JP3687127B2 - 二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム - Google Patents

二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト及びこれらを主体とするポリエステルは優れた物理的、化学的特性を有しており、繊維、フィルムあるいはシ−トさらにはその成形品として広く使用されている。
【0003】
特に、ポリエステルフィルムは耐熱性、耐薬品性、機械的特性において優れた性質を有するために、磁気テ−プ用、ボトル用、電気用、写真用、包装用、製図用等多くの用途に用いられている。
【0004】
一方、これらの用途製品のコンパクト化、高密度化、高品質化等のニ−ズに従い、ポリエステルフィルムに対する要求特性も益々厳しさを増してきている。上記の各用途の中でも、殊に磁気記録媒体用途では高級品質化とともに、長時間記録化、コンパクト化に伴うベ−スフィルム薄膜化のために、更なる高弾性率化、高強度化が望まれている。
【0005】
ベ−スフィルムの弾性率が不足すると、走行時の磁気ヘッドやガイドピンから受ける張力のため、磁気テ−プに伸びが生じ、電磁変換特性(出力特性)に悪影響を与える。長時間記録用磁気テ−プではベ−スフィルム薄膜化のため、少なくとも一方向の弾性率を向上させる必要がある。そのため、ポリエチレンテレフタレ−ト配向体として、結晶化度、結晶サイズ、結晶配向係数を規定し、弾性率、熱寸法安定性に優れた磁気記録媒体の基材およびフレキシブル回路基板が知られている(例えば特開昭63−153115号公報)。
【0006】
しかしながら、上記ポリエチレンテレフタレ−ト配向体では、単に一軸方向に延伸を行った後、熱処理を行い、弾性率、熱寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレ−ト配向体を得る改良がなされているのみである。そのため、延伸方向の弾性率は大きいが、それと垂直な方向の弾性率は小さいため、磁気記録媒体用途として十分な電磁変換特性を得ることができない場合があった。また熱処理方法が工業的でなく、さらに熱処理時間が長時間必要なことなどの問題があった。
また、上記ポリエチレンテレフタレ−ト配向体では、延伸方向とそれに垂直な方向の熱寸法安定性が大きく異なるため、磁性層塗布、カレンダ−工程、あるいは、できたビデオテ−プ等をダビングしてソフトテ−プを製造する場合に収縮等などの問題があった。熱寸法安定性を向上させる方法としては、フィルムを比較的ゆるく巻きそのまま加熱炉中で熱処理する方法(例えば特開昭58−98219号公報)があるが、広幅で長尺のフィルムをゆるく巻くことが困難であり、またフィルム間に空気層が存在するために、各フィルム間の熱伝導が遅く、ロ−ル状のフィルム全体の昇温に時間がかかる等の問題があった。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、既存の製膜設備に赤外線照射装置のみを追加するという簡単な改良を行い、熱寸法安定性、出力特性、耐エッジダメージ性に優れる二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカボキシレートフィルムを提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムは、A層及びB層の少なくとも2層構造からなり、A層がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート及び/またはポリエチレンテレフタレートを主たる成分とするフィルムであり、B層がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とし、結晶化度が40%以上43%以下であるフィルムであることを特徴とする。
【0009】
本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トとは、例えばエチレングリコ−ルと2,6−ナフタレンジカルボン酸とから縮重合により得られるエステル結合を有するものを言い、これを主体とするものである。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内で、2種以上のポリマを混合してもよいし、共重合ポリマを用いてもよい。また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤、あるいはポリシロキサン等の消泡剤等が通常添加される程度添加されていてもよい。
【0010】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの結晶化度は、40%以上、好ましくは42%以上、さらに好ましくは45%である。結晶化度が40%未満であると、充分な、熱寸法安定性、耐エッジダメ−ジ性が得られず、走行時に磁気ヘッドやガイドピンから受ける張力により、磁気テ−プのエッジにダメ−ジを受けたり、伸びが生じたり、またドロップアウトが多発して出力特性に悪影響を与える。
【0011】
結晶化度を40%以上とする方法としては、特に限定されないが、赤外線をポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムに照射してフィルムの結晶化度を少なくとも2%以上高める方法が等が好ましく用いられる。赤外線照射による結晶化度の向上は好ましくは4%以上、さらに好ましくは6%以上である。赤外線照射は、フィルム製造工程のどの工程でも行われてもよいが、フィルム熱処理後のワインダ−工程あるいは製品幅にフィルムをスリットするスリット工程で行われることが好ましい。赤外線照射は赤外ランプ(例えばハロゲンランプ)、二酸化炭素レ−ザ−等を用いて、波数600〜1600cm-1の赤外光を選択的に照射するという処理を行うことが好ましい。処理時間としては0.2〜300秒の範囲が好ましい。
【0012】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、出力特性、耐エッジダメ−ジ性の点から、特に限定されないが、長手方向、幅方向の少なくとも一方向の弾性率が900kg/mm2 以上であることが好ましく、より好ましくは1100kg/mm2 以上、さらに好ましくは1300kg/mm2 以上である。
【0013】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、特に限定されないが、表面粗大突起数H3が10個/100cm2 以下、好ましくは7個/100cm2 以下、特に好ましくは4個/100cm2 以下である。表面粗大突起数が10個/100cm2 を超えるとドロップアウトが多発し、磁気テ−プとして充分満足する出力特性を得ることができない。
【0014】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの固有粘度[η]は、特に限定されないが、0.6〜3.0(dl/g)が好ましい。好ましくは0.7〜2.0、特に好ましくは、0.8〜1.5である。[η]が0.6以下だと、長時間記録用磁気テ−プのベ−スフィルムとしての充分な弾性率、強度が得られない。一方、3.0以上であると、溶融粘度が高すぎるために、T型ダイ内でのポリマ−の流れが不均一となる等の原因によって、安定して製膜することができなくなる。
【0015】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、特に限定されないが、出力特性の点からA層及びB層の少なくとも2層構造からなるのが好ましい。A層厚みは特に限定されないが、出力特性の点から0.01〜3.0μm、好ましくは0.02〜2.0μm、さらに好ましくは0.03〜1.0μmである。積層構成の場合、少なくともB層の主たる成分がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トであればよく、他の層は特に限定されないが、ポリエステルが好ましく例示される。ポリエステルとしては特に限定されないが、ポリエチレンタレフタレ−トを主たる成分とするポリマまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トを主たる成分とするポリマが好ましい。
【0016】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムのA層には特に限定されないが、出力特性の点から0.01〜1.0μm、好ましくは0.02〜0.5μm、さらに好ましくは0.03〜0.3μmの粒径の粒子を、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%含有するのが好ましい。粒子の種類としては、無機粒子、有機粒子のいずれでもよい。有機粒子としては、特に限定されないが、出力特性の点から架橋型有機粒子、特にポリジビニルベンゼン粒子が好ましい。ポリジビニルベンゼン粒子とは、架橋成分としてジビニルベンゼンを主体とするものをいう。なかでもジビニルベンゼンが粒子成分の51%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上のものが好ましい。他の成分としては、特に限定されないが、例えばエチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼン等の架橋しない成分があげられる。また、シリコーン粒子も好ましく例示される。シリコーン粒子とは2次元的に架橋されたオルガノポリシロキサン(CH3 Si O3/2 )を主たる成分とするものが好ましい。その他粒子として、結晶形がα型、γ型、δ型、θ型、η型のアルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン等の凝集粒子、または、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ、酸化チタン等の単分散粒子もポリマ中での適切な粒子分散により用いることも可能である。これらの粒子を複数併用して用いてもよい。
【0017】
A層厚みtとA層に含有する粒子粒径dの関係は特に限定されないが、0.2d≦t≦10d、好ましくは0.3d≦t≦5d、さらに好ましくは0.3d≦t≦3dの場合に、特に出力特性が良好となる。
【0018】
A層以外のフィルム層、つまりB層等を構成するポリマ中に粒子を含有していてもかまわない。この場合、粒径は0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μm、含有量は0.05〜1.0重量%である炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、酸化チタン、有機粒子、カーボンブラック等から選ばれる粒子を含有するのが好ましい。
【0019】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、上記組成物を二軸配向したフィルムである。一軸あるいは無配向フィルムでは幅方向強度が不足するので好ましくない。フィルムの厚さ方向の一部分、例えば表層付近のポリマ分子の配向が無配向、あるいは一軸配向になっていない、すなわち厚さ方向の全部分の分子配向が二軸配向である場合に出力特性がより一層良好となる。特にアッベ屈折率計、レーザーを用いた屈折率計、全反射レーザーラマン法などによって測定される分子配向が、表面、裏面ともに二軸配向である場合に出力特性がより一層良好となる。
【0020】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、100℃、30分処理後の熱収縮率が、特に限定されないが、出力特性、ドロップアウトの点から、0.10%以下、好ましくは0.07%以下、さらに好ましくは0.04%以下である。
【0021】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムは、磁気記録媒体に用いる場合、磁性層を設ける面と反対面に必要に応じてバックコート層を設けてもよい。
【0022】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムはデジタル磁気記録媒体用ポリエステルフィルムとして好ましく用いられる。さらに特に高出力が要求されるHDTV(ハイディフィニションテレビジョン、日本放送協会のハイビジョン等)用磁気記録媒体用ポリエステルフィルムとしても好ましく用いられる。また、本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムはコンピュータ用等のデータストレージ用にも用いられる。
【0023】
得られるフィルムの厚さは特に限定されていないが、長時間記録用磁気テ−プ用としては通常1〜30μm、好ましくは3〜20μm、特に好ましくは4〜15μmものが用いられる。
【0024】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムが特に有効なのは、磁気記録媒体用途であるが、その他にも、熱寸法安定性に優れていることから、写真用、コンデンサ用、包装用、製図用等に用いることもできる。
【0025】
次に本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの製造方法の好ましい例を示し説明するが、これに限定されるものではない。
【0026】
まずフィルムを構成するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トに粒子を含有せしめる方法としては、ジオ−ル成分であるエチレングリコールにスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを所定の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分と重合するのが好ましい。また粒子の水スラリーを直接所定のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トに練り込む方法は、本発明の効果をより一層良好とするのに有効である。
粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度マスターを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリマで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0027】
次に、粒子を所定量含有するペレットを必要に応じて乾燥したのち、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシ−ト状に押出し、キャスティングロ−ル上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。また、積層ポリエステルフィルムの場合は、2または3台の押出機、2または3層のマニホ−ルドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルを積層せしめて未延伸フィルムを作る。この場合、粒子を含有するポリマ流路に高精度フィルタ−、スタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は本発明の効果をより一層良好とするのに有効である。特に高精度フィルタ−は10μm以上の粒子等を95%の確立で除去する濾過精度を有するフィルタ−、好ましくは5μm以上の粒子等を95%の確立で除去する濾過精度を有するフィルタ−、さらに好ましくは3μm以上の粒子等を95%の確立で除去する濾過精度を有するフィルタ−であると本発明の効果に特に有効である。
【0028】
次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用い、長手方向の延伸を3段階以上に分けて、縦延伸温度75〜175℃、好ましくは100〜150℃、総縦延伸倍率3.0〜8.0倍、縦延伸速度5,000 〜50,000%/分の範囲で行なうのが好ましい。幅方向の延伸方法としては例えばテンタ−を用いる方法が好ましく、延伸温度80〜170℃、幅方向延伸倍率は縦倍率より大きく3.5〜8.0倍、幅方向の延伸速度1,000 〜20,000%/分の範囲で行なうのが好ましい。さらに必要に応じて、再縦延伸、再横延伸を行なう。その場合の延伸条件としては長手方向の延伸は90〜180℃、延伸倍率1.1〜2.0倍、幅方向の延伸方法としてはテンタ−を用いる方法が好ましく、延伸温度90〜180℃、幅方向延伸倍率は1.1〜2.0で行なうのが好ましい。
【0029】
次にこの二軸配向フィルムを熱処理しワインダ−にロ−ル状に巻き取る。この場合の熱処理温度は170〜240℃、特に180〜220℃で時間は0. 5〜60秒の範囲が好適である。
【0030】
この、フィルムを、熱処理した後ワインダ−にロ−ル状に巻取る時に、赤外ランプ(例えばハロゲンランプ)、あるいは、二酸化炭素(CO2 )レ−ザ−に代表されるようなレ−ザ−を用いて、赤外線を照射する。フィルムに照射する赤外線の波数としては、600〜1600cm-1の赤外線を選択的に照射するという処理を行うことが好ましい。処理時間は0.2〜300秒の範囲が好ましい。この処理はフィルムを製品幅にスリットする時に行ってもよい。
【0031】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
本発明の特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0032】
(1)固有粘度[η]
o−クロロフェノ−ル溶媒に溶解後、25℃で測定した。
【0033】
(2)弾性率
JIS Z−1702に規定された方法にしたがって、インストロンタイプの引っ張り試験機を用いて、25℃、65%RHにて測定した。
【0034】
(3)粒子の平均粒径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、10万倍以上の倍率で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野以上測定する。粒子の平均粒径は単分散粒子についての等価円相当径の平均値である。なお、粒子の粒径は重量平均とする。
【0035】
(4)粒子の含有量
ポリマは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子をポリマから遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とする。場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
【0036】
(5)フィルム積層厚み
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3000nmの範囲のフィルム中の粒子のうち最も高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+ /C- )を粒子濃度とし、表面から深さ3000nmまで厚さ方向の分析を行なう。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明フィルムの場合は、一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを積層厚みとした。条件は次のとおり。
【0037】
▲1▼測定装置
2次イオン質量分析装置(SIMS) 独、ATOMIKA社製 A−DIDA3000
▲2▼測定条件
1次イオン種 O2 +
1次イオン加速電圧 12kV
1次イオン電流 200nA
ラスタ−領域 400μm□
分析領域 ゲ−ト30%
測定真空度 6.0×10-9Torr
E−GUN 0.5kV−3.0A
なお、表層からの深さ3000nmの範囲に最も多く含有する粒子が有機高分子粒子の場合は、SIMSでは測定が難しいので、表層からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し積層厚みを求めても良いし、また、電子顕微鏡等による断面観察で粒子濃度の変化状態やポリマの違いによるコントラストの差から界面を認識し積層厚みを求めることもできる。さらには積層ポリマを剥離後、薄膜段差測定機を用いて積層厚みを求めることもできる。
【0038】
(6)フィルム表面の配向
ナトリウムD線(589nm)を光源として、アッベ屈折率計を用いて測定した。マウント液にはヨウ化メチレンを用い、25℃、65%RHにて測定した。
【0039】
フィルムの二軸配向性は長手方向、幅方向、厚さ方向の屈折率をN1 、N2 、N3 とした時、(N1 −N2 )の絶対値が0. 07以下、かつ、N3 /[(N1 +N2 )/2]が0. 95以下であることをひとつの基準とできる。また、レーザー型屈折率計を用いて屈折率を測定してもよい。さらに、この方法では測定が難しい場合は全反射レーザーラマン法を用いることもできる。
【0040】
(7)表面粗大突起数H3
測定面(100cm2 )同士を2枚重ね合わせて静電気力(印加電圧5.4kV)で密着させた後、2枚のフィルム間で粗大突起部分の光の干渉によって生じるニュ−トン環から粗大突起の高さを判定し、3重環以上の粗大突起数をH3とした。なお、光源はハロゲンランプに564nmのハンドパスフィルタ−をかけて用いた。
【0041】
(8)結晶化度
フィルム密度を臭化ナトリウム水溶液からなる密度勾配管を用いて、25℃で測定した。A層の密度は、同条件で製造されたA層のみのフィルム、または、積層フィルムからA層を削り取った試料で密度を測定した。また、削り取る操作が難しい場合には、表層のみの結晶化状態を測定可能な手法、例えば、全反射ラマン法、FT−IR法などで得られた情報を、検量線を用いて、密度に読み替えることも可能である。
【0042】
結晶化度(%)は、下記式により求めた。
【0043】
【式1】
Figure 0003687127
Figure 0003687127
として求めた。
【0044】
(9)熱収縮率
JIS C−2318に規定された方法をもとにして測定した。だだしオ−ブン中の保持時間は30分とした。
【0045】
(10)磁気テ−プにおけるドロップアウト評価
フィルムに下記組成の磁性塗料をグラビアロ−ルにより塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロ−ル/ナイロンロ−ル、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テ−プ原反を1/2インチにスリットし、パンケ−キを作成した。このパンケ−キから250mの長さをVTRカセットに組み込み、VTRカセットテ−プとした。
【0046】
(磁性塗料の組成)
・Co含有酸化鉄(BET値50m2 /g) :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体): 10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネ−トL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネ−ト) : 5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
・カ−ボンブラック : 2重量部
・ラウリル酸 :1.5重量部
このテ−プにVTRを用い、TV試験信号発生機(シバソクTG−7/1型)からの信号を録画させた後、25℃、50%RHで100パス(120分×100パス)走行させた。このテ−プをドロップアウトカウンタ−を用いて、ドロップアウトの幅が5μ秒以上で、再生された信号の減衰がマイナス16dB以上のものをピックアップしてドロップアウトとした。測定は10巻について行い、1分間当たりに換算したドロップアウトの個数が10個未満の場合はドロップアウト良好、10個以上の場合を不良とした。
【0047】
(11)耐エッジダメ−ジ性
(10)で用いたのと同様のVTRカセットテ−プにVTRを用いて、25℃、65%RHで200パス走行後、テ−プ端部のひだ状の伸びを目視判定にて次のように評価した。
【0048】
○:全く伸びが認められないもの
△:わずかに伸びが認められたもの
×:はっきりひだ状の伸びが認められ、実用上使用し難いもの
(12)出力特性
市販のHi8VTR(SONY社製EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/Nの測定を行った。このC/Nを市販のHi8用ビデオテ−プ(120分ME)と比較して、
+3dB以上 : 優
+1〜+3dB未満 : 良
+1dB未満 : 不良
で判定した。
【0049】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明の実施態様を説明する。
【0050】
参考例1(表1)
粒子組成がジビニルベンゼン81%であるポリジビニルベンゼン粒子の水スラリーをベント式の2軸混練押出機を用いて直接ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)に練り込み、PENの粒子ペレットを得た。
【0051】
この粒子ペレットと実質的に粒子を含有しないPENポリマペレットを適当量混合し(0.3μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.3重量%、0.8μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.03重量%含有)、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し300℃で溶融した。このポリマを3μm以上の粒子等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルタ−を用いて瀘過した後、Tダイ口金から溶融シ−トを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比を10とした。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0052】
この未延伸フィルムを温度135℃にて長手方向に4.3倍延伸した。この延伸は2組ずつのロ−ルの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて140℃で幅方向に5.0倍延伸した。このフィルムを定長下で220℃にて5秒間熱処理し、厚さ7μmの二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムをワインダ−にて巻取った。この時、赤外ランプ(出力12kW)を用いて、波数600〜1600cm-1赤外光を選択的に7秒間照射した後、ロ−ルに巻いた。
【0053】
この二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの特性は表1に示したとおりであり、出力特性、熱寸法安定性、ドロップアウト、耐エッジダメ−ジ性が良好であった。
【0054】
実施例(表1)
粒子組成がジビニルベンゼン81%であるポリジビニルベンゼン粒子の水スラリーをベント式の2軸混練押出機を用いて直接PENに練り込み、PENの粒子ペレットを得た。
【0055】
この粒子ペレットと実質的に粒子を含有しないPENポリマペレットを適当量混合し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、ポリマA:0.3μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.5重量%、0.8μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.05重量%含有ポリマ、ポリマB:0.3μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.1重量%含有ポリマをそれぞれ押出機1、押出機2に供給し300℃、305℃で溶融した。これらのポリマをそれぞれ3μm以上の粒子等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルタ−を用いて瀘過した後、矩形合流部にて2層積層とした(A/B)。
【0056】
これを静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比を10とした。また、それぞれの押出機の吐出量を調節し総厚さ、およびA層の厚さを調節した。
【0057】
この未延伸フィルムを温度140℃にて長手方向に4.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロ−ルの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて145で幅方向に4.9倍延伸した。さらに、テンターを用いて170℃で幅方向に1.15倍延伸した。このフィルムを定長下で210℃にて3秒間熱処理し、総厚さ4.5μm、A層厚さ0.4μmの二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムを得た。
【0058】
このフィルムをフィルム幅が1500mm以下の製品幅にスリットするときに、赤外ランプ(18kW)を用いて、波数600〜1600cm-1の赤外光を選択的に10秒間照射した後、ロ−ルに巻いた。
【0059】
この二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの特性は表1に示したとおりであり、出力特性、熱寸法安定性、ドロップアウト、耐エッジダメ−ジ性が良好であった。
【0060】
参考
粒子組成がジビニルベンゼン81%であるポリジビニルベンゼン粒子の水スラリーをベント式の2軸混練押出機を用いて直接PENに練り込み、PENの粒子ペレットを得た。
【0061】
この粒子ペレットと実質的に粒子を含有しないPENポリマペレットを適当量混合し(0.45μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.4重量%)、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し300℃で溶融した。このポリマを3μm以上の粒子等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルタ−を用いて瀘過した後、Tダイ口金から溶融シ−トを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比を10とした。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0062】
この未延伸フィルムを温度138℃にて長手方向に4.4倍延伸した。この延伸は2組ずつのロ−ルの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて143℃で幅方向に5.2倍延伸した。このフィルムを定長下で210℃にて5秒間熱処理し、総厚さ6μmの二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムをワインダ−にて巻取った。この時、二酸化炭素レ−ザ−(出力10kW)を用いて、波数600〜1600cm-1赤外光を選択的に10秒間照射した後、ロ−ルに巻いた。
【0063】
この二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムの特性は表1に示したとおりであり、出力特性、熱寸法安定性、ドロップアウト、耐エッジダメ−ジ性が良好であった。
【0064】
実施例
A層ポリマとしてポリエチレンテレフタレート、B層ポリマとしてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボシキレートを用いて、実施例と同様にして、二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムを得た。
【0065】
比較例1
参考例1において、赤外ランプ照射前(赤外線処理前)のフィルムを比較例1とする。
【0066】
比較例2
実施例において、赤外ランプ照射前(赤外線処理前)のフィルムを比較例2とする。
【0067】
比較例3
参考において、二酸化炭素レーザー照射前(赤外線処理前)のフィルムを比較例3とする。
【0068】
比較例4
実施例において、赤外ランプ照射前(赤外線処理前)のフィルムを比較例4とする。
【0069】
【表1】
Figure 0003687127
【0070】
【発明の効果】
本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−トフィルムおよびその製造方法は、フィルムの結晶化度を規定したので、優れた出力特性、熱寸法安定性、ドロップアウト、耐エッジダメ−ジ性を得ることができた。

Claims (4)

  1. A層及びB層の少なくとも2層構造からなり、A層がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート及び/またはポリエチレンテレフタレートを主たる成分とするフィルムであり、B層がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とし、結晶化度が40%以上43%以下であるフィルムであることを特徴とする二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム。
  2. A層に粒子を含有し、かつ該A層の厚さtと該粒子の平均粒径dとが0.2≦d/t≦10の関係式を満足する請求項1記載の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム。
  3. 少なくとも片面の表面粗大突起数H3が10個/100cm2以下であることを特徴とする請求項1または2記載の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム。
  4. 長手方向、幅方向の少なくとも一方向の弾性率が、900kg/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム。
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