JP3698066B2 - オフセット測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報媒体の情報層に情報信号を記録あるいは情報層に記録された情報を再生する際に、レンズが光軸よりずれたときに生じるオフセットを測定するオフセット測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年光ビームを照射することにより情報層に記録された情報を再生する情報媒体、光ビームを照射することにより所定の情報信号を情報層に記録する情報媒体が、基板厚の相違及び/または情報層の材料の相違及び/または情報層の構造の相違等多様化されているが、これらの情報媒体は記録再生装置に対して可換の円盤状情報媒体(以下、ディスクと称する)である。その中で、例えばDVD−RディスクやDVD−RAMディスクに代表される情報の記録再生が可能なディスクに情報信号を記録する、あるいは記録された情報を再生するために、または例えばDVD−ROMに代表されるディスクに予め記録された情報を再生するためには、予めディスクに備えたトラックの中心に光ビームを位置決めするトラッキング制御が必要である。
【0003】
従来提案されているトラッキング制御のブロック構成を中心として、記録再生装置を図13に示す。同図において、ディスク1の情報層101に光ビームを照射し、当該情報層101で反射した反射光を光ピックアップ2が受光し、電気信号に変換する。電気信号に変換された信号は、トラッキングエラー検出回路3に入力され、情報層101に集光した光ビームとトラック中心との位置誤差をトラッキングエラー信号として検出し、トラッキング制御回路4に出力する。トラッキング制御回路4は、情報層101に集光した光ビームが照射する位置(以下、光ビーム位置と称す)を、トラッキングエラー信号の値に基づき任意の制御目標位置に追従するように位相補償する。トラッキング制御回路4は、トラッキング駆動回路5にトラッキング駆動信号を出力し、トラッキング駆動回路5は、トラッキング駆動信号に基づいて、情報層101に集光した光ビーム位置を制御するように構成されている。
【0004】
また、トラッキングエラー信号の検出方式については多くの方式が提案および実用化されているが、記録可能なディスクのトラッキングエラー信号検出方式としてはプッシュプル方式が代表的である。
【0005】
プッシュプル方式は、ディスク上のトラックで反射回折された光を検出する光検出器を、ディスク上のトラック中心に関して対称に一対配置し、光検出器の2つの受光部で検出した反射回折光の光強度の差をトラッキングエラー信号として検出する方式である。また、プッシュプル方式では入射光の反射回折光強度を検知するため、トラックの溝深さや情報層のピット深さにも大きく依存する。すなわち、溝が形成された面(一般にランド部と称される)での反射光に比べ、溝の底(一般にグルーブ部と称される)での反射光は、溝深さの往復だけ光路長が長くなり、光路長の有無は光の位相差となって現れる。一方、受光部で検出する反射光は、光路長の有無を含めた和であり、ランド部で反射したサイン波とグルーブ部で反射したサイン波とは光路長分だけ位相差を生じる。従って、図20に示すように、例えば、溝深さがλ/4(λは入射光の波長)とすると、グルーブ部での反射光はランド部での反射光よりλ/2だけの光路長差ができ、位相に換算するとπ/2だけのずれが生じ、ランド部とグルーブ部からの反射光は互いに打ち消しあい、光強度は最低となる。また、例えば、溝深さがλ/8の場合では、光路長差はλ/4で位相差はπ/4となり、受光部で受講する反射光強度は最大となる。また、同図に示すように、λ/6まではトラッキング信号の低下が少ない。以上のことから、記録可能なディスクであるDVD−Rの溝深さはλ/8以上λ/6以下に設定される。
【0006】
しかしながら、トラッキングエラー信号をプッシュプル方式で検出する際に、例えば光ビームの光軸に対しディスクが傾くいわゆる、チルトが発生した場合、あるいは情報層に光ビームを集光する対物レンズの光軸中心と光ビームの光軸中心とにずれ(以下、レンズ光軸ずれと称す)が発生した場合に、トラッキングエラー信号にDCオフセットが重畳するという課題が発生する。レンズ光軸ずれが発生すると、光検出器の2つの受光部で検出する光強度は光軸から対物レンズが近づく方にずれた側の受光部の方が強くなり、他方の受光部は弱くなる。その結果トラッキングエラー信号にDCオフセットが重畳する。
【0007】
図21は、図13中の光ピックアップ2に内包される対物レンズ11、及びディスク上のトラックで反射回折された光を検出する光検出器の2つの受光部12の位置関係を示す。対物レンズ11が実線で示す位置から破線で示す位置にずれて、対物レンズの光軸中心位置がAからBまでずれると、ディスク上のトラックで反射回折されて2つの受光部12に入る光ビームの中心が距離dだけずれる。従って、2つの受光部12の検出領域aとbに入射する入射光量は、検出領域aのものがbのものより減少して両者間にアンバランスが発生する。プッシュプル方式は、上述したように検出領域aとbの光強度差を算出することによりトラッキングエラー信号を検出する。そのため、2つの受光部12の検出領域aとb間に光強度のアンバランスが発生すると、トラッキングエラー信号にDCオフセットが重畳する。また、記録可能なディスクであるDVD−Rのように、プッシュプル方式の検出強度が大きいとこのDCオフセット量も大きくなる。
【0008】
このようにトラッキングエラー信号にDCオフセットが重畳すると、トラッキング制御の制御目標位置をトラッキングエラー信号ゼロ、即ちトラック中心として光ビーム位置を制御したとしても、実際の光ビーム位置はトラック中心に制御されない。その結果、ディスクの情報層に情報信号を記録できない、あるいは情報層に記録された情報を再生できなくなるという課題が発生する。
【0009】
上記課題に対して、レンズ光軸ずれが発生したときに、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを補正する方式がすでに提案されている。DCオフセットを補正する機能を備えたトラッキング制御の従来構成を、図14のブロック図に示す。なお、図14において、図13に示したトラッキング制御の構成と同じ要素については同一符号を付与し、説明は省略する。
【0010】
図14に示したDCオフセットを補正できる機能を備えた従来のトラッキング制御の構成は、図13のトラッキング制御の構成に以下の機能が付加されている。光軸ずれ量推定回路6はトラッキング制御回路4の出力に基づき、レンズ光軸ずれ量を光軸ずれ量推定値として推定し、当該光軸ずれ量推定値を乗算回路7に出力する。乗算回路7は、光軸ずれ量推定値に補正ゲインを乗算して得られたDCオフセット推定量を、トラッキングエラー信号に負帰還するように構成されている。
【0011】
また、DCオフセット推定量は、第2のスイッチ回路301により、負帰還をON/OFFできるように構成されている。このことにより、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を、DCオフセット推定量で補正する機能を持たせ、任意にON/OFFすることができる。
【0012】
補正ゲインは、対物レンズを光ビームの光軸に対して直交するディスク1の半径方向(以下、ラジアル方向と称す)に移動させたとき、移動距離に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を測定し、移動距離に対するDCオフセット量の割合を算出して決定される。
【0013】
以下に、上記トラッキングエラー信号に重畳する従来のDCオフセット量の測定方法、および補正ゲイン決定方法について、図15〜図19を用いて詳細に説明する。
【0014】
図15は、図14に示した従来の記録再生装置の構成において、対物レンズがラジアル方向に移動したときに生じるトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を補正するトラッキング制御を中心としたブロック図である。
【0015】
光源8は、波長650nmの光ビームを発振する赤色半導体レーザーである。光源8から出射された波長650nmの光ビーム(以下、出射光と称す)は、コリメータレンズ9で出射光を平行光にし、ビームスプリッタ10を通り、対物レンズ11により集束してディスク1の情報層101に照射される。情報層101からの反射光は対物レンズ11を通り、ビームスプリッタ10を透過することで出射光の光路から分離し、2分割光検出器12に入射する。2分割光検出器12の出力信号は、トラッキングエラー検出回路3に入力される。なお、光ピックアップ2は、光源8、コリメータレンズ9、ビームスプリッタ10、対物レンズ11、及び2分割光検出器12の光学部品を内包している。
【0016】
また、移送台13は、システムコントローラー14からの指令により、光ピックアップ2をラジアル方向の任意の位置に移動させる機能を備える。光ピックアップ2は、移送台13によって任意のラジアル方向に移動することができ、ディスク1の情報層101に情報信号を記録する、あるいは情報を再生することができる。
【0017】
トラッキングエラー検出回路3は、プッシュプル方式でトラッキングエラー信号を検出し、オフセット減算回路15及びオフセット検出回路16に出力する。オフセット減算回路15は、トラッキングエラー信号をDCオフセット推定量で減算するように構成され、減算結果を補正トラッキングエラー信号としてトラッキング制御回路4に出力する。なお、DCオフセット推定量については後で詳述する。
【0018】
トラッキング制御回路4は、補正トラッキングエラー信号に応じ、対物レンズ11により情報層101に集光した出射光を、所望のトラック中心に位置決め制御する位相補償処理を行い、トラッキング駆動信号として第1のスイッチ回路302に出力する。
【0019】
第1のスイッチ回路302は2入力1出力で構成され、システムコントローラー14からの指令により、トラッキング駆動信号とレンズ駆動信号とのどちらかを選択し、トラッキング駆動回路5に出力するように構成されている。例えば出射光を所望のトラック中心に追従するようにトラッキング制御を閉じる場合は、第1のスイッチ回路302がトラッキング駆動信号を選択して出力し、対物レンズ11がレンズ光軸ずれを生じることによりトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を測定する場合、あるいは光ピックアップが移送台13によってディスク1の任意の半径位置に移動する場合等は、第1のスイッチ回路302がレンズシフト駆動信号を選択してトラッキング駆動回路5に出力する。なお、レンズシフト駆動回路19が出力するレンズシフト駆動信号は、補正ゲイン決定方法の説明に併せて図18および図19を用いて後述する。
【0020】
第1のスイッチ回路302はトラッキング駆動信号またはレンズ駆動信号の何れか選択した信号をトラッキング駆動回路5に出力し、トラッキング駆動回路5は第1のスイッチ回路302の出力に応じ、対物レンズ11をラジアル方向に駆動する電流をトラッキングアクチュエータ17に出力する。トラッキングアクチュエータ17は、トラッキング駆動回路5から出力された電流出力に応じ、対物レンズ11の位置を移動させる。
【0021】
次に、DCオフセット推定量について詳細に説明する。DCオフセット推定量は、対物レンズ11がレンズ光軸ずれを生じたときに、トラッキングエラー信号に重畳されるDCオフセットの推定量である。DCオフセット推定量は、以下のように求められる。まず、対物レンズ11のレンズ光軸ずれ量に起因してトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量の割合を補正ゲインとして求める。次に、対物レンズ11による光ビームの光軸からのずれ量の推定値を乗算回路7で補正ゲインに乗算する。
【0022】
また、トラッキング制御回路4は、トラッキング駆動信号の低周波成分を、トラッキング校正信号として光軸ずれ量推定回路6に出力する。光軸ずれ量推定回路6は、トラッキングアクチュエータ17、換言するとトラッキングアクチュエータ17の出力に応じて動作する対物レンズ11の変位量に等しい動特性を備えており、トラッキングアクチュエータ17による対物レンズ11の変位にほぼ等しい信号を、トラッキング校正信号入力により生成することができる。
【0023】
また、トラッキングエラー信号は、オフセット検出回路16に入力される。オフセット検出回路16は、レンズ駆動回路19の出力に応じ、対物レンズ11がラジアル方向に駆動した結果、トラッキングエラー信号に重畳されるDCオフセット量を検出する。トラッキングエラー信号に重畳されるDCオフセット量は、トラッキングエラー信号の最大値および最小値を検出し、それらの差を演算することによって検出する。オフセット検出回路16で検出したDCオフセット量は、補正ゲイン決定回路18に出力される。補正ゲイン決定回路18は、レンズ光軸ずれ量に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量の割合を補正ゲインとして決定し、乗算回路7に当該補正ゲインを出力する。
【0024】
続いて、従来のトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量の測定方法(以下、オフセット測定方法と称す)、および補正ゲイン決定回路18における補正ゲインの決定方法について説明する。
【0025】
先ず、従来のオフセット測定方法を図16および図17を用いて詳細に説明する。図16は、オフセット測定方法を示すフローチャートである。また、図17は、図16に示した各ステップにおける対物レンズの動作を示す図である。但し、図17において、ステップ1、3及び5には情報層101及びディスク1の配置は省略したが、情報層101及びディスク1と、光ピックアップ2とが対向している関係は同一である。
【0026】
従来のオフセット測定方法は、図16に示すように、ラジアル方向の任意の位置で移送台13を固定したまま、入力されたレンズ駆動信号に基づきトラッキング駆動回路5がトラッキングアクチュエータ17に作用し、対物レンズ11を一方のラジアル方向(例えば、ディスク1の外周方向)に、移送台13における対物レンズ11の初期位置(以下、単に初期位置とも称す)から所定距離X1だけ移動する<ステップ1>。
【0027】
次に、移送台13はそのままの状態で、<ステップ1>と同様の信号系統により対物レンズ11を他方のラジアル方向(上述の例ではディスク1の内周方向)に中立位置から所定距離X1だけ移動する<ステップ3>。なお、<ステップ1>における移動方向を正とすると、<ステップ3>では対物レンズ11の中立位置からの移動距離は(−X1)、すなわち<ステップ1>での対物レンズ11の位置からの移動距離は(−2X1)となる。
【0028】
次に、対物レンズ11を<ステップ1>を実行する以前の初期位置に移動する<ステップ5>。
【0029】
以上の3ステップの対物レンズの動作を図17に示す。図17から明らかなように、DCオフセットを測定する2地点は、<ステップ1>を実行する以前の初期位置に関して対称な点となる。
【0030】
図16及び図17で示したオフセット測定方法を用いた補正ゲイン決定方法を、図18及び図19を引用して説明する。図18は、従来の補正ゲイン決定方法のフローチャートであり、図19は、図15にブロックで示した各構成要素の出力信号の時間的推移を示した図であり、(a)はレンズシフト駆動回路19が出力するレンズシフト駆動信号、(b)はレンズシフト駆動信号による光ビームの光軸に対して直交するディスク1のラジアル方向における対物レンズの位置、(c)はトラッキングエラー信号である。
【0031】
オフセット測定を行う際の前提条件として、出射光がディスク1の情報層101に位置決めされ、2分割光検出器12は情報層101からの反射光を検出できる状態であるものとする。また、第1のスイッチ回路302は、レンズシフト駆動回路19側を選択し、レンズシフト駆動信号をトラッキング駆動回路5に出力する状態であるものとする。
【0032】
最初に、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図19(a)に示すように、対物レンズ11をディスク1の一方のラジアル方向(例えば、外周向き)に一定速度a1で距離X1だけ移動するように、第1のスイッチ回路302を介して、トラッキング駆動回路5にレンズ駆動信号を出力する。トラッキング駆動回路5はトラッキングアクチュエータ17に駆動電流を出力する。トラッキングアクチュエータ17は、トラッキング駆動回路5から出力される駆動電流に応じて、図19(b)に示すようにディスク1の一方のラジアル方向(本例では外周向き)に、速度a1で距離X1だけ対物レンズ11を移動させる<ステップ1>。
【0033】
対物レンズ11がラジアル方向(本例では外周向き)に距離X1だけ移動した後のトラッキングエラー信号は、図19(c)に示すようにO1のDCオフセットが重畳する。オフセット検出回路16は、トラッキングエラー信号の最大値と最小値とを検出し、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット量O1を検出する<ステップ2>。
【0034】
次に、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図19(a)に示すように対物レンズ11をディスク1の他方のラジアル方向(本例では内周向き)に一定速度a1で、<ステップ1>におけるシフト方向を正とすると対物レンズ11の移送台13に対する中立位置から距離(−X1)だけ移動するように、第1のスイッチ回路302を介してトラッキング駆動回路5にレンズ駆動信号を出力する。トラッキング駆動回路5はトラッキングアクチュエータ17に駆動電流を出力する。トラッキングアクチュエータ17はトラッキング駆動回路5から出力される駆動電流に応じて、図19(b)に示すようにディスク1の他方のラジアル方向(本例では内周向き)に、速度a1で中立位置から距離(−X1)だけ対物レンズ11を移動させる<ステップ3>。
【0035】
対物レンズ11がラジアル方向(本例では内周向き)に中立位置から距離(−X1)だけ移動した後のトラッキングエラー信号は、図19(c)に示すように<ステップ2>でオフセット検出回路16が検出したDCオフセット量O1と逆極性のDCオフセットが重畳する。オフセット検出回路16は、トラッキングエラー信号の最大値と最小値とを検出し、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット量(−O2)を検出する。<ステップ4>。
【0036】
続いて、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図19(a)に示すように対物レンズ11を一定速度a1で<ステップ1>を実行する以前の初期位置に移動するように、第1のスイッチ回路302を介してレンズ駆動信号をトラッキング駆動回路5に出力する。トラッキング駆動回路5はトラッキングアクチュエータ17に駆動電流を出力(一般的には駆動電流を切断)し、図19(b)に示すように対物レンズ11を<ステップ1>実行前の初期位置に移動させる<ステップ5>。
【0037】
そして補正ゲイン決定回路18は、<ステップ2>および<ステップ4>で検出したDCオフセット量O1および(−O2)と、<ステップ1>および<ステップ3>で対物レンズ11を初期位置に対して移動させた所望の距離X1および(−X1)より
(補正ゲイン)={O1−(−O2)}/{X1−(−X1)} (1)
の演算を行って補正ゲインを決定する<ステップ6>。
【0038】
上記オフセット測定、および上記(1)式で得られた補正ゲインを決定した後に、システムコントローラー14からの指令により、任意のタイミングで第1のスイッチ回路302はトラッキング制御回路4出力を選択して、トラッキング駆動回路5に出力する。その結果として、光ビーム照射位置は、トラックの中心近傍に位置決め制御される。
【0039】
続いて、システムコントローラー14からの指令により、第2のスイッチ回路301を閉じ、DCオフセット推定量をオフセット減算回路15に入力する。オフセット減算回路15は、トラッキングエラー信号をDCオフセット推定量で減算することによって、補正トラッキングエラー信号をトラッキング制御回路4に出力する。その結果として、トラッキング制御の制御目標値は、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット量が減算補正された値となるため、対物レンズ11によって集光された出射光はディスク1のトラック中心に位置決め制御される。
【0040】
また、対物レンズ11が何らかの原因によってレンズ光軸ずれが発生した場合においても、第2のスイッチ301が閉じている限り、対物レンズ11により集光された出射光とトラック中心との位置ずれはゼロにすることができる。したがって、安定に情報層101に情報を記録あるいは再生することができる。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のオフセット測定方法では、図17に示したように補正ゲイン決定の元となるオフセット測定が、情報層101の相異なる2地点での光学的特性(具体的には、反射または透過特性)に基づくため、対物レンズ11を光軸の中心から移動させて、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを精度良く測定できないケースがある。例えば、ディスク1にゴミ、埃が付着した場合が挙げられる。図16および図18における<ステップ1>あるいは<ステップ3>で、対物レンズ11を光ビームの光軸の中心から移動させたときに、出射光が集光されレンズ光軸ずれに起因するDCオフセット量を測定する場合に、対物レンズ11が位置する相異なる2地点の何れか一方の情報層101にゴミ、埃または回復不可能な欠陥(以下、欠陥と称す)が存在すると、当該情報層101からの反射光が、レンズ光軸ずれ以外の影響によって変動する。その結果、<ステップ2>あるいは<ステップ4>で測定するトラッキングエラー信号に、レンズ光軸ずれの要因によるDCオフセット量以外の信号が重畳し、精度良くDCオフセットが測定できないという課題を有していた。
【0042】
また、記録再生装置が単一の装置で、複数種類のディスクに情報を記録あるいは再生する場合に、ディスクの情報を再生しなければオフセット測定を実行する領域を決定することができない、また、レンズ光軸ずれによりトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットの補正を実行すべき領域を決定することができないという課題も有していた。
【0043】
本発明は上記課題を鑑み、対物レンズの光軸ずれによるトラッキングエラー信号に重畳したDCオフセットを精度よく測定する方法、および上記DCオフセットを測定する領域を決定する方法、及び上記DCオフセットの補正を実行すべき領域を決定する方法を提供することを目的とする。
【0044】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のオフセット測定方法は、情報媒体の情報層に離隔対向し、光源から出射した光ビームを前記情報層に集光するレンズと、前記情報層に集光した前記光ビームを受け電気信号に変換する受光部と、前記レンズを前記情報媒体のラジアル方向に駆動する駆動部と、前記ラジアル方向に前記レンズ及び前記駆動部を移送する移送部とを備え、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の一方向に第1の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより第1のオフセット量を前記受光部で検知し、前記移送部で前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した同一方向に、第2の距離だけ前記レンズの光軸中心を移送し、前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した方向の逆方向に、前記第1のオフセット量を検知した前記情報層の位置に相当する第3の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより前記受光部で第2のオフセット量を検知する構成、
または、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の一方向に第1の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより第1のオフセット量を前記受光部で検知し、前記移送部で前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した方向の逆方向に、第2の距離だけ前記レンズの光軸中心を移送し、前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した同一方向に、前記第1のオフセット量を検知した前記情報層の位置に相当する第3の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより前記受光部で第2のオフセット量を検知する構成の何れかを備える。
【0045】
また、上記オフセット測定方法における第1の距離及び第3の距離それぞれが、前記レンズの光軸中心の前記移送部における中立位置から計測した距離の構成を備える。
【0046】
また、上記何れかのオフセット測定方法における第2の距離が、前記第1の距離と前記第3の距離との和に等しい構成を備える。
【0047】
また、上記何れかのオフセット測定方法における情報媒体に、前記レンズを追従させるトラックを具備し、前記光ビームの波長をλとすると、前記受光部で前記オフセット量を検知する前記トラックの深さが、λ/8以上λ/6以下の構成を備える。
【0048】
また、上記何れかのオフセット測定方法における受光部の出力信号を処理する処理部を2種類備え、前記2種類の処理部を切り換える切換部により、前記受光部で検知するオフセット量を測定したトラック領域を判別する構成を備える。
【0049】
また、上記何れかのオフセット測定方法における情報層が、情報信号を記録できる構成を備える。
【0050】
また、上記何れかのオフセット測定方法における第1のオフセット量及び第2のオフセット量を用い、前記情報層の任意の位置における前記レンズを前記駆動部で駆動した際のオフセット量を検知する構成を備える。
【0051】
また、上記何れかのオフセット測定方法における第1の距離及び/または第3の距離が、前記駆動部により前記レンズの光軸中心を駆動できる限界の距離である構成を備える。
【0052】
また、本発明の補正ゲイン決定方法は、上記何れかのオフセット測定方法で得られた前記第1のオフセット量及び前記第2のオフセット量の差と、前記第1の距離及び前記第3の距離の関係から補正ゲイン決定部で、前記情報層の任意の位置における前記駆動部での前記レンズのオフセット補正量を決定する構成を備える。
【0053】
また、本発明の領域判別方法は、上記補正ゲイン決定方法によって得られた前記オフセット補正量により、前記光ビームを照射している前記情報層の領域を領域判別部で判別する構成を備える。
【0054】
また、本発明の記録再生装置は、上記何れかのオフセット測定方法でオフセット量を測定するオフセット測定手段を備える構成を有する。
【0055】
【発明の実施の形態】
請求項1及び2に記載のオフセット測定方法は、駆動部でレンズの光軸中心を駆動する第1の距離及び第3の距離と、移送部でレンズの光軸中心を移送する第2の距離を制御することで、情報層の第1のオフセット量測定位置と第2のオフセット量測定位置とを同一にする構成を備えるため、従来技術の情報層の異なる箇所における光ビームの反射光に基づくオフセット量測定に比べると測定したオフセット量の信頼性が飛躍的に向上することができる効果がある。
【0056】
請求項3記載のオフセット測定方法は、第1の距離及び第2の距離が移送部におけるレンズの初期位置から計測した距離の構成を備えるため、レンズの光軸中心を駆動する駆動部の制御及びレンズの光軸中心を移送する移送部の制御のシーケンスが簡略化できると共に、制御の高精度化が達成でき、安定したオフセット量を測定できる効果がある。
【0057】
請求項4記載のオフセット測定方法は、第2の距離が第1の距離と第3の距離との和である構成を備えるため、第1のオフセット量の測定にレンズの光軸中心を駆動する方向と、第2のオフセット量の測定にレンズの光軸中心を駆動する方向とが逆方向になり、駆動部の駆動方向の駆動特性も含んだオフセット量が測定でき、より正確なオフセット測定ができる効果がある。
【0058】
なお、上述の第1の距離と第3の距離とを同一とすると、駆動部による駆動制御が簡略化できるため好ましい。
【0059】
請求項5記載のオフセット測定方法は、深さがλ/8以上λ/6以下の範囲のトラックのオフセット量を受光部で検知する構成を備えるため、光ビームを照射することにより情報信号の授受を行う情報層の特性を光学的に検知でき、以て情報層に見合った最適な記録・再生を可能となすとともに、トラック深さを検知することで情報信号の授受を行う情報層の領域の種類または情報媒体の種類を判別することができる効果がある。
【0060】
請求項6記載のオフセット測定方法は、オフセット量を測定する情報層に情報信号を記録できる記録型であるため、オフセット量を光学的に検知した光学系を用いて当該情報層に対して最適状態で情報信号の記録ができる効果がある。
【0061】
請求項7記載のオフセット測定方法は、受光部の出力信号を処理する処理部を2種類備えるため、情報層に合致した処理部を選択できることでオフセット量の測定精度を向上できるとともに、合致していない処理部を選択することにより情報層の種類を判別できる効果がある。
【0062】
請求項8記載のオフセット測定方法は、第1及び第2のオフセット量を用い任意の情報層の位置で検知する構成を備えるため、情報層に適合した条件で光ビームの授受を行え、記録・再生する情報層の位置に最適な光ビームを照射することができる。
【0063】
請求項9記載のオフセット測定方法は、第1の距離及び/または第3の距離をレンズを駆動部により駆動できる限界の距離に設定するため、距離を画一化できるため望ましい。
【0064】
請求項10記載の補正ゲイン決定方法は、情報層の同一箇所で計測した第1及び第2のオフセット量の差と、第1の距離及び第3の距離相互の関係とからオフセット補正量を決定するため、オフセット補正量の精度を向上でき、安定した記録・再生動作が確保できる効果がある。
【0065】
請求項11記載の領域判別方法は、上記オフセット補正量に基づき光ビームが照射する情報層の領域を判別するため、情報層に適応したオフセット補正が達成でき、受光部で検知する信号の誤りを抑制することができる。
【0066】
請求項12記載の記録再生装置は、上記何れかに記載のオフセット測定方法を実施する手段を備えるため、最適なオフセット補正が実現できる記録再生装置を提供できるという効果がある。
【0067】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
図1は、本発明の一実施例におけるオフセット測定方法のフローチャートであり、図2は、同フローチャートの要部における光ピックアップ2の動作を説明する原理図である。
【0069】
本実施例のオフセット測定方法は、情報層101の任意の位置において、光ピックアップ2を一方のラジアル方向(例えば、外周方向)に移送台13における光ピックアップ2(すなわち、対物レンズ11)の初期位置から所定距離X1だけ移動(以下、移送台13の光ピックアップ2載置主面に対し略平行に対物レンズを移動することをシフトまたはレンズシフトと称す)させることにより、対物レンズ11を移送台13上でシフトする<ステップ1>。
【0070】
対物レンズ11を所定距離X1だけシフトした状態で、DCオフセット量O1を測定する<ステップ2>。
【0071】
光ピックアップ2を載置し、当該光ピックアップ2をラジアル方向に自由に移動する移送台13をラジアル方向(図2ではX1と同方向の外周方向)に所定距離Y1だけ移動する<ステップ3>。
【0072】
所定距離Y1だけ移送台13を移動した状態で、ラジアル方向(図2ではX1と逆方向の内周方向)に所定距離X2、方向を加味すると距離(−X2)だけ対物レンズ11をシフトさせる<ステップ4>。
【0073】
移送台13を距離Y1だけラジアル方向に移動し、かつ対物レンズ11を距離(−X2)だけシフトさせた状態で、DCオフセット量O2を測定する<ステップ5>。
【0074】
対物レンズ11を移送台13の中立位置(図2では方向を加味して(−X1+X2)の距離だけ移送台13上をシフト)に戻し(通常は、トラッキングアクチュエータに出力する駆動電流を遮断する)<ステップ6>、方向を加味して移動距離(−Y1)だけ移送台13を移動<ステップ7>し、移送台13及び光ピックアップ2(すなわち、対物レンズ11)を情報層101のオフセット量測定開始前の初期位置に戻す。
【0075】
なお、図2では、<ステップ1>の対物レンズ11のシフト方向と<ステップ3>の移送台13の移動方向とが同方向で、<ステップ4>の対物レンズ11のシフト方向だけが逆方向の例を示したが、本発明のオフセット測定方法における対物レンズ11のシフト方向と移送台13の移動方向とは図2に限定されるものではなく、例えば図3または図4に示した方向であっても適用できる。
【0076】
図3は、オフセット測定方法におけるレンズシフト及び移送台の移動方向の別の例を示した原理図である。なお、図3に示したオフセット測定方法のフローチャートは、基本的に図1と同じであるため、図1のフローのステップを流用して説明する。
【0077】
図3に示したオフセット測定方法は、情報層101の任意の位置において、光ピックアップ2を一方のラジアル方向(例えば、外周方向)に所定距離X1だけシフトさせることにより、対物レンズ11を移送台13上でシフトする<ステップ1>。
【0078】
光ピックアップ2を載置し、当該光ピックアップ2をラジアル方向に自由に移動する移送台13をラジアル方向(図3ではX1と逆方向の内周方向)に所定距離Y1、方向を加味すると(−Y1)だけ移動する<ステップ3>。
【0079】
所定距離(−Y1)だけ移送台13を移動した状態で、ラジアル方向(図3ではX1と同方向の外周方向)に所定距離X2だけ対物レンズ11をシフトさせる<ステップ4>。
【0080】
対物レンズ11を、移送台13の中立位置(図3では方向を加味して(−X1−X2)の距離だけ移送台13上をシフト)に戻し<ステップ6>(図示は省略)、距離Y1だけ移送台13を移動<ステップ7>し、移送台13及び光ピックアップ2(すなわち、対物レンズ11)をオフセット量測定開始前の初期位置に戻す。
【0081】
以上の図3に示した<ステップ1>と<ステップ4>との対物レンズ11のシフト方向は同方向であり、<ステップ3>における移送台13の移動方向はレンズシフト方向と逆の場合で、図2に示した<ステップ3>の移動方向と<ステップ4>のシフト方向とは逆である。
【0082】
図4は、オフセット測定方法におけるレンズシフト及び移送台の移動方向の別の例を示した原理図である。なお、図4に示したオフセット測定方法のフローチャートは、図3と同様に基本的に図1と同じであるため、図1のフローのステップを流用して説明する。
【0083】
図4に示したオフセット測定方法は、情報層101の任意の位置において、光ピックアップ2を一方のラジアル方向(例えば、外周方向)に、光ピックアップ2の移送台13に対する初期位置から所定距離X1だけシフトさせることにより、対物レンズ11を移送台13上でシフトする<ステップ1>。
【0084】
光ピックアップ2を載置し、当該光ピックアップ2をラジアル方向に自由に移動する移送台13をラジアル方向(図4ではX1と同方向の外周方向)に所定距離Y1だけ移動する<ステップ3>。
【0085】
所定距離Y1だけ移送台13を移動した状態で、ラジアル方向(図4ではX1と逆方向の内周方向)に移送台13の中立位置を基準にして所定距離X2(方向を加味して距離(−X2))だけ対物レンズ11をシフトさせる<ステップ4>。
【0086】
対物レンズ11を移送台13の中立位置(図4では距離X2だけ移送台13上をシフト)に戻し<ステップ6>、方向を加味して移動距離(−Y1)だけ移送台13を移動<ステップ7>し、移送台13及び光ピックアップ2(すなわち、対物レンズ11)をオフセット量測定開始前の初期位置に戻す。
【0087】
図4の構成と図2の構成とはレンズシフト方向及び移動方向は同一であるが、<ステップ3>の移送台13の移動距離が異なる。すなわち、<ステップ1>でのレンズシフト距離X1と、<ステップ3>での移動距離Y1との関係が、図2ではX1>Y1であるのに対し、図4ではX1<Y1である。図4ではX1<Y1の関係であるがため、<ステップ1>における光ピックアップ2のシフト方向と、<ステップ4>における光ピックアップ2のシフト方向は、移送台13の中立位置を基準にして反対向きとなる。その結果、図2ではレンズシフト方向は一つの方向のみの構成であるのに対し、図4ではレンズシフト方向は双方向の構成となり、DCオフセット量を測定すると同時にレンズシフト特性も合わせて測定することができるため、測定したDCオフセット量は図2の構成よりも図4の構成の方がより総合的な特性を加味することができ好ましい。
【0088】
なお、図4に示した移送台13に対する光ピックアップ2(対物レンズ11と同意)のシフト距離X1及びX2とも、光ピックアップ2の移送台13上の中立位置を基準として計測しているため、シフト距離の制御が図2及び図3に示した構成より簡略化できるため好ましい。
【0089】
また、図4の<ステップ1>のシフト量X1と<ステップ4>のシフト量X2とは異なる場合を説明したが、X1とX2とを等しくする構成を採用すると、シフト量が光ピックアップ2の移送台13に対する中立位置に関して対称となるため、測定したDCオフセット量に加味されるレンズシフト特性に対する信頼性をさらに向上することができるため好ましい。
【0090】
なお、図5は、図4に示した構成とほぼ同一であるが、図5の<ステップ4>におけるレンズシフト距離を、対物レンズ11のシフト限界位置に設定した構成だけが相違する。図5に示した構成では、オフセット測定の過程で、少なくとも<ステップ4>におけるレンズシフト位置を制御する必要性がないため、制御系の構成が簡略化できる効果がある。このシフト限界位置に設定する構成は、例えば図2における<ステップ1>のシフト位置、図3における<ステップ4>のシフト位置、及び図4(図5も同じ)における<ステップ1>または<ステップ4>のシフト位置に適用することができること当然である。さらに、図4(図5も同じ)の<ステップ1>と<ステップ4>とのレンズシフト距離をシフト限界位置に設定すると、測定したDCオフセット量の信頼性をより向上させながら、制御も簡略化できる構成が実現でき好ましい。
【0091】
以上、本発明のオフセット測定方法は、従来技術と同様に任意の位置で対物レンズ11をラジアル方向にシフトさせる構成に、移送台13もラジアル方向に移動させる構成を付加したため、レンズシフト距離X1及びX2と、移送台の移送距離Y1とを設定することで、情報層101の同一場所でのDCオフセット量を測定することができ、DCオフセット量測定対象が離隔した2つの測定位置の場合に、一方の測定位置の情報層101に存在する欠陥によってDCオフセット量の測定精度が著しく損なわれる課題を、DCオフセット測定対象の情報層の位置を同一に成し得る構成とすることで解消できる効果がある。また、オフセット測定の信頼性も向上できる効果も奏する。さらに、対物レンズ11のレンズシフト方向及び距離と、移送台13の移動方向及び距離とを最適に設定(例えば、Y1=X1+X2等のようにレンズシフト方向が移送台13の対物レンズ11の中立位置を跨ぐ)することにより、測定したDCオフセット量にレンズシフトの影響も加味することができ、オフセット測定の信頼性が向上できる。
【0092】
なお、本発明のオフセット測定方法は、情報層101の完全に同一位置で測定することが最も好ましいが、DCオフセット量測定位置は完全同一でなくても、<ステップ1>の測定位置近傍で<ステップ4>での測定を行う構成とし、DCオフセット量測定位置が2つ存在する場合であっても、当該測定位置の相互の距離は従来技術に比べると遥かに近接した位置で行えるため、測定精度及び信頼性は従来技術よりも格段に凌ぐこと当然である。
【0093】
また、上述の実施例では何れも対物レンズ11が移送台13の光ピックアップ2の載置主面に略平行にラジアル方向に移動する場合について説明したが、本発明のオフセット測定方法は、DCオフセット量を測定する情報層101の2つの測定位置をできるだけ近接することに技術思想があるため、対物レンズ11の移動はシフトに限るものではなく、移送台13の光ピックアップ2の載置主面に対し、対物レンズ11の光軸中心をラジアル方向に傾かせることによるDCオフセット量の測定であっても適用できること勿論である。
【0094】
(実施例2)
次に、本発明の別の実施例について、図4、図6、図7及び図15を参照しながら説明する。なお、本実施例における対物レンズがラジアル方向にシフトしたときに、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを補正する記録再生装置の構成は、基本的には従来技術で説明した図15と同様である。
【0095】
上述したように、対物レンズ11がラジアル方向にシフトまたは所定角度の傾きを有した(以下、総じてシフトと称す)ときに、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット推定量は、レンズ光軸ずれ量(対物レンズ11の光ビームの光軸からのずれ量)に対し、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量の割合として定義する補正ゲインに、対物レンズ11の光ビームの光軸からのずれ量推定値を乗算して推定される。
【0096】
この補正ゲインは、対物レンズ11をラジアル方向における外周向きの所定位置または内周向きの所定位置の何れか一方に一定距離の2測定位置だけシフトさせ、それぞれの測定位置において測定したトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を、レンズシフト量(傾きの場合は傾き角度)で除して決定される。
【0097】
図6は、本実施例におけるトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量測定方法、及び当該DCオフセット量の値を用いた補正ゲイン決定方法のフローチャートであり、対物レンズ11(すなわち光ピックアップ2)のシフトと、移送台13の移動とについては、図4の動作を前提とする。
【0098】
図7は、図15にブロックで示した各構成要素の出力信号の時間的推移を示した図であり、(a)はレンズシフト駆動回路19が出力するレンズシフト駆動信号、(b)はレンズシフト駆動信号による光ビームの光軸に対して直交するディスク1のラジアル方向における対物レンズの位置、(c)はトラッキングエラー信号である。
【0099】
DCオフセット量を測定するときの前提条件として、出射光がディスク1の情報層101に位置決めされ、2分割光検出器12は情報層101からの反射光を検出できる状態であり、第1のスイッチ回路302は、レンズシフト駆動信号の出力を選択し、レンズシフト駆動信号をトラッキング駆動回路5に出力するものであることは、従来技術と同様である。
【0100】
最初に、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図7(a)に示すように、対物レンズ11を一方のラジアル方向(例えば外周向き)に一定速度a1で初期位置から所定距離X1だけシフトするように、第1のスイッチ回路302を介して、トラッキング駆動回路5にレンズシフト駆動信号を出力し、トラッキング駆動回路5はトラッキングアクチュエータ17に駆動電流を出力する。トラッキングアクチュエータ17は、トラッキング駆動回路5から出力される駆動電流に応じて、図7(b)に示すようにディスク1の一方のラジアル方向(本例では外周向き)に、速度a1で初期位置から距離X1だけ対物レンズ11をシフトさせる<ステップ1>。
【0101】
対物レンズ11がラジアル方向(本例では外周向き)に初期位置から距離X1だけシフトした後のトラッキングエラー信号は、図7(c)に示すようにO1のDCオフセットが重畳する。オフセット検出回路16は、トラッキングエラー信号の最大値と最小値とを検出し、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット量O1を検出する<ステップ2−1>。
【0102】
次に、対物レンズ11のラジアル方向(本例では外周向き)のシフト距離X1と、このときオフセット検出回路16で検出されたDCオフセット量O1とをシステムコントローラー14内のメモリで構成される記憶回路である補正ゲイン決定回路18に記憶する<ステップ2−2>。
【0103】
次に、システムコントローラー14は、移送台13をラジアル方向に一定速度a2で所定距離Y1だけ移動(本例では外周向き)させるように、移送台13に備える不図示の移送台駆動部に駆動電流を出力する。移送台13は、図4に示すようにシステムコントローラー14から出力される駆動電流により移送台13をディスク1のラジアル方向(図4では<ステップ1>と同方向)に一定速度a2で距離Y1だけ移動する<ステップ3>。
【0104】
次に、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図7(a)に示すように対物レンズ11を、ディスク1のラジアル方向(図4では<ステップ1>と逆方向)に一定速度a1で中立位置から所定距離X2、方向を加味すると(−X2)だけシフトするように、第1のスイッチ回路302を介してトラッキング駆動回路5にレンズ駆動信号を出力し、トラッキング駆動回路5はトラッキングアクチュエータ17に駆動電流を出力する。トラッキングアクチュエータ17は、トラッキング駆動回路5から出力される駆動電流に応じて、図7(b)に示すようにディスク1のラジアル方向(図4では<ステップ1>と逆方向)に一定速度a1で中立位置から所定距離X2、方向を加味すると(−X2)だけ対物レンズ11をシフトさせる<ステップ4>。
【0105】
対物レンズ11が、ラジアル方向(図4では<ステップ1>と逆方向)に中立位置から距離(−X2)だけシフトした後のトラッキングエラー信号は、図7(c)に示すように<ステップ2−1>でオフセット検出回路16が検出したDCオフセット量O1と逆極性のDCオフセットが重畳する。オフセット検出回路16は、トラッキングエラー信号の最大値と最小値とを検出し、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット量(−O2)を検出する<ステップ5−1>。
【0106】
次に、対物レンズ11のラジアル方向における中立位置からのシフト距離(−X2)と、このときオフセット検出回路16で検出されたDCオフセット量(−O2)とを、システムコントローラー14内のメモリで構成される記憶回路である補正ゲイン決定回路18に記憶する<ステップ5−2>。
【0107】
続いて、レンズシフト駆動回路19は、システムコントローラー14からの指令により、図7(a)に示すように対物レンズ11を一定速度a1で中立位置に移動するように、第1のスイッチ回路302を介してレンズ駆動信号をトラッキング駆動回路5に出力(一般的には駆動電流を切断)し、図7(b)に示すように対物レンズ11を中立位置に戻し<ステップ6>、方向を加味して移動距離(−Y1)だけ移送台13を移動<ステップ7>し、移送台13及び光ピックアップ2(すなわち、対物レンズ11)を情報層101のオフセット量測定開始前の初期位置に戻す。
【0108】
補正ゲイン決定回路18は、<ステップ2−2>で記憶した対物レンズ11のシフト距離X1、DCオフセット量O1、<ステップ5−2>で記憶した対物レンズ11のシフト距離(−X2)及びDCオフセット量(−O2)の各値から、
(補正ゲイン)={O1−(−O2)}/{X1−(−X2)} (2)
の演算を行い、補正ゲインを決定する<ステップ7>。
【0109】
なお、本実施例における対物レンズ11のシフト距離及びシフト方向と、移送台13の移動距離及び移動方向との関係、すなわち移送台13の光ピックアップ2の初期位置を跨って対物レンズ11がシフトする場合には、上述の式(2)の関係が適用できるが、実施例1で述べたように本発明のオフセット測定方法は、初期位置を跨って対物レンズ11がシフトしない場合もある。例えば、図2及び図3のように、オフセット量を測定するためにレンズシフトした位置がともに初期位置に関して同一方向である場合には、シフト距離の大きい方からシフト距離の小さい方を減じた距離となる。また、DCオフセット量O1及びO2も同様であり、初期位置を跨らない場合にはともに同符号になるため、やはりDCオフセット量の大きい方からDCオフセット量の小さい方を減じた量となる。
【0110】
ここで対物レンズ11のラジアル方向シフト距離X1と(−X2)、及び移送台13のラジアル方向移動距離Y1の関係が
Y1=X1+X2 (3)
を満たすとき、上記DCオフセット測定において情報層101上の同一位置でDCオフセット量を測定することができる。
【0111】
そのため、DCオフセット量を測定する2つの測定位置の何れかに欠陥が存在することにより出射光の反射特性が変動するというレンズ光軸ずれ以外にDCオフセット量測定に際し影響を与える要因を抑制でき、以てDCオフセット量の測定精度及び測定信頼性を損ねる従来の課題を克服でき、精度の高いオフセット測定が可能となる。
【0112】
すなわち、本発明のオフセット測定方法は、対物レンズをラジアル方向の2測定位置に移動させ、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量をそれぞれの測定位置において測定する際に、対物レンズを単にラジアル方向にシフトさせるだけでなく、対物レンズを具備する光ピックアップを載置する移送台もラジアル方向に移動させることにより、ディスク1の情報層上のほぼ同一位置でDCオフセットを測定することができるため、上述の格別の効果を奏する。
【0113】
(実施例3)
以下、本発明の他の実施例について図8〜図10を参照しながら説明する。なお、実施例1と同じ構成、機能を有する構成には同じ番号を付与して、その説明は省略する。
【0114】
図8は、本発明のDCオフセット測定方法の機能を備えることにより、DCオフセット量を補正できる記録再生装置の構成を示したブロック図であり、上述の図15に示した構成に領域判別ブロック20が追加されている。
【0115】
図8に示すように、領域判別ブロック20は、基準電圧源21、比較器22及び領域判別回路23を含む。基準電圧源21はシステムコントローラー14からの指令により、基準電圧をVref1もしくはVref2に切り替えることができる。また、領域検出回路23は、抵抗RおよびコンデンサーCを含む。
【0116】
また、情報層101からの反射光は光ピックアップ2で電気信号に変換され、変換された電気信号はトラッキングエラー検出回路3に入力されるが、トラッキングエラー検出回路3は、システムコントローラー14からの指令によりトラッキングエラー信号検出方式を切り換えてトラッキングエラー信号を検出できる機能を備える。トラッキングエラー検出回路3が備えるトラッキング信号検出方式として、例えばプッシュプル方式と、位相差方式とがある。位相差検出方式については後で説明する。本実施例では、トラッキングエラー検出回路3のトラッキングエラー検出方式を切り換えて、各方式により検出されるトラッキングエラー信号の振幅に基づいてDCオフセット量を測定する領域を特定するとともに、特定した領域で最適なDCオフセット量を測定する。
【0117】
ここで位相差方式によるトラッキングエラー検出について説明する。位相差検出方式は、光ビームの集束点がトラック上を通過すると、ディスクからの反射光の強度パターンが時間的に変化する現象を利用し、トラッキングエラー信号を検出する方法である。
【0118】
具体的には、光ビームの集束点がピットの中心、すなわちトラックの中心を通過するときの4分割光検出器の各出力は、左右に対称的にパターンが変化する。また、光ビームの集束点がトラックの右側を通過するときは反時計方向に回転するように変化し、トラックの左側を通過するときは時計方向に回転するようにパターンが変化する。このパターンの回転変化は、光ビームの集束点がトラックの中心からずれるに従って鮮明になる。
【0119】
位相差検出方式によるトラッキングエラー信号検出は、この4分割光検出器の対角和から得られる2つの信号の位相を比較して、位相の進み量あるいは遅れ量から光ビームの集束点とトラックとの位置ずれを検出する。従って、情報層にピットが記録されていない場合は、トラッキングエラー信号を検出することができない。
【0120】
ところで、一般的にDVD−RAM、DVD−R/W及びCD−R/W等の書換可能ディスク、及びCD−R及びDVD−R等の書換不可能な追記型ディスクのように、いわゆる記録型ディスクには溝状のトラックが設けられているが、CD−ROM及びDVD−ROM等の記録不可能な再生専用ディスクには、トラックが設けられず平面状の情報層にピットとして情報が記録されている。また、追記型ディスクへの記録は、情報層の形状を変化させた記録、いわゆるピット記録が施されるのに対し、書換可能型ディスクでは情報層を構成する元素の配列を変化させた記録、いわゆる記録マークが施される。
【0121】
そこで、記録再生装置が書換可能型ディスク、あるいは追記型ディスクを用いて、記録あるいは再生動作を行う際に、記録可能領域のトラッキングエラー信号検出はプッシュプル方式で検出し、追記型ディスクにピットが形成された領域は既に情報層にピットが記録されている領域であるためトラッキングエラー信号検出をプッシュプル方式ではなく位相差方式で行えばよい。
【0122】
溝状のトラックが設けられている記録型ディスク、あるいは再生専用ディスクにおける平面状の情報層に、ある深さのピットが記録されている領域Bに光ビームを照射し、トラッキングエラー検出回路3のトラッキングエラー検出方式を、システムコントローラー14の指令により、プッシュプル方式を選択した場合のトラッキングエラー信号は図9(a)の領域Bのように鋸歯状の信号となる。
【0123】
ただし、トラッキングエラー検出回路3で検出するトラッキングエラー信号振幅は、ディスクの反射率あるいは/及び溝構造、ピット構造により異なる。
【0124】
また、光ビームが再生専用ディスクにおける平面状の情報層にピットが記録されていない領域に照射された場合のトラッキングエラー信号は、図9(a)の領域Aのように0レベルとなる。なお、領域Aのトラッキングエラー信号レベルと領域Bのトラッキングエラー信号振幅レベルとの間に予め設定した基準電圧Vref1が、システムコントローラー14の制御により、基準電圧源21から出力される。
【0125】
次に、トラッキングエラー検出回路3のトラッキングエラー検出方式として、システムコントローラー14の指令により位相差方式を選択する。位相差検出方式は前述したように情報層の形状変化(ピット)を検出する方式であるため、溝状のトラックが設けられている記録型ディスクにおいて、トラック上にマークあるいはピットが記録されていない領域、トラック上に記録マークが形成されている領域、あるいは再生専用ディスクにおける平面状の情報層でピットが記録されていない領域の何れかに光ビームを照射した場合のトラッキングエラー信号は、図10(a)の領域Cに示すように0レベルとなる。また、溝状のトラックが設けられている記録型ディスクにおいて、トラック上にマークあるいはピットが記録されている領域、あるいは再生専用ディスクにおける平面状の情報層にピットが記録されている領域に光ビームを照射した場合、図10(a)の領域Dに示すように鋸歯状のトラッキングエラー信号が得られる。
【0126】
なお、領域Cのトラッキングエラー信号レベルと、領域Dのトラッキングエラー信号振幅レベルとの間に、予め設定した基準電圧Vref2がシステムコントローラー14の制御により基準電圧源21から出力される。
【0127】
そこで、記録動作を考慮する場合、書換可能型ディスクあるいは追記型ディスクであり、記録可能領域、すなわち上記図10(a)の領域Cでしかも上記図9(a)の領域Bを満たす領域を検出する。そのためにまず、トラッキングエラー検出回路3において位相差方式で得られたトラッキングエラー信号を比較器22に入力することにより、基準電圧Vref2とトラッキングエラー信号とを比較し、比較器22では図10(b)に示すように、比較信号を基準電圧Vref2を閾値として領域Dのトラッキングエラー信号を矩形のパルス列に2値化する。2値化した比較信号を領域判別回路23に入力し、領域判別回路23が具備するRとCとによりパルス列の比較信号を矩形の領域判別信号に変換する。領域判別信号をシステムコントローラー14に帰還する。
【0128】
次に、プッシュプル方式で得られたトラッキングエラー信号を比較器22に入力することにより、基準電圧Vref1とトラッキングエラー信号とを比較し、比較器22では図9(b)に示すように、比較信号を基準電圧Vref1を閾値として領域Bのトラッキングエラー信号の以上を矩形のパルス列に2値化する。
【0129】
この図10(a)の領域Cを満たす図9(a)の領域Bでの2値化した比較信号を領域判別回路23に入力し、領域判別回路23が具備するRとCとによりパルス列の比較信号を矩形の領域判別信号に変換する。領域判別信号をシステムコントローラー14に帰還し、当該領域判別信号に基づきシステムコントローラー14は第2のスイッチ301の切り替えを制御する。
【0130】
第2のスイッチ301は、システムコントローラー14の指令により、領域判別信号がハイレベルの間、DCオフセット推定量をオフセット減算回路15に入力し、トラッキングエラー信号からDCオフセット推定量を減算した補正トラッキングエラー信号をトラッキング制御回路4に入力する。システムコントローラー14からの指令により第1のスイッチ回路302はトラッキング制御回路4側をON状態にし、トラッキング制御回路4はトラッキング駆動信号を第1のスイッチ回路302を介してトラッキング駆動回路5にトラッキング駆動信号を入力し、トラッキングアクチュエータ17は駆動電流に応じて対物レンズ11を駆動しDCオフセット量を抑制する。
【0131】
以上の構成により、記録型ディスクに所定の情報信号を記録する際に、情報信号を再生することなく、DCオフセットを高精度に抑制した記録が達成できる。また、上記実施例では記録動作について説明したが、再生動作であっても同様にDCオフセットを高精度に抑制できること当然である。例えばCD−RまたはDVD−Rの再生動作の場合には、位相差方式によるトラッキングエラー検出で図10(a)の領域D(情報層の形状変化(ピット)を有する領域)を満足するまで光ピックアップ2をラジアル方向に移動させた後に、プッシュプル方式により情報層のトラックが溝構造の領域であることを検知する等で対応できる。また、追記型情報層に記録したピットは、トラックのエッジに影響を及ぼすことが多々見受けられるが、DCオフセット補正領域としてピットが形成されている領域に選択できるため、トラックのエッジ形状変化に起因する影響も撲滅することができ、オフセット測定の精度を向上できる。
【0132】
また、上記実施例ではディスク1の情報層101が追記型の情報層と書換型の情報層の例で説明したが、一般に記録型ディスクの情報層には、ディスクの内周部及び/またはディスクのラジアル方向に放射線状に制御情報信号等のピットで形成されたいわゆるROM領域と、溝状のトラックを有し情報信号を記録できる記録領域とが設けられているため、本実施例に示した技術は当該ROM領域と記録領域との判別も可能であり、従っていわゆる一枚の記録型ディスク内でもDCオフセットを補正できる領域か否かの判断を正確に行える。
【0133】
また、本実施例ではトラッキング検出回路3の検出方式を、先ず情報層の形状変化(ピット)の有無を検出するため、位相差方式を選択し、その後情報層のトラックが溝構造であるのか、あるいは平面状であるのかを判別するため、プッシュプル方式を選択した場合について説明したが、この順番は本実施例に限定されるものではなく、適宜選択して適用できる。しかも、それぞれの検出方式の繰り返し回数も適宜選択して適用できる。
【0134】
また、近年情報媒体は情報層を備える基板厚の相違、情報層の材料の相違、情報層の構造の相違等多様化していることは前述したとおりであり、情報媒体の多様化に伴い情報層に適合した記録・再生方式が提案されてきている。このような情報媒体の多様化、すなわち情報層の構造及び/または材料等が異なる複数種の情報媒体に、単一の記録再生装置で、情報信号を情報層に記録、あるいは情報層に予め記録された情報を再生をするいわゆる互換技術を備える要望がある。本実施例で述べた技術を応用すると、複数種の情報媒体に対応できる互換記録再生装置を提供できる効果もある。
【0135】
また、上述の実施例によれば、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット推定量に応じて、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセットを補正する領域であるか否かの決定が正確にでき、情報層の情報を再生することなく、レンズ光軸ずれに起因するDCオフセット量を測定する情報層の領域を決定し、しかも情報層に存在する欠陥の影響を抑制したDCオフセット量が測定でき、DCオフセット補正を最適に制御した高精度のトラッキング制御を提供できる効果も奏する。
【0136】
(実施例4)
以下、本発明の別の実施例について、図11及び図12を参照し説明する。なお、前述の実施例1と同じ構成、機能を有する部品には同じ番号を付与して、その説明は省略する。
【0137】
図11は、本発明のオフセット測定方法の機能を備えることにより、情報層101の任意の位置においてトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量を補正できる記録再生装置の構成を示したブロック図であり、図15に示した記録再生装置の構成に、DCオフセット補正実行判定ブロック23を追加した構成である。DCオフセット補正実行判定ブロック23は、図11に示すように、基準電圧源21及び比較器22で構成されている。
【0138】
先ず、本実施例で追加された基準電圧源21と比較器22の働きを説明する。対物レンズ11をディスク1のラジアル方向の相異なる2つのシフト位置で、かつ情報層上の略同一位置でそれぞれ測定したDCオフセット量に基づき、補正ゲイン決定回路18で決定された補正ゲインを比較器22に出力する。基準電圧源21から出力される基準電圧Vref3は、システムコントローラー14により初期値(例えば0mV等任意値)に設定されている。比較器22は、補正ゲイン決定回路18から出力される補正ゲインの電圧と、基準電圧源21から出力される基準電圧Vref3とを比較し、補正実行判定信号をシステムコントローラー14に出力する。
【0139】
一方、補正ゲインは、光ビームの光軸から対物レンズ11の光軸ずれ量に対するDCオフセット量の割合であるため、補正ゲインの値は光ビームの光軸から対物レンズ11のずれ量と、測定したトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量とに依存する。
【0140】
従って、図11に示すディスク1に照射された光ビームがトラックの溝深さλ/8以上λ/6以下の場合は、対物レンズ11の光軸ずれによるトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量が大きいため、補正ゲインはVref3よりも大きくなり、図12(a)の領域Fで示される。また、ディスク1に照射された光ビームがトラックの溝深さがλ/6以上の場合には、対物レンズ11の光軸ずれによるトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量は小さいため、補正ゲインはVref3よりも小さくなり、図12(a)の領域Eで示される。
【0141】
そこで、補正実行判定信号は図12(b)に示すように補正ゲインと基準電圧Vref3との大小関係により、情報領域Fではハイレベル、情報領域Eではローレベルを出力する。
【0142】
実施例1あるいは実施例2に記載のオフセット測定を実行し、決定された補正ゲインに基づいて検出される補正実行判別信号は、システムコントローラー14に出力され、システムコントローラー14は補正実行判定信号がハイレベル時には第2のスイッチ回路301をONに切り替え、ローレベル時には第2のスイッチ回路301をOFFに切り替える。すなわち、対物レンズ11による光軸からのずれ量に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量が、所定値より大きい場合はトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを補正する機能をONにし、対物レンズ11による光軸からのずれ量に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量が所定値より小さい場合はトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを補正する機能をOFFにする。
【0143】
このようにして、本実施例では、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを補正する機能のON/OFFを、決定された補正ゲインの値により判定し、DCオフセット補正が必要な領域に対してのみDCオフセット補正を実行することにより、対物レンズ11による光軸からのずれ量に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量が小さく、DCオフセット補正が不必要な領域のトラッキング制御の構成が簡略化され、さらにDCオフセット補正が不必要な領域においてDCオフセット補正を実行することによる不安定なトラッキング制御を防ぐことができる。
【0144】
【発明の効果】
本発明のオフセット測定方法によれば、対物レンズの光軸ずれに起因し、トラッキングエラー信号に重畳するDCオフセットを精度よく測定することができる。例えば、情報媒体の情報層にゴミ、埃等が付着した場合においても、対物レンズの光軸中心をディスク半径方向の一方向に第1の距離だけ移動させてトラッキングエラー信号に重畳する第1のDCオフセット量を測定し、次に移送台をディスク半径方向の一方向第2の距離だけ移動させた後、その状態で対物レンズの光軸中心をディスク半径方向の一方向に第3の距離だけ移動させてトラッキングエラー信号に重畳する第2のDCオフセット量を測定する構成で、上記第1の距離、第2の距離及び第3の距離を選択することにより、情報層の同一半径位置でトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット推定量を測定することができる。従って、ディスクに付着したゴミ、埃等の影響を受けることなく、精度の高いオフセット測定を実現できる効果がある。
【0145】
また、ディスク情報を再生することなく上記オフセット測定を実行する領域を決定できる。例えば、トラッキングエラー信号検出方式であるプッシュプル方式と位相差方式とを切り換え、各方式により検出したトラッキングエラー信号よりトラックの溝深さλ/8以上λ/6以下の領域であり、かつ未記録である領域を検出し、オフセット測定を実行する領域として決定することができる。その結果、トラックの溝形状や情報ピットの有無による影響を受けることのない精度の高いオフセット測定を実現することができる効果がある。
【0146】
さらに、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット推定値に応じて、トラッキングエラー信号に重畳したDCオフセットを補正する領域であるか否かを決定することもできる。例えば、対物レンズの光軸中心と光ビームの光軸中心とのずれ量に対するトラッキングエラー信号に重畳するDCオフセット量として決定された補正ゲインの値に応じ、DCオフセット補正機能をON/OFFすることによって、DCオフセット補正が必要な領域に対してのみDCオフセット補正を実行することができる。従って、情報層の情報を再生することなく、対物レンズの光軸ずれによるトラッキングエラー信号に重畳したDCオフセットを測定するディスクの領域を決定し、ディスクに付着したゴミ、埃等の影響を受けないオフセット測定を実現し、さらにトラッキングエラー信号に重畳したDCオフセット補正機能を適切にON/OFFさせることで、高精度な光ビームのトラッキング制御を実現することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例におけるオフセット測定方法のフローチャート
【図2】 同実施例におけるオフセット測定方法の原理図
【図3】 本発明の他の実施例におけるオフセット測定方法の原理図
【図4】 本発明の別の実施例におけるオフセット測定方法の原理図
【図5】 本発明の他の実施例におけるオフセット測定方法の原理図
【図6】 本発明の一実施例におけるオフセット測定方法のフローチャート
【図7】 (a)は、同実施例のレンズシフト駆動信号と時間との関係図
(b)は、同実施例の対物レンズの位置と時間との関係図
(c)は、同実施例のトラッキングエラー信号と時間との関係図
【図8】 同実施例のオフセット測定方法を備えた記録再生装置の要部ブロック図
【図9】 (a)は、同実施例におけるトラッキングエラー信号と時間との関係図
(b)は、同実施例における比較信号と時間との関係図
(c)は、同実施例における領域判別信号と時間との関係図
【図10】 (a)は、同実施例におけるトラッキングエラー信号と時間との関係図
(b)は、同実施例における比較信号と時間との関係図
(c)は、同実施例における領域判別信号と時間との関係図
【図11】 本発明の他の実施例における記録再生装置の要部ブロック図
【図12】 (a)は、同実施例における補正ゲインと時間との関係図
(b)は、同実施例における補正実行判定信号と時間との関係図
【図13】 従来のトラッキングの原理を示す要部ブロック図
【図14】 他の従来のトラッキングの原理を示す要部ブロック図
【図15】 記録再生装置の一構成例を示す要部ブロック図
【図16】 従来のオフセット測定方法のフローチャート
【図17】 図104のオフセット測定方法の原理図
【図18】 従来の補正ゲイン決定方法のフローチャート
【図19】 (a)は、従来のレンズシフト駆動信号と時間との関係図
(b)は、従来の対物レンズの位置と時間との関係図
(c)は、従来のトラッキングエラー信号と時間との関係図
【図20】 プッシュプル検出信号とトラックの溝深さとの関係図
【図21】 トラッキングエラー信号にオフセットが重畳する原理図
【符号の説明】
1 情報媒体(ディスク)
2 光ピックアップ
3 トラッキングエラー検出回路
4 トラッキング制御回路
5 トラッキング駆動回路
6 光軸ずれ量推定回路
7 乗算回路
8 光源
11 対物レンズ
12 2分割光検出器
13 移送台
14 システムコントローラー
15 オフセット減算回路
16 オフセット検出回路
17 トラッキングアクチュエーター
18 補正ゲイン決定回路
19 レンズシフト駆動回路
20 領域判別ブロック
21 基準電圧源
22 比較器
23 領域検出回路
101 情報層
Claims (12)
- 情報媒体の情報層に離隔対向し、光源から出射した光ビームを前記情報層に集光するレンズと、
前記情報層に集光した前記光ビームを受け電気信号に変換する受光部と、
前記レンズを前記情報媒体のラジアル方向に駆動する駆動部と、
前記ラジアル方向に前記レンズ及び前記駆動部を移送する移送部とを備え、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の一方向に第1の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより第1のオフセット量を前記受光部で検知し、
前記移送部で前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した同一方向に、第2の距離だけ前記レンズの光軸中心を移送し、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した方向の逆方向に、前記第1のオフセット量を検知した前記情報層の位置に相当する第3の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより前記受光部で第2のオフセット量を検知することを特徴とするオフセット測定方法。 - 情報媒体の情報層に離隔対向し、光源から出射した光ビームを前記情報層に集光するレンズと、
前記情報層に集光した前記光ビームを受け電気信号に変換する受光部と、
前記レンズを前記情報媒体のラジアル方向に駆動する駆動部と、
前記ラジアル方向に前記レンズ及び前記駆動部を移送する移送部とを備え、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の一方向に第1の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより第1のオフセット量を前記受光部で検知し、
前記移送部で前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した方向の逆方向に、第2の距離だけ前記レンズの光軸中心を移送し、
前記駆動部で前記レンズの光軸中心を前記ラジアル方向の前記第1の距離だけ駆動した同一方向に、前記第1のオフセット量を検知した前記情報層の位置に相当する第3の距離だけ駆動し、前記情報層に前記光ビームを照射することにより前記受光部で第2のオフセット量を検知することを特徴とするオフセット測定方法。 - 前記第1の距離及び前記第3の距離それぞれが、前記レンズの光軸中心の前記移送部における中立位置から計測した距離であることを特徴とする請求項2記載のオフセット測定方法。
- 前記第2の距離が、前記第1の距離と前記第3の距離との和に等しいことを特徴とする請求項2記載のオフセット測定方法。
- 前記情報媒体に前記レンズを追従させるトラックを具備し、前記光ビームの波長をλとすると、前記受光部で前記第1のオフセット量及び前記第2のオフセット量を検知する前記トラックの深さが、λ/8以上λ/6以下であることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載のオフセット測定方法。
- 前記情報層に情報信号を記録できることを特徴とする請求項1〜5何れかに記載のオフセット測定方法。
- 前記受光部の出力信号を処理する処理部を2種類備え、前記2種類の処理部を切り換える切換部により、前記受光部で検知するオフセット量を測定したトラック領域を判別することを特徴とする請求項1〜6何れかに記載のオフセット測定方法。
- 前記第1のオフセット量及び前記第2のオフセット量を用い、前記情報層の任意の位置における前記レンズの光軸中心を前記駆動部で駆動した際のオフセット量を検知することを特徴とする請求項1〜7何れかに記載のオフセット測定方法。
- 前記第1の距離及び/または前記第3の距離が、前記駆動部により前記レンズの光軸中心を駆動できる限界の距離であることを特徴とする請求項1〜8何れかに記載のオフセット測定方法。
- 請求項1〜9何れかに記載のオフセット測定方法で得られた前記第1のオフセット量及び前記第2のオフセット量の差と、前記第1の距離及び前記第3の距離の関係から補正ゲイン決定部で、前記情報層の任意の位置における前記駆動部での前記レンズのオフセット補正量を決定する補正ゲイン決定方法。
- 請求項10記載の補正ゲイン決定方法によって得られた前記オフセット補正量により、前記光ビームを照射している前記情報層の領域を領域判別部で判別することを特徴とする領域判別方法。
- 請求項1〜9何れかに記載のオフセット測定方法でオフセット量を測定するオフセット測定手段を備えることを特徴とする記録再生装置。
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