JP3680866B2 - 自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、地中壁に適した自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中連続壁工法は、安定液によって側壁の崩壊を防ぎながら地盤をトレンチ状に掘削し、掘削終了後、トレンチ内に地中壁を構築する工法であるが、地中壁の目的、トレンチの深さ等に応じてさらに様々な工法が存在する。
【0003】
例えば、地中壁を本体構造物の耐震壁等に利用する場合には、コンクリートをトレミー管等で打設することによって安定液をコンクリートで置換し、トレンチ内に高強度の地中壁を構築する。
【0004】
一方、地中壁を止水壁、遮水壁等に利用する場合、地中壁に要求される強度は比較的小さいことから、コンクリートよりも安価ないわゆる自硬性安定液が使用されることが多い。自硬性安定液は、掘削中においては側壁の崩壊を防止し、掘削後においては安定液自ら硬化して地中壁を構成する。
【0005】
ここで、地中壁が深い場合には掘削量が増加しあるいは掘削地盤が強固になって掘削時間が長くなる。そのため、掘削中は自硬性安定液を使用せずにポリマー、ベントナイト等を含んだ安定液を使用し、掘削後にこれを自硬性安定液と置換することによってトレンチ内に地中壁を構築する工法が採られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の自硬性安定液は、ベントナイト泥水等の安定液との比重の差はあまり大きくなく、従って自硬性安定液でベントナイト泥水等の安定液を良好に置換できず、結果として、地中壁の品質が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、ベントナイト泥水等の安定液との置換性が良好でかつ遮水、土止め等に適した自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の自硬性安定液の製造方法は請求項1に記載したように、水、水硬性セメントおよび所定の骨材を所定の割合で混合して水セメント混合物をつくる工程を含み、ベントナイト等の膨潤物質と水とを混合して水膨潤物質混合物をつくり、次いで、前記水膨潤物質混合物と前記水セメント混合物とを混合する地中壁を構築するための自硬性安定液の製造方法であって、前記水セメント混合物の骨材を実質的に細骨材で構成するとともに前記水セメント混合物を、水硬性セメント1部に対し、骨材が3乃至8部、水が0.5乃至1.5部の重量比で混合し、前記水膨潤物質混合物の膨潤物質をベントナイトで構成するとともに前記水膨潤物質混合物を、水1部に対し、ベントナイトが0.03乃至0.2部の重量比で混合し、前記水セメント混合物と前記水膨潤物質混合物とを、前記水セメント混合物1部に対し前記水膨潤物質混合物が0.2乃至1部の体積比で混合したものである。
また、本発明の自硬性安定液の製造方法は請求項2に記載したように、水、水硬性セメントおよび所定の骨材を所定の割合で混合して水セメント混合物をつくる工程を含み、ベントナイト等の膨潤物質と水とを混合して水膨潤物質混合物をつくり、次いで、前記水膨潤物質混合物と前記水セメント混合物とを混合する地中壁を構築するための自硬性安定液の製造方法であって、前記水セメント混合物の骨材を実質的に細骨材で構成するとともに前記水セメント混合物を、水硬性セメント1部に対し、骨材が4乃至6部、水が0.7乃至1部の重量比で混合し、前記水膨潤物質混合物の膨潤物質をベントナイトで構成するとともに前記水膨潤物質混合物を、水1部に対し、ベントナイトが0.07乃至0.12部の重量比で混合し、前記水セメント混合物と前記水膨潤物質混合物とを、前記水セメント混合物1部に対し、前記水膨潤物質混合物が0.4乃至1部の体積比で混合したものである。
【0011】
また、本発明の地中壁構築工法は、所定の安定液で側壁の崩壊を防ぎながら地盤にトレンチを掘削し、次いで、前記安定液を自硬性安定液で置換して前記トレンチ内に地中壁を構築する地中壁構築工法において、ベントナイトおよび水を水1部に対しベントナイトが0.07乃至0.12部の重量比で混合して泥水をつくるとともに、水硬性セメント1部に対し、細骨材が4乃至6部、水が0.7乃至1部の重量比で混合してモルタルをつくり、前記泥水および前記モルタルをモルタル1部に対し泥水が0.4乃至1部の体積比で混合して自硬性安定液であるクレイモルタルをつくり、前記クレイモルタルで前記安定液を置換するものである。
【0012】
【作用】
本発明の自硬性安定液の製造方法においては、まず、ベントナイト等の膨潤物質と水とを、例えば、水1部に対し、ベントナイトが0.03乃至0.2部の重量比で混合して水膨潤物質混合物をつくり、一方で、水硬性セメント、骨材および水を、例えば水硬性セメント1部に対し、骨材が3乃至8部、水が0.5乃至1.5部の重量比で混合して水セメント混合物をつくる。
【0013】
次いで、水膨潤物質混合物と水セメント混合物とを、例えば、水セメント混合物1部に対し、水膨潤物質混合物が0.2乃至1部の体積比で混合する。
【0014】
また、本発明の地中壁構築工法においては、まず、所定の掘削機で地盤を掘削し、地盤内に所定のトレンチを形成する。このとき、掘削中の側壁が崩壊しないように、トレンチに所定の安定液を注入しながら掘削を行う。
【0015】
掘削完了後、水およびベントナイトを、例えば水1部に対し、ベントナイトが0.07乃至0.12部の重量比となるように混合して泥水をつくる。
【0016】
一方、コンクリート工場等で、水、水硬性セメントおよび細骨材を、例えば、水硬性セメント1部に対し、細骨材が4乃至6部、水が0.7乃至1部となるように混合してモルタルをつくる。
【0017】
次いで、泥水とモルタルとを、例えばモルタル1部に対し、泥水が0.4乃至1部の体積比になるように混合して自硬性安定液であるクレイモルタルをつくる。
【0018】
次いで、クレイモルタルをトレンチ内に流し込む。ここで、クレイモルタルの比重は例えば1.7程度となるため、クレイモルタルは、トレンチ内の安定液と混合することなく、トレンチ底部から順に安定液を置換する。
【0019】
クレイモルタルを打設した後、トレンチ内には硬化クレイモルタルで構成された地中壁が構築される。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の自硬性安定液の製造方法を地中壁構築工法に適用した場合についてフローチャートで示したものである。
【0022】
本実施例の地中壁構築工法では、まず、ハイドロフレーズ掘削機等の掘削機で地盤を掘削し、地盤内にトレンチを形成する(ステップ1)。掘削中は、ベントナイト、ポリマー等を含んだ安定液を使用することにより、孔壁の崩壊を防止する。
【0023】
次いで、安定液を置換してトレンチに充填される自硬性安定液を以下の手順で製造する。
【0024】
まず、水および膨潤物質としてのベントナイトを所定の割合で混合して水膨潤物質混合物としての泥水をつくる(ステップ2)。水とベントナイトとの割合は重量比で、水1部に対し、ベントナイトを0.03乃至0.2部とするのがよいが、さらに、ベントナイトを0.07乃至0.12部とするのが好ましい。
【0025】
泥水は安定液を再利用するのがよい。すなわち、安定液に含まれるベントナイトの量を調べ、水とベントナイトとの重量比が上述の範囲となるように、水あるいはベントナイトを新たに添加して泥水ミキサーで混合する。
【0026】
一方、例えば生コンクリート工場において、水セメント混合物としての貧配合流動性モルタルをつくる(ステップ3)。製造したモルタルは、ミキサー車等で現場に搬入する。
【0027】
貧配合流動性モルタル内の水硬性セメント、骨材および水の割合は、重量比で水硬性セメント1部に対し、骨材を3乃至8部、水を0.5乃至1.5部とするのがよいが、さらに、水硬性セメント1部に対し、骨材を4乃至6部、水を0.7乃至1部とするのが好ましい。
【0028】
また、骨材は、実質的に細骨材だけですなわち砂で構成するのがよい。
【0029】
次に、現場でつくった泥水と工場でつくった貧配合流動性モルタルとを混合して自硬性安定液であるクレイモルタルをつくる(ステップ4)。混合にあたっては、例えば、貧配合流動性モルタルを入れたミキサー車に泥水を追加し、ミキサー車で数分間混合すればよい。
【0030】
クレイモルタル内の泥水および貧配合流動性モルタルの割合は、体積比で貧配合流動性モルタル1部に対し、泥水を0.2乃至1部とするのがよいが、さらに、貧配合流動性モルタル1部に対し、0.4乃至1部とするのが好ましい。
【0031】
最後に、クレイモルタルをトレミー管等を介してトレンチ内に打設し、安定液をクレイモルタルで置換する(ステップ5)。
【0032】
次に、上述の自硬性安定液の製造に関しいくつかの室内実験を行ったので、以下、それらの実験結果を説明する。
【0033】
(実験例1)
まず、A地点で採取された細骨材を用いた場合のクレイモルタルの実験結果について説明する。
【0034】
表1は、貧配合流動性モルタルの重量比を示したものである。なお、セメントには、高炉セメントB種を使用した。
【0035】
【表1】
同表でわかるように本実験では、水セメント比W/Cを1.0、砂セメント比S/Cを4.0とした。
【0036】
次に、泥水を構成する水とベントナイトとの重量比を表2に示す。
【0037】
【表2】
同表でわかるように、水とベントナイトとの重量比は、1:0.1とした。
【0038】
表3は、表1、表2にしたがって配合されたモルタルおよび泥水を異なる体積比で混合してクレイモルタルをつくり、その密度、Pロート流下時間、小型スランプフロー、ブリージングおよび圧縮強度を測定した結果を示したものである。
【0039】
ここで、Pロート流下試験とは、モルタルの流動性を測定する試験である。なお、モルタルと泥水との体積比は、1:0.2、1:0.35、1:0.49、1:0.69の4ケースとした。
【0040】
【表3】
図2は、表3に示した結果をグラフ化したものであり、図2(a)は一軸圧縮強度、図2(b)は小型スランプフローおよびブリージング率、図2(c)はPロート流下時間をそれぞれ横軸に泥水とモルタルの体積比をとって示してある。
【0041】
これらの図および表でわかるように、28日圧縮強度は12乃至62kgf/cm2 、小型スランプフローは36乃至47cm、ブリージング率は2.2乃至2.6%、Pロート流下時間は10乃至14秒程度、比重は1.6乃至1.9となった。
【0042】
本実験例においては、従来の自硬性安定液(比重が1.15乃至1.2、ブリージング率が5乃至10%程度)に比較して、比重は50%程度大きくなり、ブリージング率は3分の1程度に低減した。
【0043】
なお、本実施例のように、ベントナイトを泥水の状態でモルタルに混合させるのではなく、粉末状のベントナイトをモルタルに直接混合させた場合、ブリージング率は5乃至20%程度になった。これは、モルタルに含まれるカルシウムイオンの作用によってベントナイトの膨潤性が阻害され、その保水能力を十分に発揮することができなかったためと考えられる。
【0044】
したがって、ベントナイトを予め泥水の状態にした上でモルタルに添加することが、ブリージング率の改善すなわち品質の均一性にきわめて重要であることがわかった。
【0045】
(実験例2)
次に、B地点で採取された細骨材を用いた場合のクレイモルタルの実験結果について説明する。
【0046】
表4は、貧配合流動性モルタルの重量比を示したものである。
【0047】
【表4】
同表でわかるように本実験では、水セメント比W/Cを0.7、砂セメント比S/Cを4.0とした。
【0048】
次に、泥水を構成する水とベントナイトとの重量比を表5に示す。
【0049】
【表5】
同表でわかるように、水とベントナイトとの重量比は、1:0.1とした。
【0050】
表6は、表4、表5にしたがって配合されたモルタルおよび泥水を異なる体積比で混合してクレイモルタルをつくり、その密度、Pロート流下時間、小型スランプフロー、ブリージングおよび圧縮強度を測定した結果を示したものである。
【0051】
なお、モルタルと泥水との体積比は、1:0.16、1:0.23、1:0.35、1:0.49、1:0.67の5ケースとした。
【0052】
【表6】
図3は、表6に示した結果をグラフ化したものであり、図3(a)は一軸圧縮強度、図3(b)は小型スランプフローおよびブリージング率、図3(c)はPロート流下時間をそれぞれ横軸に泥水とモルタルの体積比をとって示してある。
【0053】
これらの図および表でわかるように、28日圧縮強度は、20乃至106kgf/cm2 、小型スランプフローは30乃至47cm、ブリージング率は1.4乃至2.1%以下、Pロート流下時間は10秒乃至20秒程度、比重は1.7乃至2.0程度となった。
【0054】
本実験例においては、従来の自硬性安定液に比較して、比重は66%程度大きくなり、ブリージング率は3分の1乃至5分の1程度に低減した。
【0055】
(実験例3)
次に、C地点で採取された細骨材を用いた場合のクレイモルタルの実験結果について説明する。
【0056】
表7は、貧配合流動性モルタルの重量比を示したものである。
【0057】
【表7】
同表でわかるように本実験では、水セメント比W/Cを1.0、砂セメント比S/Cを5.0とした。
【0058】
次に、泥水を構成する水とベントナイトとの重量比を表8に示す。
【0059】
【表8】
同表でわかるように、水とベントナイトとの重量比は、1:0.09とした。
【0060】
表9は、表7、表8にしたがって配合されたモルタルおよび泥水を異なる体積比で混合してクレイモルタルをつくり、その密度、Pロート流下時間、小型スランプフロー、ブリージングおよび圧縮強度を測定した結果を示したものである。
【0061】
なお、モルタルと泥水との体積比は、1:0.54、1:0.67、1:0.82、1:1.00の4ケースとした。
【0062】
【表9】
図4は、表9に示した結果をグラフ化したものであり、図4(a)は一軸圧縮強度、図4(b)は小型スランプフローおよびブリージング率、図4(c)はPロート流下時間をそれぞれ横軸に泥水とモルタルの体積比をとって示してある。
【0063】
これらの図および表でわかるように、28日圧縮強度は5乃至15kgf/cm2 、小型スランプフローは50cm程度、ブリージング率は3乃至4%程度、Pロート流下時間は9乃至10秒程度、比重は1.6乃至1.8程度となった。
【0064】
本実験例においては、従来の自硬性安定液に比較して、比重は40%程度大きくなり、ブリージング率は3分の1乃至2分の1程度に低減した。
【0065】
(実験例4)
次に、D地点で採取された細骨材を用いた場合のクレイモルタルの実験結果について説明する。
【0066】
表10は、貧配合流動性モルタルの重量比を示したものである。
【0067】
【表10】
同表でわかるように本実験では、水セメント比W/Cを0.7、砂セメント比S/Cを4.0とした。
【0068】
次に、泥水を構成する水とベントナイトとの重量比を表11に示す。
【0069】
【表11】
同表でわかるように、水とベントナイトとの重量比は、1:0.1とした。
【0070】
表12は、表10、表11にしたがって配合されたモルタルおよび泥水を異なる体積比で混合してクレイモルタルをつくり、その密度、Pロート流下時間、小型スランプフロー、ブリージングおよび圧縮強度を測定した結果を示したものである。
【0071】
なお、モルタルと泥水との体積比は、1:0.16、1:0.23、1:0.35、1:0.49、1:0.67、1:0.78、1:0.90の7ケースとした。
【0072】
【表12】
図5は、表12に示した結果をグラフ化したものであり、図5(a)は一軸圧縮強度、図5(b)は小型スランプフローおよびブリージング率、図5(c)はPロート流下時間をそれぞれ横軸に泥水とモルタルの体積比をとって示してある。
【0073】
これらの図および表でわかるように、28日圧縮強度は20乃至130kgf/cm2 、小型スランプフローは10乃至40cm程度、ブリージング率は1.5乃至2.0%以下、Pロート流下時間は、モルタルと泥水との混合比が1:0.49、1:0.67、1:0.78、1:0.90の4ケースについては13乃至23秒程度、比重は1.6乃至1.8程度となった。なお、モルタルと泥水との混合比が1:0.16、1:0.23、1:0.35の3ケースについてはPロート流下時間を測定することができなかった。
【0074】
本実験例においては、従来の自硬性安定液に比較して、比重は40%程度大きくなり、ブリージング率は5分の1乃至2分の1程度に低減した。
【0075】
以上説明したように、本実施例の自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法は、ベントナイトを予め水と混合させて泥水の状態にし、この泥水を貧配合モルタルに混合して自硬性安定液であるクレイモルタルをつくるようにしたので、遮水性および流動性が高くかつ所定の強度および耐久性を持つ高品質のクレイモルタルを経済的につくることができる。
【0076】
すなわち、ベントナイト粉末をモルタルに直接添加するのではなく、予め泥水の状態にしてこれをモルタルに混合するようにしたので、ベントナイトをモルタル内に容易に分散させることが可能となり、ベントナイトが持つ保水能力を十分に発揮させることができるとともに、使用するベントナイトの量も必要最低限ですむ。
【0077】
また、10-8cm/s程度の透水係数を確保できたので、例えば薄形止水壁内に薄形鋼板をジョイントさせた場合にも、鋼板の継ぎ目からの漏水を十分防止することができる。
【0078】
また、水セメント比を大きくすることにより、Pロート流下時間が10秒程度の流動性を確保することができるので、掘削断面が小さくかつその断面内に薄形鋼板やH形鋼が挿入されている場合であっても、それらの隙間にクレイモルタルを良好に充填することができる。
【0079】
また、所定量の水をベントナイトに膨潤させることにより、ブリージング率を3%程度に抑えることが可能となり、品質の均一性を向上させることができる。
【0080】
また、10乃至30kgf/cm2 程度の一軸圧縮強度を得ることができるので、所定の日数経過後は、土圧あるいは水圧に十分対抗できるだけの強度を得ることができる。
【0081】
また、モルタル内の骨材割合を高めたので、従来の自硬性安定液と比べて比重が大きくなり、ベントナイト、ポリマー等を含む安定液との置換性が格段に向上し、高い品質の地中壁を構築することができる。
【0082】
また、モルタル内のセメント量を少なくしたので、地中壁のコストを低く抑えることができる。
【0083】
したがって、掘削断面の小さなトレンチに高品質の薄形止水壁を経済的に構築することが可能となり、通常の仮設遮水壁のみならず、特に、地下ダム、廃棄物処分場、ダム底部等の遮水壁あるいは液状化対策用の地中壁に非常に有効な手段となる。さらに、地中壁のみならず、掘削後の埋め戻し、特に、狭くて複雑な空間の埋め戻し、シールド工法におけるトンネル掘削時のセグメントの裏込めあるいは埋立等にも適用することができるとともに、使用場所も水中、陸上を問わない。
【0084】
また、骨材を実質的に細骨材で構成したので、トレンチ幅が非常に狭い場合あるいはトレンチ内にH型鋼、鋼板等が設けてある場合にも、トレンチ内の隅々にまで本実施例のクレイモルタルを充填することができる。
【0085】
また、貧配合モルタルに混合する泥水を孔壁安定用の安定液からつくるようにしたので、従来は所定の処理を行った上で廃棄するしかなかった安定液を有効利用することができる。
【0086】
このため、地中壁のトータルコストをさらに低減することが可能となるとともに、廃棄物の量を少なくして環境への影響を小さくすることができる。
【0087】
なお、上述の実施例では特に言及しなかったが、必要に応じて、通常使用される流動化剤、減水剤、分離低減剤、発泡剤、起泡剤、硬化促進剤、硬化遅延剤等の混和剤を泥水、モルタルあるいはクレイモルタルに適宜添加してもよいことは言うまでもない。
【0088】
本実施例では、水セメント混合物をモルタルに限定して説明したが、かかる物質に限定されるものではなく、骨材を細骨材および粗骨材で構成したコンクリートにも本発明を適用することができる。
【0089】
また、本実施例では、膨潤物質としてベントナイトを採用したが、カオリン粘土等の他の粘土を用いてもよいし、水溶性高分子であるポリマー等の他の膨潤物質を用いてもよい。
【0090】
また、本実施例では、孔壁安定用の安定液を再利用してモルタル添加用の泥水をつくったが、孔壁安定用の安定液とは別に、新たに水およびベントナイトを泥水ミキサー等で混合しこれをモルタルに混合するようにしてもよいし、泥水シールド工法、リバース杭工法、アースドリル工法などの泥水を用いた他の地盤掘削工法で生じた泥水を再利用するようにしてもよい。また、砕石工場の洗い水などでもよい。
【0091】
かかる泥水の再利用によって建設廃棄物を減らすことができる。したがって、廃棄物の処理コスト(脱水減水化、セメント固化あるいはそれらの埋立廃棄コスト)を低減し、環境への影響を最小限にとどめることが可能となる。
【0092】
また、本実施例では、貧配合流動性モルタルを生コンクリート工場で配合することを想定したが、現場プラントでこれを製造してもよい。また、本実施例では、貧配合流動性モルタルと泥水との混合を生コン車で行うことを想定したが、現場に設けた別のミキサーで行ってもよい。
【0093】
また、本実施例では、トレンチ形成後に泥水をつくるようにしたが、トレンチを掘削しながら泥水を製造してもよい。
【0094】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の自硬性安定液の製造方法によれば、ベントナイト等の安定液との置換性が良好でかつ遮水、土止め等に適した地中壁構築のための自硬性安定液を製造することができる。
【0095】
また、本発明の地中壁構築工法によれば、ベントナイト泥水等の安定液との置換性が良好でかつ遮水、土止め等に適した地中壁構築のための自硬性安定液を製造することができる。
【0096】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自硬性安定液の製造方法を地中壁構築工法に適用した場合の手順を示したフローチャート。
【図2】第1の実験例に係る自硬性安定液の試験結果を示したグラフ。
【図3】第2の実験例に係る自硬性安定液の試験結果を示したグラフ。
【図4】第3の実験例に係る自硬性安定液の試験結果を示したグラフ。
【図5】第4の実験例に係る自硬性安定液の試験結果を示したグラフ。
【符号の説明】
1 トレンチ形成工程
2 泥水製造工程
3 モルタル製造工程
4 泥水モルタル混合工程
5 打設工程
Claims (3)
- 水、水硬性セメントおよび所定の骨材を所定の割合で混合して水セメント混合物をつくる工程を含み、ベントナイト等の膨潤物質と水とを混合して水膨潤物質混合物をつくり、次いで、前記水膨潤物質混合物と前記水セメント混合物とを混合する地中壁を構築するための自硬性安定液の製造方法であって、前記水セメント混合物の骨材を実質的に細骨材で構成するとともに前記水セメント混合物を、水硬性セメント1部に対し、骨材が3乃至8部、水が0.5乃至1.5部の重量比で混合し、前記水膨潤物質混合物の膨潤物質をベントナイトで構成するとともに前記水膨潤物質混合物を、水1部に対し、ベントナイトが0.03乃至0.2部の重量比で混合し、前記水セメント混合物と前記水膨潤物質混合物とを、前記水セメント混合物1部に対し前記水膨潤物質混合物が0.2乃至1部の体積比で混合したことを特徴とする自硬性安定液の製造方法。
- 水、水硬性セメントおよび所定の骨材を所定の割合で混合して水セメント混合物をつくる工程を含み、ベントナイト等の膨潤物質と水とを混合して水膨潤物質混合物をつくり、次いで、前記水膨潤物質混合物と前記水セメント混合物とを混合する地中壁を構築するための自硬性安定液の製造方法であって、前記水セメント混合物の骨材を実質的に細骨材で構成するとともに前記水セメント混合物を、水硬性セメント1部に対し、骨材が4乃至6部、水が0.7乃至1部の重量比で混合し、前記水膨潤物質混合物の膨潤物質をベントナイトで構成するとともに前記水膨潤物質混合物を、水1部に対し、ベントナイトが0.07乃至0.12部の重量比で混合し、前記水セメント混合物と前記水膨潤物質混合物とを、前記水セメント混合物1部に対し、前記水膨潤物質混合物が0.4乃至1部の体積比で混合したことを特徴とする自硬性安定液の製造方法。
- 所定の安定液で側壁の崩壊を防ぎながら地盤にトレンチを掘削し、次いで、前記安定液を自硬性安定液で置換して前記トレンチ内に地中壁を構築する地中壁構築工法において、
ベントナイトおよび水を水1部に対しベントナイトが0.07乃至0.12部の重量比で混合して泥水をつくるとともに、水硬性セメント1部に対し、細骨材が4乃至6部、水が0.7乃至1部の重量比で混合してモルタルをつくり、前記泥水および前記モルタルをモルタル1部に対し泥水が0.4乃至1部の体積比で混合して自硬性安定液であるクレイモルタルをつくり、前記クレイモルタルで前記安定液を置換することを特徴とする地中壁構築工法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27117393A JP3680866B2 (ja) | 1993-10-05 | 1993-10-05 | 自硬性安定液の製造方法および地中壁構築工法 |
Applications Claiming Priority (1)
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