JP3698111B2 - 防振ブッシュの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のサスペンション機構の一部に組み込まれて、車輪側から車体側に伝達される振動等を制御するための防振ブッシュ製造方法に関する。また、この防振ブッシュの製造に好適な金属製筒体の加工方法及び加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
一般に、乗用車等の自動車では、車輪側から車体側に伝達される振動、あるいはエンジン側から車体側に伝達される振動等を制御するため、サスペンション機構やエンジンの支持機構の一部に、防振ブッシュが組み込まれている。
【0003】
図12に防振ブッシュの一例を示す。この防振ブッシュは、金属製の内筒101と、その外方に間隔をあけて配置された外筒102と、内筒101と外筒102との間に介設されたゴム状弾性体103とを備えており、内筒101及び外筒102がそれぞれ別の部材に固定されて、両部材を防振的に連結する。
【0004】
内筒101は、その内径が軸方向で略一定とされ、両端面104がブラケット等の取付部材で挟まれた状態、あるいは一方の端面104だけが取付部材に当接された状態で、内側に軸部材が挿通され、取付部材に締結固定される。
【0005】
内筒101の両端部105には、その外径を拡径して両端面104の面積を大きくする加工が施されており、取付部材に締結固定されたときの、端面104と取付部材との間の面圧を小さくしている。また、両端部105の外径が拡径されて、中央部106の外方に配置された外筒102の内径よりも大とされることにより、ゴム状弾性体103が過大に変形したときの、外筒102の内筒101からの抜け出しを防止する。
【0006】
図13に内筒101の両端部105を加工する様子を示す。この加工は、圧接具107の圧接面108を内筒101の端面104に押し付けて、圧接具107を旋回運動させるものであり、この加工が各端部105ごとに行われて、両端部105の外径が拡径される。
【0007】
ところで、防振ブッシュの内筒101を車輪側のメンバー等に固定する際、内筒101の端面104をメンバー等に当接させ、メンバー等の裏側からボルトを挿通して内筒101を固定することがある。この場合、内筒101へのボルトの挿通が難しいため、防振ブッシュの取付作業時間が長くなり、コストを高くする一因となっていた。
【0008】
また、内筒101の両端部105の加工は、各端部105ごとに行われるため、一方の端部105の加工が完了した後、圧接具107を取り外し、内筒101の向きを反対にして、再び、圧接具107をセットして、他方の端部105を加工する必要があり、加工時間を長くし、コストを高くする一因となっていた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、内筒へのボルトの挿通を容易にして防振ブッシュの組付作業性を向上することを目的とする。また、一度の圧接作業で筒体の両端部の外径を拡径できるようにして、拡径加工の作業効率を向上することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、金属製の内筒と、その外方に間隔をあけて配置された外筒と、内外筒間に介設されたゴム状弾性体とを備え、内筒の軸方向一側端部の内径が中央部及び他側端部の内径よりも大とされ、内筒の両端部の外径が中央部の外径よりも大とされた防振ブッシュが提供される。
【0011】
この防振ブッシュであると、内筒の軸方向一側端部の内径を中央部及び他側端部の内径よりも大としたことにより、内筒に該一側からボルトを挿通しやすい。また、内筒の両端部の外径を中央部の外径よりも大としたことにより、内筒の一側端面と、この一側端面が当接する取付部材との間の面圧を小さくして、取付部材の当接面の陥没や、内筒一側端部の座屈等を防止すると共に、外筒の他側方向への抜け出しを防止することができる。つまり、内筒の外径が軸方向で一定の場合、一側端部の内径を大きくすることによって一側端面の面積が小さくなるが、一側端部の外径を大きくすることにより、一側端面の面積を大きくして、その面圧を小さくすることができる。また、外径を大きくした他側端部に、外筒の抜け出しを規制するストッパとして機能させることができる。
【0012】
両端部の外径が中央部の外径よりも大である内筒は、軸方向一側端部の内径が中央部及び他側端部の内径よりも大で、軸方向で外径が略一定の金属製筒体に、その両端部の外径を拡径する加工を施すことにより形成することができる。
【0013】
その加工方法として、軸方向一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた金属製筒体の軸方向両端部の外径を他側からの加工で拡径する加工方法を用いれば、その加工を簡単にすることができる。
【0014】
すなわち、本発明に係る金属製筒体の加工方法は、軸方向一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた金属製筒体の軸方向両端部の外径を拡径する加工方法であって、前記筒体の一側端面を受け具に当接させ、その際、前記一側端部の内周側に中型を嵌合させるとともに、前記一側端部の外周側を外型で所定の隙間をあけて取り囲み、前記筒体の他側端面に圧接具を圧接することにより、他側端部よりも肉厚が薄い一側端部の外径を拡径し、一側端部の拡径完了後、圧接具の他側端面への圧接を続行することにより、他側端部の外径を拡径するものである。このように、筒体の一側端面を受け具に当接させ、次いで、他側端面に圧接具を圧接することにより、他側端部よりも肉厚が薄い一側端部の外径が拡径される。一側端部の拡径完了後、圧接具の他側端面への圧接を続行すれば、他側端部の外径が拡径され、筒体の軸方向両端部の外径が拡径される。
【0015】
また、筒体の一側端面を受け具に当接させる際、一側端部の内周側に中型を嵌合させることにより、一側端部の座屈を防止することができると共に、一側端部の内径を縮径することなく、外径の拡径だけを行うことができる。また、一側端部の外周側を外型で所定の隙間をあけて取り囲むことにより、拡径後の外径の大きさを所定の大きさにすることができる。
【0016】
なお、この加工方法は、防振ブッシュの内筒に限らず、一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた金属製筒体であれば、どのようなものにも採用することができ、筒体の外径が軸方向で略一定でなくてもよい。
【0017】
この加工方法に使用する加工装置としては、筒体の一側端面を受ける受け具と、筒体の一側端部を取り囲む外型と、筒体の他側端面に圧接される圧接具とを備えたものを使用すればよい。
【0018】
この内、受け具は、筒体の一側端面を当接させる当接面に、筒体の内周側に嵌合される中型を突設したものであり、これにより、筒体を受け具に当接させるとき、同時に中型を嵌合させることができ、この中型に、加工中の筒体の受け具に対するずれを阻止させることができる。
【0019】
外型は、周方向において複数に分割された分割型であり、型締めした状態で筒体の一側端部を所定の隙間をあけて取り囲む開口を備えるものである。例えば、外型は、二つ割りで受け具に着脱自在とされ、受け具に装着した状態で上記開口が形成されるようにしてもよい。このように外型が分割型であることから、外径を拡径された筒体が外型から抜けなくなることはない。また、受け具に装着することによって、中型との相対的なずれを阻止し、拡径後の筒体の肉厚が不均一にならないようにすることができる。
【0020】
圧接具は、筒体の他側端面に圧接される圧接面が形成され、この圧接面が円錐面の一部からなるものを用いればよい。そうすれば、円錐面の頂点が筒体の他側端面の中心に位置するように圧接具を配置して、この圧接具を旋回運動させることにより、筒体の他側端面全体を圧接することができる。
【0021】
加工装置は、上記の受け具と外型と圧接具とともに、外型が嵌合する凹部を有して該凹部内に外型とともに受け具が配される台と、該凹部内に設けられて受け具を弾性的に支持する弾性体とを備え、受け具と外型が互いに係合して、筒体の他側端面に圧接具を圧接することにより外型が前記弾性体の付勢力に抗して凹部内に嵌入されて型締めされ、圧接具の圧接を解除することにより外型が前記弾性体の付勢力により凹部からの離脱方向に移動して型開きされるようにしてもよい。かかる構成により、筒体の拡径加工の作業性を一段と向上することができる。特に、圧接具による圧接を解除することにより、弾性体によって外型が自動的に外れて型開きされるため、拡径加工後の筒体の取り出し作業性に優れる。
【0022】
上記防振ブッシュを製造する本発明に係る製造方法は、軸方向一側端部の内径が中央部及び他側端部の内径よりも大とされることで該一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた内筒の外方に、ゴム状弾性体を介在させて外筒を配置し、次いで、内筒の一側端面を受け具に当接させ、その際、前記一側端部の内周側に中型を嵌合させるとともに、前記一側端部の外周側を外型で所定の隙間をあけて取り囲み、前記内筒の他側端面に圧接具を圧接することにより、他側端部よりも肉厚が薄い一側端部の外径を拡径し、一側端部の拡径完了後、圧接具の他側端面への圧接を続行することにより、他側端部の外径を拡径する。これにより、ゴム状弾性体を加硫成形した後、その端面の型を取り外すときに、外径が拡径された両端部が邪魔にならない。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の防振ブッシュは、金属製の内筒1と、その外方に間隔をあけて配置された外筒2と、内筒1と外筒2との間に介設されたゴム状弾性体3とを備えており、内筒1及び外筒2がそれぞれ別の部材に固定されて、両部材を防振的に連結する。
【0025】
内筒1は、例えば鋼製の筒状とされ、軸方向一側端部4の内径(d1)が中央部5及び他側端部6の内径(d2)よりも大とされており、一側からボルト21を挿通しやすくされている。また、内筒1の内周面で、一側端部4と中央部5との間には、その境界部の段差をなくすように、軸方向のテーパ7が周方向に連続して形成され、一側から挿通されたボルト21が途中で引っ掛からないようにされている。
【0026】
内筒1の中央部5のうち、一側端部4の付近には、その内周面に雌ねじ8が形成され、一側から内筒1の内側を挿通するボルト21が螺合されるようになっている。また、内筒1の両端部4、6は、その外径(D1、D2)が中央部の外径(D3)よりも大とされている。
【0027】
外筒2は、例えば鋼製の筒状とされ、その軸方向長さは内筒1の中央部5とほぼ同じ長さとされて、内筒1の中央部5の外方に配置される。この外筒2は、内筒1との間にゴム状弾性体3が介在できるように、その内径(d3)が内筒1の中央部5の外径(D3)よりも大とされる。
【0028】
外筒2の他側端部9は、その縁端よりわずかに一側にずれた部分が、外方に拡径され、さらに縁端付近が縮径されて、外方に膨らんだ形状となっており、外筒2を部材の開口13に圧入する際の押さえ部とされる。この他側端部9の縁端の内径(d4)は、内筒1の他側端部6の外径(D2)よりも小さくされ、内筒1の他側方向に、外筒2が抜け出さないようになっている。
【0029】
ゴム状弾性体3は、リング状とされ、内筒1の中央部5の外周面と外筒2の内周面との間に、加硫成形によって介設されて、内筒1と外筒2とを接合しており、内筒1側と外筒2側との間で伝達される振動等を減衰するようになっている。なお、ゴム状弾性体3の他側端面には、変形の方向に応じてそのばね定数を調節するように、すぐり部10が形成されている。
【0030】
この防振ブッシュは、例えば、図2に示すリンク支持部材11の車輪側のメンバー12への取付に使用される。このリンク支持部材11は、メンバー12と車体側のフレームとの相対的な動きを規制するリンクの一端を支持するものである。
【0031】
リンク支持部材11の一端側には、防振ブッシュの外筒2が圧入固定される開口13が設けられ、防振ブッシュを介して、リンク支持部材11がメンバー12に取り付けられる。また、リンク支持部材11の他端側の開口には、別の防振ブッシュ14が取り付けられ、この防振ブッシュ14を介してリンクを支持する。
【0032】
図3に、リンク支持部材11の開口13に取り付けられた防振ブッシュを車輪側のメンバー12に取り付けた状態を示す。メンバー12の防振ブッシュ取付部15は、ボルト挿通孔16が形成された上下フランジ17、18と、ボルト挿通孔16を取り囲むように、上下フランジ17、18間に配置された補強リング19とからなる。
【0033】
上フランジ17の上面には、補強リング19と位置を合わせて、内筒1の一側端面20が当接される。この内筒1の雌ねじ8に、下フランジ18の下方から挿通されたボルト21が螺合され、内筒1が上フランジ17の上面に締結固定される。一方、外筒2は、リンク支持部材11の開口13に圧入固定されており、防振ブッシュを介して、リンク支持部材11がメンバー12の上面側に取り付けられる。
【0034】
上記構成によれば、内筒1の一側端部4の内径(d1)が中央部5及び他側端部6の内径(d2)よりも大とされているため、メンバー12の下方からボルト21を挿通するとき、このボルト21を内筒1に挿通しやすい。
【0035】
また、一側端部4の外径(D1)が中央部5の外径(D3)よりも大とされており、一側端部4の内径(d1)を大きくしても、一側端部4の肉厚(D1/2−d1/2)を所定の厚さにすることができる。そのため、一側端面20の面積を大きくすることができ、内筒1がメンバー12にボルト21で締結されたときの面圧を所定の値以下にして、メンバー12の陥没や、一側端部4の座屈を防止することができる。
【0036】
また、内筒1の他側端部6の外径(D2)が、外筒2の他側端部9の緑端の内径(d4)よりも大とされるため、ゴム状弾性体3が過大に変形したとき、内筒1からの外筒2の他側方向への抜け出しを防止することができる。なお、内筒1の一側方向への外筒2の抜け出しは、メンバー12が阻止する。
【0037】
次に、この防振ブッシュの製造方法について説明する。まず、図4に示すように、内筒1を例えば鋼製の鍛造品として形成する。この内筒1は、その一側端部4の内径(d1)を中央部5及び他側端部6の内径(d2)よりも大として、その外径(D3)を軸方向で一定にし、一側端部4の肉厚(D3/2−d1/2)が中央部5及び他側端部6の肉厚(D3/2−d2/2)よりも薄くなるようにする。
【0038】
内筒1の中央部5の外方に、外筒2を配置して、内筒1と外筒2との間に、加硫成形によってゴム状弾性体3を介在させる。次いで、この内筒1の両端部4、6の外径(D3)を加工装置22によって、それぞれ(D1)、(D2)に拡径して、所定の形状を得る。
【0039】
ここで、加工装置22の構成について説明する。図5に示すように、第1の実施形態に係る加工装置22は、内筒1の一側端面20を当接させることで内筒1を受けとめる受け具23と、内筒1の一側端部4を取り囲む外型24と、内筒1の他側端面25に圧接される圧接具26とからなる。
【0040】
受け具23は、例えば内筒1よりも高強度の鋼製とされ、基部27の上面側に、断面円形の外型取付部28が形成されている。この外型取付部28の上面は、内筒1の一側端面20が当接する当接面29とされ、当接面29の中心部に、内筒1の内周側に嵌合される断面円形の中型30が突設されている。中型30の外径(D4)は、内筒1の一側端部4の内径(d1)よりもわずかに小さくされ、その先端部31には、内筒1のテーパ7に合わせて、周方向に連続する面取りが形成されている。
【0041】
外型24は、例えば内筒1よりも高強度の鋼製とされ、受け具23の外型取付部28に着脱自在とされる。この外型24は、筒部32とその上端部を塞ぐ蓋部33とからなり、筒部32を外型取付部28に嵌合させて、蓋部33の下面を当接面29に当接させることにより、外型取付部28に装着される。また、外型24は、軸方向に沿って二分割された二つ割りとされ、受け具23の外型取付部28に装着する際に、図示しない接合部で、各外型24a、24bを接合することにより、これらが一体化される。
【0042】
蓋部33の中央部には、その直径(D1)が加工前の内筒1の外径(D3)よりも大きい開口34が形成され、装着状態で、開口34が中型30を所定の隙間をあけて取り囲むようになっている。図6に示すように、開口34は、軸方向で中央付近より上方では、その直径が略一定とされ、中央付近より下方では、下方に進むにしたがって、その直径が大きくなっている。すなわち、開口34の内周面35は、加工後の内筒1の一側端部4の外周面の形状に合わせて形成されている。
【0043】
圧接具26は、図7に示すように、例えば内筒1よりも高強度の鋼製とされ、断面円形の圧接具本体36の下端部には、円錐面の一部からなり、内筒1の他側端面25に圧接される圧接面37が周方向に連続して形成されている。また、圧接面37の中央には、内筒1の内側に挿入して、圧接具26の内筒1に対するずれを阻止すると共に、内筒1の他側端部6の内径が縮径されないようにするための突起部38が形成されている。
【0044】
次に、加工装置22を用いて、内筒1の両端部4、6の外径を拡径する手順について説明する。まず、図8(a)に示すように、内筒1の一側端部4の内周側に中型30を嵌合させて、内筒1の一側端面20を受け具23の当接面29に当接させる。受け具23の外型取付部28に外型24を装着し、内筒1の一側端部4の外周側を開口34で所定の隙間をあけて取り囲む。
【0045】
次いで、図8(b)に示すように、内筒1の他側端部6の内側に、圧接具26の突起部38を挿入して、圧接面37の頂点39を内筒1の他側端面25の中心に位置させ、他側端面25に、圧接具26の圧接面37を圧接する。頂点39を中心に、圧接具26を旋回運動させることにより、他側端面25の全体が圧接される。
【0046】
加工前の内筒1は、一側端部4の肉厚が中央部5及び他側端部6の肉厚よりも薄くなっており、圧接具26を内筒1の他側端面25に圧接させたとき、一側端部4には、より大きな圧縮応力度が生じる。この圧縮応力度による塑性変形により、軸方向の収縮を伴って、一側端部4の外径が拡径される。
【0047】
ここで、半径方向で内向きの拡がり(内径の縮径)は、周方向の圧縮によって阻害される。つまり、一側端部4が軸方向に圧縮されたとき、その周方向にも圧縮力が作用する。一側端部4が内向きに拡がる場合には、この拡がりに伴って周長が短くなり、周方向に作用する圧縮力がより大きくなる。この圧縮力は半径方向で外向きに押し出す力として作用するため、内向きの拡がりを阻害する。
【0048】
また、塑性変形に至るまでの弾性変形によって、一側端部4の内周面が中型30の周面に当接することにより、半径方向で内向きの拡がりが規制される。そのため、主に一側端部4の外径だけが拡径され、加工完了後に、中型30が抜けなくなることはない。
【0049】
一側端部4の外径が(D1)まで拡径され、その外周面が外型24の開口34の内周面35に当接したとき、それ以後の拡径が規制され、一側端部4の外径の拡径が完了する。
【0050】
その後、圧接具26の他側端面25への圧接を続行する。このとき、一側端部4の外径が拡径されないため、圧接具26の圧接面37が直接当接する他側端部6が、塑性変形による軸方向の収縮を伴って、その外径を拡径される。他側端部6の外径が(D2)に至ったとき内筒1の加工が完了し、外型24を取り外して防振ブッシュの製造が完了する。なお、外型24は、二つ割りであるため、内筒1の一側端部4から容易に取り外すことができる。
【0051】
上記の製造方法によれば、外径が軸方向で略一定の内筒1の周囲に外筒2を配置して、内筒1と外筒2との間にゴム状弾性体3を加硫成形した後に、内筒1の両端部4、6の外径を拡径するため、ゴム状弾性体3の加硫成形に必要な軸方向端面の型を取り外すときに、内筒1の両端部4、6が邪魔にならない。
【0052】
また、内筒1の一側端面20を受け具23の当接面29に当接させて、圧接具26を他側端面25に圧接することにより、両端部4、5の外径を拡径するため、一度の圧接作業によって内筒1の両端部4、5を加工することができる。
【0053】
次に、第2の実施形態に係る加工装置50について説明する。なお、第1の実施形態の加工装置22と同じ符号を付したものは、特に説明しない限り同一の構成を持つものとして説明を省略し、異なる事項についてのみ説明する。
【0054】
図9に示すように、第2の実施形態の加工装置50は、上記した受け具23と外型24と圧接具26に加えて、更に、外型24を受ける台51と弾性体52を備える。
【0055】
外型24は、この実施形態では、上記の筒部32と蓋部33に加えて、受け具23の下面を支持する底部53を備え、これにより、外型24には中空部54が形成され、この中空部54内に受け具23が収容されている。図11に示すように、外型24は、筒部32の外周面が下端側ほど径の小さいテーパ面状をなす逆円錐台状をなしており、周方向において8つに均等に分割されている。そして、分割された各型には、上記テーパ面にそれぞれ軸方向に延びる凸条のガイド用係合部55が形成されている。
【0056】
台51は、その上面に、外型24が嵌合する凹部56を有し、この凹部56内に外型24とともに受け具23が受け入れられている。凹部56の壁面は外型24の周面に合わせたテーパ面状に形成されており、図9、10に示すように、分割された外型24はこの凹部56の底面まで嵌り込むことで、それぞれ径方向内方に移動して型締めされるよう構成されている。そして、このように型締めされることで、外型24の上面の開口34が内筒1の一側端部4の外周を所定の隙間をあけて取り囲む。
【0057】
台51の凹部56におけるテーパ状の壁面には、外型24のガイド用係合部55に対応する溝状のガイド用係合部57が設けられ、両者が係合することで外型24の各型の周方向におけるズレが防止されている。
【0058】
台51の凹部56の底面には弾性体用凹部58が設けられており、上記弾性体52はこの凹部58に配されている。弾性体52は、外型24の底部53の下面を支持して、該外型24とともにその内部に収容された受け具23を弾性的に支持するものである。弾性体52は、この実施形態では、リング状をなすウレタンエラストマーなどのゴム状弾性体であるが、コイルばね等のスプリングを用いることもできる。
【0059】
受け具23の底面には軸59が突設されており、この軸59は、外型24の底部53に設けられた開口60と、弾性体52の中空部61とを貫通して、台51に設けられた孔62に滑動可能に差し込まれており、これにより上下動する受け具23を台51の中央に位置決めしている。
【0060】
この加工装置50を用いて、内筒1の両端部4、6の外径を拡径する場合、図9に示すように、内筒1の一側端部4の内周側に中型30を嵌合させて、内筒1の一側端面20を受け具23の当接面29に当接させる。そして、内筒1の他側端面25に圧接具26の圧接面37を圧接すると、その押圧力により、受け具23を介して外型24が弾性体52を圧縮し、図10に示すように外型24が凹部56内に嵌入する。これにより、外型24は型締めされ、内筒1の一側端部4の外周が外型24により所定の隙間をあけて取り囲まれる。この状態で圧接具26を旋回運動させることにより、上記実施形態と同様に、内筒1の両端部4、6の外径が拡径される。拡径完了後、圧接具26による内筒1への圧接を解除することにより、弾性体52の上方への付勢力によって、受け具23とともに外型24が上方に移動して図9に示す元の状態に戻る。外型は、この上方への移動に伴って各型が放射方向にも移動し、これにより型開きされる。
【0061】
このように、第2の実施形態の加工装置50であると、圧接具26による圧接を解除することで、弾性体52によって外型24が自動的に外れて型開きされるため、拡径加工後の防振ブッシュの取り出し作業性に優れる。
【0062】
なお、本発明は、上記の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更を加えることができる。例えば、内筒の加工方法は、防振ブッシュの内筒に限らず、一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄い金属製筒体であれば、あらゆるものに採用することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ゴム状弾性体の加硫成形後に、内筒の軸方向両端部の外径を拡径することによって、内筒の一側端面の面積を小さくすることなく、一側端部の内径を大きくすることができる。そのため、例えばリンク支持部材の車輪側メンバーへの取り付けに、本発明の防振ブッシュを用いれば、内筒の一側端面が当接するメンバーの陥没や一側端部の座屈を生じさせることなく、容易に締結ボルトを挿通させることができ、作業時間の短縮及びコスト削減に寄与することができる。
【0065】
また、肉厚が厚い方の他側端部に圧接具を圧接することによって、一度の圧接作業で両端部の外径を拡径することができる作業効率のよい加工方法を使用するため、作業時間の短縮及びコスト削減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る防振ブッシュの軸方向断面図である。
【図2】(a)は車輪側メンバーに取り付けられるリンク支持部材の平面図であり、(b)はその正面図である。
【図3】車輪側メンバーに取り付けられた防振ブッシュの軸方向断面図である。
【図4】内筒の加工前の防振ブッシュの軸方向断面図である。
【図5】内筒の加工装置の分解図である。
【図6】外型の軸方向断面図である。
【図7】圧接具の要部正面図である。
【図8】内筒の加工方法を説明する軸方向断面図であり、(a)は加工前を示し、(b)は加工後を示す。
【図9】他の実施形態に係る加工装置を説明する軸方向断面図である。
【図10】同加工装置を用いて加工している状態を示す軸方向断面図である。
【図11】同加工装置における外型の図であり、(a)は型開き時の平面図、(b)はその軸方向断面図、(c)は型締め時の平面図、(d)はその軸方向断面図である。
【図12】従来の防振ブッシュの軸方向断面図である。
【図13】従来の防振ブッシュの内筒の加工方法を示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
1……内筒
2……外筒
3……ゴム状弾性体
4……内筒の一側端部
6……内筒の他側端部
20……内筒の一側端面
22……加工装置
23……受け具
24……外型
25……内筒の他側端面
26……圧接具
30……中型
34……外型の開口
37……圧接面
50……加工装置
51……台
52……弾性体
56……凹部

Claims (6)

  1. 金属製の内筒と、その外方に間隔をあけて配置された外筒と、内外筒間に介設されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒は、軸方向一側端部の内径が中央部及び他側端部の内径よりも大とされ、両端部の外径が中央部の外径よりも大とされた防振ブッシュを製造する方法であって、
    軸方向一側端部の内径が中央部及び他側端部の内径よりも大とされることで該一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた内筒の外方に、ゴム状弾性体を介在させて外筒を配置し、次いで、内筒の一側端面を受け具に当接させ、その際、前記一側端部の内周側に中型を嵌合させるとともに、前記一側端部の外周側を外型で所定の隙間をあけて取り囲み、前記内筒の他側端面に圧接具を圧接することにより、他側端部よりも肉厚が薄い一側端部の外径を拡径し、一側端部の拡径完了後、圧接具の他側端面への圧接を続行することにより、他側端部の外径を拡径することを特徴とする防振ブッシュの製造方法。
  2. 軸方向一側端部の肉厚が中央部及び他側端部の肉厚よりも薄くされた金属製筒体の軸方向両端部の外径を拡径する加工方法であって、前記筒体の一側端面を受け具に当接させ、その際、前記一側端部の内周側に中型を嵌合させるとともに、前記一側端部の外周側を外型で所定の隙間をあけて取り囲み、前記筒体の他側端面に圧接具を圧接することにより、他側端部よりも肉厚が薄い一側端部の外径を拡径し、一側端部の拡径完了後、圧接具の他側端面への圧接を続行することにより、他側端部の外径を拡径することを特徴とする金属製筒体の加工方法。
  3. 請求項記載の金属製筒体の加工方法に使用する加工装置であって、前記筒体の一側端面を受ける受け具と、筒体の一側端部を取り囲む外型と、筒体の他側端面に圧接される圧接具とを備え、前記受け具は、筒体の一側端面が当接する当接面に、筒体の内周側に嵌合される中型が突設され、前記外型は、周方向において複数に分割された分割型であり、型締めした状態で筒体の一側端部を所定の隙間をあけて取り囲む開口が設けられたことを特徴とする金属製筒体の加工装置。
  4. 前記外型が二つ割りで受け具に着脱自在とされたことを特徴とする請求項記載の金属製筒体の加工装置。
  5. 前記外型が嵌合する凹部を有して該凹部内に外型とともに前記受け具が配される台と、該凹部内に設けられて受け具を弾性的に支持する弾性体とを備え、受け具と外型が互いに係合して、前記筒体の他側端面に前記圧接具を圧接することにより外型が前記弾性体の付勢力に抗して前記凹部内に嵌入されて型締めされ、前記圧接具の圧接を解除することにより外型が前記弾性体の付勢力により凹部からの離脱方向に移動して型開きされるようにしたことを特徴とする請求項記載の金属製筒体の加工装置。
  6. 前記圧接具は、円錐面の一部からなり筒体の他側端面に圧接される圧接面が形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の金属製筒体の加工装置。
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