JP3994371B2 - 情報記録ディスク用ガラス基板及びそのガラス基板を用いた情報記録ディスク - Google Patents

情報記録ディスク用ガラス基板及びそのガラス基板を用いた情報記録ディスク Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報記録ディスク用のガラス基板に係り、特に、磁性ディスクなどに好適なガラス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、汎用大型コンピュータやパーソナルコンピュータ用の情報記録媒体として、さらにはデジタル信号で配信される映像を一時的に保管する家庭用のサーバーとして磁気ディスク装置や、携帯性のある情報記録媒体として光磁気ディスクや光ディスクなどが用いられている。
【0003】
例えば、磁気ディスク装置では、従来、基板として汎用向けやデスクトップ型のパーソナルコンピューター用途には3.5インチサイズのアルミニウム基板が、また持ち運び可能なノート型のパーソナルコンピューター用には主に2.5インチサイズのガラス基板が用いられてきた。このガラス基板は、アルミニウム基板に比べ硬くて変形し難く、かつ表面平滑度が優れている。このため、汎用型の3.5インチサイズや3インチサイズの基板にもアルミニウム基板に代えてガラス基板が適用されるようになってきている。また、1.8インチサイズや1インチサイズといった小型携帯端末用の情報記録装置にもガラス基板が適用されようとしている。
【0004】
さらに、情報記録装置や情報記録媒体に対する大容量化の要請が強まっており、近年では年率100%の割合でその記憶容量が増大している。このような記憶容量の増大に対応するには、ディスクに記録する情報の高密度化に伴い記録部のヘッドの浮上量をより低くする必要がある。したがって、ディスクの記録面がより平滑な情報記録ディスクの開発が必要であることからも、情報記録ディスクの基板へのガラス基板の適用が拡大している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のガラス基板では、熱膨張係数の適正化が考慮されているとは言い難い。そのため、従来のガラス基板を用いる情報記録ディスクとこの情報記録ディスクを支えるスピンドルなどとの間の熱膨張係数の不整合から、情報記録ディスクへの情報の記録や読み出しなどにおいてトラックずれが生じることが懸念される。これは今後の大容量化に伴うトラックの高密度化から、より重大な課題になると考えられる。したがって、ガラス基板やスピンドルが熱膨張したときにトラックずれなどを生じないように、ガラス基板の熱膨張係数を適正化することが望まれている。
【0006】
本発明の課題は、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を適正化することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の情報記録ディスク用ガラス基板は、重量百分率で、50%以上70%以下のSiO2と、10%以上25%以下のAl23と、0%以上5%未満のB23と、13%を超え18%未満のR2O(Rはアルカリ金属元素を表す)とを含む構成とすることにより上記課題を解決する。
【0008】
このような構成とすれば、0%以上5%未満のB23と、13%を超え18%未満のR2O(Rはアルカリ金属元素を表す)とすることにより、ガラス基板やスピンドルが熱膨張したときにトラックずれなどを生じないように、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0009】
さらに、重量百分率で10%以下のZnOを含む構成、重量百分率で12%以下のReO(Reはアルカリ土類金属元素を表す)を含む構成、そして重量百分率で7%以下のLa23を含む構成とすれば、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を上昇させることにより情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を適正化できるので好ましい。
【0010】
ところで、ガラス基板は、ガラス本来の性質である割れ易さ、かけ易さ、そしてクラックの入り易さなどの問題を有している。このようなガラスの割れ易さなどの問題を解決するため、ガラス基板に化学強化や、結晶化などを行っている。しかし、化学強化された非晶質のガラス基板では、化学強化の工程におけるアルカリイオンの置換によってガラス基板の表面が荒れてしまうため、平滑性が失われ、将来のヘッド浮上量の低化に対応することが難しい。さらに、化学強化されたガラス基板の表面は、置換されたイオン半径の大きいアルカリイオンが化学的に不安定であるため、生産工程中のガラス基板の洗浄工程や、ガラス基板表面への成膜工程などにおける加熱処理などにおいてアルカリイオンが基板表面に移動して析出し、ガラス基板表面などに形成された膜または層の剥がれや粘着などの不良や、ガラス基板表面などに形成された磁性膜などの磁気特性の劣化などを生ずることが懸念される。加えて、情報記録ディスクの長期間の使用や、高温多湿環境のもとでの保存などにおいても、膜または層の剥がれや粘着などの不良を生ずることや、アルカリイオンがガラス基板表面に移動して析出し、磁性膜などの磁気特性が劣化することが懸念される。
【0011】
一方、結晶化ガラス基板は、非晶質なガラスの中に結晶質の微粒子が生成している状態になっており、この非晶質部分と結晶部分との硬度差により研磨速度が異なるため、情報記録ディスクに求められている高密度化に対応できるような十分な平滑性を持った記録面を作り難いという問題があった。
【0012】
このような化学強化や結晶化したガラス基板の問題を解決するため、発明者らは、特開平10−083531号公報などに、ガラス基板に希土類イオンを含有させることにより機械的強度を向上することを提案している。これにより、化学強化や結晶化しなくても十分な強度のガラス基板が得られるため、ガラス基板や、このガラス基板を用いた情報記録ディスクの製造または加工工程におけるガラス基板表面の荒れや、情報記録ディスクの長時間の使用や保存などによるガラス基板表面の荒れなどが起こらず、ガラス基板表面の十分な平滑性を保つことができる。すなわち、情報記録ディスクに求められている高密度化に対応できるような十分な平滑性を持った記録面を有するガラス基板を作ることができる。
【0013】
しかし、特開平10−083531号公報などに提案した希土類イオンを含むガラス基板では、ガラス基板や情報記録ディスクの生産時における不良品発生の抑制、不良品の発見、さらに、化学的耐久性や、磁気ディスク装置や光磁気ディスクなどに加工した場合に必要な磁気特性などが十分に考慮されているとは言い難く、これらの観点からの情報記録ディスク用ガラス基板としての品質の向上が求められている。
【0014】
これに対し、重量百分率で、50%以上70%以下のSiO2と、10%以上25%以下のAl23と、0%以上5%未満のB23と、 13%を超え18%未満のR2O(Rはアルカリ金属元素を表す)と、1%以上8%以下のLn23(LnはPr、Nd、Sm、またはEuを表す)とを含む構成とする。
【0015】
このような構成にすれば、1%以上8%以下のLn23(LnはPr、Nd、Sm、またはEuを表す)により、ガラス基板を適度に着色し、かつ適度な透過率にできるため、ガラス基板中の気泡やその他の混入物を目視により発見し易くなる。さらに、ガラス基板の加工や洗浄工程、そして情報記録ディスクの加工工程などにおいてガラス基板が視認し易いため、ガラス基板に傷をつけるなどの加工不良などを抑制できる。加えて、ガラス基板を磁気ディスク装置や光磁気ディスクなどに用いる場合には、ガラス基板の磁化量を低減し、磁気特性のばらつきを低減することができる。したがって、ガラス基板や情報記録ディスクの生産時における不良の発生などを抑制でき、さらに磁気特性のばらつきを低減することができるため、情報記録ディスク用ガラス基板の品質を向上できる。すなわち、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を適正化でき、かつ情報記録ディスク用ガラス基板の品質を向上できる。
【0016】
また、Ln23を構成するLnがPrである構成とすれば、情報記録ディスク用ガラス基板の品質をさらに向上できるので好ましい。
【0017】
さらに、30℃〜100℃の温度範囲で測定される熱膨張係数が73×10−7/℃以上86×10−7/℃以下であり、波長300nm〜700nmの可視光における透過率が50%以上85%以下であり、1kOeの磁界を印加したときの磁化が3×10−3emu/cc以下である情報記録ディスク用ガラス基板とする。このような情報記録ディスク用ガラス基板とすれば、ガラス基板の熱膨張係数を適正化でき、かつガラス基板の品質を向上できる。
【0018】
また、上記のいずれかに記載の情報記録ディスク用ガラス基板と、このガラス基板の表面上に直接または他の層を介して形成される情報記録層とを有する情報記録ディスクとすれば、ガラス基板の熱膨張係数を適正化できることにより、情報記録ディスクとしての信頼性を向上できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板の一実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板の概略構成を示す平面図である。図2は、本発明を適用してなるガラス基板を用いた磁気ディスクの概略構成を示す断面図である。図3は、本発明を適用してなるガラス基板を用いた磁気ディスクを備えた磁気ディスク装置の概略構成を示す斜視図である。
【0020】
本実施形態の情報記録ディスク用ガラス基板1は、図1に示すように、直径65mmφ、厚さ0.635mmの2.5インチ型の円板状のディスクであり、中央部には、情報記録ディスクとして用いるときに記録や、読み出しまたは再生などを行う装置のモーターなどに連結されたスピンドルなどにディスクを内周チャックなどにより固定するための直径20mmφの円形の貫通穴3が形成されている。また、この内周面及び外周面の両縁角部は、削り取られて45度の面取りがなされており、チャンファー部5となっている。
【0021】
このようなガラス基板1の作製は、以下のように行う。目的のガラス組成になるように定められた量の原料粉末を秤量して混合し、白金製の坩堝に入れて、電気炉中で1600℃で溶解する。原料が十分に溶解した後、攪拌羽を坩堝内のガラス融液に挿入し、約4時間攪拌する。その後、攪拌羽を取り出し、30分間静置した後、鋳型にガラス融液を流し込むことによって直径約70mmφ、厚さ約1mmのガラスブロックを得た。得られたガラスブロックは、このガラスのガラス転移点付近まで再加熱され、徐冷されることで歪み取りが行われる。
【0022】
歪み取りされたガラスブロックを内周と外周とが同心円となるようにコアドリルを用いて切り出す。さらに、内周面と外周面の両縁角部をダイヤモンド砥石により面取り加工し、チャンファー部5を形成する。これにより、穴3を有するディスク状のガラス基板1の概形が形成される。その後、ガラス基板1の両面は、粗研磨され、次いでポリッシングが行われる。ポリッシング後、ガラス基板1は、洗浄剤、純水で洗浄され、情報記録ディスク用ガラス基板1となる。以上のように本発明の情報記録ディスク用ガラス基板1では、化学強化や結晶化処理のような強化処理を施していない。
【0023】
このような情報記録用ディスク用ガラス基板1を用いて形成される情報記録ディスクの1例として、磁気ディスクの作成について説明する。磁気ディスク7は、図2に示すように、本実施形態のガラス基板1の表面つまり記録面上に順次形成された粒径制御層9、配向制御層11、磁性膜13、保護膜15、そして潤滑膜17などで構成されている。粒径制御層9は、磁性膜13の粒径を制御し、配向制御層11は、磁性膜13の配向を制御する。本例では、粒径制御層9は、NiAl系の合金膜を20nmの膜厚で成膜している。配向制御層11は、CrMo系の合金膜を10nmの膜厚で成膜している。情報記録層となる磁性膜13は、CoCrPrB系の磁性膜を20nmの膜厚で成膜している。保護膜15は、Cを4nmの膜厚で成膜している。これらの層または膜は、すべてスパッタリング法を用いて成膜した。また潤滑膜17は、スパッタ終了後、塗布法によって形成した。
【0024】
このような方法により作製した様々な組成の情報記録ディスク用ガラス基板1と、ガラス基板1に磁性膜13などを形成した磁気ディスク7の特性、生産性などを評価し、ガラス基板1の品質を向上するためのガラス組成の検討を行った。
【0025】
まず、添加する希土類元素の種類に着目し、色々な組成のガラスを作製した。表1に、ガラスの組成と、それらのガラスの組成に対するガラス基板及び磁気ディスクの特性を示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003994371
表1において、希土類元素の種類以外は、同一組成で同一量のアルミノホウケイ酸ガラスとした。含有させる希土類酸化物の量はいずれも2.8重量%と一定にした。ガラス基板の特性として、マイクロビッカース硬さ、可視光の透過率、着色性、及びガラス基板の歩留まりを評価した。マイクロビッカース硬さは、荷重500g、荷重印加時間15秒の条件でガラス基板に荷重を印加し、10点の平均値として求めた。可視光の透過率は、分光光度計を用いて300nmから700nmまでの波長の分光透過率曲線より透過率スペクトルを測定し、この波長範囲の光の全透過率の積分値として求めた。着色性は目視により着色の程度を評価し、無色のものは×、着色しているものは○とした。歩留まりの評価は、ガラス基板をレーザー光照射による散乱光により異物数を検査する装置により評価し、気泡、研磨傷、かけ、表面異物などの不良がディスク片面当たり20個以上のものを不良としてカウントし、不良でないものの割合で評価した。
【0027】
また、磁気ディスクの特性として磁化、磁化の標準偏差、記録再生特性、及び磁気ディスクの歩留まりを評価した。さらに、ガラス基板への加工前のガラスブロックの作製から磁気ディスクの作製に至るまでの総合歩留まりを評価した。磁化及び磁化の標準偏差は、B−H曲線を振動試料型磁力計(VSM)によって測定し、磁性膜のヒステリシスループのバックグラウンド成分をガラス基板からの磁性とし、そのバックグラウンド成分の大きさを評価した。なお、磁化及び磁化の標準偏差は、磁界として1kOe印加したときの磁化の大きさである。
【0028】
加えて、磁気ディスクの記録再生特性を評価した。記録再生特性評価に用いた磁気ディスク装置18は、図3に示すように、磁気ディスク7、スピンドル19、図示していないスピンドルモーター、磁気ヘッド21、磁気ヘッドのアーム23、ヘッドを駆動するためのボイスコイルモーター25、筐体27などで構成されている。筐体27には、図示していないスピンドルモーターとボイスコイルモーター25などが固定されている。図示していないスピンドルモーターには、スピンドル19が連結されており、スピンドル19には磁気ディスク7が固定されている。磁気ディスク7は、図示していないスピンドルモーターの駆動によるスピンドル19の回転によって、全体が回転する。一方、ボイスコイルモーター25には、アーム23が取りつけられており、アーム23の先端部には、磁気ヘッド21が取りつけられている。磁気ヘッド21は、ボイスコイルモーター25の駆動によるアーム23の移動によって、所定の浮上量で磁気ディスク7の記録面上を移動する。
【0029】
このような磁気ディスク装置18に、様々な組成のガラス基板を用いて形成した磁気ディスクを搭載し、20Gb/in2に相当する磁気信号を記録して磁気記録再生特性を評価した。この評価を150枚の磁気ディスクに対して行い、十分な記録再生特性が得られたものの割合を磁気ディスク歩留まりとした。さらに、ガラス基板の歩留まりと磁気ディスクの歩留まりとから総合歩留まりを評価した。総合での歩留まりが80%未満のものを×、80%以上90%未満のものを○、90%以上のものを◎とした。
【0030】
表1に示すように、ガラス基板の特性において、マイクロビッカース硬さは、いずれの希土類元素を含むガラス基板でも約650以上が得られており、良好であることが分かった。また、可視光の透過率は、いずれの希土類元素を含むガラス基板でも80%以上であった。希土類元素のうちNd、Pr、Sm、Eu、Ho、Erのいずれか1つを含むガラス基板は、可視光域に希土類のf−f遷移に起因するシャープな吸収が見られた。このため、他の希土類元素を含むガラス基板に比べて透過率は、若干低い。しかし、Nd、Pr、Sm、Eu、Ho、Erの鋭い吸収のため、希土類元素のうちNd、Pr、Sm、Eu、Ho、Erのいずれか1つを含むガラス基板では、明確な着色が見られた。白熱灯下での目視観察による評価では、Prは黄緑、Ndは紫色、Sm、Euは非常に淡いがそれぞれ黄色と桃色に着色しているのが見られた。また、Er、Hoも桃色に着色していた。他の希土類元素を含むガラス基板は、無色であり、着色は見られなかった。
【0031】
これらの基板に対するガラス基板の歩留まりを評価すると、明瞭な着色の見られたPr、Nd、Ho、Erでは加工や洗浄時などに起こる不良、つまり傷などの損傷による不良が着色していないものに比べて少なく、歩留まりが95%以上となった。これは、着色したガラス基板は、加工工程や洗浄工程などにおいて透明なガラス基板よりも目視確認し易いため、取扱いが容易なことからガラス基板に処理作業中に誤って傷をつけるなどガラス基板の損傷の発生を抑制できることにより、歩留まりが向上したと考えられる。
【0032】
また、表には示していないが比較例としてNiを含有する着色性の高いガラス基板について評価したところ、このNiを含有する基板は、透過率が47%と低く、ガラス中に存在する気泡、またはガラス基板の原料の熔融時に坩堝を構成する成分つまり炉材のガラス中への溶損などを発見することが難しく、ガラス基板の表面に気泡や炉材などが残存することにより歩留まりが低かった。
【0033】
このように、透過率とガラス基板及び磁気ディスクの歩留まりとの間に明瞭な相関関係が見られる。透過率が50%未満となると、ガラス基板中に残存する気泡や炉材の混入が発見し難く、歩留まり低下の要因となる。また、ガラス基板の透過率が85%を越えると、ガラス基板が視認し難くなるため、加工や洗浄作業においてガラス基板の取扱いが難しくなり、誤って傷を付けてしまうなどの加工不良が増加する。したがって、ガラス基板の透過率は、視認するのに十分に着色され、かつガラス基板中に残存する気泡や炉材の混入を発見し易い、つまり不良を発見しやすいガラス基板を得る上で、50%以上85%以下とする必要がある。さらに、このような光学的な特性を達成するためにガラス基板に添加する希土類元素は、Pr、Nd、Sm、Eu、Er、またはHoが好ましいことが分かった。このうち、Pr、Nd、Er、またはHoであれば着色が顕著であるためより好ましい。
【0034】
一方、表1に示すように、磁気ディスクの特性において、磁化の特性は、希土類元素のうちSc、Y、Laのいずれか1つを含むガラス基板を用いて形成した磁気ディスクでは、ガラス基板の磁化の大きさが10−4emu/ccのオーダーであり、他の希土類元素を含むガラス基板を用いて形成した磁気ディスクに比べて、極めて小さい磁化量であった。希土類元素としてSmを含むガラス基板を用いて形成した磁気ディスクでは、磁化は反磁性的な挙動を示しており、−4×10−4emu/ccとなった。希土類元素としてPr、Nd、Euのいずれか1つを含むガラス基板を用いて形成した磁気ディスクでは、1.0〜3.0×10−3emu/ccのオーダーであった。
【0035】
希土類元素としてGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのいずれか1つを含むガラス基板を用いて形成した磁気ディスクでは、5×10−3〜2×10−2emu/ccと、磁化の値が他の希土類元素を含む場合に比べて大きくなっていた。磁化の固体差を示す磁化の標準偏差を評価したところ、磁化の大きさの大きいものほど磁化の標準偏差が大きくなっていた。これは、磁化の大きさの大きいものほどガラス基板による磁化のばらつきが大きくなっていることを示す。特に、磁化の大きさが3×10−3emu/ccを超えるGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのいずれか1つを希土類元素として含むガラス基板を用いた磁気ディスクでは、磁化の標準偏差が1×10−3emu/cc以上となり、ガラス基板による磁気特性のばらつきが大きくなった。
【0036】
磁気記録再生特性による磁気ディスクの歩留まりを見ると、磁化が3×10−3emu/cc以下で、磁化の標準偏差が1×10−3emu/cc未満の磁気ディスクでは、十分な磁気特性の得られる磁気ディスクが90%以上と良好であった。しかし、磁化が3×10−3emu/ccを超え、かつ磁化の標準偏差が1×10−3emu/cc以上となる磁気ディスクでは、歩留まりが80%以下と低下していることが分かった。これは、ガラス基板に含有される希土類元素の僅かな固体差によってガラス基板の磁気特性が変化し、これにより標準偏差が大きくなったため、一定の磁界で記録した際の記録にばらつきが生じたものと考えられる。
【0037】
このように、磁化の大きさが3×10−3emu/cc以下であれば磁気記録再生のばらつきが比較的小さい磁気ディスクが得られた。磁化の大きさが3×10−3emu/ccを超えると磁気記録再生特性のガラス基板毎のばらつきが大きくなるため、好ましくない。したがって、ガラス基板が磁気ディスクの磁化に与える影響を低減する上で、磁化の大きさが3×10−3emu/cc以下にすることが必要である。さらに、このような磁気特性を得る上で、希土類元素としてSc、Y、La、Pr、Nd、Sm、Euのいずれか1つをガラス基板に含有させることが好ましい。
【0038】
ガラス基板の歩留まりに与える影響、及び磁気特性が磁気ディスク装置の記録再生特性に及ぼす影響を考慮して総合歩留まりを評価した。その結果、ガラス基板の歩留まりに与える影響、及び磁気特性が記録再生特性に及ぼす影響ともに十分な結果を示し、総合歩留まりが80%以上となったPr、Nd、Sm、Euのうちのいずれか1つを希土類元素として含むガラス基板とすれば、ガラス基板の品質を向上できる。さらに、総合歩留まりが90%となるPrを希土類元素として含むガラス基板とすれば、ガラス基板の品質をより向上することができる。
【0039】
さらに、希土類酸化物の種類と希土類酸化物の添加量の関係について調べた。着色に関して、表1で透明であった希土類元素を含むガラス基板では、希土類元素の含有量を増減させてもガラス基板の透過率に変化は見られなかった。このため、ガラス基板を着色させた希土類元素のうち、Pr、Er、Smについて、その含有量を変化させたガラス基板を作製し、表1と同様の検討を行った。表2に、その検討した結果を示す。
【0040】
【表2】
Figure 0003994371
Prの含有量を変化させていったところ、試料No.17のPrを0.7重量%含有するガラス基板では、マイクロビッカース硬さが低く、ガラスの機械的強度が低いため、研磨傷やかけなどの不良が多く、ガラス基板の歩留まりが82%と低かった。Prを1重量%含有する試料No.16、及びPrを1.5〜7重量%含有する試料No.18〜21では、マイクロビッカース硬さは高い値を示しており、着色、磁気特性ともに十分であった。この事から、試料No.16、及び試料No.18〜21のガラス基板は、総合歩留まりも90%を超えており、良好な結果となった。
【0041】
一方、試料No.22のようにPr含有量が7重量%を超えるものでは、着色に関しては問題無いものの、磁気ディスクの磁化が3×10−3emu/ccを超える値となった。このため、磁化のばらつきが大きくなり、磁気ディスクの歩留まりが80%を下回り十分な結果が得られなかった。さらに、試料No.23のようにPr含有量が10.5重量%のガラス基板では、ガラス中の希土類元素が均一にガラス中に溶解せず、不良品数が増大し、歩留まりが15%と低いため、ガラス基板としては好ましくなかった。
【0042】
希土類元素としてErを含有させたガラス基板では、Er含有量が0.5重量%の試料No.25では、マイクロビッカース硬さが小さいため、十分な強度のガラス基板が得られず、ガラス基板の歩留まりが悪かった。このとき、磁気ディスクの磁化の値が3.1×10−3emu/ccと高く、磁気ディスクとしての歩留まりも低下していた。Er含有量を1重量%から増加させていくと、マイクロビッカース硬さも高くなると共に、透過率が低くなるため、ガラス基板の歩留まりは上昇するものの、磁化が依然として3×10−3emu/ccを超えるため、磁気ディスクの歩留まりが悪かった。このように、希土類元素としてErを用いた場合では、ガラス基板としての硬さや光学特性、磁気ディスクとしての磁気特性の両方を同時に満たす組成範囲が存在しないことが分かった。
【0043】
希土類元素としてSmを含有させたガラス基板では、ガラス基板の光学的特性については、Sm含有量が2.5重量%以上であると透過率が85%以下で適正な範囲となった。磁気ディスクとしての磁気特性は、Smを10重量%含有させても適正であったが、Smの含有量が10重量%を超えるとPrの場合と同様にガラス中に残存原料が残るため好ましくなかった。
【0044】
同様に、希土類元素としてNd,Eu,Hoを含有させたガラス基板について検討を行ったところ、Nd、Euについては、Smと同様の結果が得られたが、NdまたはEuの含有量が8重量%を越えると磁気ディスクとしての磁気特性が低下し好ましくなかった。Hoについては、希土類元素としてErを含むガラス基板と同じく、ガラス基板の光学的特性と磁気ディスクとしての磁気特性の両者を同時に満たす組成範囲が存在しなかったたため、好ましい結果が得られなかった。
【0045】
このように、希土類元素としてPr、Nd、Sm、Euを含有させ、含有させる希土類酸化物の濃度を1重量%以上8重量%以下にすることにより、ガラス基板の光学的特性において、ガラス基板の視認性を向上してガラス基板の加工時などに生じる傷やかけなどの不良の発生を低減し、また、品質検査などにおけるガラス基板中の気泡、脈理、異物、傷、かけなどの不良の発見を容易にできる。さらに、磁気ディスクや光磁気ディスクとした場合の磁気特性において、ガラス基板の磁化を低減できるため、磁気ディスクや光磁気ディスクに加工された場合の磁化特性に与えるガラス基板の影響を低減できる。したがって、ガラス基板の品質を向上できる。
【0046】
さらに、希土類元素としてPrを含ませ、その希土類酸化物の濃度を1.5重量%以上5.2重量%以下とすれば、総合歩留まりが90%以上となり、ガラス基板の品質を一層向上できる。
【0047】
また、希土類元素としてPr、Ndのいずれか1つを含ませる場合以外の場合で、希土類元素としてSmを含ませる場合には、その希土類酸化物の濃度が2.5重量%以上9重量%以下、希土類元素としてEuを含ませる場合には、その希土類酸化物の濃度が2.5重量%以上8重量%以下とすることもできる。
【0048】
なお、希土類元素であるPr、Nd、Sm、Euの含有量が1重量%よりも少ないと、ガラス基板のマイクロビッカース硬さなどで示される機械的強度が低下したり、透過率が高くなり過ぎ、ガラス基板の歩留まりが低下する。すなわち、ガラス基板の傷やかけなどによる不良が増大することとなり、ガラス基板の品質の低下を招く結果となった。一方、希土類元素の含有量が8重量%よりも多いと、ガラス基板の磁化の値が増大し、磁気ディスクや光磁気ディスクに加工された場合に磁気ディスクや光磁気ディスクの磁化特性のばらつきを増大させてしまい、ガラス基板とこのガラス基板を用いた磁気ディスクや光磁気ディスクの品質を低下させてしまうため好ましくない。さらに、希土類元素の含有量が8重量%よりも多いと、ガラス中に原料が残存するばあいがあるため、ガラス基板の品質が低下し好ましくない。
【0049】
次に、情報記録ディスク用ガラス基板として適切なガラス組成について検討するため、ガラスの安定性、熱膨張係数、ガラス基板表面のマイクロビッカース硬度、円環強度、熱サイクル試験について検討した結果を表3に示す。表3に示す各試料において、添加する希土類元素としてPrを用いた。なお、表3のガラス組成の中で、ROとはLiO、NaO、そしてKOを合わせた全アルカリ金属酸化物の含有量を示す。
【0050】
【表3】
Figure 0003994371
ここで、ガラスの安定性では、ガラス溶解後に気泡、脈理、異物などが顕著に見られたものは×とし、気泡、脈理、異物などが見られず、清澄で均質なガラスが得られた場合は○とした。熱膨張係数は、各試料の組成に対応するガラスブロックを作製し、4mm×4mm×15mmの熱膨張測定用試験片を切り出し、熱膨張測定装置を用いて測定した。このとき、測定温度範囲は、30℃〜100℃とした。円環強度は、試料となる2.5″のガラス基板の上面側に、外径22mmφの円環状の部材を載せ、ガラス基板の下面側に内径63mmφ、外径65mmφの円環状の部材を設置した後、これらの円環状の部材に荷重をかけてガラス基板の破壊強度を測定した。
【0051】
熱サイクル試験では、得られたガラス基板を用いて前述と同様に磁気ディスクを作製し、作製した磁気ディスクを図3に示すような磁気ディスク装置に搭載して実施した。熱サイクル試験の結果は、トラックずれによる読み取りエラーなどの問題が生じる割合が1%以下の場合は○を、1%以上の場合は×として示した。このとき、熱サイクルは、0℃で4時間保持した後、昇温して65℃で4時間保持した。さらにこの後、0℃に降温して4時間保持した。このサイクルを10回繰り返し、その間でエラーが生じるか否かを判定した。
【0052】
SiO2の含有量について表3に示す試料No.50〜55などのガラス基板により検討した。SiO2の含有量が49.5重量%のNo.52ガラス基板では、マイクロビッカース硬度、円環強度が十分でなく、情報記録ディスク用ガラス基板として十分な品質ではなかった。しかし、試料No.51に示すようにSiO2の含有量がが50重量%であれば、マイクロビッカース硬さが650を超えるため、ガラス基板として適切であった。また、試料No.55のようにSiO2の含有量が70重量%を超えると、ガラス溶解時に気泡などの発生が顕著になるので好ましくなかった。一方、試料No.54のようにSiO2の含有量が70重量%では、気泡、脈理などの発生がなく、十分な耐水性と機械的強度を有するガラス基板が得られた。
【0053】
このように、SiO2の含有量は50重量%以上70重量%以下とすれば、情報記録ディスク用ガラス基板として十分な耐水性と機械的強度を有するガラス基板を得ることができる。なお、SiO2の含有量が50重量%未満では、マイクロビッカース強度などの機械的強度が低下するため好ましくない。また、SiO2の含有量が70重量%を超えると気泡、脈理などが発生し、清澄で均質なガラスを得難いので好ましくない。
【0054】
Al2の含有量について試料No.56〜59などのガラス基板により検討した。試料No.57のAl2の含有量が26重量%であるガラス基板では、ガラスの熔融温度が高くなりすぎ、1600℃の熔融ではガラスの原料が残存したため好ましくなかった。しかし、試料No.56のAl2の含有量が25重量%のガラスでは、清澄なガラスを得ることができた。このとき、マイクロビッカース硬度、円環強度ともガラス基板として十分な値を示した。一方、Al2の含有量が10重量%の試料No.58のガラス基板でも、マイクロビッカース硬度、円環強度共にガラス基板として十分な値を示し、かつ清澄なガラス基板が得られた。しかし、Al2の含有量が9.5重量%のNo.59のガラス基板では、ガラス中に脈理などの不均質が生じ、清澄なガラスを得ることができなかった。
【0055】
このように、Al2の含有量が10重量%以上25重量%以下とすれば、情報記録ディスク用ガラス基板として十分な機械的強度を有し、かつ十分な安定性を有するガラス基板、つまり清澄で均質なガラス基板が得られた。なお、Al2の含有量が10重量%未満であると、清澄で均質なガラス基板が得られなかった。一方、Al2の含有量が25重量%を超えたときも、ガラス中に原料成分が残存し、清澄なガラスを得ることができなかった。
【0056】
LiO、NaO、KOを合わせた全アルカリ酸化物の含有量(表中のRO)とガラス基板の熱膨張係数の変化について試料No.42〜49などにより検討した。試料No.44、45のガラス基板ようにアルカリ金属酸化物の含有量が少ないガラスでは、熱サイクル試験においてトラックずれによるエラーが確認された。試料No.48、49のようにアルカリ金属酸化物の含有量が多い場合にも同様にトラックずれによるエラーが生じる磁気ディスク装置が確認された。
【0057】
これらのガラス基板の熱膨張係数を見ると、試料No.44、45のガラス基板では、各々71.0×10−7/℃、58.3×10−7/℃となっており、一般的にスピンドルの材料として用いられるステンレス鋼などの熱膨張係数である80×10−7/℃に比較して小さくなっている。また試料No.48、49のガラス基板では、各々87.4×10−7/℃、95.1×10−7/℃となっており、スピンドルを形成する材料の熱膨張係数に比べて大きくなっていた。したがって、このようなガラス基板の熱膨張係数とスピンドルの熱膨張係数との差が、熱サイクルによるガラス基板の熱膨張とスピンドルの熱膨張との差となり、図1に示すような情報記録ディスク1の貫通穴3の熱膨張が図3に示すような磁気ディスク装置18のスピンドル19の熱膨張よりも大きくなって、貫通穴3とスピンドル19との間の嵌合状態に不具合が生じ、トラックずれが生じたものと考えられる。
【0058】
このようにガラス基板の熱膨張係数は、含有するアルカリ金属酸化物に大きく依存するが、表3に示す結果から、アルカリ金属酸化物の含有量が13.0重量%以下となると、ガラス基板の熱膨張係数がスピンドルを形成する材料の熱膨張係数より小さくなり過ぎ、熱サイクル試験においてトラックずれが生じるため好ましくなかった。また、18.0重量%以上になると、ガラス基板の熱膨張係数がスピンドルを形成する材料の熱膨張係数より大きくなり過ぎ、やはり熱サイクル試験においてトラックずれが生じるため好ましくなかった。一方、アルカリ金属酸化物の含有量が13.0重量%を超え18.0重量%未満であれば、熱サイクル試験においてトラックずれなどの問題はほとんど生じなかった。また、試料No.43のガラス基板のように熱膨張係数が73.0×10−7/℃以上であり、試料No.47のガラス基板のように熱膨張係数が86.0×10−7/℃以下であれば、熱サイクル試験でトラックずれなどの問題はほとんど生じない磁気ディスク装置が得られた。
【0059】
したがって、アルカリ金属酸化物の含有量が13.0重量%を超え18.0重量%未満であれば、ガラス基板の熱膨張係数がトラックずれなどの問題を生じない適正範囲、すなわち73.0×10−7/℃以上86.0×10−7/℃以下となり、ガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0060】
の含有量について試料No.60〜63などのガラス基板より検討した。Bを含有していないか、Bの含有量が3重量%以下である試料No.60〜62のガラス基板は、気泡や脈理などが少なく十分に均質であり、かつ熱膨張係数、ビッカース硬度や円環強度などの機械的強度も適正な値を示した。一方、Bの含有量が5重量%である試料No.63のガラス基板は、熱膨張係数が小さくなって適正範囲からはずれ、熱サイクル試験においてトラックずれを生じる磁気ディスク装置が見られた。
【0061】
このように、Bの含有量は、0重量%以上5重量%未満であればガラス基板の熱膨張係数を適正化でき、熱サイクル試験においてトラックずれが生じない。なお、表3には示していないが、Bの含有量が5重量%以上であると、熱膨張係数が適正範囲外となるため好ましくなかった。
【0062】
ここで、試料No.63〜72のガラス基板などのように、これまでに述べたガラス基板の組成にMgO、CaOなどのアルカリ土類金属、またはZnOを含有させると、いずれもガラス基板の熱膨張係数を上昇させる効果があり、ガラス基板の熱膨張係数を適正化する上で好ましい。MgO、CaOなどのアルカリ土類金属では、表3には示していないが、ガラス基板への含有量が12重量%を超えるとクラックが発生することにより、マイクロビッカース硬度が適正な範囲にあるにもかかわらず円環強度が低減した。したがって、アルカリ土類金属酸化物は、含有させるとガラス基板の熱膨張係数を上昇させる効果があるが、12重量%を超えるとガラス基板の機械的強度が低下してしまう。このため、アルカリ土類金属酸化物であるMgOとCaOの含有量は、0重量%以上12重量%以下であれば、十分なビッカース硬度や円環強度、つまり機械的強度を有し、ガラス基板の熱膨張係数を適正化したガラス基板を得ることができる。
【0063】
試料No.73、74のガラス基板は、アルカリ土類金属酸化物としてMgO、CaO、そしてBaOを2種類同時に含有させたものである。表3には示していないが、この例のように2種類以上のアルカリ土類金属を同時にガラス基板に含有させることにより、アルカリ金属元素やアルカリ土類元素のガラス基板からの析出または溶出が抑制できる。これにより、ガラス基板の表面に形成した磁性膜などの情報記録層の剥離などを抑制でき、化学的な安定性を向上することができる。なお、2種類のアルカリ土類金属をガラス基板に含有させる場合でも、クラックの発生を抑制する上で、含有量は12重量%以下とする必要がある。
【0064】
一方、ZnOでは、試料No.72のガラス基板などに示されるように、含有量が10重量%を超えるとガラス基板中に結晶の析出が著しくなるため好ましくない。ZnOの含有量が10重量%では、このような結晶の析出は認められなかった。したがって、ZnOの含有量は、0重量%以上10重量%以下であることが好ましかった。
【0065】
これまでに述べたガラス基板の組成に希土類元素であるLaを含有させることでも、ガラス基板の熱膨張係数を上昇させる効果があり、ガラス基板の熱膨張係数を適正化する上で好ましい。試料No.75〜77のガラス基板ようにLaの含有量が7重量%以下の場合にはガラスの脈理や気泡の発生が見られず、良好なガラスが得られた。一方、試料No.78のガラス基板では、熱膨張係数、マイクロビッカース硬さなどでは十分な特性が得られたものの、ガラス基板中に脈理の発生が見られ、十分なガラスの安定性が得られ難かった。
【0066】
このように、7重量%以下のLaをガラス基板に含有させると機械的強度を損なうことなくガラス基板の熱膨張係数を上昇させて、ガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。しかし、7重量%を超えてLaをガラス基板に含有させると十分なガラスの安定性が得られ難いため好ましくない。
【0067】
以上説明したように、50重量%以上70重量%以下のSiO2と、10重量%以上25重量%以下のAl23と、0重量%以上5重量%未満のB23と、13重量%を超え18重量%未満のR2O(Rはアルカリ金属元素を表す)とを含む構成の情報記録ディスク用ガラス基板とする。これにより、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数と情報記録ディスクの貫通穴に嵌合されて情報記録ディスクを支持するスピンドルの熱膨張係数との間の差が低減し、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数がトラックずれなどの問題を生じない適正範囲、すなわち73.0×10−7/℃以上86.0×10−7/℃以下となるため、ガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0068】
さらに、10重量%以下のZnOを含む構成や、12重量%以下のReO(Reはアルカリ土類金属元素を表す)を含む構成、そして重量百分率で7%以下のLa23を含む構成とすることによっても、ガラス基板の熱膨張係数を上昇させることができるため、ガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。また、合計で重量百分率で12%以下の2種類以上のReO(Reはアルカリ土類金属元素を表す)を含む構成とすれば、ガラス基板の化学的な安定性を向上し、かつガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0069】
さらに、1重量%以上8重量%以下のLn23(LnはPr、Nd、Sm、またはEuを表す)とを含む構成とすれば、ガラス基板の視認性を向上してガラス基板の加工時などに生じる傷やかけなどの不良の発生を低減し、また、品質検査などにおけるガラス基板中の気泡、脈理、異物、傷、かけなどの不良の発見を容易にできる。さらに、磁気ディスクや光磁気ディスクに用いる場合には、ガラス基板の磁化を低減できるため、磁気ディスクや光磁気ディスクに加工された場合の磁化特性に与えるガラス基板の影響を低減できる。したがって、ガラス基板の品質を向上でき、かつガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0070】
また、Ln23を構成するLnがPrであれば、不良の発生をより低減でき、不良発見をより容易化でき、さらに、磁気ディスクや光磁気ディスクに加工された場合の磁化特性に与える影響をより低減できることから、ガラス基板の品質をより向上することができる。
【0071】
ただし、La以外の希土類元素、すなわちPr、Nd、Sm、またはEuは、ガラス基板の熱膨張係数の変化にあまり影響しないため、不良の発生の低減、不良発見の容易化、さらに、磁気ディスクや光磁気ディスクに加工された場合の磁化特性に与える影響の低減の面におけるガラス基板の品質の向上が必要ない場合には、希土類元素としてPr、Nd、Sm、またはEuを含有させない構成にできる。さらに、ガラス基板の機械的強度を化学強化や結晶化によって得る場合には、希土類元素をガラス基板に含有させない構成にできる。
【0072】
さらに、30℃〜100℃の温度範囲で測定される熱膨張係数が73×10−7/℃以上86×10−7/℃以下であり、波長300nm〜700nmの可視光における透過率が50%以上85%以下であり、1kOeの磁界を印加したときの磁化が3×10−3emu/cc以下である情報記録ディスク用ガラス基板とする。このようなガラス基板とすることでも、ガラス基板の品質を向上でき、かつガラス基板の熱膨張係数を適正化できる。
【0073】
さらに、本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板を用いた情報記録ディスクでは、ガラス基板の熱膨張係数が適正化されてトラックずれなどが生じ難いため、情報記録ディスクとしての信頼性を向上できる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、情報記録ディスク用ガラス基板の熱膨張係数を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板の一実施形態の平面図である。
【図2】本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板の一実施形態の断面図である。
【図3】本発明を適用してなる情報記録ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクを備えた磁気ディスク装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 情報記録ディスク用ガラス基板
3 貫通穴
5 チャンファー部

Claims (5)

  1. 重量百分率で、
    50%以上70%以下のSiO2と、
    10%以上25%以下のAl23と、
    0%以上5%未満のB23と、
    13%を超え18%未満のRO(Rはアルカリ金属元素を表す)と、
    1%以上8%以下のPr 2 3 と、
    1%以上10%以下のZnOとを含む情報記録ディスク用ガラス基板。
  2. 重量百分率で12%以下のReO(Reはアルカリ土類金属元素を表す)を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報記録ディスク用ガラス基板。
  3. 重量百分率で7%以下のLa23を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録ディスク用ガラス基板。
  4. 請求項1に記載の情報記録ディスク用ガラス基板であって、30℃〜100℃の温度範囲で測定される熱膨張係数が73×10−7/℃以上86×10−7/℃以下であり、波長300nm〜700nmの可視光における透過率が50%以上85%以下であり、1kOeの磁界を印加したときの磁化が3×10−3emu/cc以下であることを特徴とする情報記録ディスク用ガラス基板。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の情報記録ディスク用ガラス基板と、該ガラス基板の表面上に直接または他の層を介して形成される情報記録層とを有する情報記録ディスク。
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