JP3694117B2 - 自己接着性複合繊維及びその応用製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然分解性で、且つ加熱によって優れた接着性を発揮する自己接着性繊維及びその応用製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂からなる従来の合成繊維は、自然環境下での分解速度が遅く、また焼却時の発熱量が多いため、自然環境保護の見地からの見直しが必要である。このため、脂肪族ポリエステルからなる自然分解性繊維が開発されつつあり、環境保護への貢献が期待されている。加熱によって繊維の一部が溶融し、繊維が相互に接着する自己接着(熱融着)繊維は、合成繊維分野で広く用いられている。また脂肪族ポリエステルを応用した熱融着繊維も、特開平6−207320および特開平6−207324号公報に提案されている。しかし、その実施例には、融点102℃のポリエチレンサクシネートを鞘(接着成分)とし、融点118℃のポリブチレンサクシネートを芯(強度保持成分)とする複合繊維が示されているに過ぎず、その接着力はそれほど強くない。両成分の融点差がわずか16℃と小さく、接着のための加熱で強度保持成分が軟化且つ劣化するためである。また、この繊維は、接着処理の好適温度は極めて狭い範囲に限定され、優れた接着力と強度を発揮させるのはかなり困難であり、さらに使用目的に応じて接着強度を広範囲に変化させることも極めて困難で、用途が限定される。
【0003】
一般に、熱融着繊維では、接着成分に低融点成分を用いる。しかし、融点120℃以下の低融点脂肪族ポリエステルを用いると、ガラス転移点が常温以下と低く、凝固速度が遅いため、溶融紡糸時に繊維相互が付着(膠着)し易く、高速度で製造が困難な上、使用時も耐熱性が低いなど、実用上の問題が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、自然分解性であり、且つ接着のための加熱処理によって優れた接着性を発揮すると同時に、強度保持成分の劣化が少なく優れた強度を持ち、さらに溶融紡糸を高速で行うことが出来、且つ耐熱性に優れた接着された繊維構造物を容易に製造することが出来る、新規な自己接着繊維、およびそれを応用した繊維構造物を提供することである。本発明者らは、上記低融点脂肪族ポリエステルの問題点を解決し、更に広い温度範囲で接着処理可能であり、使用目的に応じて広範囲に接着力を変更可能な自己接着繊維を実現すべく鋭意研究し、本発明を完成したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、(1)融点140℃以上且つ溶融時の吸熱量が20ジュール/グラム以上の結晶性脂肪族ポリエステル重合体(A)と、融点が20℃以上異なる少なくとも2種の結晶性脂肪族ポリエステルのブロック共重合体または/及び混合体であり、且つ融点130℃以上、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の高融点成分(X)を90〜10重量%、および融点40〜120℃、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の低融点成分(Y)を10〜90重量%含む組成物(B)とが単一繊維内で同心的に接合されており、且つ(2)上記組成物(B)が繊維の表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする、本発明自己接着性複合繊維により達成される。
【0006】
ここで脂肪族ポリエステルとは、(a)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などのようなヒドロキシアルキルカルボン酸、(b)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン、(c)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのような脂肪族ジオール、(d)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコール、ジヒドロキシエチルブタンなどのようなポリアルキレンエーテルのオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンリコール、ポリブチレンエーテルなどのポリアルキレングリコール、(e)ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネート、ポリデカンカーボネートなどのポリアルキレンカーボネートグリコールおよびそれらのオリゴマー、(f)コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸など、脂肪族ポリエステル重合原料に由来する成分を主成分すなわち50重量%以上(特に60%以上)とするものであって、脂肪族ポリエステルのホモポリマー、脂肪族ポリエステルのブロック又は/及びランダム共重合ポリマー、および脂肪族ポリエステルに他の成分、例えば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサンなどを50重量%以下(ブロック又は/及びランダム)共重合したもの及び/又は混合したものをすべて包含する。
【0007】
脂肪族ポリエステルを共重合や混合によって変性する目的は、結晶性の低下、融点の低下(重合温度や成型温度の低下)、摩擦係数、柔軟性や弾性回復性の改良、耐熱性、ガラス転移温度や熱収縮性の低下または上昇、接着性の改良、染色性、親水性や撥水性の改良、分解性の向上または抑制などが挙げられる。
【0008】
本発明複合繊維は、融点140℃以上、溶融時の吸熱量20J/g以上で結晶性が高い脂肪族ポリエステル重合体(A)と、融点130℃以上の高融点成分(X)および融点40〜120℃の低融点成分(Y)の両成分を含む脂肪族ポリエステル組成物(B)とが複合されたもので、重合体(A)は強度保持成分であり、組成物(B)は接着(熱融着)成分である。
【0009】
本発明繊維の大きな特徴は、接着成分である組成物(B)が、融点が20℃以上、好ましくは30℃以上異なる少なくとも2種の結晶性脂肪族ポリエステルのブロック共重合体又は/及び混合体であることである。その結果、本発明繊維は、組成物(B)を構成する低融点成分は接着するが高融点成分は接着しない温度に加熱すれば、接着点密度や接着強度が相対的に低い製品が得られ、他方組成物(B)を構成する全ての成分が溶融する温度に加熱すれば、最も高い接着力と接着点密度が得られる。また、低融点、低ガラス転移点成分に起因する溶融紡糸時の膠着は、組成物(B)への高融点成分の導入により大幅に改善される。さらに組成物(B)を構成する高融点成分と低融点成分との比率を変えることにより、溶融紡糸時の凝固性や加熱接着時の接着力や接着点密度を広範囲に変えることが出来る。その結果本発明繊維は、高能率で製造可能であり、非常に広範囲に接着力を制御、調節可能という大きな特長を示す。
【0010】
ここで溶融時の融点及び吸熱量は、走査型示差熱量計(以下DSCと記す)を用い、十分に延伸又は/及び熱処理し、乾燥した試料について、試料重量10mg、窒素中、昇温速度10℃/minの条件で測定したものである。図2に、本発明に用いる融点が20℃以上異なる複数の脂肪族ポリエステルが混合又は/及びブロック共重合している組成物(B)の、DSC曲線を模式的に示す。図において、4は低融点成分(Y)の溶融吸熱ピークを示し、6は高融点成分(X)の溶融吸熱ピークを示す。ピーク5(点線)は、高融点成分(X)が十分結晶化していない時に観測される結晶化の発熱ピークである。この発熱ピーク5と低融点成分(Y)の溶融吸熱ピーク4とが重なると、溶融吸熱ピーク4を正確に把握できないから、高融点成分(X)は十分結晶化させておくことが必要である。
【0011】
本発明において、融点は結晶の溶融によるそれぞれの吸熱ピーク(図では4および6)の極小値の温度とし、吸熱ピークのそれぞれの全吸熱量(積分値、図の斜線部の面積に比例する)を溶融時の吸熱量とする。吸熱量の単位は、ジュール/グラム(以下J/gと記す)とする。
【0012】
一般に、複数種の結晶性脂肪族ポリエステルの混合物やブロック共重合物のDSC曲線では、それぞれの成分の融点に対応する吸熱ピークがかなり明瞭に観測されることが多い。しかし、複数種ポリマーのブロック共重合体の場合は、融点の吸熱ピークの幅が広がったり、肩が生じたりダブルピークが観測されるなど複雑な現象が見られることがある。しかしそれらが明瞭に複数のピークと認められないときは、単一のピークとみなし、融点はピーク値を用いる。
【0013】
強度保持成分である重合体(A)の融点は140℃以上の必要があり、160℃以上が好ましく、170℃以上が最も好ましい。またその溶融時の吸熱量は、20J/g以上の必要があり、30J/g以上が好ましく、40J/g以上が最も好ましい。この様な高結晶性、高融点の脂肪族ポリエステルの例としては、ポリL−乳酸(融点約175℃)、ポリD−乳酸(同175℃)、ポリ3−ヒドロキシブチレート(同180℃)、ポリグリコール酸(同230℃)などのホモポリマー、およびそれらに少量(50%以下、特に30%以下)の他成分を共重合又は/及び混合したものが挙げられる。重合体(A)の分子量は、特に限定されないが、実用性の見地から、5万以上が好ましく、8〜30万が特に好ましく、10〜20万の範囲が最も広く用いられる。
【0014】
一般に、ブロック共重合では結晶性や融点の変化は緩やかであり、重合体(A)の中の共重合成分の比率は1〜50%、特に1〜40%、多くの場合1〜30%が好ましいが、ランダム共重合では結晶性や融点の変化が顕著で、共重合成分の比率は0.5〜10%、特に1〜5%が好ましいことが多い。勿論、共重合による融点や結晶性の変化は、共重合成分によって大きく変るので、DSCによる結晶の溶融吸熱量及び融点に注意する必要がある。他成分の混合による融点や結晶性の変化も、混合成分や混合率により相当変わるが、ランダム共重合ほど顕著でないことが多い。重合体(A)が融点の異なる複数の成分の混合物や共重合物で、複数の融点が観測される時は、最も高温のものを重合体(A)の融点とする。
【0015】
組成物(B)は、融点が20℃以上異なる少なくとも2種の結晶性脂肪族ポリエステルのブロック共重合体または/及び混合体であり、融点が130℃以上の高融点成分(X)と、融点が40〜120℃の低融点成分(Y)とをそれぞれ90〜10%および10〜90%含む。高融点成分(X)は、組成物(B)の耐熱性を維持し溶融紡糸時の膠着を防止するためのもので、融点は130℃以上の必要があり、140℃以上が好ましく、150℃以上が特に好ましく、160℃以上が最も好ましい。低融点成分(Y)は、加熱により接着性を発現するもので、融点は40〜120℃の範囲の必要があり、50〜120℃が好ましく、60〜120℃の範囲が最も広く用いられる。高融点成分(X)と、低融点成分(Y)の夫々の融点及び混合又は/及び共重合比率を変えることにより、加熱接着温度、接着密度、接着強度を広範囲に変えることが出来、使用目的に応じてそれらを適宜選択することが出来る。組成物(B)中の高融点成分(X)と、低融点成分(Y)の重量比率は、9/1〜1/9の範囲の必要があり、8/2〜2/8の範囲、特に7/3〜3/7の範囲が好ましいことが多い。組成物(B)中の高融点成分(X)と、低融点成分(Y)の溶融吸熱量は、それぞれ3J/g以上が必要であり、5J/g以上が特に好ましく、10J/g以上が最も好ましく、10〜30J/g程度の範囲が広く用いられる。組成物(B)は、結晶性であることが、紡糸時の膠着防止の観点から好ましいからである。
【0016】
組成物(B)中の、高融点成分(X)と低融点成分(Y)の融点差は、20℃以上の必要があり、30℃以上が特に好ましく、40℃以上が最も好ましい。例えば融点160℃の成分(X)と、融点80℃の成分(Y)の組み合わせによるブロック共重合体または混合物は、例えば100℃で処理されると成分(Y)が溶融するため強く接着するが、高融点成分(X)が存在するため組成物全体は溶融せずある程度形を保つ。従って、必要とされる接着処理温度および圧力、接着強度、耐熱性、使用温度などに応じて、組成物(B)を構成する成分(X)および(Y)の融点及びその比率を選べばよい。
【0017】
組成物(B)は、構成する成分(X)、(Y)の混合物または/及びブロック共重合体である。混合方法は任意であり、通常の溶融混合でもよく、溶剤中で混合しても良い。混合装置も機械的攪拌装置や流体の流れの分割と合流を多段的に繰り返す静止混合器を用いても良く、両者を併用してもよい。溶融混合中に、両成分が部分的に反応して、ブロック共重合体化してもよい。但し、過度に反応して完全にランダム共重合体化(融点が消失、非晶化)させてはならない。すなわち、溶融混合物をDSC分析し、両成分の融点や溶融吸熱量を調査し、それらを好ましい範囲に保つことが望まれる。一方、両成分のブロック共重合体は、例えば分子末端に水酸基を持つ低融点脂肪族ポリエステル(Y)に対し、ラクチドやグリコリドなどの高融点成分(X)の原料環状ラクトンを溶融状態で付加反応(重合)させることによっても、得られる。また分子末端に水酸基を持つ成分(X)、(Y)の混合物に、例えばヘキサンジイソシアネートなどのジイソシアネート、無水フタル酸などのジカルボン酸無水物、テレフタル酸クロリドなどのジカルボン酸ハロゲン化物などの多官能化合物(鎖延長剤)を反応させ、それらを結合しブロック共重合物を得ることも出来る。
【0018】
成分(X)と(Y)との混合を安定に行うためには、両者の親和性が高いことが望ましい。両者の親和性改善の方法としては、(1)成分(X)の中に成分(Y)をブロック共重合などの方法で部分的に導入すること、(2)成分(Y)の中に成分(X)を導入すること、(3)親和性改善剤(界面活性剤)として、両成分のブロック共重合物(X/Y)を混合することなどが挙げられる。
【0019】
重合体(A)と組成物(B)とは、相互接着性が高いことが好ましい。このためには、両者が共通の成分を持つことが好ましい。たとえば組成物(B)の高融点成分(X)と重合体(A)とが同じ成分(例えばポリ乳酸)であることが好ましい。同様に、両者が近似の成分(例えばポリ乳酸と、ポリ乳酸を主成分とする共重合体)であることも、好ましい。
【0020】
組成物(B)は、主として、脂肪族ポリエステル成分(X)及び(Y)とからなるが、副次的成分(50重量%以下、特に30%以下)として他の成分例えば芳香族成分、ポリエーテル成分、ポリカーボネート成分、ポリウレタン成分、ポリアミド成分、ポリ有機シロキサン成分その他を含んでいてもよい。組成物(B)の分子量は、特に限定されないが、5万以上が好ましく、8〜30万が特に好ましく、10〜20万の範囲が広く用いられる。
【0021】
低融点成分(Y)に好適なポリエステルの具体例としては、例えばポリカプロラクトン(融点約59℃)、ポリプロピオラクトン(同95℃)などの脂肪族ポリラクトンの他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族グリコール類の一種以上と、サクシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタンジカルボン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸の一種以上を組み合わせて得られるポリエステル、例えばポリエチレンサクシネート(融点約102℃)、ポリエチレンアジペート(同49℃)、ポリエチレンスベレート(同65℃)、ポリエチレンアゼレート(同52℃)、ポリエチレンセバケート(同75℃)、ポリブチレンサクシネート(同116℃)、ポリブチレンアジペート(同72℃)、ポリブチレンセバケート(同66℃)、ポリヘキサンセバケート(同74℃)その他のホモポリマー、およびそれらを成分とするブロックまたはランダムコポリマーで且つ結晶性のものが挙げられる。接着された繊維構造物を、例えば染色して衣料として用いる場合は、低融点成分(Y)の融点は、100℃以上が好ましく、110℃以上が特に好ましい。
【0022】
溶融複合紡糸においては、重合体(A)と組成物(B)とは、通常の方法に従い、それぞれ別々に溶融、計量され、複合紡糸口金内で複合され、オリィスより紡出し、冷却、オイリング、必要に応じて延伸、熱処理などにより分子配向、結晶化され、本発明複合繊維維が製造される。同様に、重合体(A)と組成物(B)とを、溶剤を用い別々に溶解し、湿式、乾式、乾湿式などの方法で複合紡糸しても、本発明複合繊維が得られる。しかし、溶融複合紡糸法は、高能率なので特に好ましい。溶融紡糸は、巻取速度2000m/分以下の低速紡糸、2000〜5000m/分の高速紡糸、5000m/分以上の超高速紡糸などが応用可能である。低速紡糸および高速紡糸では、紡糸と延伸工程を別々に行う方法、紡糸と延伸を連続して同時に行う方法などが可能である。一般に低速紡糸では3〜8倍程度、高速紡糸では1.5〜3倍程度の延伸を行い、超高速紡糸では延伸不要または2倍程度以下の延伸を行うことが多い。
【0023】
本発明繊維は、連続マルチフィラメント、連続モノフィラメント、切断されたステープルなど任意の形態とすることが出来、他の繊維と適宜、色々な手段で混合され、糸、編物、織物、不織布、フェルト、紙、フィルムなどとの複合体、その他類似の繊維構造物として用いられる。接着は、繊維構造物を加熱や圧縮しておこなうことが多い。加熱は、乾熱、湿熱、赤外線、高周波その他の方法が応用可能である。一般に、圧力が大きいほど低温で接着可能である。
【0024】
【発明実施の形態】
図1に、本発明複合繊維の実施例である繊維横断面を示す。図1において、1は強度保持用の重合体(A)を示し、2は接着成分である組成物(B)を示す。図1の(a)は、同心円型の複合を示し、(b)は3角状断面の同心型複合をを示し、(c)は、回転対称型を示し、(d)は中空の同心円型を示す。3は中空部であるが、第3のポリマーに置き換えてもよい。接着成分である組成物(B)は、繊維の表面の少なくとも一部を占めなければならない。図の(a)、(b)、(d)は組成物(B)が、表面の全部を占めた例、(c)は表面の一部を占めた例である。組成物(B)の表面の占有率が高いほど、接着力が大きい。重合体(A)と組成物(B)との複合比率(断面積比)は、特に限定されないが、20/1〜1/20の範囲、特に10/1〜1/10の範囲が好ましく用いられ、5/1〜1/5、特に2/〜1/2の範囲が最も広く用いられる。
【0025】
本発明繊維の断面形状は、特に限定されず、円形、非円形、多角形状、多葉状、中空状などとすることが出来る。しかし複合形態は、重合体(A)と組成物(B)とが同心型、すなわちそれぞれの重心がほぼ一致することが必要である。
偏心型では、紡糸の安定性などが劣る傾向があるからである。本発明繊維の繊度も、同様に使用目的に応じて任意に選ばれるが、通常の衣料用には、単糸繊度0.1〜50デニール(d)程度の範囲、特に0.5〜30dの範囲が好ましく、1〜20dの範囲が広く用いられる。不織布、皮革、資材用などにはもっと細いものや太いものも用いられる。本発明繊維は、必要に応じ仮撚法や押込法などで、機械的に巻縮を付与することが出来る。これらの巻縮工程での加熱では、繊維が膠着しないことが好ましく、この観点からは、組成物(B)の最も融点の低い成分の融点は60℃以上が好ましく、80℃以上が特に好ましく、90℃以上が最も好ましい。
【0026】
本発明繊維には、各種顔料、染料、着色剤、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、無機化合物粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を、必要に応じ混合することが出来る。
【0027】
本発明複合繊維は単独で、又は他の繊維と混用して糸、紐、ロープ、編物、織物、不織布、紙、複合材料その他の構造物の製造に用いることが出来る。他の繊維と混用する場合、綿、羊毛、絹などの天然有機繊維、再生セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維などの自然分解性繊維と混合使用すれば、完全に自然分解性の製品が得られるので特に好ましい。
【0028】
【実施例】
以下の実施例において、%、部は特に断らない限り重量比である。脂肪族ポリエステルの分子量は、試料の0.1%クロロホルム溶液のGPC分析において、分子量1000以下の成分を除く高分子成分の分散の重量平均値である。
【0029】
実施例1
分子量8000で両末端が水酸基のポリエチレングリコール(PEG)3部、L−ラクチド98部、オクチル酸錫100ppm、チバガイギー社の酸化防止剤イルガノックス1010の0.1部を混合し、窒素雰囲気中188℃で12分間、2軸押出機中で連続的に溶融攪拌重合し、押出し冷却チップ化後、140℃窒素雰囲気中で4時間処理(固相重合)して、ポリ乳酸とPEGのブロック共重合ポリマーP1を得た。ポリマーP1は、分子量15.5万、PEG成分の含有率約3%、融点175℃、十分に配向結晶化した繊維の溶融吸熱量は55J/gであった。
【0030】
ポリブチレンサクシネート(PBS)で、分子量12.5万、融点114℃、溶融吸熱量68J/gのもの30部、L−ラクチド71部、上記イルガノックス0.1部、オクチル酸錫100ppmを混合し、以下ポリマーP1と同様に重合して、ブロックコポリマーBP1を得た。BP1の分子量は13.7万、融点は主要なものが165℃と103℃の2つあり、その吸熱量は28J/gと27J/gで、それぞれポリL−乳酸セグメント(ブロック)およびPBSセグメントの結晶に対応すると推定される。
【0031】
ポリマーP1とコポリマーBP1を、それぞれ別々に220℃のスクリュー押出し機で溶融し、ギアポンプで計量しながら複合紡糸口金に送り込み、ポリマーBP1を鞘にポリマーP1を芯にして、複合比2/1(体積比)で図1のような同心円型に複合し、225℃、直径0.2mmのオリフィスより紡出し空気中で冷却、オイリングしながら1500m/minの速度で巻取り、合糸してトウとし70℃で3.9倍延伸し、トウT1を得た。単糸繊度は3デニールである。
【0032】
ポリマーP1を220℃で溶融し、単独で225℃、直径0.2mmのオリフィスより紡出し、以下トウT1と同様にし、但し延伸温度を80℃として、トウT2を得た。トウT1とT2とを1/3で混合し、押込法で65℃で巻縮し長さ50mmに切断して混合ステープルBS1を得た。混合ステープルBS1を用い、カード法により目付200g/m 2 の不織布W1を得た。不織布W1を5枚重ねてプレスし、130℃の乾燥機中で15分間処理し、熱接着された不織布SW1を得た。不織布SW1は、繊維相互が強く接着されており、クッション材料に好適である。なお不織布W1は、熱処理温度90〜160℃の広い範囲で自己接着可能で、もちろん高温ほど強く接着する。
【0033】
比較のため、上記PBSを鞘にポリマーP1を芯に複合し、以下トウT1と同様に複合紡糸しようとしたが、巻き取った繊維がPBSの膠着のため、巻き戻し不可能であった。
【0034】
実施例2
実施例1のPBSとポリマーP1のペレットを2/3で混合し、220℃のスクリュー押出機で溶融し、素子30個を持つケニックス型静止混合器を通したのち複合紡糸口金に供給し、別に溶融したポリマーP1を芯とし、上記混合ポリマーを鞘とし、複合比1/2で同心の芯鞘型に複合し、以下実施例1の不織布SW1と同様にして、接着された不織布SW2を得た。SW2は繊維相互が強く接着されており、クッションなどとして好適である。なお、上記混合ポリマーの融点は、173℃および111℃で、溶融吸熱量はそれぞれ33J/gと21J/gであり、相互反応によるブロックポリマー化は殆ど起きていないと推定される。
溶融混合時間が長い(例えば15分以上、特に20分以上)場合は、一部またはかなりの部分が共重合体化するが、それぞれ結晶性が維持され、DSCで融点が分離して認められる場合は、本発明に有用である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によって、自然分解性であり環境汚染することが少なく、しかも柔軟性、嵩高性、弾力性、耐熱性などにすぐれた接着された編物、織物、不織布などを製造することが出来る新規複合糸が提供され、各種衣料、工業資材、産業資材、家庭用品などに好適に利用可能となった。特に本発明繊維は、溶融紡糸が容易であるため、製造能率が高く低コストであり、非常に広い温度範囲で、しかも色々な強度で接着可能という特長を持つため、使いやすく、応用範囲が極めて広いというだけでなく、さらに得られる接着された製品は耐熱性が高いというすぐれた長所をもっている。一般に、脂肪族ポリエステル繊維は、自然環境下で分解するだけでなく、従来使われた合成繊維よりも燃焼時の発熱量が少なく、焼却も容易である。なかでもポリ乳酸は、原料の乳酸が農産物から発酵法などで得られ、自然の物質循環系の中に組み込まれるので、空気中の炭酸ガスを増加させることがなく、ポリ乳酸を主成分とする脂肪族ポリエステルは、環境保護の見地から最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明複合繊維の横断面を例示するもので、(a)は円形断面の芯鞘型複合繊維、(b)は非円形断面の芯鞘型複合繊維、(c)は回転対称型複合、(d)は、中空型芯鞘複合の例である。
【図2】走査型示差熱量計(DSC)による、2種の結晶性ポリマーの混合体またはブロック共重合体の、昇温時の発熱および吸熱を示す曲線(DSC曲線)である。
【符号の説明】
1重合体(A) 2組成物(B) 3中空部
4低融点成分の溶融による吸熱ピーク
5ポリマーの結晶化による発熱ピーク
6高融点成分の溶融による吸熱ピーク
Claims (11)
- 走査型示差熱量計で測定して得られるDSC曲線における吸熱ピークの極小値の温度を融点とし、吸熱ピークの全吸熱量を溶融時の吸熱量としたときに、(1)融点140℃以上且つ溶融時の吸熱量が20ジュール/グラム以上の結晶性脂肪族ポリエステル重合体(A)と、融点が20℃以上異なる少なくとも2種の結晶性脂肪族ポリエステルのブロック共重合体であり、且つ融点130℃以上、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の高融点成分(X)を90〜10重量%、および融点40〜120℃、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の低融点成分(Y)を10〜90重量%含むブロック共重合体(B)とが単一繊維内で同心的に接合されており、且つ(2)上記ブロック共重合体(B)が繊維の表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする自己接着性複合繊維。
- 重合体(A)が、融点が160℃以上、溶融時の吸熱量が40ジュール/グラム以上であり、ブロック共重合体(B)が、融点が30℃以上異なる複数の脂肪族ポリエステルを成分とし、且つ重合体(A)とブロック共重合体(B)の高融点成分(X)とが同一のポリマーである、請求項1記載の複合繊維。
- 走査型示差熱量計で測定して得られるDSC曲線における吸熱ピークの極小値の温度を融点とし、吸熱ピークの全吸熱量を溶融時の吸熱量としたときに、(1)融点140℃以上且つ溶融時の吸熱量が20ジュール/グラム以上の結晶性脂肪族ポリエステル重合体(A)と、融点が20℃以上異なる少なくとも2種の結晶性脂肪族ポリエステルの混合体であり、且つ融点130℃以上、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の高融点成分(X)を90〜10重量%、および融点40〜120℃、溶融吸熱量3ジュール/グラム以上の低融点成分(Y)を10〜90重量%含む混合体(B)とが単一繊維内で同心的に接合されており、且つ(2)上記混合体(B)が繊維の表面の少なくとも一部を占めていることを特徴とする自己接着性複合繊維。
- 重合体(A)が、融点が160℃以上、溶融時の吸熱量が40ジュール/グラム以上であり、混合体(B)が、融点が30℃以上異なる複数の脂肪族ポリエステルを成分とし、且つ重合体(A)と混合体(B)の高融点成分(X)とが同一のポリマーである、請求項3記載の複合繊維。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た糸。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た織物。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た編物。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た網。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た不織布。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た紙。
- 請求項1〜4いずれか1項記載の複合繊維を少なくとも一部に用いて得た繊維と膜との複合体。
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