JP3689465B2 - 回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法および装置 - Google Patents

回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転式コンプレッサに用いられるベーンの耐磨耗性を向上させるために、ベーンの表面に膜厚差の小さい物理蒸着膜を形成する方法およびその方法を実施するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9および図10に示すような揺動ロータ型の回転式コンプレッサにおいては、ハウジング1内で偏心回転するロータ2の外周面にハウジング1のベーン溝1aに進退自在に取り付けられたベーン3の先端部が摺接してロータ2の回転に伴って進退するようになっているため、ロータ2の外周面上を摺動するベーン3の先端部、およびベーン溝1aに摺接するベーン3の側面部に磨耗が生じ易い。
【0003】
従来は、このようなベーン3の磨耗を防止するため、例えば特開平5−33119号公報に記載されているようなイオン窒化法により、ベーン3に対して表面処理を行っている。なお、この特開平5−33119号公報に記載されているイオン窒化法は、図13に示すように、円形プレート4上に複数個のベーン3を所定間隔で並べて固定した後、この円形プレート4を処理炉内に入れてイオン窒化処理を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、回転式コンプレッサに使用される圧縮流体としてフロンガス等が使用される場合には、上記のようなイオン窒化法による表面硬化処理のみでベーンの十分な耐磨耗性を確保することができるが、近年のフロンガス規制により特定フロンガスを含有するガスが使用できなくなるため、特定フロンガスを含有しない他のガスを使用することを前提とすると、イオン窒化法による表面硬化処理のみでは、ベーンにより大きな耐磨耗性が要求されてくるものと思われる。
【0005】
かかる事情に鑑み、本件出願人は、特定フロンガスを含有しないガスの使用を前提として回転式コンプレッサ用ベーンの表面に耐磨耗性に優れた物理蒸着膜を形成する方法およびその方法に使用する装置を提案しているが(特開平7−41945号公報参照)、この装置を使用して形成される物理蒸着膜は、図14に示すように、ベーン3の側面3cにおけるアール面3b(摺動面)側のPVD膜60の膜厚d1 が大きくなる傾向、すなわち膜厚d1 と膜厚d2 との差が大きくなる傾向があり、平行度に問題がある。したがって、この装置を使用して形成される物理蒸着膜は膜厚の均一性に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の回転式コンプレッサ用べーンの物理蒸着膜形成方法およびその方法を実施するための装置を改良するためになされたものであり、本発明の目的は、耐磨耗性が高く、しかも膜厚の均一性に優れた蒸着膜を回転式コンプレッサ用ベーンの表面に効率良く形成することのできる方法およびその方法を実施するための装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法は、複数の回転式コンプレッサ用ベーンを複数の空隙が形成されているとともに両端が開口している筒状治具の外周部に放射状に取り付け、この筒状治具を自転させながら蒸着源の周りを公転させつつ移動させて真空蒸着膜形成処理を行うことにより、各ベーンの表面に物理蒸着膜を形成する構成とし、
進行方向に沿った両側面が開放した運搬車を使用し、この運搬車内の進行方向に沿って且つ空隙を設けて複数段の棚状に設けられた棚状治具のそれぞれに複数の回転式コンプレッサ用ベーンを取り付け、この運搬車を処理炉内に移動させるとともに該炉内の前記運搬車の開放面と対向する位置にそれぞれ配設された蒸着源から蒸気原子を発生させて前記各ベーンの表面に物理蒸着膜を形成する構成とした。
【0008】
また、本発明の装置は、外周部に複数の回転式コンプレッサ用ベーンを放射状に取り付けるための取り付け部を有するとともに、複数の空隙が形成され、両端が開口している筒状治具と、真空薄膜形成を行う処理炉内に回転自在に配置されたプレートと、前記プレートの外周縁部に回転自在に配置され、その上面に前記筒状治具が着脱自在に載置されるようになっている一個または複数の治具載置板と、前記プレートの回転に伴って前記治具載置板をその回転軸を中心として回転させる治具載置板機構と、前記プレートの中心位置に設置された蒸着源とを備える構成とし、
さらに、前記筒状治具に形成されている複数の空隙が、該治具の径方向に沿って設けられている構成とし、
あるいは前記筒状治具に形成されている複数の空隙が、該治具の中心軸に沿って設けられている構成とし、
さらにまた、上記の装置において、回転式コンプレッサ用ベーンを放射状に取り付けるための前記筒状治具の取り付け部が、治具の径方向に沿って延在するように該治具の外周面に突設された複数のテーパ状の支持ピンであり、該支持ピンに前記回転式コンプレッサ用ベーンに形成されている凹部を嵌合させることにより、回転式コンプレッサ用ベーンを前記筒状治具に取り付ける構成とし、
さらに、前記治具載置板自転機構が、前記治具載置板に一体的にかつ同軸状に取り付けられた外歯の歯車と、前記プレートに対し同軸状に配置されて前記外歯の歯車と噛み合う固定歯車とからなる構成とした。
【0009】
本発明の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法においては、複数の回転式コンプレッサ用ベーンを複数の空隙が形成され両端が開口している筒状治具の外周部に放射状に取り付け、この筒状治具を自転させながら蒸着源の周りを公転させつつ移動させて真空蒸着膜の形成処理を行うが、この方法で回転式コンプレッサ用ベーンを取り付ける筒状治具には複数の空隙が形成されているので、蒸発源から蒸発しイオン化した原子のこれらの空隙からの回り込み及びこの筒状治具に取り付けられている回転式コンプレッサ用ベーンの裏側からの回り込みが得られることになる。したがって、本発明の方法により形成される物理蒸着膜は、従来の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法により形成される物理蒸着膜に比較して膜厚の均一性が向上したものとなる。
【0010】
また、本発明の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法においては、進行方向に沿った両側面が開放した運搬車を使用し、この運搬車内の進行方向に沿って複数段の棚状に設けられた棚状治具のそれぞれに水平方向に複数の回転式コンプレッサ用ベーンを取り付け、この運搬車を真空室およびコーティング室からなる物理蒸着膜形成炉内に移動させるとともに該炉内の前記運搬車の開放面と対向する位置に配設された蒸着源から蒸気原子を発生させて前記各ベーンの取り付け方向先端面側から各ベーンの表面に物理蒸着膜を形成するが、この方法で回転式コンプレッサ用ベーンを取り付ける複数の棚状治具の間にはそれぞれ空隙が形成されているので、蒸発源から蒸発しイオン化した原子のこれらの空隙からの回り込み及びこの棚状治具に取り付けられている回転式コンプレッサ用ベーンの側面および裏面側からの回り込みが得られることになる。したがって、本発明の方法により形成される物理蒸着膜は、従来の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法により形成される物理蒸着膜に比較して膜厚の均一性が向上したものとなる。
【0011】
一方、本発明の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置においては、回転式コンプレッサ用ベーンが放射状に取り付けられる治具に、複数の空隙が形成され両端が開口している筒状治具を用い、この筒状治具をそれぞれ処理炉内の治具載置板に載置して固定するが、各治具載置板は駆動源により回転させられることにより治具載置板上に載置されている筒状治具が自転する。このとき、蒸発源から蒸発しイオン化した原子が筒状治具に形成されている空隙から回り込むことになるので、筒状治具に放射状に取り付けられている回転式コンプレッサ用ベーンは裏側からもイオン化した原子が回り込むことになる。したがって、この装置を使用して回転式コンプレッサ用ベーンの表面に形成される物理蒸着膜は、空隙が形成されていない治具を用いる従来の装置を使用して形成される物理蒸着膜に比較して膜厚の均一性が向上している。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
この実施形態では、イオン窒化処理されたベーン3の表面にイオンプレーティング法により物理蒸着膜(以下、PVD膜という)を形成してベーン3の耐磨耗性を向上させる。
【0013】
図1は、ベーン3の表面にイオンプレーティング方法によりPVD膜を形成するためのPVD膜形成装置を示す説明図である。
このPVD膜形成装置は、イオンプレーティング処理炉10内に円形のプレート11が収容されており、このプレート11は図示しない駆動装置によりその回転軸を中心に水平面において回転されるようになっている。
【0014】
プレート11上には、その軸心位置に、円柱状の蒸発源(例えばCr、Ti等からなるターゲット)12が同軸状に設置されている。プレート11には、その周縁部に六個の円形の治具載置板13が、ターゲット12を中心として等角度間隔位置に、それぞれ回転自在に設置されている。
【0015】
治具載置板13上には、それぞれその軸心位置に支持棒14が同軸状に立設され固定されている。
それぞれの治具載置板13上には、所定数のベーン3が放射状に取り付けられ、複数の空隙が形成されているとともに両端が開口している筒状治具15がその中心を支持棒14に嵌合されて載置され、固定されるようになっている。この筒状治具15については、後に詳述する。
【0016】
図2および図3に示すように、治具載置板13には、それぞれプレート11の下方に位置するギア16が、シャフト17によって同軸上にかつ一体的に連結されており、このギア16はそれぞれプレート11を支持する基台18の上端内周部に取り付けられた内歯歯車19と噛み合わされている。この噛み合いにより、プレート11が回転すると、この回転に伴って治具載置板13がプレート11とは反対向きに回転する。すなわち、治具載置板13は、プレート11の回転に伴ってプレート11の回転軸の回りを公転するとともに自転を行う。
【0017】
筒状治具15は、複数の空隙を有するとともに、両端が開口しており、これらの空隙および開口により、ターゲット12から蒸発しイオン化した原子が、この筒状治具15に放射状に取り付けられたベーン3の裏側からも回り込めるようになっている。これによりベーン3の側面3cにおけるアール面3bの反対側は裏側からもコーティングがなされるようになる。
【0018】
この筒状治具15は、図3に示すように、複数の円板状ピンホルダー15c等が軸方向に間隔を設けて連結され、複数の空隙50が該治具15の径方向に沿って設けられているものであってもよいし、図4に示すように、柱状ピンホルダー15gが円周方向に間隔を設けて複数個連結され、複数の空隙50が該治具15の中心軸方向に沿って設けられているものであってもよい。
【0019】
筒状治具15は、その中心部に支持棒14の直径よりも大きな直径を有する嵌合孔15aが形成されている支持棒ホルダー15bを有し、この支持棒ホルダー15bの嵌合孔15aが支持棒14に嵌合されることにより筒状治具15が治具載置板13上に固定されるようになっている。
【0020】
さらに具体的には、図3に示すように、この態様の筒状治具15は、互いに連結された円板状ピンホルダ15c,15d,15e,15fを有し、最上段の円板状ピンホルダ15cおよび最下段の円板状ピンホルダ15fは、それぞれ支持棒ホルダ15b,15b´により保持されている。また、支持棒ホルダ15b´,の底面には、例えば位置決め突起が形成され、治具載置板13には、例えば前記位置決め突起を受ける位置決め凹部が形成されている。これにより、筒状治具15は、嵌合孔15aの内周面と支持棒14の外周面とが一定の間隔を保つ状態で治具載置板13上の所定位置に載置される。
【0021】
図3乃至図5に示すように、筒状治具15の外周部には、ベーン取付け用の支持ピン20が放射状に配設されている。ここで、複数の空隙50が該治具15の径方向に沿って設けられている図1および図3に示すような筒状治具15を用いる場合、この筒状治具15は、例えば図6に示すように等角度間隔位置に支持ピン20が配設されている円板状ピンホルダ15cと図7に示すように不等角度間隔位置に支持ピン20が配設されている円板状ピンホルダ15dとを交互に連設して構成するようにしてもよい。このように構成された筒状治具15を用いることにより、ターゲット12から蒸発しイオン化した原子の回り込みがより効率的なものとなる。
【0022】
図8に拡大して示すように、各支持ピン20は、断面円形で先細のテーパ状に形成されている。この支持ピン20へのベーン3の取り付けは、ベーン3の後端面に形成されているスプリング嵌合用の凹部3aを利用して行われる。すなわち、この凹部3aは、ベーン3が回転式コンプレッサに組み付けられているとき、図9および図10に示すように、ベーン3をロータ2側に付勢するスプリング4を嵌合するためのものであり、この凹部3aに支持ピン20を圧入することによってベーン3が筒状治具15に固定される。
【0023】
この支持ピン20のテーパ面の角度および寸法精度は、ベーン3の凹部3aのの寸法および公差を考慮して決定されるが、テーパ面のテーパは例えば1/20にすることが望ましい。
【0024】
また、支持ピン20の配置は、この支持ピン20にベーン3を取り付けた状態において、図3および図5に示すようなベーン3同士の最も接近する間隔xおよびyが、それぞれ5mm〜15mmとなるように設定されている。これは、間隔が5mm以下の場合には、イオン化された原子の回り込みが十分に行われなくなり、形成されるPVD膜が不均一になって十分な耐磨耗性が得られなくなる一方、間隔が15mm以上になると一本の筒状治具15に装着できるベーン3の数が少なくなるため、製造コストが高くなるからである。
【0025】
次いで、以上に説明したPVD膜形成装置を用いてベーン表面にPVD膜を形成する方法について説明する。
先ず、べーン3の表面をイオン窒化した後、このベーン3に形成されている凹部3aを筒状治具15に設けられている支持ピン20に圧入することによって取り付ける。このベーン3の取り付けは、ベーン3の両面が鉛直方向を向き、かつその軸線が支持ピン20の軸線と一致するように行う。
【0026】
このベーン3の取り付けにスプリング取り付け用の凹部3aを利用することにより、ベーン3の別個の加工を施す必要がなくなる。また、支持ピン20がテーパ状に加工されていることにより、ベーン3の取り付けを容易にかつ確実に行うことができる。
【0027】
このようにベーン3が取り付けられた筒状治具15を予め何本も用意しておく。
ここで、例えば、上面に鉛直方向に立設された複数本の支持棒を有する治具置き台を用意しておけば、この支持棒に嵌合孔15aを嵌合して筒状治具15を治具置き台上に並べておくことができる。
【0028】
図1および図3に示すように、ベーン3が取り付けられ準備されたそれぞれの筒状治具15の嵌合孔15aを、処理炉10内の治具載置板13上に立設された支持棒14に前述の支持棒ホルダ15b,15b´を使用して所定位置に嵌合することによりそれぞれの筒状治具15を治具載置板13上に据え付ける。このとき、それぞれの筒状治具15に取り付けられたベーン3は、図3に示すように、ロータ面に摺接される先端部のアール面3bが支持棒14に対して平行な状態を維持している。
【0029】
このようにして、支持棒14への筒状治具15の据え付けが完了すると、処理炉10の内部を密閉して真空にし、イオンボンバードによりベーン3の表面をクリーニングした後、イオンプレーティング処理を行う。
【0030】
イオンプレーティング処理の方法としては、例えば直流法、高周波法、クラスタイオンビーム法および熱陰極法のいずれを用いてもよく、いずれの方法もターゲット12から加熱蒸発させたCr、Ti等の原子をイオン化し、このイオン化した原子を負に印加したベーン3に向けて加速させて衝突させ凝固させることにより、ベーン3の表面にPVD膜を形成する。このとき、筒状治具15の間隙および嵌合孔15aの内周面と支持棒14の外周面との間隙からもイオン化した原子が回り込んで全体としてイオン化した原子の回り込みがより効率的なものとなり、筒状治具15に放射状に取り付けられているベーン3の側面3cにおける膜厚d1 と膜厚d2 との差が小さくて膜厚の均一性の高いPVD膜の形成が行われる。
【0031】
また、このイオンプレーティング処理を行っている間、プレート11を図示しない駆動装置により回転させて各筒状治具15をターゲット12の周りで公転させる。一方、ギア16と内歯歯車19との噛み合いによって治具載置板13が回転することにより、この治具載置板13上に載置されている筒状治具15は自転する。
【0032】
このように、複数の空隙が設けられているとともに両端が開口している筒状治具15を用い、この筒状治具15を自転させながらターゲット12の回りを公転させることにより、この筒状治具15に取り付けられたそれぞれのベーン3を均等にターゲット12に対向させながら全体としてイオン化した原子の回り込み効率を向上させてベーン3の表面に膜厚の均一性が高いPVD膜を形成することができる。このようにして、一度に多数のベーン3にイオンプレーティング処理を行うことができる。そして、この方法によれば、ベーン3の側面3cにおける膜厚d1 と膜厚d2 との差を小さくすることができるので、従来、問題となっていたPVD膜の平行度の問題を解決することができる。具体的には、ベーン3の側面3cにおける膜厚d1 と膜厚d2 との差は、前述の従来法により形成されたものが2.5〜3.5μmであるのに対し、本発明の方法によりベーン3の表面に形成されるPVD膜では1.5〜2.5μmと小さいものであり、本発明の方法によりベーン3の表面に形成されるPVD膜は平行度が向上している。
【0033】
イオンプレーティング処理を行う場合には処理炉10内を真空にするのに時間を要し、これが製品コストを上昇させる原因となるが、上記の方法によれば、一度に多数のベーン3についてイオンプレーティング処理を施すことができるので、製品の低廉化を図ることができる。
【0034】
また、筒状治具15に取り付けられたベーン3のアール面3bが、筒状治具15の回転に伴ってターゲット12に対して接近し直角に対向することとなるため、最も耐磨耗性が要求されるアール面3bに目的の膜厚と十分な密着性を有する均一なPVD膜を形成することができる。
【0035】
上記のようなイオンプレーティング処理により加熱されたベーン3は、イオンプレーティング処理が終了した後、冷却され、筒状治具15ごと処理炉10から取り出される。
【0036】
なお、この実施態様では、ベーン3にPVD膜を形成する前に、ベーン3にイオン窒化処理を行うが、ベーン3にPVD膜を形成するだけで十分な耐磨耗性が得られる場合には、ベーン3にイオン窒化処理を行わなくてもよい。
【0037】
また、この実施態様では、筒状治具15を自転させるために基台18に取り付けられた内歯歯車19を用いたが、この内歯歯車19の代わりに外歯歯車をプレート11と同軸上に基台18に固定して配置し、この外歯歯車にギア16を噛み合わせるようにしてもよい。
【0038】
さらに、プレート11に設ける治具載置板13の数、支持ピン20の配置段数および筒状治具15へのベーン3の取付け枚数等は、適宜に設定することができる。
【0039】
次に、本発明の方法の他の実施態様について説明する。
図11に示すように、この実施態様では、進行方向に沿った両側面が開放した運搬車70を使用する。
【0040】
この運搬車70内には、運搬車70の進行方向に沿って且つ空隙50を設けて複数段の棚状に設けられた棚状治具80が設置されている。
各棚状治具80のそれぞれには複数の回転式コンプレッサ用ベーン3を水平方向に取り付けるための支持ピン20´が配置されている。この支持ピン20´は前記支持ピン20と同様に断面円形で先細のテーパ状に形成されている。そして、て、この支持ピン20´への各べーン3の取り付け方法は前記の態様におけるのと同様である
一方、運搬車70の進行方向には真空室10aおよびコーティング室10bからなる処理炉10´が配置されている。
【0041】
図12に示すように、コーティング室10bにおける運搬車70の開放面と対向する位置にはそれぞれターゲット12が配設されている。
次に、運搬車70をこの処理炉10´内で移動させる。処理炉10´内では、ターゲット12を加熱し、蒸発させてイオン化する。このイオン化した原子は負に印加したベーン3に向けて加速され、ベーン3と衝突して凝固することにより、ベーン3の取り付け方向先端面(アール面3b)側からベーン3の表面にPVD膜を形成する。このとき、棚状治具80の間隙からもイオン化した原子が回り込み、棚状治具70に水平方向に取り付けられているベーン3の側面3cからもPVD膜の形成が行われるとともに、反対側に設けられているターゲット12から発生しイオン化した原子により各ベーン3の裏側からもPVD膜の形成が行われることになる。
【0042】
このように進行方向に沿った両側面が開放した運搬車70を使用し、この運搬車70内の進行方向に沿って且つ空隙50を設けて複数段の棚状に設けられた棚状治具80のそれぞれに複数の回転式コンプレッサ用ベーン3を水平方向に取り付け、この運搬車70を真空室10aおよびコーティング室10bからなる処理炉10´内に移動させるとともに該炉10´内の運搬車70の開放面と対向する位置にそれぞれ配設されたターゲット12から蒸発し、イオン化した原子を負に印加したベーン3に向けて加速させ、ベーン3と衝突させて凝固させることにより各ベーン3の取り付け方向先端面(アール面3b)側から各ベーン3の表面にPVD膜を形成するようにすれば、回転式コンプレッサ用ベーン3を取り付けた複数の運搬車70を、連続的に炉内へ送り込むことにより多数のベーン3の表面に膜厚の均一なPVD膜を連続的に形成することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上に詳述した通り、本発明は、複数の空隙が形成されている特定の治具を用い、この治具に取り付けた回転式コンプレッサ用ベーンに物理蒸着膜を形成する構成としたので、本発明によれば、この治具に取り付けられている各ベーンの裏側にもターゲットから蒸発しイオン化した原子が回り込めることになるため、特にベーン側面における膜厚差が小さくて膜厚の均一性が高いPVD膜が各ベーンに形成され、回転式コンプレッサ用ベーンの耐磨耗性を向上させることができる。また、本発明によれば、一度に多数のベーンに均一にPVD膜を形成することができるので、品質の安定した製品を低廉に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す装置の一部を破断して示す部分拡大図である。
【図3】図1に示す装置の部分側断面図である。
【図4】本発明で好適に使用される筒状治具の一例を示す正面図である。
【図5】本発明の一実施態様におけるターゲットとベーンとの位置関係を示す平面図である。
【図6】本発明における筒状治具の構成部品の一例を示す平面図である。
【図7】本発明における筒状治具の構成部品の他の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施態様におけるベーンの取り付け方法を示す部分拡大断面図である
【図9】回転式コンプレッサの一例を示す断面図である。
【図10】回転式コンプレッサの部分拡大断面図である。
【図11】本発明の一実施態様における運搬車と物理蒸着膜形成炉との関係を示す側面説明図である。
【図12】本発明の一実施態様における運搬車と物理蒸着膜形成炉との関係を示す平面説明図である。
【図13】イオン窒化処理の一例を示す斜視図である。
【図14】従来法によりPVD膜が形成された回転式コンプレッサ用ベーンの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
3…ベーン
3a…ベーンの凹部
3b…ベーンのアール面
3c…ベーンの側面
10,10´…処理炉
11…プレート
12…ターゲット
13…治具載置板
15…筒状治具
15a…嵌合孔
15b,15b´…支持棒ホルダー
15c,15d,15e,15f…円板状ピンホルダー
15g…柱状ピンホルダー
16…ギア
19…内歯歯車
20…支持ピン
50…空隙
70…運搬車
80…棚状治具

Claims (7)

  1. 複数の回転式コンプレッサ用ベーンを複数の空隙が形成されているとともに両端が開口している筒状治具の外周部に放射状に取り付け、この筒状治具を自転させながら蒸着源の周りを公転およびさせつつ移動させて真空蒸着膜形成処理を行うことにより、各ベーンの表面に物理蒸着膜を形成することを特徴とする回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法。
  2. 進行方向に沿った両側面が開放した運搬車を使用し、この運搬車内の進行方向に沿って且つ空隙を設けて複数段の棚状に設けられた棚状治具のそれぞれに複数の回転式コンプレッサ用ベーンを水平方向に取り付け、この運搬車を処理炉内に移動させるとともに該炉内の前記運搬車の開放面と対向する位置にそれぞれ配設された蒸着源から蒸気原子を発生させて前記各ベーンの表面に物理蒸着膜を形成することを特徴とする回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成方法。
  3. 外周部に複数の回転式コンプレッサ用ベーンを放射状に取り付けるための取り付け部を有するとともに、複数の空隙が形成され両端が開口している筒状治具と、真空薄膜形成を行う処理炉内に回転自在に配置されたプレートと、前記プレートの外周縁部に回転自在に配置され、その上面に前記筒状治具が着脱自在に載置されるようになっている一個または複数の治具載置板と、前記プレートの回転に伴って前記治具載置板をその回転軸を中心として回転させる治具載置板機構と、前記プレートの中心位置に設置された蒸着源とを備えることを特徴とする回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置。
  4. 前記筒状治具に形成されている複数の空隙が、該治具の径方向に沿って設けられている請求項3記載の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置。
  5. 前記筒状治具に形成されている複数の空隙が、該治具の中心軸に沿って設けられている請求項3記載の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置。
  6. 回転式コンプレッサ用ベーンを放射状に取り付けるための前記筒状治具の取り付け部が、治具の径方向に沿って延在するように該治具の外周面に突設された複数のテーパ状の支持ピンであり、該支持ピンに前記回転式コンプレッサ用ベーンに形成されている凹部を嵌合させることにより、回転式コンプレッサ用ベーンを前記筒状治具に取り付ける請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置。
  7. 前記治具載置板自転機構が、前記治具載置板に一体的にかつ同軸状に取り付けられた外歯の歯車と、前記プレートに対し同軸状に配置されて前記外歯の歯車と噛み合う固定歯車とからなる請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の回転式コンプレッサ用ベーンの物理蒸着膜形成装置。
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