JP3690196B2 - 放電灯装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電灯を点灯する放電灯装置に関し、特に車両前照灯に用いて好適なるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高圧放電灯(以下、ランプという)を車両用前照灯に適用し、車載バッテリの電圧をトランスにて高電圧化したのち、この高電圧の極性をインバータ回路にて切り換えて、ランプを交流点灯させるようにしたものが種々提案されている(特開平9−180888号公報、特開平8−321389号公報など)。
【0003】
このインバータ回路には、スイッチング素子(例えば、MOSトランジスタ)で構成したHブリッジ回路が用いられ、このHブリッジ回路によって矩形波を形成することによって交流点灯が行われるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
放電灯装置には、点灯開始時にランプに高電圧パルスを印加し、ランプの電極間で絶縁破壊を生じさせて放電灯の点灯を開始させる高電圧パルス発生回路が備えられる。
【0005】
この高電圧パルス発生回路は磁気ノイズ発生源となるため、従来では、この高電圧パルス発生回路を他の回路(上記インバータ回路など)とは別の金属ケース(外囲器)に収容するようにしていた。
【0006】
しかしながら、金属ケースを別々にするとコスト高となるため、本発明者らは、高電圧パルス発生回路を他の回路と同一のケース内に収容することについて検討した。
【0007】
このように高電圧パルス発生回路と他の回路を同一ケース内に収容する場合、インバータ回路の素子を破壊してしまうという問題を発生させる。これは、以下のように生じる。まず、高電圧パルス発生回路とインバータ回路が近接した状態になっていることから、高電圧部分とその他の電位部との間に分布容量ができ、さらに、高電圧パルス発生回路が発生する漏洩磁束が他の回路と鎖交することによって、磁束が鎖交する回路部で電圧が誘起される。また、ランプに高電圧パルスを印加するための配線ワイヤがケース外に引き出されるため、配線ワイヤをアースシールドで覆うことになるが、この配線ワイヤとアースシールドとの間においても分布容量ができる。
【0008】
これらの分布容量が高電圧パルスにより充電されたのちランプが絶縁破壊すると、分布容量に充電された電荷がランプを介して放電され、これによる放電電流がサージ電流として配線ワイヤを介してケース内の回路に流れ込む。このため、電流経路インピーダンスによってサージ電圧を発生させる。また、高電圧パルス発生時の漏洩磁束が他の回路に鎖交し、鎖交した回路部にサージ電圧が誘起される。
【0009】
このサージ電圧が、インバータ回路に含まれるHブリッジ回路若しくはブリッジ駆動回路に用いられている半導体スイッチング素子の耐電圧を超えると、半導体スイッチング素子が破壊されてしまう。特に、半導体スイッチング素子の耐電圧にバラツキがあることから、耐電圧の低い素子がインバータ回路に組み込まれた場合にその素子が破壊され易くなる。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みたもので、高電圧パルス発生回路とインバータ回路を同一のケース(外囲器)に収納した場合において、高電圧パルス発生回路に起因するサージ電圧によって、インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子が破壊されないようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、ブリッジ駆動回路は、4つの半導体スイッチング素子のそれぞれと対応するように、直接接続された2つのMOSトランジスタ(623〜626、633〜636)を4組有しており、これら直列接続された2つのMOSトランジスタの各接続点の電位に基づいて、4つの半導体スイッチング素子を駆動するようになっており、ブリッジ駆動回路の出力端子(Ho端子、Lo端子)とHブリッジ回路の半導体スイッチ素子(61a〜61d)のゲート端子とが第1抵抗(643、647、653、657)を介して接続され、ブリッジ駆動回路の直列接続されたMOSトランジスタの4組のうち、少なくとも1組は、直列接続されたうちのロー側のMOSトランジスタのドレインとソースとの間が第1コンデンサ(645、648、655、658)を介して接続されており、第1コンデンサの容量Cと第1抵抗の抵抗値Rとで決まる時定数が0.2マイクロ秒以上となるように第1コンデンサの容量及び第1抵抗の抵抗値が設定されていることを特徴とする。
【0014】
このように、直列接続された2つのMOSトランジスタの接続点の電位を用いてHブリッジの半導体スイッチング素子を駆動する場合には、第1抵抗と第1コンデンサによる積分回路によって、ブリッジ駆動回路のMOSトランジスタに高電圧が印加されることを防止することができる。これにより、ブリッジ駆動回路のMOSトランジスタが破壊されないようにできる。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、半導体スイッチング素子のMOS容量Cと第1抵抗の抵抗値Rで決まる時定数が0.2マイクロ秒以上となるようにMOS容量及び第1抵抗の抵抗値が設定されていることを特徴としている。
【0017】
このようにMOS容量と抵抗で決まる時定数を0.2マイクロ秒以上となるようにすれば、Hブリッジ回路における半導体スイッチング素子にかかる電圧が該素子の耐電圧以下となるようにできるため、該素子が破壊されないようにできる。
【0020】
請求項3に記載の発明においては、負極側基準電圧となる端子(VS端子)がHブリッジ回路(61)の中点電位点(X、Y)と接続された2つのブリッジ駆動回路(621、631)のうち少なくとも一方において、該Hブリッジ回路の中点電位点と該負極側基準電位となる端子とが第2抵抗(644、654)を介して接続されていると共に、該第2抵抗及び該負極側基準電位となる端子の間と接地電位点とが第2コンデンサ(649、659)を介して接続されていることを特徴としている。
【0021】
このような構成とすることにより、第2抵抗及び第2コンデンサによって積分回路が形成され、駆動回路部の負極側基準電位となる端子とHブリッジ回路の中点電位点とを結ぶ配線を通じてサージ電流が流れることを抑制できる。これにより、Hブリッジ回路の中点電位点を通じてブリッジ駆動回路に高電圧が印加され、ブリッジ駆動回路が破壊されることを防止することができる。
【0022】
例えば、請求項4に示すように、抵抗の抵抗値Rとコンデンサの容量Cとによって決まる時定数が0.01マイクロ秒以上となるように、抵抗の抵抗値及びコンデンサの容量とが設定される。
【0023】
なお、上記した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明にかかる放電灯装置を車両用前照灯に適用した実施形態の全体構成を示す。
【0025】
放電灯装置は、直流電源である車載バッテリ1に接続されており、点灯スイッチ3がオンされると、自動車用前照灯として用いられるランプ(例えば、メタルハライドランプ等)2に電力供給を行うように構成されている。この放電灯装置は、直流電源回路としてのDC−DCコンバータ4、点灯補助回路5、インバータ回路6、高電圧発生回路7等の回路機能部を有している。
【0026】
DC/DCコンバータ4は、バッテリ1側に配された一次巻線41aとランプ2側に配された二次巻線41bを有するフライバックトランス41と、一次巻線41aに接続されたMOSトランジスタ42と、二次巻線41bに接続された整流用のダイオード43および平滑用コンデンサ44から構成され、バッテリ電圧VBを昇圧した昇圧電圧を出力する。すなわち、MOSトランジスタ42がオンすると、一次巻線41aに一次電流が流れて一次巻線41aにエネルギーが蓄えられ、MOSトランジスタ42がオフすると、一次巻線41aのエネルギーが二次巻線41bに供給される。そして、このような動作を繰り返すことにより、ダイオード43と平滑用コンデンサ44の接続点から高電圧を出力する。
【0027】
なお、フライバックトランス41は、図に示すように一次巻線41aと二次巻線41bとが電気的に導通するように構成されている。
【0028】
点灯補助回路5は、コンデンサ51と抵抗52から構成され、点灯スイッチ3がオンした後にコンデンサ51が充電されることによって、ランプ2を電極間での絶縁破壊から速やかにアーク放電に移行させる。
【0029】
インバータ回路6は、ランプ2を交流点灯させるもので、Hブリッジ回路61とブリッジ駆動回路62、63から構成されている。Hブリッジ回路61は、Hブリッジ状に配置されたスイッチング素子をなすMOSトランジスタ61a〜61dからなる。ブリッジ駆動回路62、63は、後述するHブリッジ制御回路400からの制御信号によって、MOSトランジスタ61a、61dとMOSトランジスタ61b、61cを交互にオンオフ駆動する。この結果、ランプ2の放電電流の向きが交互に切り換わり、ランプ2の印加電圧(放電電圧)の極性が反転してランプ2が交流点灯する。
【0030】
なお、コンデンサ61e、61fは、点灯始動時に発生する高圧パルスからHブリッジ回路61を保護する保護用のコンデンサである。
【0031】
高電圧発生回路7は、Hブリッジ回路61の中点電位点X、Yとバッテリ1の負極端子との間に設置され、一次巻線71aと二次巻線71bを有するトランス71、ダイオード72、抵抗74、コンデンサ75、および一方向性半導体素子であるサイリスタ76から構成されており、ランプ2を点灯始動させる。すなわち、点灯スイッチ3がオンすると、コンデンサ75が充電を開始し、この後、サイリスタ76がオンすると、コンデンサ75が放電を開始し、トランス71を通じて、ランプ2に高電圧を印加する。その結果、ランプ2が、電極間で絶縁破壊し点灯する。
【0032】
上記したMOSトランジスタ42、ブリッジ駆動回路62、63、サイリスタ76は、制御回路10によって制御される。この制御回路10には、DC−DCコンバータ4とインバータ回路6の間のランプ電圧(すなわちインバータ回路6に印加される電圧)VLおよびインバータ回路6からバッテリ1の負極側に流れるランプ電流ILなどが入力されている。なお、ランプ電流ILは電流検出用抵抗8により電圧として検出される。
【0033】
図2に、制御回路10のブロック構成を示す。制御回路10は、MOSトランジスタ42をPWM信号によってオンオフさせるPWM制御回路100と、ランプ電圧VLをサンプルホールドするサンプルホールド回路200と、サンプルホールドされたランプ電圧VLとランプ電流ILに基づいてランプ電力を所望値に制御するランプパワー制御回路300と、Hブリッジ回路61を制御するHブリッジ制御回路400と、サイリスタ76をオンさせてランプ2に高電圧を発生させる高電圧発生制御回路500から構成されている。
【0034】
上記構成において、放電灯装置の点灯動作を説明する。
【0035】
点灯スイッチ3がオンすると、図1に示す各部に電源が供給される。そして、PWM制御回路100はMOSトランジスタ42をPWM制御する。その結果、フライバックトランス41の作動によって、バッテリ電圧VBを昇圧した電圧がDC−DCコンバータ4から出力される。また、Hブリッジ制御回路400は、Hブリッジ回路61におけるMOSトランジスタ61a〜61dを対角線の関係で交互にオンオフさせる。このことにより、DC−DCコンバータ4から出力された高電圧が、Hブリッジ回路61を介して高電圧パルス発生回路7のコンデンサ75に供給され、コンデンサ75が充電される。
【0036】
この後、高電圧発生制御回路500は、Hブリッジ制御回路400から出力されるMOSトランジスタ61a〜61dの切換えタイミングを知らせる信号に基づいて、サイリスタ76にゲート駆動信号を出力し、サイリスタ76をオンさせる。そして、サイリスタ76がオンすると、コンデンサ75が放電し、トランス71を通じて、ランプ2に高電圧が印加される。その結果、ランプ2が電極間で絶縁破壊し、点灯始動する。
【0037】
この後、Hブリッジ回路61によりランプ2への放電電圧の極性(放電電流の向き)を交互に切り換えることで、ランプ2が交流点灯される。また、ランプパワー制御回路300は、ランプ電流ILとランプ電圧VL(サンプルホールド回路200によってサンプルホールドされたもの)とに基づいて、ランプ電力が所望値となるように制御し、ランプ2を安定点灯させる。
【0038】
なお、サンプルホールド回路200は、Hブリッジ回路61の切換タイミングに同期しその切換時に発生する過渡電圧をマスクし、過渡電圧発生時以外のランプ電圧VLをサンプリングしてホールドする。
【0039】
次に、上記構成の放電灯装置の組付け構造を図3に示し、図3に基づき放電灯装置の組付け構造について説明する。
【0040】
放電灯装置は、上記回路構成が配置されたバスバーケース20を、カバー部材21及びベース22によって覆い、放電灯装置のケースを構成するカバー部材21及びベース22をネジ23によって固定することによって構成される。
【0041】
バスバーケース20の表面には、上記回路構成の各部を電気的に接続するターミナル24がインサート形成されている。
【0042】
上記回路構成において、Hブリッジ回路61、制御回路10、MOSトランジスタ42、ダイオード43、72、抵抗8、52、74という半導体装置として形成可能な部分は、ハイブリッドIC(以下、HICという)101としてIC化されて一体形成される。そして、その他の部分(本回路構成では、トランス41、71やコンデンサ44、75、及びサイリスタ76)がHIC101とは別体で構成される。
【0043】
このため、HIC101とその他の部分とをターミナル24にて電気的に接続させることによって上記回路構成が構成される。これにより、図1に示した回路機能部が構成される。
【0044】
そして、ターミナル24は、バスバーケース20に固定されたグロメット内に配設された出力線25、26に接続されており、この出力線25、26を介してランプ2に接続される。
【0045】
また、ターミナル24はバッテリ1の正極側と接続される端子(+端子)27aと、負極側(すなわちアース側)に接続される端子(−端子)27bとを有しており、端子27bは放電灯装置のアースを取るアース接続部27cに接続されている。そして、ターミナル24の端子27a、27bは、バスバーケース20に形成されたコネクタ部28よりバスバーケース20の外部に引き出されており、このコネクタ部28においてバッテリ1に接続された配線と接続される。
【0046】
上記したネジ23は、このアース接続部27cにおいてバスバーケース20とベース22とをネジ締め固定し、アース接続部27cとベース22とをアース接続している。
【0047】
このように、本実施形態における放電灯装置では、同一のケース(カバー部材21及びベース22)によって高電圧パルス発生回路7及びインバータ回路6とを収容している。なお、カバー21及びベース22は、これらに収納される回路機能部を放射ノイズから保護すべく、金属で構成されている。
【0048】
図4にインバータ回路6の詳細を示し、インバータ回路6について説明する。
【0049】
インバータ回路6は、上述したように4つのMOSトランジスタ61a〜61dによって構成されたHブリッジ回路61を備えている。また、インバータ回路6は、MOSトランジスタ61a、61bの制御信号を出力するブリッジ駆動回路62、MOSトランジスタ61c、61dの制御信号を出力するブリッジ駆動回路63、コンデンサ640、642、645、648、649、652、655、658、659、ダイオード641、646、651、656、及び抵抗643、644、647、653、654、657を備えている。なお、符号65、66は、図示しない共通の電源に接続される電源端子である。
【0050】
ブリッジ駆動回路62は、ハイアンドロードライバー回路(International Rectifier社製、IR2101)を使用している。このブリッジ駆動回路62は、共に入力端子を構成するHin端子とLin端子、共に出力端子を構成するHo端子とLo端子と、負極側基準電位とされるVS端子とCOM端子、及び所定電源が接続されるVcc端子とVB端子とを備えている。
【0051】
このブリッジ駆動回路62は、2つの駆動回路部を構成するハイサイド側回路621とローサイド側回路622、及びこれらそれぞれからの信号を受けてオンオフ制御されるMOSトランジスタ623〜626を有している。上記Hin端子及びLin端子はローサイド側回路622に接続されるものであり、Hin端子とLin端子がそれぞれ、制御回路10(図1参照)に繋がる端子Cと端子Eにそれぞれ接続されている。これらの端子C、Eを介してHブリッジ制御回路400(図2参照)からの制御信号が入力されると、ローサイド側回路622は、この制御信号を波形整形し、その波形整形した信号を直列接続されたMOSトランジスタ625、626の駆動信号として出力すると共にハイサイド側回路621に伝達する。そして、MOSトランジスタ625、626の接続点をLo端子(出力端子)として、この端子電位がMOSトランジスタ61bのオンオフの制御信号として出力されるようになっている。
【0052】
一方、ハイサイド側回路621は、ローサイド側回路622からの伝達信号を受けて直列接続されたMOSトランジスタ623、624の駆動信号を出力する。そして、MOSトランジスタ623、624の接続点をHo端子(出力端子)として、この端子電位がMOSトランジスタ61aのオンオフの制御信号として出力されるようになっている。
【0053】
ブリッジ駆動回路63の構成は、ブリッジ回路62と全く同じであるが、ローサイド側回路632のHin端子と端子E、Lin端子と端子Cとが接続されるようになっており、これらの接続がブリッジ回路62とは逆となっている。このため、ローサイド側回路622とハイサイド側回路631とが同様の信号を出力し、ハイサイド側回路621とローサイド側回路632とが同様の信号を出力するようになっている。
【0054】
ここに示した4つの駆動回路部(ハイサイド側回路621、631及びローサイド側回路622、632、及びMOSトランジスタ623〜626、633〜636)は、これらに含まれたロー側のMOSトランジスタ624、626、634、636のソースが接続された配線を負極側基準電位とし、各出力端子と各負極側基準電位との電位差に基づいてHブリッジ回路61の各MOSトランジスタ61a〜61dを駆動するようになっている。本ブリッジ駆動回路62、63では、VS端子がハイサイド側回路621、631の負極側基準電位とされ、COM端子がローサイド側回路622、632の負極側基準電位とされる。
【0055】
なお、MOSトランジスタ61bがオン時に、ダイオード641、コンデンサ642、抵抗644、MOSトランジスタ61b、抵抗8を介して、ブートストラップコンデンサ642の充電電流が流れ、ブートストラップコンデンサ642が充電されるようになっている。このコンデンサ642に充電された電荷がハイサイド側回路621の電源として使われる。
【0056】
また、インバータ回路6は、抵抗643、647、653、657とコンデンサ645、648、655、658を備えている。抵抗643、647、653、657はそれぞれ、ブリッジ駆動回路62、63のHo端子及びLo端子と各MOSトランジスタ61a〜61dとの間に配置されており、これらの抵抗を介してハイサイド側回路621、631及びローサイド側回路622、632の制御信号がMOSトランジスタ61a〜61dに出力されるようになっている。
【0057】
また、各コンデンサ645、648、655、658は、直列接続された各MOSトランジスタ623〜626、633〜636のロー側のMOSトランジスタ624、626、634、636のソースとドレインとの間に接続されている。これらのコンデンサと抵抗643、647、653、657とによって積分回路が構成されている。このような回路構成により、コンデンサ645、648、655、658がサージ吸収用としての保護コンデンサの役割を果たすようになっている。
【0058】
さらに、Hブリッジ回路61の中点電位点X、Y(すなわちMOSトランジスタ61aとMOSトランジスタ61bとの接続点、及びMOSトランジスタ61cとMOSトランジスタ61dとの接続点)と各ブリッジ駆動回路62、63のVS端子との間が抵抗644、654を介して接続されている。そして、各ブリッジ駆動回路62、63のVS端子とCOM端子との間がコンデンサ649、659を介して接続されている。これにより、抵抗644、654とコンデンサ649、659にて積分回路が構成されている。このような回路構成により、コンデンサ649、659がサージ吸収用としての保護コンデンサの役割を果たすようになっている。
【0059】
このように構成されたインバータ回路6は、端子C、Eを介して送られるHブリッジ制御回路400からの制御信号に基づいて、ハイサイド側回路621、631及びローサイド側回路622、632にて制御信号を出力させ、MOSトランジスタ61a〜61dを対角線の関係で交互にオンオフさせる。
【0060】
次に、このように構成されたインバータ回路6において、ランプ2の点灯開始のための高電圧パルス時に発生するサージ電流による影響について説明する。
【0061】
点灯スイッチ3がオンすると、各部回路が作動しコンデンサ75が充電を開始する。この後サイリスタ76がオンになると、コンデンサ75がトランス71の1次側巻線71aを介して放電する。この時、2次巻線71bの両端に高電圧パルスが発生し、この高電圧パルスがランプ2に印加される。これにより、ランプ2の電極間で絶縁破壊(火花放電)し、ランプ2が点灯する。
【0062】
この点灯前において、高電圧パルス発生回路とインバータ回路が近接した状態になっていることから、高電圧部分とその他の電位部との間に分布容量ができており、さらにランプ2への電気配線L1とこの電気配線L1を覆っているアースシールドとの間にも分布容量ができた状態になっている。そして、これらの分布容量に充電された電荷が、高電圧パルスによるランプ2の絶縁破壊によってランプ2を介して放電される。
【0063】
この分布容量の放電電流はサージ電流として、ランプ2と電気配線L2を介してHブリッジ回路61に流入する。このサージ電流は数十MHzの減衰振動波形で、ピーク電流値はランプ2の絶縁破壊電圧および上記分布容量によって変わるが数十〜200A程度の電流である。このサージ電流は回路機能部の何れかの箇所を通りアースに抜ける経路で流れる。このときサージ電流がアースに抜ける経路には何らかのインピーダンスが存在しているため、そのインピーダンスによる電圧降下によってサージ電流経路にサージ電圧が発生する。このように発生するサージ電流は高周波電流であるため、サージ電流経路を特定することは難しく、実際には至る所にサージ電流は分流して流れる。例えば、電気配線L2→Hブリッジ回路61の各MOSトランジスタ61a〜61d→ブリッジ駆動回路62の順の経路で電流が流れる。
【0064】
なお、Hブリッジ回路にコンデンサ61e、61fを設けることによって、サージ電流の多くが高電圧パルス発生回路7及び分布容量に戻るようにし、サージ電圧の発生を抑制しているが、サージ電圧をすべて抑制することができない。すなわち、サージ電流がコンデンサ61e、61fを通じて戻るときに、コンデンサ61e、61fの両端にはサージ電流による充放電によりサージ電圧が発生する。例えば、ランプ2を点灯させるために高電圧パルス発生時にランプ2に400V程度の電圧を印加することになり、このときにHブリッジ回路61がMOSトランジスタ61a、61dがオン、MOSトランジスタ61b、61cがオフに制御されることから、コンデンサ61eの両端に400Vの電圧が印加された状態でサージ電流が発生することになる。このため、コンデンサ61eの両端で発生するサージ電圧は、400Vを基準にプラスマイナスに振動する電圧となる。そして、このサージ電圧がHブリッジ中点電位点Xに印加され、MOSトランジスタ61a〜61dを介して各ブリッジ駆動回路62、63のHo端子やLo端子にサージ電流が流れ込んだり、VS端子にサージ電流が流れ込んだりする。
【0065】
また、高電圧パルス発生時にトランス71から漏洩磁束が出て、この漏洩磁束が他の回路に鎖交すると、鎖交した回路でサージ電圧が誘起される。例えば、MOSトランジスタ61bのゲート駆動回路は、MOSトランジスタ61bのゲート−ソース、抵抗8、MOSトランジスタ626のソース−ドレイン、抵抗647を介したループ回路が形成され、このループに上記漏洩磁束が鎖交するループ内でサージ電圧が誘起される。この誘起された電圧は、例えばMOSトランジスタ61bのゲート−ソース間にサージ電圧となって印加される。
【0066】
これに対して、本実施形態では、Hブリッジ回路61のMOSトランジスタ61a〜61bの各ゲート端子とMOSトランジスタ61a〜61dを駆動するブリッジ駆動回路62、63の各出力端子とが抵抗643、647、653、657を介して接続されているため、これらによってMOSトランジスタ61a〜61dを介してブリッジ駆動回路62、63のHo端子及びLo端子に流れ込むサージ電流を押さえることができる。また、Hブリッジ回路61の中点電位点X、Yとブリッジ駆動回路62、63のVS端子との間が抵抗644、654を介して接続されているため、これらによってブリッジ駆動回路62、63のVS端子に流れ込むサージ電流を押さえることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、ブリッジ駆動回路62、63の出力部を成すMOSトランジスタ624、626、634、636の各ドレインとソース間にコンデンサ645、648、655、658を接続している。これにより、MOSトランジスタ61a〜61dのゲート端子とMOSトランジスタを駆動する駆動回路を接続する配線にサージ電流が流れた場合に、抵抗643、647、653、657とコンデンサ645、648、655、658による積分回路がローパスフィルタとして働き、高周波電流を吸収し、これら各コンデンサの両端に発生するサージ電圧を押さえることができる。
【0068】
つまり、MOSトランジスタ61a〜61dのゲートとソース間に発生するサージ電圧が素子の耐電圧(30V)以下に収まるように各抵抗643、647、653、657の抵抗値及びコンデンサ645、648、655、658の容量を設定している。この設定値は、上記分布容量の大きさとランプ2の絶縁破壊時に発生する電圧(ブレークダウン電圧)、及び回路機能部の配線パターンや実装構造などによって決定される。実験によれば、各抵抗643、647、653、657の抵抗値Rとコンデンサ645、648、655、658の容量Cについて、時定数(C×R)を0.2マイクロ秒以上にすればサージ電圧を素子の耐電圧以下に押さえることができた。
【0069】
また、同様に、各ブリッジ駆動回路62、63のVS端子とCOM端子との間にコンデンサ649、659を接続している。これにより、Hブリッジ回路61の中点電位点X、Yと各ブリッジ駆動回路62、63のVS端子との間を結ぶ配線にサージ電流が流れた場合に、抵抗644、654とコンデンサ649、659による積分回路がローパスフィルタとして働き、高周波電流を吸収し、これらコンデンサの両端に発生するサージ電圧を減衰させることができる。
【0070】
つまり、VS端子及びCOM端子の間に発生するサージ電圧が、これらの間の耐圧以下に収まるように各抵抗644、654の抵抗値及びコンデンサ649、659の容量を設定している。この設定値も、上記分布容量の大きさとランプ2の絶縁破壊時に発生する電圧(ブレークダウン電圧)、及び回路機能部の配線パターンや実装構造などによって決定される。実験によれば、各抵抗644、654の抵抗値Rとコンデンサ649、659の容量Cについて、時定数(C×R)を0.01マイクロ秒以上にすればサージ電圧をVS端子及びCOM端子の間の耐電圧以下に押さえることができた。
【0071】
さらに、本実施形態においては、抵抗643、647、653、657とHブリッジ回路61のMOSトランジスタ61a〜61dのゲートとソース間の容量(MOS容量)とによって積分回路からなるローパスフィルタが構成される。このため、この積分回路においても上記と同様に、サージ電圧がMOSトランジスタ61a〜61dの耐電圧以下となるようにすればよい。実験によると、抵抗643、647、653、657とHブリッジ回路61のMOSトランジスタ61a〜61dのゲートとソース間の容量における時定数を0.2マイクロ秒以上にすればサージ電圧を素子の耐電圧以下に押さえることができた。
【0072】
なお、本実施形態のように抵抗643、647、653、657やコンデンサ645、648、655、658を設けていない場合においては、弱い箇所、すなわちMOS構造の半導体デバイス(623〜626、633〜636、61a〜61d)が破壊された。この破壊は、Hブリッジ回路61のMOSトランジスタのゲート端子とMOSトランジスタを駆動する駆動回路を接続する配線に上記サージ電流が流れ、これにより発生したサージ電圧が素子の耐電圧を超えるためである。
【0073】
つまり、上記した抵抗643等やコンデンサ645等が備えられていないために、サージ電流が流れるとMOSトランジスタ61a〜61dのゲートとソース間(MOSトランジスタ624、626、634、636のドレインとソース間)に素子の耐電圧を超える大きな電位差を発生させるのである。
【0074】
MOS構造の半導体デバイスにおいて、ゲート部の耐電圧はゲート酸化膜の膜厚によって決まる。このゲート酸化膜厚は、通常、数百〜1000Åの厚さである。そして、ゲート酸化膜の耐電圧は膜厚に比例しており、1000Åの厚さでの理論値は約80Vとなっている。しかしながら、実際には酸化膜の欠陥等によって耐電圧にバラツキが生じるため弱い箇所が生じ、このような弱い箇所が破壊に至る。
【0075】
半導体メーカでは検査にて所定の耐電圧以下の素子をリジェクトしているため、ゲート酸化膜厚が1000Åの場合、殆どのものは80V程度の耐圧となっているが、数多い中には耐電圧が低いものが存在し、このような素子が破壊に至る。
(他の実施形態)
▲1▼上記実施形態において、コンデンサ645、648、655、658は必ずしも全て必要ではない。例えば、MOSトランジスタ61a、61dがオン、MOSトランジスタ61b、61cがオフの状態のときに必ず高電圧パルスを発生させるように制御すれば、サージ電流の経路が限定されるため、例えば、コンデンサ648と655があればよい。
【0076】
また、部品配置、配線パターン等でもサージ電流の流れる経路は決まるため、部品配置、配線パターンの工夫により、コンデンサは1個にすることも可能である。
【0077】
さらに、上記実施形態では、抵抗643、647、653、657と共にコンデンサ645、648、655、658を設けているが、Hブリッジ回路61のMOSトランジスタ61a〜61dの破壊防止という観点で言えば、抵抗643、647、653、657のみにしてもよい。
【0078】
▲2▼上記実施形態では、各ブリッジ駆動回路62、63の耐圧保護のために、抵抗644、654及びコンデンサ649、659を設けているが、ランプ2の始動時におけるHブリッジ回路61の制御状態を予め決定しておけば、ブリッジ駆動回路62、63のいずれか一方のみを保護すればよく、抵抗及びコンデンサを1つずつにすることができる。
【0079】
すなわち、ランプ2の始動時にMOSトランジスタ61a、61dをオン、MOSトランジスタ61b、61cをオフするように制御する場合には、Hブリッジ駆動回路61の中点電位点Yはほぼアース電位になるため、サージ電圧が発生しても問題となるレベルではない。このため、この場合には、抵抗644及びコンデンサ649のみにし、抵抗654及びコンデンサ659をなくしても良い。
【0080】
逆に、MOSトランジスタ61a、61dをオフ、MOSトランジスタ61b、61cをオンにする場合には、抵抗654及びコンデンサ659のみを設けることになる。
【0081】
なお、ランプ2の始動のための高電圧パルス発生時におけるHブリッジ回路61の制御状態が確定していない場合には、いずれのブリッジ駆動回路62、63をも保護できるように、抵抗644、654及びコンデンサ649、659をすべて設けると良い。
【0082】
▲3▼また、ブリッジ駆動回路62、63には、ハイアンドロードライバー回路(International Rectifier社製、IR2101)を使用しているが、これに限定されるものではなく、Hブリッジの駆動回路であれば他のものでも適用できる。例えば、MOSトランジスタ623〜626、633〜636を2つ直列接続させたものではなく、その一方を抵抗やコイルにしたものであってもよい。
【0083】
▲4▼また、Hブリッジ回路61のスイッチ素子(61a〜61d)は、IGBT素子でも適用できる。
【0084】
▲5▼高電圧パルス発生回路7は、図1、図4に示す回路に限定されるものではなく、始動用高電圧パルスが発生できる回路であればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す放電灯装置の全体構成図である。
【図2】図1中の制御回路10を示すブロック構成図である。
【図3】図1に示す放電灯装置の組付け構成を示す図である。
【図4】図1の放電灯装置におけるインバータ回路6の詳細を示す図である。
【符号の説明】
1…車載バッテリ、2…ランプ、4…DC−DCコンバータ、
6…インバータ回路、7…始動回路、61…Hブリッジ回路、
400…Hブリッジ制御回路、500…高電圧発生制御回路、
643、644、647、653、654、657…抵抗、
645、648、649、655、658、659…コンデンサ。
Claims (4)
- MOS構造を有する4つの半導体スイッチング素子(61a〜61d)をHブリッジ状に配置してなるHブリッジ回路(61)、及び前記半導体スイッチング素子のゲート端子に接続される出力端子(Ho端子、Lo端子)を有し前記半導体スイッチング素子を駆動するブリッジ駆動回路(62、63)、を含むインバータ回路(6)と、
放電灯(2)に高電圧パルスを印加させ、該放電灯を点灯開始させる高電圧パルス発生手段(7)とを備え、
前記インバータ回路(6)と前記高電圧パルス発生手段とを同一ケース内に収容するようにした放電灯装置であって、
前記ブリッジ駆動回路は、前記4つの半導体スイッチング素子のそれぞれと対応するように、直接接続された2つのMOSトランジスタ(623〜626、633〜636)を4組有しており、これら直列接続された2つのMOSトランジスタの各接続点の電位に基づいて、前記4つの半導体スイッチング素子を駆動するようになっており、
前記ブリッジ駆動回路の出力端子とHブリッジ回路の半導体スイッチ素子(61a〜61d)のゲート端子とが第1抵抗(643、647、653、657)を介して接続され、
前記ブリッジ駆動回路の前記直列接続されたMOSトランジスタの4組のうち、少なくとも1組は、直列接続されたうちのロー側のMOSトランジスタ(624、626、634、636)のドレインとソースとの間が第1コンデンサ(645、648、655、658)を介して接続されており、
前記第1コンデンサの容量Cと前記第1抵抗の抵抗値Rとで決まる時定数が0.2マイクロ秒以上となるように前記第1コンデンサの容量及び前記第1抵抗の抵抗値が設定されていることを特徴とする放電灯装置。 - MOS構造を有する前記半導体スイッチング素子のMOS容量Cと前記第1抵抗の抵抗値Rで決まる時定数が0.2マイクロ秒以上となるように前記MOS容量及び前記第1抵抗の抵抗値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の放電灯装置。
- 前記4つの駆動回路部のうちの2つは負極側基準電位となる端子(VS端子)に前記Hブリッジ回路の中点電位点(X、Y)が接続され、他の2つは負極側基準電位となる端子(COM端子)に接地電位点が接続されており、
前記4つの駆動回路部は、前記出力端子と該各駆動回路部の負極側基準電位との電位差に基づいて前記4つの半導体スイッチング素子のそれぞれを駆動するようになっており、
前記負極側基準電圧となる端子が前記Hブリッジ回路の中点電位点と接続された前記2つのブリッジ駆動回路のうち少なくとも一方において、該Hブリッジ回路の中点電位点と該負極側基準電位となる端子とが第2抵抗(644、654)を介して接続されていると共に、該第2抵抗及び該負極側基準電位となる端子の間と接地電位点とが第2コンデンサ(649、659)を介して接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電灯装置。 - 前記第2抵抗の抵抗値Rと前記第2コンデンサの容量Cとによって決まる時定数が0.01マイクロ秒以上となるように、前記第2抵抗の抵抗値及び前記第2コンデンサの容量とが設定されていることを特徴とする請求項3に記載の放電灯装置。
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