JP3694862B2 - 光触媒担持有機高分子材料およびその製造法 - Google Patents

光触媒担持有機高分子材料およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、織布,編物,不織布などの布帛,繊維,フィルム,シート,多孔質膜などの基材に被覆処理することにより,大気中のシックハウス原因物質など揮発性有機物を完全に分解する機能や廃水中の有機性物質を分解し,水を浄化する機能を有するなどの機能性有機高分子材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅やビルの内装材や什器類に使用されている接着剤や塗料などから発生するVOC(揮発性有機化合物)がハウスシック症候群や化学物質過敏症の原因物質として社会的問題となっている。
このような化学物質を除去のためには、酸化チタンや酸化亜鉛などの光触媒の使用が有効であるとされている。つまり,光触媒は水蒸気や空気の存在下で紫外光が照射されると,光触媒は活性化され,その表面に水酸化ラジカルや過酸化物ラジカルが発生し,これが光触媒表面に吸着された有機物を分解する作用を示す。
【0003】
この作用を利用して,大気中や水中の有害物質を分解しようとする試みが多く見られる。有害物質を分解する場合,何らかの材料に担持させ,表面積を多くする方が効率的であり,金属,硝子,セラミックス等無機材料表面に光触媒を担持させる方法が種々行われている。しかし,繊維,布帛,フィルムなど有機高分子材料に直接または有機バインダーなどで光触媒を担持させると,光触媒と接触する有機材料自身が分解され,劣化する。その劣化を防ぐためには,有機材料と光触媒を直接に触れないようにする必要がある。
【0004】
そのため,繊維,布帛,フィルムなど有機高分子材料に光触媒を付与する場合,酸化珪素ゾル等の無機質樹脂,シロキサン系ポリマー,フッ素樹脂等の光触媒に侵されにくい材料をアンダーコートした後,光触媒を付与する方法が提案されている。しかしながら,この方法では十分な光触媒の機能が発現しないことは特開2000-119957号公報にも示されている。
【0005】
そのため,特開2000-119957号公報では,あらかじめハイドロキシアパタイト(以下「アパタイト」と略す)で被覆された酸化チタン粉体をメラミン樹脂および溶媒に混合した溶液に繊維布帛を浸漬処理し,熱処理することで,光触媒を固定した繊維布帛を調製している。しかし,そのアパタイト被覆酸化チタンの担持量は1%と低く,酸化チタンに換算するとさらに低下し,有機物の分解活性が低い結果である。
また,特開平11-290692号公報では光触媒とシランカップリング剤のスラリーをスプレードライし,焼成することで,光触媒を含むシリカゲルの多孔質粉体粒子を調製している。この粉体を繊維コート用ウレタン樹脂に均一分散し,紫外光を照射しても,繊維自身は劣化しないことが示されている。しかし,このようにして繊維に付与した光触媒はコートされたウレタン樹脂の表面に接着している多孔質粉体粒子のみが有効に触媒機能を発揮し,コート用樹脂内部に埋もれた多孔質粉体粒子中の光触媒は基質である有害物質と接触できず,全体としての効率が低下する問題を有する。
【0006】
これらの他,特開2001-32190号公報では,パルプの分散溶液に硝酸カルシウムを溶解し,そこに燐酸アンモニウム水溶液を滴下し,パルプ表面にアパタイトの保護層を形成した後,その溶液に酸化チタンなど光触媒粉体を投入し,さらに燐酸アンモニウム水溶液を滴下することで,約5重量%の酸化チタンを担持したアパタイト析出層で被覆されたパルプを作製している。しかし,この酸化チタン複合パルプの耐光性試験では,2.4%の重量減少が見られ,光触媒による基材の劣化が起こるという問題を抱えている。また,ハイドロキシアパタイト形成時に,前記硝酸カルシウム溶液のpHをNaOHでアルカリ性とすることは繊維基材に少なからず加水分解による劣化など悪い影響を与える。さらに,この特開2001-32190号公報の方法で光触媒を担持できる繊維は凹凸のある親水性繊維に限定されるという問題がある。本発明者らは,ポリエステル表面をアクリル酸の電子線グラフト重合法により親水化した繊維に,この特開2001-32190号公報の方法で,酸化チタンアパタイトの複合被覆繊維を調製したが,酸化チタンの担持率は0.4%と低い結果であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の光触媒担持有機高分子材料では,基材自身が劣化するという問題や触媒活性を高めるために多量の光触媒を添加してもバインダーに覆われ有効に働かず,効率が低いという問題があった。この発明は上記のような従来技術の問題点に着目してなされたものである。その目的は,有機高分子材料表面に無機層のアパタイトを主とする第一被覆層を形成した後,光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層により前記第一被覆層を被覆し,前記第二被覆層の光触媒の担持率が外方に向かって大きくなっていることを特徴とする光触媒担持有機高分子材料およびその製造法を提供することで,悪臭や空気中の有害物質,材料表面の汚れ物質,廃水中の有害物質等を効率的に分解除去する機能性材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは,リン酸基やカルボキシル基など酸性基をグラフト反応により導入した有機高分子材料をカルシウム塩水溶液及び燐酸塩水溶液で順次浸漬処理することで,無機のアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)が有機高分子材料の表面を完全に覆い,その表面は多孔質状となっていることに着目した。グラフト化有機高分子材料をカルシウム塩水溶液及び燐酸塩水溶液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第一被覆層形成工程と,カルシウム塩水溶液,燐酸塩水溶液及び光触媒分散液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第二被覆層形成工程の少なくとも1つの工程は複数回繰り返すことで光触媒担持有機高分子材料を製造できることを見出した。しかも,前記第二被覆層の光触媒の担持率が外方に向かって大きくなっていることから,目的の有害物質との接触確率が高まり,分解活性の高いことがわかった。従来の特開2001-32190号公報では,親水性の凹凸のある繊維材料でしか光触媒を担持させることができなかったほか,アパタイト層中に光触媒は均一分散した構造となっており,内部に存在する光触媒は効率よく分解対象物質と十分接触できず,触媒活性の不十分なものであった。本発明の光触媒担持有機高分子材料は多孔質構造でかつ光触媒の担持率が外方に向かって大きくなっていることから,含有する光触媒が非常に効率的に作用するものとなる。ここで,「担持率」とはハイロドキシアパタイトに対する光触媒の比率をいう。
【0009】
本発明に使用する有機高分子材料としては,繊維,布帛,紙,フィルム,シート及び多孔質膜などがあげられる。繊維としては,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維及びポリオレフィン系繊維などの合成繊維,レーヨン,トリアセテートなどの再生もしくは半合成繊維,天然繊維などが挙げられ,また,この単独または異種の2種類以上の繊維を組み合わせた織物,編物及び不織布などの布帛が挙げられる。また,フィルム,シート及び膜としては,ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂及び塩化ビニール樹脂などの合成樹脂で成形されたものが挙げられ,また,この単独または異種の2種類以上の樹脂を組み合わせたフィルム,シート及び膜などが挙げられる。
【0010】
本発明では上記の有機高分子材料にラジカル重合性化合物を電子線,低温プラズマ,紫外線,重合開始薬剤等を用いてグラフト反応させることで,または,末端にグリシジル基等の反応性基を有するラジカル重合性化合物を前記と同様グラフト反応し,さらに化学処理することで,材料1kg当たり 酸性基が0.01から1.0モル導入された有機高分子材料を用いることを特徴とする。
【0011】
ラジカル重合性化合物としてはアクリル酸,メタクリル酸,イタコン酸,メタクリルスルホン酸,スチレンスルホン酸,ホスホリル基を有するメタクリル酸エステルなどの酸性基を有するビニル化合物またはグリシジルメタクリレートなどが挙げることができ,これらに限られるものではない。グリシジルメタクリレートなど反応性ラジカル重合性化合物の場合は,グラフト反応後,続く化学修飾で酸性基を導入することができる。これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0012】
次に,酸性基を導入した有機高分子材料にアパタイトを形成させるための方法としては,最初に塩化カルシウム水溶液、次いでリン酸水素二ナトリウム水溶液に浸漬した後,100℃以上200℃以下,好ましくは100℃以上130℃以下で,0.5から10分乾燥する方法であり、この過程を1サイクルとし、この1サイクルを複数回以上繰り返すことが望ましい。ここで用いる水溶液の濃度は,塩化カルシウム水溶液が20mMから500mM、好ましくは100mMから300mMが望ましい。リン酸水素二ナトリウム水溶液は10mMから500mM、好ましくは50mMから200mMが望ましい。浸漬時間は10秒間から1時間、好ましくは1分間から10分間が望ましい。10秒以下の場合はアパタイトの形成が十分でないし、10分間以上行ってもハイドロキシアパタイト形成量は大きく変化しない。上記の処理により第一被覆層が形成され,有機高分子材料表面はアパタイトで完全に覆われ,しかも多孔質の構造となることで,光触媒に侵されない保護層を付与されたことになる。
【0013】
さらに,前述の第一被覆層を形成した有機高分子材料を塩化カルシウム水溶液、次いでリン酸水素二ナトリウム水溶液,さらに,光触媒酸化チタン粉末を0.1%から5.0%,好ましくは0.2%から1.0%になるよう溶媒に分散した溶液に順次,浸漬処理した後,100℃以上200℃以下,好ましくは100℃以上130℃以下で,0.5分間から10分間乾燥する。この工程を1サイクルとし、この1サイクルを複数回以上繰り返すことが望ましい。このとき光触媒を分散する溶媒としては,水やメタノール,エタノール,イソプロパノール,アセトニトリルなどが挙げられるが,光触媒を均一に分散し,アパタイトを溶解しない溶媒であれば,これらに限定されるものではない。なお,酸化チタンの濃度は0.1%以下では担持量が少なくなり,5.0%以上では一部沈殿を生じ,効率的でない。上記の処理により,光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層が形成される。
【0014】
上述の他,前述の第一被覆層を形成した有機高分子材料を塩化カルシウム水溶液、次いで光触媒酸化チタンが0.1%から3.0%になるよう分散したリン酸水素二ナトリウム水溶液に順次,浸漬した後,100℃以上200℃以下,好ましくは100℃以上130℃以下で,0.5分間から10分間乾燥する。この工程を1サイクルとし、この1サイクルを複数回以上繰り返すことが望ましい。上記の処理により,光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層が形成される。
【0015】
ここで用いる光触媒は紫外線照射により励起し,酸化還元能を示し,有機物を分解することのできるものであればよく,具体的には,アナターゼ型酸化チタン,ルチル型酸化チタン,ブルッカイト型酸化チタンまたは酸化亜鉛などが挙げられるが,好ましくは,アナターゼ型酸化チタンを50%以上含むものが使用できる。その粒径としては50nm以下のものが,特に好ましくは30nm以下の酸化チタンがその活性が高いことから望ましい。
このようにして製造した光触媒担持有機高分子材料のアパタイト及び光触媒の含有量は,光触媒担持有機高分子材料を沸酸,硝酸および塩酸の混合溶液で無機層を熱分解し,分解液をICP発光分光分析でカルシウム,リン,チタン濃度を測定することで求めることができ,光触媒は浸漬処理するときの光触媒の濃度または浸漬処理回数を制御することで,光触媒担持有機高分子材料1kg当たり光触媒は100g以上まで付与することができる。しかし,光触媒の効率から1gから100gで十分機能する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,実施例によってこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
(実施例1) 50%アクリル酸水溶液(アクリル酸:メタノール:水=50:25:25(体積比))を調整し,窒素ガスを通気することで,溶存酸素を除去した。10cm×15cmのポリエステル(以下「PET」と略す。)布帛(タテ:75d/36f,110本/インチ,ヨコ:75d/36f,80本/インチ)に上記の50%アクリル酸水溶液2mlを滴下し, 2枚の25μmポリエステルフィルムでシールし,そのフィルム上から,加速電圧250kV,照射線量100kGy,室温下で電子線を照射した後,未反応のアクリル酸を除去するため,1%炭酸水素ナトリウム水溶液,1%酢酸水溶液,水を用いて,順次,80℃で各30分間洗浄した後,熱風乾燥し,アクリル酸グラフト布を得た。なお,この布帛のグラフト量は3mol/kgであった。
【0017】
アクリル酸グラフトPET布帛をpH7.4の200mM塩化カルシウム水溶液に40℃で10分間浸漬した後,取り出し,その布帛に付着している液滴をぬぐい取った。次に,前記塩化カルシウム処理布帛を120mMリン酸水素二ナトリウム水溶液に40℃で10分間浸漬した後,取り出し,その布帛に付着している液滴をぬぐい取り,105℃で10分間乾燥することで,第一被覆層を形成した。
この第一被覆層で覆われた布帛を前述と同様に塩化カルシウム水溶液に,次に,前述と同様にリン酸水素二ナトリウム水溶液に,順次5分間づつ浸漬し,105℃で10分間乾燥した。次いで,1%濃度になるよう酸化チタン(日本アエロジル(株)製P25)粉末を分散したエタノール液(以下「酸化チタン分散溶液」と略す)に室温で5分間浸漬した後,120℃で10分乾燥した。これらの工程を1サイクルとし、これを4サイクル繰り返すことで,第二被覆層を形成した光触媒担持布帛を得た。
【0018】
(実施例2)第一被覆層を形成する工程を3サイクル実施し,次に第二被覆層を形成する工程を2サイクル実施する以外は実施例1と全く同様に実施することで光触媒担持布帛を得た。
【0019】
(実施例3)酸化チタン分散溶液にエタノールに変えイソプロピルアルコールを用い,酸化チタン濃度を0.2%に調製した以外は実施例1と全く同様に実施することで光触媒担持布帛を得た。
【0020】
(実施例4)酸化チタン分散溶液の酸化チタン濃度を3%に調製した以外は実施例1と全く同様に実施することで光触媒担持PET布帛を得た。
【0021】
(実施例5)実施例1と同様に第一被覆層を形成した後,この第一被覆層で覆われた布帛をpH7.4の200mM塩化カルシウム水溶液に40℃で5分間浸漬した後,取り出し,その布帛に付着している液滴をぬぐい取った。次に,0.2%濃度になるよう酸化チタン(日本アエロジル(株)製P25)粉末を分散した120mMリン酸水素二ナトリウム水溶液に前記塩化カルシウム処理布帛を40℃で5分間浸漬した後,取り出し,その布帛に付着している液滴をぬぐい取った後,120℃で10分間乾燥した。これらの工程を1サイクルとし、これを3サイクル繰り返すことで,第二被覆層を付与した光触媒担持布帛を得た。
【0022】
(比較例1)未処理のポリエステル布帛を1%酸化チタン/エタノール分散液に20分間浸漬した後,120℃で10分間乾燥することにより,布帛表面に直接酸化チタンを付与した。
【0023】
(比較例2)硝酸カルシウム・4H2Oの1.5gを400mlの蒸留水に溶解し,そこに1gのアクリル酸グラフトPET布帛(アクリル酸グラフト量0.3mol/kg)を入れ,50℃で攪拌しながら,0.5NNaOHでpHを9とした。0.25gの(NH2HPOを25mlの蒸留水に溶解した液を上述の攪拌液に滴下した。その後,前記攪拌液に0.5gの酸化チタン(日本アエロジル(株)製P25)粉末を投入した後,さらに0.25gの(NH2HPOを25mlの蒸留水に溶解した液を滴下し,温度・pHを保ったまま2時間攪拌し,光触媒担持布帛を得た。
【0024】
表1に,上記光触媒担持布帛重量に対するアパタイトおよび酸化チタンの含有量を示す。この結果から,実施例1では酸化チタンを4.5%担持でき,実施例3及び4の酸化チタン分散溶液の酸化チタン濃度を変えることで,また,実施例2の浸漬工程のサイクル数を変えることで,0.8%から11%の酸化チタンを担持した光触媒担持PET布帛を得られることがわかる。実施例5の燐酸溶液に酸化チタンを混合しても,1.6%の含有量が得られた。
比較例1においても,酸化チタンが2.8%の含有量を得たが,これはPET繊維表面に凝集した酸化チタンが付着している状況で,十分分散していない。また,比較例2ではアパタイトの含有量が0.6%そして酸化チタンの含有量は0.4%で,PET繊維のような合成繊維では繊維フィラメント表面に凹凸がなく,アパタイトが形成しにくく,酸化チタンが十分担持されないことがわかる。
【0025】
【表1】
Figure 0003694862
【0026】
光電子分光分析装置(アルバックファイ製ESCA5500)を用いて,実施例2および比較例2で得られた光触媒担持布帛に対し,アルゴンガスによるスパッタリングを5分間隔で実施することで,試料表面のエッチングと元素分析を繰り返し,光触媒担持布帛の深さ方向における元素分析を行った。実施例2の結果を図1に,また,比較例2の結果を図2に光触媒を構成するチタン原子とアパタイトを構成するカルシウム原子の組成比を示した。このように,比較例2に比べ,実施例2はエッチングの初期にはチタンが多く存在し,時間が経過するにつれ,つまり内部層ではチタンが少なくなっていることがわかる。このことは,請求項1に記載した光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層の光触媒の担持率が外方に向かって大きくなっていることを裏付けている。
【0027】
(光触媒性能試験1)実施例及び比較例で得られた光触媒担持布帛2cm×10cmを解放状態で紫外線強度が1mW/cmになるようブラックライトを一夜照射した後,内容量123mlの硝子製バイアル瓶に入れ,シリコンパッキンとアルミキャップで密封した。そこへ,トルエン,アセトアルデヒドそして酢酸エチルのガスを200ppmになるよう上記光触媒担持布帛の入った瓶に注入し,紫外線照射した。なお,紫外線照射は,長さ120cmの40Wブラックライト2本の下,20cmの位置に上記光触媒担持布帛の入った瓶を設置し,最大吸収波長365nmのセンサーを用いて,布帛上の紫外線強度が1mW/cmになるよう実施した。経時的に瓶内のガスをガスタイトシリンジでサンプリングし,分解対象物質及び炭酸ガス濃度をガスクロマトグラフ質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製5972A-6890)を用いて定量分析した。
【0028】
図3に実施例2で得られた光触媒担持布帛,また,図4に比較例1で得られた光触媒担持布帛のトルエンガスの分解過程をそれぞれ示した。紫外線照射試料および未照射試料のトルエンガス濃度をそれぞれ□および○で示した。また,紫外線照射試料および未照射試料の生成炭酸ガス濃度をそれぞれ■および●で示した。図3では,紫外線未照射の場合,トルエンガス濃度の減少はわずかで,吸着が一部起こっているものと考えられる。これを裏付けるように,炭酸ガス濃度に変化はなかった。しかし,紫外線照射の場合,約1時間でトルエンガスは消失し,それに対応して,炭酸ガス濃度が増加し,有効に光触媒が働いていることがわかる。図4においては,トルエンガスの分解は起こるが,トルエンガスがなくなった以降も炭酸ガスの生成が継続しており,その生成量は図3の3倍となっており,図4の比較例1ではPET布帛に直接酸化チタンを付与していることから,PET繊維の分解が起こっていることがわかる。以上のことから,図3のように,炭酸ガスの生成が飽和状態になっている光触媒担持布帛では,基材はアパタイトで保護されており,基材布帛の分解が起こっていないものと言える。
【0029】
各光触媒担持PET布帛の触媒活性を比較するため,例えば,図3のトルエンガス濃度を片対数プロットし,その初期直線部分の傾きから1次反応速度定数Kd(h-1)を求め,さらに測定試料中の酸化チタン量で割ることで,酸化チタン1g当たり触媒活性Ad(h-1・g-1)を求めた。その結果を表2に示した。
【0030】
表2から,比較例1及び2では,それぞれ124及び95h-1・g-1の触媒活性を示したが,実施例における各光触媒担持布帛はそれらより高い触媒活性を示すことがわかる。しかも,概ね光触媒含有量に対応して触媒活性が高まる傾向を示している。また,表2の実施例2に示すようにトルエンガスのみならず,酢酸エチルやアセトアルデヒドガスも類似の触媒活性で分解することがわかる。
【0031】
【表2】
Figure 0003694862
【0032】
(光触媒性能試験2)実施例1で得られた光触媒担持布帛および未処理PET布帛5cm×5cmを水面下1cmの位置になるよう10ppmのメチレンブルー水溶液100ml中に浸せきし,紫外線(1mW/cm)を照射し,メチレンブルーの退色を分光光度計にて測定した。
図5に実施例1で得られた光触媒担持布帛によるメチレンブルー水溶液の退色を○で,未処理PET布帛によるメチレンブルー水溶液の退色を□で示した。未処理PET布帛ではほとんど変化なかったが,実施例1で得られた光触媒担持布帛では20時間でメチレンブルー水溶液は無色になり,その後,2日間紫外線を照射し続けると,光触媒担持布帛に一部吸着していたメチレンブルーが完全に消失し,布帛の色調は元の白色に戻った。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば,織布,ニット,不織布などの布帛,繊維,フィルム,シート及び多孔質膜などの基材にハイドロキシアパタイトを主とする第一被覆層を形成し,さらに光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層により,前記第一被覆層を被覆することで,前記第二被覆層の光触媒の担持率が外方に向かって大きくなることを特徴とする光触媒担持有機高分子材料を製造することができ,大気中のシックハウス原因物質など揮発性有機物を完全に分解する機能や排水中の染料などを分解し水を浄化する機能などの機能性有機高分子材料を得ることができる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた光触媒担持の光電子分光分析結果を示す図。
【図2】比較例2で得られた光触媒担持の光電子分光分析結果を示す
【図3】実施例2で得られた光触媒担持布帛のトルエンガスの分解過程を示す図。
【図4】比較例1で得られた光触媒担持布帛のトルエンガスの分解過程を示す図。
【図5】実施例1で得られた光触媒担持布帛のメチレンブルーの分解過程を示す図。

Claims (6)

  1. ハイドロキシアパタイトを主とする第一被覆層により被覆されたグラフト化有機高分子材料であって,光触媒を分散含有するハイドロキシアパタイトを主とする第二被覆層により前記第一被覆層を被覆し,前記第二被覆層の光触媒の担持率が外方に向かって大きくなっていることを特徴とする光触媒担持有機高分子材料。
  2. 前記光触媒の含有量は光触媒担持有機高分子材料1kg当たり1gから100gまでであることを特徴とする請求項1記載の光触媒担持有機高分子材料。
  3. 前記グラフト化有機高分子材料は,リン酸基,カルボキシル基及びスルホン基の少なくとも1つを有するグラフト化有機高分子材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の光触媒担持有機高分子材料。
  4. グラフト化有機高分子材料をカルシウム塩水溶液及び燐酸塩水溶液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第一被覆層形成工程と,カルシウム塩水溶液,燐酸塩水溶液及び光触媒分散液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第二被覆層形成工程からなることを特徴とする光触媒担持有機高分子材料の製造法。
  5. グラフト化有機高分子材料をカルシウム塩水溶液及び燐酸塩水溶液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第一被覆層形成工程と,カルシウム塩水溶液及び光触媒を分散した燐酸塩水溶液で順次浸漬処理した後乾燥処理する第二被覆層形成工程からなることを特徴とする光触媒担持有機高分子材料の製造法。
  6. 請求項4又は5記載の前記第一被覆層形成工程及び前記第二被覆層形成工程の少なくとも1つの工程は複数回繰り返すことを特徴とする光触媒担持有機高分子材料の製造法。
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