JP3697003B2 - 液相堆積装置及び不純物除去方法 - Google Patents

液相堆積装置及び不純物除去方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解液から液相堆積法により薄膜を形成する際に、電解液中の不純物を除去する装置及び方法に関わる。特に光起電力素子に適用するのに好適な酸化亜鉛薄膜を形成させる液相堆積装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛薄膜は、優れた透光性、導電性、圧電特性等を有し、光起電力素子、発光素子、表面弾性素子、音響素子など、電子工学分野や化学工業分野での応用が精力的に進められている。酸化亜鉛薄膜は従来より、CVD法、蒸着法、スパッタ法、MBE法等の乾式プロセス、ゾル-ゲル法、スプレーパイロリシス法、液相成長法等の湿式プロセスを中心に作成技術の開発が進められてきている。
【0003】
中でも、比較的低温で均一性の高い良質薄膜が得られる作成方法としてスパッタ法が広く知られ、実用化されている。しかしながら、スパッタ法は加熱設備や真空排気設備、高周波電源設備などを必要であって装置が大がかりとなる、スパッタ用ターゲットが高価である、ターゲットの利用効率やメンテナンス性が悪い等、低コスト化がはかりにくという欠点があった。
【0004】
近年、伊崎らは大幅な低コスト化が期待出来る技術として、亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有する電解液を用いた、液相堆積法による酸化亜鉛薄膜の作成法を開示した(例えば "電解液によるZnO膜の作製" 第55回応用物理学会学術講演会予稿集No.2 pp396、20a-N-4、特開平8-217443)。
【0005】
液相堆積による酸化亜鉛膜の作成においては、加熱設備や真空排気設備などの大規模な装置が不要である上、任意の形状の基体上に膜厚および組成が均質な膜を比較的高速で堆積できるとされている。
【0006】
近年、酸化亜鉛膜を応用出来る素子の一つとして、光起電力素子が注目を浴びている。光起電力素子には単結晶シリコン太陽電池に代表されるようなバ ルク材料を用いたものの他、水素化非晶質シリコン、水素化非晶質シリコンゲルマニウム、水素化非晶質シリコンカーバイド、微結晶シリコン、あるいは多結晶シリコン等の薄膜系の素子をCVD法に代表される気相法を用いて作成されるもの等が知られている。とりわけ、薄膜系の光起電力素子は、低コスト化が期待出来るものとして、盛んに研究開発が進められている。
【0007】
薄膜系の光起電力素子では、多くの場合、ワンパスでは太陽光の長波長領域の光を十分に吸収しきれず、光起電力素子としての性能を十分に発揮出来ないことがあった。そのため、太陽光の長波長における収集効率を改善する目的で裏面反射層が利用されてきた。裏面反射層材料としては、半導体材料の禁制帯幅付近の波長領域、即ち800nmから1200nmで有効な反射特性をもつ金属、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム等の単体及びそれらの合金等が好ましい。半導体層と金属層の界面には、光の行路長を増大させ、光の有効な閉じ込めをはかる目的で、光学的に透明な凹凸層を設けることがある。この凹凸層はシャントパスによる特性の低下を抑制する目的でも用いることが出来る。酸化亜鉛膜は導電性や透光性に加え、作成時の諸条件や作成後の弱酸等を用いた表面処理によって容易に凹凸形状を制御出来ることから、薄膜系光起電力素子の裏面反射層の構成層として極めて有用なものであるといえる。
【0008】
【発明が解決しようする課題】
上述のように電解液を用いた液相堆積法による酸化亜鉛膜の形成方法は、一方で、形成膜の構造は溶液の濃度や温度、陰極電流密度等に大きく影響されるとともに、溶液中に存在する不純物にも大きな影響を受ける。ここで、不純物とは電解液中に混入した大気中の汚れ(粉塵)、液相堆積浴中で生成する沈殿物、電気液相堆積で生成する陽極付着物など、浴中に懸濁または沈殿物になっているものを指す。
【0009】
とりわけ、半導体的性質を有する酸化亜鉛膜の液相堆積においては、従来的なニッケルや亜鉛など金属膜の液相堆積に比べ、溶液中の不純物が堆積膜の結晶構造、ひいては、電気的特性、光学的特性に多大なる影響を与えることになる。これらの不純物は、基体表面に吸着した場合、形成される酸化亜鉛膜と基体表面との密着性を低下させたり、異常成長の核として働く可能性がある。
【0010】
また、溶液中に浮遊している場合にはイオン種の移動を妨げて、膜の堆積速度を低下させたり、膜質や膜厚の均一性を損ねる原因となることが考えれる。さらに、膜中に取り込まれた場合には、堆積膜表面の異常突起や抜けの原因となり、光起電力素子などに応用した場合、素子の歩留りを低下させてしまうことが懸念される。
【0011】
以上の理由より、亜鉛イオンと硝酸イオンを含む電解液からの酸化亜鉛膜の液相堆積においては、溶液中の不純物を液相堆積条件に大きな影響を与えず、効率的に除去することが、極めて重要な課題である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
亜鉛イオンと硝酸イオンを含む電解液からの酸化亜鉛膜の液相堆積において、溶液中に発生あるいは混入した不純物は、形成される酸化亜鉛膜の結晶性、光学的性質、電気的性質などの物理的性質に多大な影響を与えることから、液相堆積槽中の不純物を効率良く除去することは、所望結晶性、光学的性質、電気的性質などの物理的性質を有する酸化亜鉛膜を形成するために重要である。発明者らは、液相堆積槽中の不純物を効率良く除去する手段として以下の3つの方法を考案した。
【0013】
3つの方法のうち本願発明は、以下に(2)で示すものであるが、参考のために他の方法を(1)、(3)として示す。これらは、それぞれ単独で用いることもできるし、必要に応じて組みあわせて用いることも、勿論可能である。
【0014】
(1)液相堆積槽への沈殿槽の付加・・・液相堆積中に発生した不溶性の不純物や浴槽壁面からの剥離膜や腐食膜のうち比較的重い不純物に対して有効な不純物除去方法である。液相堆積槽の下部に空孔を有する仕切り板等(空孔板)を介して沈殿槽を設けるものである。空孔を有する仕切り板を省略するかわりに、電極下端から浴槽底部までの距離を十分に確保することによっても同様の効果を奏することができる。
【0015】
循環系を有する液相堆積プロセスおよび循環系を有しない液相堆積プロセスのいずれにのプロセスに対しても有効であるが、とりわけ、循環系を有する液相堆積プロセスにおいては、循環ポンプや濾過器などに損害を及ぼすような比較的大きな不純物を事前に除去することが可能となるわけであり特に有効といえる。
【0016】
底面に沈殿・堆積した沈殿物は保守のため定期的に取り除くことが必要であるが、その方法として沈殿槽と液相堆積槽を遮蔽した状態で、沈殿槽に除去液を注入する方法を考案した。除去液注入に先立って、遮蔽材で液相堆積槽と沈殿槽を実質的に分離する。まず、排水コックを開放して、液相堆積槽内部の排水を行う。必要な量の排水を行った後、排水コックを閉じる。続いて除去導入コックを開放し除去液を沈殿槽内に注入する。
【0017】
注入すべき除去液の種類は、沈殿物の種類、電解液の種類、添加剤の種類に応じて、最適なものを選択すればよいが、コスト的にも安価で、電解液に対する影響を最小限に抑えるという点で、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸の何れか1種、あるいは2種以上の混合酸であることが好ましい。
【0018】
適当量の除去液を注入した後、導入コックを閉じる。沈殿物が実質的に溶解した除去液は、再び排水コックを開けることで沈殿槽外へ排出される。沈殿槽内を純水により洗浄した後、再び電解液で沈殿槽内を満たし、最後に、遮蔽材による遮蔽を解除する。これによって、沈殿槽内のメンテナンスを終了する。
【0019】
(2)循環系への濾過器の付加・・・溶液を循環させるとともに、循環経路に濾過器を設置して不純物を除去する方法である。不溶性の微細な不純物を除去するのに適している。
【0020】
濾過器の最小捕獲粒径は、小さければ小さいほど、より多くの不純物を除去できるという観点から好ましいが、あまり小さくなりすぎると液循環に対する抵抗成分が増加する結果、液循環のための駆動エネルギーが余分に必要となったり、濾過器のメンテナンスの頻度が増加するといった問題が生じ、かえって不純物除去効率が低下してしまう。逆に最小捕獲粒径が大きければ液循環に対する抵抗成分は減少して、液循環のための駆動エネルギーが少なくて済む、メンテナンスの頻度が減少するといった利点があるが、粒径の小さい不純物が十分に除去されず、酸化亜鉛膜の液相堆積に悪影響を与える結果となってしまう。
【0021】
したがって、最小捕獲粒径は、用いられる系に応じて、最適なものを選ぶ必要がある。濾過器のメンテナンスの際には液相堆積のプロセスが中断されることになるが、これはスループットを低下させる結果となって好ましくない。これを回避するには、循環系に対して2系統以上の濾過器を並列に配設し、適宜切り換えて使用すればよい。
【0022】
(3)液相堆積槽内でのうず流の使用・・・液相堆積浴槽内に発生させたうず流を用いるものである。うず流の回転軸が基体と平行になるように溶液内にうず流を発生させた場合、不純物はうず流の中心方向へと引き寄せられ、基体表面への不純物付着が抑制される。また、うず流の回転軸が基体に垂直で、かつ、流れの方向が基体から遠ざかる方向に発生させて場合も、同様に、基体表面への不純物付着を抑制することができる。
【0023】
もちろん、うず流の回転軸が平行と垂直の中間の角度をもっていても、同様の効果がある。うず流の回転軸の角度は、溶液の種類や基体の構造・位置などに応じて決定すれば良い。うず流の発生源としては、スクリュー等の人工的なものも利用できるし、場合によっては、自然力である重力を利用することも可能である。
【0024】
【発明の実施の形態】
まず、予備実験として、循環系を省略した電解液容器を用いて酸化亜鉛膜の作成を行った。その概略図を図1に示す。電解液容器101では硝酸亜鉛水和物を純水に溶解させ、亜鉛イオン、硝酸イオンを供給している。電解液102中には、対向して配置した導電性基体103と陽極金属104が浸漬されている。導電性基体103は電源105の負側に陽極金属104は電源105の正側に、それぞれ接続されている。負側の電極である導電性基体103としては、厚さ0.12mmのステンレス430BAに銅2000Åをスパッタしたものを用い裏面をテープで覆った。陽極金属104としては純度99.99%、厚さ1mmの亜鉛板を用いた。
【0025】
硝酸亜鉛電解液である電解液102には、サッカロースなどの炭水化物を添加し、硝酸亜鉛の濃度は実験によって0.1M/lから0.0025M/lに変えた。液温は室温から85℃まで、印加電流は0.3〜100mA/cm2(0.03〜10A/dcm2)の範囲で変化させた。サッカロースは成長する酸化亜鉛膜の異常成長を阻止し、粒径を揃える効果がある。
【0026】
(実験例1-1)
印加電流密度を約1mA/cm2で一定とし、溶液の硝酸亜鉛濃度を0.1M/l、0.025M/l、0.01M/l、0.0025M/lに対して、液温を室温から85℃程度まで変化させて成膜を行った。サッカロースの添加量は20g/lとした。成膜された膜は、液温が60℃以上の場合、X線回折装置にて六方晶の酸化亜鉛であることが同定され、その結晶粒径をSEMにて観察した所、液温の上昇とともに粒径が小さくなる傾向がみられた。60℃より液温が低いと金属亜鉛の析出も起こり、一定サイズの酸化亜鉛は観察されなくなった。
【0027】
さらに、液温が60℃以上の場合、結晶粒の配向性をX線回折から評価すると、硝酸亜鉛濃度を0.1M/lの場合には、c軸が傾き六方晶が立ち上がった形で配向し、0.025M/l以下の場合には、c軸が基体に垂直に成膜されていることが分かった。
【0028】
比較のためにサッカロースを添加量を1g/l以下にして、同様の実験をおこなったところ、異常成長が多く見られ、配向膜は得られなかった。また、サッカロースの添加量が300g/l以上の時は結晶性の良い膜が得られなかった。
【0029】
したがって、酸化亜鉛の配向膜の形成においては、サッカロースのような炭水化物を添加することが重要であることが分かった。実験条件をまとめてしめすと次表のようになる。
【0030】
【表1】
Figure 0003697003
【0031】
(実験例1-2)
印加電流密度を約1mA/cm2で一定とし、溶液の硝酸亜鉛濃度を0.1M/l、0.025M/l、0.01M/l、0.0025M/lに対して、液温を室温から85℃程度まで変化させて成膜を行った。デキストリンの添加量は0.1g/lとした。成膜された膜は、液温が60℃以上の場合、X線回折装置にて六方晶の酸化亜鉛であることが同定され、その結晶粒径をSEMにて観察した所、液温の上昇とともに粒径が小さくなる傾向がみられた。60℃より液温が低いと金属亜鉛の析出も起こり、一定サイズの酸化亜鉛は観察されなくなった。
【0032】
さらに、液温が60℃以上の場合、結晶粒の配向性をX線回折から評価すると、硝酸亜鉛濃度を0.1M/lの場合には、c軸が傾き六方晶が立ち上がった形で配向し、0.025M/l以下の場合には、c軸が基体に垂直に成膜されていることが分かった。
【0033】
比較のためにデキストリンの添加量を0.001g/以下にして、同様の実験をおこなったところ、異常成長が多く見られ、配向膜は得られなかった。また、デキストリンの添加量が10g/l以上の時は結晶性の良い膜が得られなかった。
【0034】
したがって、酸化亜鉛の配向膜の形成においては、デキストリンのような炭水化物を添加することが重要であることが分かった。実験条件をまとめてしめすと次表のようになる。
【0035】
【表2】
Figure 0003697003
【0036】
(実験例2-1)
サッカロースの添加量を20g/l、温度を65℃で一定とし、溶液の硝酸亜鉛濃度を0.1M/l、0.025M/l、0.01M/lに対して、印加電流密度を約0.5mA/cm2〜約100mA/cm2で変化させて成膜を行った。堆積速度の印加電流密度に対する依存性を調べると、いずれの濃度でも印加電流密度が5mA/cm2程度までは、ほぼ直線的に堆積速度が増加していた。
【0037】
印加電流密度が5mA/cm2を越えると堆積速度が低下すると共に、SEM像観察によると異常成長が見られ、酸化亜鉛膜ではなく、金属亜鉛の析出が見られたが、撹拌によりこれを防ぐことは可能である。撹拌により1から100mA/cm2の範囲で良好な堆積が可能であった。つまり溶液系からの成長エージェントの補給が反応を律速していることが分かる。
【0038】
X線回折パターンの解析から、ここでも成膜速度によらず、溶液の硝酸亜鉛濃度が0.1M/lの時にはc軸が傾いて配向し、0.025M/lおよび0.01M/lの時にはc軸配向となって結晶粒が成長していることが見いだされた。0.1M/lの時のc軸が傾いて配向しているサンプルからのX線回折パターンは、メインピークは<101>面相当のものであり、0.025M/lのc軸配向となって結晶粒が成長しているX線回折パターンのメインピークは<002>相当のものであった。SEM像の違いも明確であって、<101>メインのc軸が傾いて配向している膜のサンプルは、六角の結晶片すべてが立ち上がったモルフォロジーを示す一方、<002>メインの c軸配向している膜のサンプルは、六角の結晶片の上面だけが面内に観察される。温度の変化は粒径を変えるのみで、このSEM像の違いとはならない。
【0039】
堆積反応に1価のイオンが介在しているか2価のイオンが介在しているか判断する為、酸化亜鉛の密度からどのくらいの成膜速度が期待されるかを計算した所、誤差範囲で十分に1価のイオンが関与している、即ち1価収集であると見積もられた。このことから、おそらく電解液中から酸化亜鉛を成長させるのに鍵となる因子はZn(NO3)+であることが推定される。
【0040】
即ち、実験例1と実験例2より、60℃より高い温度で酸化亜鉛の堆積が良好におこなわれ、その結晶粒径は溶液濃度と液温に依ること、堆積速度は印加する電流密度に依存すること、配向性は溶液濃度に依存すること、それらを支配している因子がZn(NO3)+であるらしいこと、が見いだされた。このことは、溶液濃度と液温を適宜選ぶと、硝酸亜鉛とサッカロースを含む電解液から、所定の結晶粒の酸化亜鉛膜を所望の配向性(c軸を傾けるか垂直にするか)で成膜できることを示している。
【0041】
比較のためにサッカロースを添加量を1g/l以下にして、同様の実験をおこなったところ、異常成長が多く見られ、配向膜は得られなかった。また、サッカロースの添加量が300g/l以上の時は結晶性の良い膜が得られなかった。したがって、酸化亜鉛の配向膜の形成においては、サッカロースのような炭水化物を添加することが重要であることが分かった。
【0042】
【表3】
Figure 0003697003
【0043】
(実験例2-2)
デキストリンの添加量0.1g/lとし、温度を65℃で一定とし、溶液の硝酸亜鉛濃度を0.1M/l、0.025M/l、0.01M/lに対して、印加電流密度を約0.5mA/cm2〜約100mA/cm2で変化させて成膜を行った。堆積速度の印加電流密度に対する依存性を調べると、いずれの濃度でも印加電流密度が5mA/cm2程度までは、ほぼ直線的に堆積速度が増加していた。印加電流密度が5mA/cm2を越えると堆積速度が低下すると共に、SEM像観察によると異常成長が見られ、酸化亜鉛膜ではなく、金属亜鉛の析出が見られたが、撹拌によりこれを防ぐことは可能である。撹拌により1から100mA/cm2の範囲で良好な堆積が可能であった。つまり溶液系からの成長エージェントの補給が反応を律速していることが分かる。
【0044】
X線回折パターンの解析から、ここでも成膜速度によらず、溶液の硝酸亜鉛濃度が0.1M/lの時にはc軸が傾いて配向し、0.025M/lおよび0.01M/lの時にはc軸配向となって結晶粒が成長していることが見いだされた。0.1M/lの時のc軸が傾いて配向しているサンプルからのX線回折パターンは、メインピークは<101>面相当のものであり、0.025M/lのc軸配向となって結晶粒が成長しているX線回折パターンのメインピークは<002>相当のものであった。SEM像の違いも明確であって、<101>メインのc軸が傾いて配向している膜のサンプルは、六角の結晶片すべてが立ち上がったモルフォロジーを示す一方、<002>メインの c軸配向している膜のサンプルは、六角の結晶片の上面だけが面内に観察される。温度の変化は粒径を変えるのみで、このSEM像の違いとはならない。
【0045】
堆積反応に1価のイオンが介在しているか2価のイオンが介在しているか判断する為、酸化亜鉛の密度からどのくらいの成膜速度が期待されるかを計算した所、誤差範囲で十分に1価のイオンが関与している、即ち1価収集であると見積もられた。このことから、おそらく電解液中から酸化亜鉛を成長させるのに鍵となる因子はZn(NO3)+であることが推定される。
【0046】
即ち、実験例2−2より、60℃より高い温度で酸化亜鉛の堆積が良好におこなわれ、その結晶粒径は溶液濃度と液温に依ること、堆積速度は印加する電流密度に依存すること、配向性は溶液濃度に依存すること、それらを支配している因子がZn(NO3)+であるらしいこと、が見いだされた。このことは、溶液濃度と液温を適宜選ぶと、硝酸亜鉛とデキストリンを含む電解液から、所定の結晶粒の酸化亜鉛膜を所望の配向性(c軸を傾けるか垂直にするか)で成膜できることを示している。また、デキストリンの添加量が10g/l以上の時は結晶性の良い膜が得られなかった。したがって、酸化亜鉛の配向膜の形成においては、デキストリンのような炭水化物を添加することが重要であることが分かった。実験条件をまとめてしめすと次表のようになる。
【0047】
【表4】
Figure 0003697003
【0048】
(実験例3)
5cm×5cmのステンレス(430BA)基板上に電解液から酸化亜鉛膜を3000Å堆積した。即ち、99.99%の亜鉛板を正極とし、該ステンレス基板を負極として70℃に保った、サッカロース20g/lを加えた0.1M/lの硝酸亜鉛電解液に浸漬し、この電解液を撹拌しながら、ガルバノスタットを用いて、間隙3.5cmの両極間に、20mAの電流を流した。10分後には、散乱による乳白色を呈する酸化亜鉛の透明層が析出した。この電解液の水素イオン濃度は(pH)は5.4であった。これを圧搾空気で水切りして得られた透明層を透明層aとする。
【0049】
(実験例4)
実験例1の電解液を40倍に希釈し、温度を85℃に保った以外は実験例1と同じ手順にて同じく3000Åの酸化亜鉛膜を得た。pHは6.4であり、透明な干渉色を呈する膜が堆積した。これを透明層bとする。
【0050】
(実験例5)
実験例1と同じステンレス基板上にDCマグネトロンスパッタで酸化亜鉛を同様の厚みで蒸着した。すなわち、酸化亜鉛ターゲットを用い、アルゴンを2sccm流しながら10mTorrにて100Wの電力で5分間スパッタし、3000Åの酸化亜鉛膜を得た。膜の外観は実験例2のように干渉色を呈する透明な膜であった。これを透明層cとする。
【0051】
(実験例6)
同様のステンレス基板上に実験例5と同じく、DCマグネトロンスパッタで酸化亜鉛を5倍の厚みで蒸着した。厚みを厚くする為に、蒸着時間を5倍とした。できた膜は1.5μmであった。膜の外観は干渉色を呈する透明な膜であった。これを透明層dとする。
【0052】
(実験例7)
堆積時間を3分とした他は実験例2と同じ方法で、透明な干渉色を呈する、約1000Åの酸化亜鉛層を堆積させた。この後、約1000Åの酸化亜鉛層が堆積したステンレス基板を電極として、堆積時間を7分としたほかは実験例1とおなじ方法で、約2000Åの酸化亜鉛層を堆積せしめた。この複合の膜を透明層eとする。
【0053】
透明層aの分光全反射率は、膜厚が小さいにも関わらず、近赤外領域で干渉パターンがぼやけ、極めて散乱特性の良いことを示していた。また、透明層aからeをSEMにて観察したところ、透明層aと透明層eは1.2μm前後の径の扁平の多結晶構造であり、透明層 bは0.1μm前後の径の鱗状の多結晶構造であり、透明層cおよびdはSEMにては分解能が不十分で配向性の評価をするだけの形状が見られなかったが、数百Åの粒径の粒状集合体であることは確認出来た。
【0054】
透明層aからcをX線回折によって評価したところ、透明層aは酸化亜鉛の六方晶系の回折でc軸が垂直から倒れているものが主要な部分を占めることが分かった。この時の X線回折の<002>の強度が<101>の強度の30%であった。透明層bとcは<002>の回折ピークが主要であり、透明層 bの回折パターンは、c軸に配向していることが判明した。
【0055】
更に、透明層a、b、c、d、eの上に、順次、n型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンゲルマニウム、p型微結晶シリコンをマイクロ波CVDで蒸着し、次にITOを600Åに蒸着し、更に銀でグリッドを形成して上部取り出し電極とした。この様にして作製した太陽電池をソーラーシミュレータのもとで評価したところ、透明層aの短絡電流密度Jscは10.2mA/cm2、透明層bの短絡電流密度 Jscは9.5mA/cm2、透明層cの短絡電流密度Jscは9.3mA/cm2、透明層eの短絡電流密度Jscは10.0mA/cm2と大きな違いを生じた。
【0056】
更にまた、透明層a、b、c、d、eを基板ごと折り曲げて剥離性を検討した。透明層aは、折り曲げ部分で剥離が始まり、曲げ戻しでほとんど剥離してしまった。一方、透明層b、c、d、eは180度の角度で折り曲げても剥離は観察されず、密着性の高いことが確認された。
【0057】
(酸化亜鉛膜の光起電力素子への応用)
実験1〜7の結果より、酸化亜鉛膜を2層化することにより、基体との密着性が良く、光の散乱特性にも優れた酸化亜鉛膜(透明膜e)が得られることがわかった。このような性質をもつ酸化亜鉛膜は光起電力素子の裏面反射層の構成層として、特に好ましいものである。酸化亜鉛膜を裏面反射層の構成層として応用した薄膜太陽電池の一例を図7に示す。各構成層の詳細は以下の通りである。
【0058】
(太陽電池の構成)
(基体もしくは金属層)
本発明で用いられる基体701としては、磁性あるいは非磁性の各種の金属が用いられる。中でもステンレススチール板、鋼板、銅板、真鍮板、アルミニウム板などは、価格が比較的低く好適である。こららの金属板は、一定の形状に切断して用いてもよいし、板厚によっては長尺のシート状の形態で用いても良い。この場合にはコイル状に巻くことができるので、連続生産に適合性が良く、保管や輸送も容易になる。また、用途によってはシリコン等の結晶基板、ガラスやセラミックの板を用いることもできる。基板の表面は、研磨してもよいが、例えばブライトアニール処理されたステンレス板のように仕上がり良い場合にはそのまま用いても良い。ステンレススチールや鋼板のようにそのままでは反射率が低い基板や、ガラスやセラミックのようにそのままでは導電性が低い材料からなる基板では、その上に金や銀や銅あるいはアルミニウムのような反射率の高い金属層702を設けるのが好ましい。
【0059】
(半導体層)
本発明で用いられる半導体層704としては、光に感応して起電力を発する構造を有する材料で構成されたもので、例えばその構造は、pn接合、pin接合、ショットキー接合、ヘテロ接合などが挙げられる。半導体材料としては、水素化非晶質シリコン、水素化非晶質シリコンゲルマニウム、水素化非晶質シリコンカーバイド、微結晶シリコンまたは多結晶シリコン等が使用できる。これら半導体材料は、適宜、水素・ハロゲン等の終端原子、IV族半導体にあっては、ホウ素やアルミニウムなどのIII族族のp型ドーパントや窒素・燐やヒ素などのV族のn型ドーパントを導入することが出来る。
【0060】
本発明で用いられる半導体層704は更に、タンデム構造として知られる光起電力を生成する構造を重ねたものとすることが出来る。光のスペクトルを有効に利用する為に、通常、上部の光起電力素子を短波長に有効な変換効率を有するもの、下部の光起電力素子を長波長に有効な変換効率を有するもの、とする。半導体中で再結合で光生成キャリアを失わずに収集効率を高くする為に、同じスペクトルレスポンスを有する材料でタンデム素子を形成することも可能で有る。また、タンデムの構成は。3段階以上の多段とすることもできる。これらのタンデムの構成は、それぞれ光起電力素子の構成が同じでもよいし、違っていても良い。即ち、pin+pinの構造でもよいし、pin+ショットキー接合となっていても良い。
【0061】
これらの半導体材料をもちいて光起電力構造をもつ素子を作成するには、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの方法が適用出来、特に、CVD法では、ドーパントの導入や積層に優れている。CVDのガス励起法としては、DC、RF、マイクロ波などが使われる。CVDの原料ガスとしては、シラン・ジシラン・ゲルマン・ジゲルマンなどをはじめ、それらの誘導体が用いられる。
【0062】
(透明導電膜)
本発明で用いられる透明導電層705は、特に導電性の高いことが望まれ、In2O3、SnO2、ITOなどが用いられる。層厚としては、反射防止特性を示すのが好ましく、通常500〜800Åとされる。成膜には、真空蒸着、スパッタリング、CVDなどが用いられるが、特にスパッタリングはスループットを大きくとれて好ましい。その際、ターゲットをインジウムやスズといった金属とし、酸素を主とするスパッタガスを導入して、化学反応によって膜を成長せしめる反応性スパッタとすることも出来る。
【0063】
【実施例】
以下、本発明による不純物の除去方法を用いた装置の具体例を示して説明する。
【0064】
参考例1)
図2は従来例である図1の液相堆積槽下部に不純物除去手段として、沈殿層を付加した例である。溶液中で発生した、あるいは混入した不溶性の不純物は、空孔板207を通って沈殿層206へと蓄積される。液相堆積槽208側から沈殿槽206へ向けて大孔から小孔となるテーパ状の空孔を利用すれば、沈殿槽206に蓄積された沈殿物が液相堆積槽208に逆拡散していく効果が抑制される為、液相堆積槽208内の清浄性を保持する観点から好ましい。
【0065】
沈殿層206を設けた場合と沈殿層206を設けない場合の、電解液202中の粒径10μm以上の不純物粒子の数は、同電解液202の堆積1cm3につき、それぞれ、8個、20個であり、沈殿槽206を設けたものの方が不純物粒子の数が少なくなっており、沈殿槽206を設けることが液相堆積槽208内の清浄化に効果あることが確かめられた。
【0066】
参考例2)
沈殿槽内に蓄積された不純物は定期的に除去する必要がある。その方法として、液相堆積槽内に除去液を注入する方法を用いた例を説明するものが図3である。同図に示す様に除去液307の注入に先立って、遮蔽材303で液相堆積槽301と沈殿槽302を実質的に分離する。次に、排水コック306を開放して、沈殿槽301内部の排水を行う。必要な量の排水を行った後、排水コック306を閉じる。続いて除去液導入コック304を開放し、除去液307を沈殿槽302内に注入する。
【0067】
注入すべき除去液307の種類は、沈殿物の種類、電解液の種類、添加剤の種類に応じて、最適なものを選択すればよいが、コスト的にも安価で、電解液に対する悪影響を最小限に抑えるという点で、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸の何れか1種、あるいはそれらの2種以上の混合酸であることが好ましい。
【0068】
適当量の除去液307を注入した後、除去液導入コック304を閉じる。沈殿物が実質的に溶解した除去液は、再び排水コック306を開放することで沈殿槽外へ排出される。沈殿槽302内を純水により洗浄した後、液相堆積液導入コック305を通して、再び電解液308で沈殿槽302内を満たす。最後に、遮蔽材303による液相堆積槽301と沈殿槽302との間の遮蔽を解除する。これによって、沈殿槽302内の一連の清掃メンテナンスを終了する。
【0069】
除去液307を用いて沈殿槽302内のメンテナンスを行う方法は、液相堆積槽301内で行われる液相堆積プロセスを中断させることがないので、量産時のスループットを低下させることがないという点で有利である。
【0070】
(実施例
図4は、電解液を循環させるとともに、循環経路に濾過器を設置して不純物を除去する方法の具体例である。液相堆積槽408内から排出された電解液402は循環ポンプ408及び濾過器407より構成される循環系を通って、液相堆積槽406に回帰する。電解液402中に浮遊する不溶性の微細な不純物は、濾過器407を通過する際、濾過器407によって捕獲され、電解液402中から取り除かれる。
【0071】
濾過器407が捕獲することのできる不純物の最小粒径(最小捕獲粒径)は、小さければ小さいほど、より多くの不純物を除去できるという観点から好ましいが、あまり小さくなりすぎると液循環に対する抵抗成分が増加する結果、液循環のための駆動エネルギーが余分に必要となったり、濾過器のメンテナンスの頻度が増加するといった問題が生じ、かえって不純物除去効率が低下してしまう。逆に最小捕獲粒径が大きければ液循環に対する抵抗成分は減少して、液循環のための駆動エネルギーが少なくて済む、メンテナンスの頻度が減少するといった利点があるが、粒径の小さい不純物が十分に除去されず、酸化亜鉛膜の液相堆積に悪影響を与える結果となってしまう。
【0072】
好ましい最小捕獲粒径を見積もりを行うため、最小捕獲粒径を変化させて酸化亜鉛膜を形成させ、それらの酸化亜鉛膜を薄膜起電力素子に適用した時の、素子の歩留りを調べた。薄膜起電力素子用の導電性基体としては、厚さ0.12mmのブライトアニール処理をしたステンレス板を用い、その上に金属層としてアルミニウム膜を1000Å、スパッタ法により堆積した。続いて、透明膜aを形成させる条件と実質的に同条件で、濾過器407と循環ポンプ406を用いて酸化亜鉛膜の形成を行った。濾過器407の最小捕獲粒径は、0.2μmから500μmまで変化させた。
【0073】
さらに、酸化亜鉛膜の上に、n型水素化非晶質シリコン膜、i型水素化非晶質シリコン膜、p型水素化非晶質シリコン膜をそれぞれ、300Å、1500Å、100Å、プラズマCVD法を用いて堆積した。各非晶質層の詳細な成膜条件はまとめて表5に示した。
【0074】
【表5】
Figure 0003697003
【0075】
さらに、上部透明導電膜として酸化インジウムスズ膜を600Å、酸素雰囲気中での抵抗加熱法によって蒸着し、最後に、金属電極として金を8000Å電子ビーム法を用いて蒸着した。作製した素子の歩留りは、pin接合の逆方向電流の漏れ成分を検出することにより行った。逆方向に1Vの電圧を印加した時の逆方向電流が0.1mA以下のものを合格、0.1mAより大きいものを不合格とした。
【0076】
最小捕獲粒径と歩留りの関係を、濾過器407無しの場合の歩留りを基準(1.0)として相対値で図8に示す。最小捕獲粒径が1.0μmから500μmの範囲で濾過器なしのものに比べ歩留りが改善されているが、最小捕獲粒径0.2μmのものは、濾過器なしのものよりも歩留りが低下した。これは、濾過器の循環系に対する抵抗成分が過大となり、電解液の循環効率が低下することによる弊害と考えられる。同図より、濾過器の最小捕獲粒径の好ましい範囲は0.5μm以上500μm以下、より好ましくは1μm以上100μm以下、もっとも好ましくは5μm以上50μm以下にあることが分かる。
【0077】
(実施例
濾過器は使用時間の経過とともに、濾過材料に捕獲粒子が付着する濾過能力が増加するため、その濾過能力は低下する。従って、プロセスの維持のためには定期的に濾過器をメンテナンスすることが必要であるが、メンテナンスの度に濾過器を使用不能とするのは、プロセススループットを低下させるという観点から好ましくない。
【0078】
その不都合を回避する手段として2本以上の濾過器を切り換えて用いるよう予備濾過器を循環系に並列に配設したものが、図5である。使用中の濾過器の濾過能力が許容値以下になる直前に、予備濾過器に切り換えを行えば、プロセスは中断することなく濾過能力の低下した濾過器のメンテナンスを行うことができる。
【0079】
(実施例
被液相堆積電極(陰極)側から遠ざかる方向に人為的にうず流を作り出すことによって、不純物が陰極に到達しないように工夫した例が図6(a)である。電解液602は、陰極である導電性基体603と陽極金属604の中央下方から排出され循環ポンプ606及び濾過器607を経て液相堆積槽内に回帰する。このとき、液相堆積槽中の溶液は図6(b)に模式的に示すように、うず流を形成するため溶液中に含まれる不純物も流路に添って流れることになり、導電性基体603に付着する不純物を低減させることが出来る。
【0080】
うず流を用いて作製した太陽電池の歩留りを実施例と同様の方法で評価した。その結果を図10にしめす。うず流を用いることによって、うず流を用いない場合に比べ歩留りが相対値で約10%増加した。これによってうず流の使用が素子の歩留り向上に有効であることが確かめられた。
【0081】
なお、うず流の回転軸が基体に垂直で、かつ、流れの方向が基体から遠ざかる方向に発生させて場合も、同様に、基体表面への不純物付着を抑制することができる。もちろん、うず流の回転軸が平行と垂直の中間の角度をもっていても、同様の効果がある。うず流の回転軸の角度は、溶液の種類や基体の構造・位置などに応じて決定すれば良い。
【0082】
うず流の発生源としては、スクリュー等の人工的なものも利用できるし、場合によっては、自然力である重力を利用することも可能である。これは循環系への吸い込み時に自然に生じる渦を利用するものである。また、本発明によるうず流を用いた液相堆積法では、磁気撹拌子等他の手段を用いての溶液の撹拌が不要となり、この点でも有利である。
【0083】
(実施例
本発明を薄膜起電力素子の裏面反射層形成のための製造装置に応用した一例が図10である。基板1001にはステンレスウエブ(表面に金属層が堆積されていてもよい)をコイル状に巻いたものが好んで用いられる。送りだしロール1033から搬出された基板1001は、まず、第1洗浄層1002で表面に付着した粉塵や油脂成分が除去される。洗浄効果を高めるため、第1洗浄層1002にはヒータ1005が具備され洗浄液は適温に保持されている。また、超音波振動板1003を用いて洗浄液を強制振動させ、洗浄効果をさらに向上させている。
【0084】
第1洗浄層1002を通過した基板1001は、続いて第1液相堆積槽1006に搬入される。第1液相堆積槽1006では、実験例4で形成した透明膜bと同等の特性を有する酸化亜鉛膜、即ち、光の散乱率は比較的小さいが、基板1001との密着性に優れている酸化亜鉛膜を堆積する。第1液相堆積槽1006を通過した基板1001は、第2洗浄槽1011内で、第1洗浄槽1002の場合と同様に洗浄が行われる。続いて、基板1001は第2液相堆積槽1022に搬入される。第2液相堆積槽1022では、実験例3で形成した透明膜aと同等の特性を有する酸化亜鉛膜、即ち、基板1001との密着性は劣るが光の散乱特性に優れている酸化亜鉛膜が堆積される。
【0085】
第1液相堆積槽1006および第2液相堆積槽1022を通過することによって基板1001上には基体との密着性に優れ、かつ、光の散乱特性にも優れた酸化亜鉛膜、即ち、実験例7で形成した透明膜eと同等の特性を持つ酸化亜鉛膜が形成されることになる。
【0086】
第2液相堆積槽1022を通過した基板1001は、第3洗浄槽1018内で、第1洗浄槽1002および第2洗浄槽1011の場合と同様に洗浄が行われる。続いて、基板1001はエッチング槽1015に搬入される。エッチング槽1015では、酢酸や硝酸など処理液を用いて酸化亜鉛膜の表面形状を制御し、酸化亜鉛膜の光の散乱特性を更に向上させることが出来る。基板1001は第4洗浄槽1027および第5洗浄槽1036の2つの洗浄槽を通過して十分に酸化亜鉛膜表面を清浄化した後、乾燥室1031で乾燥され巻き取りロール1034によって巻き取られる。
【0087】
本発明による不純物の除去方法は、酸化亜鉛膜形成槽である第1液相堆積槽1006および第2液相堆積槽1022で特に効果を発揮できるものであるが、洗浄槽やエッチング槽など他の処理槽でも適用することは可能である。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、本発明による不純物除手段を具備した酸化亜鉛薄膜形成装置では、異常成長が少なく、密着性の良好な酸化亜鉛膜を高速で形成することができる。また、本発明による不純物除手段を具備した酸化亜鉛薄膜形成装置で形成した酸化亜鉛膜は、散乱率の高い凹凸構造が得られるため、薄膜光起電力素子に応用した場合、高効率の薄膜光起電力素子を歩留り良く、生産することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の液相堆積装置
【図2】 参考例の液相堆積装置(空孔板)
【図3】 参考例の液相堆積装置(遮蔽材)
【図4】 本発明の液相堆積装置(電解液循環)
【図5】 濾過器を並列に配した例
【図6】 本発明の液相堆積装置(渦流)
【図7】 本発明の装置で形成される酸化亜鉛膜を有する光起電力素子の例
【図8】 濾過器の最小捕獲粒径と、光起電力素子の歩留まりの関係
【図9】 渦流の有無による光起電力素子の歩留まりの差異
【図10】 本発明の液相堆積装置(循環装置を有する)を長尺基板に適用した例
【符号の説明】
101 電解液容器
102 電解液
103 導電性基体
104 陽極金属
105 電源
201 電解液容器
202 電解液
203 導電性基体
204 陽極金属
205 電源
206 沈殿槽
207 空孔板
301 液相堆積槽
302 沈殿槽
303 遮蔽材
304 除去液導入コック
305 液相堆積液導入コック
306 排水コック
307 除去液
308 液相堆積液
401 電解液容器
402 電解液
403 導電性基体
404 陽極金属
405 電源
406 循環ポンプ
407 濾過器
408 液相堆積槽
501、502 濾過器
503、504、505、506 コック
508 循環ポンプ
601 電解液容器
602 電解液
603 導電性基体
604 陽極金属
605 電源
606 循環ポンプ
607 濾過器
608 うず流
701 基体
702 金属槽
703 酸化亜鉛膜層
704 半導体層
705 透明導電膜
1001 基体
1002 第1洗浄槽
1003、1013、1020、1028、1037 超音波振動板
1004、1007、1012、1016、1019、1024、1030、1035 循環装置
1005、1009、1014、1017、1021、1023、1029 ヒータ
1006 第1液相堆積槽
1008、1025 亜鉛電極
1010、1026 定電流源
1011 第2洗浄槽
1015 エッチング槽
1018 第3洗浄槽
1022 第2液相堆積槽
1027 第4洗浄槽
1031 乾燥室
1032 搬送ローラ
1033 送りだしロール
1034 巻き取りロール
1036 第5洗浄槽

Claims (10)

  1. 液相堆積槽中の電解液の循環装置が濾過器を有し、前記電解液が少なくとも硝酸イオン、亜鉛イオン及び炭水化物を含有することを特徴とする液相堆積装置。
  2. 前記濾過器の最小捕獲粒径が0.5μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液相堆積装置。
  3. 前記濾過器が前記循環装置中に並列に複数配置されたことを特徴とする請求項1に記載の液相堆積装置。
  4. 前記炭水化物がサッカロース又はデキストリンであることを特徴とする請求項1に記載の液相堆積装置。
  5. 前記炭水化物がサッカロースであり、該サッカロースの濃度が1乃至300g/lであることを特徴とする請求項4に記載の液相堆積装置。
  6. 前記炭水化物がデキストリンであり、該デキストリンの濃度が0.001乃至10g/lであることを特徴とする請求項4に記載の液相堆積装置。
  7. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液相堆積装置における不純物除去方法であって、前記濾過器によって前記電解液中の不純物を除去することを特徴とする不純物除去方法。
  8. 前記炭水化物がサッカロース又はデキストリンであることを特徴とする請求項7に記載の不純物除去方法。
  9. 前記炭水化物がサッカロースであり、該サッカロースの濃度が1乃至300g/lであることを特徴とする請求項8に記載の不純物除去方法。
  10. 前記炭水化物がデキストリンであり、該デキストリンの濃度が0.001乃至10g/lであることを特徴とする請求項8に記載の不純物除去方法。
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