JP3687092B2 - 旋回燃焼器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼器に関するものであり、特に燃焼室内に予め空気と燃料を混合した混合ガスを噴射して旋回流を発生させる旋回燃焼器に関するものである。本発明の燃焼器は、給湯器やボイラーといった熱源を要するあらゆる装置に活用することができる。
【0002】
【従来の技術】
高い空間発熱率を有する燃焼手段の一つとして、旋回燃焼器が知られている(特許第2863841号)。
旋回燃焼器とは、筒状の燃焼室を使用し、この燃焼室内に空気と燃料との混合ガスを噴射して内部に旋回流を発生させるものである。
【0003】
図7は、従来技術の旋回燃焼器の概念図である。
旋回燃焼器101では、円筒形の燃焼室102を使用し、この燃焼室102に対して接線方向に空気と燃料との混合ガスを噴射する。この混合ガスは、燃焼室102内で旋回流を形成する。燃焼室102内では、円筒状の旋回火炎が発生する。また既燃焼ガスは、旋回しながら開口103から外部に排出される。
【0004】
旋回燃焼器101は、開口103から大気中に直接的に混合ガスを噴射させる通常の燃焼方式に比べて、格段に高い空間発熱率を発揮する。そのため給湯器等の装置の小形化が可能である。また旋回燃焼器101は、強い旋回流を利用して燃焼を行うので、燃料を希薄な状態で燃焼させることができる。そのため火炎の温度を低下させることが可能であり、排出されるNOx (窒素酸化物)の低減が可能である。さらに通常の燃焼器に比べて燃焼量絞り比(T.D.R)を広くとることができるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
旋回燃焼器101は、前記した様に、通常の燃焼方式に比べて、格段に高い空間発熱率を発揮する。しかしながら産業界においては、さらに高い空間発熱率を求める声がある。また燃焼によるNOx および騒音の発生を現状よりもさらに抑制したいという産業上の要求がある。
そこで本発明は、これらの要求に応えるため、旋回燃焼器に改良を加え、より高い空間発熱率を発揮すると共に、NOx および騒音の発生がより少ない旋回燃焼器の提供を課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した様に、産業界にはNOx の発生を、現状よりもさらに抑制したいという要求がある。そこで本発明者は、NOx が発生する原理に立ち返って検討を行なった。燃焼装置においてNOx が発生するのは、火炎において空気中の窒素と酸素が燃焼反応を通して結合するためである。ここで従来から行なわれていた、NOx を低減するための方策は、燃料を希薄な状態で燃焼させて火炎の温度を低下させ、NOx 生成反応を抑制するものである。
その結果、NOx の発生は少ないものとなったが、薄い混合ガスを使用するため、燃焼室内の単位空間当たりの燃焼反応による熱発生率が減少し、旋回燃焼器の本来の特質たる高空間発熱率を十分に発揮することができないという弊害が生じていた。
【0007】
すなわち従来技術の旋回燃焼器では、混合ガス中の燃料濃度が低いが故に、急激な発熱を伴う燃焼反応は旋回火炎面でほぼ完了して、旋回燃焼器の中心部分からは熱が発生していない。
そこで本発明者らは、旋回燃焼器の中心に近い部分からも熱を発生させ、空間発熱率を向上させることを考えた。またNOx については、従来とは異なる原理に基づいて低減を図ることとした。
【0008】
そして上記した構想に基づいて完成された請求項1に記載の発明は、一端が開放された燃焼室を有し、該燃焼室内に空気と燃料との混合ガスを噴射する旋回燃焼器において、燃焼室の内壁を離れた位置に、前記混合ガスよりも燃料濃度の高い高濃度ガスを旋回噴射する複数の旋回噴射部が設けられ、前記混合ガスは、燃焼室の中心方向に向かって噴射され、且つ、高濃度ガスの旋回噴射により形成された旋回火炎に巻き込まれて旋回流を発生させることを特徴とする旋回燃焼器である。
【0009】
本発明の旋回燃焼器では、燃焼室の中心側に、前記混合ガスよりも燃料濃度の高い高濃度ガスが噴射される。そのため旋回流の中心部においても火炎が発生し、発熱する。
また高濃度ガスは、既燃ガス成分たるCO2 ,H2 O等とも混合しながら燃焼することとなる。そのため高濃度ガスの燃焼領域においては既燃成分の希釈により火炎温度が低下する。すなわち本発明の旋回燃焼器では、旋回火炎又は燃焼ガスに含まれる既燃ガス成分の希釈効果により、高濃度ガスの燃焼反応によるNOx の生成が著しく減少する。つまり既燃ガスのEGR効果(Exhaust Gas Recirculation) によってNOx の生成量を顕著に減少することができる。
さらに、高濃度ガスは既燃ガスに比べ低温であるため密度が既燃ガスよりも高い上に、高濃度ガスの供給により発生する旋回流により慣性力が作用するため高濃度ガスと既燃ガスの混合がさらに促進され効果的に燃焼される。
【0010】
混合ガスが燃焼室の中心方向に向かって噴射されることにより保持される火炎が、高濃度ガスの旋回噴射により形成された旋回火炎に巻き込まれて旋回流を発生させるため、混合ガスの流量は非常に小さくてよく、燃焼騒音の更なる低減が可能である。
【0011】
また請求項1記載の発明は、燃焼室内に複数の旋回噴射部が設けられたことを特徴としている。
【0012】
燃焼室内において高濃度ガスを完全燃焼させるためには旋回噴射部を大きくしたほうが有利であるが、あまりに大きい場合燃焼室内における燃焼に有効な空間が減少し、単位空間当りの燃焼量が低下することが懸念される。しかし旋回噴射部を複数設けた場合、その総体積と同一の体積を有する旋回噴射部を単独で設けた場合に比べ外表面積が大きく、単位空間当りの燃焼量が大きくなる。また旋回噴射部のレイアウトが自由であるため燃焼器の横断面を必要に応じた形とすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、高濃度ガスは、空気過剰率が0以上1未満であることを特徴とする請求項1に記載の旋回燃焼器である。
【0014】
本発明の旋回燃焼器では、高濃度ガスは、空気過剰率が0以上1未満である。ここで空気過剰率とは燃料ガス中に含まれる空気の割合を示すものである。空気過剰率が1.0であればガス中に当該燃料がちょうど完全燃焼し得るだけの空気が含有されており、1.0未満のときはガス中に含まれる空気量が完全燃焼するのに必要な量より少ない。また、空気過剰率が1.0より大きい場合はガスの完全燃焼に必要な空気量以上の空気が含有されている場合である。よって高濃度ガスは、燃料そのもの、あるいは空気が不足した状態の混合ガスである。
本発明者の実験によると、旋回流の中に空気が不足状態の混合ガスを噴射すると、NOx の発生量が減少した。この理由として、高濃度ガスが燃焼して還元成分を発生しその還元成分により形成された還元性雰囲気において旋回火炎で生成したNOx を還元し、NOx 排出濃度を減少させたことが考えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における旋回燃焼器の概念図であり、(a)はその縦断面図、(b)はその平面断面図である。
図1において1は本実施の形態の旋回燃焼器である。旋回燃焼器1は略円筒形の外周壁2を有し、その内部に外周壁2の平面断面と略同心で円筒状の内周壁4および略円錐状の旋回噴射部9が設けられている。
【0016】
順次説明すると、外周壁2と内周壁4は共に円筒形であり、外周壁2の内側に内周壁4が同心状に配されている。また、両者の先端側はフランジ3によって閉塞されており、内部に低濃度ガス供給部8が形成されている。内周壁4には母線方向および円周方向に等間隔で図1(b)に示すように内周壁4が切り起こされた炎孔5が複数設けられている。内周壁4のガス上流側の端部には底板6が設けられ、内周壁4と底板6により燃焼室12を形成している。また底板6の中心には外周壁2と同心円状に貫通孔が設けられ高濃度ガス流入口7を構成している。
【0017】
旋回噴射部9は円弧状の旋回噴射部片10が複数重ねられて構成されている。すなわち旋回噴射部片10は、図1(b)の様に平面視が円弧状の板である。そして本実施形態では、6枚の旋回噴射部片10を環状に並べて旋回噴射部9が構成されている。より具体的には、特定の旋回噴射部片10の時計方向(図1( b ))の先端側であってその内側の位置に、隣接する旋回噴射部片10の後端側が配置され、6枚の旋回噴射部片10を部分重ねにして環状に並べられている。そして各旋回噴射部片10の時計方向先端と、隣接する旋回噴射部片10との間にスリット状の噴射口11が形成されている。旋回噴射部9のガス下流側の一端は封止されている。
【0018】
次に本実施形態の旋回燃焼器1の作用について説明する。
本発明の旋回燃焼器1には空気を過剰に含む低濃度ガスと燃料そのものであるか、あるいは空気が不足した状態の混合ガスである高濃度ガスの2種類のガスが供給される。具体的には低濃度ガスは空気過剰率が少なくとも1を越えたガスであり、高濃度ガスは空気過剰率が0以上1未満である。また特に本実施形態では空気量が燃焼可能範囲未満のガスが使用されている。
まず、低濃度ガスは低濃度ガス供給部8に供給され、内周壁4に複数設けられた炎孔5より接線方向に噴出して旋回流を発生し、内周壁4の接線方向に旋回火炎を形成する。一方高濃度ガスは高濃度ガス流入口7より旋回噴射部9の内部に供給された後、旋回噴射部片10により構成される複数の噴射口11より噴出される。このとき高濃度ガスは旋回しながら噴射口11より噴出されるため、旋回噴射部9近傍においては高濃度ガスの燃焼室12内部への噴出に起因する旋回流が発生する。
【0019】
本実施形態の旋回燃焼器1においては低濃度ガスの供給が低速でも炎孔5における旋回火炎の保炎が可能である。そのため低濃度ガスの供給に伴う燃焼場の乱れが最小限に抑制され、低濃度ガスの燃焼に伴う燃焼騒音の低減も可能である。炎孔5において燃焼された低濃度ガスは高温のCO2 やH2 Oから構成される既燃ガスを燃焼室12内に発生する。
【0020】
高濃度ガスは既燃ガスより温度が低いため、密度が既燃ガスよりも高い。さらに高濃度ガスは旋回噴射部9に複数設けられた噴射口11より燃焼室12内に旋回しながら噴出されるため、密度の大きな高濃度ガスは燃焼室12の中心部から外周方向に向け旋回しながら拡散し、燃焼室12内に充満した既燃ガスとの混合が促進され燃焼される。ここで旋回噴射部9に設けられた噴射口11を適当に分布させると高濃度ガスと既燃ガスの混合がさらに改善される。また、燃焼量増加により高濃度ガスの供給量が増加するとさらに旋回力が増加し既燃ガスとの混合がさらに促進される。
【0021】
低濃度ガスの燃焼により生成した既燃ガスには酸素が残留している。そのため既燃ガス中の残留酸素量に応じて高濃度ガスの濃度及び流量を制御することによって高濃度ガスを完全燃焼でき、未燃成分の発生を非常に少なくできる。すなわち本実施形態の旋回燃焼器1においては、低濃度ガスから発生した燃焼ガスに残留する酸素によって高濃度ガスが燃焼される。
【0022】
本実施形態の旋回燃焼器1は既燃ガス中に高濃度ガスを噴射しない従来の場合に比べ燃焼室12の単位時間・空間当りの発熱量を増加することができ、従来の同熱発生量の燃焼器よりも小型化が可能である。また、低濃度ガスの供給が低速であっても各炎孔5において旋回火炎が形成できるため燃焼に伴い発生する騒音の低減が可能である。
【0023】
また実験によると、本実施形態の旋回燃焼器1は、NOx の発生量が少ないものであることが分かった。この理由は、本実施形態の旋回燃焼器1においては、高濃度ガスは、旋回流の中で拡散効果によって残留酸素以外の既燃ガス成分CO2 ,H2 Oなどとも混合しながら燃焼するため、これらの既燃ガス成分の希釈効果によりその燃焼反応によるNOx の生成が阻害されるからであると予想される。つまり既燃ガスのEGR効果によってNOx の生成量を顕著に減少することができたと考えられる。
また本実施形態の旋回燃焼器では、一旦旋回火炎において生成されたNOx が高濃度ガスの燃焼によって形成された還元雰囲気において窒素と酸素に還元されるのではないかと考えられる。
【0024】
また本実施形態では、高濃度ガスは空気混入率が低く、混合された空気量は燃焼可能範囲未満である。このように高濃度ガスの濃度を高く設定した理由は、逆火を防止するためである。すなわち燃焼室12の底部付近は高温の既燃ガスにさらされて加熱されるので、高濃度ガスの流量が小さい時に、上流への逆火が発生しやすい。そこで本実施形態では、高濃度ガスの空気過剰率を通常条件で燃焼可能範囲の空気過剰率よりも小さくすることによって、その逆火を防ぐこととした。
【0025】
また本実施形態に特有の構成として、旋回流の中心であって負圧領域となるであろう部位に旋回噴射部9が設けられている。そのため本実施形態の旋回燃焼器1では、旋回流の中心の負圧領域が消失し、または減少する。従って燃焼室12内の中心部分の圧力低下が緩和され、半径方向の圧力勾配は平坦に近づく。そのため火炎の逆流が無くなり、安定して燃焼する。
【0026】
また燃焼時においては、燃焼室12内の全体のガスは、下流に行くに従い、燃焼反応の進行と、それに伴う温度上昇のために体積流量が増大する。しかしながら、本実施形態の旋回燃焼器1では、燃焼室12の中心部に、下流に行くほど断面積が小さくなる略円錐形の旋回噴射部9が設けられているので、燃焼室12の空間から旋回噴射部9を除いたガスの流れる空間の半径方向の断面積は、下流に行くほど増大している。従って本実施形態の旋回燃焼器1では、ガスの体積増大が、ガス流路の拡大によって相殺され、燃焼室12内の全体のガスの線速度は、一定値に近づく。このため火炎面がさらに安定する。
【0027】
また旋回噴射部9は、火炎によって高温に晒されるが、本実施形態の旋回燃焼器1では、高濃度ガスは、旋回噴射部9の側面に沿って噴射されるので、高濃度ガスによって旋回噴射部9が冷却され、そのため旋回噴射部9の傷みは少ない。
【0028】
本実施形態においては内周壁4が切り起こされた炎孔5が複数設けられているが、これに代わり図2(a)に示すように本実施形態の旋回噴射部9と同様に円弧状の旋回内周壁片15が環状に複数重ねられて旋回内周壁14が設けられてもよい。この場合旋回内周壁片15の重なり部分に構成されるスリットにより旋回火炎孔16が構成され、この旋回火炎孔16より低濃度ガスが旋回を伴って燃焼室12内に供給され旋回火炎が発生する。また、旋回噴射部9は筆形あるいは略円錐形の占拠物で表面が前記実施例の内周壁4と同様に切り起こされた形状を有するものであってもよい。
【0029】
本実施形態においては低濃度ガスの旋回流により旋回火炎が形成されたが、図2(b)に示すように低濃度ガスを燃焼室12の中心方向に向かって噴射することで炎孔5において火炎を発生させ、当該火炎が高濃度ガスの旋回噴射により形成された旋回火炎に巻き込まれて旋回流を発生させる構造であってもよい。この場合、低濃度ガスが旋回流を起こす必要がないので、低濃度ガスの流速がかなり低くてもよくさらに燃焼騒音が低減できる。
【0030】
前記したように本実施形態においては旋回噴射部9は高濃度ガスが旋回する構造であればよい。また低濃度ガスによる旋回火炎を発生させるための内周壁の構造は図1(b),図2(a)いずれの構造であってもよい。また図2(b)のように低濃度ガスは燃焼室12の中心方向に向かって噴射して炎孔5において火炎を発生させてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
前記した第1実施形態の旋回燃焼器1は低濃度ガスを炎孔5において燃焼させると同時に、旋回噴射部9の噴射口11より燃焼室12に高濃度ガスを旋回させて噴出し密度差から生じた拡散効果を利用して高濃度ガスと既燃ガスを十分混合して追加燃焼させ未燃成分の発生を抑制するものであり、同一体積空間での熱発生率を増加させると同時に、低濃度ガスの供給を低速化することで燃焼により生じる騒音を低減させ、既燃ガスの希釈効果によってNOx 生成量を低減させることができた。
しかし、旋回噴射部9の中心部付近においては噴射口11から噴出された高濃度ガスの旋回力が弱く、既燃ガスと高濃度ガスの混合が不十分となり不完全燃焼が生じやすいという新たな問題が発生した。
そこで本発明の第2実施例は高濃度ガスと既燃ガスの混合を促進し、不完全燃焼を防止するための改良がなされたものである。
【0032】
図3は本発明の第2実施形態の旋回燃焼器の縦断面図である。
図3において20は本実施形態における旋回燃焼器である。旋回燃焼器20は前記実施形態の旋回燃焼器1とほぼ同様の構造を有するため、前記実施例と同一の部分には同一の番号を付し、詳細の説明については省略する。
【0033】
本実施形態においては旋回噴射部21が前記実施形態と大きく異なる。すなわち旋回噴射部21の外周は前記実施例と同様に円弧状の旋回噴射部片10が複数重ねられて構成されており、各旋回噴射部片10の時計方向先端と、隣接する旋回噴射部片10との間にスリット状の噴射口11が形成されている。旋回噴射部21の内部には外周壁2の平面断面と略同心の円筒状の空気流入管22が底板6を貫通して設けられる。旋回噴射部片10のガス下流側の一端は空気流入管のガス下流側の一端に接合されることで封止されており、底板6には高濃度ガス流入口7が設けられている。
【0034】
本実施形態の旋回燃焼器20においては前記実施例と同様に高濃度ガスは高濃度ガス流入口7より供給され噴射口11を通じて旋回しながら燃焼室12内に供給される。また、本実施例において設けられた空気流入管22から空気が燃焼室12内に供給される。
【0035】
前記実施例と同様に、高濃度ガスと低濃度ガスの既燃ガスの密度の差と、高濃度ガスが燃焼室12に供給される際に発生する旋回力により高濃度ガスと既燃ガスの混合が促進されるが、さらに旋回噴射部の中心部から空気を燃焼室12内部に供給することにより、高濃度ガスと既燃ガスの混合が比較的不完全な旋回噴射部の中心部近傍においても十分に混合がなされ前記実施例よりもさらに完全に燃焼がなされるようになった。
また、高濃度ガスは、旋回流の中で拡散効果によって残留酸素の以外の既燃ガス成分CO2 ,H2 Oなどとも混合しながら燃焼するため、これらの既燃ガス成分の希釈効果によりNOx の生成は少ない。また、空気の供給による燃焼室12内の温度低下によってもNOx の生成が抑制される。
【0036】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に低濃度ガスを燃焼室12の中心方向に向かって噴射することで炎孔5において火炎を発生させ、当該火炎が高濃度ガスの旋回噴射により形成された旋回火炎に巻き込まれて旋回流を発生させる構造であってもよい。この場合も低濃度ガスが旋回流を起こす必要がなく、低濃度ガスの流速がかなり低くてもよいためさらに燃焼騒音が低減できる。
【0037】
また本実施形態においても前記第1実施例と同様に、旋回噴射部21は高濃度ガスが旋回する構造であればよい。また低濃度ガスによる旋回火炎を発生させるための内周壁4の構造は図1(b),図2(a)いずれの構造であってもよい。また図2(b)のように低濃度ガスは燃焼室12の中心方向に向かって噴射して炎孔5において火炎を発生させてもよい。
【0038】
(第3実施形態)
本実施形態の説明においても、前記実施例と同一の構成部材については同一の番号を用い、重複する説明については省略する。
前記した第1実施形態および第2実施形態においては燃焼器1又は20内部に旋回噴射部9又は21を一基のみ内蔵していたが、この場合よりさらに大きな燃焼能力が要求される場合がある。これを解決する手段として、可能な限り旋回噴射部9又は21を大きくする手法が考えられる。しかし旋回噴射部をあまり大きくしすぎると燃焼室における燃焼に有効な空間が小さくなり、単位空間当りの燃焼量がかえって小さくなってしまうという弊害が生じる。
【0039】
そこで、本実施例の旋回燃焼器30は、矩形燃焼室31内部に複数の旋回噴射部34を設置した構造をしている。図4は本実施形態の旋回燃焼器30の平面断面図である。旋回燃焼器30の矩形外周壁32および矩形内周壁33はいずれも矩形であり、矩形内周壁33は前記した切り起こし形状の炎孔5が設けられているか、または前記旋回内周壁片15によって形成された旋回内周壁14と同様の構造である。そして本実施例においては矩形内周壁33は前記した切り起こし形状の炎孔5が側周面に複数設けられている。燃焼室31内部に旋回噴射部34を3基一列に配置した構造である。なお、旋回噴射部34は前記第1実施形態あるいは第2実施形態のいずれの旋回燃焼器1,20に設けられる旋回噴射部9,21でもよく、ガス下流に向けて平面断面積が小さくなるように配置される。
【0040】
本実施例においては、低濃度ガスは炎孔5から噴出され、矩形燃焼室31内において旋回火炎が発生する。旋回噴射部34が本実施例においては複数矩形燃焼室31内に設置されるが、各旋回噴射部34の総体積は複数の噴射口が設けられる各旋回噴射部34の総外表面積に対して小さい。すなわち第1実施形態あるいは第2実施形態の旋回噴射部9,21を拡大した旋回燃焼器1,20よりも、旋回噴射部34を複数矩形燃焼室31の内部に配置した本実施例の旋回燃焼器30のほうが各旋回噴射部34の総外表面積に対して各旋回噴射部34の総体積が小さいため矩形燃焼室31の燃焼に用いられる空間が大きく、いずれの場合にでも単位空間当りの燃焼量が大きくなる。また、各旋回噴射部34a,34b,34cより供給される高濃度ガスと既燃ガスが混合し燃焼するが、その際各旋回噴射部34a,34b,34cの近傍において発生する旋回火炎がお互い干渉しあうため旋回火炎の勢いがさらに向上し、さらに単位空間当りの燃焼量が増大する。
【0041】
続いて前記した矩形の旋回燃焼器30を例にあげ、旋回燃焼器30へのガスの供給手段について説明する。図5は図4の旋回燃焼器30のA−A断面図である。矩形外周壁32と矩形内周壁33は共に直方体であり、矩形外周壁32の内部に矩形内周壁33が配されている。また,両者の先端側はフランジ44によって閉塞されており、内部に低濃度ガス供給部8が形成されている。また、低濃度ガス供給部8のガス上流側には低濃度ガス混合室42が形成されている。矩形燃焼室31内部には旋回噴射部34a,34b,34cがガス下流に向けて平面断面積が小さくなるように3基配置されている。旋回噴射部34a,34b,34cの下部にはそれぞれ矩形外周壁32を貫通する形で円筒形の高濃度ガス混合室39a,39b,39cが設けられている。矩形内周壁33の底板6には旋回噴射部34の平面断面と同心の高濃度ガス流入口7a,7b,7cが設けられており、これらを介して高濃度ガス混合室39a,39b,39cから旋回噴射部34a,34b,34cに高濃度ガスが流入する。
【0042】
旋回燃焼器30の外部には空気が供給される空気供給管40と燃料ガス供給管41が設けられている。空気供給管40は分岐されそれぞれ高濃度ガス混合室39a,39b,39cおよび低濃度ガス混合室42に接続されている。一方燃料ガス供給管41は分岐され空気供給管40の高濃度ガス混合室39および低濃度ガス混合室42より上流側に接続されている。なお、燃料ガス供給管41の分岐点と空気供給管40との接続部の間には弁43a,43b,43c,43dが設けられており、いずれの弁も独立しているため各々を同時あるいは単独で制御し燃料ガスの供給量を調整可能である。
【0043】
空気は空気供給管40から導入され、途中で分岐された空気供給管40の分岐管を通じ高濃度ガス混合室39a,39b,39cおよび低濃度ガス混合室42に供給される。一方燃料ガスは燃料ガス供給管41から導入され、途中で分岐された燃料ガス供給管41の分岐管を通じ空気供給管40の分岐管内に供給される。なお、燃料ガス供給管41の分岐管の中途にはそれぞれ独立制御可能な弁43a,43b,43cおよび43dが設けられており、これらの弁の開度の調節により高濃度ガス混合室39a,39b,39cあるいは低濃度ガス混合室42に供給される高濃度ガスあるいは低濃度ガスの濃度が調整される。また総空気供給量あるいは総燃料ガス供給量は図5に図示しない送風機の回転速度あるいは弁の開度を調整することにより調整可能である。高濃度ガスあるいは低濃度ガスは高濃度ガス混合室39a,39b,39cあるいは低濃度ガス混合室42内部で混合された後旋回噴射部34a,34b,34cあるいは低濃度ガス供給部8に供給される。
【0044】
前記の手段により燃料ガスの総供給量を調整すると旋回燃焼器の総燃焼量の制御を多様化できる。また、炎孔5における低濃度ガスの総燃焼量を一定にして弁43a,43b,43cの開度を同時あるいは単独で調整すると、旋回燃焼器30の総燃焼量を制御可能である。特に弁43a,43b,43cのいずれかを閉じる場合はその弁に対応する旋回噴射部34には空気のみが供給されるため当該旋回噴射部34周辺の既燃ガスには空気のみが供給され雰囲気温度が低下し、当該旋回噴射部34近傍においてはNOx の生成反応が停止する。さらに、旋回噴射部34に供給される空気は低温であるため旋回噴射部34は冷却され高温雰囲気から保護される。弁43a,43b,43cのすべてを閉じ、低濃度ガス供給部に供給される低濃度ガスの量を必要最小限にすると、旋回燃焼器30の総燃焼量は非常に小さくできる。よって、総燃焼量の制御可能範囲すなわち燃焼量絞り比(T.D.R)が広くできる。
【0045】
図6は旋回噴射部を内部に複数有する旋回燃焼器のさらに別の実施例である。 図6の旋回燃焼器35は外周壁36と内周壁37の平面断面が「8」字型であり、「8」字型の略円形部分のそれぞれの中心に旋回噴射部34が配置された構造である。
【0046】
上記の旋回燃焼器35のような平面断面の形状であっても、旋回燃焼器30と同様に各旋回噴射部34の総外表面積に対して各旋回噴射部34の総体積が小さいため燃焼室38の燃焼に用いられる空間が大きく、単位空間当りの燃焼量が大きくなる。また各旋回噴射部34において発生する旋回火炎がお互い干渉しあうため旋回火炎の勢いがさらに向上し、さらに単位空間当りの燃焼量が増大する。さらに、前記実施例におけるのと同様のガスの供給手段を用いれば旋回燃焼器35の総燃焼量を制御可能であり、総燃焼量の制御可能範囲すなわち燃焼量絞り比(T.D.R)が広範となる。
【0047】
上記の実施形態においては旋回燃焼器の横断面が矩形あるいは「8」字型であるが、要求に応じていかなる横断面であっても問題はない。また、旋回噴射部34は旋回燃焼器35の燃焼室38内において、ガス下流に向けて平面断面積が小さくなるように配置されればいかなる配置であっても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の旋回燃焼器は従来のものに比べてより高い空間発熱率が得られる。また、本発明の旋回燃焼器は従来に比べNOx の発生量および燃焼に伴い発生する燃焼騒音が低減される。
【0049】
また、請求項1に記載の旋回燃焼器は複数の旋回噴射部を内蔵し、旋回噴射部の総外表面積に対して旋回噴射部の総体積が小さいため単位空間当りの燃焼量が大きくなる。また、旋回噴射部はいかなる配置で何基配置してもよいため、任意の形状、燃焼能力の旋回燃焼器が作成可能である。また、空気および燃焼ガスの各旋回噴射部への供給量を制御することにより燃焼量絞り比(T.D.R)を広範に設定できる。
【0050】
請求項1記載の旋回燃焼器は、低濃度ガスを燃焼室の中心方向に向かって噴射され火炎を発生すればよく、低濃度ガスは旋回する必要がないので流速が低減できるため燃焼により発生する騒音が低減できる。
【0051】
請求項2に記載の旋回燃焼器では低濃度ガスの燃焼により発生した既燃ガスと高濃度ガスとが混合することで、供給される燃料ガスが完全燃焼され、NOx の発生が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の旋回燃焼器を示す概念図であり、(a)はその縦断面図、(b)はその平面断面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態の旋回燃焼器の変形例の概念図であり、(a)は低濃度ガスが旋回噴出される場合の平面断面図、(b)は低濃度ガスが旋回しない場合の平面断面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態の旋回燃焼器を示す概念図である。
【図4】 本発明の第3実施形態の旋回燃焼器を示す平面断面図である。
【図5】 図4のA−A断面図である。
【図6】 本発明の第3実施形態の旋回燃焼器の変形例の概念図である。
【図7】 従来技術の旋回燃焼器の概念図である。
【符号の説明】
1,20,30,35 旋回燃焼器
2,36 外周壁
3、44 フランジ
4,37 内周壁
5 炎孔
6 底板
7 高濃度ガス流入口
8 低濃度ガス流入口
9,21,34 旋回噴射部
10 旋回噴射部片
11 噴射口
12,38 燃焼室
14 旋回内周壁
15 旋回内周壁片
22 空気流入口
31 矩形燃焼室
32 矩形外周壁
33 矩形内周壁
39 高濃度ガス混合室
40 空気供給管
41 燃料ガス供給管
42 低濃度ガス混合室
43 弁
Claims (2)
- 一端が開放された燃焼室を有し、該燃焼室内に空気と燃料との混合ガスを噴射する旋回燃焼器において、燃焼室の内壁を離れた位置に、前記混合ガスよりも燃料濃度の高い高濃度ガスを旋回噴射する複数の旋回噴射部が設けられ、前記混合ガスは、燃焼室の中心方向に向かって噴射され、且つ、高濃度ガスの旋回噴射により形成された旋回火炎に巻き込まれて旋回流を発生させることを特徴とする旋回燃焼器。
- 高濃度ガスは、空気過剰率が0以上1未満であることを特徴とする請求項1に記載の旋回燃焼器。
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