JP3685502B2 - 中空糸膜モジュール接着界面の補強方法 - Google Patents

中空糸膜モジュール接着界面の補強方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、中空糸膜モジュール接着界面の補強方法に関する。さらに詳しくは接着界面の中空糸膜を可撓性樹脂で補強する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
中空糸膜モジュールは単位容積当たりの膜面積が大きくとれることから、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等に一般的に用いられている。中空糸膜モジュールを組み立てる時は、先ず、中空糸膜の開口端を目止めして、次いで遠心接着法で接着剤を中空糸膜間、及び中空糸膜とケース間を固定してから、端部を切断して、中空糸膜端部を開口してモジュールとしている。接着剤は糸束の末端、または横から注入し、接着部の厚みを一定にするため、モジュールのノズル部等の穴よりオーバーフローさせて接着するのが一般的である。
【0003】
接着剤としてはエポキシ樹脂またはウレタン樹脂が一般的に用いられているが接着剤は粘度が高いために、隙間の大きいケースと糸束の間を通って、ノズル部よりオーバーフローしてから糸束内に侵入する。このため、接着界面はノズル部より低い位置になり、この低くなった部分には接着剤が薄くコーティングされた状態で硬化する。
【0004】
中空糸膜に接着剤が薄くコーティングされた部分は空気と触れた状態で硬化するため硬化は不十分で非常に脆い上に、ノズル部は原液や濾液の出入口となっているため、糸が横揺れによって簡単に折れてしまうことがしばしばある。
このため、実開昭61ー132002号公報、特開昭61ー157308号公報ではこの部分を可撓性樹脂で補強することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】
しかしながら、可撓性樹脂を注入するのは、ノズル部等のケースの穴より行なわざるを得ないため可撓性樹脂もノズルからオーバーフローして、接着剤が薄くコーティングされた部分を完全に覆うことができず、補強効果が少なくなってしまう。そのため、ノズル部の穴を一部または全部塞いで可撓性樹脂を注入することも可能であるが、この方法ではノズル部の穴が一部塞がってしまい、見栄えが悪いとか、ノズル部の原液または濾液の流れが悪くなる等の問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、モジュールケースの円周端部に2段に穴を設け、外側の穴より接着剤をオーバーフローさせながら遠心接着を行なって、中空糸膜をケースに固定し、ついで、該穴を塞いで、該穴の内側の穴より可撓性樹脂を注入すれば良いことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、中空糸膜モジュールの接着界面を可撓性樹脂で補強する方法において、接着剤のオーバーフロー用の穴と可撓性樹脂注入用穴とを有し、該可撓性樹脂注入用穴は該オーバーフロー用の穴より内側円周上に位置し、かつ、該オーバーフロー用の穴と可撓性樹脂注入用穴とがケース円周上の軸をずらすように設けられたケースを用い、接着剤をケースの円周上のオーバーフロー用の穴よりオーバーフローするまで注入し、ケース及び中空糸を接着硬化させた後、前記オーバーフロー用の穴を塞ぎ、次いで可撓性樹脂注入用穴より可撓性樹脂を注入することを特徴とする中空糸膜モジュール接着界面の補強方法である。
【0008】
ここで言う接着剤とは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂の様に中空糸膜の固定に一般的に使用されているものであり、また、可撓性樹脂とは前記接着剤より軟らかい材質であることが必要であり、例えばウレタン樹脂、シリコン樹脂の様なゴム弾性を持つものである。
接着剤のオーバーフロー用の穴は、モジュールケースの円周側面上に設けるが、モジュールケースにノズルがある場合は、ノズルよりも端部寄りの円周上に設ける。穴は1〜数個、好ましくは1〜2個設けると良い。前記穴の大きさは、接着剤の粘度や中空糸膜の充填本数によって異なるが、通常3mm以上、好ましくは5〜10mmであれば良い。
【0009】
一方、可撓性樹脂注入用の穴は、ノズルがあればこれを利用すればよく、ノズルが無い場合は、通常ノズルを設けるのと同程度の直径とする。こうすることにより、前記穴に後で注入ホース等を固定することによりノズルの役割も果たすことができる。可撓性樹脂は、接着剤が中空糸膜に薄くコーティングされた部分を完全に覆う範囲でなるべく薄くした方が膜の有効面積が大きくなるので好ましいので、前記穴は接着剤オーバーフロー用の穴と円周上の軸をずらす必要がある。接着剤のオーバーフロー用の穴と可撓性樹脂注入用の穴は前者と後者の円周の最短の距離が3〜15mm、好ましくは5〜10mmの間隔となるように設けられる(図3のAの距離)。
【0010】
接着剤及び可撓性樹脂の注入は、以下のようにして行われる。
(1)接着剤を、まず接着剤のオーバーフロー用の穴よりオーバーフローするまで注入し、(注入口は例えば、図1の様にケース端部に設ける。)残りの接着剤によりケースと中空糸、及び中空糸どうしを接着硬化させる。
(2)前記の穴を塞ぎ、次いで可撓性樹脂を、その穴より内側円周上に設けられた可撓性樹脂注入用の穴から、前記接着剤面全体がコーティングされるまで注入し、硬化させる。
【0011】
接着剤のオーバーフロー穴を塞ぐ方法としては、ケースと同じ部材を溶着しても良いし、ビニールテープ等でシールしておいて、注入した可撓性樹脂で塞いでも良い。
接着及び補強は静置したまま行ってもよいが、接着面や樹脂の充填面を均一とするためには、遠心接着、遠心補強すると好ましい。その具体的手順は、公知の方法に基づいて行えば良い。
【0012】
【実施例】
以下本発明について、具体的な実施例で説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0013】
【実施例1】
図1に示す様に、直径5mmの穴2を、透明の1BのPVCケース1の両端から40mmのケース円周上に穴の外周部が来るように(すなわち図3のBの距離が40mm)各々180°の間隔で2ケ設け、その内側に前記穴との外周同志の距離が10mmで、両方の穴のセンターの軸が45°ずれるように、ケース円周上に直径10mmの穴3を90°の間隔で4ケ設けた。さらに、ケース両端部の外周に接着治具固定用のネジ4を設けたモジュールケースを用いて、外径が0.98mm、内径が0.70mmで透水量が12000リットル/m2 ・Hr・at25℃のポリスルホン製の中空糸膜5を260本および集水管として内径8mmのパイプ6を1本用いてモジュールを製作した。
【0014】
モジュールは、図2に示すように、両端部に接着治具7を押さえ治具8で固定して、該接着治具7に接着剤注入用のチューブ9と接着剤カップ10を固定して、エポキシ樹脂11をケース1の外側に設けた穴2よりオーバーフローさせながら遠心接着を行った。エポキシ樹脂11はケースの穴2の下面より5mm低い位置で硬化していた。
【0015】
次いで、ケースに設けた穴2をビニールテープでシールし、ケースの穴2の内側に設けた穴3より、シリコン樹脂12を注入、遠心接着し、穴3よりオーバーフローさせた。シリコン樹脂12は、穴3の下面より1mm低い位置で硬化した。硬化後、接着治具、押え治具を取り外し、ケースの端面を切断することによりモジュール中空糸膜を得た。
【0016】
このモジュール中空糸膜の有効長は2200mmで片端に濾液の集水室を設けて、外圧全濾過で、濾液を集水室の反対側より抜き出したところ、透水量は30.7リットル/分・kg/cm2 ・at33℃であった。このモジュールを3kg/cm2 の空気圧で濾液逆洗を5回行ったが、中空糸膜の折損はなかった。
【0017】
【比較例1】
実施例1と同様にモジュールを製作したが、エポキシ樹脂11を遠心接着する時は、ケースの穴2を予めビニールテープでシールして、ケースの穴3よりオーバーフローさせた。エポキシ樹脂11は実施例1と同様に、ケースの穴3の下面より5mm低い位置で硬化していた。
【0018】
次いで、実施例1と同様に、ケースの穴3よりシリコン樹脂12を注入して遠心接着し、ケースの穴3よりオーバーフローさせてモジュールを製作した。シリコン樹脂12は穴3の下面より1mm低い位置で硬化していた。
このモジュールの透水量は、30.2リットル/分・kg/cm2 ・at33℃であり、実施例1と同様に3kg/cm2 の空気圧で濾液逆洗を行ったところ、12本の中空糸膜が折損した。折損した中空糸膜は、何れも穴3の開口部で、エポキシ樹脂の上にシリコン樹脂が薄くコーティングされている部分で発生していた。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、中空糸膜の接着界面を簡単な方法により確実に保護出来るために、中空糸膜が折損したりすることがない。また、原液や濾液の流れが妨げられないため、濾液量が低下したり、中空糸膜が傷つけられたりすることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明のモジュールケースの概念図
(b)(a)図のAA’切断断面図
(c)(a)図のBB’切断断面図
【図2】本発明の補強方法を示す概念図
【図3】本発明のモジュールケース端部の拡大図。
【符号の説明】
1 ケース
2 穴(接着剤注入用)
3 穴(可撓性樹脂)
4 ネジ
5 中空糸膜
6 集水管
7 接着治具
8 押さえ治具
9 チューブ
10 接着剤カップ
11 エポキシ樹脂
12 シリコン樹脂

Claims (1)

  1. 中空糸膜モジュールの接着界面を可撓性樹脂で補強する方法において、接着剤のオーバーフロー用の穴と可撓性樹脂注入用穴とを有し、該可撓性樹脂注入用穴は該オーバーフロー用の穴より内側円周上に位置し、かつ、該オーバーフロー用の穴と可撓性樹脂注入用穴とがケース円周上の軸をずらすように設けられたケースを用い、接着剤をケースの円周上のオーバーフロー用の穴よりオーバーフローするまで注入し、ケース及び中空糸を接着硬化させた後、前記オーバーフロー用の穴を塞ぎ、次いで可撓性樹脂注入用穴より可撓性樹脂を注入することを特徴とする中空糸膜モジュール接着界面の補強方法。
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