JP3694409B2 - スティック型ニオイ提示具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、検査時に必要なニオイを提示することができるスティック型ニオイ提示具およびこれを用いた嗅覚検査法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在実施されている嗅覚検査法として、環境庁の臭気判定士の嗅覚テスト、パネル選定用基準臭や耳鼻咽喉科の患者の閾値測定に実施されているT&Tオルファクトメータが知られている。
この方法では溶液を匂い紙につけて評価するため、ハンドリングが面倒であり、また時間がかかり、多様性に欠けるなどの欠点がある。
また、マイクロカプセル化した香料を用いて実施する官能評価としては、評価用紙にカプセルを印刷塗布したものが既に実用化されている。
この方法では、カプセルに糊を加え、インク状にして評価用紙に印刷して使用に供している。
しかし、この方法では、予め用紙に印刷しておく必要があり、大変に手間がかかるという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、嗅覚検査が必要なときに、どこでも、誰でもが簡単に準備して所定のニオイを提示することができるスティック型ニオイ提示具を提供することにある。
この発明の別の課題は、嗅覚検査時に、その場で検査用紙等にニオイを付着させて検査することができる嗅覚検査法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明では、
香料成分をマイクロカプセル化してパウダー状となし、このマイクロカプセルを無臭で紙等に付着可能な粘性を有する固形べースに混入してスティック状に成型し、収納容器に装填してなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項2の発明では、
収納容器が、容器本体とこれを覆うキャップとからなり、容器本体がスティック状の内容物を出没自在に出し入れしうる、という技術的手段を講じている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明のスティック型ニオイ提示具およびこれを用いた嗅覚検査法の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
スティック型ニオイ提示具は、香料成分をマイクロカプセル化し、これを無臭の固形べースに付香し、スティック状に形成して収納容器に収納している。
【0006】
マイクロカプセルの製法としては、▲1▼界面重合法、in situ重合などの高分子重合反応を芯物質の表面で起こし製膜化する化学的な製法、▲2▼複合コアセルベーション法、単純コアセルベーション法、界面沈殿法などの壁物質となる高分子を界面活性の形として芯物質表面に付着させるプロセスを基本とした物理化学的な製法、▲3▼噴霧乾燥法、乾式混合法等の機械による(物理的な)製法が知られている。
【0007】
本実施例で、香料成分のマイクロカプセル化は、使用する香料成分が油溶性であるため、容易な方法として複合コアセルベーション法を用いたが、この発明でマイクロカプセル化は、その他の公知構成を用いることができる。
また、使用する香料は、嗅覚検査に用いるニオイであって、天然香料であると、合成香料であるとを問わず、また、単体でも複合でもよい。
そして嗅覚検査用として、例えば、特定の果物や花や香粧品香料(調合香料)や食品のニオイ、家庭のガスのニオイや排泄・腐敗のニオイ、特定の化学物質のニオイ等の香料が用いられ、多様なニオイを提示できる。
【0008】
ミカン、靴下の蒸れ臭、ガソリン、墨汁、バラ、ミルク、ヒノキ、醤油、香水、バター、チョコレート、カレー、ガス、腐敗臭、メントール、木材、ニンニクの17種類のニオイについてスティック型ニオイ提示具を作り、嗅覚が正常な20代から50代の男女22名に何のニオイか4件法で答えさせたところ、表1に示すようにどのニオイについても60%以上の正答率を示し、意図した様々なニオイがスティック型ニオイ提示具によって提示できることが確認できた。
また、各ニオイについて、同時に計測した心理的強度の平均値についても表1に示す。
ここで用いた強度の評定尺度は、0(無臭)から、1(やっと感知できる)、2(弱い)、3(楽に感知できる)、4(強い)、5(強烈)からなる連続尺度を用いた。
17種類のニオイは弱いから強いに亘っており、本スティック型ニオイ提示具によって充分な強度を提示出来ることが確認された。
尚、強度の弱いニオイについてはスティック内への香料の含有量を増やすことによって充分な強度を提示可能である。嗅覚検査法では、本スティック型ニオイ提示具を用いて、何のニオイか(ニオイの同定)を4件法や分類段階法で、さらにニオイの強度を評定尺度に基づいて評価させ、同定率や評定された強度値によって、その人の嗅覚能力を算出する。
【0009】
【表1】
【0010】
前述の17種類のニオイの強度や質の変化を、スティック型ニオイ提示具作製後7カ月から10カ月に亘って3カ月毎(1997年10月、1998年1月、1998年4月、1998年7月)に、嗅覚が正常な13人の同じ被験者(20代から40代)によって測定した結果(経時変化)を表2及び図2〜図7に示す。
10カ月間に亘って計測を行ったミカン、墨汁、バラについては、ニオイの質の変化、及びニオイの強度の低下は見られなかつた。
7カ月間に亘って計測したその他のニオイについても、ニオイの質の変化及びニオイの強度の低下はほとんど見られなかった。
4カ月目の香水のニオイの強度だけは低下が見られたが、7カ月目では初回と較べ強度の低下は見られなかった。
これらのことは本スティック型ニオイ提示具によるニオイ提示性が長期間に亘って持続することを示す。
このことは嗅覚検査においても本スティック型ニオイ提示具が長期間に亘って使用できることを示す。
【0011】
【表2】
【0012】
香料成分のマイクロカプセル化(香料カプセルパウダー)は以下の作成工程により製造される。
まず、芯物質の油性香料を壁材となる水溶性高分子水溶液で乳化し、香料を5〜10μmの油滴として乳化分散する。
次ぎに、メラミン、プレポリマー水溶液を混合し、硬化触媒をpHを調整しながら滴下し、濃度調整を行ってゾル化し、冷却してゲル化する。
【0013】
そして、高温に一定時間加熱して、香料油滴(芯物質)のまわりに膜(壁物質)を形成させる。
このようにして形成されたカプセルを捕集し、カプセル洗浄を行う。
次いで乾燥し、所定メッシュで篩い分けすることによりパウダー状の香料マイクロカプセルを得る。
メッシュは、従来の糊を加えてインク状とする場合に用いられる公知の大きさのものでもよいが、これに限定されない。
香料マイクロカプセルパウダーの粒子の大きさは特に限定されないが、通常は3〜15μmである。
本実施例では、油性タイプの香料を使用したが、その他の香料であっても要するにマイクロカプセル化が可能な香料であれば用いることができる。
【0014】
次ぎに、無臭の固形ベースは、本実施例で一例を示す以下のベース基材からなる。
なお、固形ベースは、紙等に付着可能な粘性を有し、無臭であると共に前記マイクロカプセルパウダーを品質劣化させないものであればよく、本実施例に限定されるものではない。
【0015】
商品名 物質名
コバラ135°F パラフィン 7重量%(3〜15重量%)
マイクロクリスタリンワックス 8重量%(3〜15重量%)
セレシン 5重量%(3〜15重量%)
サンホワイトP−150 ワセリン 20重量%
コスモール43 ジイソステアリン酸ポリグリセリル 10重量%
シリコンKF−56 メチルフェニルポリシロキサン 10重量%
NIKKOL Trifat S-308 トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 39.9重量%
プチルパラペン パラオキシ安息香酸エステル 0.1重量%
【0016】
そこで、固形ベースを作るには、前記処方の各原料を秤量し、全品をボール等の容器に入れ、70℃以上で加温し、均一に溶解する。
次いで、前記製法で得られたパウダー状の香料マイクロカプセルを規定量添加し、混合する。
香料マイクロカプセルは固形ベースに対して1%の割合としたが、この割合は本実施例に限定されるものではなく、香料のにおい強度により適宜増減することができ、また後述の2cm程度の円形に塗布した際に、マイクロカプセルが適度に分散して配置される程度に含有されていることが好ましい。
【0017】
そして、この混合された液状のべースを、速やかに、スティック型の鋳型に流しこみ、冷却・固化する。
固化後、鋳型から外し、公知の口紅容器と同様の構成からなる収納容器に装填して、本実施例のスティック型ニオイ提示具1が得られる(図1参照)。
ここで、スティック型の形状は特に限定されないが、図示例のように先端を傾斜面状にしたもの、扁平にしたもの、あるいは口紅のように先が尖ったもの等、任意の形状に形成することができる。
【0018】
この容器はキャップ4を外し、容器本体2の基部2aを相対的に旋回することにより、基部2aの旋回で保持筒3aおよび保持軸3bが昇降動する公知構成からなっており、保持筒3aおよび保持軸3bに装填されたスティック部分5を容器本体2から出没させることができるので、香料マイクロカプセルを含有する固形ベースからなるスティック部分5を適宜長さに突出させて、使用に供することができる。
【0019】
次ぎに、このスティック型ニオイ提示具の使用法について説明する。
スティック型ニオイ提示具は、嗅覚障害者の診断やパネル選定その他の嗅覚検査における官能評価の対象として用いられる。
ここで嗅覚(変化)検査は、耳鼻咽喉科患者の閾値の測定に限らず、加齢による感覚機能の衰えとしての嗅覚の衰えが危険臭気の検知の減退をもたらし、食中毒や火事、ガス漏れ事故につながる虞れがあるので、検査が必要となる。
【0020】
そして、嗅覚検査をいつでも、どこでも、誰でもが行うことができる検査法として、このスティック型ニオイ提示具が用いられる。
この方法では、前述のように例えば、特定の果物や花や香粧品香料(調合香料)や食品のニオイ、家庭のガスのニオイや排泄・腐敗のニオイ、特定の化学物質のニオイ等の香料をマイクロカプセル化して含有する各スティック型ニオイ提示具を、セットとして多数用意しておく。
【0021】
そして、スティック型ニオイ提示具からスティック部分を突出し、その先端を官能検査用紙に押し付けて動かし、香料マイクロカプセルを含有する固定ベースを例えば直径2cm程度の円形に塗布する。
この官能検査用紙に塗布された部分を例えば内側に折り曲げて指で両側から擦って、前記マイクロカプセルを破る。
これにより、官能検査用紙の表面に立ちのぼるニオイを、被験者が嗅いで回答し、その正解率からニオイの同定能力を計測することができる。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、使用時に用紙に塗りつけ、擦ってニオイを立ちのぼらせて官能評価テストを行うことができるので、従来のように、溶液を匂い紙につけて評価したり、予め官能検査用紙にマイクロカプセル化した香料を印刷しておく等の必要がない。
そして、多種類のニオイを、それぞれマイクロカプセル化して個別のスティック型提示具とすることにより、いつでも、どこでも、誰でもが簡単に嗅覚調査を行うことができる。
また、検査時に塗布すれば良く、それまでは収納容器に収納しておくので、長期に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スティック型ニオイ提示具の正面図である。
【図2】表2のミカンのニオイの強度の経時変化を示す図である。
【図3】表2のイソ吉草酸のニオイの強度の経時変化を示す図である。
【図4】表2のガソリンのニオイの強度の経時変化を示す図である。
【図5】表2の墨汁のニオイの強度の経時変化を示す図である。
【図6】表2のバラのニオイの強度の経時変化を示す図である。
【図7】表2のミルクのニオイの強度の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
1 スティック型ニオイ提示具
2 容器本体
3a 保持筒
3b 保持軸
4 キャップ
5 スティック部分
Claims (2)
- 香料成分をマイクロカプセル化してパウダー状となし、
このマイクロカプセルを、無臭で紙等に付着可能な粘性を有する固形べースに混入してスティック状に成型し、
収納容器に装填してなることを特徴とするスティック型ニオイ提示具。 - 収納容器が、容器本体とこれを覆うキャップとからなり、容器本体がスティック状の内容物を出没自在に出し入れしうることを特徴とする請求項1に記載のスティック型ニオイ提示具。
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