JP3698714B1 - 改良体中の重金属類の溶出を低減する方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明方法は、セメント系の地盤改良材に、重金属類と結合して難溶性の化合物を生成し地盤の改良体中に沈殿・固定する作用を強化するためのアルカリ性を呈する硬化剤を付加混合する液状硬化剤の混合工程と、この液状硬化剤の付加混合されたセメント系改良材を地盤に注入しつつ撹拌翼で撹拌して改良体を構築する混合処理工程とからなる。液状硬化剤は、70重量%以上の溶液にナトリウム塩が主成分として含まれてアルカリ性を呈し、塩素イオンの含有率が1〜10重量%であり、ナトリウムイオンの含有率が1〜10重量%の液状の液状硬化剤である。
【選択図】 図1
Description
図2に示すように、前記セメント系改良材を地盤31中に注入しながら撹拌して固化することで強固な改良体26が得られる。この改良体26は、杭式、壁式、格子式、ブロック式など様々な形状に改良される。この工法に使用されているセメント系改良材としては、普通ポルトランドセメント、高炉セメントB種の他、セメント系固化材が用いられている。必要に応じてセメントスラリーの流動性を保つためにAE減水剤遅延型の混和剤が用いられることもある。
改良体26からの六価クロム等の重金属類の溶出は、土とセメント系改良材を混合して固化する過程で、水和反応によりセメントから溶出した六価クロム等の重金属類が同時に生成する水和物で十分固定できなかった場合に特に発生し、水和物生成の阻害が著しい火山灰質粘土等を改良した場合に土壌環境基準を上回る六価クロム等の重金属類が溶出する場合がある。
例えば、図2に示す杭式の場合、改良体26の直径Dは、長期間劣化しないことが健全性のために望ましいが、改良体周辺の地盤31の土壌条件によっては、改良体26内のCa量の流出32が起こり、改良体周辺劣化部33が発生し、この改良体周辺劣化部33の厚さdは、次第に進み、それに伴なって、改良体周辺劣化部33の強度は極端に低くなり、セメントを含んだ強度の低い土壌が存在することになる。改良体26の一部の改良体周辺劣化部33の強度低下をきたすだけでなく、改良体26の一部として構築された改良体周辺劣化部33で不溶化されていた六価クロムなどの重金属類が溶出する恐れが生じてくる。
しかしながら、上述した改良体から周辺未改良地盤部へのCa量溶出に伴う改良体の劣化の進行に伴い、改良体に封じ込められている有害物質が溶出することになる。
本発明が解決しようとする第1の課題は、地盤を強固に固化すると共に、固化された改良体からの重金属類の溶出を可能な限り防止する方法及び装置を提供することである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、簡単で経済的に第1の課題を解決する方法及び装置を提供することである。
前記液状硬化剤は、70重量%以上の溶液に、ナトリウム塩が主成分として含まれるとともにアルカリ性を呈し、塩素イオンの含有率が1〜10重量%であり、かつ、ナトリウムイオンの含有率が1〜10重量%であり、コバルトの含有率が0.01〜0.1重量%である。
さらに詳しくは、硬化剤は、アルカリ性を呈した液状であり、70重量%以上の溶液に、炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを主成分とするナトリウム塩を含むので、一方の炭酸ナトリウムは、液状硬化剤をセメント系改良材に添加して固化する場合に、固化された改良体のアルカリ性を助長して中性化による機械的強度の低下を防止する。また、他方の塩化ナトリウムは、液状硬化剤をセメント系改良材に添加して固化する場合に、炭酸ナトリウムとともにセメント水和の促進を図り、改良体から六価クロム等の重金属類やホルモン阻害化学物質が溶出されて拡散されることを確実に防止できる。
pHの高いセメント改良土中のカルシウムが、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出し、ひいては、六価クロム等の重金属類が、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出するのは、一般に周辺未改良地盤がセメント改良土よりpHが低いため、土壌に吸着しやすい状態になるためである。
しかるに、本発明では、改良体のpHが周辺土壌より高くなるように塩素イオン及びナトリウムイオンの含有率をそれぞれ1〜10重量%の範囲で調整したので、カルシウム、ひいては、六価クロム等の重金属類が土壌に吸着する作用を進行させず、改良体に、より強く吸着することにより、周辺未改良地盤へ溶出しにくくなる。
液状硬化剤におけるコバルトの含有率を0.01〜0.1重量%としたので、錯体を形成するコバルト化合物を含有することにより、改良体の機械的強度を上昇させ、また、重金属類や有害物質を保持し、溶出をより一層防止することができる。
液状硬化剤に2重量%以下のアンモニウム塩を含有したので、液状硬化剤をセメント系改良材へ添加して改良体とする場合に、炭酸ナトリウムと同様に改良体のアルカリ性を助長して中性化による機械的強度の低下を防止している。
カルシウムイオンが含まれると、ナトリウム塩としての炭酸ナトリウムとの反応で生成される炭酸カルシウムの量が無視できない程度になり、この炭酸カルシウムが改良体の性状に悪影響を与え、結果として有害物質の溶出、拡散を有効に防止できなくなる。そこで、本発明では、液状硬化剤に含有するカルシウムイオンを、0.1重量%以下と可能な限り少なくすることで有害物質の溶出、拡散を防止している。
液状硬化剤の添加量は、混合処理工法における改良対象土の性状に応じてセメント系改良材に対して0.3〜15重量%(C×wt%)の範囲内で最適に調整できる。
セメント系の地盤改良材に、重金属類と結合して難溶性の化合物を生成し地盤の改良体中に沈殿・固定する作用を強化するためのアルカリ性を呈する硬化剤を付加混合して混合スラリー液とする混合槽と、前記混合スラリー液を注入地盤へ圧送する圧送管と、この圧送管から供給される混合スラリー液を地盤に注入しつつ撹拌する掘削撹拌機と、前記混合スラリー液を注入地盤へ圧送する圧送管に連結され、洗浄液槽からの洗浄液を供給する洗浄液供給管と、この洗浄液供給管と前記圧送管の連結位置の近くに連結され、圧縮機からの圧縮空気を供給して前記洗浄液供給管の洗浄液を前記圧送管へ圧送するための圧縮空気供給管とを具備したので、液状硬化剤の付加混合されたセメント系改良材としての混合スラリー液が得られ、この混合スラリー液が地盤へ注入される。このとき、掘削翼機で地盤を掘削しつつ、混合スラリー液を注入・撹拌する。
注入の終了後、圧縮機から圧縮空気供給管を介して圧搾空気を圧送管に送ると、洗浄液槽からの洗浄液が洗浄液供給管を介して吸引されて圧送管内に残っていた混合スラリー液が地盤に噴射され、圧送管内が洗浄される。
(1)セメント系改良材は、その水和反応の過程で水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生成し、アルカリ性となる。この(Ca(OH)2)から解離した水酸基(OH−)が重金属類と難溶性の水酸化物沈殿を生成し、改良体中に沈殿・固定する。
本発明の方法及び装置には、後述する特有な硬化剤が添加されることにより、前記改良体中への沈殿・固定作用を効果的に行なわせる。この硬化剤は、液状であることが好ましい。
例えば、六価クロムは、水に対する溶解性が高く、この溶解度の大きさは、地下水のpH・酸化還元電位などに左右される。六価クロムは、還元雰囲気で還元されて三価クロムになるため、六価クロムが溶出しない傾向を示す。三価クロムは、化学的に安定しているため、毒性が著しく下がる。
なお、特有な硬化剤は、粉末であってもよく、この場合には、セメント系改良材に水とともに混合する。
以下の実施例では、液状硬化剤が用いられる。
pHが高いセメント改良土中のカルシウムが、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出し、ひいては、六価クロム等の重金属類が、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出するのは、周辺未改良地盤は、一般にセメント改良土よりpHが低いため、土壌に吸着しやすい状態になるためである。
本発明に用いられる液状硬化剤は、この吸着作用を進行させない。
すなわち、液状硬化剤の存在により、ひいては、六価クロム等の重金属類が周辺土壌に吸着される割合を減少させる。
なお、混合処理工法は、様々な機械が用いられており、図1に示す実施例は、その一例である。
10は、アジテーターで、このアジテーター10には、セメント系改良材ホッパー11からセメント系改良材が投入され、希釈液としての水供給部12から水和反応のための水が投入され、アジテーター撹拌器13で撹拌される。
また、本発明の方法及び装置に用いられる硬化剤として、液状硬化剤ホッパー14から重金属類の無害化のための液状硬化剤が投入混合されて撹拌される。
混合スラリー液の注入時には、バルブ28とバルブ30は閉じてバルブ19を開いて混合処理機20の撹拌軸22に混合スラリー液を圧送し、撹拌軸22の先端の吐出孔25から地盤31に注入する。このとき、駆動装置20で回転する撹拌軸22の先端に掘削翼24と撹拌翼23が設けられ、掘削翼24で地盤31を下向きに掘削し、混合スラリー液が混合するように撹拌翼23で地盤31を撹拌する。
混合スラリー液の注入後、材齢の経過で、地盤31の内部では水和作用が進行し、強固な改良体26が形成される。
なお、吐出孔25からの混合スラリー液は、地盤31を下向きに掘削している下降時に注入しても良いし、撹拌軸22の上昇時に注入するようにしても良い。また、撹拌軸22は、2軸以上であっても良い。
注入の終了後、バルブ19を閉じ、バルブ28とバルブ30を開いて圧縮機27から圧縮空気供給管35を介して圧搾空気を圧送管16に送ると、洗浄液槽29からの洗浄液が洗浄液供給管36を介して吸引されてバルブ19から先の圧送管16内に残っていた混合スラリー液が地盤31に噴射され、圧送管16内が洗浄される。
この液状硬化剤の最良の配合の一例は、次の通りである。
70重量%以上の溶液にナトリウム塩が主成分として含まれて高いアルカリ性(具体的にはpH=10.4)を呈する。
塩素イオンの含有率が1〜10重量%(具体的には平均4.6重量%)。
ナトリウムイオンの含有率が1〜10重量%(具体的には平均4.8重量%)。
コバルトの含有率が0.01〜0.1重量%(具体的には平均0.06重量%)。
カルシウムイオンの含有率が0.1重量%以下。
蒸発残留物(10.5℃、24時間で測定)が10〜20重量%(具体的には平均16.7%)。
密度1.149g/cm3。
粘度4.4m・Pas。
(1)セメント系改良材は、その水和反応の過程で水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生成し、アルカリ性となる。この(Ca(OH)2)から解離した水酸基(OH−)が重金属類と難溶性の水酸化物沈殿を生成し、改良体中に沈殿・固定する。
本発明の方法及び装置に用いられる液状硬化剤は、この沈殿・固定作用をより効果的に行なわせる。
例えば、六価クロムは、水に対する溶解性が高く、この溶解度の大きさは、地下水のpH・酸化還元電位などに左右される。六価クロムは、還元雰囲気で還元されて三価クロムになるため、六価クロムが溶出しない傾向を示す。三価クロムは、化学的に安定しているため、毒性が著しく下がる。
液状硬化剤により酸化雰囲気にしゅう鉄酸を添加し、還元雰囲気へ転換を図った場合、六価クロム溶出濃度は、転換前の数分の1に低下した。
六価クロムは、還元性物質によって化学的に安定した三価クロムに還元されるため、還元性を有する土と改良材が混合される場合には、六価クロムは発生しにくくなる。
六価クロム固定能力の高いモノサルフェート相を生成するセメント鉱物(C3A)の初期材齢での水和反応は非常に顕著であり、実際の改良体では、これらの水和生成物による六価クロムの固定も同時に作用するので、六価クロムの溶出はより抑制される。
pHが高いセメント改良土中のカルシウムが、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出し、ひいては、六価クロム等の重金属類が、セメント改良土より周辺未改良地盤に溶出するのは、周辺未改良地盤は、一般にセメント改良土よりpHが低いため、土壌に吸着しやすい状態になるためである。
本発明の方法及び装置に用いられる液状硬化剤は、この吸着作用を進行させない。
すなわち、液状硬化剤の存在により、改良体26からカルシウム、ひいては、六価クロム等の重金属類が周辺未改良地盤に吸着される割合を減少させる。
酸化鉄は、土粒子表面にごく普通に存在し、この酸化鉄の含有率の低い周辺未改良地盤では、添加剤の存在によるpHの低下によってカルシウム、ひいては、六価クロム等の重金属類の吸着が増加する。
このようにして、六価クロム等の重金属類は、改良体に尚強く吸着することにより、周辺未改良地盤へ溶出しなくなる。
液状硬化剤に含まれるナトリウム塩の主成分は、炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウムである。炭酸ナトリウムは、液状硬化剤をセメント系改良材に添加して固化する場合に、固化された改良体のアルカリ性を助長して中性化による機械的強度の低下を防止することを主目的として添加される成分であり、また、塩化ナトリウムは、液状硬化剤をセメント系改良材に添加して固化する場合に、炭酸ナトリウムとともにセメント水和の促進を図る目的で添加される成分である。したがって、改良体から六価クロム等の重金属類やホルモン阻害化学物質が溶出されて拡散されることを確実に防止できる。
Claims (2)
- セメント系の地盤改良材に、重金属類と結合して難溶性の化合物を生成し地盤の改良体中に沈殿・固定する作用を強化するためのアルカリ性を呈する硬化剤を付加混合する液状硬化剤の混合工程と、この液状硬化剤の付加混合されたセメント系改良材を軟弱地盤又はゆるい砂質地盤に注入しつつ撹拌翼で撹拌して改良体を構築する混合処理工程とからなり、前記硬化剤は、アルカリ性を呈した液状であり、70重量%以上の溶液に、炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを主成分とするナトリウム塩と、含有率をそれぞれ1〜10重量%の範囲で調整した塩素イオン及びナトリウムイオンと、含有率が0.01〜0.1重量%のコバルトと、含有率が2重量%以下のアンモニウム塩と、含有率が0.1重量%以下のカルシウムイオンとを含み、この液状硬化剤の添加量は、混合処理工法における改良対象土の性状に応じてセメント系改良材に対して0.3〜15重量%(C×wt%)の範囲内で設定するようにしたことを特徴とする改良体中の重金属類の溶出を低減する方法。
- セメント系の地盤改良材に、重金属類と結合して難溶性の化合物を生成し地盤の改良体中に沈殿・固定する作用を強化するためのアルカリ性を呈する硬化剤を付加混合して混合スラリー液とする混合槽と、前記混合スラリー液を注入地盤へ圧送する圧送管と、この圧送管から供給される混合スラリー液を地盤に注入しつつ撹拌する掘削撹拌機と、前記混合スラリー液を注入地盤へ圧送する圧送管に連結され、洗浄液槽からの洗浄液を供給する洗浄液供給管と、この洗浄液供給管と前記圧送管の連結位置の近くに連結され、圧縮機からの圧縮空気を供給して前記洗浄液供給管の洗浄液を前記圧送管へ圧送するための圧縮空気供給管とを具備したことを特徴とする改良体中の重金属類の溶出を低減する装置。
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