JP3697543B2 - セラミックスの表面強靱化方法及びセラミックス製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス製品を前記セラミックス製品の硬度以下の表面が凸曲面の、換言すればエッジを有しない微粒子からなる噴射材を用いて、常温の塑性加工(ショットブラスト処理)によって、製品表面近傍に均一に分布した直線状の転位組織を形成させて前記セラミックス製品の表面を強靱化する方法、特に塑性加工(ショットブラスト処理)後の熱処理を要することなく前記セラミックス製品を塑性加工のみで表面を強靱化する方法、および製品表面に均一に分布した直線状の転位組織を形成させたことを特徴とする表面強靱化セラミックス製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス製品は、熱安定性、高温強度、高硬度、高弾性率、絶縁性、圧電性、耐腐食性などに優れているので、多くの分野で利用されている。しかしながら、セラミックスは硬くて脆いという欠点があるために、前記特性を生かして利用されている製品分野、具体的にはガスタービン、自動車などの熱機関用の部品、バネ、歯車など機械構造用要素部品、さらには、シリコンウエハ、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、サファイヤなど単結晶素材、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など多結晶素材を用いたセンサー、アクチュエータ素子、マイクロマシン部品などにおいて、実用上では製品寿命や機械的信頼性が金属と比較すると極めて劣っていることが課題となっている。
【0003】
【特許文献1】
WO 02/24605 A1(特に第8頁〜第19頁の実施例参照)
【非特許文献1】
W.-J.MOON. and H.SAKA. PHILOSOPHICAL MAGAZINE LETTERS,2000,VOL.80,NO.7,461-466
【0004】
ところで、結晶材料に変形と共に結晶内に転位などの格子欠陥を蓄積させる加工硬化は、結晶材料の最も一般的な強靱化方法である。しかしながら、前記強靱化方法は、塑性変形によって転位などの格子欠陥を大量に結晶材料中に導入することが可能な金属材料のような延性材料では広く利用できるけれども、脆性材料では塑性変形が不可であると考えられていた。近年、坂 公恭、文 元振らは、脆性結晶材料の新規な表面強靱化方法として、脆性結晶材料表面に室温において圧子等を用いて溝幅0.001〜1μmの微細圧痕を500〜10,000個/mm2の密度で打ち込んだ後、0.5TM(但し、TMは融点の絶対温度)以上TM未満の雰囲気中で前記圧痕が実質的に消失すると同時に転位亜粒界を導入する方法を初期に開発した(非特許文献1)。また、更に、坂 公恭、内村 勝次、森光 英樹らは、前記初期の技術に対して、熱処理前の工程を塑性加工(ショットブラスト処理)の技術を用いて行う改良技術を提案している(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、前記何れの技術も、表面組織の塑性加工(ショットブラスト処理)と前記加工後の熱処理が必須であり、2工程の処理の組み合わせが必須である。したがって、処理工程の管理を両者の組み合わせとの関連で行わなければならないという複雑さと、かなり高い温度に加熱する必要があることによる、前記加熱による製品寸法の変化、特性の変化といった、製品の安定性、信頼性の面での問題、およびエネルギー消費の問題などがあることから技術的改善が残されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記従来技術の欠点を取り除いた、セラミックス製品の表面強靱化方法を提供することであり、更には、熱処理を要しない表面強靱化方法により得られる特有の特性を持つセラミックス製品を提供することである。前記課題を解決するために、本発明者らは、従来の塑性加工(ショットブラスト処理)に使用される、噴射材のHV硬度、形状、塑性加工(ショットブラスト処理)条件などの多くのファクターを変えた膨大な試行錯誤の実験の中から、驚くべきことに、従来の熱処理を要することなく、被処理セラミックス製品に微細亀裂を発生させることなく表面強靱化をもたらす均一に分布した直線状の転位のみを導入できることを見出した。また、本発明の表面強靱化方法によりセラミックス製品の表面に形成される透過電子顕微鏡観察による組織は、前記従来技術の塑性加工(ショットブラスト処理)と熱処理により形成される透過電子顕微鏡観察による組織とは全く異なることが分かった。前記発見により本発明の課題を解決することができた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、セラミックス製品に、ビッカース硬度(HV)500以上で前記セラミックス製品の硬度+50(HV)以下の平均粒子サイズ0.1μm〜250μmの表面が凸曲面の微粒子からなる噴射材を用いて、前記セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位組織を形成させる常温塑性加工をすることを特徴とする前記セラミックス製品の表面強靱化方法である。好ましくは、塑性加工を噴射圧0.1〜0.5MPa、噴射速度20m/sec〜250m/sec、噴射量50g/分〜800g/分、噴射時間0.1秒/cm2以上60秒/cm2以下で行うことを特徴とする前記セラミックス製品の表面強靱化方法であり、より好ましくは、セラミックス製品の表面に存在する均一に分布した直線状の転位の転位密度が、1×104〜9×1013cm−2の範囲となることを特徴とする前記各セラミックス製品の表面強靱化方法である。なお、ここで言うところの常温塑性加工とは、塑性加工を実施する環境が常温下であることを指しているだけで、塑性加工後の製品表面は噴射材の運動エネルギーの一部を得て、微視的には常温以上に昇温している。
【0008】
本発明の第2は、セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位の転位密度が1×104〜9×1013cm−2の組織を有することを特徴とするセラミックス製品である。
【0009】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
【0010】
第1図は本発明の常温塑性加工を実現する噴射処理を行うための装置で、微粒子の定量供給により加工精度の安定化が可能な新東ブレーター(株)製マイクロブラスターMBI型装置(ノズル径:8φmm、噴射距離:150mm)の概念図である。
本発明での塑性加工(ショットブラスト処理)は、被処理セラミックス製品の表面に疵をつけない様に、また、噴射処理に使用する微粒子の表面形状、前記粒子の被処理セラミックス製品を構成するセラミックスの硬度に対する相対値が前記従来の技術とは異なる。前記相違との関連でもたらされる、前記被処理セラミックス製品の表面に形成されるセラミックスの組織が従来の塑性加工と熱処理により形成されるセラミックスの組織とは顕著な相違が見られることから、本発明の塑性加工は機能的には「表面強靱化組織形成噴射処理」と言うことができる。
噴射材微粒子の硬度について、セラミックス製品のビッカース硬度+50(HV)以下とした上限の限定はチッピングの発生などの不都合が起こらない範囲を限定するものである。
【0011】
被処理セラミックス製品により異なる塑性加工噴射材は、図1では板状セラミックス製品4であるからX−Y方向に移動可能なテーブル5からなる製品保持部材により保持された被処理セラミックス製品に向けて、噴射ノズル3から噴射圧、塑性加工噴射材の噴射量Bなどを制御して噴射される。噴射ノズルをX−Y方向に移動可能としても同様の効果が得られる。使用された塑性加工噴射材は回収装置7により回収され、劣化したブラスト材と分離され、再使用される。
噴射材は、気体と共にまたは液体ホーニングのように液体と共に噴射することができる。
噴射速度20m/sec〜250m/secの限定は、噴射加工を破壊靱性値の測定時の条件の、噴射材を試料表面に垂直に噴射するときの条件である。また、噴射速度の下限は塑性加工(ショットブラスト)処理の作業性の観点からの限定であり、上限はチッピングの発生などの不都合が起こらない範囲を限定するものである。
【0012】
本発明で使用される塑性加工噴射材は、被処理セラミックス製品の硬度以下である、被処理セラミックス製品の表面に疵をつけず、過度に摩耗させない凸曲面の、エッジを有しない微粒子が好ましい。さらには、微粒子は球形であることが好ましい。
塑性加工噴射材の粒径も被処理セラミックス製品の破壊靱性値KICの向上に関連する重要なファクターである。また、粒径は小さいほど表面形状が複雑なセラミックス製品の本発明の塑性加工による処理が容易になる。
【0013】
前記機能的には表面強靱化組織形成塑性加工である塑性加工噴射処理は、塑性加工噴射材のサイズ、硬度、噴射圧、噴射量、又はこれらの組み合わせを変えた2以上の工程とする変形も可能であり、被加工セラミック製品に要求され特性を考慮して設計することが好ましい。
【0014】
本発明の強靱化加工法により製造された強靱化セラミックス製品の特性を調べるのに用いられた測定機器などを説明する。
a.転位密度およびその組織:TEM観察用の薄膜試料は集束イオンビーム装置(Hitachi F−2000)で作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)、日本電子(株)製JEOL−200CX(加速電圧200kV)により組織観察を行った。転位密度は、単位体積あたりの転位の長さを求めることによって得られ、具体的には、(1)薄膜試料の厚さを測定、(2)転位密度を測定する場所のTEM観察像を得る、(3)TEM観察像から単位面積に含まれる転位の長さを測定する、という過程を経て転位密度を測定した。
b.破壊靭性値の測定;JIS R 1607に記載の破壊靱性試験法(IF法)により、破壊靭性値を測定した。
試験片は、先ず表面粗さ0.2S以下となるように#600,#1000,#3000のダイヤ研磨紙、さらに1μアルミナ懸濁液で順次研磨処理した。
ビッカース硬度計を使用し、押し込み荷重条件を試験片材質の種類により最適値、100gf、200gf、300gf、500gf、5kgf、及び10kgfの条件から選択した。荷重保持時間は15secとした。
圧痕長さと圧痕4角から発生する亀裂長さ(2c、単位 m)を測定することによって破壊靭性値を、下記の計算式により算出した。
KIC=0.018(E/HV)1/2(P/c3/2)
ここで、KICは破壊靭性値(MPa・m1/2)、Eはヤング率(Pa)、HVはビッカース強度(Pa)、Pは押込み荷重(N)、cは亀裂長さの半分(m)である。
【0015】
【実施例】
ここでの説明は、本発明をより理解し易くするだけの目的であり、本発明を限定的に解釈するためのものではない。
実施例1〜4、比較例1
被処理セラミックス製品としては、硬さ1370HV,曲げ強度1115MPaであるファインセラミックスセンター製リファセラム、幅4mm×長さ40mm×厚さ3mmの板状窒化珪素からなるもの(窒化珪素Aという)を用いた。
塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表1に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後の窒化珪素Aの品質特性結果を示す。
勿論実際の塑性加工(ショットブラスト)においては製品の表面に対して傾斜をもって噴射加工を行っても良いし、製品の表面形状との関連で噴射角度を選択できる。傾斜をもって噴射加工する場合には、被加工表面に対する塑性加工(ショットブラスト)の効果は、被加工面に対して垂直成分が発揮するから、噴射力など塑性加工(ショットブラスト)条件を傾斜した分だけ調整することが必要になる。
【0016】
【表1】
【0017】
表1の結果から、本発明処理品(実施例1〜4)の破壊靭性値は、常温の塑性加工(ショットブラスト)後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる(比較例1との対比)。特に、窒化ケイ素A供試材実施例3および窒化ケイ素A供試材実施例4の破壊靭性値の改善率向上は特に顕著である。供試材実施例3では2.4倍の破壊靭性値の改善率となり、さらに実施例4では、試料表面にダイヤモンド圧子を打込んだ後、その圧痕4角から発生するはずのクラックが認められず、その結果、前記破壊靭性値の算出式に代入すべきc(亀裂長さの半分)が零となり、破壊靭性値が計算上無限大となるほどの強靱化が達成されている。このような顕著な破壊靱性値の改善は全く予想できなかったことであり、今回開発した強靱化方法が如何に革新的かを示すものである。また、本発明処理品は、試料表面に形成される転位密度が大きくなるにつれて高硬度化することが認められる。
【0018】
実施例5〜10、比較例2
被処理セラミックス製品としては、硬さ1380HV,曲げ強度1100MPaの日本特殊陶業製の13mm×13mm×5mm、板状窒化珪素(窒化珪素B)を用いた。塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表2に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後の窒化珪素Bの品質特性結果を示す。
【0019】
【表2】
【0020】
表2の結果より、本発明処理品の破壊靭性値は、窒化ケイ素A材の試験結果と同様、常温のショットブラスト処理後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる。なお、ショットブラスト処理後の試料表面に非常に高い転位密度が形成されている供試材実施例9は、試料表面にチッピングが生じ、破壊靭性値の測定は不可能であった。これは、転位の数が多くなると転位間の反応のため亀裂が発生し、ショットブラスト時にチッピングが生じやすくなったためと考えられる。
【0021】
実施例11〜14,比較例3
被処理セラミックス製品としては、硬さ1090HVの電気化学工業製の幅7mm×長さ20mm×厚さ0.6mm板状窒化アルミからなるものを用いた。
塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表3に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後の窒化アルミの品質特性結果を示す。
【0022】
【表3】
【0023】
表3の結果より、本発明処理品の破壊靭性値は、窒化ケイ素A材、B材の試験結果と同様、常温のショットブラスト処理後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる。なお、供試材実施例14は、窒化ケイ素B供試材実施例9と同様、ショットブラスト処理後の試料表面に非常に高い転位密度が形成されて試料表面にチッピングが生じ、破壊靭性値の測定が不可能であった。これは、転位の数が多くなると転位間の反応のため亀裂が発生し、ショットブラスト時にチッピングが生じやすくなったためと考えられる。
【0024】
実施例15〜17、比較例4
被処理セラミックス製品としては、アルミナ、Al2O3:99.5%の新東ブィセラックス(株)製の10mm×10mm×5mmの板状アルミナからなるものを用いた。塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表4に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後のアルミナの品質特性結果を示す。
【0025】
【表4】
【0026】
表4の結果より、本発明処理品の破壊靭性値は、上記の試験結果と同様、常温のショットブラスト処理後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる。特に、アルミナ供試材実施例17の破壊靭性値は 10.92で、これは、靭性が高いと認識されている窒化ケイ素の破壊靭性値5〜9を超えるという、驚くべき強靭化効果が達成されている。
【0027】
実施例18〜22、比較例5
被処理セラミックス製品としては、硬さ1630HVのMTI Corporation製の幅10mm×長さ10mm×厚さ1.0mmの単結晶アルミナからなるものを用いた。塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表5に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後の単結晶アルミナの品質特性結果を示す。また、本発明処理後の透過電子顕微鏡写真像を、組織の拡大図と共に示す。図2の拡大図(B)には、横方向に伸びた転位組織が見られ、本明細書ではこの組織を、直線状の転位組織と表現する。図3は、前記表面強靱化処理で形成される転位組織比較のために添付した、前記従来技術を用いて形成した被処理セラミックス製品の透過電子顕微鏡写真像を示す。図3には、網目状の転位セル組織が見られ、前記2図の転位組織と顕著な違いが見られる。
本発明処理後のセラミックス製品は、最表面から深さ方向30μmの範囲に直線状の転位組織を有している。また、この直線状の転位の転位密度は、最表面から深くなるにつれて低くなり、つまり最表面で最大となっている。その最大の転位密度は1×108〜9×1013cm−2の範囲となっている。
【0028】
【表5】
【0029】
表5の結果より、本発明処理品の破壊靭性値は、上記の試験結果と同様、常温の塑性加工(ショットブラスト)後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる。特に、単結晶アルミナ供試材実施例22の破壊靭性値の改善率向上は特に顕著で、窒化ケイ素A供試材実施例4と同様、試料表面にダイヤモンド圧子を打込んで得られる圧痕4角から発生するクラックが発生しないため、破壊靭性値が算出できないほどの強靭効果が得られている。
【0030】
また、単結晶アルミナ供試材実施例19から単結晶アルミナ供試材実施例22の結果より、噴射時間が長くなるにつれて、破壊靭性値の改善率が向上することがわかる。これは、噴射時間とともに製品表面に形成される直線状の転位の転位密度が大きくなったことによるものである。
【0031】
図2、特に拡大図(B)より、本発明で処理した試料表面には、塑性変形が均質に起きたことによる、均一に分布した直線状の転位組織が観察される。図中、黒く見える直線状のものが転位であり、製品表面に近いほど、転位が集積した塊状の黒い部分が多くなっている。なお、図2において、製品表面に白く見える部分があるが、これは、白く見える部分の結晶が黒く見える部分の結晶に対してわずかに回転しているため観察条件が合わず、その結果白く見えているだけで、観察条件を合わせればこの部分も黒く見えるようになり、転位の存在が確認できる。他方、図3の前記従来技術を用いて形成した被処理セラミックス製品の透過電子顕微鏡の写真像では、塑性加工後の加熱処理によって、転位組織は安定配列の網目状の転位セル組織となっている。ここでは、黒い網目状の部分に転位が集積して転位密度が高くなっており、白い部分は転位が存在しない領域となっている。なお、この白い部分は転位が存在しないので、観察条件を変えても黒くなることはない。このように、本発明の表面強靱化方法により得られる組織は、従来技術で得られる組織と顕著な違いが認められる。
【0032】
実施例23〜26、比較例6
被処理セラミックス製品としては、大村耐火(株)製の6mm×6mm×20mmの角棒状炭化珪素(SiC:99.9%)からなるものを用いた。塑性加工(ショットブラスト)は、試料表面に厚み方向から垂直に噴射加工を行い、TEM観察による転位密度の測定及び破壊靱性値を測定した。表6に塑性加工(ショットブラスト)条件及び処理前後の炭化珪素の品質特性結果を示す。
【0033】
【表6】
【0034】
表6の結果より、本発明処理品の破壊靭性値は、上記の試験結果と同様、常温のショットブラスト処理後に試料表面に形成される転位密度にほぼ比例し改善されることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、簡易、省エネルギー型のセラミックス製品の表面強靱化方法を提供することができ、熱処理を必用としない点で、処理前のセラミックス製品の熱処理による特性の劣化を起こさせることなく前記新規表面組織が形成され表面の強靱性が向上した新規セラミックス製品を提供することができた、という優れた効果がもたらされた。セラミックスが利用できる製品分野が大きく広げられることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の常温塑性加工を実現する噴射処理を行うための装置の概念図
【図2】 本発明の表面強靱化方法により得られた均一に分布した直線状の転位が形成された組織の透過電子顕微鏡写真、(B)は(A)のマーク部分の拡大図
【図3】 従来技術の塑性加工(ショットブラスト処理)と熱処理により形成された転位セル(網目状)組織の透過電子顕微鏡写真
【符号の説明】
1 キャビネット 2 キャビネット扉 3 噴射ノズル
4 被加工物(被処理セラミックス) 5 X−Yテーブル
6 X−Yテーブル駆動部
7 噴射材(表面強靱化組織形成噴射材)回収装置
Claims (4)
- セラミックス製品に、ビッカース硬度(HV)500以上で前記セラミックス製品の硬度+50(HV)以下の平均粒子サイズ0.1μm〜250μmの表面が凸曲面の微粒子からなる噴射材を用いて、前記セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位組織を形成させることを特徴とする前記セラミックス製品の表面強靱化方法。
- 塑性加工を噴射圧0.1〜0.5MPa、噴射速度20m/sec〜250m/sec、噴射量50g/分〜800g/分、噴射時間0.1秒/cm2以上60秒/cm2以下で行うことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス製品の表面強靱化方法。
- セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位の転位密度が1×104〜9×1013cm−2の範囲となる転位組織を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス製品の表面強靱化方法。
- セラミックス製品の表面に均一に分布した直線状の転位の転位密度が1×104〜9×1013cm−2の組織を有することを特徴とするセラミックス製品。
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