JP3686398B2 - フローセンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流路中を流れる流体の流速または流量計測に用いられるフローセンサ、特に熱式フローセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体の流速や流量を計測する熱式のフローセンサは、流速検出手段を備えたセンサチップを配管内に計測すべき流体の流れに対して平行になるように設置し、発熱体(ヒーター)から出た熱による流体の空間的温度分布に流れによって偏りを生じさせ、これを温度センサで検出(傍熱型)するか、または流体により発熱体の熱が奪われることによる電力の変化や抵抗の変化を検出(自己発熱型)することで、流速または流量を計測するようにしている。
【0003】
ところで、従来のこの種のフローセンサは、主として非腐食性の気体に対して用いられていたが、最近では液体や腐食性の気体にも使用可能なものが開発されている。例えばその一例として、特開平7−159215号公報に開示された質量流量センサが知られている。
【0004】
この質量流量センサは、流体が流れる流路を形成するガラス基板に、前記流路に接するようにしてシリコン基板を接合し、このシリコン基板の流路側とは反対側の面に流量検出用のヒータを形成している。このような質量流量センサにおいては、ヒータが流体と直接接触しないため、流体によるヒータの劣化を防止でき、長期間使用しても良好な検出特性を維持できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の質量流量センサは、被測定流体の流路をシリコン基板とガラス基板とで形成しているため、半導体製造装置などで使用される場合は、シリコン基板とガラス基板が腐食性気体や液体によって腐食するため、使用できないという問題があった。
また、シリコン基板は熱伝導率が高いため、ヒータの熱によって基板全体が均一な温度になると、上流側と下流側のヒータに流体の流れによる温度差が生じ難く、検出感度が低いという問題があった。
加えて、シリコン基板は熱容量を小さくするためにガラス基板より小さく形成され、ガラス基板上に突出して設けられているため、両基板の間に段差が生じ、その後の製造工程での取扱性、製造の容易性に欠けるという問題もあった。例えば製造の容易性についていえば、シリコン基板の流路を覆っている部分以外の不要部分をフォトリソグラフィとエッチングによって除去することによりシリコン基板をガラス基板より小さくしているため、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程の2工程が増加する。
【0006】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バッチプロセスによって複数のセンサチップを量産することが可能で、製造の容易性を向上させるとともに製造コストを低減し得るようにしたフローセンサの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明は、外周部に厚肉部が設けられ、中央部が前記厚肉部と同一材料からなる薄肉のダイアフラム部を形成し、表面が前記厚肉部と同一平面を形成し、裏面側に流路用凹部が形成された基板と、前記ダイアフラム部の表面側に設けられた流速検出手段とでセンサチップを形成し、前記基板の厚肉部裏面側に流路形成部材を接合し、この流路形成部材と前記基板の前記流路用凹部とで被測定流体の流路を形成してなるフローセンサの製造方法であって、表面全体が仕上げ加工によって平滑面に形成された基板素材の外周部を厚肉部として残し、裏面中央部に流路用凹部を表面側に僅かな肉厚を残して形成することにより、この薄肉部分をダイアフラム部とするダイアフラム形成工程と、前記基板素材の表面で前記ダイアフラム部に対応する部分に流速検出手段を形成してセンサチップとする工程と、前記基板素材の厚肉部裏面を流路形成部材に接合するチップ接合工程とを備えたものである。
【0008】
第2の発明は、外周部に厚肉部が設けられ、中央部が前記厚肉部と同一材料からなる薄肉のダイアフラム部を形成し、表面が前記厚肉部と同一平面を形成し、裏面側に流路用凹部が形成された基板と、前記ダイアフラム部の表面側に設けられた流速検出手段とでセンサチップを形成し、前記基板の厚肉部裏面側に流路形成部材を接合し、この流路形成部材と前記基板の前記流路用凹部とで被測定流体の流路を形成してなるフローセンサの製造方法であって、表面全体が仕上げ加工によって平滑面に形成された基板素材の外周部を厚肉部として残し、裏面中央部に複数の流路用凹部を表面側に僅かな肉厚を残して形成することにより、この薄肉部分をダイアフラム部とするダイアフラム形成工程と、前記基板素材の表面で各ダイアフラム部に対応する部分に流速検出手段を形成する工程と、前記基板素材を各流速検出手段ごとに分離することにより、裏面側にそれぞれ厚肉部を有する複数のセンサチップを形成するチップ形成工程と、切断されたセンサチップの厚肉部を流路形成部材に接合するチップ接合工程とを備えたものである。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、基板素材が、薄肉状の第1の基板素材を製作する工程と、この第1の基板素材と同一材料からなり流路用孔を有する板状の第2の基板素材を製作する工程と、前記第1、第2の基板素材を重ね合わせて拡散接合する工程によって製作されるものである。
【0010】
第4の発明は、上記第1,第2または第3の発明において、基板素材がステンレスで、表面に電気絶縁膜が形成されているものである。
【0011】
第5の発明は、上記第1または第2の発明において、基板素材としてサファイアまたはセラミックスを用いたものである。
【0012】
第1,第2の発明において、基板素材の流路用凹部は、エッチング、エンドミル等によって形成される。流速検出手段は、周知の薄膜形成技術によって形成される。第2の発明においては、流速検出手段が形成された基板素材をダイシング、エッチング、またはレーザー等によって切断分離すると、複数個のセンサチップが形成される。センサチップと流路形成部材を溶接等によって接合すると、フローセンサが完成する。
基板素材としては、第3の発明における2枚の基板素材を拡散接合して製作されるものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るフローセンサの一実施の形態を示す断面図、図2はセンサチップ部分の平面図である。これらの図において、全体を符号1で示すフローセンサは、流路形成部材2と、この流路形成部材2上に設置されたセンサチップ3と、同じく前記流路形成部材2上にスペーサ4を介して配設され前記センサチップ3の上方に位置するプリント基板5等で構成されている。
【0014】
前記流路形成部材2はステンレス製の金属板からなり、上面中央に一体に突設された突出部2Aと、前記センサチップ3の凹部6Cとともに被測定流体(以下、流体ともいう)7の流路8を形成する2つの流路用孔9,10を有している。流路用孔9,10は貫通孔からなり、一端開口部が前記突出部2Aの長手方向の両端寄りにそれぞれ開口し、他端開口部が流路形成部材2の下面にそれぞれ開口している。
【0015】
前記センサチップ3は、基板6と、この基板6の表面に電気絶縁膜13を介して形成された後述する流速検出手段12および周囲温度検出手段16とで構成されている。
【0016】
前記基板6は、前記流路形成部材2の突出部2Aと略同一の大きさからなる矩形の板状に形成され、下面中央に前記凹部6Cが形成されることにより、この凹部6Cが形成されている表面側が薄肉状のダイアフラム部6Aを形成し、このダイアフラム部6Aの周囲を取り囲む厚肉の固定部6Bが前記突出部2Aの上面にYAGレーザー溶接等によって接合されている。前記ダイアフラム部6Aは、板厚が50〜150μm程度で、表面中央に前記流速検出手段12が設けられている。前記凹部6Cは、基板6の長手方向に長い長円形で、両端部において前記各流路用孔9,10と連通している。そして、基板6の前記凹部6C側とは反対側で前記流速検出手段12が設けられる上面6bは、鏡面研磨され、前記電気絶縁膜13が形成されている。
【0017】
前記基板6の材質としては、熱伝導率がシリコンに比べて低く、耐熱性、耐食性および剛性の高い材料、例えばステンレス、サファイアまたはセラミックスが用いられる。この場合、本フローセンサ1においては、板厚が0.3〜3mm程度のステンレス(特に、SUS316L)の薄板によって基板6を形成した例を示している。
【0018】
基板6がステンレス製の場合、ダイアフラム部6Aの板厚が50μm以下であると強度が低下するため好ましくない。また、150μm以上であると、基板6の厚さ方向、つまり流体2と後述する流速検出手段12との間の熱の伝導効率が低下するとともに、基板6の面と平行な方向の伝熱量(熱損出)が増加するため好ましくない。
【0019】
前記電気絶縁膜13の表面には、6つの電極パッド14(14a〜14f)および配線用金属薄膜15を含む前記流速検出手段12と周囲温度検出手段16が周知の薄膜成形技術によって形成されている。例えば、白金等の材料を電気絶縁膜13上に成膜し、所定のパターンにエッチングすることにより形成され、流速検出手段12と周囲温度検出手段16が前記電極パッド14に配線用金属薄膜15を介してそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
さらに前記流速検出手段12と前記周囲温度検出手段16を詳述すると、流速検出手段12は、1つの発熱体(抵抗ヒータ)20と2つの温度センサ21A,21Bとからなり、傍熱型の流速検出手段を構成している。発熱体20はダイアフラム部6Aの略中央に位置している。2つの温度センサ21A,21Bは、発熱体20を挟んで流体7の流れ方向の上流側と下流側にそれぞれ位置するように配置されている。
【0021】
前記周囲温度検出手段16は、周囲温度、つまり流体7の温度が変化したとき、その変化を補償するために用いられるもので、上流側で前記ダイアフラム部6Aの外側に配置されている。ただし、上流側に限らず下流側であったり、センサチップ3の幅方向のいずれかの片側であったり、あるいはダイアフラム部6A上であってもよい。発熱体20のパターン幅は10〜50μm、温度センサ21A,21Bおよび周囲温度検出手段16のパターン幅は5〜10μm程度が好ましい。さらに、ダイアフラム部6Aとその周囲を取り囲む厚肉の固定部6Bを別々に作り、熱拡散接合などにより一体化しても良い。
【0022】
前記電気絶縁膜13は、厚さが1μm程度の酸化シリコン(SiO2 )膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、ポリイミド等によって形成されている。酸化シリコン膜は、例えばスパッタリング、CVDあるいはSOG(スピンオングラス)等により形成される。窒化シリコン膜は、スパッタリング、CVD等によって形成される。
【0023】
前記流路形成部材2上にスペーサ4を介して配設される前記プリント基板5は、中央に円形の穴26を有し、表面に複数の配線パターン27が印刷形成されており、これら配線パターン27に前記センサチップ3の前記電極パッド14が図示を省略したボンディングワイヤによって電気的に接続されている。前記スペーサ4は、前記流路形成部材2と同じくステンレス、アルミニウムまたは合成樹脂等によって形成され、ねじや接着剤等によって流路形成部材2に固定されている。
【0024】
図3はフローセンサ1の定温度差回路を示す図である。
同図において、発熱体20、周囲温度検出手段16および3つの固定抵抗R1 ,R2 ,R3 はブリッジ回路を形成し、これとオペアンプ(OP1 )とで定温度差回路を構成している。OP1 は、ブリッジ回路の抵抗R1 と発熱体20の中点電圧を反転入力とするとともに、抵抗R2 と抵抗R3 の中点電圧を非反転入力とする。このOP1 の出力は、抵抗R1 ,R2 の一端に共通に接続されている。抵抗R1 ,R2 ,R3 は、発熱体20が周囲温度検出手段16よりも常に一定温度高くなるように抵抗値が設定されている。
【0025】
図4はフローセンサ1のセンサ出力回路を示す図である。
同図において、2つの温度センサ21A,21Bと2つの固定抵抗R4 ,R5 はブリッジ回路を形成し、これとOP2 とでセンサ出力回路を構成している。
【0026】
このようなフローセンサ1において、図3に示す定温度差回路のブリッジ回路への通電によって発熱体20を周囲温度よりもある一定の高い温度に加熱した状態で流体7を図2の矢印方向に流すと、ダイアフラム部6Aは流体7によってその流速に比例して熱を奪われるため、発熱体20も熱を奪われて抵抗値が下がる。このため、ブリッジ回路の平衡状態が崩れるが、OP1 によってその反転入力・非反転入力間に生じる電圧に応じた電圧がブリッジ回路に加えられるので、流体7によって奪われた熱を補償するように発熱体20の発熱量が増加する。その結果、発熱体20の抵抗値が上昇することにより、ブリッジ回路は平衡状態に戻る。したがって、平衡状態にあるブリッジ回路にはその流速に応じた電圧が加えられていることになる。なお、図3の定温度差回路の用い方としては、ヒータにセンサを共用させると、ブリッジ回路に加えられる電圧のうち発熱体20の端子間電圧を電圧出力として出力させることも可能である。
【0027】
流体7の流れによって発熱体20近傍の温度分布が崩れると、発熱体20の上流側に位置する温度センサ21Aと下流側に位置する温度センサ21Bの間に温度差が生じるので、図4に示すセンサ出力回路によってその電圧差または抵抗値差を検出する。2つの温度センサ21A,21Bの温度差は流体7の流速に比例する。そこで、予め流路断面平均流速または流量と温度差、つまり前記センサ出力回路によって検出された電圧差または抵抗値差との関係を校正しておけば、前記電圧差または抵抗値差から実際の流路断面平均流速または流量を計測することができる。なお、流速検出手段12と周囲温度検出手段16との構成は、上記した実施の形態に限らず種々の変更が可能である。また、周囲温度検出手段16は発熱体からの熱の影響を受けず、流体温度を検出できるところに配置する。
【0028】
次に、上記フローセンサ1の製造方法について説明する。
図5(a)〜(g)はフローセンサの第1の製造方法による製造手順を示す図面である。
先ず、板厚が0.3〜3mm程度のステンレス製の基板素材(以下、ウエハという)50を用意し(図5(a))、その表面50aを鏡面研磨する(図5(b))。
【0029】
次に、ウエハ50に複数の薄肉部50A,厚肉部50B,凹部50Cを形成する。(図5(c))。薄肉部50Aと厚肉部50Bは、上記した基板6のダイアフラム部6Aと固定部6Bとなる部分であり、凹部50Cは前記流路用凹部6Cとなる部分である。薄肉部50Aはウエハ50の裏面50bに前記凹部50Cの形成と同時に形成される。
【0030】
前記凹部50Cは、フォトリソグラフィとエッチングまたはエンドミルによって形成される。フォトリソグラフィとエッチングによる場合は、先ず、ウエハ50の裏面50b全体にレジストをスピンコートによって塗布し、紫外線(または電子線)を照射して前記レジストにマスクパターンを転写露光する。次に、露光されたレジストを現像液で現像し、レジストの不要部分を除去する。露光された部分を残すか除去するかで、ネガ型レジストまたはポジ型レジストを選定する。レジストが除去された部分はウエハ50が露出しており、この露出しているウエハ部分をウエットエッチングまたはドライエッチングによって薄肉部50Aの厚さが50〜150μm程度になるまで除去する。そして、残っているレジストを剥離、除去して洗浄すると、薄肉部50Aと流路用凹部50Cの製作が完了する。ウエットエッチングの場合は、エッチング液に浸漬またはスプレー噴射によって溶解する。ドライエッチングの場合は、スパッタ、プラズマ等によってイオンや電子をウエハ50の裏面に照射し、少しずつ削っていく。
【0031】
次に、ウエハ50の表面全体に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはその積層膜からなる電気絶縁膜13を形成する(図5(d))。電気絶縁膜13が酸化シリコン膜の場合は、例えばスパッタリング、CVDあるいはSOG(スピンオングラス)等により形成する。窒化シリコン膜の場合は、スパッタリング、CVD等によって形成する。
【0032】
次に、電気絶縁膜13の各薄肉部50Aを覆っている部分に流速検出手段12、その周辺部に電極パッド14、配線用金属薄膜15および周囲温度検出手段16を周知の薄膜成形技術によって形成する(図5(e))。例えば、白金等の抵抗温度係数の大きい金属を電気絶縁膜13の表面に蒸着し、上記したフォトリソグラフィとエッチングによって形成する。
【0033】
次に、ウエハ50をエッチング、ダイシング等によって各流速検出手段12毎に切断分離することにより複数個のセンサチップ51を同時に製作する(図5(f))。切断するときは、隣り合う厚肉部分の中央で切断すればよい。この切断によってウエハ50は、図1に示した基板6となる。このように1枚のウエハ50から複数個のセンサチップ51を同時に製作すると、大きさ、品質が略一定のものを量産でき、製造コストを低減することができる。
【0034】
次に、センサチップ51と、2つの流路用孔9,10を有する流路形成部材2を重ね合わせ、これらをレーザ溶接によって溶接する(図5(g))。この後、流路形成部材2の上方にスペーサ4を介して図1に示したプリント配線板5を積層配置し、プリント配線板5の配線パターン27と電極パッド14を電気的に接続すると図1および図2に示したフローセンサ1が完成する。
【0035】
図6(a)〜(c)は本発明の第2の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
この第2の製造方法は、2枚の基板素材を積層してウエハを形成した点が上記した第1の製造方法と異なるだけで、その他の工程は同一である。
【0036】
先ず、厚さが50〜150μm程度の薄肉状で表面側が鏡面仕上げされたステンレス製の第1の基板素材60を製作する(図6(a))。また、板厚が0.3〜3mm程度の板状で複数の流路用孔61を有するステンレス製の第2の基板素材62を製作する(図6(b))。流路用孔61はエッチング、エンドミル等によって形成され、図1に示した流路用凹部6Cとして用いられるものである。
【0037】
次に、第1、第2の基板素材60,62を拡散接合等によって接合することにより積層構造のウエハ63を製作する(図6(c))。第1の基板素材60のうち、第2の基板素材62の流路用孔61に対応する部分64は、図1に示した基板6の薄肉状のダイアフラム部6Aとなる部分である。
【0038】
拡散接合は、接合部材の接合面を互いに密着させて真空中で加熱、加圧することによって接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法であるため、接合材を用いる必要がなく、耐腐食性に優れている。また、センサチップのダイアフラム部分の厚さのばらつきを最小限に抑えることができる利点を有している。確実な接合を得るためには適宜な温度(900〜1300°C程度)で加熱することが好ましいが、この場合、第1、第2の基板素材60,62をステンレスで形成しているので、熱膨張係数の相違による応力の発生は生じない。
【0039】
図6(c)以降の製造手順は、図5に示した製造手順(d)〜(g)と同じであるため、その説明を省略する。
【0040】
図7(a)〜(c)は本発明の第3の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
この第3の製造方法は、図1に示した基板6をサファイアによって、流路形成部材2をステンレスによってそれぞれ形成したものである。
【0041】
先ず、板厚が0.3〜3mm程度で、表面70aが鏡面研磨されたサファイア製のウエハ70を用意する(図7(a))。
【0042】
次に、ウエハ70の裏面70bにレーザー、エンドミル、エッチング、超音波加工によって複数の凹部70Cを形成することにより薄肉部70Aと厚肉部70Bを形成する(図7(b))。薄肉部70Aの厚さは、50〜150μm程度である。
【0043】
次に、ウエハ70の各薄肉部70Aの表面側に流速検出手段12、その周辺部に電極パッド14、配線用金属薄膜15および周囲温度検出手段16を形成する。これらの形成は、上記した第1の製造方法の図5(e)において説明した方法と同様に周知の薄膜形成技術によって形成されるため、その説明および図示を省略する。この場合、サファイア製のウエハ70は絶縁材料であるため、ウエハ表面に上記した電気絶縁膜13を予め形成しておく必要はなく、この点でステンレスからなる基板6の製作と異なっている。
【0044】
次に、流速検出手段12、電極パッド14、配線用金属薄膜15および周囲温度検出手段16が形成されたウエハ70をエッチング、ダイシング、レーザー等によって厚肉部70Bの中心線に沿って切断分離し、複数のセンサチップ71を製作する(図7((c))。そして、このセンサチップ71と、2つの流路用孔9,10を有する流路形成部材2とを重ね合わせて接合する(図7((c))。接合に際しては、センサチップ71の裏面にモリブデン、タングステン等の金属膜を予めメタライズしておき、ロー付けによって接合する。この後、センサチップ71の表面上方に図1に示したプリント基板5をスペーサ4を介して配設し、プリント基板5の配線パターン27と電極パッド14を電気的に接続するとサファイア製のフローセンサが完成する。
【0045】
図8(a)〜(c)は拡散接合によって製造する場合の第4の製法方法による製造手順の一部を示す図である。
この第4の製造方法は、図6に示した製造方法と同様であり、先ず、厚さが50〜150μm程度の薄肉状で表面側が鏡面仕上げされたサファイア製の第1の基板素材74を製作する(図8(a))。また、板厚が0.3〜3mm程度の板状で複数の流路用孔75を有するサファイア製の第2の基板素材76を製作する(図8(b))。流路用孔75はレーザー、エッチング、エンドミル、超音波等によって形成され、図1に示した流路用凹部6Cとして用いられるものである。
【0046】
次に、第1、第2の基板素材74,76を拡散接合等によって接合することにより積層構造のウエハ77を製作する(図8(c))。第1の基板素材74のうち、第2の基板素材76の流路用孔75間に対応する部分は、図1に示した基板6のダイアフラム部6Aとなる部分である。
【0047】
このよう製造方法においても、第1、第2の基板素材74,76をサファイアで形成しているので、熱膨張係数の相違による応力の発生が生じない。また、拡散接合は、上記した通り接合部材の接合面を互いに密着させて真空中で加熱、加圧することによって接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法であるため、接合材を用いる必要がなく、耐腐食性に優れている。
【0048】
図9(a)〜(d)は本発明の第5の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
この第5の製造方法は、図1に示した基板6と流路形成部材2をともにセラミックスによって形成したものである。
【0049】
先ず、ウエハ用の焼成型80を用意する(図9(a))。
次に、この焼成型80に粉末状または仮成形したセラミックス81を装填して焼成炉82に装着し、所定温度で所定時間加熱焼成(図9(b))し、セラミックス製のウエハ83を製作する(図9(c))。ウエハ83は、板厚が0.3〜3mm程度で複数の薄肉部83A、厚肉部83Bおよび凹部83Cを有する。薄肉部83Aの厚さは50〜150μm程度である。なお、焼成型80を使用せずにプレス成形したセラミックス81をそのまま焼成炉82で焼成してウエハ83を製作してもよい。
【0050】
次に、ウエハ83の表面を鏡面研磨した後、各薄肉部83Aに流速検出手段12、その周辺部に電極パッド14、配線用金属薄膜15および周囲温度検出手段16を形成する。これらの形成は、上記した第1の製造方法の図5(e)において説明した方法と全く同じ方法で形成されるため、その説明および図示を省略する。この場合、セラミックス製のウエハ83は、上記したサファイア製と同様に絶縁材料であるため、予め電気絶縁膜13を形成しておく必要はない。
【0051】
次に、流速検出手段12、電極パッド14、配線用金属薄膜15および周囲温度検出手段16が形成されたウエハ83をダイシング等によって厚肉部83Bの中心線に沿って切断分離し、複数のセンサチップ84を製作する(図8(d))。そして、このセンサチップ84と、2つの流路用孔9,10を有する流路形成部材2を重ね合わせる部分に予めモリブデン、タングステン等をメタライズしておき、ロー付け等により接合する。流路形成部材2はセラミックス製であるため、例えば前記ウエハ83と同様に、加熱焼成によってウエハを製作した後、このウエハをダイシング等によって切断分離することにより製作される。あるいは、通常の機械加工で流路形成部材2を製作してもよい。
【0052】
この後、センサチップ84の表面上方に図1に示したプリント基板5をスペーサ4を介して配置し、プリント基板5の配線パターン27と電極パッド14を電気的に接続すると、セラミックス製のフローセンサが完成する。
【0053】
このようなフローセンサの製造方法にあっては、基板材料がステンレス、サファイア、セラミックスのいずれであっても、1枚のウエハを小さく切断分離することにより、品質の揃った複数個のセンサチップ51,71または84を同時に製作することができるので、バッチプロセスによる量産が可能で、製造コストを低減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施の形態に何ら限定されるものではなく、種々の変更、変形が可能である。例えば、基板6と流路形成部材2の材質を適宜変更し得る。
また、基板6と流路形成部材2はOリング等のシール材を介してボルトなどで接合したり、接着剤などで接着してもよい。
また、流路形成部材2に設けられる流路用孔9,10は、流路形成部材2の表裏面に貫通する貫通孔に限らず、表面と側面に貫通するL字型の孔であってもよい。
また、基板素材表面の鏡面研磨は流路用凹部6Cを形成した後に行ってもよく、流路用凹部6Cの形状も長円形に限定されるものではない。
さらに、バッチプロセスによる量産に限らず、一個ずつ製作してもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るフローセンサの製造方法によれば、単体からなるチップはもとよりバッチプロセスよる製作が可能で、特にバッチプロセスの場合は品質の揃った複数個のセンサチップを大量生産することが可能で、生産性を向上させるとともに製造コストを低減することができる。
また、基板と流路形成部材をステンレス、サファイアまたはセラミックスで製作しているので、耐熱性、耐食性に優れたフローセンサを製作することができ、液体や腐食性気体の測定にも対応でき、特にステンレスは耐食性、加工性、熱伝導率、剛性の面で非常に適した材料であり、また耐腐食性を特に高める必要がある場合はサファイアが好適である。
さらに、流速検出手段が流体に直接接触しないので、信頼性および耐久性の高いセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る製造方法によって製造されたフローセンサの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】 センサチップ部分の平面図である。
【図3】 フローセンサの定温度差回路を示す図である。
【図4】 センサ出力回路を示す図である。
【図5】 (a)〜(g)は本発明の第1の製造方法による製造手順を示す図である。
【図6】 (a)〜(c)は本発明の第2の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
【図7】 (a)〜(c)は本発明の第3の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
【図8】 (a)〜(c)は本発明の第4の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
【図9】 (a)〜(d)は本発明の第5の製造方法による製造手順の一部を示す図である。
【符号の説明】
1…フローセンサ、2…流路形成部材、6…基板、6A…ダイアフラム部、6B…固定部、6C…流路用凹部、4…スペーサ、5…プリント基板、7…流体、8…流路、9,10…流路用孔、12…流速検出手段、13…電気絶縁膜、16…周囲温度検出手段、20…発熱体、21A,21B…温度センサ、50…ウエハ、51…センサチップ、60…第1の基板素材、62…第2の基板素材、63…基板素材、70…ウエハ、71…センサチップ、77…ウエハ、83…ウエハ、84…センサチップ。
Claims (5)
- 外周部に厚肉部が設けられ、中央部が前記厚肉部と同一材料からなる薄肉のダイアフラム部を形成し、表面が前記厚肉部と同一平面を形成し、裏面側に流路用凹部が形成された基板と、前記ダイアフラム部の表面側に設けられた流速検出手段とでセンサチップを形成し、前記基板の厚肉部裏面側に流路形成部材を接合し、この流路形成部材と前記基板の前記流路用凹部とで被測定流体の流路を形成してなるフローセンサの製造方法であって、
表面全体が仕上げ加工によって平滑面に形成された基板素材の外周部を厚肉部として残し、裏面中央部に流路用凹部を表面側に僅かな肉厚を残して形成することにより、この薄肉部分をダイアフラム部とするダイアフラム形成工程と、
前記基板素材の表面で前記ダイアフラム部に対応する部分に流速検出手段を形成してセンサチップとする工程と、
前記基板素材の厚肉部裏面を流路形成部材に接合するチップ接合工程と、
を備えたことを特徴とするフローセンサの製造方法。 - 外周部に厚肉部が設けられ、中央部が前記厚肉部と同一材料からなる薄肉のダイアフラム部を形成し、表面が前記厚肉部と同一平面を形成し、裏面側に流路用凹部が形成された基板と、前記ダイアフラム部の表面側に設けられた流速検出手段とでセンサチップを形成し、前記基板の厚肉部裏面側に流路形成部材を接合し、この流路形成部材と前記基板の前記流路用凹部とで被測定流体の流路を形成してなるフローセンサの製造方法であって、
表面全体が仕上げ加工によって平滑面に形成された基板素材の外周部を厚肉部として残し、裏面中央部に複数の流路用凹部を表面側に僅かな肉厚を残して形成することにより、この薄肉部分をダイアフラム部とするダイアフラム形成工程と、
前記基板素材の表面で各ダイアフラム部に対応する部分に流速検出手段を形成する工程と、
前記基板素材を各流速検出手段ごとに分離することにより、裏面側にそれぞれ厚肉部を有する複数のセンサチップを形成するチップ形成工程と、
切断されたセンサチップの厚肉部を流路形成部材に接合するチップ接合工程と、
を備えたことを特徴とするフローセンサの製造方法。 - 請求項1または2記載のフローセンサの製造方法において、
基板素材が、薄肉状の第1の基板素材を製作する工程と、この第1の基板素材と同一材料からなり流路用孔を有する板状の第2の基板素材を製作する工程と、前記第1、第2の基板素材を重ね合わせて拡散接合する工程によって製作されることを特徴とするフローセンサの製造方法。 - 請求項1,2または3記載のフローセンサの製造方法において、
基板素材がステンレスで、表面に電気絶縁膜が形成されていることを特徴とするフローセンサの製造方法。 - 請求項1または2記載のフローセンサの製造方法において、
基板素材がサファイアまたはセラミックスであることを特徴とするフローセンサの製造方法。
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