JP3686502B2 - Ｔｖブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板およびこの製造方法 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ＴＶブラウン管マスクフレーム用の冷延鋼板およびこの製造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
カラーブラウン管の基本構成は、電子銃と電子ビームを映像に変える蛍光面から成り立ち、更には電子ビームが地磁気により偏向されるのを防ぐ磁気シールド材やシャドウマスクが内部を覆っているが、マスクフレーム材はこれらの構造を支えるフレーム材として重要である。また、最近のＴＶの大型化やハイビジョン化などで画面の鮮明度に対する要求が強いことから、マスクフレーム材にも磁気シールド性が求められる。磁気シールド性は、通常磁気特性の保磁力で評価される。
マスクフレーム用冷延鋼板は通常０．５〜１．５ｍｍの鋼板で、この鋼板コイルは電気メーカでプレス加工された後、５５０〜６５０℃程度の温度の湿潤雰囲気で黒化処理を施されブラウン管内部に組み込まれる。黒化処理の目的は、錆防止、熱放射率を大きくすることと電子の乱反射抑止、プレス加工による磁性劣化の回復などである。
【０００３】
従来、マスクフレーム材を製造する技術として、いくつか出願されている。特開昭６０−６７６４０号公報では、黒化処理における赤錆発生を、Ｃ≦０．０２％とすることで解決する熱延鋼板が開示されている。しかし、磁気特性に関しては、不満足な鋼板であった。特開昭６０−６７６４２号公報では、同じく黒化処理における赤錆発生防止をＣｒ添加によって行うことが提案されているが、これも磁気特性が満足されなかった。特開平２−２５０９４２号公報で、熱間圧延での温度を制御することにより粗大結晶粒を得て、磁気特性を向上させる技術を開示した。しかし、熱延鋼板であるためコイル長手方向、巾方向の磁気特性ムラを解消することに難点があり、また、異常粗大粒が部分的に発生しプレス加工で割れるなどの問題があった。
【０００４】
特開平３−５３０２３号公報では、極低炭Ａｌキルド鋼の熱間圧延温度制御によりマスクフレーム用熱延鋼板を得ている。これも上述の特開平２−２５０９４２号公報と同じ問題があった。特開平３−１４６６４４号公報では、磁気特性と加工性との両者に優れたマスクフレームが開示されている。しかしながら、後述するトランプエレメントを含まない成分系であるため、この時代の要請である鉄スクラップのリサイクルにそぐわないものであった。特開平５−７８７４２号公報では、熱間圧延での温度並びに連続焼鈍での温度制御により、優れた磁気特性と加工性を両立させた冷延鋼板を提案した。しかしながら、連続焼鈍でとくに、徐冷却が必要なため生産性に支障を来していた。
【０００５】
特開平４−３４１５４１号公報では、黒化被膜を予め鉄鋼メーカで形成させることにより、所謂、黒化処理の省略方法を提案した。しかし、黒化被膜が硬すぎるため、プレス金型の摩耗が大きく問題であった。特開平８−２７５２０号公報では、成分と熱間圧延条件との制御により磁気特性が優れたマスクフレーム材が提案されている。しかしながら、最終のスキンパス圧延を省略しているため、プレス加工工程などで、腰折れが発生してマスクフレーム部品としての形状に問題があった。
【０００６】
このように、従来の成分系では、トランプエレメントと称される不純物が少ない鋼であったが、今日では、環境リサイクルの立場から鉄スクラップである例えば、自動車の廃車スクラップなどを鉄鋼メーカで消費しなければならない。このため、従来、トランプエレメントとして無視されてきた成分についても、厳密に管理して品質問題を生じないようにしなければならないが現在まで、マスクフレームについて調査されていなかった。
また、特開昭５７−５２３９号公報では、黒化し処理を省略して、ブラウン管製造工程の封着工程などで黒化膜を形成させるＮｉまたはＣｒめっき鋼板の発明が開示された。しかし、今日まで、磁気シールド性の面で問題があり、実用化されるに至っていない。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決すべく具体的には、生産性を劣化させないで磁気特性を確保し、なお且つ、プレス加工性を改善し、更には鉄スクラップ多量消費の時代要請に答えたマスクフレーム材並びにそれを製造する技術を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
その発明の要旨とするところは、
（１）重量％で、Ｃ≦０．００５％，Ｓｉ≦０．１％，Ｍｎ：０．１〜１．０％，Ｐ≦０．１％，Ｓ≦０．０１７％，ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，Ｎ≦０．００４％，Ｂ：０．０００５〜０．００５％，Ｔｉ≦０．０１％，Ｖ≦０．０１％，Ｎｂ≦０．０１％，Ｃｕ：０．００５〜０．２％，Ｓｎ：０．００１〜０．１％，Ｎｉ：０．００５〜０．２％，Ｃｒ：０．００４〜０．１％，Ｍｏ≦０．１％，Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分であり、平均結晶粒径が１５〜７０μｍで、調質圧延に相当する歪みが０．１〜１．０％であり、板厚０．５〜１．５ｍｍであることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板。
【０００９】
（２）重量％で、Ｃ≦０．００５％，Ｓｉ≦０．１％，Ｍｎ：０．１〜１．０％，Ｐ≦０．１％，Ｓ≦０．０１７％，ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，Ｎ≦０．００４％，Ｂ：０．０００５〜０．００５％，Ｔｉ≦０．０１％，Ｖ≦０．０１％，Ｎｂ≦０．０１％，Ｃｕ：０．００５〜０．２％，Ｓｎ：０．００１〜０．１％，Ｎｉ：０．００５〜０．２％，Ｃｒ：０．００４〜０．１％，Ｍｏ≦０．１％，Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる熱延コイルを、冷間圧延して０．５〜１．５ｍｍとし、次いで連続焼鈍で７００〜９３０℃で再結晶焼鈍し、平均結晶粒径を１５〜７０μｍとしてから、鋼板に０．１〜１．０％圧下率のスキンパス圧延をすることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板の製造方法にある。
【００１０】
前記（１）または（２）の本発明のポイントは、トランプエレメントに対する作用・効果を明確にして、その量を制御することによりスクラップ多量消費への道を切り開いたことである。同時に、スクラップ多量消費による磁性劣化を防止するためのキーとなる技術は、介在物Ａｌ2 Ｏ3 の組成比率制御により行えばよいことを発見したことである。
【００１１】
まず、成分組成の限定理由について述べる。
Ｃ量は、０．００５％以下とする。Ｃの量が多いと炭化物を析出して、黒化処理で赤錆を発生させるので０．００５％とする。
Ｓｉは、０．１％以下に制限する。Ｓｉ量が多いと鋼板表面にＳｉＯ2 を形成して、黒化処理における黒化膜（Ｆｅ3 Ｏ4 ）を形成しずらくさせるため０．１％以下とする。
Ｍｎ量は、０．１〜１．０％にしなければならない。Ｍｎは硫化物の析出サイズを制御するため重要で、０．１％未満だとＭｎＳが微細析出して、保磁力を劣化させる。また、１．０％超では添加コストの問題があるので避ける。
【００１２】
Ｐ量は、０．１％以下とする。Ｐは、鋼板強度を上昇させるのに効果のある元素であるが、多過ぎるとプレス加工で割れが生じるので、０．１％以下とする。 Ｓ量は、０．０１７％以下とする。Ｓは硫化物を形成せしめ、保磁力を劣化させるので、０．０１７％に制限する。
ｓｏｌＡｌ量は、０．００１〜０．０１５％とする。ｓｏｌＡｌは０．００１％未満では、後述のＡｌ2 Ｏ3 系の酸化物が少なくなって、保磁力が劣化するので避ける。また、０．０１５％超では、ＡｌＮが増加して保磁力が劣化するので不可である。このため、ｓｏｌＡｌ量は、０．００１〜０．０１５％とする。なお、ｓｏｌＡｌは、Ａｌの中の酸に可溶する所謂、Ｓｏｌｕｂｌｅ Ａｌ量のことである。
【００１３】
Ｎ量は、０．００４％以下に制限する。Ｎは多いとブリスターと呼ばれる鋼板表面のふくれ疵を発生させるので０．００４％以下とする。
Ｂは、０．０００５〜０．００５％とする。Ｂは結晶粒の粒径を整え、結晶粒界を強化する働きがあって、プレス加工での割れを防止する効果がある。０．０００５％未満では、この効果がなく、０．００５％を超えるとスラブで割れが発生する。このため、Ｂは０．０００５〜０．００５％に制御する。
Ｔｉ量は、０．０１％以下とする。Ｔｉは、炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
【００１４】
Ｖは、０．０１％以下に制限する。Ｖも炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
Ｎｂは、０．０１％以下に制限する。Ｎｂも炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
Ｃｕは、０．００５〜０．２％とする。Ｃｕは、例えば自動車の廃車スクラップ中のモータ銅線などから混入する元素で、従来の高炉銑主体の成分系では、０．００５％未満であったものである。Ｃｕは、Ｃｕ単独または硫化物となって保磁力を劣化させる。この限界が０．２％である。
【００１５】
Ｓｎは、０．００１〜０．１％とする。Ｓｎは、食缶用のブリキ屑などから混入するが、従来は０．００１％未満であった。Ｓｎは、硫化物を微細にして保磁力を劣化させるので０．１％以下とする。
Ｎｉは、０．００５〜０．２％とする。Ｎｉは、ステンレス鋼などから混入する。Ｎｉは、従来０．００５％未満であった。Ｎｉによる品質問題は見られなかったが、添加コストの面から０．２％以下とする。
Ｃｒは、０．００４〜０．１％に制限する。Ｃｒもステンレス鋼などから混入する。Ｃｒは、従来０．００４％未満であった。Ｃｒは増えると、保磁力を劣化させるので０．１％以下とする必要がある。
【００１６】
Ｍｏは、０．１％以下とする。Ｍｏの量が増えると保磁力が劣化する。この限度が０．１％である。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、０．１以上とする。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、保磁力に大きく影響して、この比率が低下すると保磁力が劣化する。このため、０．１以上が必要である。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率を０．１以上に制御するのに有効な手段としては公知の方法ではあるが、製鋼での真空脱ガス装置での脱炭後、成分元素を添加する際に、Ａｌで先行脱酸してから、他のＭｎ，Ｓｉなどの脱酸剤を添加する方法、並びにｓｏｌＡｌ量として０．００１％以上添加することなどがある。
【００１７】
上記元素を含む溶鋼を連続鋳造してスラブを造り、通常の熱間圧延を行う。この時、スラブ加熱温度は、通常の９５０〜１２００℃とする。スラブ加熱が高いとＣｕ2 ＳやＭｎＳ、窒化物などが固溶して熱延中に微細析出し、製品での保磁力を劣化させる。
熱間圧延したコイルを酸洗し、冷間圧延する。冷延後の仕上厚みは、マスクフレーム材に求められる０．５〜１．５ｍｍである。冷延後の再結晶焼鈍の到達温度は、７００〜９３０℃の必要がある。７００℃以下では、結晶粒径が小さいので、保磁力が確保出来ない。９３０℃以上のγ相に入ると、冷却時に変態歪みが入ることなどにより保磁力が劣化するため避けなければならない。
【００１８】
鋼板の平均結晶粒径は、１５〜７０μｍである必要がある。結晶粒径が小さいと保磁力が劣化するので１５μｍ以上である必要がある。また、７０μｍ超にしようとすると高温加熱が必要となって生産性を害するので避ける。なお、本発明では、特開平５−７８７４２号公報のような冷速の制御は不要であって、Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率やＣｕ，Ｓｎ，Ｎｉ，Ｃｒなどの成分組成を厳密にコントロールすることで保磁力を満足させることが出来る。
【００１９】
焼鈍後の調質圧延の圧下率は、０．１〜１．０％に制限する。調質圧延を省略すると、優れた保磁力が得られるが、プレス工程で腰折れと称される鋼板の折れが発生して形状が問題である。このため、０．１％の圧下が必要である。また、圧下率が大きすぎると保磁力が劣化する。この限界が１．０％である。このため、調質圧延の圧下率は、０．１〜１．０％に制限する。
【００２０】
【実施例】
次いで、実施例について説明する。
（実施例１）
表１に示した化学成分を含む溶鋼を真空溶解して鋼塊とし、加熱を１０００℃で行い、ホットコイル３．０ｍｍ厚を製造した。なお、Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、溶鋼への合金添加順序、即ち、Ａｌ添加をする時期を、ＳｉやＭｎで脱酸する前か後か、脱酸後のフリー酸素量の制御によってコントロールした。次いで、酸洗してから１．２ｍｍまで冷延した後、８３０℃×３０秒の均熱を実施し、次いで、調圧を０．２％の伸び率で実施して、磁気特性測定用としてエプスタイン試料（３０ｍｍ×３００ｍｍ）に切りだし、無方向性電磁鋼板と同様にして直流磁気特性をＪＩＳ Ｃ ２５５０に準拠し最大磁化力を１０ Ｏｅ（エルステッド）として保磁力を測定し、表１を得た。なお、Ａｌ2 Ｏ3 比率の意味は、化学分析の重量比Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）である。
表１に示す如く、本発明範囲成分の試料は保磁力が１．５ Ｏｅ以下の優れた磁性が得られた。また、Ｍｎ，Ｓ，ｓｏｌＡｌ，Ｔｉ，Ｖ，Ｎｂ，Ｃｕ，Ｓｎ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ａｌ2 Ｏ3 比率などが本発明範囲を外れる試料は、優れた保磁力を得ることが出来なかった。
【００２１】
【表１】
【００２２】
（実施例２）
重量％で、Ｃ：０．００２％，Ｓｉ：０．０１％，Ｍｎ：０．１２％，Ｐ：０．０２％，Ｓ：０．００１％，ｓｏｌＡｌ：０．００５％，Ｎ：０．００１％，Ｂ：０．００２％，Ｔｉ：０．００１％，Ｖ：０．００２％，Ｎｂ：０．００３％，Ｃｕ：０．０５％，Ｓｎ：０．００６％，Ｎｉ：０．０２５％，Ｃｒ：０．０３％，Ａｌ2 Ｏ3 比率＝０．０１６、残部が実質的に鉄よりなるスラブを、１０００℃で加熱し、３．５ｍｍ厚のホットコイルを製造した。次いで酸洗後、１．０ｍｍに冷延してから、表２に示す温度条件で２０秒均熱の焼鈍を実施して、鋼板断面での平均結晶粒径を測定した。次いで、調質圧下率を変えてから磁気特性を測定した。
表に示すように、本発明範囲の温度、結晶粒径並びに調質圧延圧下率のものは、優れた保磁力を示したが、本発明範囲を外れるものは保磁力が不満である。なお、調質圧延を省略した実験Ｎｏ７のものは、プレス工程で鋼板の折れが発生した。
【００２３】
【表２】
【００２４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は鉄スクラップを多量消費でき、且つ、磁気特性と加工性に優れたＴＶブラウン管マスクフレーム用の冷延鋼板を提供するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ＴＶブラウン管マスクフレーム用の冷延鋼板およびこの製造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
カラーブラウン管の基本構成は、電子銃と電子ビームを映像に変える蛍光面から成り立ち、更には電子ビームが地磁気により偏向されるのを防ぐ磁気シールド材やシャドウマスクが内部を覆っているが、マスクフレーム材はこれらの構造を支えるフレーム材として重要である。また、最近のＴＶの大型化やハイビジョン化などで画面の鮮明度に対する要求が強いことから、マスクフレーム材にも磁気シールド性が求められる。磁気シールド性は、通常磁気特性の保磁力で評価される。
マスクフレーム用冷延鋼板は通常０．５〜１．５ｍｍの鋼板で、この鋼板コイルは電気メーカでプレス加工された後、５５０〜６５０℃程度の温度の湿潤雰囲気で黒化処理を施されブラウン管内部に組み込まれる。黒化処理の目的は、錆防止、熱放射率を大きくすることと電子の乱反射抑止、プレス加工による磁性劣化の回復などである。
【０００３】
従来、マスクフレーム材を製造する技術として、いくつか出願されている。特開昭６０−６７６４０号公報では、黒化処理における赤錆発生を、Ｃ≦０．０２％とすることで解決する熱延鋼板が開示されている。しかし、磁気特性に関しては、不満足な鋼板であった。特開昭６０−６７６４２号公報では、同じく黒化処理における赤錆発生防止をＣｒ添加によって行うことが提案されているが、これも磁気特性が満足されなかった。特開平２−２５０９４２号公報で、熱間圧延での温度を制御することにより粗大結晶粒を得て、磁気特性を向上させる技術を開示した。しかし、熱延鋼板であるためコイル長手方向、巾方向の磁気特性ムラを解消することに難点があり、また、異常粗大粒が部分的に発生しプレス加工で割れるなどの問題があった。
【０００４】
特開平３−５３０２３号公報では、極低炭Ａｌキルド鋼の熱間圧延温度制御によりマスクフレーム用熱延鋼板を得ている。これも上述の特開平２−２５０９４２号公報と同じ問題があった。特開平３−１４６６４４号公報では、磁気特性と加工性との両者に優れたマスクフレームが開示されている。しかしながら、後述するトランプエレメントを含まない成分系であるため、この時代の要請である鉄スクラップのリサイクルにそぐわないものであった。特開平５−７８７４２号公報では、熱間圧延での温度並びに連続焼鈍での温度制御により、優れた磁気特性と加工性を両立させた冷延鋼板を提案した。しかしながら、連続焼鈍でとくに、徐冷却が必要なため生産性に支障を来していた。
【０００５】
特開平４−３４１５４１号公報では、黒化被膜を予め鉄鋼メーカで形成させることにより、所謂、黒化処理の省略方法を提案した。しかし、黒化被膜が硬すぎるため、プレス金型の摩耗が大きく問題であった。特開平８−２７５２０号公報では、成分と熱間圧延条件との制御により磁気特性が優れたマスクフレーム材が提案されている。しかしながら、最終のスキンパス圧延を省略しているため、プレス加工工程などで、腰折れが発生してマスクフレーム部品としての形状に問題があった。
【０００６】
このように、従来の成分系では、トランプエレメントと称される不純物が少ない鋼であったが、今日では、環境リサイクルの立場から鉄スクラップである例えば、自動車の廃車スクラップなどを鉄鋼メーカで消費しなければならない。このため、従来、トランプエレメントとして無視されてきた成分についても、厳密に管理して品質問題を生じないようにしなければならないが現在まで、マスクフレームについて調査されていなかった。
また、特開昭５７−５２３９号公報では、黒化し処理を省略して、ブラウン管製造工程の封着工程などで黒化膜を形成させるＮｉまたはＣｒめっき鋼板の発明が開示された。しかし、今日まで、磁気シールド性の面で問題があり、実用化されるに至っていない。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決すべく具体的には、生産性を劣化させないで磁気特性を確保し、なお且つ、プレス加工性を改善し、更には鉄スクラップ多量消費の時代要請に答えたマスクフレーム材並びにそれを製造する技術を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
その発明の要旨とするところは、
（１）重量％で、Ｃ≦０．００５％，Ｓｉ≦０．１％，Ｍｎ：０．１〜１．０％，Ｐ≦０．１％，Ｓ≦０．０１７％，ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，Ｎ≦０．００４％，Ｂ：０．０００５〜０．００５％，Ｔｉ≦０．０１％，Ｖ≦０．０１％，Ｎｂ≦０．０１％，Ｃｕ：０．００５〜０．２％，Ｓｎ：０．００１〜０．１％，Ｎｉ：０．００５〜０．２％，Ｃｒ：０．００４〜０．１％，Ｍｏ≦０．１％，Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分であり、平均結晶粒径が１５〜７０μｍで、調質圧延に相当する歪みが０．１〜１．０％であり、板厚０．５〜１．５ｍｍであることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板。
【０００９】
（２）重量％で、Ｃ≦０．００５％，Ｓｉ≦０．１％，Ｍｎ：０．１〜１．０％，Ｐ≦０．１％，Ｓ≦０．０１７％，ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，Ｎ≦０．００４％，Ｂ：０．０００５〜０．００５％，Ｔｉ≦０．０１％，Ｖ≦０．０１％，Ｎｂ≦０．０１％，Ｃｕ：０．００５〜０．２％，Ｓｎ：０．００１〜０．１％，Ｎｉ：０．００５〜０．２％，Ｃｒ：０．００４〜０．１％，Ｍｏ≦０．１％，Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる熱延コイルを、冷間圧延して０．５〜１．５ｍｍとし、次いで連続焼鈍で７００〜９３０℃で再結晶焼鈍し、平均結晶粒径を１５〜７０μｍとしてから、鋼板に０．１〜１．０％圧下率のスキンパス圧延をすることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板の製造方法にある。
【００１０】
前記（１）または（２）の本発明のポイントは、トランプエレメントに対する作用・効果を明確にして、その量を制御することによりスクラップ多量消費への道を切り開いたことである。同時に、スクラップ多量消費による磁性劣化を防止するためのキーとなる技術は、介在物Ａｌ2 Ｏ3 の組成比率制御により行えばよいことを発見したことである。
【００１１】
まず、成分組成の限定理由について述べる。
Ｃ量は、０．００５％以下とする。Ｃの量が多いと炭化物を析出して、黒化処理で赤錆を発生させるので０．００５％とする。
Ｓｉは、０．１％以下に制限する。Ｓｉ量が多いと鋼板表面にＳｉＯ2 を形成して、黒化処理における黒化膜（Ｆｅ3 Ｏ4 ）を形成しずらくさせるため０．１％以下とする。
Ｍｎ量は、０．１〜１．０％にしなければならない。Ｍｎは硫化物の析出サイズを制御するため重要で、０．１％未満だとＭｎＳが微細析出して、保磁力を劣化させる。また、１．０％超では添加コストの問題があるので避ける。
【００１２】
Ｐ量は、０．１％以下とする。Ｐは、鋼板強度を上昇させるのに効果のある元素であるが、多過ぎるとプレス加工で割れが生じるので、０．１％以下とする。 Ｓ量は、０．０１７％以下とする。Ｓは硫化物を形成せしめ、保磁力を劣化させるので、０．０１７％に制限する。
ｓｏｌＡｌ量は、０．００１〜０．０１５％とする。ｓｏｌＡｌは０．００１％未満では、後述のＡｌ2 Ｏ3 系の酸化物が少なくなって、保磁力が劣化するので避ける。また、０．０１５％超では、ＡｌＮが増加して保磁力が劣化するので不可である。このため、ｓｏｌＡｌ量は、０．００１〜０．０１５％とする。なお、ｓｏｌＡｌは、Ａｌの中の酸に可溶する所謂、Ｓｏｌｕｂｌｅ Ａｌ量のことである。
【００１３】
Ｎ量は、０．００４％以下に制限する。Ｎは多いとブリスターと呼ばれる鋼板表面のふくれ疵を発生させるので０．００４％以下とする。
Ｂは、０．０００５〜０．００５％とする。Ｂは結晶粒の粒径を整え、結晶粒界を強化する働きがあって、プレス加工での割れを防止する効果がある。０．０００５％未満では、この効果がなく、０．００５％を超えるとスラブで割れが発生する。このため、Ｂは０．０００５〜０．００５％に制御する。
Ｔｉ量は、０．０１％以下とする。Ｔｉは、炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
【００１４】
Ｖは、０．０１％以下に制限する。Ｖも炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
Ｎｂは、０．０１％以下に制限する。Ｎｂも炭化物や窒化物を形成して保磁力を劣化させるので、０．０１％以下でなければならない。
Ｃｕは、０．００５〜０．２％とする。Ｃｕは、例えば自動車の廃車スクラップ中のモータ銅線などから混入する元素で、従来の高炉銑主体の成分系では、０．００５％未満であったものである。Ｃｕは、Ｃｕ単独または硫化物となって保磁力を劣化させる。この限界が０．２％である。
【００１５】
Ｓｎは、０．００１〜０．１％とする。Ｓｎは、食缶用のブリキ屑などから混入するが、従来は０．００１％未満であった。Ｓｎは、硫化物を微細にして保磁力を劣化させるので０．１％以下とする。
Ｎｉは、０．００５〜０．２％とする。Ｎｉは、ステンレス鋼などから混入する。Ｎｉは、従来０．００５％未満であった。Ｎｉによる品質問題は見られなかったが、添加コストの面から０．２％以下とする。
Ｃｒは、０．００４〜０．１％に制限する。Ｃｒもステンレス鋼などから混入する。Ｃｒは、従来０．００４％未満であった。Ｃｒは増えると、保磁力を劣化させるので０．１％以下とする必要がある。
【００１６】
Ｍｏは、０．１％以下とする。Ｍｏの量が増えると保磁力が劣化する。この限度が０．１％である。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、０．１以上とする。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、保磁力に大きく影響して、この比率が低下すると保磁力が劣化する。このため、０．１以上が必要である。Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率を０．１以上に制御するのに有効な手段としては公知の方法ではあるが、製鋼での真空脱ガス装置での脱炭後、成分元素を添加する際に、Ａｌで先行脱酸してから、他のＭｎ，Ｓｉなどの脱酸剤を添加する方法、並びにｓｏｌＡｌ量として０．００１％以上添加することなどがある。
【００１７】
上記元素を含む溶鋼を連続鋳造してスラブを造り、通常の熱間圧延を行う。この時、スラブ加熱温度は、通常の９５０〜１２００℃とする。スラブ加熱が高いとＣｕ2 ＳやＭｎＳ、窒化物などが固溶して熱延中に微細析出し、製品での保磁力を劣化させる。
熱間圧延したコイルを酸洗し、冷間圧延する。冷延後の仕上厚みは、マスクフレーム材に求められる０．５〜１．５ｍｍである。冷延後の再結晶焼鈍の到達温度は、７００〜９３０℃の必要がある。７００℃以下では、結晶粒径が小さいので、保磁力が確保出来ない。９３０℃以上のγ相に入ると、冷却時に変態歪みが入ることなどにより保磁力が劣化するため避けなければならない。
【００１８】
鋼板の平均結晶粒径は、１５〜７０μｍである必要がある。結晶粒径が小さいと保磁力が劣化するので１５μｍ以上である必要がある。また、７０μｍ超にしようとすると高温加熱が必要となって生産性を害するので避ける。なお、本発明では、特開平５−７８７４２号公報のような冷速の制御は不要であって、Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率やＣｕ，Ｓｎ，Ｎｉ，Ｃｒなどの成分組成を厳密にコントロールすることで保磁力を満足させることが出来る。
【００１９】
焼鈍後の調質圧延の圧下率は、０．１〜１．０％に制限する。調質圧延を省略すると、優れた保磁力が得られるが、プレス工程で腰折れと称される鋼板の折れが発生して形状が問題である。このため、０．１％の圧下が必要である。また、圧下率が大きすぎると保磁力が劣化する。この限界が１．０％である。このため、調質圧延の圧下率は、０．１〜１．０％に制限する。
【００２０】
【実施例】
次いで、実施例について説明する。
（実施例１）
表１に示した化学成分を含む溶鋼を真空溶解して鋼塊とし、加熱を１０００℃で行い、ホットコイル３．０ｍｍ厚を製造した。なお、Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率は、溶鋼への合金添加順序、即ち、Ａｌ添加をする時期を、ＳｉやＭｎで脱酸する前か後か、脱酸後のフリー酸素量の制御によってコントロールした。次いで、酸洗してから１．２ｍｍまで冷延した後、８３０℃×３０秒の均熱を実施し、次いで、調圧を０．２％の伸び率で実施して、磁気特性測定用としてエプスタイン試料（３０ｍｍ×３００ｍｍ）に切りだし、無方向性電磁鋼板と同様にして直流磁気特性をＪＩＳ Ｃ ２５５０に準拠し最大磁化力を１０ Ｏｅ（エルステッド）として保磁力を測定し、表１を得た。なお、Ａｌ2 Ｏ3 比率の意味は、化学分析の重量比Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）である。
表１に示す如く、本発明範囲成分の試料は保磁力が１．５ Ｏｅ以下の優れた磁性が得られた。また、Ｍｎ，Ｓ，ｓｏｌＡｌ，Ｔｉ，Ｖ，Ｎｂ，Ｃｕ，Ｓｎ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ａｌ2 Ｏ3 比率などが本発明範囲を外れる試料は、優れた保磁力を得ることが出来なかった。
【００２１】
【表１】
（実施例２）
重量％で、Ｃ：０．００２％，Ｓｉ：０．０１％，Ｍｎ：０．１２％，Ｐ：０．０２％，Ｓ：０．００１％，ｓｏｌＡｌ：０．００５％，Ｎ：０．００１％，Ｂ：０．００２％，Ｔｉ：０．００１％，Ｖ：０．００２％，Ｎｂ：０．００３％，Ｃｕ：０．０５％，Ｓｎ：０．００６％，Ｎｉ：０．０２５％，Ｃｒ：０．０３％，Ａｌ2 Ｏ3 比率＝０．０１６、残部が実質的に鉄よりなるスラブを、１０００℃で加熱し、３．５ｍｍ厚のホットコイルを製造した。次いで酸洗後、１．０ｍｍに冷延してから、表２に示す温度条件で２０秒均熱の焼鈍を実施して、鋼板断面での平均結晶粒径を測定した。次いで、調質圧下率を変えてから磁気特性を測定した。
表に示すように、本発明範囲の温度、結晶粒径並びに調質圧延圧下率のものは、優れた保磁力を示したが、本発明範囲を外れるものは保磁力が不満である。なお、調質圧延を省略した実験Ｎｏ７のものは、プレス工程で鋼板の折れが発生した。
【００２３】
【表２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は鉄スクラップを多量消費でき、且つ、磁気特性と加工性に優れたＴＶブラウン管マスクフレーム用の冷延鋼板を提供するものである。
Claims (2)
- 重量％で、
Ｃ≦０．００５％，
Ｓｉ≦０．１％，
Ｍｎ：０．１〜１．０％，
Ｐ≦０．１％，
Ｓ≦０．０１７％，
ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，
Ｎ≦０．００４％，
Ｂ：０．０００５〜０．００５％，
Ｔｉ≦０．０１％，
Ｖ≦０．０１％，
Ｎｂ≦０．０１％，
Ｃｕ：０．００５〜０．２％，
Ｓｎ：０．００１〜０．１％，
Ｎｉ：０．００５〜０．２％，
Ｃｒ：０．００４〜０．１％，
Ｍｏ≦０．１％，
Ａｌ2 Ｏ3 ／（Ａｌ2 Ｏ3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分であり、平均結晶粒径が１５〜７０μｍで、調質圧延に相当する歪みが０．１〜１．０％であり、板厚０．５〜１．５ｍｍであることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板。 - 重量％で、
Ｃ≦０．００５％，
Ｓｉ≦０．１％，
Ｍｎ：０．１〜１．０％，
Ｐ≦０．１％，
Ｓ≦０．０１７％，
ｓｏｌＡｌ：０．００１〜０．０１５％，
Ｎ≦０．００４％，
Ｂ：０．０００５〜０．００５％，
Ｔｉ≦０．０１％，
Ｖ≦０．０１％，
Ｎｂ≦０．０１％，
Ｃｕ：０．００５〜０．２％，
Ｓｎ：０．００１〜０．１％，
Ｎｉ：０．００５〜０．２％，
Ｃｒ：０．００４〜０．１％，
Ｍｏ≦０．１％，
Ａｌ 2 Ｏ 3 ／（Ａｌ 2 Ｏ 3 ＋ＣａＯ＋ＭｎＯ＋ＳｉＯ 2 ）比率≧０．１、残部が鉄および不可避的不純物からなる熱延コイルを、冷間圧延して０．５〜１．５ｍｍとし、次いで連続焼鈍で７００〜９３０℃で再結晶焼鈍し、平均結晶粒径を１５〜７０μｍとしてから、鋼板に０．１〜１．０％圧下率のスキンパス圧延をすることを特徴とするＴＶブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板の製造方法。
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