JP7265691B2 - 地盤改良方法 - Google Patents
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Description
建造物を建設する基礎を地盤改良する方法として、コンクリート製又は鋼管製の地盤改良コラムを地盤に打ち込む地盤改良方法や、地盤を掘削しながらセメントミルクなどのセメント系固化材を注入し、掘削土と前記セメントミルクなどのセメント系固化材とが混じり合って形成されるコラム状の地盤改良体を地盤中に直接形成する地盤改良方法が知られている。
また、基礎を地盤改良する方法の一つとして、地盤を掘削して縦穴を作製し、そこに鉄筋性の籠を挿入し、さらにコンクリートを注入することで地中にコンクリート杭を形成する場所打ち杭工法が知られている。
また、基礎杭を築造する基礎杭施工方法の一つに、プレボーリング根固め工法がある。これは、掘削液を注入しながら土壌をオーガで所定深度(支持層)まで掘削した後、根固め液を掘削先端部へ注入し、その後、オーガを引き上げながら杭周固定液を注入し、杭をこの掘削孔に建て込み、圧入又は軽打により根固め液中に定着させ、根固め液と杭周固定液の硬化によって杭と地盤を一体化させる方法である。
地盤改良方法が土壌の掘削を伴う場合、土壌掘削時等に、土壌に供給されたスラリー(例えば、セメントミルクなどの固化材や掘削液など)が周辺の地盤に流出すると、より多くのスラリーが必要となり、経済的にも掘削作業効率的にも好ましくない。また、スラリーを有効に機能させる観点から、スラリーが掘削部の周囲地盤へ流出することは好ましくない。上記の特開2018-193515号公報に開示された技術は、掘削部の周囲地盤へのスラリー流出を抑制することに対しては十分とはいえない。
本発明の地盤改良方法において、土壌に供給されたスラリーの流出が抑制される機構は定かではないが、スラリーに含まれる粉体(P)が、(A)BET比表面積が1.2m2/g以上5m2/g以下の無機粉体〔以下(A)成分という〕を含み、粉体(P)中、(A)成分の割合が10質量%以上であることで、この無機粉体が物理的に土壌の隙間を即座に封鎖してスラリーの逸液を抑制していると考えられる。特に、発明者らは、水に対して粉体(P)が少ない場合、スラリー中の粒子の運動性が高いことから、(A)成分が素早く移動し、効率的に土壌の隙間を封鎖できることから、(A)成分によるスラリーの逸液抑制効果が高くなることを見出した。そして、水に対して粉体(P)が少ない場合であっても、粉体(P)の量が所定の範囲を外れると、(A)成分を用いてもスラリーの逸液抑制効果が向上しないことを見出した。一方で、発明者らは、水に対して粉体(P)が多い場合、一般にスラリーの粘性が高く、内部の粒子の運動性が低いことから、(A)成分が効率的に土壌の隙間まで到達することができず(A)成分による逸液抑制効果が発現しにくいことを見出した。すなわち、空気又は水分で満たされた空隙の多い土壌に対して、粉体(P)中の特定比表面積の無機粉体(A)が土壌の隙間を封鎖し、水(W)と粉体(P)の質量比((W)/(P))が特定範囲で無機粉体(A)を効率的に土壌の隙間に到達させることができる。その結果として、スラリーの掘削部の周囲地盤への流出が抑制されると推察される。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、所定の水(W)と粉体(P)の質量比(W)/(P)のスラリーを用いた場合において、スラリーの硬化を待つことなくスラリーの逸液が抑制されるので、掘削時におけるスムーズな施工が可能となる。
本発明の地盤改良方法、掘削スラリー用逸液防止材、掘削スラリーは、比較的水の多いスラリーの流出抑制に有効であり、スラリーの流出を抑制することで、スラリーを有効に機能させることができる。
本発明の地盤改良方法は、密度が0.4g/cm3以上2.5g/cm3以下の土壌を、水(W)と粉体(P)を含むスラリーを用いて掘削すること、を行う地盤改良方法であって、粉体(P)は、(A)成分を含み、粉体(P)中、(A)成分の割合が10質量%以上であり、前記スラリーの水(W)と粉体(P)の質量比(W)/(P)が、70質量%以上150質量%以下である。本発明の地盤改良方法に用いるスラリーとして、後に詳述する本発明の掘削スラリー用逸液防止材と水とを配合してなるスラリーが挙げられる。なお、本発明において質量比を「質量%」で表す場合、分母を100とした場合の分子の比率を意味する。
(1)セメント、石膏などの水硬性粉体
(2)フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、木質系バイオマス燃焼灰、けい酸白土などのポゾラン作用を持つ粉体
(3)石炭灰、高炉スラグ、けい藻土などの潜在水硬性粉体
(4)カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩
また、例えば、既製杭の埋め込み工法の場合には、土壌掘削時のスラリーの逸液が防止され、根固め液及び杭周固定液の逸液を防止して、地盤に基礎杭を形成できる。
本発明は、水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で含む掘削スラリーに粉体(P)として用いられ、当該掘削スラリーが掘削部の周囲の地盤に流出することを防止する掘削スラリー用逸液防止材であって、(A)成分を含み、(A)成分が、粉体(P)に対して10質量%以上の割合で用いられる、掘削スラリー用逸液防止材(以下、逸液防止材という)を提供する。
本発明の逸液防止材は、任意に(B)成分を含んでもよい。また、本発明の逸液防止材として、例えば、(A)成分を配合した逸液防止材又は(A)成分と(B)成分を配合した逸液防止材が挙げられる。本発明では、逸液防止材を調製する際の(A)成分及び(B)成分等の配合量を、粉体(P)や掘削スラリー中におけるそれぞれの含有量と見なすことができる(以下、同様である)。
本発明は、水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で含み、粉体(P)は、(A)成分を10質量%以上含む、掘削スラリーを提供する。
本発明の掘削スラリーは、任意に(B)成分を含んでもよい。また、本発明の掘削スラリーとして、例えば、本発明の掘削スラリー用逸液防止材を配合してなる掘削スラリーを用いることができる。
また、本発明の掘削スラリーは、スラリーが掘削部の周囲地盤に流出することを抑制できる観点から、密度が0.4g/cm3以上2.5g/cm3以下の土壌の掘削に対して使用することが好ましい。
すなわち、本発明は、上記本発明の掘削スラリーの、密度が0.4g/cm3以上2.5g/cm3以下の土壌の掘削への使用を提供する。
本発明は、水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で配合し、粉体(P)として、該粉体(P)に対して10質量%以上の割合で(A)成分を配合する、掘削スラリーの製造方法を提供する。
本発明の掘削スラリーの製造方法として、(A)成分と(A)成分以外の粉体(P)と水を混合する掘削スラリーの製造方法が挙げられる。本発明の掘削スラリーの製造方法として、本発明の掘削スラリー用逸液防止材と水を配合する、掘削スラリーの製造方法が挙げられる。
実施例又は比較例で用いた成分を以下に示す。
・(A)成分
(A1)高炉スラグ微粉末(日鉄セメント株式会社製 スピリッツ8000):BET比表面積1.78m2/g
(A2)高炉スラグ微粉末(日鉄セメント株式会社製 スピリッツ6000):BET比表面積1.25m2/g
・スピリッツ4000:ブレーン比表面積=4000cm2/g、BET比表面積=0.94m2/g
・スピリッツ6000:ブレーン比表面積=6000cm2/g、BET比表面積=1.25m2/g
・スピリッツ8000:ブレーン比表面積=8000cm2/g、BET比表面積=1.78m2/g
ブレーン比表面積(cm2/g)=4593.8×BET比表面積(m2/g)-94.4
(B1)普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製):BET比表面積0.72m2/g
(B2)高炉スラグ微粉末(日鉄セメント株式会社製 スピリッツ4000):BET比表面積0.94m2/g
(A)成分及び(B)成分等のBET比表面積は、BET流動法(1点法/多点法)、「JISZ8830:2013 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に基づいた方法により算出した。具体的には、MOUNTECH Co.,LTD製全自動比表面積測定装置「Macsorb」により、各成分のBET比表面積を算出した。
表1~3に示す組成の掘削スラリーをそれぞれ調製し、下記のスラリー通過率(%)及びスラリー通過率の割合(%)に基づいて掘削スラリー用逸液防止材の逸液防止効果の評価を行った。なお、表2、3において、配合比は、粉体(P)中の(A)成分又は(B)成分の割合(質量%)に相当する。
表1~3に示す配合比及び水(W)と粉体(P)の質量比(W)/(P)となるように、水に(A1)成分、(A2)成分、(B1)成分又は(B2)成分を配合し、市販のハンドミキサーを用いて1分間混錬し、掘削スラリーを得た。
まず、内径25mm、高さ400mmのガラス製カラムにガラスフィルターG1(JIS細孔の大きさ;100~120μm)のフィルターとコックを取り付けた。このカラムに3号珪砂を100g詰めた。珪砂の密度を、JIS A 1225「土の湿潤密度試験方法」にしたがって測定したところ、2.0g/cm3であった。
次に、カラムのコックを閉めた状態で、カラムに表1~3に示す組成で調製された掘削スラリーを100g添加し、添加後コックを開いた。コックを開いた時点を計測開始時間とし、計測開始時間から10分間にコックから流れ出た掘削スラリーの質量(g)を計測した。そして、カラムに添加された掘削スラリーの質量(g)に対する、10分間にコックから流れ出た掘削スラリーの質量(g)の割合(質量%)を算出し、この割合をスラリー通過率(%)とした。結果を表1~3に示す。スラリー通過率が低いほど、逸液防止材による掘削スラリーの逸液防止効果が高い。そして、各実施例のスラリーは、水(W)と粉体(P)の質量比(W)/(P)が、掘削スラリーに適した粘度(例えば、ファンネル粘性(500ml/500ml)が180秒以下)を達成しやすい質量比でありながら、逸液防止効果が高く、使用した粉体(P)も掘削スラリーとして用いられる成分であるので、土壌の掘削時の掘削スラリーとしてその機能を損なわずに使用できると考えられる。
Claims (15)
- 密度が0.4g/cm3以上2.5g/cm3以下の土壌を、水(W)と粉体(P)を含むスラリーを用いて掘削すること、を行う地盤改良方法であって、
粉体(P)は、(A)BET比表面積が1.2m2/g以上5m2/g以下の無機粉体〔以下(A)成分という〕を含み、
粉体(P)中、(A)成分の割合が10質量%以上であり、
前記スラリーの水(W)と粉体(P)の質量比(W)/(P)が、70質量%以上150質量%以下である、
地盤改良方法。 - 粉体(P)は、(B)BET比表面積が0.4m2/g以上1.0m2/g以下の無機粉体〔以下(B)成分という〕を含む、請求項1に記載の地盤改良方法。
- (B)成分は、セメントである、請求項2に記載の地盤改良方法。
- 粉体(P)中、(A)成分と(B)成分の合計含有量が70質量%以上である、請求項2又は3に記載の地盤改良方法。
- 粉体(P)中、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(B)/(A)が0.4以上2.3以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- スラリー中の(A)成分と(B)成分の合計含有量が12質量%以上55質量%以下である、請求項2~5のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- 前記地盤改良方法は、中層混合処理工法又は深層混合処理工法である、請求項1~6のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- 粉体(P)中、(A)成分の割合が30質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- (A)成分は、高炉スラグである、請求項1~8のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- スラリー中の(A)成分の含有量が、6質量%以上55質量%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- 中層混合処理工法、深層混合処理工法、パワーブレンダー工法及び既製杭の埋め込み工法から選ばれる工法である、請求項1~10のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
- 水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で含む掘削スラリーに粉体(P)として用いられ、当該掘削スラリーが掘削部の周囲の地盤に流出することを防止する掘削スラリー用逸液防止材であって、
(A)BET比表面積が1.2m2/g以上5m2/g以下の無機粉体〔以下(A)成分という〕を含み、
(A)成分が、粉体(P)に対して10質量%以上の割合で用いられる、
掘削スラリー用逸液防止材。 - 水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で含み、
粉体(P)は、(A)BET比表面積が1.2m2/g以上5m2/g以下の無機粉体を10質量%以上含む、
掘削スラリー。 - 請求項13に記載の掘削スラリーの、密度が0.4g/cm3以上2.5g/cm3以下の土壌の掘削への使用。
- 水(W)と粉体(P)を、70質量%以上150質量%以下の質量比(W)/(P)で配合し、
粉体(P)として、該粉体(P)に対して10質量%以上の割合で(A)BET比表面積が1.2m2/g以上5m2/g以下の無機粉体を配合する、
掘削スラリーの製造方法。
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