JP3684718B2 - 工作機械の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の熱変位を補正する機能を有する工作機械の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばワークに切削や穴開け等を施したり基板に部品を組み付けるための加工手段と、この加工手段とワークや基板等の被加工物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する工作機械がある。一般に、切削等の加工を行う工作機械では、例えばドリルやタップ等の工具を保持するための保持機構、これに保持された工具を回転駆動するための主軸駆動機構、工具のX軸方向の送りのためのX軸送り機構、工具のY軸方向の送りのためのY軸送り機構、工具のZ軸方向の送りのためのZ軸送り機構、これらの送り機構を制御するための制御装置等を備えている。
【0003】
一例をあげると、図7および図8に示される工作機械10がある。図7に示すように、この工作機械10は、切削屑の飛散を防止するためのスプラッシュガード12の内側にワーク(図示しない)を載置するためのテーブル14、例えばドリルやタップ等の工具交換のためのATCマガジン16、工作機械本体(以下単に本体ともいう)20等が配置されている。またスプラッシュガード12には、操作パネル22、ワークの入出やメンテナンスのためのワーク交換口24、主にメンテナンス用の点検ハッチ26等が設けられている。
【0004】
図8に示すように、本体20は、ドリルやタップ等の工具を保持するための主軸28、主軸28を回転駆動するための主軸モータ30、多数の鋼球を内蔵して主軸側に固着されているナット部32とナット部32に内挿されるボールネジ34とからなるボールネジ機構36、ボールネジ34を回転駆動するためのZ軸モータ38、ボールネジ34と平行に配されているガイドレール40、ガイドレール40と主軸側とを連結するスライド42等を備えている。
【0005】
この本体20においては、ボールネジ機構36とZ軸モータ38とでZ軸方向の送りのためのZ軸送り機構が構成され、Z軸モータ38によりボールネジ34を回転させることで主軸28のZ軸方向の移動が行われる。また図7に示されるテーブル14をX軸およびY軸方向に移動させることができ、主軸28のZ軸方向の移動と併せて、ワークと工具のX、Y、Z軸方向の相対位置を変化させることができる。
【0006】
このような工作機械では、例えばボールネジ機構の稼働に伴って摩擦熱が発生してボールネジが延びることがある。また、他の機構においても発熱がある。そうした発熱によって工作機械に熱変位が発現する。この熱変位が例えばZ軸方向に発現すると、ワークに施される溝の深さや段差の高さ等に誤差が生じる。公差が熱変位量よりも十分に大きい場合にはこのような熱変位による加工誤差はあまり問題とはならないが、そうでない場合には熱変位に対する補正が必要となる。そのための制御装置として、工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、予め定められている加工プログラムに従って駆動手段を制御するに当たってその補正量を考慮して駆動手段を制御する駆動制御手段とを備える工作機械の制御装置が提案されている(例えば特開昭62−88548号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の工作機械の制御装置においては、工作機械の稼働中を通して熱変位量を算出して補正する形態であったので、その処理を実行するためのシステムを常時動かしておく必要があった。つまり、制御装置の処理量がその分だけ大きく制御装置の負担も大きかった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためのもので、従来よりも簡単な構成でありながら工作機械に精度のよい加工を実行させることが可能な工作機械の制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の工作機械の制御装置は、被加工物に加工を施すための加工手段と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する工作機械に装備される工作機械の制御装置であって、前記工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、予め定められている加工プログラムに従って前記駆動手段を制御するプログラム運転の実行に当たって前記補正量を考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備える工作機械の制御装置において、
1回の前記プログラム運転の実行に要するサイクルタイムと該1回のプログラム運転を実行したときの前記加工手段の総移動距離とから該加工手段の単位時間移動距離を求め、予め記憶している前記単位時間移動距離と該工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量との相関グラフと前記求めた単位時間移動距離とを対比して、前記相関グラフに基づく前記飽和熱変位量を算出する飽和熱変位量演算手段を設けると共に、前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量演算手段が算出した飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算し、該算出した補正量が前記飽和熱変位量と等しくなれば前記工作機械の稼働中は該演算を行わずに前記飽和熱変位量を前記補正量とする構成としている。
【0010】
飽和熱変位量演算手段は、まず、1回のプログラム運転(普通はワーク1個の加工に相当する)の実行に要するサイクルタイムと該1回のプログラム運転を実行したときの加工手段の総移動距離とから加工手段の単位時間移動距離を求める。
また、飽和熱変位量演算手段は、単位時間移動距離と工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量との相関グラフを予め記憶しており、サイクルタイムと総移動距離とから求めた単位時間移動距離と相関グラフとを対比して、相関グラフに基づく飽和熱変位量を算出する。
1回のプログラム運転で得られるサイクルタイム及び総移動距離という稼働データに基づいて飽和熱変位量を算出できるので、飽和熱変位量の算出のための処理を長時間にわたって行うことはなく、この点でも制御装置の負担が軽減される。
【0011】
補正量算出手段は、飽和熱変位量演算手段が算出した飽和熱変位量を用いて補正量を演算し、算出した補正量が飽和熱変位量と等しくなれば工作機械の稼働中は演算を行わずに飽和熱変位量を補正量とする。その演算は、例えば下記に示す数式(1)を用いることができる。
【0012】
【数1】
A=L(1−e(-γt))…(1)
ただし、A:補正量、L:飽和熱変位量、γ:工作機械毎に設定される定数、t:経過時間である。
【0013】
工作機械が稼働を続けることによって温度が上昇すると、やがて発熱量と放熱量とが均衡する状態になる。その状態となれば、工作機械の温度変化は実質的になくなるから、熱変位量も変化しなくなる。そのときの熱変位量が最大値すなわち飽和熱変位量であり、以後は工作機械の稼働中を通じて変わらないとみてよい。よって、その時点(算出した補正量が飽和熱変位量と等しくなった時点)で補正量の演算をやめて、飽和熱変位量を補正量としても支障はない。
【0014】
したがって、補正量を算出するための演算は補正量が増加している間だけ行えばよく、制御装置の処理量すなわち負担は小さくなり、その構成も簡単にできる。また、飽和熱変位量を使用するときも含めて、補正量は正確であるから工作機械に精度のよい加工を実行させることができる。
【0015】
図6に示すグラフは、ある工作機械を300分間稼働させて停止させた際の熱変位量の実測値(破線)と数式(1)による計算値(実線)とを比較するものである。
このグラフから明らかなように、数式(1)による補正量の計算値は実測値との整合性に優れていることがわかる。
【0016】
なお、この計算値は、t=0〜300(分)の範囲では下記の数式(2)により、t=300〜600(分)の範囲では数式(3)により求めた。
【0017】
【数2】
A=34(1−e(-3.8t))…(2)
【0018】
【数3】
A=34(1−e(-2.1(t-300)))…(3)
また、この図6のグラフでは熱変位量が負の値として示されているが、これは熱変位の方向に対する正負の符号の付け方によるものであって、工作機械が縮んでいるわけではない。
【0019】
ところで、本発明においては、補正量が飽和熱変位量と等しくなるとは、数学的な意味で等しいことを言うわけではなく、演算された補正量と飽和熱変位量との差が、工作機械の仕様やワークに要求される公差等を考慮して設定される誤差の範囲に収まることをいう。また、工作機械の稼働中とはワークの加工、ワークの交換等を実行している状態を言い、例えば休憩時間等で工作機械がスタンバイ状態にされているときなどは除かれる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
請求項2記載の工作機械の制御装置は、請求項1記載の工作機械の制御装置において、前記補正量算出手段は、調整入力手段によって入力された調整値または予め設定されている手順で決められる調整値を、前記補正量の演算値に加算または減算して前記補正量とすることを特徴とする。
【0026】
補正量の演算は上述のようになされるのであるが、例えば朝等の気温が比較的低いとき等では工作機械の温度上昇が緩やかになり、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差が無視できない程度になることもある。そのような場合に、例えばオペレータが、調整入力手段によって前述の誤差に相当する調整値を入力したり、制御装置側で予め設定されている手順で決められる調整値を求めて、この調整値を補正量の演算値に加算または減算して補正量とすれば、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を解消して精密な加工を行うことができる。
【0027】
請求項3記載の工作機械の制御装置は、請求項2記載の工作機械の制御装置において、前記調整値は時刻に対応して定められていて、前記補正量算出手段は時刻に基づいて前記調整値を選択して使用することを特徴とする。
この構成とすれば、例えば1日の時間帯(朝、昼、夜等)に応じて、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解消することができる。
【0028】
請求項4記載の工作機械の制御装置は、請求項2記載の工作機械の制御装置において、前記調整値は前記工作機械の環境温度に対応して定められていて、前記補正量算出手段は該環境温度に基づいて前記調整値を選択して使用することを特徴とする。
【0029】
この構成とすれば、工作機械が設置されている場所の気温すなわち環境温度に応じて、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解消することができる。
以上の請求項1〜4記載の構成は、工作機械の稼働中に関わるものであるが、例えば休憩時間等に工作機械の稼働を一時停止してから再稼働させることもある。工作機械の稼働が停止されると温度が低下するから熱変位量も減少する。しかし、完全に冷め切るまでは熱変位量は0にならない。このため、例えば休憩時間等に稼働を一時停止してから再稼働させたときには、工作機械にはある程度の熱変位が残っている。したがって、この熱変位を無視して補正量を決めるのは好ましくない。
【0030】
そこで、請求項5記載の工作機械の制御装置は、請求項1ないし4のいずれか記載の工作機械の制御装置において、前記補正量算出手段は、前記工作機械の稼働が停止されると前記飽和熱変位量を用いて該工作機械の熱変位量を演算し、該工作機械が再稼働したときの該熱変位量の演算値を前記補正量の初期値として前記補正量を演算する構成としている。
【0031】
この構成とすると、工作機械の再稼働に当たって、停止時に残っていた熱変位を考慮して補正量を決めることができるから、工作機械の一時停止、再稼働があっても適切な補正量を算出でき、精密な加工を可能とする。
なお、工作機械の停止時においても補正量算出手段(例えばCPU)を機能させるには、バックアップ電源(電池)を備えればよい。
また、請求項1ないし5のいずれか記載の工作機械の制御装置において、前記飽和熱変位量を入力するための飽和熱変位量入力手段を設けると共に、前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量入力手段によって前記飽和熱変位量が入力されているときは、該入力された飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算する構成とすること(請求項6)ができる。
このようにすれば、飽和熱変位量入力手段によって飽和熱変位量を入力することで、飽和熱変位量演算手段の飽和熱変位量算出処理を不要にでき、この点でも制御装置の負担が軽減される。
飽和熱変位量入力手段は、例えばテンキーパネルのような数値を入力できるものであればよく、ロータリスイッチやディップスイッチのような構造でも構わない。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明することにより、発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0033】
【実施例】
本実施例の工作機械のメカニカルな構成は従来例として図7および図8に示したものと同じであるので、これらを使用して工作機械10のメカニカルな構造の説明は省略する。
【0034】
本発明の工作機械の制御装置に相当する、工作機械10の制御系の構成は図1に示すとおりである。この図1に示すように、この制御系は、主軸28の回転を制御するための主軸制御系50、主軸28のZ軸位置を制御するためのZ軸制御系60、この制御系の中枢となるマイコン部70、操作パネル22およびテーブル14のX軸位置を制御するためのX軸制御系(図示略)やテーブル14のY軸位置を制御するためのY軸制御系(図示略)等から構成されている。
【0035】
主軸制御系50は、主軸モータ30、主軸モータ30に電力を供給するための主軸サーボアンプ52および主軸サーボアンプ52の供給電力を制御するための軸制御回路54からなり、軸制御回路54はマイコン部70のCPU72からの指示に従って主軸サーボアンプ52の動作を制御する構成である。Z軸制御系60は、Z軸モータ38、Z軸モータ38に電力を供給するためのZ軸サーボアンプ62およびZ軸サーボアンプ62の供給電力を制御するための軸制御回路64からなり、軸制御回路64はマイコン部70のCPU72からの指示に従ってZ軸サーボアンプ62の動作を制御する構成である。また、図示を省略したX軸制御系およびY軸制御系も、これら主軸制御系50並びにZ軸制御系60とほぼ同様の構成である。
【0036】
マイコン部70は、制御プログラム等を格納しているROMや入出力ポート等を内蔵するワンチップ型のCPU72、RAM74および時計76等からなり、周知のマイクロコンピュータとして構成されている。このマイコン部70(厳密にはCPU72)は、制御プログラムに従って主軸制御系50、Z軸制御系60等を制御して、ワークに所定の加工を施させるのである。また、マイコン部70は操作パネル22に接続されており、マイコン部70は、操作パネル22からの入力信号を取得したり、操作パネル22に信号を送って操作パネル22の液晶ディスプレイの画像や文字の表示を制御することやLEDの点滅を制御すること等ができる。
【0037】
RAM74は、周知のようにCPU72のワークエリアとなるが、本実施例では、このRAM74上に図2に示される構造のピッチ誤差補正テーブル80が設けられている。このピッチ誤差補正テーブル80は、例えばボールネジ機構36の稼働誤差を補正するためのテーブルである。
【0038】
Z軸移動を受け持つボールネジ機構36は、製造公差等によりボールネジ34の回転量とナット部32の移動量(すなわち主軸28のZ軸方向移動量)との誤差が避けられないので、それを補正する必要がある。そこで適当な数の補正ポイントを設定し(ボールネジ34の長さが500mmで20mm毎に補正するとすれば、補正ポイントは25箇所となる。)、その補正ポイント毎にボールネジ34の回転による移動量の計算値と実測値との誤差を求め、その誤差に相当するボールネジ34の回転量(ピッチ)をピッチ誤差補正テーブルに書き込んでおき、各補正ポイント毎にそのピッチ分だけボールネジ34を正あるいは逆回転させることによって主軸28のZ軸位置を正確ならしめている。X軸およびY軸についても同様である。
【0039】
時計76は、いわゆる電子時計であって、年月日時刻を算出してそのデータをCPU72に送ることができる。なおCPU72は、一定の周期例えば1/1000秒毎にカウント値をインクリメントするカウンタを内蔵していて、そのカウンタを使用することにより、例えばある加工の開始から終了までの所要時間のような、経過時間を計測することもできる。
【0040】
さて、この工作機械10を稼働させると、そのZ軸方向の熱変位量は例えば図3に示すようになる。縦軸は熱変位量(mm)、横軸は時間(分)を表し、t1は稼働開始後に初めて熱変位量が飽和熱変位量となった時間、t2およびt5は例えば休憩時間等で工作機械10を停止した時間、t3およびt6は工作機械10を再稼働させた時間、t4およびt7は、再稼働後に飽和熱変位量に達した時間、t8は例えばその日の作業終了に伴って工作機械10を停止させた時間を示している。この図3から明らかなように、工作機械10を稼働させると、その熱変位量は徐々に増加してやがて飽和熱変位量に達する。その後、工作機械10の稼働中は熱変位量は飽和熱変位量のままとなり、工作機械10を停止させると熱変位量は減少し、再稼働させると再び飽和熱変位量になるまで増加する。
【0041】
この工作機械10においては、こうした熱変位を補正して加工手段としての工具とワークとの相対位置を正確ならしめるための処理をCPU72が行っている。以下その処理について図4を参照して説明する。
工作機械10の電源が投入されると、CPU72は、例えば所定の初期化処理等を実行してから、所定の加工プログラムを開始する(ステップ101、以下ステップをSと略記する)。具体的には、CPU72は、主軸制御系50、Z軸制御系60、X軸制御系およびY軸制御系を介して、工具とワークの相対位置、工具の回転数等を制御して、ワークに加工プログラムに従った加工を施すことになる。
【0042】
次に、CPU72は、その加工プログラムによる加工(プログラム運転)が1回目か否かを判断し(S102)、1回目であれば(S102:YES)、操作パネル22から飽和熱変位量Lの値が入力されているか否かを判断する(S103)。この飽和熱変位量Lが入力されていなければ(S013:NO)、CPU72は加工プログラムに基づいて飽和熱変位量Lを算出する(S104)。飽和熱変位量Lの算出には、前述したさまざまな手法を採用できるが(課題を解決するための手段の欄を参照)、本実施例では次のようにして飽和熱変位量Lを求めている。
【0043】
図5に示すのは、工作機械10における主軸28のZ軸方向の単位時間移動距離(mm/分)と飽和熱変位量Lとの相関を表すグラフである。単位時間移動距離は、1回のプログラム運転(普通はワーク1個の加工に相当する)に要する時間(サイクルタイム)と、1回のプログラム運転における主軸28のZ軸方向の総移動距離とから求めることができる。例えばサイクルタイムが167秒、総移動距離が7746mmとすれば、単位時間移動距離は7746/167=2783(mm/分)である。これと図5のグラフとを対比すれば(その直線の式、y=0.0112xに代入すれば)、そのプログラム運転を多数回繰り返したときのZ軸方向の飽和熱変位量L=31.2(μm)を得ることができる。
【0044】
この図5に示すグラフは工作機械毎に独特であるが、単位時間移動距離に基づいて飽和熱変位量Lを求める構成であるから、加工プログラムが変更されても同じグラフを使用できる。つまり、1台の工作機械について1回だけデータを取ればよい。
【0045】
本実施例の工作機械10においては、CPU72はこの図5に示される直線の式を記憶している。
図4に戻り、S104では、CPU72は、1回目の加工プログラムの実行(1回目のプログラム運転)で得られるサイクルタイムと主軸28のZ軸方向の総移動距離とに基づいて単位時間移動距離を算出し、その値と図5に示される直線の式とから飽和熱変位量Lを算出するのである。
【0046】
続いてCPU72は、時間tにおける熱変位量lを演算する(S105)。ここで使用する演算式は、
【0047】
【数4】
l=Lx(1−e-γt) …(4)
【0048】
【数5】
l=Lxe-γ't …(5)
の2種類である。ただし、γは工作機械毎に設定される定数、tは経過時間である。
【0049】
数式(4)は工作機械10が稼働しているとき(すなわち熱変位量が増加するとき)、数式(5)は工作機械10の稼働が停止しているとき(熱変位量が減少するとき)に使用される。図示は省略しているが、本実施例の工作機械10は、その停止時においてもマイコン部70を機能させるためのバックアップ電源を備えている。このため、工作機械10が停止されても上記の数式(5)による演算を実行可能である。
【0050】
なお、工作機械10の起動直後からの演算ではtは稼働時間そのものである。しかし、数式(5)では稼働時間をそのまま用いるわけではなく、工作機械10の停止後の経過時間である。また、再稼働の場合には、工作機械10が完全に冷え切っているわけではないので、再稼働時には、数式(5)で求めた熱変位量lを数式(4)に代入してtを求め、そのtを経過時間の初期値として使用する。
【0051】
次に、CPU72は、S105で算出した熱変位量lに対する調整の要否を判断する(S106)。この要否判断は、請求項4〜6記載の調整値を熱変位量lに加算または減算する必要の有無の判断であり、(1)操作パネル22を介して調整値が入力されている、(2)時刻に対応して設定された調整値がある、(3)環境温度に対応して調整値を使用する必要がある等の条件が成立していれば、調整要(S106:YES)であり、CPU72はS107に進んで熱変位量lに調整値を加算あるいは減算してこれを補正値として例えばRAM74に記憶する。
【0052】
一方、調整不要(S106:NO)であれば、CPU72は熱変位量lを補正値として例えばRAM74に記憶する。
そして、CPU72は、その記憶した補正値に相当するピッチ数だけ、ピッチ誤差補正テーブルのZ軸補正を増減して、それに基づく指令値をZ軸制御系60の軸制御回路64に出力することにより、主軸28のZ軸位置を補正する(S108)。
【0053】
その後、CPU72は加工終了(予定数のワークを加工し終えた)か否かを判断し(S109)、加工終了でなければS102に回帰する。
ところで、S102の処理で否定判断の場合には、CPU72は、熱変位量lが飽和熱変位量Lに達したか否かを(厳密には、所定の誤差の範囲においてl=Lとなっているか否かを)判断する(S110)。否定判断であれば、CPU72は、S105に進んで上述したと同様の処理を繰り返す。
【0054】
また、肯定判断(S110:YES)であれば、CPU72は、工作機械10が停止されたか否かを判断し(S111)、停止されていなければ(S111:NO)、熱変位量lを飽和熱変位量Lに固定して(S112)、S106に進む。また、工作機械10が停止されているなら(S111:YES)、CPU72はS105に進み熱変位量lを演算する。
【0055】
ここで、熱変位量lを飽和熱変位量Lに固定するのは、図3からも明らかなように、熱変位量lが一旦飽和熱変位量Lに達したなら、その後は工作機械10を停止するまで熱変位量の変化はないとみなせるからで、そのような変化のない状態で熱変位量lの演算を行うのは、いわば無駄なことでありCPU72によけいな負担をかけることになるからである。
【0056】
このように、本実施例の工作機械10においては、工作機械10稼働(または再稼働)開始後、熱変位量lが飽和熱変位量Lに達するまでは演算処理によって熱変位量lを算出し、それによって主軸28のZ軸位置を補正しているが、熱変位量lが飽和熱変位量Lに達してからは演算処理によって熱変位量lを求めることをせずに、飽和熱変位量Lによって主軸28のZ軸位置を補正する。
【0057】
したがって、それに応じてCPU72の処理量すなわち負担は小さくなり、そのソフト構成も簡単にできる。また、飽和熱変位量Lを使用するときも含めて、補正値は正確であるから工作機械に精度のよい加工を実行させることができる。 しかも、時刻や環境温度に対応して補正値を調整できるから、工作機械の精度は一層向上する。
【0058】
なお、この実施例においては、工具が加工手段に該当し、ボールネジ機構36およびZ軸モータ38により駆動手段が構成され、マイコン部70特にCPU72とZ軸制御系60の軸制御回路64およびZ軸サーボアンプ62により駆動制御手段が構成されている。また、マイコン部70特にCPU72が、補正量算出手段および飽和熱変位量演算手段として機能し、操作パネル22は、飽和熱変位量入力手段および調整入力手段に相当している。
【0059】
以上、実施例に従って、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の工作機械の制御装置は、工作機械の熱変位量が飽和熱変位量に達したなら補正量を算出するための演算を行わず、飽和熱変位量に基づいて補正量を決定している。したがって、補正量を算出するための演算は補正量が増加している間だけ行えばよく、制御装置の処理量すなわち負担は小さくなり、その構成も簡単にできる。また、飽和熱変位量を使用するときも含めて、補正量は正確であるから工作機械に精度のよい加工を実行させることができる。
しかも、飽和熱変位演算手段は、1回のプログラム運転で飽和熱変位量を算出するから、飽和熱変位量の算出のための処理を長時間にわたって行うことはなく、この点でも制御装置の負担が軽減される。
【0061】
【0062】
請求項2記載の工作機械の制御装置では、補正量算出手段が、調整入力手段によって入力された調整値または予め設定されている手順で決められる調整値を、補正量の演算値に加算または減算して補正量とするから、例えば朝等の気温が比較的低いとき等に応じた調整値を補正量の演算値に加算または減算して補正量とするから、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を解消して精密な加工を行うことができる。
【0063】
請求項3記載の工作機械の制御装置によれば、例えば1日の時間帯(朝、昼、夜等)に応じて、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解消することができる。
請求項4記載の工作機械の制御装置によれば、工作機械が設置されている場所の気温すなわち環境温度に応じて、演算された補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解消することができる。
【0064】
請求項5記載の工作機械の制御装置によれば、工作機械の再稼働に当たって、停止時に残っていた熱変位を考慮して補正量を決めることができるから、工作機械の一時停止、再稼働があっても適切な補正量を算出でき、精密な加工を可能とする。
請求項6記載の工作機械の制御装置によれば、飽和熱変位量入力手段によって飽和熱変位量を入力することで、飽和熱変位量演算手段の飽和熱変位量算出処理を不要にでき、この点でも制御装置の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の工作機械の制御系を説明するブロック図である。
【図2】 実施例の工作機械のピッチ誤差補正テーブルの説明図である。
【図3】 実施例の工作機械の稼働時間と熱変位量の関係を示すグラフである。
【図4】 実施例の工作機械のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図5】 実施例の工作機械のCPUによる飽和熱変位量の算出に使用されるグラフである。
【図6】 熱変位量の実測値と演算値を比較するグラフである。
【図7】 実施例および従来例の工作機械の構造の説明図である。
【図8】 実施例および従来例の工作機械の構造の説明図である。
【符号の説明】
10…工作機械
12…スプラッシュガード
14…テーブル
16…ATCマガジン
20…本体
22…操作パネル(飽和熱変位量入力手段、調整入力手段)
24…ワーク交換口
26…メンテナンス用の点検ハッチ
28…主軸
30…主軸モータ
32…ナット部(駆動手段)
34…ボールネジ(駆動手段)
36…ボールネジ機構(駆動手段)
38…Z軸モータ(駆動手段)
40…ガイドレール
42…スライド
50…主軸制御系
52…主軸サーボアンプ
54…軸制御回路
60…Z軸制御系
62…Z軸サーボアンプ(駆動制御手段)
64…軸制御回路(駆動制御手段)
70…マイコン部(駆動制御手段、補正量算出手段、飽和熱変位量演算手段)
72…CPU(駆動制御手段、補正量算出手段、飽和熱変位量演算手段)
74…RAM
76…時計
80…ピッチ誤差補正テーブル

Claims (6)

  1. 被加工物に加工を施すための加工手段と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する工作機械に装備される工作機械の制御装置であって、
    前記工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、予め定められている加工プログラムに従って前記駆動手段を制御するプログラム運転の実行に当たって前記補正量を考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備える工作機械の制御装置において、
    1回の前記プログラム運転の実行に要するサイクルタイムと該1回のプログラム運転を実行したときの前記加工手段の総移動距離とから該加工手段の単位時間移動距離を求め、予め記憶している前記単位時間移動距離と該工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量との相関グラフと前記求めた単位時間移動距離とを対比して、前記相関グラフに基づく前記飽和熱変位量を算出する飽和熱変位量演算手段を設けると共に、
    前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量演算手段が算出した飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算し、該算出した補正量が前記飽和熱変位量と等しくなれば前記工作機械の稼働中は該演算を行わずに前記飽和熱変位量を前記補正量とする構成である
    ことを特徴とする工作機械の制御装置。
  2. 請求項1記載の工作機械の制御装置において、
    前記補正量算出手段は、調整入力手段によって入力された調整値または予め設定されている手順で決められる調整値を、前記補正量の演算値に加算または減算して前記補正量とすることを特徴とする工作機械の制御装置。
  3. 請求項2記載の工作機械の制御装置において、
    前記調整値は時刻に対応して定められていて、前記補正量算出手段は時刻に基づいて前記調整値を選択して使用することを特徴とする工作機械の制御装置。
  4. 請求項2記載の工作機械の制御装置において、
    前記調整値は前記工作機械の環境温度に対応して定められていて、前記補正量算出手段は該環境温度に基づいて前記調整値を選択して使用することを特徴とする工作機械の制御装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれか記載の工作機械の制御装置において、
    前記補正量算出手段は、前記工作機械の稼働が停止されると前記飽和熱変位量を用いて該工作機械の熱変位量を演算し、該工作機械が再稼働したときの該熱変位量の演算値を前記補正量の初期値として前記補正量を演算することを特徴とする工作機械の制御装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか記載の工作機械の制御装置において、
    前記飽和熱変位量を入力するための飽和熱変位量入力手段を設けると共に、
    前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量入力手段によって前記飽和熱変位量が入力されているときは、該入力された飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算する構成である
    ことを特徴とする工作機械の制御装置。
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