いることも可能である。例えば、ニトリル含有硬化部位モノマーからなる共重合ユニットを持つパーフルオロエラストマーは、有機錫化合物硬化剤および助剤と組み合わせたペルオキシドの混合物からなる硬化剤を用いて硬化することができる。一般に、0.3〜5部のペルオキシド、0.3〜5部の助剤、および0.1〜10部の有機錫化合物硬化剤を利用する。
本発明の組成物の第3の成分は、120℃ないし250℃で分解する有機または無機のアンモニウム塩である硬化促進剤である。そのような促進剤は、アンモニウムポリフルオロカルボキシレート、アンモニウムポリフルオロスルホネート、アンモニウムポリフルオロアルキル基含有ホスフェート、ホスホネート、またはスルホネート、アンモニウムカルボキシレートまたはスルホネート、アンモニウムホスホネートまたはホスホネート、さらに無機酸のアンモニウム塩である。アンモニウムポリフルオロカルボキシレートが好ましい。特に好ましいものは、アンモニウムパーフルオロオクタノエート、アンモニウムパーフルオロアセテート、アンモニウムパーフルオロブチレート、アンモニウムパーフルオロドデカノエート、およびアンモニウムパーフルオロヘキサデカノエートである。無機アンモニウム塩、特にアンモニウムチオシアネート、アンモニウムスルファメート、アンモニウム二水素ホスフェート、およびアンモニウムスルフェートもまた好ましい。
アンモニウム促進剤は一般に100部のパーフルオロエラストマーあたり0.05〜5.0部の量で使われる。好ましくは、0.3〜2.0の量で存在する。
上記した好ましい脱カルボキシル化または部分的脱カルボキシル化パーフルオロエラストマーは、上記した種類のアンモニウム塩が硬化性組成物に存在するにもかかわらず、従来の有機錫硬化レシピにもとづいて合成した場合、容認できないほど硬化速度が低い。例えば、実質的にイオン化またはイオン性末端基がないパーフルオロエラストマーの硬化速度は、アンモニウム塩促進剤の使用によって10倍以上増加することができる。アンモニウム塩促進剤および有機錫硬化剤によって化合する場合、組成物は低い粘度と速い硬化応答の所望の組み合わせを示す。また、硬化組成物は、パーフルオロエラストマーに典型的な優れた耐高温性と耐薬品性を持つ。
本発明の硬化組成物はパーフルオロエラストマー、硬化剤、およびアンモニウム塩を従来のゴム処理装置で混合することによって合成することが可能である。そのような装置としてはラバーミル、密閉式ミキサー、例えばバンバリー(Banbury)ミキサー、および混合押出機が挙げられる。
添加剤、例えばカーボンブラック、安定化剤、可塑剤、滑剤、充填剤、およびパーフルオロエラストマー配合に一般に利用される加工助剤を本発明の組成物に取り込むができ、意図する実用条件に対して適当な安定性が与えられる。特に、パーフルオロポリエーテルの取り込みによって低温特性を強化することができる。
カーボンブラック充填剤は、組成物の弾性率、引張強さ、伸び率、強度、耐摩耗性、伝導性、および加工性を安定にする手段としてエラストマーに使用される。パーフルオロエラストマー組成物では、低粒度、高表面積カーボンブラックが充填剤として選択される。一般に選択される等級は、典型的な平均粒度が約14nmで、かつASTM D−1765にもとづいてグループNo.1のN110と示された高度に強化されたブラックであるSAFカーボンブラックである。本発明の組成物で有用な特定のカーボンブラックは、WO95/22575に記載されたものである。そのような特定のカーボンブラックは、ASTM D−3849によって決定されるように少なくとも約100nmから約500nmの平均粒度を持つ。例としてN−991、N−990、N−908、およびN−907と命名されたMTブラック(中程度のサーマルブラック)、大きい粒度のファーネスブラックが挙げられる。MTブラックが好ましい。使用する場合、1〜70phrの粒度の大きいブラックが一般に十分であり、この量は硬化時間を遅らせることはない。
さらに、フルオロポリマー充填剤もまた、組成物に存在してもよい。一般にパーフルオロエラストマー100部あたり1ないし50部のフルオロポリマー充填剤を使用し、好ましくはパーフルオロエラストマー100部あたりそのような充填剤が少なくとも約5部存在する。フルオロポリマー充填剤は最終的に分けられ、容易に分散された可塑性フルオロポリマーであり、該ポリマーは製造の際に利用される最も高い温度で固体であり、パーフルオロポリマー組成物の硬化したものである。固体であることは、もし部分的に結晶質であるならば、フルオロプラスチックは結晶質溶融温度がパーフルオロエラストマーの加工温度よりも高いことを意味する。そのような最終的に分けられ、容易に分散するフルオロプラスチックは一般にミクロパウダーまたはフルオロ添加剤と呼ばれる。ミクロパウダーは通常部分的に結晶質のポリマーである。
本発明の組成物で使用されるミクロパウダーは、限定されるものではないが、テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマーとして知られているポリマーからなる群を主成分とするものである。この群としては、TFE(PTFE)のホモポリマーや、樹脂が非溶融加工性(non-melt-fabricable)(修飾PTFE)である少なくとも一つの共重合性修飾モノマー小量とTFEとの共重合体が挙げられる。修飾モノマーは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、パーフルオロブチルエチレン、クロロトリフルオロエチレン、またはポリマー分子に側基を導入する別のモノマーである。ポリマーに含まれるそのような共重合改質剤の濃度は、一般に1モルパーセント未満である。本発明で使用することが可能なPTFEおよび修飾PTFE樹脂としては、懸濁重合およびエマルジョン重合から誘導されるものが含まれる。
ミクロパウダーの生産で使用される高分子量PTFEは一般にイオン化照射に曝すことで分子量が減少する。このことは、もしPTFEがエマルジョン重合プロセスによって生産される場合、グラインディングを容易にし、脆砕性を高める。また、例えばKuhlsらの米国特許第3,956,000号に開示されているようなエマルジョン重合プロセスにおける分子量の適当な制御によってTFEを直接PTFEミクロパウダーに重合することが可能である。Morganの米国特許第4,879,362号は、エマルジョン(分散)重合プロセスによって作られた非溶融加工性、非フィブリル化(non-fibrillating)修飾PTFEが開示されている。このポリマーは、フィブリル化のかわりに、エラストマー性組成物の剪断配合に際して、プレートリットを形成する。
TFEポリマーもまた、1つ以上のモノマーからなる共重合ユニットを十分な濃度でもって有する溶融加工性共重合体を含み、PTFEの融点よりも著しく融点を低くする。そのような共重合体は一般に溶融粘度が0.5〜60 X 103Pa.sであるが、この範囲外の粘度も知られている。パーフルオロオレフィンおよびパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが好ましいコポリマーである。ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが最も好ましい。FEP(TFE/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)やPFA[TFE/パーフルオロ(プロピルビニル)エーテルコポリマー]を使用することができ、パーフルオロエラストマー加工温度に対して溶融温度の抑制を満足させる。このような共重合体は、もし粒度が許容範囲ならば、あるいはより大きな寸法から適当な粒度に研磨することができるならば、重合媒体から単離される粉体の形状で利用することができる。
本発明の硬化性組成物は、ガスケット、管材料、およびシールの製造に有用である。そのような製品は、加圧下で種々の添加剤とともに硬化性組成物の配合物を成形し、成型品を硬化させ、さらにそれを後硬化サイクルに供することで作られる。硬化組成物は、優れた熱安定性と耐薬品性とを有する。それらは、半導体装置製造の際にシールおよびガスケット等の用途で有用であり、高温の自動車で使用するシールに有用である。
本発明をいくつかの実施形態例によって説明するが、すべての部は特記しない限り重量部である。
実施例
試験方法
硬化特性
硬化特性は、ASATM D 2084に一致する条件下でMonsato揺動ディスク型レオメータ(ODR)を用いて測定した。以下の硬化パロメータが記録された。
max:最大トルクレベル、単位N・m
min:最小トルクレベル、単位N・m
max−Mmin:最大トルクと最小トルクとの差、単位N・m
s2:Mminよりも2.26Nm上昇させる時間(分)
c50:最大トルクの50%までの時間(分)
c70:最大トルクの70%までの時間(分)
c90:最大トルクの90%までの時間(分)
ストレス/ひずみ特性はASTM D−412にもとづいて測定した。以下のパラメータを記録した。
100%伸び率でのM100弾性率、単位MPa
B破断点引張り強度、単位MPa
B破断点伸び率、単位%
O−リング試料の圧縮セットはASTM D−395にもとづいて決定した。
実施例1
2種類の溶融配合物を、テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、およびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8−CNVE)からなる共重合ユニットを持つパーフルオロエラストマーと、Teflon(登録商標)PFAフルオロポリマー樹脂との混合物から合成した。配合物1は100gのパーフルオロエラストマーと5gのTeflon(登録商標)PFAとを含む。配合物2は100gのパーフルオロエラストマーと10gのTeflon(登録商標)PFAとを含む。パーフルオロエラストマーは、過硫酸アンモニウムのみからなる遊離ラジカルイニシエータの存在下、かつ還元剤である亜硫酸ナトリウムがない状態で、米国特許第4,281,092号に開示された一般的な方法にもとづいて、エマルジョン共重合によって合成され、PMVEの共重合ユニットを40.3重量%と8−CNVEの共重合ユニットを3.2重量%とを含んだ。結果として生ずる配合物は、高剪断二本ロール機で表1に示すような硬化剤および他の成分によって合成した。ODR試験試料を合成試料から調製し、硬化応答を決定した。パーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩をふくんだ組成物、すなわち本発明の組成物である試料1は、成型品に成形できる唯一の組成物であった。組成物から形成されたO−リングは、190℃、30分間にわたってプレス加硫を行い、温度を305℃までゆっくりと上昇させ、成形品を26時間にわたって305℃に保つようにプログラムされた温度サイクルを用いて窒素によってガスシールされたオーブン内で後硬化した。物理的特性を表1に示す。O−リング試料は比較例Aおよび比較例B組成物から調製することができなかった。
Figure 0003699130
実施例2
重量比で約55.4/41.5/3.1のテトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、およびパーフルオロ−(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)からなる共重合ユニットを含むパーフルオロエラストマー(パーフルオロエラストマー2)を、米国特許第4,281,092号に記載された一般的方法にもとづいて、過硫酸アンモニウムイニシエータの存在下、かつ還元剤の不在下で、エマルジョン重合でもって調製した。Teflon(登録商標)PFA340フルオロポリマー樹脂を含むポリマーの溶融配合物を、高剪断混合スクリューを用いるWerner&Pfleiderer2軸28mm押出機で調製した。混合領域の温度は325℃で、ダイでの温度は300℃であった。パーフルオロエラストマーからなる2,000gの試料を粗砕し、600gのTeflon(登録商標)PFA340フルオロポリマー樹脂と混合し、12ポンド/時間(5.4kg/時間)の速度でもって押出機に供給した。軸の回転速度は100rpmであり、ダイでの圧力は400psi(2.8Mpa)であった。押出機を氷水槽に通して冷やし、エアナイフ上を通過させることで押出機から残留水を取り除き、乾燥ストランドをペレット化し、それによって部分的に脱カルボキシル化したパーフルオロエラストマー配合物(配合物2と命名)が生成された。ペレット化パーフルオロエラストマーを表IIに示すような成分と高剪断2本ロール機上で化合した。試料2AのODR硬化応答は、アンモニウム塩の添加でもって強化された。また、50部の非脱カルボキシレート化パーフルオロエラストマー開始材料および65部の配合物2とを含む試料2Bは、良好な硬化応答を示した。それらの組成物から形成されたO−リングを190℃でプレス加硫し、温度を305℃までゆっくりと上昇させ、成形品を42時間にわたって305℃に保つようにプログラムされた温度サイクルを用いて窒素によってガスシールされたオーブン内で後硬化した。物理的特性を表IIに示す。
Figure 0003699130
実施例3
ヨウ素化パーフルオロエラストマー(パーフルオロエラストマー3)を米国特許第4,972,038号および第4,983,697号に開示された方法にもとづいて調製した。ポリマーは、41.9重量%のPMVE、2.0重量%の8−CNVE、さらに残りがTFEからなる共重合ユニットを含む。ポリマーは、0.07重量%結合ヨウ素、ICF2CF(CF3)−O−CF2CF2CNの存在下での共重合の結果としてある。パーフルオロエラストマー3を表IIIに示してある成分と混合する。表IIIに示すODRデータは、パーフルオロエラストマー3のテトラフェニル錫硬化の際のアンモニウム塩の速度強化硬化を説明するためのものである。試料3A(表IIIを見よ)に対応するパーフルオロエラストマーの試料を190℃、30分間にわたってプレス加硫することで、O−リングに成形した。温度を305℃までゆっくりと上昇させ、成形品を26時間にわたって305℃に保つようにプログラムされた温度サイクルを用いて窒素によってガスシールされたオーブン内で後硬化した。組成物3Aのストレス/ひずみ比較セット特性もまた表IIIに示す。他の試料は、ストレス/ひずみまたは圧縮セット特性について試験しなかった。
Figure 0003699130
実施例4
パーフルオロエラストマー(パーフルオロエラストマー4を、C613SO2Na/過硫酸アンモニウムからなるレドックスイニシエータ系を用いて85℃で連続エマルジョン重合によって調製した。このイニシエーション系は、米国特許第5,285,002号に記載されている。パーフルオロエラストマーは、41.1重量%のPMVE、3.0重量%の8−CNVE、さらに残りがTFEからなる共重合ユニットを含む。ポリマーは、ムーニー粘度(ML−10@150℃)が18で、固有の粘度が0.36%である。パーフルオロエラストマー4を表IVに示した成分と混合した。パーフルオロエラストマー4のテトラフェニル錫硬化の際のアンモニウム塩のアクセル硬化は、表IVに示すODRデータによって説明される。アンモニウム塩を含まないO−リング試験量を比較試料E(表IV参照)から成形するのは不可能である。試料4A(表IV参照)に対応するパーフルオロエラストマー組成物からなる試料を、190℃、30分間にわたってプレス加硫され、温度を305℃までゆっくりと上昇させ、成形品を26時間にわたって305℃に保つようにプログラムされた温度サイクルを用いて窒素によってガスシールされたオーブン内で後硬化したO−リング試料に成形した。試料4Aのストレス/ひずみおよび圧縮セット特性を表1Vに示す。
Figure 0003699130
実施例5
2つのパーフルオロエラストマー(パーフルオロエラストマー5Aおよびパーフルオロエラストマー5B)は、過硫酸アンモニウムイニシエータを用いて85℃で連続エマルジョン重合によって調製した。
テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、およびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3、6−ジオキサ−1−オクテン)(8−CNVE)からなる共重合ユニットを含むパーフルオロエラストマー5Aは以下のようにして調製した。20リットルの脱イオン水、93gの過硫酸アンモニウム、553gの次アンモニウム水素ホスフェートヘプタヒドレート、および182gのアンモニウムパーフルオロオクタノエート(FLuorad(登録商標)FC−143弗素化界面活性剤)を5L機械的撹拌、水外被、ステンレス製オートクレーブで688ml/hの速度でポンピングされる。同時に、20リットルの脱イオン水と177gのアンモニウムパーフルオロオクタノエートとからなる他の水溶性溶液もまた688ml/hの速度でもてポンピングされる。24.3g/hのパーフルオロ−(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)からなる第3の流れを同時に計量しながら供給した。ダイヤフラム圧縮機によって、テトラフルオロエチレン(363g/h)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(412g/h)モノマーとのガス混合物を一定の速度で供給した。反応全体を通して反応器の温度を85℃、圧力を6.2MPa(900psi)に保ち、PHを4.9に制御した。ポリマーラテックスを、降下バルブによって連続的に取り除き、未反応モノマーをガス抜きした。32時間操作後のラテックスを回収し、ポリマーを以下のようにして単離した。すなわち、5リットルの上記ラテックスを、225gの硫酸マグネシウムヘプタヒドレートおよび40リットルの脱イオン水からなり、あらかじめ加熱(90℃〜95℃)された溶液に攪拌しながら添加した。結果として生ずる凝固した小片(crumb)ポリマーを濾過し、水で繰り返して洗浄し、70℃、48時間にわたって空気オーブンで乾燥した。乾燥ポリマーは重量が2280gあり、また以下の組成を有した。すなわち、42.3重量%パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、2.4重量%パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、残部としてテトラフルオロエチレンである。
パーフルオロエラストマー5Bを、41.5重量%PMVEおよび3.1重量%8−CNVE、さらにTFEを残部として含むポリマーを与えるために、8−CNVE濃度を30.3g/時間に増加した点以外は、同様に合成した。パーフルオロエラストマーを表Vに示す成分と混合した。パーフルオロエラストマー5Aおよび5Bのジアミノビスフェノール硬化に対するアンモニウム塩の促進効果は、表Vに示すODRデータによって説明される。パーフルオロエラストマー組成物の試料を、190℃、30分間にわたってプレス加硫し、温度を305℃、42分間で後硬化したO−リング試料に成形した。ストレス/ひずみ比較セット特性は表Vに示す。
Figure 0003699130

Claims (8)

  1. 硬化組成物であって、
    (A)(1)パーフルオロオレフィン、(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテル、さらに(3)少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化オレフィン、少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化ビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのニトリル基を持つ硬化部位モノマーの共重合ユニットを含むパーフルオロエラストマーと、
    (B)アンモニウム塩以外の硬化剤と、
    (C)120℃から225℃で分解する有機または無機のアンモニウム塩の促進剤と、
    を含むことを特徴とする硬化組成物。
  2. 前記有機または無機のアンモニウム塩は、アンモニウムポリフルオロカルボキシレート;アンモニウムポリフルオロスルホネート;アンモニウムポリフルオロアルキル基含有ホスフェート、アンモニウムポリフルオロアルキルホスホネート、アンモニウムスルホネート;アンモニウムカルボキシレート、アンモニウムスルホネート;アンモニウムホスフェート;アンモニウムホスホネート;および無機酸のアンモニウム塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 前記有機アンモニウム塩は、アンモニウムパーフルオロオクタノエート、アンモニウムパーフルオロアセテート、アンモニウムパーフルオロブチレート、アンモニウムパーフルオロドデカノエート、およびアンモニウムパーフルオロヘキサデカノエートからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
  4. 前記有機アンモニウム塩はアンモニウムパーフルオロオクタノエートであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
  5. 前記無機アンモニウム塩は、アンモニウムチオシアネート、アンモニウムスルファメート、アンモニウム二水素ホスフェート、およびアンモニウムチオスルフェートからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
  6. 前記硬化剤は、
    Figure 0003699130
    および
    Figure 0003699130
    (式中、AはSO2、O、CO、炭素原子が1〜6個のアルキレン、炭素原子が1〜10個のパーフルオロアルキレン、または2つの芳香族環を連結する炭素−炭素結合である)
    の化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記硬化剤は、有機錫化合物、ジアルキルペルオキシド、およびビス(ジアルキルペルオキシド)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の組成物。
  8. 硬化組成物であって、
    (A)カルボキシル基、カルボキシレート基、およびカルボキシアミド基からなる群から選択される複数のカルボニル含有官能基を持つパーフルオロエラストマーであり、前記パーフルオロエラストマーは、(1)パーフルオロオレフィン、(2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるいずれかのパーフルオロビニルエーテル、(3)カルボキシル含有およびカルボキシレート含有コモノマーからなる群から選択される弗素化コモノマー、および(4)少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化オレフィン、少なくとも一つのニトリル基を持つ弗素化ビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのニトリル基を持つ硬化部位モノマーからなる共重合ユニットを含み、前記カルボニル含有官能基の積分吸光度比は0.1を上回り、該積分吸光度比は、パーフルオロエラストマーのフーリエ変換赤外線スペクトラムで測定されるように、2220〜2740cm-1の範囲内の積分ピーク強度に対する1620〜1840cm-1の範囲内の積分ピーク強度の比を計算することによって決定される、パーフルオロエラストマーと、
    (B)アンモニウム塩以外の硬化剤と、
    (C)120℃から225℃で分解する有機または無機のアンモニウム塩の促進剤と、
    を含むことを特徴とする硬化組成物。
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