JP3686021B2 - 大型擁壁緑化ブロックおよび擁壁緑化構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は大型擁壁緑化ブロックおよび当該大型擁壁緑化ブロックを利用した擁壁緑化構造に関し、特に施工性、安定性および保水性にすぐれ、しかも牛糞や馬糞などの畜産廃棄物のリサイクル化を可能にしたものである。
【0002】
【従来の技術】
切土法面や盛土法面を緑化する方法として、例えば図5(a),(b),(c)にそれぞれ図示するようなボックス型、庇突出型、ブロック穴開き型の各擁壁ブロック20を法面21の上に積層し、各擁壁ブロック20内に胴込め土砂(以下「土砂」という)22を詰めて植物の自然植生による緑化を図る方法、土砂22の表面に草本類や木本類などの植物苗を植栽して積極的に緑化を図る植生緑化ブロック工法が一般に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したような擁壁ブロック20を使って行う、これまでの法面緑化工法では、擁壁ブロック20を一つ一つ法面21の上に積層し、かつ各擁壁ブロック20内に一つ一つ土砂22を詰め込む必要があるため、施工性が非常に悪いものであった。
【0004】
また、土砂22として一般に、施工に伴って発生する掘削土が用いられているため、中には植物苗の生育に適さないものもあり、このため植栽しても生育が悪く、必ずしも希望通りの緑化が図れないこともあった。
【0005】
このため、近年試みられている擁壁の壁面全体を緑化することにより自動車の騒音を吸収したり、騒音の乱反射を防いだり、さらには最近の地球温暖化の大きな要因となっている二酸化炭素(炭酸ガス)を植物に吸収させようとする試みはほとんど期待できないものであった。
【0006】
また近年、畜産農家においては、毎日大量に発生する牛糞や馬糞などの畜産廃棄物の処理が問題になっており、その処理方法の開発が強く望まれている。
【0007】
この発明は以上の課題を解決するためになされたもので、特に施工性、安定性および保水性にすぐれ、かつ長期にわたる植物の生育が可能で、しかも畜産廃棄物のリサイクル化を可能にした大型擁壁緑化ブロックおよび擁壁緑化構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の大型擁壁緑化ブロックは、地山法面に沿って斜めに形成された表面板、当該表面板の上端部と下端部にそれぞれ後方に向かって水平に突設された上面板と下面板、および当該上面板と下面板の間に突設された縦板をそれぞれ有し、前記表面板には横方向に長い矩形状をなし、当該表面板の表面側から背面側に向かって徐々に小径となるように形成された複数の植生用孔と当該植生用孔の上側、上下の植生用孔間および植生用孔の下側を前記表面板の横方向に連続して複数段に形成された突状リブおよび縦方向に連続する複数の突状リブをそれぞれ有し、かつ前記植生用孔内に植生促進材が内在されてなることを特徴とするものである。
【0009】
この場合の植生用孔の形状や大きさは特に限定されないが、形状としては例えば円形状、または縦方向または横方向に長い矩形状でもよい。また、上面板、下面板および縦板の形状は特に限定されるものではなく、積層時の安定性がよく、しかも背面土の充填に支障をきたさない形状とするのがよい。
【0010】
また、植生促進材としては、植生基盤材、ポット苗、改良土壌などが考えられ、植生基盤材としては、例えば牛糞や馬糞などの畜産廃棄物を処理した(コンポス化)たい肥とココピート、ピートモス等の自然材料を最適比率で混ぜ、種子、肥料、保水材などを混在したものを固形化または袋詰めにして植生用孔内にフイットできるようにしたもの等がよい。
【0011】
また、植え付け後、時間の経過とともに自然に生育して表面板の上を自然に覆う草木類、木本類あるいはつた類などの苗を事前に育成した後、植生用孔内にフイットできる形状に加工したもの等の他、改良土壌(種子と肥料などを内在させ固形化したもの)等も考えられる。
【0012】
なお、表面板の裏側に、板状リブとして上面板、下面板および縦板をそれぞれ突設してもよい。この場合の上面板、下面板および縦板の形状は特に限定されるものではないが、積層時の安定性がよく、しかも背面土の充填に支障をきたさない形状とするのがよい。
【0013】
請求項2記載の大型擁壁緑化ブロックは、請求項1記載の大型擁壁緑化ブロックにおいて、縦板は表面板の長手方向に所定間隔おきに形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3記載の大型擁壁緑化ブロックは、請求項1または2記載の大型擁壁緑化ブロックにおいて、上面板の上側面と下面板の下側面に、積層された際に互いに嵌合し合う凸状部と凹状部がそれぞれ形成されてされてなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4記載の大型擁壁緑化ブロックは、請求項1〜3のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロックにおいて、植生用孔の背面側に土砂流出防止シートが内在されてなることを特徴とするものである。この場合の土砂流出防止シートとしては、ジオテキスタイルやジオグリッド等の土木用シート、あるいは金網類が考えられる。
【0016】
請求項5記載の大型擁壁緑化ブロックは、請求項1〜4のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロックにおいて、植生促進材として事前に育成され、かつ植生用孔の形状に加工されたポット状の草本類、木本類、つた類等の植物苗が内在されてなることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6記載の大型擁壁緑化ブロックは、請求項1〜4のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロックにおいて、植生促進材として種子、肥料、栄養分を含んだ土壌が充填された植生土壌充填袋が内在されてなることを特徴とするものである。なお、この場合の植生土壌充填袋としては、種子、肥料、栄養分を含んだ土壌を植生シート等で包み込んだものでよい。
【0018】
請求項7記載の擁壁緑化構造は、請求項1〜6のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロックを複数積層し、かつ各大型擁壁緑化ブロックの背面側に背面土を充填してなることを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、この発明に係る大型擁壁緑化ブロックおよび当該大型擁壁緑化ブロックを複数積層してなる擁壁緑化構造の一例を示し、図において、大型擁壁緑化ブロック1は表面板2とその背面側に板状リブとして突設された上面板3、下面板4および縦板5をそれぞれ有し、鉄筋コンクリートまたは繊維補強コンクリート等から一体的に形成されている。
【0020】
表面板2は横方向に長い矩形板状に形成され、かつ地山法面Aの勾配にそって斜めに形成されている。また、表面板2には複数の植生用孔2aと突状リブ2bがそれぞ形成されている。
【0021】
植生用孔2aは表面板2の上下方向および横方向に所定間隔おきに形成され、各植生用孔2aの形状は横方向に長い矩形状に形成され、かつ各植生用孔2aの内周面は表面板2の表面側から背面側(地山側)に向かって徐々に小径となるテーパ状に形成されている。
【0022】
また、各植生用孔2aの背面側には土砂流出防止シート6が取り付けられている。土砂流出防止シート6は背面側の土砂が植生用孔2aを通って表側に流出するのを未然に防止するためのもので、例えばジオテキスタイルやジオグリッド、あるいは金網などが取り付けられている。
【0023】
さらに、各植生用孔2a内には、例えば図4(a),(b),(c),(d)にそれぞれ図示するように、植生促進材として例えば植生基盤材7、ポット苗8、改良土壌9あるいは植生土壌10が内在されている。
【0024】
この場合の植生基盤材7としては、牛糞・馬糞等の蓄糞廃棄物を処理した堆肥とココピート、ピートモスなどの自然材料を最適比率で混ぜ、種子、肥料、保水材等を混在し、かつ固形化または袋詰めした植生基盤材が植生用孔2a内に内在されている(図2(a)、図4(a)参照)。
【0025】
また、ポット苗8としては、事前に育成されかつ植生用孔2aの形状に加工されたポット状の草木類、木本類、つた類等の植物苗が植生用孔2a内に内在されている(図2(b)、図4(b)参照)。
【0026】
また、改良土壌9として植生に快適な土壌に改良した現地土壌が内在されている(図2(c)、図4(c)参照)。さらに、植生土壌10として種子、肥料、栄養分を含んだ土壌が充填された植生土壌が麻袋に充填して内在されている(図4(d)参照)。
【0027】
突状リブ2bは、生育した植物苗を表面板2の上に保持するための植生用棚であり、表面板2の表側に植生用孔2aの上側、上下の植生用孔2a,2a間、さらに植生用孔2aの下側を横方向に連続して複数段に形成されている。
【0028】
上面板3と下面板4はそれぞれ、表面板2の上端部と下端部から後方に水平に突設され、縦板5は上面板3と下面板4間に垂直に突設され、特に縦板5は表面板2の長さに応じて表面板2の長手方向に所定間隔おきに突設されている。
【0029】
また、上面板3の上側面と下面板4の下側面には、積層された際に互いに嵌合し合う凸状部3aと4凹状部4aがそれぞれ形成されている。
【0030】
このように形成された大型擁壁緑化ブロックは、地山法面Aの下端部(法尻部)に形成されたコンクリート基礎10の上に地山法面Aを覆うように複数積み重ねられている。この場合、上下に隣接する大型擁壁ブロックどうしは、上面板3の凸状部3aと下面板4の凹状部4aが互いに嵌合し合うことで、位置合わせがなされている。
【0031】
そして、各大型擁壁緑化ブロック1の背面側に土砂や砕石、あるいは客土などの背面土11がそれぞれ充填されている。
【0032】
このように構成されていることで、施工後、時間の経過とともに植生促進材として植生用孔2a内に内在された植生基盤材7や改良土壌9内の種子が発芽して生育し、またポット苗8が植え付け後すぐに自然に生育し、各大型擁壁緑化ブロックの表面板2の上、ひいては擁壁全体を覆うことで、擁壁面の緑化という目的が達成される。
【0033】
また、また表面板2の各植生用孔2aが貫通していることで、植生基盤材7等の植生促進材は背面土11、さらにその後方の地山とも連続していることで、常に自然灌水をうけることができ、したがって、植生促進材の保水性が維持され、長期にわたる植物の育成が可能となる。
【0034】
【発明の効果】
この発明は以上説明したとおりであり、特に表面板に植生用孔が複数形成され、かつ当該植生用孔内に植生促進材が内在され、かつ植生促進材と背面土とは、植生用孔を介して連通しており、この植生用孔を介して背面土側から植生促進材側に必要な灌水がなされるため、植生促進材の保水が維持され、長期にわたる植物の育成が図れる。
【0035】
また、植生促進材として牛糞などの畜産廃棄物を利用した植生基盤材を使用することで牛糞などの畜産廃棄物のリサイクル化も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】擁壁緑化構造の一例を示し、(a)はその一部正面図、(b)は縦断面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)はいずれも、大型擁壁緑化ブロックの一例を示す縦断面図である。
【図3】(a)は擁壁緑化構造の一例を示す一部斜視図、(b)は大型擁壁緑化ブロックの斜視図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)はいずれも、植生促進材の設置例を示す大型擁壁緑化ブロックの一部縦断面図である。
【図5】従来の擁壁緑化構造の一例を示す一部縦断面図である。
【符号の説明】
1 大型擁壁緑化ブロック
2 表面板
2a 植生用孔
2b 突状リブ
3 上面板
3a 凸状部
4 下面板
4a 凹状部
5 縦板
6 土砂流出防止シート(ジオテキスタイル、ジオグリッド、金網等)
7 植生基盤材
8 ポット苗
9 改良土壌
10 植生土壌
11 背面土
Claims (7)
- 地山法面に沿って斜めに形成された表面板、当該表面板の上端部と下端部にそれぞれ後方に向かって水平に突設された上面板と下面板、および当該上面板と下面板の間に突設された縦板をそれぞれ有し、前記表面板には横方向に長い矩形状をなし、当該表面板の表面側から背面側に向かって徐々に小径となるように形成された複数の植生用孔と当該植生用孔の上側、上下の植生用孔間および植生用孔の下側を前記表面板の横方向に連続して複数段に形成された突状リブおよび縦方向に連続する複数の突状リブをそれぞれ有し、かつ前記植生用孔内に植生促進材が内在されてなることを特徴とする大型擁壁緑化ブロック。
- 縦板は、表面板の長手方向に所定間隔おきに形成されてなることを特徴とする請求項1記載の大型擁壁緑化ブロック。
- 上面板の上側面と下面板の下側面に、積層された際に互いに嵌合し合う凸状部と凹状部がそれぞれ形成されてされてなることを特徴とする請求項1または2記載の大型擁壁緑化ブロック。
- 植生用孔の背面側に土砂流出防止シートが内在されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロック。
- 植生促進材として事前に育成され、かつ植生用孔の形状に加工されたポット状の草本類、木本類、つた類等の植物苗が内在されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロック。
- 植生促進材として種子、肥料、栄養分を含んだ土壌が充填された植生土壌充填袋が内在されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロック。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の大型擁壁緑化ブロックを複数積層し、かつ各大型擁壁緑化ブロックの背面側に背面土を充填してなることを特徴とする擁壁緑化構造。
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