JP3695414B2 - 発電機の制御装置およびこれを備える動力出力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電機の制御装置およびこれを備える動力出力装置に関し、詳しくは、駆動系の回転軸から動力伝達部材を介して伝達される動力を用いて発電する発電機の制御装置およびこれを備える動力出力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンからの動力とモータからの動力とをトランスミッションを介して駆動軸に出力するものが提案されている(例えば、特開2000−43591公報など)。この装置では、モータに必要な動力を、エンジンの出力軸にベルト掛けにより取り付けられた発電機によって発電している。また、この種の発電機の制御装置としては、エンジンからの動力により発電すると共にエンジンを始動する電動発電機の制御装置であって、電動発電機により充放電可能な二次電池の残容量に基づいて電動発電機の発電量を決定するものが提案されている(例えば、特開2000−125414公報など)。この装置では、二次電池の残容量から許容される電力を求め、これを実回転数で除したものに換算用の係数を乗じて発電トルクを算出し、この発電トルクを用いて電動発電機を駆動制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした発電機の制御装置を備える動力出力装置では、モータが要求する電力や二次電池の充電に必要な電力に基づいて発電量を決定しているため、算出された発電トルクによってはベルト滑りが生じたり、ベルトに破損を生じさせてしまう場合がある。
【0004】
本発明の発電機の制御装置は、動力伝達部材に滑り,破損が生じないように発電機を駆動制御することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置は、要求された動力をより確実に出力することを目的の一つとする。
【0005】
なお、出願人は、上述の目的を達成する一つの手法として、動力伝達部材の性状に基づいて発電トルクを設定し発電機を駆動制御するものを提案している(特願2001−130930)。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の発電機の制御装置およびこれを備える動力出力装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の発電機の制御装置は、
駆動系の回転軸から動力伝達部材を介して伝達される動力を用いて発電する発電機の制御装置であって、
発電要求がなされたとき、該発電要求と前記動力伝達部材の性状とに基づいて前記発電機により発電すべき目標発電電力を設定する目標発電電力設定手段と、
前記駆動系の回転軸に要求される要求動力として所定の低回転高トルク領域の動力が指示されたとき、前記駆動系の回転軸に出力可能な動力の範囲が前記設定された目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう前記設定された目標発電電力を制限する目標発電電力制限手段と、
前記目標発電電力が出力されるよう前記発電機を駆動制御する駆動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の発電機の制御装置では、発電要求がなされたときに動力伝達部材の性状を考慮して目標発電電力を設定するから、動力伝達部材の滑り,破損を防止することができる。さらに、駆動系の回転軸に所定の低回転高トルク領域の動力が要求されたときには駆動系の回転軸に出力可能な動力の範囲が目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう目標発電電力を制限するから、動力伝達部材の滑り,破損をより確実に防止することができると共に駆動系の回転軸に出力可能な動力の範囲を広くすることができる。
【0009】
こうした本発明の発電機の制御装置において、前記目標発電電力制限手段は、前記駆動系の回転軸に要求される回転数および/またはトルクに基づいて前記目標発電電力を制限する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動系の回転軸に要求される回転数やトルクに応じて目標発電電力の制限を行うことができるから、目標発電電力の制限をより適正に行うことができる。この態様の本発明の発電機の制御装置において、前記目標発電電力制限手段は、前記駆動系の回転軸に要求される回転数が小さいほど前記目標発電電力を大きく制限する手段であるものとしたり、前記駆動系の回転軸に要求されるトルクが大きいほど前記目標発電電力を大きく制限する手段であるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の発電機の制御装置において、前記発電機による発電で充電可能な二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、前記目標発電電力制限手段は、前記検出された二次電池の残容量に基づいて前記目標発電電力を制限する手段であるものとすることもできる。こうすれば、二次電池の残容量に応じて目標発電電力の制限ができるから、二次電池の過放電を防止することができる。この態様の発電機の制御装置において、前記目標発電電力制限手段は、前記検出された二次電池の残容量が所定量未満のときには、前記目標発電電力の制限を行なわない手段であるものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の発電機の制御装置において、前記所定の低回転高トルク領域の動力は、前記駆動系の回転軸の回転を加速する方向の動力であるものとすることもできる。
【0012】
こうした本発明の発電機の制御装置において、前記動力伝達部材は、前記駆動系の回転軸と前記発電機の回転軸とに掛けられたベルトであるものとすることもできる。
【0013】
本発明の第1の動力出力装置は、
内燃機関からの動力を直接または間接に駆動軸に出力可能な動力出力装置であって、
前記内燃機関の出力軸を前記駆動系の回転軸とする上述のいずれかの態様の本発明の発電機の制御装置と、
該発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲内で、前記発電機により前記目標発電電力を発電する際に必要な動力と前記要求動力との和の動力が前記内燃機関の出力軸に出力されるよう該内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0014】
この本発明の第1の動力出力装置では、上述したいずれかの態様の本発明の発電機の制御装置を備えるから、動力伝達部材の性状や内燃機関への要求動力を考慮して発電機を駆動制御することができる。従って、動力伝達部材の滑り,破損を防ぐことができる。また、内燃機関の出力軸に所定の低回転高トルク領域の動力が要求されたときには設定された目標発電電力を制限することにより、発電機の発電量に基づいて設定される許容動力を大きくして対応可能な要求動力の範囲を広くすることができる。この結果、広い範囲の要求動力に対応する動力を内燃機関から出力することができる。
【0015】
こうした本発明の第1の動力出力装置において、前記発電機は、電動機として機能して前記内燃機関をクランキング可能な電動発電機であるものとすることもできる。
【0016】
また、本発明の第1の動力出力装置において、前記所定の低回転高トルク領域の動力は、回転停止状態にある前記駆動軸を回転させる際に要求される動力であるものとすることもできる。
【0017】
さらに、本発明の第1の動力出力装置において、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機を備え、前記目標発電電力制限手段は、前記駆動軸に入出力される動力を用いて前記電動機により発電できない状態のときには、前記目標発電電力の制限を行なわない手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機が発電できないときには、発電機により必要な電力を得ることができる。
【0018】
この電動機を備える態様の本発明の第1の動力出力装置において、前記内燃機関から出力される動力と前記電動機から入出力される動力とを統合する動力統合手段と、該動力統合手段により統合された動力を入力する入力軸と前記駆動軸に接続された出力軸とを有し該入力軸の動力を変速して該出力軸に出力する変速手段とを備えるものとすることもできる。
【0019】
本発明の第2の動力出力装置は、
内燃機関と該内燃機関の出力軸に接続された発電機とを備える動力出力装置であって、
前記発電機へ発電要求がなされたとき、発電すべき目標発電電力を設定する目標発電電力設定手段と、
前記内燃機関の出力軸に要求される要求動力が所定範囲の動力であるとき、前記発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲が前記設定された目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう前記目標発電電力を制限する目標発電電力制限手段と、
前記許容動力の範囲内で、前記目標発電電力を発電する際に必要な動力と前記要求動力との和の動力が前記内燃機関の出力軸に出力されるように該内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0020】
この本発明の第2の動力出力装置では、内燃機関の出力軸に要求される要求動力が所定範囲の動力であるときには発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲が目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう目標発電電力を制限するから、発電機の発電量に基づいて設定される許容動力を大きくして対応可能な要求動力の範囲を広くすることができる。この結果、広い範囲の要求動力に対応する動力を内燃機関から出力することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例としての発電電動機の制御装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の発電電動機の制御装置20は、図示するように、エンジン10のクランクシャフト11に掛けられたベルト12を介してエンジン10からの動力により発電したりエンジン10をクランキングして始動する発電電動機としてのスタータモータジェネレータ(以下、スタータMGと略す)13を駆動制御する制御装置であり、電子制御ユニット30を中心として構成されている。
【0022】
エンジン10は、例えばガソリンや軽油により駆動する内燃機関として構成されている。エンジン10のクランクシャフト11は図示しないダンパ等を介して有段または無段の変速機14に接続されており、エンジン10からの動力が変速機14を介して駆動軸15に出力されるようになっている。エンジン10の運転制御、例えば燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などは、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16により行なわれている。エンジンECU16は、電子制御ユニット30と通信しており、電子制御ユニット30に必要に応じてエンジン10の運転状態に関するデータを出力している。
【0023】
スタータMG13は、インバータ回路17を介して二次電池としてのバッテリ18と電力の授受を行なっており、電子制御ユニット30による駆動制御を受けている。
【0024】
電子制御ユニット30は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU32の他に処理プログラムを記憶するROM34と、データを一時的に記憶するRAM36と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット30には、スタータMG13に取り付けられた回転数センサ40により検出されるスタータMG13の回転数Nstやインバータ回路17に取り付けられた図示しない電流センサにより検出されるスタータMG13の相電流,バッテリ18の出力端子間に接続された電圧センサ42により検出されるバッテリ電圧V,バッテリ18からの電力ラインに取り付けられた電流センサ44により検出されるバッテリ電流i,バッテリ18に取り付けられた温度センサ46により検出されるバッテリ温度Tなどが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット30からは、インバータ回路17へスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット30は、前述したように、エンジンECU16と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU16から必要に応じて図示しない回転数センサにより検出されたエンジン10の回転数Neや出力トルクTeなどのデータを入力できるようになっている。
【0025】
次に、こうして構成された実施例の発電電動機の制御装置20の動作について説明する。図2,図3は、スタータMG13を駆動制御するために電子制御ユニット30により実行されるトルク制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
【0026】
トルク制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット30のCPU32は、まず、電流センサ44により検出されるバッテリ電流iや電圧センサ42により検出されるバッテリ電圧V,バッテリ18の残容量(SOC),エンジンECU16から供給されるエンジン10の回転数NeおよびトルクTe,クランクシャフト11に出力するようにエンジン10へ要求される要求動力Pdrqなどの制御に必要なデータを読み込む処理を行なう(ステップS100)。ここで、バッテリ18の残容量(SOC)の読み込みは、実施例では図示しない残容量(SOC)演算ルーチンを実行することによりバッテリ18の充放電電流(バッテリ電流i)の積算に基づいて計算されRAM36の所定アドレスに記憶されたものを読み込むものとした。なお、バッテリ18の残容量(SOC)は、バッテリ18の充放電電流の積算に基づくもの以外のものを用いるものとしてもよいことは勿論である。
【0027】
続いて、バッテリ18の残容量(SOC)に基づいて充放電要求量Pchを算出する(ステップS110)。充放電要求量Pchは、実施例では、実験などにより求めたバッテリ18の残容量(SOC)と充放電要求量Pchとの関係を充放電要求量導出マップとして予めROM34に記憶しておき、残容量(SOC)が与えられると充放電要求量導出マップから残容量(SOC)に対応する充放電要求量Pchが導出されるものとした。
【0028】
次に、バッテリ電流iとバッテリ電圧Vとの積からバッテリ電力Pbを計算し(ステップS120)、計算したバッテリ電力Pbと充放電要求量Pchとから発電要求パワーPstrqを計算する(ステップS130)。発電要求パワーPstrqの計算は、実施例では、バッテリ電力Pbが充放電要求量Pchからのプラスおよびマイナス方向に所定値αでもって設定された充放電量適正範囲内にあるか否かを判定し、バッテリ電力Pbが充放電量適正範囲内のときには現在用いられている発電要求パワーPstrqをそのまま据え置き、バッテリ電力Pbが充放電量適正範囲を下回るときには発電要求パワーPstrqを所定パワー量βだけ増加し、バッテリ電力Pbが充放電量適正範囲を上回るときには発電要求パワーPstrqを所定パワー量βだけ減少するものとした。ここで、所定値αは実施例ではスタータMG13の定格出力の10%を用いた。また、所定パワー量βは発電要求パワーPstrqを変更する際のステップ量であり、スタータMG13の性能や要求される反応速度,このトルク制御ルーチンの繰り返される間隔などによって定められる。
【0029】
続いて、エンジン10の回転数NeとトルクTeとに基づいてベルト12に滑りを生じさせないための発電上限パワーPstmaxを設定する(ステップS140)。発電上限パワーPstmaxの設定は、実施例では、エンジン10の回転数Neとエンジン負荷率と発電上限パワーPstmaxとの関係を実験などにより求めて発電上限パワー導出マップとして予めROM34に記憶しておき、エンジン10の回転数NeとトルクTeとエンジン負荷率とが与えられると記憶した発電上限パワー導出マップから対応する発電上限パワーPstmaxを導出するものとした。発電上限パワー導出マップにおけるエンジン10の回転数Neとエンジン負荷率と発電上限パワーPstmaxとの関係を図4に示す。図4中、曲線Aは回転数Neが1200rpmのときのエンジン負荷率と発電上限パワーPstmaxとの関係を示すものであり、曲線Bは回転数Neが1800rpmのときのエンジン負荷率と発電上限パワーPstmaxとの関係を示すものである。この発電上限パワー導出マップではベルト12の保護のため、エンジン負荷率が大きくなるほど発電上限パワーPstmaxが小さくなるように、エンジン回転数Neが大きくなるほど発電上限パワーPstmaxが大きくなるように設定されており、エンジン10の性能やスタータMG13の性能,ベルト12の性状などにより定められる。なお、図4においてはエンジン回転数Neが1200rpmの場合と1800rpmの場合の2パターンのみ図示しているが、例えば1500rpmの場合には、曲線Aと曲線Bの間の図示しない回転数に対応した曲線によってエンジン負荷率と発電上限パワーPstmaxの関係が決まるのは勿論である。
【0030】
そして、ステップS130で設定した発電要求パワーPstrqとステップS140で設定した発電上限パワーPstmaxとを用いて、目標発電パワーPstを設定する(ステップS150)。目標発電パワーPstの設定は、実施例では、発電要求パワーPstrqを上限ガード値Pstmaxを用いて上限ガード、即ち発電要求パワーPstrqが上限ガード値Pstmaxより大きいときには上限ガード値Pstmaxを選択し、発電要求パワーPstrqが上限ガード値以下のときには発電要求パワーPstrqを選択し、目標発電パワーPstとして設定するものとした。
【0031】
こうして目標発電パワーPstを設定すると、エンジン10への要求動力Pdrqとエンジン回転数Neとに基づいて、エンジン10への要求動力Pdrqが低回転高トルク領域となるか否かを判定する(ステップS200)。要求動力Pdrqの判定は、実施例では、低回転高トルク領域として回転数とトルクの範囲を予めROM34に記憶しておき、上述の判定をする際に記憶された低回転高トルク領域をROM34から読み込んで行うものとした。即ち、要求動力Pdrqとエンジン回転数Neより要求トルクTerqを算出し、このエンジン回転数Neと要求トルクTerqがROM34から読み込んだ低回転高トルク領域内にあるか否かを判定するものとした。低回転高トルク領域として記憶された回転数とトルクの範囲を図5に示す。実施例では、低回転高トルク領域はエンジン最大回転数の30%未満でその回転数におけるエンジン最大トルクの70%以上の領域とした。そして、この判定の結果、エンジン10への要求動力Pdrqが所定の低回転高トルク領域ではないと判定された場合には、後述する目標発電電力の制限(ステップS220〜S230)は行わず、発電トルクの決定(ステップS240)にスキップする。
【0032】
要求動力Pdrqが所定の低回転高トルク領域であると判定されると、次に、バッテリ18に過放電の恐れがないかの判定を行う(ステップS210)。バッテリ18の過放電の判定は、実施例では、バッテリ18の残容量(SOC)に基づいて行う。即ち、バッテリ18の残容量(SOC)が所定の値(例えば、バッテリ18の容量の20%)より小さい場合にはバッテリ18に過放電の恐れがあると判定し、残容量(SOC)が所定の値以上の場合には過放電の恐れがないと判定する。バッテリ18に過放電の恐れがあると判定された場合には、後述する目標発電電力の制限(ステップS220〜S230)は行わず、発電トルクの決定(ステップS240)にスキップする。
【0033】
バッテリ18に過放電の恐れがないと判定されると、次に、エンジン回転数Neに基づいて発電パワー制限値Pstlimを算出する(ステップS220)。発電パワー制限値Pstlimの算出は、実施例では、エンジン10の回転数Neと発電パワー制限値Pstlimとの関係を実験などにより求めて発電パワー制限値導出マップとして予めROM34に記憶しておき、エンジン10の回転数Neが与えられると記憶した発電パワー制限値導出マップから対応する発電パワー制限値Pstlimを導出するものとした。発電パワー制限値導出マップにおけるエンジン10の回転数Neと発電パワー制限値Pstlimの関係を図6に示す。図6において、Pstlim1はエンジン回転数が1200rpmのときの発電パワー制限値を、Pstlim2はエンジン回転数が1800rpmのときの発電パワー制限値を示している。この発電パワー制限値導出マップは、エンジン10を最大負荷率で運転可能な発電上限パワーPstmaxの最大値とエンジン回転数Neとの関係として設定されている。例えば、図7に示すように、目標発電パワーPstを発電パワー制限値Pstlim1に制限すると、発電に必要な動力はa1からa2に減少し、発電以外の動力として出力可能な動力はb1からb2に増大する。即ち、発電に必要な動力の減少分(a1−a2)に加えて、発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲がエンジン負荷率の最大値まで広がる。従って、エンジン10に要求される動力を広い範囲にすることができる。
【0034】
こうして発電パワー制限値Pstlimを設定すると、ステップS150で設定した目標発電パワーPstと発電パワー制限値Pstlimとを比較し(ステップS225)、目標発電パワーPstが発電パワー制限値Pstlimより大きいときには、目標発電パワーPstから所定の発電パワー制限量θだけ減少して目標発電パワーPstを設定する(ステップS230)。ここで、発電パワー制限量θは目標発電パワーPstを制限する際のステップ量であり、スタータMG13の性能や要求される反応速度、このトルク制御ルーチンの繰り返される間隔などによって定められる。
【0035】
そして、目標発電パワーPstとスタータMG13の回転数Nstと効率ηとを用いて次式(1)の計算により発電トルクTst*を計算し(ステップS240)、この発電トルクTst*を用いてスタータMG13を駆動制御して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。
【数1】
Tst*=Pst/Nst/η(1)
【0036】
以上説明した実施例の発電電動機の制御装置20によれば、ベルト12に滑りが生じないよう設定された発電ガード値Pstmaxを用いて目標発電パワーPstを設定するから、ベルト12に滑りが生じない。また、エンジン10に低回転高トルクの動力が要求された場合には、さらに目標発電パワーPstを制限することにより、発電機の発電量に基づいて設定される許容動力を大きくして対応可能な要求動力の範囲を広くすることができる。この結果、広い範囲の要求動力に対応する動力を内燃機関から出力することができる。
【0037】
実施例の発電電動機の制御装置20では、発電要求パワーPstrqに対してバッテリ電力Pbとバッテリ18の残容量(SOC)から導出された充放電要求量Pchとを比較して所定パワー量βずつ増減するフィードバック制御を行なうものとしたが、バッテリ電力Pbと充放電要求量Pchとの偏差にゲインを乗じたものを増減する比例制御や積分制御などを行なうものとしてもよく、あるいはフィードバック制御を行なわずに充放電要求量Pchをそのまま発電要求パワーPstrqに設定するものとしてもよい。
【0038】
実施例の発電電動機の制御装置20では、バッテリ18の残容量(SOC)が所定の値より小さいときには目標発電電力の制限を行わないものとしたが、残容量(SOC)に基づいて発電パワー制限値Pstlimを設定し目標発電電力を制限するものとしてもよい。即ち、残容量(SOC)が小さくなるほど小さな発電パワー制限値Pstlimを設定するものとしてもよい。
【0039】
実施例の発電電動機の制御装置20では、目標発電電力Pstと発電パワー制限値Pstlimとを比較して発電パワー制限量θずつ制限するフィードバック制御を行うものとしたが、目標発電電力Pstと発電パワー制限値Pstlimとの偏差にゲインを乗じたものを増減する比例制御や積分制御などを行なうものとしてもよく、あるいはフィードバック制御を行なわずに発電パワー制限値Pstlimをそのまま目標発電電力Pstに設定するものとしてもよい。
【0040】
実施例の発電電動機の制御装置20では、スタータMG13を発電電動機として構成すると共に電動機として機能させてエンジン10をクランキング可能なものとしたが、エンジン10からの動力により発電する発電機としてのみ機能するものとしても構わない。
【0041】
実施例の発電電動機の制御装置20では、エンジン10の動力が変速機14を介して駆動軸15に出力されるものとしたが、図8に示すような変形例の動力出力装置120に適用してもよい。図示する変形例の動力出力装置120では、実施例の構成と同一の構成については同一の符号を付した。この変形例の動力出力装置120は、図示するように、エンジンECU16によって運転制御されるエンジン10と、エンジン10のクランクシャフト11にベルト12を介して取り付けられたスタータMG13と、モータECU149によって駆動制御される発電可能なモータ140と、エンジン10のクランクシャフト11に接続されたサンギヤ131とブレーキB1によりケース139に固定されるリングギヤ132と二つのピニオンギヤ133,134を自転かつ公転自在に保持すると共にモータ140の回転軸141が接続されたキャリア135とからなるプラネタリギヤ130と、CVTECU159によって変速比が制御されクラッチC1,C2によりキャリア135,リングギヤ132と接続可能なインプットシャフト151から入力される動力を変速してアウトプットシャフト152に出力するCVT14Bと、主としてCPU72やROM74,RAM76により構成され装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0042】
スタータMG13はインバータ回路17を介して図示しない電力ラインによりバッテリ18との電力の授受が可能であり、エンジンECU16を介してハイブリッド用電子制御ユニット70により駆動制御される。また、モータ140はインバータ回路143を介してバッテリ18との電力の授受が可能であり、残容量(SOC)などのバッテリ18の状態に関するデータはモータECU149により必要に応じてハイブリッド用電子制御ユニット70に出力される。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、図示しない入出力ポート,通信ポートによりクラッチC1やクラッチC2,ブレーキB1を駆動制御したりエンジンECU16やモータECU149,CVTECU159と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0043】
こうして構成された変形例の動力出力装置120では、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、モータECU149からバッテリ18の状態に関するデータを出力されると共にエンジンECU16を介してインバータ回路17にスイッチング制御信号などを出力してスタータMG13を駆動制御するものであるから、実施例の電子制御ユニット30と同一の機能を有するものであると言える。従って、ハイブリッド用電子制御ユニット70がスタータMG13を駆動制御するときには、図2,図3に示すトルク制御ルーチンをそのまま適用することができる。さらに、変形例の動力出力装置120では、バッテリ18の充電が可能なモータ140を備えるからモータ140が発電できる状態にあるか否かに基づいてスタータMG13の目標発電電力の制限を行える。例えば、モータ140が発電できる状態のときにはバッテリ18の残容量(SOC)にかかわらず目標発電電力の制限を行うものとしてもよい。この場合、図3に例示したトルク制御ルーチンの後半部分に代えて図9のフローチャートを用いればよい。即ち、バッテリ18の残容量(SOC)がないと判定した場合には(ステップS210)さらにモータ140が発電可能かどうかを判定し(ステップS215)、発電が可能である場合には目標発電電力Pstの制限を行うものとしてもよい。こうすれば、スタータMG13の目標発電電力の制限を行うための制約が緩和されるから、より確実にベルト12の滑り,破損を防止することができる。
【0044】
また、変形例の動力出力装置120を搭載した自動車では、バッテリ18の残容量(SOC)低下時にバック走行するときには、クラッチC1を係合すると共にクラッチC2を開放しブレーキB1をフリクション係合させてリングギヤ132の回転を制限することでエンジン10の動力をキャリア135に逆方向に出力する「エンジンフリクションモード」が選択される。このモードではブレーキB1のフリクション係合による摩耗を防止するためにエンジン10は低回転となりバック発進であることを考慮すると低回転高トルク領域の動力が必要となる。このようなときにも上述のトルク制御ルーチンが効果的に用いられる。
【0045】
実施例の発電電動機の制御装置20や変形例の動力出力装置120では、ベルト12の性状に基づいて目標発電電力を設定しエンジン10へ低回転高トルクの動力が要求された場合に目標発電電力の制限を行うものとしたが、ベルト12の性状に拘わらず目標発電電力を設定するものとしてもよく、さらに、発電量に基づいてエンジン10から出力可能な動力が設定されている場合には、エンジン10へ所定範囲の動力が要求されたときに目標発電電力を制限するものとしてもよい。この場合でも、目標発電電力を制限することにより、発電量に基づいて設定される許容動力を大きくして対応可能な要求動力の範囲を広くすることができる。この結果、広い範囲の要求動力に対応する動力をエンジン10から出力することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての発電電動機の制御装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニット30により実行されるトルク制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】電子制御ユニット30により実行されるトルク制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】発電上限パワー導出マップの一例を示す説明図である。
【図5】低回転高トルク領域として記憶された回転数とトルクの範囲の一例を示す説明図である。
【図6】発電パワー制限値導出マップの一例を示す説明図である。
【図7】発電パワーの制限によるエンジン負荷率の変化の一例を示す説明図である。
【図8】変形例の動力出力装置120の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のトルク制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 エンジン、11 クランクシャフト、12 ベルト、13 スタータモータジェネレータ(スタータMG)、14 変速機、14B CVT、15 駆動軸、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、17 インバータ回路、18 バッテリ、20 発電電動機の制御装置、30 電子制御ユニット、32 CPU、34 ROM、36 RAM、40 回転数センサ、42 電圧センサ、44 電流センサ、46 温度センサ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、120 動力出力装置、130 プラネタリギヤ、131 サンギヤ、132 リングギヤ、133,134 ピニオンギヤ、135 キャリア、139 ケース、140 モータ、141 回転軸、143 インバータ回路、149 モータECU、151インプットシャフト、152 アウトプットシャフト、159 CVTECU、C1,C2 クラッチ、B1 ブレーキ。
Claims (14)
- 駆動系の回転軸から動力伝達部材を介して伝達される動力を用いて発電する発電機の制御装置であって、
発電要求がなされたとき、該発電要求と前記動力伝達部材の性状とに基づいて前記発電機により発電すべき目標発電電力を設定する目標発電電力設定手段と、
前記駆動系の回転軸に要求される要求動力として所定の低回転高トルク領域の動力が指示されたとき、前記駆動系の回転軸に出力可能な動力の範囲が前記設定された目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう該設定された目標発電電力を制限する目標発電電力制限手段と、
前記目標発電電力が出力されるよう前記発電機を駆動制御する駆動制御手段と、
を備える発電機の制御装置。 - 前記目標発電電力制限手段は、前記駆動系の回転軸に要求される回転数および/またはトルクに基づいて前記目標発電電力を制限する手段である請求項1記載の発電機の制御装置。
- 前記目標発電電力制限手段は、前記駆動系の回転軸に要求される回転数が小さいほど前記目標発電電力を大きく制限する手段である請求項2記載の発電機の制御装置。
- 前記目標発電電力制限手段は、前記駆動系の回転軸に要求されるトルクが大きいほど前記目標発電電力を大きく制限する手段である請求項2または3記載の発電機の制御装置。
- 請求項1ないし4いずれか記載の発電機の制御装置であって、
前記発電機による発電で充電可能な二次電池の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記目標発電電力制限手段は、前記検出された二次電池の残容量に基づいて前記目標発電電力を制限する手段である
発電機の制御装置。 - 前記目標発電電力制限手段は、前記検出された二次電池の残容量が所定量未満のときには、前記目標発電電力の制限を行なわない手段である請求項5記載の発電機の制御装置。
- 前記所定の低回転高トルク領域の動力は、前記駆動系の回転軸の回転を加速する方向の動力である請求項1ないし6いずれか記載の発電機の制御装置。
- 前記動力伝達部材は、前記駆動系の回転軸と前記発電機の回転軸とに掛けられたベルトである請求項1ないし7いずれか記載の発電機の制御装置。
- 内燃機関からの動力を直接または間接に駆動軸に出力可能な動力出力装置であって、
前記内燃機関の出力軸を前記駆動系の回転軸とする請求項1ないし8いずれか記載の発電機の制御装置と、
該発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲内で、前記発電機により前記目標発電電力を発電する際に必要な動力と前記要求動力との和の動力が前記内燃機関の出力軸に出力されるよう該内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
を備える動力出力装置。 - 前記発電機は、電動機として機能して前記内燃機関をクランキング可能な電動発電機である請求項9記載の動力出力装置。
- 前記所定の低回転高トルク領域の動力は、回転停止状態にある前記駆動軸を回転させる際に要求される動力である請求項9または10記載の動力出力装置。
- 請求項9ないし11いずれか記載の動力出力装置であって、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機を備え、
前記目標発電電力制限手段は、前記駆動軸に入出力される動力を用いて前記電動機により発電できない状態のときには、前記目標発電電力の制限を行なわない手段である
動力出力装置。 - 請求項12記載の動力出力装置であって、
前記内燃機関から出力される動力と前記電動機から入出力される動力と統合する動力統合手段と、
該動力統合手段により統合された動力を入力する入力軸と前記駆動軸に接続された出力軸とを有し該入力軸の動力を変速して該出力軸に出力する変速手段と、
を備える動力出力装置。 - 内燃機関と該内燃機関の出力軸に接続された発電機とを備える動力出力装置であって、
前記発電機へ発電要求がなされたとき、発電すべき目標発電電力を設定する目標発電電力設定手段と、
前記内燃機関の出力軸に要求される要求動力が所定範囲の動力であるとき、前記発電機の発電量に基づいて設定される許容動力の範囲が前記設定された目標発電電力を小さく制限することによって小さくなる電力に相当する動力分より広くなるよう前記目標発電電力を制限する目標発電電力制限手段と、
前記許容動力の範囲内で、前記目標発電電力を発電する際に必要な動力と前記要求動力との和の動力が前記内燃機関の出力軸に出力されるように該内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
を備える動力出力装置。
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