JP3692835B2 - 抗菌剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌剤組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、イソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を含有し、かつ、イソチアゾロン化合物の分解を抑制して安定性に優れ、またイソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を含有する抗菌剤組成物の皮膚刺激性を低減することができる抗菌剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに代表されるイソチアゾロン化合物は、抗菌力に優れていることから冷却水系、紙パルプ、塗料、接着剤、切削油、し尿処理などの各種の系のスライムコントロール剤、抗菌剤、抗藻剤、抗カビ剤として広く使用されている。また、イソチアゾロン化合物に抗菌性物質であるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を配合することにより、それぞれを単独に使用する場合に比べて、微生物発生やスライム形成の防止について、相乗効果が得られることが報告されている。
しかし、イソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を配合した抗菌剤組成物は、必ずしも保存安定性が十分とは言えず、長期間保存した場合に、イソチアゾロン化合物が分解して沈殿物が析出し、それとともに抗菌活性が低下する結果となり問題となっていた。
貯蔵安定性を向上させたイソチアゾロン化合物を含有する微生物防除剤として、特開平5−201809号公報に、イソチアゾロン化合物、2−ブロム−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール及びグルコン酸又はその塩を含有する微生物防除剤が提案されている。しかし、この組成物も、その保存安定性はなお十分ではない。また、イソチアゾロン化合物は皮膚刺激性が強いものが多く、これらを配合した薬品は取扱いに十分な注意が必要であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、イソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を含有し、かつ、イソチアゾロン化合物の分解を抑制して安定性に優れ、またイソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を含有する抗菌剤組成物の皮膚刺激性を低減することができる抗菌剤組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアミノカルボン酸又はその誘導体を配合することにより、イソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族アルコール化合物を含有する組成物の安定性が著しく改良されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体(前記イソチアゾロン化合物に対して0 . 1〜50モル倍の配合量)を含有するものであって、該誘導体が一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の金属塩、一般式[4]で表される1種若しくは2種類以上のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸と他のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のN−アセチル化物若しくはその金属塩、又は一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のアミドからなる組成物を水又は親水性有機溶媒に溶解したものであって、60℃で1週間放置したときに透明性を維持し、析出物がない外観を呈し、皮膚一次刺激性指数が5未満であることを特徴とする抗菌剤組成物、
【化4】
(ただし、式中、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアラルキル基であり、R2及びR3は、水素若しくはハロゲン、又は、イソチアゾロン化合物の4位置と5位置の炭素と共にベンゼン環を形成するものであり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属又はアミンの陽イオンであり、Zは錯化合物を形成するに十分な溶解度を有する陽イオンMとの化合物を形成する陰イオンであり、aは1又は2であり、nは陰イオンZが陽イオンMの原子価を満たす整数である。)
【化5】
(ただし、式中、R4は水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R5は水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R6はハロゲンである。)
【化6】
(ただし、式中、R7は水素又は無置換若しくはカルボキシル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、R8は直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜5のアルキレン基、R9は水素又は無置換若しくはカルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ウレイド基、メチルチオ基若しくは4−イミダゾリル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、又は、R7とR9はN−(R8)b−Cと共に無置換若しくはヒドロキシル基置換複素環基を形成するものであり、bは、0又は1である。)、及び、
(2)一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の誘導体(前記イソチアゾロン化合物に対して0 . 1〜50モル倍の配合量)を含有するものであって、該誘導体が一般式[4]で表される1種若しくは2種類以上のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩からなる組成物を水又は親水性有機溶媒に溶解したものであることを特徴とする抗菌剤組成物、
【化13】
(ただし、式中、R 1 は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアラルキル基であり、R 2 及びR 3 は、水素若しくはハロゲン、又は、イソチアゾロン化合物の4位置と5位置の炭素と共にベンゼン環を形成するものであり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属又はアミンの陽イオンであり、Zは錯化合物を形成するに十分な溶解度を有する陽イオンMとの化合物を形成する陰イオンであり、aは1又は2であり、nは陰イオンZが陽イオンMの原子価を満たす整数である。)
【化14】
(ただし、式中、R 4 は水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R 5 は水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R 6 はハロゲンである。)
【化15】
(ただし、式中、R 7 は水素又は無置換若しくはカルボキシル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、R 8 は直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜5のアルキレン基、R 9 は水素又は無置換若しくはカルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ウレイド基、メチルチオ基若しくは4−イミダゾリル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、又は、R 7 とR 9 はN− ( R 8 )b −Cと共に無置換若しくはヒドロキシル基置換複素環基を形成するものであり、bは、0又は1である。)、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(3)一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物の含有率が、0.1〜10重量%である第(1)項記載の抗菌剤組成物、及び、
(4)一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物の含有量が、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物1重量部に対して、0.1〜30重量部である第(1)項記載の抗菌剤組成物、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌剤組成物は、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有する。
【化7】
一般式[1]及び一般式[2]において、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアラルキル基である。R2及びR3は、水素若しくはハロゲン、又は、イソチアゾロン化合物の4位置と5位置の炭素と共にベンゼン環を形成するものである。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属又はアミンの陽イオンであり、Zは、錯化合物を形成するに十分な溶解度を有する陽イオンMとの化合物を形成する陰イオンである。aは、1又は2であり、nは、陰イオンZが陽イオンMの原子価を満たす整数である。
【化8】
一般式[3]において、R4は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であり、R5は、水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R6は、ハロゲンである。
【化9】
一般式[4]において、R7は、水素又は無置換若しくはカルボキシル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、R8は、直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜5のアルキレン基であり、R9は、水素又は無置換若しくはカルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ウレイド基、メチルチオ基若しくは4−イミダゾリル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基、又は、R7とR9はN−(R8)b−Cと共に無置換若しくはヒドロキシル基置換複素環基を形成するものである。bは、0又は1である。
【0006】
一般式[1]で表されるイソチアゾロン化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンなどを挙げることができる。一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物としては、例えば、上記の一般式[1]で表されるイソチアゾロン化合物の塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化銅、塩化カルシウムなどとの錯化合物を挙げることができる。
一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物としては、例えば、2−フルオロ−2−ニトロエタノール、2−フルオロ−2−クロロ−2−ニトロエタノール、2−クロロ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロエタノール、2,2−ジクロロ−2−ニトロエタノール、2−クロロ−2−ブロモ−2−ニトロエタノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ヨード−2−ブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロ−1−プロパノール、1−クロロ−1−ニトロ−2−プロパノール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2−クロロ−2−ニトロ−1−ブタノール、1−クロロ−1−ニトロ−2−ブタノール、3−クロロ−3−ニトロ−2−ブタノール、3−ヨード−3−ニトロ−2−ブタノール、2−フルオロ−2−ニトロ−1,3−ブタンジオール、2−クロロ−2−ニトロ−1,3−ブタンジオール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ブタンジオール、2−クロロ−2−ニトロ−3−ペンタノール、3−クロロ−3−ニトロ−2,4−ペンタンジオール、3−ブロモ−3−ニトロ−2,4−ペンタンジオール、4−クロロ−4−ニトロ−3−ヘキサノール、4−ブロモ−4−ニトロ−3−ヘキサノールなどを挙げることができる。
【0007】
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸としては、例えば、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、サルコシン、シトルリン、メチオニン、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、ε−アミノカプロン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、イミノ二酢酸などを挙げることができる。
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物としては、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸とシステイン、シスチン、トリプトファンなどのアミノカルボン酸とが結合した化合物や、タンパク加水分解物でもよいが、一般式[4]で表される1種又は2種以上のアミノカルボン酸のみがペプチド結合で結合した化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシルアラニン、グリシルアスパラギン、グリシルロイシン、グリシルイソロイシン、グリシルフェニルアラニン、グリシルプロリン、グリシルサルコシン、グリシルセリン、グリシルトレオニン、グリシルバリン、グリシルグルタミン、アラニルアラニン、アラニルアスパラギン、アラニルグルタミン、アラニルグリシン、アラニルフェニルアラニン、アラニルチロシン、β−アラニルヒスチジン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などを挙げることができる。
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のN−アセチル化物としては、例えば、N−アセチルグリシン、N−アセチルアラニン、N−アセチル−L−アスパラギン酸、N−アセチル−L−グルタミン酸、N−アセチルチロシンなどを挙げることができる。
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のアミドとしては、例えば、グリシンアミドなどを挙げることができる。
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などを挙げることができる。
一般式[4]で表されるアミノカルボン酸には、DL−体、L−体及びD−体が存在する場合があるが、本発明組成物には、DL−体、L−体及びD−体のいずれをも用いることができる。
【0008】
本発明組成物において、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物の濃度に特に制限はないが、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物の濃度が0.1重量%未満であると、製品としての抗菌剤組成物の容量が大きくなり、輸送、貯蔵などに関して経済性が損なわれるおそれがある。一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物の濃度が10重量%を超えると、抗菌剤組成物の安定性が損なわれるおそれがある。
本発明組成物において、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物の濃度に特に制限はないが、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物1重量部に対し、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.3〜10重量部であることがより好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物の濃度が、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物1重量部に対し0.1重量部未満であると、微生物発生やスライム形成の防止に対する相乗効果が得られないおそれがある。一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物の濃度が、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物1重量部に対し30重量部を超えると、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物主体の抗菌剤となり、相乗効果が得られないおそれがある。
本発明組成物において、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の濃度に特に制限はないが、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物の0.1〜50モル倍であることが好ましく、1〜10モル倍であることがより好ましい。一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の濃度がイソチアゾロン化合物の0.1モル倍未満であると、抗菌剤組成物の安定性が損なわれ、イソチアゾロン化合物が分解しやすくなるおそれがある。一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の濃度は、通常はイソチアゾロン化合物の50モル倍以下で十分であり、これを超えて配合しても抗菌剤組成物の安定性はそれ以上には向上しない。なお、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の誘導体がポリアミノ酸である場合は、抗菌剤組成物中の濃度が0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0009】
本発明組成物に使用する溶媒は、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体が溶解するものであれば特に制限はないが、使用対象系が水系である場合が多いので、水又は親水性有機溶媒であることが好ましい。親水性有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ペンタノール、オクタノールなどの炭素数8以下のアルコール類、メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、プロピレンカーボネートなどのエステル類などを挙げることができる。本発明の抗菌剤組成物は、pH7以下であることが好ましく、特にpH1〜5であることが、イソチアゾロン化合物の安定性を高める上で好ましい。
【0010】
本発明の抗菌剤組成物は、さらに必要に応じて、腐食防止剤、スケール防止剤、イソチアゾロン化合物以外の抗菌剤、消泡剤、界面活性剤、防藻剤、pH調整剤などを配合することができる。
腐食防止剤としては、例えば、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、モリブデン酸、タングステン酸、ケイ酸、亜硝酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸、正リン酸及びこれらの塩類、塩化亜鉛、塩酸酸性塩化亜鉛、硫酸亜鉛、リグニンスルホン酸亜鉛、ヒドラジンなどを挙げることができる。
スケール防止剤としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合物、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メチルアクリレートの共重合物、アクリル酸/アリルグルシジルエーテルの共重合物、アクリル酸/2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸の共重合物、アクリル酸/イソプレンスルホン酸の共重合物、アクリル酸/ビニルスルホン酸の共重合物、アクリル酸/アリルスルホン酸の共重合物、ポリマレイン酸、マレイン酸又は無水マレイン酸/イソブチレンの共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/スチレンスルホン酸の共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/アクリル酸の共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/メタクリル酸の共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/アミレン酸の共重合物、マレイン酸又は無水マレイン酸/アリル化蛍光物質(5−アリルベンゾスベレノールなど)の共重合物、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸及びこれらの塩類などを挙げることができる。
【0011】
抗菌剤としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールなどのハロゲン化脂肪族ニトロ化合物のエステル類、ジブロモニトリロプロピオンアミド、メチレンビスチオシアネートなどのアルキレンビスチオシアネート、1,4−ビスブロモアセトキシ−2−ブテン、ヘキサブロモジメチルスルホン、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル、テトラクロロイソフタロニトリルなどのイソフタロニトリル系化合物、ジメチルジチオカルバメート、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、3,3,4,4,−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、トリヨードアリルアルコール、ブロモニトロスチレン、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド系化合物、ジクロログリオキシム、α−クロロベンズアルドキシムアセテート、α−クロロベンズアルドキシム、5,5−メチルヒダントインなどのベンズアルドキシム系化合物などを挙げることができる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系又は非シリコーン系消泡剤を、界面活性剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤を、防藻剤としては、例えば、アメトリンなどを挙げることができる。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。
本発明組成物の態様として、一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物0.1〜10重量%、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物0.1〜20重量%、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体0.1〜20重量%、腐食防止剤0〜50重量%、スケール防止剤0〜50重量%、抗菌剤0〜30重量%、消泡剤0〜10重量%、界面活性剤0〜10重量%、防藻剤0〜10重量%、pH調整剤0〜20重量%及び水又は親水性有機溶媒33〜99重量%を含有する抗菌剤組成物を挙げることができる。
本発明の抗菌剤組成物は、その対象及び目的に応じて、適宜濃度を選定して使用することができる。例えば、紙パ抄紙系や冷却水系などのスライム防止を目的とする場合は、イソチアゾロン化合物の濃度が0.1〜25g/m3であることが好ましく、合成樹脂エマルジョン、でんぷん糊、でんぷんスラリー、塗料、金属加工油などの防腐を目的とする場合は、イソチアゾロン化合物の濃度が1〜5,000g/m3であることが好ましい。
【0012】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、抗菌剤組成物の皮膚刺激性は、下記の方法により評価した。
調製した抗菌剤組成物について、各々6匹の白色ウサギ(ニュージーランドホワイト種)を用いて皮膚刺激性スクリーニング試験を行う。ウサギの正常皮膚の一カ所を試験部位とし、各試験部位に希釈しない抗菌剤組成物0.5mlをガーゼのパッチにつけ、4時間覆う。4時間後パッチを取り除き、試験部位を洗浄したのち、1時間、24時間、48時間及び72時間後の皮膚刺激性を、下記の基準に従って観察記録する。記録した紅斑と浮腫の数値の合計を平均して算出し、皮膚一次刺激性指数(PII、0〜8で数値化される。)として表示する。
紅斑の形成
0:紅斑なし。
1:非常に軽度の紅斑(かろうじて識別できる。)
2:はっきりした紅斑。
3:中程度ないし高度の紅斑。
4:高度の紅斑からわずかな痂皮の形成まで。
浮腫の形成
0:浮腫なし。
1:非常に軽度の浮腫(かろうじて識別できる)。
2:軽度の浮腫(はっきりした膨隆による明確な縁が識別できる)。
3:中程度の浮腫(約1mmの膨隆)。
4:高度の浮腫(約1mmの膨隆と暴露範囲を越えた広がり)。
また、皮膚刺激性は、得られた皮膚一次刺激性指数(PII)に基づき、以下のようにランク付けされる。
0≦PII<2:mild
2≦PII<5:moderate
5≦PII≦8:severe
実施例1
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1重量%含有するエチレングリコール溶液[ZONEN−F、市川合成化学(株)製]5.0重量部、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部、グリシン0.62重量部、水と75重量%硫酸を合わせて92.88重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。この抗菌剤組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍のグリシンを含有する。
さらに、グリシンの代わりに、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体として、DL−アラニン、β−アラニン、L−グルタミン、グリシルグリシン、グリシル−L−グルタミン、ピロリドンカルボン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム又はポリアスパラギン酸ナトリウムを用いて、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1重量%含有するエチレングリコール溶液[ZONEN−F、市川合成化学(株)製]5.0重量部、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍の一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体及び全量を100重量部とする水と75重量%硫酸を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。ただし、ポリアスパラギン酸ナトリウムについては、分子量2,000〜4,000で固形分濃度40重量%品のものを5重量部配合して同様に調製した。
得られた10種の抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したが、抗菌剤組成物はすべて透明な液体の状態を保ち、析出物は認められなかった。
比較例1
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1重量%含有するエチレングリコール溶液[ZONEN−F、市川合成化学(株)製]5.0重量部、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部及び全量を100重量部とする水と75重量%硫酸を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したところ、黄橙色の析出物の発生が認められた。
比較例2
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1重量%含有するエチレングリコール溶液[ZONEN−F、市川合成化学(株)製]5.0重量部、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部、グルコン酸ナトリウム1.8重量部、水と75重量%硫酸を合わせて91.7重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。この抗菌剤組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍のグルコン酸ナトリウムを含有する。
この抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したところ、白色の析出物の発生が認められた。
実施例1及び比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
第1表に見られるように、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールを含有し、かつ、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有する実施例1の抗菌剤組成物は60℃で1週間放置しても外観的な変化は認められず、熱安定性に優れることが分かる。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例1の抗菌剤組成物、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の代わりにオキシカルボン酸誘導体であるグルコン酸ナトリウムを含有する比較例2の抗菌剤組成物は、いずれも60℃で1週間放置すると析出物が発生する。
実施例2
実施例1で調製した抗菌剤組成物10種を60℃で1週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、その残留率を計算した。グリシンを含有する抗菌剤組成物の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率は、95%であった。
比較例3
比較例1と比較例2で調製した抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、その残留率を計算した。カルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例1の抗菌剤組成物の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率は、23%であった。グルコン酸ナトリウムを含有する比較例2の抗菌剤組成物の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率は、68%であった。
実施例2及び比較例3の結果を、第2表に示す。
【0015】
【表2】
【0016】
第2表に見られるように、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールを含有し、かつ一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有する実施例1で調製した抗菌剤組成物は、60℃で1週間放置しても5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの94%以上が残留している。特に、アミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物であるグリシルグリシン,グリシル−L−グルタミン及びポリアスパラギン酸ナトリウムを含有する抗菌剤組成物では、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが全く分解することがなく、残留率100%を保っている。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例1で調製した抗菌剤組成物、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の代わりにオキシカルボン酸誘導体であるグルコン酸ナトリウムを含有する比較例2で調製した抗菌剤組成物は、いずれも5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの分解が激しい。
実施例3
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1重量%含有するエチレングリコール溶液[ZONEN−F、市川合成化学(株)製]の代わりに、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、塩化マグネシウム及び硝酸マグネシウムを含有する水溶液[KATHON−WT、ロームアンドハース社製]5.0重量部を用い、実施例1と同様にして、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍のグリシルグリシン、グリシル−L−グルタミン又はポリアスパラギン酸ナトリウム及び全量を100重量部とする水と75重量%硫酸を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。
得られた抗菌剤組成物3種について、実施例2と同様にして、60℃で2週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率を計算した。残留率は、すべて100%であった。
比較例4
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを11重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、塩化マグネシウム及び硝酸マグネシウムを含有する水溶液[KATHON−WT、ロームアンドハース社製]5.0重量部、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1.5重量部及び水と75重量%硫酸を合わせて93.5重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。
得られた抗菌剤組成物について、実施例2と同様にして、60℃で2週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率を計算した。残留率は、42%であった。
実施例3及び比較例4の結果を、第3表に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
第3表に見られるように、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールを含有し、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の誘導体を含有する実施例3の抗菌剤組成物は60℃で1週間放置しても分解がなく、熱安定性に優れていることが分かる。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例4の抗菌剤組成物は、60℃で2週間放置すると、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの分解が激しい。
実施例4
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.6重量%、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを1重量%含有する水溶液[NS−KR、ナガセ化成工業(株)製]16.6重量部、グリシン0.62重量部、水と75重量%硫酸を合わせて82.78重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。この抗菌剤組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍のグリシンを含有する。
さらに、グリシンの代わりに、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体として、DL−アラニン、β−アラニン、L−グルタミン、グリシルグリシン、グリシル−L−グルタミン、ピロリドンカルボン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム又はポリアスパラギン酸ナトリウムを用いて、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.6重量%、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール1重量%を含有する水溶液[NS−KR、ナガセ化成工業(株)製]16.6重量部、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍の一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体及び全量を100重量部とする水と75重量%硫酸を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。ただし、ポリアスパラギン酸ナトリウムについては、分子量2,000〜4,000で固形分濃度40重量%品のものを5重量部配合して同様に調製した。
得られた10種の抗菌剤組成物を、60℃で3週間及び4週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率を計算した。グリシンを含有する抗菌剤組成物の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率は、3週間後が100%、4週間後が72%であった。
比較例5
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.6重量%、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを1重量%含有する水溶液[NS−KR、ナガセ化成工業(株)製]16.6重量部、水と75重量%硫酸を合わせて83.4重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物を、60℃で3週間及び4週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率を計算した。残留率は、3週間後が80%、4週間後が15%であった。比較例6
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを3重量%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.6重量%、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを1重量%含有する水溶液[NS−KR、ナガセ化成工業(株)製]16.6重量部、グルコン酸ナトリウム1.8重量部、水と75重量%硫酸を合わせて81.6重量部を混合して均一に溶解し、pH3の抗菌剤組成物を調製した。この抗菌剤組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの合計モル数に対して2モル倍のグルコン酸ナトリウムを含有する。
この抗菌剤組成物を、60℃で3週間及び4週間放置したのち、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残留率を計算した。残留率は、3週間後が85%、4週間後が53%であった。
実施例4及び比較例5〜6の結果を、第4表に示す。
【0019】
【表4】
【0020】
第4表に見られるように、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを含有し、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有する実施例4の抗菌剤組成物は、60℃で4週間放置しても5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの分解が少なく、熱安定性に優れていることが分かる。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例5の抗菌剤組成物、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体の代わりにオキシカルボン酸誘導体であるグルコン酸ナトリウムを含有する比較例6の抗菌剤組成物は、いずれも5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの分解が激しい。
実施例5
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン0.5重量部、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン0.1重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール0.17重量部、グリシン0.5重量部、アメトリン0.05重量部、50重量%ポリマレイン酸水溶液20.0重量部、75重量%硫酸0.86重量部、プロピレングリコール0.45重量部及び水77.37重量部を配合して、抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したのち外観を観察したが、析出物は認められなかった。
比較例7
グリシンを配合することなく、水の配合量を77.87重量部とした以外は、実施例5と同様にして、抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したのち外観を観察したところ、黄橙色の析出物が認められた。
実施例5及び比較例7の配合組成と結果を、第5表に示す。
【0021】
【表5】
【0022】
第5表に見られるように、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを含有し、かつグリシンを含有する実施例5の抗菌剤組成物は、60℃で1週間放置しても析出物がなく、熱安定性に優れていることが分かる。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例7の抗菌剤組成物は、60℃で1週間放置すると黄橙色の析出物が発生する。
実施例6
実施例5で調製した抗菌剤組成物を用いて、Pseudomonas aeruginosaに対する増殖阻止効果を調べた。
ペプトン1g/リットル及び酵母エキス1g/リットルを含むpH7の液体培地に、Pseudomonas aeruginosaを106個/mlとなるように接種し、調製直後の抗菌剤組成物を濃度が20mg/リットル、60mg/リットル及び100mg/リットルとなるように添加し、30℃で24時間振盪培養した。濃度20mg/リットルの場合は増殖阻止効果は認められなかったが、60mg/リットルと100mg/リットルの場合は、増殖阻止効果が認められた。
さらに、抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したのち、同じ試験を繰り返したところ、同様に濃度20mg/リットルの場合は増殖阻止効果は認められなかったが、60mg/リットルと100mg/リットルの場合は、増殖阻止効果が認められた。
比較例8
実施例5で調製した抗菌剤組成物の代わりに、比較例7で調製した抗菌剤組成物を用いて、実施例6と同じ試験を行った。
調製直後の抗菌剤組成物を用いたとき、濃度20mg/リットルの場合は増殖阻止効果は認められなかったが、60mg/リットルと100mg/リットルの場合は、増殖阻止効果が認められた。
さらに、抗菌剤組成物を60℃で1週間放置したのち、同じ試験を繰り返したところ、濃度20mg/リットル、60mg/リットル及び100mg/リットルのいずれの場合も、増殖阻止効果は認められなかった。
実施例6及び比較例8の結果を、第6表に示す。
【0023】
【表6】
【0024】
第6表に見られるように、実施例5で調製したグリシンを含有する抗菌剤組成物は、調製直後も、60℃で1週間放置したのちも、Pseudomonas aeruginosaに対する増殖阻止効果は変わらず、本発明の抗菌剤組成物が熱安定性に優れることが分かる。これに対して、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体を含有しない比較例7で調製した抗菌剤組成物は、60℃1週間放置するとPseudomonas aeruginosaに対する増殖阻止効果が失われる。
実施例7
実施例5で調製した抗菌剤組成物について、皮膚刺激性試験を行った。
経過スコアーは、1時間後の紅斑1.83、浮腫1.83、24時間後の紅斑1.50、浮腫1.50、48時間後の紅斑1.50、浮腫0.83、72時間後の紅斑1.33、浮腫0.83であり、皮膚一次刺激性指数(PII)2.79、皮膚刺激性moderateであった。
比較例9
比較例7で調製した抗菌剤組成物について、皮膚刺激性試験を行った。
経過スコアーは、1時間後の紅斑1.83、浮腫2.67、24時間後の紅斑2.00、浮腫2.33、48時間後の紅斑1.83、浮腫1.83、72時間後の紅斑1.67、浮腫1.50であり、皮膚一次刺激性指数(PII)3.91、皮膚刺激性moderateであった。
実施例8
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン1.0重量部、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン0.2重量部、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール0.33重量部、ポリアスパラギン酸ナトリウム1.0重量部、アメトリン0.05重量部、50重量%ポリマレイン酸水溶液20.0重量部、75重量%硫酸0.95重量部、プロピレングリコール0.45重量部及び水76.02重量部を配合して、抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物について、皮膚刺激性試験を行った。経過スコアーは、1時間後の紅斑2.50、浮腫2.00、24時間後の紅斑2.33、浮腫1.67、48時間後の紅斑1.83、浮腫0.83、72時間後の紅斑1.83、浮腫1.00であり、皮膚一次刺激性指数(PII)3.50、皮膚刺激性moderateであった。
比較例10
ポリアスパラギン酸ナトリウムを配合することなく、水の配合量を77.02重量部とした以外は、実施例8と同様にして、抗菌剤組成物を調製した。
この抗菌剤組成物について、皮膚刺激性試験を行った。経過スコアーは、1時間後の紅斑3.00、浮腫2.83、24時間後の紅斑2.67、浮腫2.33、48時間後の紅斑2.83、浮腫2.00、72時間後の紅斑2.67、浮腫2.17であり、皮膚一次刺激性指数(PII)5.13、皮膚刺激性severeであった。
実施例8及び比較例10の抗菌剤組成物の配合組成を第7表に、実施例7〜8及び比較例9〜10の皮膚刺激性試験の結果を第8表に示す。
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
第8表に見られるように、グリシンの有無以外は同じ組成の実施例7と比較例9、ポリアスパラギン酸ナトリウムの有無以外は同じ組成の実施例8と比較例10を比べると、いずれもグリシン又はポリアスパラギン酸ナトリウムを含有する実施例の抗菌剤組成物の方が、グリシン又はポリアスパラギン酸ナトリウムを含有しない比較例の抗菌剤組成物より皮膚一次刺激性指数が小さく、アミノカルボン酸又はその誘導体の配合により、イソチアゾロン化合物とハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物を含有する抗菌剤組成物の皮膚刺激性が低減されることが分かる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤組成物は、特定構造のアミノカルボン酸又はその誘導体を含有するので、イソチアゾロン化合物の分解が抑制されて安定性に優れるとともに、皮膚刺激性が低減されている。
Claims (2)
- 一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸又はその誘導体(前記イソチアゾロン化合物に対して0 . 1〜50モル倍の配合量)を含有するものであって、該誘導体が一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の金属塩、一般式[4]で表される1種若しくは2種類以上のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸と他のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩、一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のN−アセチル化物若しくはその金属塩、又は一般式[4]で表されるアミノカルボン酸のアミドからなる組成物を水又は親水性有機溶媒に溶解したものであって、60℃で1週間放置したときに透明性を維持し、析出物がない外観を呈し、皮膚一次刺激性指数が5未満であることを特徴とする抗菌剤組成物。
- 一般式[1]又は一般式[2]で表されるイソチアゾロン化合物、一般式[3]で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物及び一般式[4]で表されるアミノカルボン酸の誘導体(前記イソチアゾロン化合物に対して0 . 1〜50モル倍の配合量)を含有するものであって、該誘導体が一般式[4]で表される1種若しくは2種類以上のアミノカルボン酸がペプチド結合で結合した化合物若しくはその金属塩からなる組成物を水又は親水性有機溶媒に溶解したものであることを特徴とする抗菌剤組成物。
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