JP3691236B2 - カテーテル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は診断用あるいは治療用に使用されるカテーテルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のカテーテルはガイドワイヤに導かれて体外より血管、気管、卵管、尿管等の内部に挿入され、所定の部位に到達して診断や治療を行なうものである。したがってカテーテルは血管等の内部において自在に曲がるようまた血管等の管壁を傷つけないような可撓性が要求される。
しかし一方では診断や治療操作を行なうためには高いトルク伝達性が要求される。このような高いトルク伝達性のためにはカテーテルの剛性は高い方が望ましい。
このようなカテーテルに対する二律背反的な要求を満たすために、従来本体部分はトルク伝達可能な程度の剛性を有し、先端側部分は自在に曲がるような可撓性を有するカテーテルが提供されている(特開昭60−31765号、特許第2523405号)。
【0003】
特開昭60−31765号ではカテーテルの管壁を内管部と外管部とからなる二層構造とし、該内管部の可撓性を該外管部の可撓性に比してより小とした場合には、本体部分における内管部の肉厚を先端部分における内管部の肉厚よりも大とし、該内管部の可撓性を該外管部の可撓性に比してより大とした場合には、本体部分における外管部の肉厚を先端部分における外管部の肉厚よりも大とすることによって、該本体部分は高剛性としてトルク伝達性を確保し、該先端部分は可撓性を高めて自在に曲がるようにする。
【0004】
また特許第2523405号では、本体部分の有機高分子材料のガラス転移点を先端部分の有機高分子材料のガラス転移点よりも高くし、また本体部分では外周に金属補強材を巻着しその上に樹脂コーティングを施すことによって本体部分を高剛性とし先端部分は可撓性としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭60−31705号のものは内管部と外管部との可撓性に大差があり、内管部と外管部との密着性が悪く層剥離が起るおそれがあり、また応力集中が起り折れ曲り易いと言う問題点がある。
更に特許第2523405号のものは本体部分において金属補強材の上に樹脂コーティングを施すが、該金属補強材の凹凸が樹脂コーティングの表面に発現し易いと言う問題点がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決する手段として、本体部分(1A,11A)と末端部分(1B,11B)とからなるカテーテル(1,11)であって、該カテーテル(1,11)は少なくとも内層部(2,12)、中間層部(3,13)、および外層部(4,14)からなる三層構造を有し、該中間層部(3,13)と該外層部(4,14)とは同一材料にされており、該内層部 (2,12) のガラス転移温度は体温よりも高く設定され、該外層部 (4,14) のガラス転移温度は体温と同じかあるいはそれよりも低くなるように設定されており、外層部 (4,14) の結晶化度が体温において30%あるいはそれ以下になるように設定されているカテーテル(1,11)を提供するものである。
本発明のカテーテル(1,11)では、該外層部(4,14)の材料は体内挿入時体温によってゴム域にあるように設定し、かつその曲げ弾性率は体温近傍の温度において1000 kgf/cm2 以上に設定し、該内層部(2,12)の材料は体内挿入時体温によってもガラス域にあるように設定し、かつその曲げ弾性率は23℃において2500 kgf/cm2 以上にされている。
また内層部(2,12)の曲げ弾性率G 1 、外層部(4,14)の曲げ弾性率G 3 とすると、15000 kgf/cm2 ≧G1 ≧8000 kgf/cm2 、3500 kgf/cm2 ≧G3 ≧1000 kgf/cm2 であることが望ましく、更に該本体部分 (1A,11A) は該内層部 (2,12) の外周に金属補強材 (15) を介在せしめることによって剛性を向上されており、該中間層部 (3,13) は該内層部 (2,12) 外周に介在せしめられている該金属補強材 (15) を被覆していることが望ましくまた更に該カテーテルの材料にはX線が透過しない充填材料が30〜50重量%添加されていることが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明を図1〜図3に示す一実施例によって説明する。図に示すカテーテル(1) の管壁は内層部(2) 、中間層部(3) 、外層部(4) からなる三層構造を有し、体温近傍における内層部(2) の曲げ弾性率をG1 、中間層部(3) の曲げ弾性率をG2 、外層部(4) の曲げ弾性率をG3 とすれば15000 kgf/cm2 ≧G1 ≧G2 ≧G3 ≧1000 kgf/cm2 であり、望ましくは15000 kgf/cm2 ≧G1 ≧8000 kgf/cm2 、6000 kgf/cm2 ≧G2 ≧4000 kgf/cm2 、3500 kgf/cm2 ≧G3 ≧1000 kgf/cm2 であり、かつ内層部(2) の材料は体内挿入時体温によってもガラス域にあるように設定され、外層部(4) の材料は体内挿入時体温によってゴム域にあるようにに設定されている。したがって該内層部(2) のガラス転移温度Tg1は体温T0 よりも高く(Tg1>T0 )設定され、外層部(4) のガラス転移温度Tg3は体温T0 と同じかあるいはそれよりも低くなるよう(Tg3≦T0 )に設定される。こゝにT0 は例えば35〜37℃の範囲であるが、高熱時には40℃に達することもある。
【0008】
また該カテーテル(1) の各層の材料が完全に非晶質なものではない場合には、外層部(4) の結晶化度が体温T0 において30%あるいはそれ以下であることが望ましい。
【0009】
上記カテーテルの材料としては、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等、あるいはこれらエラストマーの二種以上の混合エラストマー等が例示される。上記エラストマーには通常カテーテルをX線透視に対して投影可能にするために、例えば硫酸バリウム等のX線が透過しない充填材料を30〜50重量%程度添加する。
本発明のカテーテルは通常上記エラストマーの多層押出成形または多段押出成形によって成形される。
【0010】
カテーテル(1) は図2に示すように本体部分(1A)と末端部分(1B)とからなり、一般に本体部分(1A)は高剛性、末端部分(1B)は可撓性を有することが望ましく、そのためには図3に示すように本体部分(1A)における内層部(2) の厚みtA1を末端部分(1B)における内層部(2) の厚みtB1よりも大きくし、本体部分(1A)における外層部(4) の厚みtA3を末端部分(1B)における内層部(2) の厚みtB3よりも小さくする。具体的には例えば本体部分(1A)において、0.18mm≦tA1≦0.19mm、0.03mm≦tA3≦0.05mm、tA1>tA3、末端部分(1B)において、0.07mm≦tA1≦0.09mm、0.14mm≦tA3≦0.15mm、tA1<tA3、そしてtA1>tB1、tA3<tB3である。カテーテル(1) の管壁全厚tは通常0.6mm〜0.7mmであり、本体部分(1A)における中間層部(3) の厚みtA2=t−tA1−tA3、末端部分(1B)における中間層部(3) の厚みtB2=t−tB1−tB3となる。
【0011】
本実施例のカテーテル(1) は、体内に挿入され体温に曝された状態において、外層部(4) の結晶化度が体温において30%あるいはそれ以下であり、かつ曲げ弾性率G3 が低く、例えば3500 kgf/cm2 ≧G3 ≧1000 kgf/cm2 であり、かつ外層部(4) はゴム域にあるように設定してあるので充分な可撓性を有し、血管等の曲がり形状に沿って容易に曲がることが出来、曲率半径の小さい曲げに対しても該外層部(4) は対応可能で、亀裂や破れを生じない。また曲率半径の小さい曲げにおいて、引張り応力にもとづく分子配向による結晶化が進むと、該外層部(4) は硬化し脆くなって亀裂や破れが生じ易くなるが、本実施例では外層部(4) にはそのような結晶化の進行が見られない。
【0012】
更に硬質材料を使用して押出成形によって管体を成形すると、管体表面にひけによる凹凸が形成されることがある。しかし本実施例ではその上から流動性のよい軟質材料を被覆するので下地のひけによる凹凸が埋没され、その結果表面が均一なカテーテルが得られる。カテーテル表面に凹凸が存在すると、血管内に挿入する場合には血栓が付着し、挿入困難となるおそれがある。
【0013】
このように本実施例のカテーテルは外層部が柔軟であるから、血管等を致命的に傷つけることなく、極めて安全に診断あるいは治療を行なうことが出来る。
【0014】
更に本実施例のカテーテル(1) は、内層部(2) の曲げ弾性率G1 が高く、例えば15000 kgf/cm2 ≧G1 ≧8000 kgf/cm2 であり、かつ内層部(2) のガラス転移温度は体温よりも高くなるように設定してあるので、体内に挿入した状態で充分なトルク伝達性を有し、診断や治療操作を容易に行なうことが出来る。
【0015】
また更に本実施例のカテーテル(1) においては、内層部から外層部まで曲げ弾性率が漸増するので相接する層の機械的物性に大きな差がなくなり、層間密着性が向上し層剥離しにくゝなるし、応力集中がないので折れ曲りにくゝなる。
【0016】
図4および図5には本発明の他の実施例が示される。図4において芯棒(16)の外周には前実施例と同様な材料の溶融物あるいは溶液が塗布あるいは押出成形され、冷却固化あるいは乾燥されることによって内層部(12)が形成され、本体部分(11A) においては網筒状の金属補強材(15)が該内層部(12)の外周に巻着される。
【0017】
該金属補強材(15)の外周には中間層部(13)が被覆され、更に該中間層部(13)の外周には外層部(14)が被覆される。該中間層部(13)および該外層部(14)は前実施例と同様な材料の溶融物あるいは溶液の塗布あるいは押出成形等によって形成される。望ましくは層間密着性を高めるため、中間層部(13)と外層部(14)とは同一材料からなる。
【0018】
このようにして図5に示すように内層部(12)、中間層部(13)および外層部(14)からなる三層構造を有し、本体部分(11A) においては該内層部(12)と該中間層部(13)との間に金属補強材(15)を介在せしめることによって高剛性とされ、良好なトルク伝達性が付与され、そして該金属補強材(15)を被覆する中間層部(13)表面に該金属補強材(15)の凹凸による凹凸が形成されても、該凹凸は該中間層部(13)の外周に被覆される外層部(14)によって吸収され、表面平滑なカテーテル(11)が提供される。そして末端部分(11B) においては、金属補強材(15)が存在しないので充分な可撓性が保証される。
【0019】
【発明の効果】
本発明のカテーテルは三層構造を有するので、内層部から中間層部を介して外層部に至るまで物性を段階的に変化させることによって、相接する層間の物性の差を最小限とし、もって層間密着性を確保しかつ応力集中を防止し、更に金属補強材で剛性を向上せしめる場合では内層部の外周に金属補強材を巻着すれば、該金属補強材は二層以上で被覆されることになり、該金属補強材による凹凸が表面に発現しない、表面平滑なカテーテルが得られる。
【図面の簡単な説明】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】拡大断面図
【図2】カテーテル全体図
【図3】本体部分と末端部分との境界付近の断面図
図4および図5は本発明の他の実施例を示すものである。
【図4】製造過程を説明する斜視図
【図5】本体部分と末端部分との境界付近の断面図
【符号の説明】
1,11 カテーテル
1A,11A 本体部分
1B,11B 末端部分
2,12 内層部
3,13 中間層部
4,14 外層部
15 金属補強材

Claims (5)

  1. 本体部分と末端部分とからなるカテーテルであって、該カテーテルは少なくとも内層部、中間層部、および外層部からなる三層構造を有し、該中間層部と該外層部とは同一材料にされており、該内層部のガラス転移温度は体温よりも高く設定され、該外層部のガラス転移温度は体温と同じかあるいはそれよりも低くなるように設定されており、外層部の結晶化度が体温において30%あるいはそれ以下になるように設定されていることを特徴とするカテーテル。
  2. 外層部の材料は体内挿入時体温によってゴム域にあるように設定し、かつその曲げ弾性率は体温近傍の温度において1000 kgf/cm2 以上に設定し、該内層部の材料は体内挿入時体温によってもガラス域にあるように設定し、かつその曲げ弾性率は23℃において2500 kgf/cm2 以上である請求項1に記載のカテーテル。
  3. 内層部の曲げ弾性率G 1 、外層部の曲げ弾性率G 3 とすると、15000 kgf/cm2 ≧G1 ≧8000 kgf/cm2 、3500 kgf/cm2 ≧G3 ≧1000 kgf/cm2 である請求項1または2に記載のカテーテル。
  4. 該本体部分は該内層部の外周に金属補強材を介在せしめることによって剛性を向上されており、該中間層部は該内層部外周に介在せしめられている該金属補強材を被覆している請求項1または2または3に記載のカテーテル。
  5. 該カテーテルの材料にはX線が透過しない充填材料が30〜50重量%添加されている請求項1または2または3または4に記載のカテーテル。
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