JP3696725B2 - 感光性ガラスペースト用ガラス組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてプラズマディスプレイパネル(PDP)やプラズマアドレス液晶ディスプレイ(PALCD)の製造やその他の電子回路の製造等における高精細パターン形成に用いられる感光性ガラスペースト用ガラス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、ディスプレイや電子回路材料は高精細化が進んでおり、その加工技術の高度化が求められている。例えば将来の壁掛けテレビと目されるPDPにおけるバリアリブの高精細化を見ると、通常幅約50μm、高さ約150 μm、ピッチは42インチVGAで約220 μmであり、これを形成する方法としては従来、厚膜印刷法が用いられていた。この方法は、低融点鉛ガラスペーストをガラス基板上に多数回印刷・乾燥を繰り返した後焼成を行うものであるが、この方法で形成されたバリアリブは現状でも寸法精度に問題があり、今後予想される基板の大型化、バリアリブのアスペクト比(高さ/幅)の増大には対応できない。
厚膜印刷法に代わる新たなバリアリブ形成法としてサンドブラスト法がある。この方法は、リブ材を2〜3回塗布しその上にドライフィルムレジストを貼り付けた後、露光、エッチングでリブとなるところを残し、レジストが除去された部分の塗布層をサンドブラストにより除去してリブの形状にした後、500 ℃以上の温度で焼成するものである。この方法では、レジスト膜をフォトリソグラフ法でパターニングするため、形成されるバリアリブの寸法精度は厚膜印刷法で形成されたものよりも良いが、1枚当たりのサンドブラスト時間が約10分間と長いため、他のバリアリブ形成法に比べて生産性が悪いといった問題がある。また、この方法でもバリアリブ材料には多くの場合低融点鉛ガラスが用いられているため、サンドブラストで取り除いたガラス粉末等の廃棄物の処理が煩雑になるといった問題、サンドブラスト工程における研磨剤の飛散により作業室内のクリーン度が低下するという問題がある。
サンドブラスト法を使わない方法として感光性ドライフィルムレジストを用いるアディティブ法がある。これは、フィルムを露光、エッチングして溝を作りそこへリブ材を流し込んでリブを形成するものであるが、リブ材の流し込みが困難であるという欠点がある。
また、上記3種の方法で使用されているバリアリブの材料は、上述の様に殆どが低融点鉛ガラスであるが、この系のガラスを用いた場合DC(直流)タイプのPDPでは電圧が印加されるとガラス中の鉛が電極周辺に還元析出するという問題が指摘されている。更に鉛系のガラスは環境保全、リサイクル等の観点からも好ましくなく、この系のガラスをPDPのバリアリブ用ガラスとして用いること自体が問題となっている。
近年少ない工程で短時間に精度良くバリアリブを形成できる方法として、感光性を有するガラスペーストを用いるフォトリソグラフ法が開発されているが、所望の高精細バリアリブを作製でき、且つ感光性ガラスペーストのゲル化等の問題を起こさないガラス組成は現在まで見出されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、バリアリブ等の高精細なパターンを形成するのに、毒性の高い鉛成分を含むことなく高精細な加工ができ、且つ容易にゲル化を起こさずにポットライフの長い感光性ガラスペーストを調製することができるガラス組成物が強く望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性ガラスペーストを用いて安定して高精細な加工ができるガラス組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の感光性ガラスペースト用ガラス組成物は、酸化物の重量%表示で、SiO2:10〜25%、Al2O3:10〜22%、B2O3:30〜40%、ZnO:1〜20%、MgO及びCaOのうちの少なくとも1種:5〜12%、SrO及びBaOのうちの少なくとも1種:3〜7%、但し、MgO、CaO、SrO、BaOの合計:8〜17%、Li2O、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも1種:6〜10%の組成を有し、熱膨張係数が72×10−7/K〜80×10−7/K、ガラス転移点が470〜510℃、且つガラスの平均粒径(D 50 )が2〜3μm、最大粒径が30μm以下の粉末状であることを第1の特徴としている。
また本発明の感光性ガラスペースト用ガラス組成物は、上記第1の特徴に加えて、屈折率が1.5〜1.7であることを第2の特徴としている。
また本発明の感光性ガラスペースト用ガラス組成物は、上記第1又は第2の特徴に加えて、プラズマディスプレイパネル或いはプラズマアドレス液晶ディスプレイのバリアリブ形成に用いることを第3の特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性ガラスペースト用ガラス組成物は、上記したような組成とすることで、ペーストのゲル化を防止し、且つ高精細な加工ができる。高精細な加工を行うためにはフォトリソグラフ法の露光時、ペーストを構成する樹脂とガラスとの界面での光散乱を防止し、光の透過率を増大させることが重要である。ガラスの屈折率と感光性樹脂とのそれとを近似させることでこの課題を達成できるが、本発明のガラス組成とすることで感光性樹脂の屈折率に近い所望の屈折率が得られる。
【0006】
先ず、好ましい感光性ガラスペーストを得るための本発明のガラス組成の限定理由について説明する。
SiO2は3〜30重量%とする。SiO2はガラスのネットワークフォーマーとして必須であると共に低屈折率化にも有効である。3重量%未満ではガラス転移点、屈伏点が下がり過ぎると共に熱膨張係数が大きくなり過ぎ、基材に焼き付けた時にクラックを生じる恐れがある。また、屈折率も大きくなり感光性樹脂との屈折率差が大きくなることから、高精細な加工が困難になる。更に、ガラスの化学的耐久性も悪くなる。逆に、SiO2が30重量%を越えるとガラス転移点、屈伏点が上がり過ぎ、例えばPDP製造の工程で採用されている600 ℃前後の温度ではガラス基板に焼き付けるのが困難になる。
SiO2はガラス転移点、屈伏点、熱膨張係数、屈折率、化学的耐久性等を考慮すると、5〜25重量%であることがより好ましく、10〜25重量%であることが更に好ましい
【0007】
Al2O3 は5〜25重量%とする。Al2O3 は含有させることでガラス化範囲を広げてガラスを安定化する効果があるが、Al2O3 が5重量%未満、或いは25重量%を越えると失透傾向が大きくなる。またAl2O3 が25重量%を越えるとガラス転移点、屈伏点が上がり過ぎ、焼き付けが困難になる。
Al2O3 は安定したガラス製造、ガラス転移点、屈伏点等を考慮すると5〜23重量%であることがより好ましく、10〜22重量%であることが更に好ましい。
【0008】
B2O3は28〜47重量%とする。B2O3は鉛等の重金属を含有しないガラスにおいては、低融化のために必須の成分であると共に低屈折率化にも非常に有効な成分である。B2O3が28重量%未満ではガラス転移点、屈伏点が上がり過ぎ、600 ℃前後での温度では焼き付けが困難になる。逆に、47重量%を越えるとガラスの化学的耐久性が悪くなる恐れがある。
B2O3は低融化、低屈折率化、化学的耐久性等を考慮すると、30〜45重量%であることがより好ましく、30〜40重量%であることが更に好ましい。
【0009】
ZnO は0〜45重量%とする。ZnO はガラスの熱膨張係数を大きく変化させることなく低融化させる成分であるが、45重量%を越えると屈折率が大きくなり過ぎ感光性樹脂との屈折率差が大きくなる恐れがある。
ZnO は、屈折率等を考慮すると0〜42重量%であることがより好ましく、低融化、屈折率等を考慮すると1〜20重量%であることが更に好ましい。
【0010】
MgO 及びCaO はガラスの失透を抑制しガラス化範囲を広げるために有効な成分であり、少なくとも1種類を含有させることが必須である。MgO とCaO は合計で1〜25重量%とする。MgO とCaO の合計量が1重量%未満ではガラスが失透する恐れがある。逆に、この合計が25重量%を越えるとガラスの化学的耐久性が悪くなる恐れがある。
MgO とCaO の合計量は、安定したガラス製造、化学的耐久性等を考慮すると、1〜15重量%であることがより好ましく、5〜12重量%であることが更に好ましい。
【0011】
SrO 及びBaO はガラス化範囲を広げる効果があると共にガラスの低融化、熱膨張係数の調整に有効な成分であり、少なくとも1種を含有させることが必須である。SrO とBaO は合計で1〜20重量%とする。SrO とBaO の合計量が1重量%未満では低融化効果が不十分になると共に失透傾向が大きくなる恐れがある。逆に、この合計量が20重量%を越えると熱膨張係数が大きくなり過ぎ、焼き付け時にクラックを生じる恐れがある。また、屈折率も大きくなり過ぎ、感光性樹脂との屈折率差が大きくなり好ましくない。更にガラスの化学的耐久性も悪くなる恐れがある。
SrO とBaO の合計量は、ガラスの低融化、安定したガラス製造、熱膨張係数、屈折率、化学的耐久性等を考慮すると1〜10重量%であることがより好ましく、3〜7重量%であることが更に好ましい。
【0012】
更に、MgO 、CaO 、SrO 、BaO の合計量は、安定したガラス製造、ガラス転移点、屈伏点、熱膨張係数、屈折率、化学的耐久性等のバランスを考慮すると、2〜32重量%とする必要があり、2〜20重量%とすることがより好ましく、8〜17重量%とすることが更に好ましい。
【0013】
Li2O、Na2O及びK2O はガラスの低融化に有効な成分であり、少なくとも1種を含有させることが必須である。Li2OとNa2OとK2O は合計で1〜13重量%とする。Li2O、Na2O、K2O の合計量が1重量%未満では低融化の効果が不十分となる恐れがある。逆に、この合計量が13重量%を越えるとガラスの化学的耐久性が悪くなると共に熱膨張係数が大きくなり過ぎる恐れがある。
Li2O、Na2O、K2O の合計量は、ガラスの低融化、化学的耐久性、熱膨張係数等を考慮すると3〜12重量%であることがより好ましく、6〜10重量%であることが更に好ましい。
尚、アルカリ種の選択に特に限定はないが、ガラスの低屈折率化、マイグレーションによる悪影響等を考えた場合にはLi2Oを選択する方が有利である。
【0014】
次にガラス物性の限定理由について説明する。
ガラスの熱膨張係数は70×10-7/K〜85×10-7/Kとすることが必要である。熱膨張係数が70×10-7/K未満或いは85×10-7/Kを越える場合には、通常用いられるソーダ石灰ガラス基板或いはPDP用の高歪点ガラス基板等とのマッチングが悪く、反りが発生する恐れがある。ガラスの熱膨張係数は72×10-7/K〜80×10-7/Kであることがより好ましい。
【0015】
ガラス転移点は450 〜530 ℃とすることが必要である。ガラス転移点が450 ℃未満では焼成温度が低くなり過ぎ、他部材と同時焼成できなくなること、及び焼成時の脱バインダー性が悪くなることで寸法精度を悪化させたり、未分解有機成分の残存(残炭)による黒化が起こる。またPDPにおいては、残炭により放電特性に悪影響を及ぼす恐れがある。逆に、ガラス転移点が530 ℃を越えると、PDPやPALCDの製造におけるバリアリブ形成において、感光性ガラスペーストを用いたパターン形成後におけるガラス基板への焼き付けの際、前記PDPやPALCDの製造工程で採用されている600 ℃前後の温度ではガラス基板に焼き付けられなくなる恐れがある。
ガラス転移点は、脱バインダー性、焼付性等を考慮すると、470 〜510 ℃であることがより好ましい。
【0016】
また、請求項1に記載の発明において、ガラス組成物の屈折率は1.5〜1.7であることが好ましい。共に用いられる一般的な感光性樹脂の屈折率が1.4〜1.7であるので、ガラス組成物の屈折率を上記の範囲とすることで、両者の屈折率差をフォトリソグラフ法で問題とならない範囲まで小さくすることができる。両者の屈折率差が大きいと光の散乱により高精細な加工はできない。
【0017】
本発明のガラス組成物を用いた感光性ガラスペーストの調製は、主としてバインダーポリマー、光重合性多官能モノマー(又はオリゴマー)、光重合開始剤、その他の添加物からなるビヒクル中に本発明のガラス組成物からなる粉末を均一分散させて行う。
前記バインダーポリマーとしては、主成分であるメチルメタクリラートと各種アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル等とアクリル酸、メタクリル酸等との共重合体及びこれに更に各種不飽和基を付加させたもの等が挙げられる。
前記光重合性多官能モノマー(又はオリゴマー)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリラート、(ジ)ペンタエリスリトール(トリ〜ヘキサ)アクリラート等が挙げられる。これら光重合性多官能モノマー(又はオリゴマー)は、1種のみでは特性(感度、解像度、接着性、パターニング性、現像性等)のバランスがとり難いため、2種以上を混合して使用することが好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アンスラキノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系等が挙げられる。
その他、感光性ガラスペーストの調製においては、必要に応じて熱重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、増感剤、分散剤、溶剤等を添加物として加えることができる。
ここで本発明のガラス組成物からなる粉末の平均粒径(D50)は1.5 μm〜5μm、最大粒径は50μm以下とすることが好ましい。平均粒径が1.5 μm未満である場合には、ペーストを作製する際、樹脂分が多く必要となり、焼成前後での体積収縮が大きくなる結果、高精細、高アスペクト比の加工が困難になる。逆に、5μmを越えると相対的に大粒子が多くなり、その結果、タッピング嵩密度も小さくなって高精細な加工が困難になる。また、最大粒径が50μmを越えると、微細な加工が困難になり、例えばPDPの場合のバリアリブの幅を30μm程度以下とすることが困難になる。
ガラスの平均粒径(D50)及び最大粒径は、それぞれ2〜3μm、30μm以下であることがより好ましい。ガラスの粒度分布としては、あまりシャープではなく、ある程度の分布を持った粒度分布とする方がタッピング嵩密度が大きくなり、よりガラスの詰まった構造となるため、露光時において下部まで光が到達しやすく、設計通りの加工ができる。例えば、D10=0.9 μm、D50=2.6 μm、D90=7.6 μm、最大粒径=22μmで良好な結果が得られている。
ガラス粉末の比表面積は粒度と密接な関係にあるが、1.5 〜3.0 m2 /gが好ましい。ガラス粉末の形状については、ガラスを粉砕したままの状態でも球状化処理したものでも何れでもよいが、より高精細な加工をするには、バーナー処理等で粉末を球状にした方が、光の散乱が少なくなり、露光時に下部まで光が届くため、好ましい。
【0018】
上記した本発明のガラス組成物は、該ガラス組成物を分散させた感光性ガラスペーストを用いることで、フォトリソグラフ法による高精細な加工を、鉛等を含むことなく良好に行うことができるので、プラズマディスプレイパネルやプラズマアドレス液晶ディスプレイ製造における高精細なバリアリブの形成に良好に用いることができる。また、その他の高精細のパターンを良好に形成するための感光性ガラスペーストとして用いることができる。
【0019】
尚、本発明の感光性ガラスペースト用ガラス組成物においては、熱膨張係数や電気特性等の微調整、焼成前後での体積収縮の抑制、着色等の目的で、セラミックス或いはガラス質のフィラー、有機系あるいは無機系の各種顔料等を添加することも可能である。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において使用した原料は、SiO2、Al(OH)3 、H3BO3 、ZnO 、Mg(OH)2 、CaCO3 、SrCO3 、BaCO3 、Li2CO3、Na2CO3及びK2CO3 である。
また実施例及び比較例において、ガラス転移点(Tg)、屈伏点(Mg)、熱膨張係数(α)、屈折率、粒度(平均粒径、最大粒径)、焼付性、クラック及び精細度は下記の方法により測定または評価した。
(1).ガラス転移点(Tg)、屈伏点(Mg)
粒度(表中において平均粒径と最大粒径で表現)を調整したガラス粉末約50mgを白金セルに入れ、示差熱分析装置(DTA)を用いて、アルミナ粉末を標準試料として室温から20K/min で昇温して得られたDTA曲線より、最初の吸熱の開始点(外挿点)の温度をガラス転移点、その吸熱の極小値の温度を屈伏点とした。
(2).熱膨張係数(α)
ガラスを直径約5mm、長さ15〜20mmのロッド状に加工し、熱機械分析装置(TMA)を用い、石英ガラスを標準試料とし室温から10K/min で昇温して得られた熱膨張曲線より50〜400 ℃の平均値として求めた。
(3).屈折率
屈折率はヘリウムd線を光源とし、示差屈折率計を用いるVブロック法により測定した。
(4).粒度(平均粒径(D50)、最大粒径(TOP ))
ガラス粉末50〜100mg を水中で均一に分散させた後、レーザー散乱式粒度分布測定機を用いて測定した。
(5).焼付性、クラック
粒度調整したガラス粉末を非感光性のビヒクル中に均一分散させて作製したガラスペーストを、50mm×50mm×2.8mmtの高歪点ガラス(旭ガラス株式会社製PD-200)基板上にスクリーン印刷法にて40mm×40mmのベタパターンを印刷・乾燥した後、空気中で580 〜610 ℃、30分間焼成して得たサンプルを用いて評価を行った。
焼付性は、ガラス基板への融着の可否を目視して観察し評価した(表中の○は融着可、×は融着不可)。クラックは光学顕微鏡にてガラス膜を観察し、クラックの有無で評価した(表中の○はクラックなし、×はクラックあり)。
(6).精細度
粒度調整したガラス粉末を、バインダーポリマーとしてのメチルメタクリラート、スチレン、メタクリル酸の共重合体(40:30:30)に光重合性多官能モノマーとしてのトリメチロールプロパントリアクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラートと光重合開始剤としてのベンゾフェノンと溶剤としてのγ−ブチロラクトンとを添加してなる感光性ビヒクル中に、均一分散させて作製した感光性ガラスペーストを、300mm ×300mm ×2.8mmtの高歪点ガラス(旭ガラス株式会社製PD-200)上にスクリーン印刷法にて印刷・乾燥を行い、次いでフォトリソグラフ法にてストライプ状に線幅約50μm、高さ約150 μm、ピッチ約220 μmのパターンを形成し、モノエタノールアミン水溶液に浸漬して現像したものを水洗、乾燥した後、空気中にて580 〜610 ℃、30分間焼成して得たサンプルを用いて評価を行った。
精細度はパターンの線幅、高さを光学顕微鏡による観察で評価し、線幅50μm、高さ150 μmの両方が達成されたものを○、何れか一方が達成されたものを△とした。
【0021】
例1(参考例1)
ガラス組成が、SiO2:20.3重量%、Al2O3:22.7重量%、B2O3:33.6重量%、ZnO:2.2重量%、MgO:4.7重量%、CaO:4.4重量%、SrO:3.1重量%、BaO:2.5重量%及びLi2O:6.5重量%になるように各成分原料を秤量、混合した。混合した原料を電気炉中の白金ルツボに投入して1200℃で2時間溶融し、均質になるように攪拌した後、双ロールで急冷して粉末作製用のガラスフレークを得ると共に、あらかじめ加熱しておいたホットプレート上に流し出して熱膨張係数、屈折率測定用のガラスディスクを得た。ガラスフレークは粉砕・分級にて粒度調整を行い、D50=2.8μm、最大粒径=26.2μmのガラス粉末を得た。また、上述の方法で各物性を測定した。例1(参考例1)の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の例1(参考例1)に示す様に、ガラス転移点(Tg)は499℃、屈服点(Mg)は533℃、熱膨張係数(α)は75×10−7/K、屈折率は1.55であった。この粉末を用いて得られた感光性ガラスペーストは焼付性が良好で、590℃で焼成されたガラス膜中にクラックはなく、高精細な加工ができた。
【0024】
例2〜15(実施例2−2、3、4、10)、(参考例2−1、2−3、5〜9、11〜15)
例1(参考例1)と同様に各成分原料を秤量、混合し、電気炉中の白金ルツボに投入して1200〜1300℃で2時間溶融し、更に例1と同様の方法でガラス粉末、測定用サンプルを得た。例2〜15(実施例2−2、3、4、10、参考例2−1、2−3、5〜9、11〜15)についての結果を表1に示す。
尚、例2においては、平均粒径(D50)と最大粒径(TOP)との3種類の組み合わせにより、例2−1(参考例2−1)、例2−2(実施例2−2)、例2−3(参考例2−3)のガラス粉末及び測定用サンプルを得た。
【0025】
また比較例についても各成分原料を、例1(参考例1)の場合と同様にして、各成分原料を秤量、混合し、電気炉中の白金ルツボに投入して1200〜1300℃で2時間溶融し、更に例1(参考例1)と同様の方法でガラス粉末、測定用サンプルを得た。比較例1〜4についての結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例2−2、3、4、10の本発明のガラス組成物は、ガラス転移点が480〜505℃、屈伏点が517〜538℃、熱膨張係数が74×10−7/K〜80×10−7/K、屈折率が1.55〜1.57の範囲にあり、ソーダ石灰ガラス基板、PDP用の高歪点ガラス基板とのマッチングが良く、フォトリソグラフ法によるパターニング及び600℃前後の焼き付けで安定して高精細な加工ができる。
【0028】
比較例1では、SiO2含有量が30重量%を越えたため、ガラス転移点が541 ℃、屈伏点が597 ℃と高く、熱膨張係数は61×10-7/Kと低くなり、ガラス基板に焼き付けることができなかった。
比較例2では、K2O の含有量が13重量%を越えたため、熱膨張係数が118 ×10-7/Kと高くなり、ガラス基板に焼き付けることはできるものの、ガラス膜中に無数のクラックが発生した
比較例3では、MgO 、CaO 、SrO 、BaO の合計量が32重量%を越えたため、熱膨張係数が87×10-7/Kと高くなり、比較例2と同様に、ガラス膜中にクラックが発生した。
比較例4では、Al2O3 の含有量が25重量%を越えたため、ガラス作製中に失透した。
【0029】
【発明の効果】
本発明は以上の構成及び作用からなり、請求項1に記載の感光性ガラスペースト用ガラス組成物によれば、
鉛成分を含まない感光性ガラスペーストを調整することができる。
またこのガラス組成物を用いて得られる感光性ガラスペーストはゲル化し難く、感光性ガラスペーストのポットライフを長くすることができる。
またこのガラス組成物を用いることで、それが分散せられる感光性樹脂の屈折率との差を小さくすることができ、よってこのガラス組成物を分散させた感光性ガラスペーストを用いることで、フォトリソグラフ法による高精細な加工を行うことが可能となる。
また、このガラス組成物は600℃前後の温度でのガラス基板等への焼き付けが容易であるので、このガラス組成物を分散させた感光性ガラスペーストを用いて、プラズマディスプレイパネル(PDP)やプラズマアドレス液晶ディスプレイ(PALCD)のバリアリブ作製工程等における好ましい焼き付け温度である600℃付近での、ガラス基板への焼き付けを、クラックの発生なく、高精度なパターンで、容易に行うことができる。
ガラス組成物はその平均粒径(D 50 )を2μm〜3μm、最大粒径を30μm以下の粉末状とすることで、該ガラス組成物が分散する感光性ガラスペーストの焼成時における体積収縮を小さく抑えることができ、またガラス組成物のタッピング嵩密度を大きくでき、結果として、フォトリソグラフ法による一層高精細な加工が可能となる。
請求項2に記載の感光性ガラスペースト用ガラス組成物によれば、上記請求項1に記載の構成による効果に加えて、ガラス組成物の屈折率要件を1.5〜1.7とすることで、ガラス組成物と感光性樹脂の屈折率との差を十分に小さくすることができ、よってこのガラス組成物と感光性樹脂とを用いた感光性ガラスペーストを用いることで、フォトリソグラフ法による一層高精細な加工が可能となる。
請求項3に記載の感光性ガラスペースト用ガラス組成物によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による効果に加えて、請求項1又は2の何れかに記載のガラス組成物を感光性ガラスペーストとして、プラズマディスプレイパネル或いはプラズマアドレス液晶ディスプレイのバリアリブ形成に用いると、フォトリソグラフ法による高精細なバリアリブの形成が可能となる。
Claims (3)
- 酸化物の重量%表示で、
SiO2 : 10〜25%
Al2O3 : 10〜22%
B2O3 : 30〜40%
ZnO : 1〜20%
MgO及びCaOのうちの少なくとも1種 : 5〜12%
SrO及びBaOのうちの少なくとも1種 : 3〜7%
但し、MgO、CaO、SrO、BaOの合計 : 8〜17%
Li2O、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも1種 : 6〜10%
の組成を有し、熱膨張係数が72×10−7/K〜80×10−7/K、ガラス転移点が470〜510℃、且つガラスの平均粒径(D 50 )が2〜3μm、最大粒径が30μm以下の粉末状であることを特徴とする感光性ガラスペースト用ガラス組成物。 - 屈折率が1.5〜1.7であることを特徴とする請求項1に記載の感光性ガラスペースト用ガラス組成物。
- プラズマディスプレイパネル或いはプラズマアドレス液晶ディスプレイのバリアリブ形成に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性ガラスペースト用ガラス組成物。
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