JP3686324B2 - 油圧走行車両 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ホイール式油圧ショベルなどの油圧走行車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホイール式油圧ショベル等の油圧走行車両は、原動機で駆動される可変容量油圧ポンプからの吐出油を駆動源とし、この圧油を走行用油圧モータに供給して走行駆動するとともに、作業用アクチュエータに供給して掘削などの作業を行う。この場合、走行用油圧モータや作業用アクチュエータの駆動圧が所定値以上になると可変容量油圧ポンプの傾転量を小さくする、馬力制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、今日、油圧モータを小型化することが効率などの点から望まれている。しかしながら、油圧モータを小型化すると、車両の高速走行時にモータが過回転するおそれがある。それを防止するため、例えば走行時の原動機回転数を作業時の原動機回転数よりも低く設定すると、走行、作業を繰り返し行うような場合に回転数が頻繁に切り換えられ、運転者にとって不快なものとなる。
【0004】
本発明の目的は、モータの過回転を防止しつつ、運転フィーリングを向上させることができる油圧走行車両の原動機回転数制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
実施の形態の図面に対応付けて本発明を説明する。
(1)請求項1に記載の油圧走行車両は、原動機2で駆動される油圧ポンプ10,20と、油圧ポンプ10,20から吐出される圧油で駆動される走行用油圧モータ1と、油圧ポンプ10,20から吐出される圧油で駆動される作業用油圧アクチュエータ32〜35と、走行用油圧モータ1の回転数を調節するアクセルペダル15と、作業用油圧アクチュエータ32〜35を操作する操作レバー手段BLと、アクセルペダル15の操作を検出するペダル検出手段45と、操作レバー手段BLの操作を検出する操作レバー検出手段44と、原動機2の回転数を調節する回転数調節手段28と、回転数調節手段28を制御する回転数制御手段50と、走行時の原動機2の回転数の上限を設定する走行上限設定手段47とを備え、操作レバー検出手段44により操作レバー手段BLの操作が検出されないとき、ペダル検出手段45によりアクセルペダル15の操作が所定時間t1以上検出されると、原動機2の回転数が少なくとも走行上限設定手段47により設定された回転数になるように、回転数制御手段50が回転数調節手段28を制御することにより上述した目的は達成される。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の油圧走行車両において、原動機2の回転数Naを設定する回転数設定手段46を備え、操作レバー検出手段44により操作レバー手段BLの操作が検出されると、アクセルペダル15の操作に拘わらず、原動機2の回転数が回転数設定手段46により設定された回転数Naになるように、回転数制御手段50が回転数調節手段28を制御するものである。(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の油圧走行車両において、操作レバー検出手段44により操作レバー手段BLの操作が検出されないとき、ペダル検出手段45によりアクセルペダル15の操作が所定時間t1以上検出されると、原動機2の回転数が走行上限設定手段47によって設定された回転数または回転数設定手段46によって設定された回転数Naのいずれか低い値になるように、回転数制御手段50が回転数調節手段28を制御するものである。
(4)請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の油圧走行車両において、油圧ポンプ10を可変容量型として、この油圧ポンプ10に作用する負荷を検出する負荷検出手段41を備え、負荷検出手段41によって検出された負荷が所定値P1以上になると、原動機2の回転数が少なくとも走行上限設定手段47により設定された回転数よりも高い値になるように、回転数制御手段50が回転数調節手段28を制御するものである。
(5)請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の油圧走行車両において、回転数制御手段50が、ペダル検出手段45の故障を判定する故障判定手段55を有し、故障判定手段55によりペダル検出手段の故障が判定されると、原動機2の回転数が少なくとも走行上限設定手段47により設定された回転数になるように、回転数調節手段28を制御するものである。
【0006】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【実施の形態】
図1〜図10により本発明をホイール式油圧ショベルに適用した場合について説明する。ホイ−ル式油圧ショベルは、ホイール式(タイヤ式)の走行体上に旋回体を旋回可能に搭載し、この旋回体に作業用アタッチメントを取付けたものである。
【0008】
図1は本発明によるホイール式油圧ショベルの油圧回路図である。この油圧回路は、図示しないエンジンにより駆動されるメインポンプ10,20と、メインポンプ10に対して直列に配設された4つのコントロールバルブ11〜14と、メインポンプ20に対して直列に配設された5つのコントロールバルブ21〜25と、コントロールバルブ11,25により制御された圧油により駆動される走行モータ1と、コントロールバルブ12により制御された圧油により駆動されるバケットシリンダ32と、コントロールバルブ13,23により制御された圧油により駆動されるブームシリンダ33と、コントロールバルブ14,22により制御された圧油により駆動されるアームシリンダ34と、コントロールバルブ21により制御された圧油により駆動される旋回モータ35とを備えている。コントロールバルブ24は予備のコントロールバルブである。走行モータ1,ブームシリンダ33,アームシリンダ34はメインポンプ10,20からの圧油が合流して動作速度を高速化する合流回路で駆動される。パイロットポンプ10Aは後述するパイロット回路へパイロット圧油を供給するとともに、後述するアクセルペダルの操作/非操作、操作レバーの操作/非操作の検出回路(図5)にも供給される。
【0009】
図2は図1に示した走行油圧回路の詳細を示す図である。なお、図2の走行油圧回路は図1の一方のメインポンプ10と一方の走行用コントロールバルブ11について示すものである。図2に示すように、エンジン(原動機)2により駆動される可変容量型メインポンプ10からの吐出油は、コントロールバルブ11によりその方向および流量が制御され、カウンタバランスバルブ3を内蔵したブレーキバルブ4を経て可変容量型走行モータ1に供給される。走行モータ1の回転はトランスミッション5によって変速され、プロペラシャフト6,アクスル7を介してタイヤ8に伝達され、ホイール式油圧ショベルが走行する。走行駆動圧力(モータ駆動圧)はポンプ圧力として圧力センサ41で検出される。トランスミッション5の変速比は不図示のレバー操作によりロー/ハイいずれかに決定される。
【0010】
メインポンプ10の傾転量はポンプレギュレータ10Bにより調整される。ポンプレギュレータ10Bはトルク制限部を備え、このトルク制限部にポンプ吐出圧力がフィードバックされ、馬力制御が行なわれる。馬力制御とは図3に示すようないわゆるP−qp制御である。なお、本実施の形態では、アクセルペダル15の操作量に応じて原動機回転数が変化する、いわゆるアクセル制御ではなく、アクセルペダル15の操作量に応じてコントロールバルブ11の開度を制御する、いわゆるバルブ制御を行う。このバルブ制御の下、後述するように、走行時の最高回転数は1600r.p.m.に、高馬力走行時の回転数は2150r.p.mに、作業時の最高回転数は1950r.p.m.にそれぞれ制御される。この馬力制御により、ポンプ吐出圧力Pとポンプ傾転量qpとで決定される負荷がエンジン出力を上回らないように、レギュレータ10Bによってポンプ傾転量qpが制御される。すなわち、上記フィードバックポンプ圧力Pがレギュレータ10Bに導かれると、図3のP―qp線図に沿ってポンプ傾転量qpが制御される。
【0011】
走行モータ1の傾転量はレギュレータ1Aで調整される。レギュレータ1Aにはモータ駆動圧に応じたパイロット圧が作用するようになっており、これによって、モータ傾転量qmは例えば大小2段階に切り換えられる。すなわち、モータ駆動圧が所定値P1以上になるとレギュレータ1Aに所定以上のパイロット圧が作用してモータ傾転量qmは最大とされ、モータ駆動圧が所定値P1未満ではモータ傾転量qmは最小とされる。
【0012】
パイロット回路は、パイロットポンプ10Aと、アクセルペダル15の踏込みに応じてパイロット2次圧力を発生する一対の走行パイロットバルブ16A,16Bと、このパイロットバルブ16A,16Bに後続し、パイロットバルブ16A,16Bへの戻り油を遅延する一対のスローリターンバルブ17A,17Bとを有する。アクセルペダル15は、その前側の踏み込み操作(前踏み)および後側の踏み込み操作(後踏み)によりそれぞれ前方向および後方向へ回動可能であり、前踏みによりパイロットバルブ16Aが駆動され、後踏みによりパイロットバルブ16Bが駆動される。これによって、パイロット回路からのパイロット圧はコントロールバルブ11のパイロットポートに作用し、そのパイロット圧に応じてコントロールバルブ11はF位置またはR位置に切り換えられる。その結果、メインポンプ10からの圧油が走行モータ1に作用し、ペダル操作量に応じた速度で走行モータ1が回転し、車両が走行する。
【0013】
アクセルペダル15の前踏みによる車両走行中にペダル操作をやめると、走行パイロットバルブ16Aがパイロットポンプ10Aからの圧油を遮断し、その出口ポートがタンクと連通される。この結果、コントロールバルブ11のパイロットポートに作用していた圧油がスローリターンバルブ17A,走行パイロットバルブ16Aを介してタンクに戻る。このとき、スローリターンバルブ17Aの絞りにより戻り油が絞られるから、コントロールバルブ11は徐々に中立位置に切り換わる。コントロールバルブ11が中立位置に切り換わると、メインポンプ10からの吐出油はタンクへ戻り、走行モータ1への駆動圧油の供給が遮断され、カウンタバランスバルブ3も図示の中立位置に切り換わる。
【0014】
この場合、車体は慣性力により走行を続け、走行モータ1はモータ作用からポンプ作用に変わり、図中Bポート側が吸入、Aポート側が吐出となる。走行モータ1からの圧油は、カウンタバランスバルブ3の絞り(中立絞り)により絞られるため、カウンタバランスバルブ3と走行モータ1との間の圧力が上昇して走行モータ1にブレーキ圧として作用する。これにより走行モータ1はブレーキトルクを発生し車体を制動させる。ポンプ作用中に吸入油量が不足すると、走行モータ1にはメイクアップポート18より油量が補充される。ブレーキ圧はリリーフバルブ19A,19Bにより、その最高圧力が規制される。
【0015】
ホイール式油圧ショベルの作業アタッチメントはたとえば、ブーム、アーム、バケットからなる。運転室にはアーム用、ブーム用およびバケット用のパイロット操作レバーが設けられている。図4は作業アタッチメント用パイロット回路を代表してブームパイロット回路を示している。ブーム操作レバーBLを操作すると、その操作量に応じて減圧弁(パイロットバルブ)PVで減圧されたパイロットポンプ10Aからの圧力により油圧パイロット切換式のブーム用コントロールバルブ13,23(図1)が切換わり、メインポンプ10からの吐出油がコントロールバルブ13,23を介してブームシリンダ33に導かれ、ブームシリンダ33の伸縮によりブームが昇降する。ブーム操作レバーBLをブーム上げ側に操作するとブームシリンダ33のボトム側に圧油が供給され、ブーム下げ側に操作するとブームシリンダ33のロッド側に圧油が供給される。
【0016】
図5は、アクセルペダル15の操作/非操作状態と、操作レバーの操作/非操作状態とを検出する回路を説明する図である。パイロットポンプ10Aからの吐出油は、管路L1を介してバケット用コントロールバルブ12、ブーム用コントロールバルブ13、アーム用コントロールバルブ14、旋回用コントロールバルブ21、アーム用コントロールバルブ22、ブーム用コントロールバルブ23および予備用コントロールバルブ24を通ってタンクへ導かれるとともに、管路L2を介して走行モータ用コントロールバルブ11および25を通ってタンクへ導かれる。管路L1、L2にはそれぞれ絞り42,43が設けられ、絞り42,43の下流側に作業用圧力スイッチ44と走行用圧力スイッチ45がそれぞれ設けられている。コントロールバルブ12〜14,21〜24のいずれか一つが操作されると、絞り42の下流側の管路L1の圧力が上昇し、圧力スイッチ44がオンしてコントロールバルブ12〜14,21〜24すなわち操作レバーの操作が検出される。同様に、コントロールバルブ11,25が操作されると、絞り45の下流側の管路L2の圧力が上昇し、圧力スイッチ45がオンしてコントロールバルブ11,25、すなわちアクセルペダル15の操作が検出される。
【0017】
図6はエンジン回転数を制御する制御回路のブロック図であり、CPUなどで構成されるコントローラ50により各機器が制御される。エンジン2のガバナ26は、リンク機構27を介してパルスモータ28に接続され、パルスモータ28の回転によりエンジン回転数が制御される。すなわち、パルスモータ28の正転でエンジン回転数が上昇し、逆転で低下する。このパルスモータ28の回転は、コントローラ50からの制御信号により制御される。ガバナ26にはリンク機構27を介してポテンショメ−タ29が接続され、このポテンショメ−タ29によりエンジン2の回転数に応じたガバナレバー角度を検出し、エンジン制御回転数Nθとしてコントローラ50に入力される。コントローラ50にはまた、運転室からの操作によりエンジン回転数を設定する回転数設定ダイヤル46と、図1に示した圧力センサ41と、図5に示した圧力スイッチ44,45と、所定の回転数1600r.p.m.,2150r.p.m.を設定する回転数設定器47,48と、所定の最小回転数(例えば900r.p.m.)を設定する回転数設定器49がそれぞれ接続されている。なお、回転設定ダイヤル46では900r.p.m.〜1950r.p.m.の範囲で回転数が設定される。
【0018】
図7はコントローラ50の詳細を説明する概念図である。関数発生器51は、予め定められた図示のような特性により回転数設定ダイヤル46(ポテンショメータ)からの信号に対応する目標回転数(ダイヤル回転数Na)を出力する。回転数設定器47に設定された所定回転数1600r.p.m.は、回転数制限スイッチ52が閉じているとき最小値選択回路53に入力される。最小値選択回路53では設定回転数1600r.p.m.とダイヤル回転数Naとを比較し、2入力のうち最小値を選択する。回転数制限スイッチ52は以下のような閉成信号により閉じられる。
【0019】
走行用圧力スイッチ45からのオン/オフ信号はタイマ54と故障判定回路55にそれぞれ入力される。タイマ54は、走行用圧力スイッチ45からのオン信号を所定時間t1(例えば2秒)計時すると閉成信号出力器56に所定の信号を出力する。これによって、閉成信号出力器56は閉成信号を出力し、回転数制限スイッチ52を閉じる。所定時間t1計時後は、リセット信号が入力されるまで閉成信号出力器56はタイマの状態に拘わらず閉成信号を続けて出力する。タイマ54は走行用圧力スイッチ45からのオフ信号により、またはオン信号の所定時間t1の計時によりリセットされる。作業用圧力スイッチ44からのオン/オフ信号は閉成信号出力器56と閉成信号スイッチ57にそれぞれ入力される。閉成信号出力器56からの閉成信号は、作業用圧力スイッチ44からのオン信号(リセット信号)によってその出力を停止する。閉成信号スイッチ57は、作業用圧力スイッチ44からのオン信号によって開放され、オフ信号によって閉じられる。
【0020】
故障判定回路55は走行用圧力スイッチ45の故障を判定する。走行用圧力スイッチ45は、正常時には5Vの入力に対して0.5V(オフ信号)、または4.5V(オン信号)を出力するように調整されている。圧力スイッチ55が異常信号を出力すると、すなわち、5Vを出力すると故障判定回路55はスイッチ45の断線と判定し、0Vを出力するとショートと判定して、回転数制限スイッチ52に閉成信号を出力する。これによって、走行用圧力スイッチ45の故障時に、回転数制限スイッチ52が閉じられる。
【0021】
関数発生器58は、圧力センサ41からの検出信号Pdが所定値(例えば、モータ傾転量qmの切換圧力P1)以上になるとハイレベル信号を出力し、所定値未満ではローレベル信号を出力する。アンドゲート59は、走行用圧力スイッチ45がオン、すなわち、走行用圧力スイッチ45から4.5Vが入力され、かつ関数発生器58からハイレベル信号が出力されると切換信号を出力し、設定切換スイッチ61を接点b側から接点a側に切り換える。設定切換スイッチ61の各接点a,bはそれぞれ回転数設定器48,49に接続されている。設定切換スイッチ61が接点a側に切り換えられると設定回転数2150r.p.m.が最大値選択回路62に入力され、接点b側に切り換えられると設定回転数900r.p.m.が最大値選択回路62に入力される。
【0022】
最大値選択回路62では、設定回転数2150r.p.m.または900r.p.m.と最小値選択回路53で選択された回転数とを比較し、その最大値を選択する。そして、選択値(回転数指令値Nin)は、サーボ制御部63でポテンショメータ29により検出したガバナレバー27の変位量に相当する制御回転数Nθと比較され、図8に示す手順にしたがって両者が一致するようにパルスモータ28が制御される。
【0023】
図8において、まずステップS21で回転数指令値Ninと制御回転数Nθとをそれぞれ読み込み、ステップS22に進む。ステップS22では、Nθ−Ninの結果を回転数差Aとしてメモリに格納し、ステップS23において、予め定めた基準回転数差Kを用いて、|A|≧Kか否かを判定する。肯定されるとステップS24に進み、回転数差A>0か否かを判定し、A>0ならば制御回転数Nθが回転数指令値Ninよりも大きい、つまり制御回転数が目標回転数よりも高いから、エンジン回転数を下げるためステップS25でモータ逆転を指令する信号をパルスモータ28に出力する。これによりパルスモータ28が逆転しエンジン2の回転数が低下する。
【0024】
一方、A≦0ならば制御回転数Nθが回転数指令値Ninよりも小さい、つまり制御回転数が目標回転数よりも低いから、エンジン回転数を上げるためステップS26でモータ正転を指令する信号を出力する。これにより、パルスモータ28が正転し、エンジン回転数が上昇する。ステップS23が否定されるとステップS27に進んでモータ停止信号を出力し、これによりエンジン41の回転数が一定値に保持される。ステップS25〜S27を実行すると始めに戻る。
【0025】
以上のように構成された油圧走行車両の特徴的な動作についてさらに具体的に説明する。
(1) 図9は、圧力スイッチ44,45とエンジン回転数との関係を示すタイムチャートである。なお、図9では、圧力センサ41によって検出されたモータ駆動圧は所定値未満(Pd<P1)であり、関数発生器58はローレベル信号を出力する。これによって、図7の設定切換スイッチ61は接点b側に切り換えられ、最大値設定回路には回転数900r.p.m.が入力される。また、回転数設定ダイヤル46によりダイヤル回転数Naを掘削作業に適した回転数(例えば1950r.p.m.)に設定しており、そのダイヤル回転数1950r.p.m.が最小値設定回路53に入力される。
【0026】
−走行または作業の単独動作−
ここで、操作レバーが非操作、かつアクセルペダル15が非操作のとき、圧力スイッチ44,45はともにオフ信号を出力し、最小値設定回路53ではダイヤル回転数1950r.p.m.が選択され、さらに、最大値設定回路62でもダイヤル回転数1950r.p.m.が選択される。サーボ制御部63ではポテンショメータ29からの検出値に相当する制御回転数Nθがこの回転数1950r.p.m.となるようにパルスモータ28を制御し、これによって、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.に制御される。その状態からアクセルペダル15を踏み込み操作して車両走行を開始すると走行用圧力スイッチ45はオン信号を出力し、タイマ54が起動する。タイマ起動後、所定時間未満(t<2)でアクセルペダル15の操作をやめると、閉成信号出力器56は閉成信号を出力することなく、図9(a)に示すように、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.のままである(t=t1)。これによって、わずかな車両移動のような場合にエンジン回転数がいちいち変化することなく、運転フィーリングが良好である。
【0027】
一方、タイマ起動後、所定時間(t=2)が経過すると閉成信号出力器56は閉成信号を出力して閉成信号スイッチ57を閉じ、最小値設定回路53では回転数設定器47の設定回転数1600r.p.m.が選択され、最大値選択回路62でもその回転数1600r.p.m.が選択される。その結果、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t2)。これによって、通常の車両走行時にはエンジン回転数が設定回転数1600r.p.m.に抑えられ、ポンプ吐出量が制限されて走行モータ1の過回転が防止される。その後、アクセルペダル15の操作をやめるとタイマ54はリセットされるが、閉成信号出力器56は閉成信号を続けて出力し、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に保たれる(t=t3)。これによって、信号待ち等でアクセルペダル15の操作をやめてもエンジン回転数は抑えられたままであり、燃費の悪化が防止される。
【0028】
その状態から、操作レバーを操作すると、作業用圧力スイッチ44はオン信号を出力し、閉成信号出力器56をリセットして閉成信号の出力を停止させるとともに、閉成信号スイッチ57を開放する。その結果、回転数制限スイッチ52は開放され、最小値選択回路53ではダイヤル回転数1950r.p.m.が選択されて、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.に制御される(t=t4)。これによって、操作レバーの操作によりエンジン回転数は即座にダイヤル回転数1950r.p.m.に制御され、作業性が向上する。その後、操作レバーの操作をやめると作業用圧力スイッチ44はオフ信号を出力し、閉成信号スイッチ57を閉じる。このとき、閉成信号出力器56は閉成信号を出力しないので、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.のままである(t=t5)。したがって、操作レバーを繰り返し操作する場合には、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.に保たれ、回転数の頻繁な変更が防止される。
【0029】
−作業と走行の複合動作−
操作レバーとアクセルペダル15を複合操作した場合、エンジン回転数は次のように変化する。すなわち、車両走行時にエンジン回転数が設定回転数1600r.p.m.に制御された状態(t=t60)で、操作レバーを操作すると、作業用圧力スイッチ44からのオン信号により閉成信号スイッチ57が開放する。これによって、回転数制限スイッチ52が開放し、図9(b)に示すように、エンジン回転数はダイヤル回転数1950r.p.m.に制御される(t=t6)。また、車両走行時に操作レバーを操作してエンジン回転数をダイヤル回転数1950r.p.m.とした後(t=t70)、走行中に操作レバーの操作をやめてタイマ54が所定時間(t=2)を計時すると、閉成信号出力器56は閉成信号を出力し、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t7)。これによって、車両走行時には操作レバーの操作をやめてから所定時間(t=2)待たずに、エンジン回転数を設定回転数1600r.p.m.にすることができる。
【0030】
作業時にエンジン回転数がダイヤル回転数1950r.p.m.に制御された状態で、アクセルペダル15を操作してタイマ54が所定時間(t=2)を計時後(t=t80)、操作レバーの操作をやめると、即座に閉成信号出力器56は閉成信号を出力し、図9(c)に示すように、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t8)。これによって、作業終了直後にエンジン回転数を抑えて走行することができる。
【0031】
(2) 回転数設定ダイヤル46の設定値(ダイヤル回転数)を変化させた場合、その設定値と圧力スイッチ44,45、エンジン回転数との関係は図10(a)、(b)に示すようになる。なお、図10(a)、(b)では圧力センサ41によって検出されたモータ駆動圧は所定値以下(Pd<P1)である。図10(a)に示すように、ダイヤル設定値を回転数設定器47で設定された設定回転数1600r.p.m.以下に設定すると、アクセルペダル15の操作に拘わらず、すなわち回転数制限スイッチ52の開閉に拘わらず、最小値選択回路53ではダイヤル回転数が選択される。これによって、エンジン回転数はダイヤル回転数に追従して制御され、例えばダイヤル回転数を1000r.p.m.に設定すれば車両の微速走行などが容易になる。
【0032】
図10(b)に示すように、ダイヤル回転数を最大値1950r.p.m.に設定し、アクセルペダル15を所定時間(t=2)以上操作すれば、最小値選択回路53では設定回転数1600r.p.m.が選択され、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t9)。その後、ダイヤル回転数を設定回転数1600r.p.m.以下(例えば1000r.p.m.)に設定すると、エンジン回転数はそのダイヤル回転数1000r.p.m.に制御され(t=t10)、ダイヤル回転数を最大値1950r.p.m.に設定すれば、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t11)。すなわち、走行時にはダイヤル回転数の大きさに拘わらずエンジン回転数は少なくとも設定回転数1600r.p.m.以下に抑えられ、これによって、走行モータ1の過回転が防止される。操作レバーを操作すると、閉成信号の出力が停止して最小値選択回路53ではダイヤル設定値1950r.p.m.が選択され、エンジン回転数はダイヤル回転数1950に制御される(t=t12)。これによって、以降、エンジン回転数はダイヤル回転数に追従して変化する。
【0033】
(3) 圧力センサ41の検出値Pdと回転数設定ダイヤル46の設定値、走行用圧力スイッチ45、エンジン回転数との関係は図10(c)に示すようになる。なお、図10(c)では、作業用圧力スイッチはオフ信号を出力している。車両走行時にモータ駆動圧が増加して圧力センサ41の検出値が所定値P1以上になると、関数発生器58はハイレベル信号を出力し、設定切換スイッチ61を接点a側に切り換える。その結果、最大値設定回路62では回転数設定器48で設定された設定回転数2150r.p.m.が選択されて、エンジン回転数は設定回転数2150r.p.m.になる(t=t13)。これにより、高馬力走行が可能となり、車両発進時等、モータ駆動トルクが大きくなる場合でも出力不足のないスムーズな走行が行える。その後、モータ駆動トルクが減少して圧力センサ41の検出値Pdが所定値P1以下になると、関数発生器58はローレベル信号を出力し、設定切換スイッチ61を接点b側に切り換える。これにより、最大値選択回路62では設定回転数1600r.p.m.が選択され、エンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.に制御される(t=t14)。その結果、低馬力走行時にはエンジン回転数が設定回転数1600r.p.m.(ダイヤル回転数が1600r.p.m.以下のときはダイヤル回転数)まで減少し、エンジン回転数は負荷に応じて最適に制御される。
【0034】
故障判定回路55により走行用圧力スイッチ45の故障判定がなされると、故障判定回路55は回転数制限スイッチ52に閉成信号を出力する。これによって、最小値選択回路53では設定回転数1600r.p.m.またはダイヤル回転数の最小値が選択され、その選択値は最大値選択回路62でもそのまま選択されて、エンジン回転数は少なくとも設定回転数1600r.p.m.以下に抑えられる。これによって、センサの故障時であっても走行モータ1の過回転が防止される。
【0035】
このように本実施の形態では、アクセルペダル15が所定時間以上操作されると、エンジン回転数を少なくとも所定の設定回転数1600r.p.m.以下に制御するようにしたので、走行モータ1の過回転が防止されるとともに、わずかな車両移動と作業とを繰り返し行う場合などにエンジン回転数が頻繁に変わることなく、運転フィーリングが向上する。また、例えば図9のt=t2に示したように、アクセルペダル15の操作を開始してから所定時間後にエンジン回転数が減少するので、ペダル操作開始と同時にエンジン回転数が減少する場合のような違和感がない。また、モータ駆動圧に応じてエンジン回転数を所定の設定回転数2150r.p.m.まで増加させるようにしたので、高馬力運転も可能である。さらに、走行時にエンジン回転数をダイヤル設定値と設定回転数1600r.p.m.のいずれか最小値に制御するようにしたので、車両の微速走行も容易に行える。
【0036】
また、操作レバーが操作されると、即座にエンジン回転数をダイヤル設定値に制御するようにしたので、操作レバーの操作と同時にエンジン回転数を作業に適した値に制御することができ、作業性が向上する。さらに、操作レバーの操作により閉成信号出力器56からの信号をリセットするようにしたので、エンジン回転数が設定回転数1600r.p.m.に制御されると、以降、信号待ちなどによりアクセルペダル15の操作をやめても操作レバーが操作されるまでエンジン回転数は設定回転数1600r.p.m.のままであり、燃費の悪化を防止することができる。
【0037】
さらにまた、走行、作業を圧力スイッチ44,45により検出し、その検出値に基づいてエンジン回転数を制御するようにしたので、走行、作業を切り換える切換スイッチなどの操作が不要である。また、アクセル制御では走行パイロット圧を検出するためのセンサが必要になるが、本実施の形態ではコントロールバルブ11の切換量に応じてエンジン回転数を制御するので、その種のセンサが不要となる。さらに、走行用圧力スイッチ45の故障を判定し、故障時にエンジン回転数を設定回転数1600r.p.m.以下に制限するようにしたので、この場合も走行モータ1の過回転が防止される。
【0038】
なお、上記実施の形態では、走行用圧力スイッチ45によりアクセルペダル15の操作を検出するようにしたが、アクセルペダル15の所定量以上の操作を検出するようにしてもよい。また、高馬力走行以外において、走行時のエンジン回転数の上限を作業時のエンジン回転数の上限よりも低く設定したが、ポンプ傾転量qpを制限することで走行モータ1の過回転が防止できれば、走行時のエンジン回転数の上限を作業時のエンジン回転数の上限よりも高く設定してもよい。さらに、上記実施の形態では、回転数設定ダイヤル46により作業時の回転数を可変に設定するようにしたが、重負荷モード、軽負荷モードなどの作業モードに応じてエンジン回転数を設定するようにしてもよい。さらにまた、作業時のエンジン回転数を可変とするのではなく、所定回転数に固定してもよい。また、上記実施の形態では、アクセルペダル15の所定時間の操作後、エンジン回転数を所定回転数に設定し、ペダル操作をやめてもその回転数を保持するようにしたが、ペダル非操作時にエンジン回転数を別の回転数(例えばアイドル回転数)に制御するようにしてもよい。さらに、モータ駆動圧に応じて高馬力運転を行うようにしたが、新たに高馬力運転スイッチを設け、このスイッチオンにより高馬力運転を有効とし、スイッチオフにより高馬力運転を禁止するようにしてもよい。油圧ポンプ10を可変容量型としたが、固定容量型としてもよい。
【0039】
以上の実施の形態において、操作レバーBLなどが操作レバー手段を、パルスモータ28などが回転数調節手段を、走行用圧力スイッチ45がペダル検出手段を、作業用圧力スイッチ44が操作レバー検出手段を、コントローラ50が回転数制御手段を、回転数設定器47が走行上限設定手段を、回転数設定ダイヤル46が回転数設定手段を、圧力センサ41が負荷検出手段を、故障判定回路55が故障判定手段をそれぞれ構成する。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)請求項1の発明によれば、操作レバー手段の操作が検出されないとき、アクセルペダルの操作が所定時間以上検出されると、原動機の回転数を少なくとも走行上限設定手段で設定された上限値に制限するようにしたので、モータの過回転が防止されるとともに、わずかな車両移動と作業とを繰り返し行う場合などにエンジン回転数が頻繁に変わることなく、運転フィーリングが向上する。
(2)請求項2の発明によれば、操作レバー手段の操作が検出されると、アクセルペダルの操作に拘わらず、原動機の回転数を回転数設定手段で設定された設定値に制御するようにしたので、操作レバーの操作と同時にエンジン回転数を作業に適した値に制御することができ、作業性が向上する。
(3)請求項3の発明によれば、操作レバー手段の操作が検出されないとき、アクセルペダルの操作が所定時間以上検出されると、原動機の回転数を走行上限設定手段または回転数設定手段で設定された回転数のいずれか低い値に制御するようにしたので、車両の微速走行も容易に行える。
(4)請求項4の発明によれば、可変容量油圧ポンプに作用する負荷が所定値以上になると、原動機の回転数を少なくとも走行上限設定手段で設定された回転数よりも高い値に制御するようにしたので、高馬力運転も可能である。
(5)請求項5の発明によれば、アクセルペダルの操作を検出するペダル検出手段の故障が判定されると、原動機の回転数を少なくとも走行上限設定手段で設定された上限値に制限するようにしたので、センサの故障時にも走行モータの過回転が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるホイール式油圧ショベルの油圧回路図。
【図2】図1の走行油圧回路の詳細を示す図。
【図3】図2の可変容量ポンプのP−qp線図。
【図4】作業用パイロット油圧回路のうちブームパイロット回路を示す図。
【図5】操作レバーの操作/非操作とアクセルペダルの操作/非操作を検出する回路を示す図。
【図6】エンジン回転数を制御する制御回路のブロック図。
【図7】図6に示す制御回路の詳細を説明する図。
【図8】エンジン回転数の制御手順を示すフローチャート。
【図9】制御回路の動作を説明するタイムチャート(その1)。
【図10】制御回路の動作を説明するタイムチャート(その2)。
【符号の説明】
1 走行用油圧モータ 2 原動機
10,20 可変容量油圧ポンプ 10A パイロットポンプ
11〜14、21〜25 コントロールバルブ
15 アクセルペダル 28 パルスモータ
41 圧力センサ 44 作業用圧力スイッチ
45 走行用圧力スイッチ 46 回転数設定ダイヤル
47 回転数設定器 50 コントローラ
55 故障判定回路 BL 操作レバー
Claims (5)
- 原動機で駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される圧油で駆動される走行用油圧モータと、
前記油圧ポンプから吐出される圧油で駆動される作業用油圧アクチュエータと、
前記走行用油圧モータの回転数を調節するアクセルペダルと、
前記作業用油圧アクチュエータを操作する操作レバー手段と、
前記アクセルペダルの操作を検出するペダル検出手段と、
前記操作レバー手段の操作を検出する操作レバー検出手段と、
前記原動機の回転数を調節する回転数調節手段と、
前記回転数調節手段を制御する回転数制御手段と、
走行時の前記原動機の回転数の上限を設定する走行上限設定手段とを備え、
前記回転数制御手段は、前記操作レバー検出手段により前記操作レバー手段の操作が検出されないとき、前記ペダル検出手段により前記アクセルペダルの操作が所定時間以上検出されると、前記原動機の回転数が少なくとも前記走行上限設定手段により設定された回転数になるように、前記回転数調節手段を制御することを特徴とする油圧走行車両。 - 請求項1に記載の油圧走行車両において、
前記原動機の回転数を設定する回転数設定手段を備え、
前記回転数制御手段は、前記操作レバー検出手段により前記操作レバー手段の操作が検出されると、前記アクセルペダルの操作に拘わらず、前記原動機の回転数が前記回転数設定手段により設定された回転数になるように、前記回転数調節手段を制御することを特徴とする油圧走行車両。 - 請求項2に記載の油圧走行車両において、
前記回転数制御手段は、前記操作レバー検出手段により前記操作レバー手段の操作が検出されないとき、前記ペダル検出手段により前記アクセルペダルの操作が所定時間以上検出されると、前記原動機の回転数が前記走行上限設定手段によって設定された回転数または前記回転数設定手段によって設定された回転数のいずれか低い値になるように、前記回転数調節手段を制御することを特徴とする油圧走行車両。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の油圧走行車両において、
前記油圧ポンプは可変容量型であって、
この油圧ポンプに作用する負荷を検出する負荷検出手段を備え、
前記回転数制御手段は、前記負荷検出手段によって検出された負荷が所定値以上になると、前記原動機の回転数が少なくとも前記走行上限設定手段により設定された回転数よりも高い値になるように、前記回転数調節手段を制御することを特徴とする油圧走行車両。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の油圧走行車両において、
前記回転数制御手段は、前記ペダル検出手段の故障を判定する故障判定手段を有し、前記故障判定手段により前記ペダル検出手段の故障が判定されると、前記原動機の回転数が少なくとも前記走行上限設定手段により設定された回転数になるように、前記回転数調節手段を制御することを特徴とする油圧走行車両。
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