JP3686874B2 - フッ素樹脂の表面処理方法および弾性複合材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂の表面処理方法および弾性複合材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素樹脂と弾性体層とを一体化した弾性複合材の一種として、芯金入りゴムローラの外周にフッ素樹脂スリーブを被覆したローラが、電子複写機やLBPの定着部における加熱ローラおよび加圧ローラなどの定着ローラとしてトナーに対する離型性を良くすることができるなどの理由により多用されている。このようなローラは、最近では、トナーなどによるローラ表面の汚れを回避するためや静電防止などを目的として感光部の現像ローラや帯電ローラや転写ローラ、紙などの記録体搬送用の搬送ローラなどにも使用が広がりつつある。
【0003】
この種のローラの製造方法としては、以下の2種類のものが主として用いられている。
【0004】
第1のローラの製造方法は、例えば特公昭50−7097号公報あるいは特公昭51−27276号公報に開示されているように、円筒金型の内周面の内側に装填した円筒金型の内径より外径の小さいフッ素樹脂スリーブの両端を、芯金を保持する側型に固定し、この状態で芯金とフッ素樹脂スリーブ間の環状空間内に弾性体層を形成するための未加硫のゴムであるゴム材料を高圧で注入充填し、その充填圧力でフッ素樹脂スリーブを拡張させながら円筒金型の内周面に密着させるとともに、加熱によってゴム材料を加硫させて弾性体層を形成することで、芯金、弾性体層およびフッ素樹脂スリーブの三者を一体化させるという方法(以下、一体成型法と記す)である。この一体成型法は、主として付加型液状シリコーンゴムや過酸化物で加硫する熱加硫型(ミラブル型)シリコーンゴムなどの粘度の低いゴムなどを弾性体素材とする場合に適用されている製造方法である。
【0005】
第2のローラの製造方法は、例えば特開平6−266257号公報に開示されているように、弾性体層を被覆した芯金を付加型シリコーンゴム等の接着剤で被覆し、当該接着剤が被覆された芯金をフッ素樹脂スリーブ中に挿入し、その後加熱することによりフッ素樹脂スリーブを弾性体層が被覆された芯金に接着するという方法(以下、後被せ法と記す)である。この後被せ法は、主として過酸化物で加硫するミラブル型シリコーンゴムやスポンジゴムを始め各種のゴムを含む弾性体素材を弾性体層とする場合に適用されている製造方法である。また、後被せ法では、熱収縮性を有したフッ素樹脂スリーブが一般的に使用されているが、スポンジゴムなどゴム硬度が低く、軟らかい素材を弾性体層とする場合では必ずしも熱収縮性を有することを必要としない。
【0006】
これらローラの製造方法において一体成型法も後被せ法も、フッ素樹脂スリーブと弾性体層との安定した接着を得るためには、フッ素樹脂スリーブの内面をぬれやすく改質するための表面処理を施す必要がある。
【0007】
すなわち、フッ素樹脂スリーブを含むフッ素樹脂は、その分子構造上、特異な、発水性、発油性、非粘着性を有しており、そのままでは弾性体層と接着させることは不可能である。
【0008】
このような、フッ素樹脂の表面処理方法としては、金属ナトリウムとナフタレンをテトラヒドロフランなどの溶剤に溶解させた処理液による処理法(以下SNT法と記す)、液体アンモニア中に金属ナトリウムを溶解させた処理液による処理法(以下SA法と記す)、リチウムのようなアルカリ金属の水銀アマルガムをフッ素樹脂に接触させるアルカリ金属アマルガム法、フッ素樹脂を(C4 H9 )N+BF4 -のジメチルホルムアミド溶液中で−2V以下の電位の白金線に接触させる電解還元法、金属蒸着法、スパッタエッチング、コロナ処理、プラズマ処理などもあるが、工業的に主として採用されているフッ素樹脂の表面処理方法としては前記SNT法もしくはSA法である。
【0009】
そこで、前記フッ素樹脂スリーブの内面の表面処理方法としては、特許公報第2756918号にて開示されているように、SNT法もしくはSA法が一般に用いられている。
【0010】
しかしながら、従来のフッ素樹脂スリーブの内面の表面処理方法、特に、SNT法で処理したフッ素樹脂スリーブを使用した定着ローラでは、フッ素樹脂スリーブと弾性体層であるシリコーンゴム層間ではく離が発生するために、ローラとしての寿命が短いという問題点を有していた。
【0011】
また、SA法で処理したフッ素樹脂スリーブを使用した定着ローラでは、耐久性は問題ないものの、シリコーンゴムの種類や導電性カーボンを含有させたフッ素樹脂スリーブに対して接着に選択性があり、成型時において全く接着しない場合があり、ローラの材料構成上制約があるという問題点を有していた。すなわち、フッ素樹脂に導電性を付与できないという問題点があった。
【0012】
さらには、SNT法やSA法では、処理液に金属ナトリウムや有機溶剤を使用するために、廃液処理に多大な工程が必要であり、かつ環境への負荷が大きいという問題点を有していた。
【0013】
なお、このような問題点は、ローラだけでなく、フッ素樹脂と弾性体層とを一体化した弾性複合材であるピストンリング、バルブパッキン、フリクションダンパー、弾性軸受などの摺動部位における弾性摺動材を始め、フッ素樹脂を接着した各種の製品においても生じる。
【0014】
これらのような問題点に対処するため、フッ素樹脂の表面をエキシマレーザでエッチング処理するフッ素樹脂の表面処理が提案されており、このフッ素樹脂の表面処理を用いた弾性複合材としての定着ローラが特開平8−238687号にて開示されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フッ素樹脂の表面をエキシマレーザでエッチング処理するフッ素樹脂の表面処理を用いた定着ローラにおいては、フッ素樹脂スリーブのエキシマレーザによる処理面と弾性体層との接着選択性については問題ないものの、レーザエネルギー密度がレーザ照射のショット数(パルス数)に依存するために、ショット数を多くしないと所定の接着強度が得られなく、かつ照射面積が非常に小さいために、定着ローラの離型層として用いるフッ素樹脂スリーブ側もしくはレーザ側を移動させて内面の表面処理を行う必要があり、このためフッ素樹脂スリーブの内面を均一にエッチング処理することは困難である。そのためフッ素樹脂スリーブの処理面は、加工残渣が堆積したり、表面が斑模様や縞模様になりやすく、均一な処理面が得難いという問題点があった。また、このような問題点は、フッ素樹脂スリーブだけでなく、処理面積が極微小なものを除くシート状、フィルム状、所定の形状などに形成したフッ素樹脂においても生じている。
【0016】
そこで、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に得ることのできるフッ素樹脂の表面処理方法および弾性複合材の製造方法が求められている。
【0017】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に得ることのできるフッ素樹脂の表面処理方法および弾性複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂スリーブの内面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマ光を照射することにより、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、請求項1に記載の本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法の特徴は、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマランプを光源とするエキシマ光を照射する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に形成できる。さらに、従来のSA法によっては処理面を接着することが困難であった溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂に対しても、本発明によれば弾性体層との接着性および耐久性に優れた処理面を容易に形成できる。
【0020】
請求項2に記載の本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法の特徴は、請求項1において、反応雰囲気ガスがアンモニアガスである点にある。そして、このような構成を採用したことにより、エキシマ光照射によるアンモニアガスの分解物である、水素原子によりフッ素樹脂の表面層のフッ素原子が選択的に引き抜かれる。フッ素原子が引き抜かれた部位の炭素原子は、高い化学反応性を有しているので、アンモニアガスの分解物である水素原子またはアミノラジカルと反応し、親水性表面を形成できる。
【0021】
請求項3に記載の本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法の特徴は、請求項1または請求項2において、アンモニアガスの圧力が0.133〜26.6kPaである点にある。そして、このような構成を採用したことにより、アンモニアガスの圧力範囲が広いので、フッ素樹脂の表面処理を容易かつ安定して行うことができるとともに、フッ素樹脂の表面処理をより効率よくできる。
【0022】
請求項4に記載の本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、フッ素樹脂が溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブであり、このフッ素樹脂スリーブの内面に、棒状に形成されているエキシマランプを装着し、その後フッ素樹脂スリーブの内面とエキシマランプとの隙間に反応雰囲気ガスを供給する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、フッ素樹脂スリーブの片面処理である内面の表面処理を容易かつ効率的に行うことができる。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る弾性複合材の製造方法の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブの内面に処理面を形成した後、この処理面に接着処理を施し、その後接着処理を施したフッ素樹脂スリーブを予め接着剤を塗布した芯金の外周に装着し、その後前記芯金と前記フッ素樹脂スリーブの間隙に未硬化の弾性体素材を充填し、その後前記未硬化の弾性体素材を硬化させてローラ状に一体化する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着信頼性に優れたローラ状の弾性複合材を容易かつ確実に製造できる。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂スリーブと弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できる。また、
【0024】
請求項6に記載の本発明に係る弾性複合材の製造方法の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブの内面に処理面を形成した後、この処理面を形成したフッ素樹脂スリーブに対して予め外周に被覆した弾性体層の外周に接着剤を塗布した芯金を挿入した後、接着剤層を硬化させてローラ状に一体化する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、そして、このような構成を採用したことにより、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着信頼性に優れたローラ状の弾性複合材を容易かつ確実に製造できる。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂スリーブと弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できる。
【0025】
請求項7に記載の本発明に係る弾性複合材の製造方法の特徴は、請求項5または請求項6において、フッ素樹脂の素材がPFAである点にある。そして、このような構成を採用したことにより、定着ローラなどのローラとした場合におけるフッ素樹脂スリーブからなる離型層のトナーに対する十分な離型性を確保できる。
【0026】
請求項8に記載の本発明に係る弾性複合材の製造方法の特徴は、請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記フッ素樹脂スリーブの厚さが0.15mm以下である点にある。そして、このような構成を採用したことにより、定着ローラなどのローラとした場合における消費電力の削減やウォームアップタイムを短縮できる。さらに、ローラとした場合におけるフッ素樹脂スリーブの接触をソフトにできる。
【0027】
請求項9に記載の本発明に係る弾性複合材の製造方法の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に処理面を形成した後、この処理面に接着処理を施し、その後接着処理を施したフッ素樹脂に対して弾性体層を一体化する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂と弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂と弾性体層との接着信頼性に優れた弾性複合材を容易かつ確実に製造できる。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂と弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1について説明する。
【0030】
図1は、本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法を適用した弾性複合材の製造方法によって製造された弾性複合材としての加圧ローラの実施形態の要部を示す断面図である。
【0031】
本実施形態の弾性複合材は、電子複写機の定着部における加圧ローラを例示している。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の弾性複合材としての加圧ローラ1は、金属により形成された芯金2の外周に断面円環状に形成されたシリコーンゴムからなる弾性体層3が被覆されており、さらにこの弾性体層3の外周にPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体)からなるフッ素樹脂スリーブ(以下、PFAスリーブと記す)4が被覆されてローラ状に形成されている。この加圧ローラ1は、外径寸法が30mm程度、弾性体層3の厚さが5mm程度、弾性体層3の長さが220mm程度、PFAスリーブ4の厚さが50μm程度に形成されている。なお、PFAスリーブ4は、弾性体層3に被覆する前の自由状態における内径寸法が29mm程度に形成されたものが用いられている。
【0033】
本実施形態の弾性体層3を構成するシリコーンゴムの素材としては、ビニル基含有のポリオルガノシロキサンとハイドロジエンポリシロキサンからなる付加型液状シリコーンゴム(硬さ:JIS A 10度)もしくは過酸化物加硫型シリコーンゴム(硬さ:JIS A 25度)が使用されている。
【0034】
本実施形態における弾性体層3には、定着ローラなどの使用目的、設計目的等に応じて、充填剤、増量充填剤、着色剤、導電性物質、耐熱剤、顔料等の種々の添加剤を添加することができる。
【0035】
例えば、弾性体層3に使用されるシリコーンゴムに対する充填材の配合処方は特に制限されるものではないが、通常はベースのガム100重量部に対して補強性充填材および増量充填剤が10〜300重量部程度添加される。補強性充填材としてはカーボンブラックおよび湿式シリカや乾式シリカ(煙霧状シリカ)が一般的である。ここでいう湿式シリカとは、二酸化けい素(SiO2 )からなる補強性シリカのことで、製造方法としては、けい酸ナトリウムを直接硫酸で分解する直接法や、けい酸ナトリウムを塩類と反応させてけい酸塩を生成させ、次に硫酸または炭酸ガスで分解する間接法など種々の方法がある。代表的な湿式シリカとしては、Nipsil VN3(日本シリカ工業株式会社製商品名)、カープレックスCS−5(シオノギ製薬株式会社製商品名)、スターシルS(神島化学工業株式会社製商品名)、トクシールUS(株式会社トクヤマ製商品名)、シルトンR−2(水沢化学工業株式会社製商品名)、Hisil 223(PPG社(米国)製商品名)、Ultrasil VN3(デグッザ社(ドイツ)製商品名)、Vulkasil S(バイエル社(ドイツ)製商品名)などが例示され、平均粒径が30μm以下、好ましくは5μm以下のグレードが使用される。乾式シリカは、ハロゲン化けい素の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOの空気酸化法、有機けい素化合物の熱分解法等により製造される二酸化けい素からなる補強性シリカで、アエロジル200やアエロジルR972(日本アエロジル株式会社製商品名)、Cab−O−Sil MS−5(キャボット社(米国)製商品名)、レオロシールQS102(株式会社トクヤマ製商品名)が例示される。本発明においては必要に応じて湿式シリカと乾式シリカとを適時併用して使用してもよい。さらにシリカ表面の活性による二次結合の防止を目的として、潤滑剤(ウエッタ)を添加してもよく、潤滑剤としては、シリコーンレジン類、アルコキシシランおよびシロキサン類、ヒドロキシシランおよびシロキサン類、シラザン類、有機酸エステル類、多価アルコール類などが例示される。
【0036】
また、増量充填剤は、ゴムの機械特性、すなわち物理強度、ゴム硬度、圧縮永久歪みなど弾性体層3として機能上欠くべからざる特性を保持するために必要な成分であり、炭酸カルシウム、石英粉、けいそう土、けい酸ジルコニウム、クレー(けい酸アルミニウム)、タルク(含水けい酸マグネシウム)、ウォラストナイト(メタけい酸カルシウム)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化クロム、ベンガラ(酸化鉄)、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、二硫化モリブデン、マイカ(雲母粉)、グラファイトなどが例示される。
【0037】
また、弾性体層3に導電性を付与させるために、充填剤として各種の導電性付与剤を使用して体積固有抵抗を1013Ω・cm以下にしてもよく、これら導電性付与剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラックのごとき導電性カーボンブラック、グラファイト、銀、銅、ニッケルなどの金属粉、導電性亜鉛華、導電性炭酸カルシウム、カーボン繊維などが例示されるがカーボンブラックが一般的である。
【0038】
また、酸化セリウムのような耐熱剤をシリコーンゴムに添加してもよい。
【0039】
通常、シリコーンゴムからなる加圧ローラ1などの定着ローラは、ベンガラ色に着色して供給されることが多く、この場合には着色剤としてベンガラを使用するのが一般的である。ベンガラの種類としては、SRIS1108(日本ゴム協会標準規格)に規定されたゴム用ベンガラが適用でき、加工時のゴム内における配向性に留意する必要がある場合には、バイフェロックス130M(バイエル社(ドイツ)製商品名)のような平均粒径が0.3μm以下の球状のグレードをシリコーンゴムに対して0.2〜2重量%程度添加させればよい。
【0040】
なお、本発明の弾性複合材を、弾性摺動材として用いる場合の弾性体層の弾性素材としては、前記シリコーンゴム、EPDM、NBR、ウレタンゴム、ヒドリンゴムおよびそれらの混合物、あるいは熱可塑性エラストマなどのゴム弾性を呈する各種の弾性体素材から使用目的、設計目的などに応じて選択使用される。
【0041】
本実施形態における芯金2と弾性体層3とは、例えばDY−39−051A/B(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)やプライマーNo.101A/B(信越化学工業株式会社製商品名)のようなシリコーゴム系の接着剤を使用することにより強固に接着される。このとき芯金2は、予めサンドブラストなどで表面を活性化した後、メチレンクロライドなどで脱脂し、その後接着剤が塗布され、必要に応じて130℃で30分程度、焼成して使用される。なお、接着剤としては、芯金2および弾性体層3のそれぞれの素材の組み合わせに応じたものを、従来公知のものから選択使用される。
【0042】
ここで、本実施形態のフッ素樹脂であるPFAスリーブ4の表面処理方法について説明する。
【0043】
前記PFAスリーブ4の内面には、本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法、すなわち、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマ光を照射する表面処理方法を使用した処理面が形成されている。
【0044】
具体的には、PFAスリーブ4の内面に、石英ガラスにより棒状に形成されているエキシマランプを装着し、その後フッ素樹脂スリーブ4の内面とエキシマランプとの隙間に反応雰囲気ガスとしてのアンモニアガスを供給するフッ素樹脂の表面処理方法が用いられている。このため、エキシマランプに装着されたフッ素樹脂スリーブ4は、真空チャンバに保持された後、フッ素樹脂スリーブ4の内面とエキシマランプとの隙間にアンモニアガスが圧力0.133〜26.6kPaの範囲となるように供給され、その後、エキシマランプからエキシマ光がフッ素樹脂スリーブ4の内面に照射されてフッ素樹脂スリーブ4の内面に図示しない処理面が形成されている。
【0045】
フッ素樹脂の一種であるPTFE(テトラフルオロエチレンの重合体)の表面をアンモニアガスの存在下でエキシマ光で処理して改質(表面処理)する技術は、Applied Physics Letters Volume 68 Number19 p2648(6 May 1996)にてJ.Heitz ,新納,矢部らにより開示されている。エキシマ光の光源であるエキシマランプは無声放電を利用するもので、エキシマランプに用いられる媒質は主に希ガスやハロゲンであり、Ar2 エキシマランプ(波長:126nm)、Kr2 エキシマランプ(波長:146nm)、Xe2 エキシマランプ(波長:172nm)、KrClエキシマランプ(波長:222nm)、XeClエキシマランプ(波長:308nm)などがある。その中でも特にキセノンを採用したXe2 エキシマランプ(波長:172nm)が主流であり、放射照度は7〜40mW/cm2 程度である。従って、本発明でいうエキシマ光はエキシマランプを光源とするもので、エキシマレーザは除外される。なお、波長200nm以下では大気中の酸素分子が光を吸収するために、この波長領域での研究には真空雰囲気が必要であることに起因して、波長200nm以下のエキシマ光は真空紫外エキシマ光とも呼ばれる。
【0046】
本発明における反応雰囲気ガスとしては、アンモニアガスを始め、ヒドラジン、メチルアミンなどのアンモニア誘導体ならびに有機アミノ誘導体が例示されるが、エキシマ光照射による分解反応の量子収率の高さから、アンモニアガスが好ましい。
【0047】
本発明におけるフッ素樹脂の素材は溶融押出の可能なフッ素樹脂に限定され、PTFEは除外する。なぜならば、本発明の弾性複合材を、定着部における加圧ローラ1などのトナーに対する離型性が必要とされる各種のローラの弾性複合材として用いる場合には、厚さ0.15mm以下のスリーブを形成することが弾性を確保するために必要とされるが、PTFEは厚さ0.15mm以下のスリーブを形成することが非常に困難であるからである。
【0048】
溶融押出の可能なフッ素樹脂としては前記PFAを始め、EPA(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの三元共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)、THV(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフロライドの三元共重合体)などが例示され、単独使用およびそれらの混合による併用使用により、スリーブ、シート、フィルムが溶融押出しにより形成される。なお、シートを形成する場合には、射出形成などの従来公知の方法で形成されるものであってもよい。
【0049】
本発明において、溶融押出の可能なフッ素樹脂は特に限定されるものではないが、電子複写機の定着ローラの離型層に用いる場合においては、耐熱性や耐久性の観点からPFAの使用が好ましい。
【0050】
PFAやEPAに使用されているパーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロイソプロピルビニルエーテルなどが例示されるが、パーフルオロイソプロピルビニルエーテルが一般的である。さらに特開平4−153027号にて開示されている末端基にCF3 を有するPFAを使用してもよい。
【0051】
本発明において、フッ素樹脂には、必要に応じて導電性カーボンブラックなどの導電性付与剤を添加して、体積固有抵抗が1013Ω・cm以下の導電性のフッ素樹脂とすることができる。これにより、本発明の弾性複合材としての加圧ローラ1および加熱ローラなどの定着ローラ、現像ローラ、搬送ローラなどのローラの離型層となるPFAスリーブ4に導電性を容易に付与できる。
【0052】
つぎに、本実施形態の加圧ローラ1の製造方法について説明する。
【0053】
本実施形態の加圧ローラ1は、以下の2種類の製造方法により製造されている。
【0054】
第1の製造方法は、前述した一体成型法を用いたものであり、PFAスリーブ4の内面に前述したフッ素樹脂の表面処理方法、すなわち、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマ光を照射するフッ素樹脂の表面処理方法を施して処理面を形成した後、この処理面に接着処理を施し、その後接着処理を施したPFAスリーブ4を予め接着剤を塗布した芯金2の外周に装着し、その後前記芯金2と前記PFAスリーブ4の間隙に弾性体素材としての未硬化の付加型液状シリコーンゴムを充填し、その後前記未硬化の付加型液状シリコーンゴムを硬化させてローラ状に一体化するものである。
【0055】
具体的には、PFAスリーブ4をエキシマランプとしてのUER20−172(波長172nm:ウシオ電機株式会社製商品名)の外側に装着し、真空チャンバーの中に入れ、アンモニアガス(日本酸素株式会社製)の圧力が所定の値になるようにピラニーゲージで調整しながら封入しつつ所定時間エキシマランプをPFAスリーブ4の内面に照射して、PFAスリーブ4の内面の表面処理を実施して処理面を形成した。このとき放射照度は20mW/cm2 であった。次にPFAスリーブ4をチャンバーから取り出した後、内側の処理面に前述した接着剤を塗布して風乾し、予め接着剤を塗布した芯金2の外側に装着して金型に保持し、芯金2とPFAスリーブ4の間隙から付加型液状シリコーンゴムを注入した後、加熱して付加型シリコーンゴムを加硫させて弾性体層3を形成すると同時に、芯金2、弾性体層3およびPFAスリーブ4の三者の相互間を接着して一体化するという一体成型法により成型品を得、その後成型品を金型から脱型した後、200℃で4時間の二次加硫を施し完成品(加圧ローラ1)を得た。
【0056】
この一体成型法における弾性体層3とPFAスリーブ4とを接着させる接着剤としては、ケムロック607(ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド製商品名)のようなシリコーン系プライマーを用い、これにより強固に接着させた。
【0057】
また、一体成型法において使用する金型は、ハードクロムメッキなどを施して表面を不活性にすることが肝要で、モールドスパットMR−K681(旭硝子株式会社製商品名)の如き離型剤とともに使用に供される。
【0058】
第2の製造方法は、前述した後被せ法を用いたものであり、PFAスリーブ4の内面に前述したフッ素樹脂の表面処理方法、すなわち、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマ光を照射するフッ素樹脂の表面処理方法を施して処理面を形成した後、この処理面を形成したPFAスリーブ4に対して予め外周に被覆した弾性体層3の外周に図示しない接着剤を塗布した芯金2を挿入した後、接着剤層を硬化させてローラ状に一体化するものである。
【0059】
具体的には、PFAスリーブ4の内面に対して、前記第1の製造方法と同様にして、処理面を形成した。次にPFAスリーブ4を真空チャンバーから取り出した後、予め外周に被覆した過酸化物加硫型シリコーンゴムからなる弾性体層3の外周に接着剤を塗布して接着剤層を形成した芯金2を挿入した後、接着剤層を硬化させてローラ状に一体化するという後被せ法により成型品を得、その後成型品に200℃で4時間の二次加硫を施し完成品(加圧ローラ1)を得た。
【0060】
この後被せ法における弾性体層3とPFAスリーブ4とを接着させる接着剤としては、付加型シリコーンゴムなどの接着剤を用い、これにより強固に接着させた。
【0061】
なお、弾性体層3の弾性体素材をシリコーンゴム以外のものとする場合には、弾性体層3と芯金2との接着に用いる接着剤および弾性体層3とPFAスリーブ4との接着に用いる接着剤は、ともに弾性体素材に応じたものが選択される。
【0062】
つぎに、本実施形態の加圧ローラ1におけるPFAスリーブ4の接着評価実験をPFAスリーブ4の処理条件を変えて2種類行った。
【0063】
一方の接着評価実験は、内面処理を行ったPFAスリーブ4から試験片を切り出し、この試験片の処理面を平らにしたうえで処理面に水を滴下し、マイクロスコープで取り込んだ画像から接触角(度)を求めた。
【0064】
他方の接着評価実験は、処理条件を変えたPFAスリーブ4を用いて前述した加圧ローラ1と同様の一体成型法および後被せ法により評価用ローラを形成し、この評価用ローラのPFAスリーブ4に対して周方向に幅10mmのスリットを入れ、JIS K 6256の5.90度はく離試験に準拠して行い、ゴム部の破損面積(ゴム残率)R(%)で初期接着性を評価した。R:100%であれば初期接着性は良好であり、R:0%では全く接着しておらず全面はく離の状態である。R:0%であれば実用使用に供することはできない。なお、評価用ローラおよび比較用ローラは、PFAスリーブ4の内面の表面処理方法が異なるだけである。
【0065】
前記接着評価結果を表面処理の処理条件などとともに表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1において、本発明はエキシマ光を用いた本発明のフッ素樹脂の表面処理を示し、距離は、エキシマ光の光源とPFAスリーブ4との距離を示し、時間はエキシマ光による照射時間を示し、圧力は反応雰囲気ガスとしてのアンモニアガスのエキシマ光の照射時における圧力を示し、PFAの種類の「A」はPFA 451J(三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製商品名:端末にCF3 基を有するPFA)を示し、PFAの種類の「B」はAP−230ASL(ダイキン工業株式会社製商品名:導電性カーボンを含有した導電PFA)を示し、「ゴムA」は付加型液状シリコーンゴム(JIS A 10度:信越化学工業株式会社製)からなる一体成型法により形成した弾性体層3を示し、「ゴムB」は過酸化物加硫型シリコーンゴム(JIS A 25度:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)からなる後被せ法により形成した弾性体層3を示す。
【0068】
表1の接着評価結果に示すように、エキシマ光の照射によるフッ素樹脂であるPFAスリーブ4の改質は、アンモニアガスの圧力が0.133〜26.6kPaの範囲ではアンモニアガスの圧力には依存せず、照射時間に依存し、照射時間が5分以上であれば安定した接着が得られることが分かった。また、SA法で処理した場合には良好な接着が得られない導電性カーボンを添加した導電性PFAスリーブにおいても安定した接着が得られることが分かった。
【0069】
Applied Physics Letters,Vol.68(19), p2648(1996)にてJ.Heitzらが指摘しているように、エキシマ光によるPTFEの改質では、アンモニアガスの圧力が1.33kPa近傍でないと良好な表面処理が得られないが、驚くべきことに本発明のフッ素樹脂の表面処理によるPFAスリーブ4の表面処理においては、アンモニアガスの圧力が0.133〜26.6kPaの範囲でも安定した接着が得られることが分かった。また、石英ガラスからなるエキシマランプとフッ素樹脂スリーブ4間の間隙も、2〜13mmの範囲で接着性が安定しており、この範囲では照射距離の影響がほとんどないことが分かった。また照射時間も3分以上、好ましくは4〜15分、さらに好ましくは5〜10分であれば安定した接着が得られることが分かった。照射時間がこの範囲を下回ると、条件によっては接着に問題が生じる傾向がある。また、照射時間がこの範囲を上回ると、生産効率が低下し、コストが高くなる傾向がある。
【0070】
つぎに、エキシマ光で処理したPFAスリーブ4の耐久性を調べるために、複写機による通紙試験を該PFAスリーブ4を被覆した加圧ローラ1を用いて実施した。この複写機による通紙試験は、複写機としてキヤノン株式会社製のNP6030(商品名)を用い、A4サイズPPC用紙を連続して白紙で通紙し、接着剥がれが何枚で発生するかで評価した。この結果、PFAスリーブ4の内面をアンモニアガスの存在下でエキシマ光で処理して製造した評価用加圧ローラにおいては、初期接着性に問題がないものは10万枚の通紙試験の後も接着剥がれが発生しないことが分かった。これに対してSNT法で内面処理したPFAスリーブを用いた比較用加圧ローラ(表意の比較例1)では、たかだか1万枚程度でPFAスリーブ4とシリコーンゴムからなる弾性体層3との間ではく離が生じ、接着耐久性に差があることが分かった。
【0071】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0072】
本実施形態のフッ素樹脂の表面処理方法であるPFAスリーブ4の表面処理方法によれば、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に形成できる。さらに、従来のSA法によっては処理面を接着することが困難であった溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂に対しても、弾性体層との接着性および耐久性に優れた処理面を容易に形成できる。
【0073】
本実施形態のフッ素樹脂の表面処理方法であるPFAスリーブ4の表面処理方法によれば、反応雰囲気ガスがアンモニアガスであるから、溶剤や金属ナトリウムを使用しないので、環境への負荷が少なく処理できる。
【0074】
本実施形態のフッ素樹脂の表面処理方法であるPFAスリーブ4の表面処理方法によれば、アンモニアガスの圧力が0.133〜26.6kPaであるから、アンモニアガスの圧力範囲が広いので、PFAスリーブ4の表面処理を容易かつ安定して行うことができるとともに、PFAスリーブ4の表面処理をより効率よくできる。
【0075】
本実施形態のフッ素樹脂の表面処理方法であるPFAスリーブ4の表面処理方法によれば、フッ素樹脂スリーブであるPFAスリーブ4の片面処理である内面の表面処理を容易かつ効率的に行うことができる。
【0076】
本実施形態の弾性複合材としての加圧ローラ1によれば、環境への負荷が少なく、弾性体層3とPFAスリーブ4との接着性および耐久性を向上できるので、接着信頼性の優れたものとなる。さらに、PFAスリーブ4に導電性を容易に付与できる。また、PFAスリーブ4は、トナーに対する十分な離型性を容易に確保できる。またさらに、PFAスリーブ4の厚さを0.15mm以下とすることで、定着ローラなどのローラとした場合における消費電力の削減やウォームアップタイムを短縮でき、さらにローラとした場合におけるPFAスリーブ4の接触をソフトにできる。
【0077】
本実施形態の弾性複合材としての加圧ローラ1の製造方法によれば、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた加圧ローラ1を容易かつ確実に形成できる。
【0078】
なお、本発明のフッ素樹脂の表面処理方法は、前記PFAスリーブ4などのスリーブ(チューブ)状の形状に限らず、シート状などの各種の形状に適用できる。このシート状などの形状のフッ素樹脂に対する表面処理方法は、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマ光を照射すればよく、反応雰囲気ガスとしてはアンモニアガスが好ましく、アンモニアガスの圧力は0.133〜26.6kPaの範囲とすることが好ましい。このようなフッ素樹脂の表面処理方法を用いることで、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に得ることができる。また、エキシマ光の照射範囲を限定するマスキングを用いることにより、任意の範囲のみの表面処理を容易に行うことができる。
【0079】
また、本発明によるフッ素樹脂の表面処理を施して処理面を形成したシート状などのフッ素樹脂に接着剤を塗布し、圧着やプレス成形などで弾性体と接着させてもよいし、金属などと接着させてもよい。
【0080】
すなわち、本発明の弾性複合材は、ローラだけでなく、溶融押出し形成されているフッ素樹脂と弾性体層を接着させる構成の製品、例えば弾性軸受などの摺動部位における弾性摺動材を始め多種多様の製品に適用できる。そして、このような製品のフッ素樹脂と弾性体層との接着信頼性を向上できる。
【0081】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る本発明のフッ素樹脂の表面処理方法によれば、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、環境への負荷が少なく、接着性および耐久性に優れた均一な処理面を容易に形成できるなどの極めて優れた効果を奏する。さらに、従来のSA法によっては処理面を接着することが困難であった溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂に対しても、本発明によれば弾性体層との接着性および耐久性に優れた処理面を容易に形成できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0083】
また、請求項2に係る本発明のフッ素樹脂の表面処理方法によれば、溶剤や金属ナトリウムを使用しないので、環境への負荷が少なく処理できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0084】
また、請求項3に係る本発明のフッ素樹脂の表面処理方法によれば、アンモニアガスの圧力範囲が広いので、フッ素樹脂の表面処理を容易かつ安定して行うことができるとともに、フッ素樹脂の表面処理をより効率よくできるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0085】
また、請求項4に係る本発明のフッ素樹脂の表面処理方法によれば、フッ素樹脂スリーブの片面処理である内面の表面処理を容易かつ効率的に行うことができるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0086】
請求項5に係る本発明の弾性複合材の製造方法によれば、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着信頼性に優れたローラ状の弾性複合材を容易かつ確実に製造できるなどの極めて優れた効果を奏する。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂スリーブと弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0087】
請求項6に係る本発明の弾性複合材の製造方法によれば、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂スリーブと弾性体層との接着信頼性に優れたローラ状の弾性複合材を容易かつ確実に製造できるなどの極めて優れた効果を奏する。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂スリーブと弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0088】
請求項7に係る本発明の弾性複合材の製造方法によれば、定着ローラなどのローラとした場合におけるフッ素樹脂スリーブからなる離型層のトナーに対する十分な離型性を確保できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0089】
また、請求項8に係る本発明の弾性複合材の製造方法によれば、定着ローラなどのローラとした場合における消費電力の削減やウォームアップタイムを短縮できるなどの極めて優れた効果を奏する。さらに、ローラとした場合におけるフッ素樹脂スリーブの接触をソフトにできるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0090】
また、請求項9に係る本発明の弾性複合材の製造方法によれば、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂と弾性体層との接着性および耐久性を向上できるので、フッ素樹脂と弾性体層との接着信頼性に優れた弾性複合材を容易かつ確実に製造できるなどの極めて優れた効果を奏する。さらに、溶融押出しにより形成されている導電性のフッ素樹脂と弾性体層とを接着できるので、導電性を容易に付与できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフッ素樹脂の表面処理方法を適用した弾性複合材の製造方法によって製造された弾性複合材としての加圧ローラの実施形態の要部の構成を示す縦断面図
【符号の説明】
1 加圧ローラ
2 芯金
3 弾性体層
4 フッ素樹脂スリーブ
Claims (9)
- 溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に、反応雰囲気ガスの存在下でエキシマランプを光源とするエキシマ光を照射することを特徴とするフッ素樹脂の表面処理方法。
- 前記反応雰囲気ガスがアンモニアガスであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂の表面処理方法。
- 前記アンモニアガスの圧力が0.133〜26.6kPaであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂の表面処理方法。
- 前記フッ素樹脂が溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブであり、このフッ素樹脂スリーブの内面に、棒状に形成されているエキシマランプを装着し、その後前記フッ素樹脂スリーブの内面と前記エキシマランプとの隙間に前記反応雰囲気ガスを供給することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブの内面に処理面を形成した後、この処理面に接着処理を施し、その後接着処理を施したフッ素樹脂スリーブを予め接着剤を塗布した芯金の外周に装着し、その後前記芯金と前記フッ素樹脂スリーブの間隙に未硬化の弾性体素材を充填し、その後前記未硬化の弾性体素材を硬化させてローラ状に一体化することを特徴とする弾性複合材の製造方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しによりスリーブ状に形成されているフッ素樹脂スリーブの内面に処理面を形成した後、この処理面を形成したフッ素樹脂スリーブに対して予め外周に被覆した弾性体層の外周に接着剤を塗布した芯金を挿入した後、接着剤層を硬化させてローラ状に一体化することを特徴とする弾性複合材の製造方法。
- 前記フッ素樹脂の素材がPFAであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の弾性複合材の製造方法。
- 前記フッ素樹脂スリーブの厚さが0.15mm以下であることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の弾性複合材の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂の表面処理方法により、溶融押出しにより形成されているフッ素樹脂の表面に処理面を形成した後、この処理面に接着処理を施し、その後接着処理を施したフッ素樹脂に対して弾性体層を一体化することを特徴とする弾性複合材の製造方法。
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