JP3691784B2 - 低周波誘導型高周波プラズマ反応装置 - Google Patents

低周波誘導型高周波プラズマ反応装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般にウエハ加工システムに関し、特にプラズマが主として誘導結合された電力によって発生するウエハ加工プロセス用のプラズマ反応装置に関する。
【0002】
尚、図面において、参照番号の最初の数字は、その参照番号によって示された構成要素(部材)が表れている最初の図面を示している。
【0003】
【従来の技術】
プラズマエッチングや蒸着は、異方性があり、化学的に選択性があり、しかも熱力学的平衡から離れた条件下で加工を行うことができるので、回路製作におけるプラズマエッチングや蒸着は、魅力的な方法である。異方性プロセスはマスキング層の縁からほぼ垂直に延びた側壁を有する集積回路パターンの作製を可能とする。このことは、エッチング深さ、パターン幅及びパターン間隔が全て同等である現在及び将来のULSI装置においては重要である。
【0004】
図1には、典型的なウエハ加工用のプラズマ反応装置10が示されている。この反応装置には、プラズマ反応室12を囲む絶縁被覆された金属壁11が設けられている。壁11は接地されており、プラズマ電極の一方の側として機能する。ガス供給源13から反応室12にガスが供給されており、そのガスは、プラズマプロセスに適切な低圧状態を持続するために、当該反応装置からガスを強制排気する排気システム14によって排気される。
【0005】
第2の電極16に接続された高周波電源15は、反応室12内のプラズマに静電的に電力を供給する。加工のため、ウエハ17は電極16上又はその近傍に配置される。ウエハ17は、スリットバルブ18のようなポートを介して反応室12内に搬入され、又、反応室12から搬出される。
【0006】
プラズマ反応装置には、13.56MHzの高周波電源(RF電源)が広範に用いられている。というのも、この周波数は、ISM基準周波数(ISMとは、工業、科学、医療の分野を意味する)であるからであり、ISM基準周波数の政府規制放射限度は、非ISM周波数、特に通信帯域の周波数における場合よりも、規制が緩やかだからである。このISM基準のために、その周波数で利用される設備が多いため、更に13.56MHzの全世界的な使用が助長されている。他のISM基準周波数は、27.12MHzと40.68MHzであり、これらは13.56MHzのISM基準周波数の第1次、及び第2次ハーモニクスである。
【0007】
プラズマは質的に異なった二つの部位、即ち、準中性で等電位の伝導性プラズマ体19とプラズマシース(plasma sheath)と呼ばれている境界層110とからなっている。プラズマ体は、ラジカルや安定中性分子はもちろん、ほぼ同じ濃度の負電荷及び正電荷を帯びた分子からなっている。反応室に供給された高周波電力は、自由電子にエネルギーを供給する。そして、これら自由電子の多くに十分なエネルギーを伝え、その結果、この電子がガス分子と衝突することによってイオンが生成される。プラズマシースとは、空間ポテンシャル(即ち、電界強度)の勾配が大きく、かつ、電子が不足した伝導性の低い領域である。かかるプラズマシースは、プラズマ体と、プラズマ反応室の壁や電極のような界面との間に生成する。
【0008】
電極が高周波電源に静電的に結合されると、この電極における電圧の負極側の直流成分Vdc(即ち、直流バイアス)が生じる(例えば、H.S.バトラー及びG.S.キング 流体物理学、6巻、1348頁(1963年)を参照)。このバイアスは、不均衡な電子及びイオンの移動性と、電極及び壁面におけるシースキャパシタンス(静電容量)の不均等の結果である。シースキャパシタンスの大きさは、プラズマ室の形状及び該室内における電極と壁との相対面積と同様に、プラズマ濃度の関数となる。電極における数百ボルト程度のシース電圧が一般に作られている(例えば、J.コバーン及びE.ケイ、高周波ダイオードグロー放電スパッタリングにおける基質の正イオン衝撃 応用物理誌、43巻4965頁(1972年)を参照のこと)。
【0009】
パワー供給された電極におけるシース電位の直流成分は、イオンをその電極に対してほぼ垂直方向に、より高いエネルギー状態まで加速するのに有益である。それ故、プラズマエッチングプロセスにおいては、陽イオンの束がウェハ面に対してほぼ垂方に投射されるように、エッチングされるべきウエハ17が当該電極上又は僅かにその上方に配置される。これにより、ウエハの非保護域のほぼ垂直なエッチングを可能としている。商業的エッチングプロセスに要求されるエッチング速度(以下、「エッチレート」という)を生み出すには、幾つかのプロセス(シリカ(SiO2)のエッチング等)において、このような高いシース電圧(及び高い放電電圧)が不可欠である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
最新のMOS集積回路におけるトランジスタ速度仕様と高集積度は、浅い接合を用いることと、数千オングストロームの厚さのポリシリコンゲート下における薄い(10ナノメートル程度)のゲート酸化物を要求する。残念なことに、そのようなIC構造は、図1の従来のプラズマエッチング装置におけるような高エネルギー(100電子ボルトを超えるエネルギー)イオンによる衝撃に敏感であるため、ゲートを形成するポリシリコン層のエッチング工程の間、ゲート酸化物の損傷を避けるのが難しくなっている。イオンエネルギーと関連するシース電圧の減少に伴って、ウエハ損傷は減少するので、より少ない放電パワーレベルと放電電圧において操作することは有利となろう。しかしながら、13.56MHzの静電結合電力では、電圧の低下は、多くのプロセスにおけるエッチレートを比例的に低下させる結果となり、そのためにプロセスの効率を大きく低下させる。
【0011】
シリカ及びある種の珪素のエッチングプロセスにおけるエッチレートは、プラズマからウエハに伝達されるイオン衝撃電力密度の関数である。この電力は電極のシース電圧とウエハのイオン流密度との積に等しいので、低減されたシース電圧においてほぼ一定したエッチレートを維持するためには、ウエハのイオン流密度は増大されねばならない。このことは、ウエハ近くのプラズマイオン密度を増やすことを要求する。残念ながら、従来のプラズマエッチング装置では、電極のシース電圧と電極近くのイオン密度とは相互に比例的であり、かつ、それらは電極に印加される高周波電圧の振幅に単調増加な関数である。
【0012】
このように、高周波信号の電圧を低くすることによってシース電圧が減少されるならば、ウエハにおけるイオンビームの電流密度もまた減少し、それによって、シース電圧又はイオン電流における場合よりもエッチレートにおける更なる割合の減少を生じさせる。それ故、商業的に十分なエッチレートを有するソフトエッチングプロセス(ウエハにおける低いシース電圧を有するエッチングプロセス)が実行されるためには、ウエハのシース電圧とイオン密度とを独立して調節可能であることが有利となろう。
【0013】
ウエハ近くのプラズマイオン密度を高めることでエッチレートを増大させる1つの方法は、磁石を利用してウエハの近傍に電子をトラップする磁気的な閉じ込め場を作り、それにより、ウエハにおけるイオン生成率と関連する密度を増やすことである。磁気的な閉じ込め場は、磁力線の周りの螺旋軌道に沿って活性電子をうず巻き状に進ませることにより、活性電子を閉じ込めている。
【0014】
あいにく、例えば「磁気強化された」プラズマエッチングシステムの磁気的な閉じ込め場の不均一性によって、ウエハ表面でのエッチレートの均一性が減じられている。シース内及びその近傍の電場によるE(電場)×B(磁場)ドリフトはまた、そのようなシステムにおけるエッチレートの均一性を減少させる。かかるシステムにおけるウエハ表面上の均一性を改善するために、ウエハは、電極面に垂直かつその面の中心となる軸線の周りに回転される。これは、ウエハ上の改善された平均均一性を有する円筒対称な時平均場をウエハに生じさせ、それにより、エッチングの均一性の向上が図られる。しかしながら、かかる回転は、微粒子を生じさせて汚染を増大させる好ましからぬ機械的な動きをプラズマ室内に生じさせる。
【0015】
低いイオン衝撃エネルギーでの許容できる程度のエッチレートを生じさせる可能性のあるもう一つの技術は、最近開発された電子サイクロトロン共鳴プラズマ生成法である。この技術には、ウエハのクリーニング、エッチング、及び蒸着プロセスに対する適用事例がある。この技術においては、マイクロ波電源と磁気的な閉じ込め構造を用いてプラズマが生成される。残念ながら、エッチングあるいは化学蒸着法に適用された場合、この方法は、高レベルで微粒子を生成し、放射方向へのエッチレートの均一性が低く、しかも低効率である。
【0016】
ラジカルの生成に振り向けられるエネルギーの割合は、約0.13パスカルを超えると急激に増大するので、このシステムの圧力はそのレベル以下に保たなければならない。これは、(1):非常に高速の排気速度(毎秒3,000リットル以上であって、これは普通のタイプの10倍の体積である)を有し、かつこのプロセスに要求される極低圧(0.013〜0.13パスカル)を生み出す真空ポンプシステムと、(2):時として大きな電磁石を含む巨大な磁気的閉じ込めシステムと、を含んでなる高価な装置を必要とする。
【0017】
更に、イオン密度を高める別の技術は、ウエハ上少なくとも10センチメートルの領域にイオンを発生させるマイクロ波プラズマ発生装置を使用するものである。これらイオンは、ウエハ上の空間に流れ込み、ウエハのイオン密度に貢献する。しかしながら、この方法は、多量の自由ラジカルを生成させる傾向にあり、1平方センチメートル当たりほんの数ミリアンペアのイオン流密度をウエハに発生させるだけである。
【0018】
ジョセフ・フレジンガー及びホースト・W.ローブによる「融合炉用の中性分子注入器 RIG」原子核エネルギー・核技術(Atomkernenergie−Kerntechnik)、44巻(1984年)No.1,81〜86頁では、粒子の中性ビームを発生させて、トカマク融合炉のエネルギー生成における均衡点を設けるために必要とされている追加のパワー量を供給している。このビームは、誘導結合電力によってイオンビームを発生させることと、融合炉内に入る前にガスを通過させることにより、そのビームを中性化することによって作られる。そのイオンビームは、この出願における高周波フィールドの代わりに直流フィールドによって抽出されている。
【0019】
J.フレジンガーらの「反応性ガスの物質プロセスのための高周波イオン電源と題された論文(ガス放電とその応用についての第9回国際会議 1988年9月19〜23日)に示された反応装置においては、電子を加熱するためにパワーが反応室内に供給されており、ウエハヘのイオンビームは高周波フィールドによる代わりに直流フィールドによって発生されている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
説明された好ましい実施例に基づいて、プラズマ反応装置が示されている。そのプラズマ反応装置においては、低周波(0.1〜6MHz)の高周波電源(RF電源)がウエハを保持する電極近傍のガスのイオン化エネルギーを供給するためにプラズマに誘導的に結合されており、しかも、より低電力の高周波電圧が電極に印加されて、その電極上のウエハのイオン衝撃エネルギーを制御している。ウエハは、加工のために、この電極表面又はその直上方に配置される。
【0021】
このプラズマ反応装置は、低周波RF電源につながれた誘導コイルによって取り囲まれた非伝導性の反応室壁を備えている。スプリットファラデーシールドは誘導コイルと反応装置の側壁との間に配置され、その反応装置を取り囲んで、誘導コイルとプラズマ反応装置との間における変位電流(displacement current)の発生をほぼ取り除いている。実際に、このシールドは、低周波RF電場のプラズマヘの電気的結合を大幅に削減する(J.L.ボッセンによる「プラズマエッチング及びプラズマ蒸着におけるグロー放電現象」と題する論文 電気化学会誌 固体状態の科学と技術126巻No.2 1979年2月 319頁)。その結果、反応装置壁のイオン衝撃エネルギー、並びに、反応装置壁の関連するエッチング及びスパッタリングがほぼ除かれ、低周波におけるウエハシース電圧の変調が低減される。
【0022】
このファラデーシールドは、プラズマとシールドとの間のキャパシタンス(静電容量)を変えることができるように、移動可能となっている。このファラデーシールドはほぼ反応室外壁に接触配置され、ウエハ加工プロセスの間、高キャパシタンスを生み出している。これは高周波プラズマ電位を減少させ、それによって反応装置の壁のプラズマエッチングを減少させている。ファラデーシールドと反応室壁との間おける、低減されたキャパシタンスを生み出すところの増大した間隔は、増大した高周波・時平均プラズマ電位レベルを生み出すためにウエハエッチング時以外でも利用可能であり、これにより、エッチングレベルを制御した状態で反応装置壁の浄化を可能とするより高いイオン衝撃エネルギーを生じる。
【0023】
好ましくは、そのファラデーシールドはキャパシタンスを変えるために半径方向に移動されるが、キャパシタンスはまたファラデーシールドの垂直方向への移動によっても変え得る。そのシールドを垂直方向に移動可能とした態様においては、当該シールドは、反応室と各誘導コイルとの間に存在しなくなるほど垂直方向へ移動することを許容されるべきでない。反応装置の壁によって提供される有効な高周波接地電極へのプラズマのキャパシタンスを増大させるために、伝導性シートが反応室の上部に含まれてもよい。このプレートもまた、プラズマ体とファラデーシールドのこの部分との間のキャパシタンスを変えるために、移動可能であってよい。
【0024】
電子を反応室壁から離れて閉じ込めることによって、低圧力でのイオン発生を促進するために直流磁場が含まれてもよい。低圧下において電子は、反応室壁との衝突により反応室からのロス比率を増加させる、増大した平均自由行程を有する。この磁場は、壁との衝突前に反応室内でのイオン化衝突の割合を増加させる螺旋状行路内に電子を進入させる。
【0025】
電子をプラズマ内へ跳ね返すために、反応室の上部近くほど強くなっている分散磁場が含まれてもよく、これにより、反応室壁の上部での電子の減損を防ぐことができる。この磁場は(反応室上部近くでは数万分の1テスラ程度)、反応室上部に配置され、かつ互い違いの磁場方向を有する永久磁石の配列によってか、直流電流が流れているソレノイドコイルによってか、あるいは、強磁性のディスクによって発生される。
【0026】
誘導結合された高周波電力は、反応室の大きさに応じて、0.1〜6MHzの範囲の周波数で10kWのレベルまで供給される。電極に印加される電圧はイオンが電極のシースを横切る平均時間の逆数よりも高い周波数にある。この電圧信号の周波数fhの好ましいものは、全てのISM標準周波数、即ち、13.56MHz,27.12MHz,40.68MHzである。それほど広く分散されないイオン衝撃エネルギーを生じるために、より高密度のプラズマには、より高い周波数が必要とされるであろう。
【0027】
電極のシースは、ほぼウエハ面に対して垂直な強い電場を持っており、それにより、ほぼ垂直なイオン衝撃と、ほぼ垂直な又は制御されたテーパーなウエハエッチングが生み出される。電極に提供される静電結合電力の量は、プラズマヘ誘導的に供給される電力よりもずっと少ない。それ故、ウエハにおけるイオン電流の平均は、第一義的には誘導結合電力によって決定される。そして、ファラデーシールドにより、ウエハにおける平均イオンエネルギーは、電極への高周波信号(rf信号)の振幅だけの関数にほぼなる。
【0028】
これとは対照的に、図1に示される典型的なプラズマ反応装置においては、平均イオン密度(一般には幾分低い)とエネルギーの双方は、電極への高周波信号の振幅によって制御される。それ故、誘導結合された反応装置は、シース電圧を減少させ、イオン密度を高くすることを可能にする。また、シース電圧とイオン密度は別々に変えられ得る。結果として、商業的にみて受け入れ可能なエッチレートでのソフトエッチングが達成され、そのソフトエッチングは、100電子ボルト程度かそれ以上の衝突エネルギーを有するイオンによって損傷され得る最近の型の集積回路を損傷させることがない。
【0029】
誘導結合されたプラズマ反応装置における電磁場は、ウエハ上における非常に均一なプラズマイオン密度分布を生じ、非常に均一なウエハ加工プロセスを実現する。誘導的に発生させた電場はほぼ円筒状であり、それ故、反応装置の側壁にほぼ平行に電子を加速する。プラズマの伝導性のために、この電場の強さは前記側壁から離れて急速に減少し、電子加速がその側壁近くの領域で主として起こる。
【0030】
電子が速度を増すに従い、その慣性によって、分子との一連の弾力衝突、及び/又は、側壁のシースとのかすめ接触を包含する軌道が描かれる。そのような衝突や接触は、電子をプラズマ体の中へはじきとばす。このことは、壁の近傍のみにおいて有意義な電子加速を生ずる結果となるが、また反応室中のいたるところでイオンを発生させることとなる。これら電子及びイオンの拡散、並びに電子の放射状E×Bドリフトは、ウエハの近傍において、非常に均一な密度を有する放射対称なイオン密度を生じる。側壁近くで電子がエネルギーを得る領域から離れた電子の散乱を促進するために、反応室内は、低圧(一般に0.13〜3.9パスカル程度)に保たれる。
【0031】
このデザインはまた、電力をイオンの生成に結び付ける上で非常に有効であり、それ故、プラズマ中のイオンによって行なわれるウエハ加工プロセス用の他の反応装置を超越して重要な利点を提供している(例えば、J/フレジンガーらによる「反応性ガスでの材料加工用のRFイオン電源 RIM10」と題された論文 ガス放電とその応用についての第9回国際会議 1988年9月19〜23日を参照)。この重要性は下記に述べる通りである。
【0032】
プラズマヘの高周波電力は、中性のラジカル、イオン、自由電子、並びに、自由電子による分子及び原子の励起状態を作る。反応性イオンによる垂直エッチングは、高周波電力の多くをイオン生成へ振り向ける反応室には好都合である、過剰なラジカル集中のために、ラジカルによるウエハ表面での反応は、目的とされる製作加工プロセスにとって有害となり得るので、プラズマによる自由ラジカルの相対生成を減少させることは、多くの応用事例において有益である。それ故、反応性イオンエッチングプロセス、又は、高イオン集中によって好都合となるか、あるいは重大な自由ラジカル集中によって品位を落とされる他のプロセスに対して、このプラズマ反応装置は特に適している。
【0033】
この反応装置はまた、従来のプラズマ反応装置よりもずっと少ない静電結合電力を必要とするに過ぎない。このシステムは、全電力が静電的に結合されている従来のプラズマ反応装置用の500〜1000ワットに対して、数百ワット程度の高周波電力を用いている。このシステムはまた、イオン流とイオン衝突エネルギーとを別個に制御する能力を備えている。
【0034】
図1に示す従来のプラズマ反応装置では、電極16に印加される高周波信号の振幅は、プラズマ内のイオン密度だけでなく、その電極のシース電圧をも制御する。ソフトエッチング(即ち、ウエハのイオン衝撃エネルギー100ボルト程度かそれ以下)を達成するためには、静電的に印加される高周波電力は、そのような反応装置において伝統的に用いられてきた電力よりも低くされるべきである。
【0035】
残念ながら、この静電印加電力の減少は、このシースを横切っての電圧降下を減少させるだけでなく、このシースでのイオン密度をも低下させる。電極に対する高いRF電圧下においてさえ、そのような静電結合電力は相対的に低いイオン密度だけを生じさせる。ウエハエッチレートは、このシースにおけるイオン密度と、そのシースを横切っての電圧降下との積に比例するため、ウエハエッチレートは、これら2つのパラメータのいずれかよりも速く減少する。このように、ソフトエッチングは、商業的な集積回路の作製プロセスと両立し難い効率の減少を生む。
【0036】
このシステムにおけるシース電圧が電極に印加される高周波信号の振幅に拘束されることは、図2及び図3を参照して示され得る。高周波電源15と電極16との間にあるコンデンサー21は、このシース電圧が直流成分を持つことを可能とする。この直流成分は、電極の不均等な領域と、電子及びイオンの不均等な移動性との相乗効果によって生み出されたものである。各プラズマシースは、抵抗体、コンデンサー及びダイオードの並列的な組合せに電気的に等価である。シースを横切る電場は、104オーム程度の大きなシース抵抗を生じるシース領域の外へ、ほとんどの電子をはじきとばす。
【0037】
周波数を増加させる関数としてのシースインピーダンスの静電成分は、約500kHzにおいて意義を有する程度に十分に小さくなると共に、その周波数以下では無視され得る。500kHzを超える周波数では、シース抵抗は非常に大きく、それは無視できる。これは、静電結合された電力の周波数における高周波シース電圧成分の場合である。
【0038】
図2の等価回路において、プラズマ及びシース内のイオンよりもずっと大きい電子の移動性の影響は、ダイオード24,28によって模式化されている。このように、もし仮にプラズマがそのプラズマに近接した全ての電極に関して負となるならば、プラズマ中の電子はその電極に対して効果的に短絡するだろう。故に、シースインピーダンスは、要素22〜24及び26〜28によって模式化される。プラズマ休は、電極に印加されるRF電圧に用いられる高い周波数fh(好ましくは、ISM周波数13.56MHz,27.12MHz又は40.68MHzの一つである)において無視され得る低インピーダンスの抵抗25として模式化される。
【0039】
図3は、電極に印加される周波数fhの220ボルトピーク対ピーク高周波信号31、プラズマの結果電圧32、及び電極のシース電圧36の間の関係を示す。シースキャパシタンスCS1及びCS2は、静電結合電力の周波数fhにおいて顕著(優勢)であるので、抵抗RS1及びRS2は無視され得ると共に、信号31の各周期における短区間を除いて、ダイオード24及び28は無視され得る。故に、最も働く条件下では、プラズマ等価回路は静電ディバイダーに換算されて、プラズマ電位VPとキャパシタンスCS1及びCS2を横切る電圧の高周波成分はほぼ位相内にあり、大きさはVP=Vrf・CS2/(CS1+CS2)で表される。
【0040】
電極面積の数倍の壁面積がある典型的な反応装置では、壁でのシースキャパシタンスCS2は、電極でのシースキャパシタンスCS1の10倍程度である。それ故、220ボルトピーク対ピーク高周波信号31にとっては、プラズマ電位VPがピーク対ピーク20ボルト程度になる。信号31及び32は位相内にあるので、信号32のピーク33は信号31のピーク34と並んでいる。ダイオード24のために、信号31と32の最小電圧差(各ピーク34において起こる)は、kTe/e程度なる。同様に、プラズマの反応装置壁への短絡を防ぐために、VPはグランド35よりも正極側で少なくともkTe/eはなければならない。
【0041】
これらの様々な条件により、電極(即ち、高周波信号31の直流成分)の平均シース電圧36は、ほぼ−90ボルトとなる。シース電圧の直流成分は、−Vrf・CS1/(CS1+CS2)/2にほぼ等しく、ここで、Vrfは高周波電圧のピーク対ピーク強度である。高周波信号の電場成分はほぼ電極に対して垂直であるため、シース電圧は高周波信号強度と共に直接的に変化する。このことは、電圧31の直流成分36が電極に印加される高周波電圧のピーク対ピーク振幅と直接的に関係があることを意味する。
【0042】
従来のプラズマ反応装置の電極でのイオン流密度は、電力低下と共に低下するプラズマ中のイオン密度に比例しており、シース電圧を下げるために高周波電圧の振幅が小さくされると、電流密度も低下することになる。それ故、図1のプラズマ反応装置では、よりソフトなエッチングを行うために電圧が下げられた時でも、エッチング電力を維持するためにウエハでの電流密度を高くすることはできない。
【0043】
電極でのシースを横切る電圧降下は、印加される高周波信号31とプラズマの電圧32との間の差に等しい。この電圧降下は、0ボルトから約−220ボルトの範囲で変化する。イオンが、高周波信号の1/fhの周期に比して短い時間間隔でこのシースを通過したとしても、高周波信号31のピーク34付近のシースを通過するならば、その衝撃エネルギーはほぼ0になる。そのような低エネルギー衝撃イオンは、必ずしもウエハ面にほぼ垂直な軌跡を描くとは限らず、それ故、目的とするウエハの垂直エッチングを低下させ得る。
【0044】
従って、周期1/fhが、イオンがこのシースを通過する平均時間の半分を超えないことが重要である。この通過時間は50万分の1秒程度かそれより短いため、fhは少なくとも4MHzはなければならない。より高いイオン密度及び低シース電圧のためには、周期1/fhは、0.1マイクロ秒(μs)以下になる。ISM周波数に関するゆるやかな規制故に、fhはISM周波数である13.56MHz,27.12MHz,40.68MHzのうちの1つに等しいことが好ましい。
【0045】
【発明の実施の形態】
図4には、シース電圧及びウエハでのイオン流密度を独立して調整できるプラズマ反応装置が示されている。この反応装置はまた、ウエハにおけるイオン流密度及び電圧の非常に均一な分布を生じると共に、純粋に静電的ないし、より高周波の誘導放電に関するプラズマ中でのイオン生成速度と自由ラジカル生成速度との間の比率を引き上げることを可能とする。故に、このシステムは、自由ラジカルに対するイオンの比率が大きい応用事例には特に有益である。
【0046】
べース40上には、プラズマ反応室50(図5参照)を囲んでいる円筒形の反応室壁41がある。反応室壁41は7〜30センチメートルの高さであり、加工されるウエハの直径に依存する側方直径を有している。直径15センチのウエハの加工システムにあっては、この反応室壁は25〜30センチ程度の側方直径を有し、直径20センチのウエハの加工システムにあっては、この反応室は30〜38センチの側方直径を有する。反応室壁41は、石英やアルミナのような非伝導性物質からなっている。
【0047】
包囲している壁41は、伝統的なインピーダンス整合回路又はトランス(変圧器)44を介して第1の高周波電源43(以下、「RF電源」という)に接続された誘導コイル42そのものである。商業的に好都合なリアクタンス値を用いている伝統的な整合回路44によってか、あるいは、誘導インピーダンス(通常、10オーム以下)を電源43のインピーダンス(通常、50オーム)に整合させるトランスによって、RF電源43に都合良く整合するインダクタンスを生むために、このコイルはほんの少しだけ巻き付いている(2〜8巻き程度)。整合回路は、電源43へ戻る電力の反射をほぼ取り除くように設計されている。
【0048】
この誘導コイルは、反応室50内に、その軸がほぼ垂直である軸対称な高周波磁場と、ほぼ円筒状の電場を生じさせる。これら二つの磁場と電場は、中心軸Aの周りに対して回転対称となる。この回転対称性は、ウエハ加工の均一性に貢献する。
【0049】
プラズマの高い伝導性のために、誘導結合された場は、誘導結合RF場の周波数f1で割られた(除された)プラズマ中の電子密度の平方根に比例する厚さδ(1センチメートル程度)を有する側壁に隣接した領域に、ほぼ限定される。更に大きなシステムにおいては、電子を加速するこの領域の厚さを増加させるために、f1は低くされる。
【0050】
この頒域内では円筒状の電場は電子を円周方向へ加速する。しかしながら、この加速された電子の慣性のために、電子は側壁でのシースの電場をかすめることになる。そのようなかすめ的接触は、電子の多くを壁から反射させる。電子のいくらかは壁をたたいて二次電子を生じさせる。ガス分子との弾性衝突は電子を反応室の至るところへ拡散させる。誘導的に発生した電場は側壁からの距離δ(抵抗膜厚)に限定されるので、電子加熱はこの領域のみにとどまる。ウエハを横切るイオン密度をより均一にするためには、圧力は低く保たれ(通常、0.13〜3.9パスカル)、壁付近で加熱された電子は壁から迅速に拡散して、ほぼ均一なイオン化とウエハ表面において結果として表れるイオン密度を実現する。
【0051】
反応装置の半径R、周波数f1、及び誘導結合電力は、ピーク対ピーク振幅が1〜10ボルト/cmである円筒状の電場を生み出すように選択される。このことは、3センチ以上の振幅を有する振動電子経路を生ずる結果となり、これら電子の平均自由行程は電子振動の振幅程度かそれ以下となる。電源43は0.1〜6MHzの範囲の周波数で、かつ10kWまでの出力で電力を供給する。
【0052】
第2のRF電源51(図5に図示)は、ISM(工業的、科学的、医学的)標準周波数(即ち、13.56MHz,27.12MHz,40.68MHz)のうちの1つの周波数で電極52に高周波電力を供給する。図1の例では、この高周波電源は、電極52に並んで直流シース電圧を生み山す。その電力レベルは、100ワット以下から数百ワット(500ワットまで)までの範囲にあり、静電結合された高周波信号のイオン密度への影響は、電源43からの誘導結合電力の影響よりもはるかに少ない。この電力レベルは、プラズマ反応装置の電極へ一般に供給される電力レベルよりも幾分低い。この電力レベルは、イオンによるウエハのソフトな衝突(即ち、運動エネルギー100ev以下)を生み出すために低く保たれる。この電極への低い電力レベルはまた、イオン密度がRF電源43によって主として決定されることを意味している。このことは、イオン密度及びシース電圧のデカップリング制御に際して有利である。
【0053】
誘導的に発生された電場の周方向は、プラズマ体から電極までの、電極に対する法線に沿っての経路積分がゼロになるように、この電場を電極と平行にする。この結果として、図1のプラズマ反応装置とは異なり、プラズマ体と電極との間のRF時間変化電位差を生じるシースの高周波成分が存在しない。このことは、低周波誘導RF場の電極の電位への結合をほぼ取り除く。それ故、電極52のシース電圧はRF電源51だけによって決定される。
【0054】
反応装置の側壁を取り囲むことが、この実施例においては、側壁になる1ダースの伝導性プレート46からなる接地されたファラデーシールド45に相当する。各ファラデーシールド伝導性プレート46は、間隙48だけ近隣のプレートとの間隔を置いている。これら間隙は、誘導高周波磁場が反応室50内を突き抜けることを可能とするために必要とされる。ファラデーシールド内における円周方向の電流の発生を防止するためには、少なくとも1つの間隙が必要とされる。レンツの法則により、そのような円周方向の電流は反応室50内の磁場の変化に強く反発し、その結果、コイル42の電流の反応室50での望まれた作用に本質的に逆らうことになる。
【0055】
このファラデーシールドはまた、図1の反応装置の接地された伝導壁と同じ機能を提供する。つまり、静電結合されたRF場が反応室の外側へ外れて他の装置と干渉しないように、又は連邦放射基準を逸脱しないように、ファラデーシールドは静電結合されたRF場を反応室50内に制限する。このシールドはまた、静電結合電源51によってつくられた電極からの高周波電流の帰還経路を提供する。
【0056】
ファラデーシールド45は、それが反応装置壁と隣り合っている場合、電源43のRF周波数f1におけるプラズマ電位VPの時間変化量を大幅に減少させることができる。これは、イオン密度及び平均シース電圧Vdcについての第1のRF電源43及び第2のRF電源51の影響を切り離す上で重要である。コイル42に印加される電力レベルにおいては、これらコイルの大きなインダクタンス(1〜100マイクロヘンリー程度)は、コイルの一端又は両端での高い電圧を生じる。ファラデーシールドがないとすれば、コイル42の高電圧端47はプラズマ体に静電結合すると共に、電源43の周波数f1でのVPのRF変化に影響を与えるであろう(例えば、J.L.ボッセン「プラズマエッチング及びプラズマ蒸着におけるグロー放電現象」電気化学学会誌、固体状態の科学と技術 126巻 No.2,319頁を参照)。
【0057】
間隙48の幅は、コイル42がこれら間隙を介してプラズマ体へ静電結合しないように、伝導性ブレート46とコイル42との間の最小間隔よりも狭くなっている(前記ボッセン文献を参照)。もしも、そのようなプラズマ体への静電結合が妨げられない場合、このプラズマ電位VPのRF変化は、同じ周波数におけるシース電圧(それ故に、イオンエネルギー)の変化として現れることになる。更にまた、ファラデーシールドによってほとんど排除されないとすれば、この電場はエッチングの対称性を低下させることになる。
【0058】
ファラデーシールド45はまた、プラズマ反応装置の壁41に隣接したプラズマシースのシースキャパシタンスCS2の値に大きく影響する。もしもこのファラデーシールドが存在しないならば、静電結合された高周波信号の有効接地は、RF誘導コイルか又はその反応室を取り囲んでいる環境により提供され、それ故に、反応装置の近傍に存在する他の物体によって影響されることになろう。更に、これらの物体は一般に、有効接地状態が無限にあるとして扱われるに十分に大きい距離にある。このことは、側壁及び上壁のCS2を、図3の場合のようなCS1の10倍ではなく、CS1の10分の1程度かそれ以下にする。結果として、プラズマ電位VPと高周波信号との関係は、図3に示された関係よりも図7に示された関係にずっと近くなる。
【0059】
図7において、高周波電圧(信号71)は、220ボルトのピーク対ピーク振幅を有するものと再度仮定する。CS1がCS2の10倍に等しい場合、プラズマ電圧信号72は200ボルトのピーク対ピーク振幅を有する。プラズマ電圧VPのピーク73は、高周波電圧信号71のピーク74と再び相並び、両ピークの間隔は再度、kTe/eの数倍までになる。同様に、VPのくぼみのグランドとの間隔は、kTe/e程度(通常、数(a few)ボルト)である。故に、プラズマ電圧信号72は100ボルト程度の直流成分76を有する。これは、プラズマ電圧信号32が約10ボルトにkTe/e程度のオフセットを加えた直流成分を有している図3と対照的である。
【0060】
この壁とプラズマ体との間での大きく増大したこの直流成分は、プラズマ内イオンによる許容できないレベルの壁のエッチング又はスパッタリングを生ずることとなる。このような作用は、反応室壁を損傷するだけでなく、反応性ガスを消耗し、反応室内でのウエハ作製プロセスを妨げる汚染物質をプラズマ内に導き入れる。しかしながら、壁41から多少離間配置されているファラデーシールド45がある場合、有効接地電極のキャパシタンスが増大し、CS2は再びCS1よりも数倍大きくなり、高周波信号とプラズマ電圧VPとの関係は図7に代わって図3のようになる。
【0061】
実際のところ、普通、キャパシタンスCS2の二つのプレート(即ち、プラズマと伝導性壁)の間隔は0.1センチほどになる。図4の反応装置では、ファラデーシールドが壁41の近くに置かれている場合、キャパシタンスCS2は、0.075センチメートルの真空ギャップと等価であるところの、誘電率(4よりも大)で除された壁41の厚み分だけ増加される。それ故、壁のキャパシタンスCS2は、図4の場合に匹敵する大きさを有した図1に示すタイプの反応装置におけるキャパシタンスの半分の値よりも少し大きくなる。
【0062】
伝導性プレート46は、約1センチ以上半径方向に動くことができ、キャパシタンスCS2は伝導性プレート46を壁から離間する方向に動かすことによって低下し、およそ0.1〜10の範囲にわたりCS1/CS2比率を変化させる。これら伝導性プレートはウエハ加工プロセス中、壁41の近くで動かされるので、反応室壁のエッチングと汚染物質の副産は最小限にとどめられる。ウエハ加工プロセス以外の時には、定期的に壁のエッチングを行って壁を清浄にするために、伝導性プレートは1センチ又はそれ以上、壁から離間する方向へ移動される。この反応室の清浄工程での残り屑は、更なるウエハ加工プロセスが行われる前に反応装置から取り除かれる。
【0063】
図5及び図6はそれぞれ、この反応装置40の顕著な特徴部分を示している側断面図及び上面図である。反応室50の上部のすぐ外には、ファラデーシールド45がこの反応室の側面に持たせているのとほぼ同じ機能を反応室50の上部に持たせる接地状態の伝導性プレート53がある。
【0064】
反応装置の上部には、交互にN極を下方へ向けた1セットの磁石54が存在している。強磁性反射プレート55は、最も外部にある2つの磁石によって生み出された磁場の磁束を跳ね返すのを助ける。磁石は永久磁石であることが好ましく、その理由は、この種の磁石は十分な磁場を経済的に提供してくれるからである。この配列は、電子をプラズマ体へ向けて跳ね返す磁気的な鏡の如く作用するところの、約0.01テスラの交番方向の磁場の並びを反応室50の上部に作り出す。
【0065】
これら磁石による磁場は、これら磁石の間隔(2〜3センチ程度)の2倍程度の距離だけ反応室内に入り込んでいる。他の実施態様において、前記磁石の直線的な配列は、同心円状の環状磁石の1セットで置き換えられると共に、それら隣合う環状磁石のN極が垂直方向に対して反対向きにした状態で配置されてもよい。更に他の実施態様において、反応室の上部近くに数万分の1テスラ程度の磁場を持つ磁気鏡を作り上げるために、N極が垂直方向に向けられた強磁性物質の平らなディスクや、単環直流ソレノイドが使用されてもよい。磁気を帯びたディスクを使用した実施態様は好ましく、その理由は、それは簡素かつ安価であり、反応装置の半径方向の対称性を保持するからである。これとは対照的に図5の磁石54による磁場が半径方向の対称性を欠いていることは、ウエハエッチングにおけるの半径方向の対称性をわずかに低下させるかもしれない。
【0066】
反応装置壁41の基端部ないし上部の外側には、任意の直流磁場を生じて側壁から離れた電子を包含するために、直流電源57に接続された伝導性コイル56が存在する。このコイルの磁場の大きさは、0.0001〜0.01テスラ程度になり得る。
【0067】
図4〜6のプラズマ反応装置は、他の多くの既存の反応装置と比べてかなり改良された作用を発揮する。しかるに(発明の背景において述べた)マイクロ波電源を用いたプラズマ反応装置は、ほんの数ミリアンペア/cm2の電流密度を生じるに過ぎないのに対して、本反応装置では50〜100ミリアンペア/cm2にまでなる。試験は、SF6、CF2Cl2、O2及びアルゴン等の各種の反応性ガスにおいて前記高電流が生じたことを示している。
【0068】
このことは、より多くの電力が、1ミリTorr以上の圧力での他のプラズマ製造法におけるような中性フラグメントの生成に向けられる代わりに、イオンの生成に向けられていることを示す。かかる中性フラグメントは、電流には寄与しない。イオンだけがウエハに対する垂直方向の衝撃を与えてほぼ垂直な壁を形成することとなるので、このことは重要である。ウエハにおいて非常に低いシース電圧を生じる能力を有するということは、シース電圧を20〜30ボルト以下にまで下げることによって、下層の10ナノメートル厚のSiO2ゲート絶縁物を損傷したりエッチングしたりすることなく、400ナノメートル厚のポリシリコンゲートが垂直にエッチングされ得ることを意味するものである。
【0069】
反応装置40は、ガス供給源49と排気ポート58とを備えており、その排気ポート58は、プラズマ加工生成物を排出して圧力を所定レベルに維持するためのポンプを含む排気システム59の一部を構成する。一般に、側壁の近くの電子熱場からバルク内への電子拡散を促進するために、圧力は0.13〜3.9パスカル程度に保たれる。この気圧でも、誘導結合電力は主としてイオン生成に向けられる。
【0070】
これとは対照的に、マイクロ波プラズマシステムのような他のプラズマシステムは、約0.13パスカル以上の圧力下で相対的により多くの自由ラジカルをを生ずる。マイクロ波プラズマ反応装置が主としてイオンを生成するものであるとすれば、圧力が数百分の1パスカル程度かそれ以下であることを必要とする。このことは、反応装置のポンプが毎秒数Torrリッターよりも遙かに大きい速度を持つことを要求する。この大きなポンブ速度は、反応室にしっかりっながれた低温ポンプか、もしくは、反応室に大きなポートを備えたターボポンプを用いることを求める。
【0071】
これに対し、ここで開示された反応装置はより高い圧力下で作動することができ、毎秒数十パスカル−リッター程度のポンプ速度を求めるに過ぎない。これは、反応室の周囲のスペースを乱さず、ウェハ操作を阻害せず、あるいは他の反応室の周りで邪魔にならないようなずっと小さなポンプで間に合うということである。そのようなポンプはまた、再生を必要とせず、低温ポンブにおけるような安全性の間題を抱えていない。
【図面の簡単な説明】
【図1】典型的なプラズマ反応装置の構造を示す。
【図2】電力が反応室に静電結合したプラズマ反応装置の等価回路である。
【図3】電極へ印加される高周波信号と、プラズマの電圧VPと、シース電圧Vdcとの間の関係を示す。
【図4】本発明の一実施形態の誘導結合された反応装置の側面図である。
【図5】図4の誘導結合反応装置の側断面図である。
【図6】図4の反応装置の上面図である。
【図7】CS1がCS2よりも大きい場合のプラズマ電圧VPと陰極に印加される高周波電圧との関係を示す。

Claims (11)

  1. 半導体基板を加工するためのプラズマ反応装置であって、
    半導体基板の加工において少なくとも1つのプラズマ生成物を生成するためにプラズマを発生させる反応室(50)を包囲する反応壁(41)と、
    ガス供給源(49)とガス排気システム(59)とを反応室に連結するための手段と、
    高周波電力の電源(43)と、
    前記反応室(50)の外部において該反応壁(41)に隣接して配置され、前記高周波電力を前記反応室に誘導的に供給する誘導コイル(42)と、
    前記誘導コイルと前記反応室との間に配置されたスプリットファラデーシールド(45)であって、当該スプリットファラデーシールドは、前記プラズマを持続するために高周波電力を前記誘導コイルからスプリットファラデーシールドを通過して誘導的に供給し、反応室(50)内の磁場の変化に反発する反発電流の形成を防止するように構成された複数のほぼ非伝導性の間隙(48)を有し、前記複数の間隙の幅は、半導体基板の加工が行われている間、前記スプリットファラデーシールドと前記誘導コイルとの間の最小間隔よりも狭くなっている前記スプリットファラデーシールドと、
    加工時に半導体基板が少なくとも1つのプラズマ生成物にさらされるように半導体基板の位置を定めるための支持体とを備えるプラズマ反応装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ反応装置において、前記スプリットファラデーシールドによって供給される静電シールドのレベルを変化させるための手段を更に備えるプラズマ反応装置。
  3. 請求項1に記載のプラズマ反応装置において、前記半導体基板とプラズマとの間のキャパシタンスに対する前記スプリットファラデーシールドとプラズマとの間のキャパシタンスを変化させるための手段を更に備えるプラズマ反応装置。
  4. 請求項1に記載のプラズマ反応装置において、前記スプリットファラデーシールドとプラズマとの間のキャパシタンスを変化させるための手段を更に備えるプラズマ反応装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ反応装置において、前記スプリットファラデーシールドは1センチ以上の距離だけ半径方向に移動可能な複数の伝導性プレートからなるプラズマ反応装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ反応装置において、半導体基板の加工が行われている間、前記スプリットファラデーシールドは前記反応壁から1センチ未満離間配置されているプラズマ反応装置。
  7. プラズマ反応装置中にて半導体基板を加工する方法において、反応壁(41)を有する反応室(50)にガスを供給する工程と、前記反応壁に隣接して誘導コイル(42)を提供する工程と、前記誘導コイルと反応壁との間のスプリットファラデーシールド(45)によって反応室におけるガスをシールドする工程であって、前記スプリットファラデーシールドは複数のほぼ非伝導性の間隙を有するものである前記シールド工程と、半導体基板の加工が行われている間、前記複数の間隙の幅が前記スプリットファラデーシールドと前記誘導コイルとの間の最小間隔よりも狭くなるように前記スプリットファラデーシールドを位置決めする工程と、反応室内においてプラズマを維持するために前記スプリットファラデーシールドを介してガス中に電力を誘導的に供給する工程と、半導体基板の加工において少なくとも1つのプラズマ生成物を形成する工程と、加工時に半導体基板を前記少なくとも1つのプラズマ生成物にさらす工程とを備える方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、前記スプリットファラデーシールドとプラズマとの間のキャパシタンスを変化させる工程を更に備える方法。
  9. 請求項7に記載の方法において、前記半導体基板とプラズマとの間のキャパシタンスに対する前記スプリットファラデーシールドとプラズマとの間のキャパシタンスを変化させる工程を更に備える方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法において、前記スプリットファラデーシールドは複数の伝導性プレートからなるものであり、前記複数の伝導性プレートを半径方向に移動させる工程を更に備える方法。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法において、半導体基板の加工が行われている間、前記スプリットファラデーシールドを前記反応壁から1センチ未満離間して配置する工程を備える方法。
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