JPH10143217A - 工作機械の制御装置 - Google Patents

工作機械の制御装置

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JPH10143217A
JPH10143217A JP29886696A JP29886696A JPH10143217A JP H10143217 A JPH10143217 A JP H10143217A JP 29886696 A JP29886696 A JP 29886696A JP 29886696 A JP29886696 A JP 29886696A JP H10143217 A JPH10143217 A JP H10143217A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構成でありながら工作機械に精度のよ
い加工を実行させることが可能な工作機械の制御装置を
提供すること。 【解決手段】 工作機械10稼働開始後、熱変位量lが
飽和熱変位量Lに達するまでは演算処理によって熱変位
量を算出し(S105)、それによって主軸28のZ軸
位置を補正しているが、熱変位量lが飽和熱変位量Lに
達してからは演算処理によって熱変位量lを求めること
をせずに、飽和熱変位量Lによって主軸28のZ軸位置
を補正する(S112)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械の熱変位
を補正する機能を有する工作機械の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばワークに切削や穴開け等を
施したり基板に部品を組み付けるための加工手段と、こ
の加工手段とワークや基板等の被加工物との相対位置を
変動させる駆動手段とを有する工作機械がある。一般
に、切削等の加工を行う工作機械では、例えばドリルや
タップ等の工具を保持するための保持機構、これに保持
された工具を回転駆動するための主軸駆動機構、工具の
X軸方向の送りのためのX軸送り機構、工具のY軸方向
の送りのためのY軸送り機構、工具のZ軸方向の送りの
ためのZ軸送り機構、これらの送り機構を制御するため
の制御装置等を備えている。
【0003】一例をあげると、図7および図8に示され
る工作機械10がある。図7に示すように、この工作機
械10は、切削屑の飛散を防止するためのスプラッシュ
ガード12の内側にワーク(図示しない)を載置するた
めのテーブル14、例えばドリルやタップ等の工具交換
のためのATCマガジン16、工作機械本体(以下単に
本体ともいう)20等が配置されている。またスプラッ
シュガード12には、操作パネル22、ワークの入出や
メンテナンスのためのワーク交換口24、主にメンテナ
ンス用の点検ハッチ26等が設けられている。
【0004】図8に示すように、本体20は、ドリルや
タップ等の工具を保持するための主軸28、主軸28を
回転駆動するための主軸モータ30、多数の鋼球を内蔵
して主軸側に固着されているナット部32とナット部3
2に内挿されるボールネジ34とからなるボールネジ機
構36、ボールネジ34を回転駆動するためのZ軸モー
タ38、ボールネジ34と平行に配されているガイドレ
ール40、ガイドレール40と主軸側とを連結するスラ
イド42等を備えている。
【0005】この本体20においては、ボールネジ機構
36とZ軸モータ38とでZ軸方向の送りのためのZ軸
送り機構が構成され、Z軸モータ38によりボールネジ
34を回転させることで主軸28のZ軸方向の移動が行
われる。また図7に示されるテーブル14をX軸および
Y軸方向に移動させることができ、主軸28のZ軸方向
の移動と併せて、ワークと工具のX、Y、Z軸方向の相
対位置を変化させることができる。
【0006】このような工作機械では、例えばボールネ
ジ機構の稼働に伴って摩擦熱が発生してボールネジが延
びることがある。また、他の機構においても発熱があ
る。そうした発熱によって工作機械に熱変位が発現す
る。この熱変位が例えばZ軸方向に発現すると、ワーク
に施される溝の深さや段差の高さ等に誤差が生じる。公
差が熱変位量よりも十分に大きい場合にはこのような熱
変位による加工誤差はあまり問題とはならないが、そう
でない場合には熱変位に対する補正が必要となる。その
ための制御装置として、工作機械の熱変位を補正するた
めの補正量を算出する補正量算出手段と、予め定められ
ている加工プログラムに従って駆動手段を制御するに当
たってその補正量を考慮して駆動手段を制御する駆動制
御手段とを備える工作機械の制御装置が提案されている
(例えば特開昭62−88548号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
工作機械の制御装置においては、工作機械の稼働中を通
して熱変位量を算出して補正する形態であったので、そ
の処理を実行するためのシステムを常時動かしておく必
要があった。つまり、制御装置の処理量がその分だけ大
きく制御装置の負担も大きかった。
【0008】本発明は、このような問題を解決するため
のもので、従来よりも簡単な構成でありながら工作機械
に精度のよい加工を実行させることが可能な工作機械の
制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段として、請求項1記載の工作機械の制御装置は、
被加工物に加工を施すための加工手段と、該加工手段と
被加工物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する
工作機械に装備される工作機械の制御装置であって、前
記工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出する
補正量算出手段と、予め定められている加工プログラム
に従って前記駆動手段を制御するに当たって前記補正量
を考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備
える工作機械の制御装置において、前記工作機械の熱変
位の最大値としての飽和熱変位量を入力するための飽和
熱変位量入力手段を設けると共に、前記補正量算出手段
は、該飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算し、該算
出した補正量が前記飽和熱変位量と等しくなれば前記工
作機械の稼働中は該演算を行わずに前記飽和熱変位量を
前記補正量とする構成としている。
【0010】本発明における補正量算出手段および駆動
制御手段としての機能は、制御装置に内蔵されるマイク
ロコンピュータ、特にそのCPUに果たさせることがで
きる。飽和熱変位量入力手段は、例えばテンキーパネル
のような数値を入力できるものであればよく、ロータリ
スイッチやディップスイッチのような構造でも構わな
い。
【0011】飽和熱変位量入力手段によって入力される
飽和熱変位量は、例えば実験等によって計測された値や
過去の実績値あるいはそうした値に適宜の補正処理を施
した値等を使用すればよい。また、シミュレーション等
で求めてもよい。補正量算出手段は、飽和熱変位量入力
手段によって入力された飽和熱変位量を用いて補正量を
演算し、算出した補正量が飽和熱変位量と等しくなれば
工作機械の稼働中は演算を行わずに飽和熱変位量を補正
量とする。その演算は、例えば下記に示す数式(1)を
用いることができる。
【0012】
【数1】A=L(1−e(-γt))…(1) ただし、A:補正量、L:飽和熱変位量、γ:工作機械
毎に設定される定数、t:経過時間である。
【0013】工作機械が稼働を続けることによって温度
が上昇すると、やがて発熱量と放熱量とが均衡する状態
になる。その状態となれば、工作機械の温度変化は実質
的になくなるから、熱変位量も変化しなくなる。そのと
きの熱変位量が最大値すなわち飽和熱変位量であり、以
後は工作機械の稼働中を通じて変わらないとみてよい。
よって、その時点(算出した補正量が飽和熱変位量と等
しくなった時点)で補正量の演算をやめて、飽和熱変位
量を補正量としても支障はない。
【0014】したがって、補正量を算出するための演算
は補正量が増加している間だけ行えばよく、制御装置の
処理量すなわち負担は小さくなり、その構成も簡単にで
きる。また、飽和熱変位量を使用するときも含めて、補
正量は正確であるから工作機械に精度のよい加工を実行
させることができる。
【0015】図6に示すグラフは、ある工作機械を30
0分間稼働させて停止させた際の熱変位量の実測値(破
線)と数式(1)による計算値(実線)とを比較するも
のである。このグラフから明らかなように、数式(1)
による補正量の計算値は実測値との整合性に優れている
ことがわかる。
【0016】なお、この計算値は、t=0〜300
(分)の範囲では下記の数式(2)により、t=300
〜600(分)の範囲では数式(3)により求めた。
【0017】
【数2】A=34(1−e(-3.8t))…(2)
【0018】
【数3】A=34(1−e(-2.1(t-300)))…(3) また、この図6のグラフでは熱変位量が負の値として示
されているが、これは熱変位の方向に対する正負の符号
の付け方によるものであって、工作機械が縮んでいるわ
けではない。
【0019】ところで、本発明においては、補正量が飽
和熱変位量と等しくなるとは、数学的な意味で等しいこ
とを言うわけではなく、演算された補正量と飽和熱変位
量との差が、工作機械の仕様やワークに要求される公差
等を考慮して設定される誤差の範囲に収まることをい
う。また、工作機械の稼働中とはワークの加工、ワーク
の交換等を実行している状態を言い、例えば休憩時間等
で工作機械がスタンバイ状態にされているときなどは除
かれる。
【0020】請求項2記載の工作機械の制御装置は、被
加工物に加工を施すための加工手段と、該加工手段と被
加工物との相対位置を変動させる駆動手段とを有する工
作機械に装備される工作機械の制御装置であって、前記
工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出する補
正量算出手段と、予め定められている加工プログラムに
従って前記駆動手段を制御するに当たって前記補正量を
考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え
る工作機械の制御装置において、前記工作機械を稼働さ
せたときに得られる稼働データに基づいて該工作機械の
熱変位の最大値としての飽和熱変位量を算出する飽和熱
変位量演算手段を設けると共に、前記補正量算出手段
は、該飽和熱変位量を用いて前記補正量を演算し、該算
出した補正量が前記飽和熱変位量と等しくなれば前記工
作機械の稼働中は該演算を行わずに前記飽和熱変位量を
前記補正量とする構成としている。
【0021】この飽和熱変位量演算手段は、工作機械を
稼働させたときに得られる稼働データに基づいて工作機
械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量を算出する。
この稼働データとしては、工作機械の電源投入時間、ワ
ーク1個の加工に相当するプログラム運転の回数(プロ
グラム運転回数)、1回のプログラム運転に要する時間
(プログラム運転時間)、ドリル、タップ等の加工回数
(累積または単位時間当たり回数)、1回のプログラム
運転におけるスピンドル運転時間、同じく軸運転時間、
軸運転スピード、1回のプログラム運転における工具交
換(オートツールチェンジ、ATC)回数等である。な
お、これらはあくまでも例示であり、これらに限るもの
ではない。
【0022】これらの稼働データの1つあるいは複数と
工作機械の飽和熱変位量との相関を実験的に求めて、こ
れを例えばマップやテーブルあるいは関数として制御装
置に記憶させておけば、飽和熱変位量演算手段は、例え
ば1回のプログラム運転で得られる稼働データに基づい
て、飽和熱変位量を算出できる。
【0023】飽和熱変位量が求まれば、請求項1記載の
構成と同様に補正量を演算できる。そして請求項1記載
の構成と同様の効果を得ることができる。さらに、この
請求項2記載の構成とすれば飽和熱変位量の入力は不要
となるから、例えば飽和熱変位量を誤入力するような不
具合は発生しない。
【0024】請求項3記載の工作機械の制御装置は、請
求項2記載の工作機械の制御装置において、前記駆動制
御手段は、前記加工プログラムを繰り返し実行すること
により前記駆動手段に同じ動作を反復させ、前記飽和熱
変位演算手段は、該駆動制御手段による前記加工プログ
ラムの1回の実行に伴う前記工作機械の稼働で得られる
稼働データに基づいて前記飽和熱変位量を算出すること
を特徴とする。
【0025】つまり、前述のプログラム運転を1回行う
だけで飽和熱変位量を算出するから、飽和熱変位量の算
出のための処理を長時間にわたって行うことはなく、こ
の点でも制御装置の負担が軽減される。請求項4記載の
工作機械の制御装置は、請求項1ないし3のいずれか記
載の工作機械の制御装置において、前記補正量算出手段
は、調整入力手段によって入力された調整値または予め
設定されている手順で決められる調整値を、前記補正量
の演算値に加算または減算して前記補正量とすることを
特徴とする。
【0026】補正量の演算は上述のようになされるので
あるが、例えば朝等の気温が比較的低いとき等では工作
機械の温度上昇が緩やかになり、演算された補正量と実
際の熱変位量との誤差が無視できない程度になることも
ある。そのような場合に、例えばオペレータが、調整入
力手段によって前述の誤差に相当する調整値を入力した
り、制御装置側で予め設定されている手順で決められる
調整値を求めて、この調整値を補正量の演算値に加算ま
たは減算して補正量とすれば、演算された補正量と実際
の熱変位量との誤差を解消して精密な加工を行うことが
できる。
【0027】請求項5記載の工作機械の制御装置は、請
求項4記載の工作機械の制御装置において、前記調整値
は時刻に対応して定められていて、前記補正量算出手段
は時刻に基づいて前記調整値を選択して使用することを
特徴とする。この構成とすれば、例えば1日の時間帯
(朝、昼、夜等)に応じて、演算された補正量と実際の
熱変位量との誤差を自動的に解消することができる。
【0028】請求項6記載の工作機械の制御装置は、請
求項4記載の工作機械の制御装置において、前記調整値
は前記工作機械の環境温度に対応して定められていて、
前記補正量算出手段は該環境温度に基づいて前記調整値
を選択して使用することを特徴とする。
【0029】この構成とすれば、工作機械が設置されて
いる場所の気温すなわち環境温度に応じて、演算された
補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解消するこ
とができる。以上の請求項1〜6記載の構成は、工作機
械の稼働中に関わるものであるが、例えば休憩時間等に
工作機械の稼働を一時停止してから再稼働させることも
ある。工作機械の稼働が停止されると温度が低下するか
ら熱変位量も減少する。しかし、完全に冷め切るまでは
熱変位量は0にならない。このため、例えば休憩時間等
に稼働を一時停止してから再稼働させたときには、工作
機械にはある程度の熱変位が残っている。したがって、
この熱変位を無視して補正量を決めるのは好ましくな
い。
【0030】そこで、請求項7記載の工作機械の制御装
置は、請求項1ないし6のいずれか記載の工作機械の制
御装置において、前記補正量算出手段は、前記工作機械
の稼働が停止されると前記飽和熱変位量を用いて該工作
機械の熱変位量を演算し、該工作機械が再稼働したとき
の該熱変位量の演算値を前記補正量の初期値として前記
補正量を演算する構成としている。
【0031】この構成とすると、工作機械の再稼働に当
たって、停止時に残っていた熱変位を考慮して補正量を
決めることができるから、工作機械の一時停止、再稼働
があっても適切な補正量を算出でき、精密な加工を可能
とする。なお、工作機械の停止時においても補正量算出
手段(例えばCPU)を機能させるには、バックアップ
電源(電池)を備えればよい。
【0032】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例を図面を参
照して説明することにより、発明の実施の形態を具体的
に説明する。
【0033】
【実施例】本実施例の工作機械のメカニカルな構成は従
来例として図7および図8に示したものと同じであるの
で、これらを使用して工作機械10のメカニカルな構造
の説明は省略する。
【0034】本発明の工作機械の制御装置に相当する、
工作機械10の制御系の構成は図1に示すとおりであ
る。この図1に示すように、この制御系は、主軸28の
回転を制御するための主軸制御系50、主軸28のZ軸
位置を制御するためのZ軸制御系60、この制御系の中
枢となるマイコン部70、操作パネル22およびテーブ
ル14のX軸位置を制御するためのX軸制御系(図示
略)やテーブル14のY軸位置を制御するためのY軸制
御系(図示略)等から構成されている。
【0035】主軸制御系50は、主軸モータ30、主軸
モータ30に電力を供給するための主軸サーボアンプ5
2および主軸サーボアンプ52の供給電力を制御するた
めの軸制御回路54からなり、軸制御回路54はマイコ
ン部70のCPU72からの指示に従って主軸サーボア
ンプ52の動作を制御する構成である。Z軸制御系60
は、Z軸モータ38、Z軸モータ38に電力を供給する
ためのZ軸サーボアンプ62およびZ軸サーボアンプ6
2の供給電力を制御するための軸制御回路64からな
り、軸制御回路64はマイコン部70のCPU72から
の指示に従ってZ軸サーボアンプ62の動作を制御する
構成である。また、図示を省略したX軸制御系およびY
軸制御系も、これら主軸制御系50並びにZ軸制御系6
0とほぼ同様の構成である。
【0036】マイコン部70は、制御プログラム等を格
納しているROMや入出力ポート等を内蔵するワンチッ
プ型のCPU72、RAM74および時計76等からな
り、周知のマイクロコンピュータとして構成されてい
る。このマイコン部70(厳密にはCPU72)は、制
御プログラムに従って主軸制御系50、Z軸制御系60
等を制御して、ワークに所定の加工を施させるのであ
る。また、マイコン部70は操作パネル22に接続され
ており、マイコン部70は、操作パネル22からの入力
信号を取得したり、操作パネル22に信号を送って操作
パネル22の液晶ディスプレイの画像や文字の表示を制
御することやLEDの点滅を制御すること等ができる。
【0037】RAM74は、周知のようにCPU72の
ワークエリアとなるが、本実施例では、このRAM74
上に図2に示される構造のピッチ誤差補正テーブル80
が設けられている。このピッチ誤差補正テーブル80
は、例えばボールネジ機構36の稼働誤差を補正するた
めのテーブルである。
【0038】Z軸移動を受け持つボールネジ機構36
は、製造公差等によりボールネジ34の回転量とナット
部32の移動量(すなわち主軸28のZ軸方向移動量)
との誤差が避けられないので、それを補正する必要があ
る。そこで適当な数の補正ポイントを設定し(ボールネ
ジ34の長さが500mmで20mm毎に補正するとす
れば、補正ポイントは25箇所となる。)、その補正ポ
イント毎にボールネジ34の回転による移動量の計算値
と実測値との誤差を求め、その誤差に相当するボールネ
ジ34の回転量(ピッチ)をピッチ誤差補正テーブルに
書き込んでおき、各補正ポイント毎にそのピッチ分だけ
ボールネジ34を正あるいは逆回転させることによって
主軸28のZ軸位置を正確ならしめている。X軸および
Y軸についても同様である。
【0039】時計76は、いわゆる電子時計であって、
年月日時刻を算出してそのデータをCPU72に送るこ
とができる。なおCPU72は、一定の周期例えば1/
1000秒毎にカウント値をインクリメントするカウン
タを内蔵していて、そのカウンタを使用することによ
り、例えばある加工の開始から終了までの所要時間のよ
うな、経過時間を計測することもできる。
【0040】さて、この工作機械10を稼働させると、
そのZ軸方向の熱変位量は例えば図3に示すようにな
る。縦軸は熱変位量(mm)、横軸は時間(分)を表
し、t1は稼働開始後に初めて熱変位量が飽和熱変位量
となった時間、t2およびt5は例えば休憩時間等で工
作機械10を停止した時間、t3およびt6は工作機械
10を再稼働させた時間、t4およびt7は、再稼働後
に飽和熱変位量に達した時間、t8は例えばその日の作
業終了に伴って工作機械10を停止させた時間を示して
いる。この図3から明らかなように、工作機械10を稼
働させると、その熱変位量は徐々に増加してやがて飽和
熱変位量に達する。その後、工作機械10の稼働中は熱
変位量は飽和熱変位量のままとなり、工作機械10を停
止させると熱変位量は減少し、再稼働させると再び飽和
熱変位量になるまで増加する。
【0041】この工作機械10においては、こうした熱
変位を補正して加工手段としての工具とワークとの相対
位置を正確ならしめるための処理をCPU72が行って
いる。以下その処理について図4を参照して説明する。
工作機械10の電源が投入されると、CPU72は、例
えば所定の初期化処理等を実行してから、所定の加工プ
ログラムを開始する(ステップ101、以下ステップを
Sと略記する)。具体的には、CPU72は、主軸制御
系50、Z軸制御系60、X軸制御系およびY軸制御系
を介して、工具とワークの相対位置、工具の回転数等を
制御して、ワークに加工プログラムに従った加工を施す
ことになる。
【0042】次に、CPU72は、その加工プログラム
による加工(プログラム運転)が1回目か否かを判断し
(S102)、1回目であれば(S102:YES)、
操作パネル22から飽和熱変位量Lの値が入力されてい
るか否かを判断する(S103)。この飽和熱変位量L
が入力されていなければ(S013:NO)、CPU7
2は加工プログラムに基づいて飽和熱変位量Lを算出す
る(S104)。飽和熱変位量Lの算出には、前述した
さまざまな手法を採用できるが(課題を解決するための
手段の欄を参照)、本実施例では次のようにして飽和熱
変位量Lを求めている。
【0043】図5に示すのは、工作機械10における主
軸28のZ軸方向の単位時間移動距離(mm/分)と飽
和熱変位量Lとの相関を表すグラフである。単位時間移
動距離は、1回のプログラム運転(普通はワーク1個の
加工に相当する)に要する時間(サイクルタイム)と、
1回のプログラム運転における主軸28のZ軸方向の総
移動距離とから求めることができる。例えばサイクルタ
イムが167秒、総移動距離が7746mmとすれば、
単位時間移動距離は7746/167=2783(mm
/分)である。これと図5のグラフとを対比すれば(そ
の直線の式、y=0.0112xに代入すれば)、その
プログラム運転を多数回繰り返したときのZ軸方向の飽
和熱変位量L=31.2(μm)を得ることができる。
【0044】この図5に示すグラフは工作機械毎に独特
であるが、単位時間移動距離に基づいて飽和熱変位量L
を求める構成であるから、加工プログラムが変更されて
も同じグラフを使用できる。つまり、1台の工作機械に
ついて1回だけデータを取ればよい。
【0045】本実施例の工作機械10においては、CP
U72はこの図5に示される直線の式を記憶している。
図4に戻り、S104では、CPU72は、1回目の加
工プログラムの実行(1回目のプログラム運転)で得ら
れるサイクルタイムと主軸28のZ軸方向の総移動距離
とに基づいて単位時間移動距離を算出し、その値と図5
に示される直線の式とから飽和熱変位量Lを算出するの
である。
【0046】続いてCPU72は、時間tにおける熱変
位量lを演算する(S105)。ここで使用する演算式
は、
【0047】
【数4】l=Lx(1−e-γt) …(4)
【0048】
【数5】l=Lxe-γ't …(5) の2種類である。ただし、γは工作機械毎に設定される
定数、tは経過時間である。
【0049】数式(4)は工作機械10が稼働している
とき(すなわち熱変位量が増加するとき)、数式(5)
は工作機械10の稼働が停止しているとき(熱変位量が
減少するとき)に使用される。図示は省略しているが、
本実施例の工作機械10は、その停止時においてもマイ
コン部70を機能させるためのバックアップ電源を備え
ている。このため、工作機械10が停止されても上記の
数式(5)による演算を実行可能である。
【0050】なお、工作機械10の起動直後からの演算
ではtは稼働時間そのものである。しかし、数式(5)
では稼働時間をそのまま用いるわけではなく、工作機械
10の停止後の経過時間である。また、再稼働の場合に
は、工作機械10が完全に冷え切っているわけではない
ので、再稼働時には、数式(5)で求めた熱変位量lを
数式(4)に代入してtを求め、そのtを経過時間の初
期値として使用する。
【0051】次に、CPU72は、S105で算出した
熱変位量lに対する調整の要否を判断する(S10
6)。この要否判断は、請求項4〜6記載の調整値を熱
変位量lに加算または減算する必要の有無の判断であ
り、(1)操作パネル22を介して調整値が入力されて
いる、(2)時刻に対応して設定された調整値がある、
(3)環境温度に対応して調整値を使用する必要がある
等の条件が成立していれば、調整要(S106:YE
S)であり、CPU72はS107に進んで熱変位量l
に調整値を加算あるいは減算してこれを補正値として例
えばRAM74に記憶する。
【0052】一方、調整不要(S106:NO)であれ
ば、CPU72は熱変位量lを補正値として例えばRA
M74に記憶する。そして、CPU72は、その記憶し
た補正値に相当するピッチ数だけ、ピッチ誤差補正テー
ブルのZ軸補正を増減して、それに基づく指令値をZ軸
制御系60の軸制御回路64に出力することにより、主
軸28のZ軸位置を補正する(S108)。
【0053】その後、CPU72は加工終了(予定数の
ワークを加工し終えた)か否かを判断し(S109)、
加工終了でなければS102に回帰する。ところで、S
102の処理で否定判断の場合には、CPU72は、熱
変位量lが飽和熱変位量Lに達したか否かを(厳密に
は、所定の誤差の範囲においてl=Lとなっているか否
かを)判断する(S110)。否定判断であれば、CP
U72は、S105に進んで上述したと同様の処理を繰
り返す。
【0054】また、肯定判断(S110:YES)であ
れば、CPU72は、工作機械10が停止されたか否か
を判断し(S111)、停止されていなければ(S11
1:NO)、熱変位量lを飽和熱変位量Lに固定して
(S112)、S106に進む。また、工作機械10が
停止されているなら(S111:YES)、CPU72
はS105に進み熱変位量lを演算する。
【0055】ここで、熱変位量lを飽和熱変位量Lに固
定するのは、図3からも明らかなように、熱変位量lが
一旦飽和熱変位量Lに達したなら、その後は工作機械1
0を停止するまで熱変位量の変化はないとみなせるから
で、そのような変化のない状態で熱変位量lの演算を行
うのは、いわば無駄なことでありCPU72によけいな
負担をかけることになるからである。
【0056】このように、本実施例の工作機械10にお
いては、工作機械10稼働(または再稼働)開始後、熱
変位量lが飽和熱変位量Lに達するまでは演算処理によ
って熱変位量lを算出し、それによって主軸28のZ軸
位置を補正しているが、熱変位量lが飽和熱変位量Lに
達してからは演算処理によって熱変位量lを求めること
をせずに、飽和熱変位量Lによって主軸28のZ軸位置
を補正する。
【0057】したがって、それに応じてCPU72の処
理量すなわち負担は小さくなり、そのソフト構成も簡単
にできる。また、飽和熱変位量Lを使用するときも含め
て、補正値は正確であるから工作機械に精度のよい加工
を実行させることができる。しかも、時刻や環境温度に
対応して補正値を調整できるから、工作機械の精度は一
層向上する。
【0058】なお、この実施例においては、工具が加工
手段に該当し、ボールネジ機構36およびZ軸モータ3
8により駆動手段が構成され、マイコン部70特にCP
U72とZ軸制御系60の軸制御回路64およびZ軸サ
ーボアンプ62により駆動制御手段が構成されている。
また、マイコン部70特にCPU72が、補正量算出手
段および飽和熱変位量演算手段として機能し、操作パネ
ル22は、飽和熱変位量入力手段および調整入力手段に
相当している。
【0059】以上、実施例に従って、本発明の実施の形
態について説明したが、本発明はこのような実施例に限
定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲
でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の工
作機械の制御装置は、工作機械の熱変位量が飽和熱変位
量に達したなら補正量を算出するための演算を行わず、
飽和熱変位量に基づいて補正量を決定している。したが
って、補正量を算出するための演算は補正量が増加して
いる間だけ行えばよく、制御装置の処理量すなわち負担
は小さくなり、その構成も簡単にできる。また、飽和熱
変位量を使用するときも含めて、補正量は正確であるか
ら工作機械に精度のよい加工を実行させることができ
る。
【0061】請求項2記載の工作機械の制御装置も請求
項1記載のものと同様の効果を発揮する。さらにこの工
作機械の制御装置では、飽和熱変位量演算手段が、工作
機械を稼働させたときに得られる稼働データに基づいて
工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量を算出
するので、飽和熱変位量の入力は不要となるから、例え
ば飽和熱変位量を誤入力するような不具合は発生しな
い。
【0062】請求項3記載の工作機械の制御装置では、
飽和熱変位演算手段は、1回のプログラム運転で飽和熱
変位量を算出するから、飽和熱変位量の算出のための処
理を長時間にわたって行うことはなく、この点でも制御
装置の負担が軽減される。請求項4記載の工作機械の制
御装置では、補正量算出手段が、調整入力手段によって
入力された調整値または予め設定されている手順で決め
られる調整値を、補正量の演算値に加算または減算して
補正量とするから、例えば朝等の気温が比較的低いとき
等に応じた調整値を補正量の演算値に加算または減算し
て補正量とするから、演算された補正量と実際の熱変位
量との誤差を解消して精密な加工を行うことができる。
【0063】請求項5記載の工作機械の制御装置によれ
ば、例えば1日の時間帯(朝、昼、夜等)に応じて、演
算された補正量と実際の熱変位量との誤差を自動的に解
消することができる。請求項6記載の工作機械の制御装
置によれば、工作機械が設置されている場所の気温すな
わち環境温度に応じて、演算された補正量と実際の熱変
位量との誤差を自動的に解消することができる。
【0064】請求項7記載の工作機械の制御装置によれ
ば、工作機械の再稼働に当たって、停止時に残っていた
熱変位を考慮して補正量を決めることができるから、工
作機械の一時停止、再稼働があっても適切な補正量を算
出でき、精密な加工を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の工作機械の制御系を説明するブロッ
ク図である。
【図2】 実施例の工作機械のピッチ誤差補正テーブル
の説明図である。
【図3】 実施例の工作機械の稼働時間と熱変位量の関
係を示すグラフである。
【図4】 実施例の工作機械のCPUが実行する処理の
フローチャートである。
【図5】 実施例の工作機械のCPUによる飽和熱変位
量の算出に使用されるグラフである。
【図6】 熱変位量の実測値と演算値を比較するグラフ
である。
【図7】 実施例および従来例の工作機械の構造の説明
図である。
【図8】 実施例および従来例の工作機械の構造の説明
図である。
【符号の説明】
10…工作機械 12…スプラッシュガード 14…テーブル 16…ATCマガジン 20…本体 22…操作パネル(飽和熱変位量入力手段、調整入力手
段) 24…ワーク交換口 26…メンテナンス用の点検ハッチ 28…主軸 30…主軸モータ 32…ナット部(駆動手段) 34…ボールネジ(駆動手段) 36…ボールネジ機構(駆動手段) 38…Z軸モータ(駆動手段) 40…ガイドレール 42…スライド 50…主軸制御系 52…主軸サーボアンプ 54…軸制御回路 60…Z軸制御系 62…Z軸サーボアンプ(駆動制御手段) 64…軸制御回路(駆動制御手段) 70…マイコン部(駆動制御手段、補正量算出手段、飽
和熱変位量演算手段) 72…CPU(駆動制御手段、補正量算出手段、飽和熱
変位量演算手段) 74…RAM 76…時計 80…ピッチ誤差補正テーブル

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段とを有する工作機械に装備される工作機械の制御
    装置であって、 前記工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出す
    る補正量算出手段と、予め定められている加工プログラ
    ムに従って前記駆動手段を制御するに当たって前記補正
    量を考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを
    備える工作機械の制御装置において、 前記工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変位量を
    入力するための飽和熱変位量入力手段を設けると共に、 前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量を用いて前記補
    正量を演算し、該算出した補正量が前記飽和熱変位量と
    等しくなれば前記工作機械の稼働中は該演算を行わずに
    前記飽和熱変位量を前記補正量とする構成であることを
    特徴とする工作機械の制御装置。
  2. 【請求項2】 被加工物に加工を施すための加工手段
    と、該加工手段と被加工物との相対位置を変動させる駆
    動手段とを有する工作機械に装備される工作機械の制御
    装置であって、 前記工作機械の熱変位を補正するための補正量を算出す
    る補正量算出手段と、予め定められている加工プログラ
    ムに従って前記駆動手段を制御するに当たって前記補正
    量を考慮して前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを
    備える工作機械の制御装置において、 前記工作機械を稼働させたときに得られる稼働データに
    基づいて該工作機械の熱変位の最大値としての飽和熱変
    位量を算出する飽和熱変位量演算手段を設けると共に、 前記補正量算出手段は、該飽和熱変位量を用いて前記補
    正量を演算し、該算出した補正量が前記飽和熱変位量と
    等しくなれば前記工作機械の稼働中は該演算を行わずに
    前記飽和熱変位量を前記補正量とする構成であることを
    特徴とする工作機械の制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の工作機械の制御装置にお
    いて、 前記駆動制御手段は、前記加工プログラムを繰り返し実
    行することにより前記駆動手段に同じ動作を反復させ、 前記飽和熱変位量演算手段は、該駆動制御手段による前
    記加工プログラムの1回の実行に伴う前記工作機械の稼
    働で得られる稼働データに基づいて前記飽和熱変位量を
    算出することを特徴とする工作機械の制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか記載の工作
    機械の制御装置において、 前記補正量算出手段は、調整入力手段によって入力され
    た調整値または予め設定されている手順で決められる調
    整値を、前記補正量の演算値に加算または減算して前記
    補正量とすることを特徴とする工作機械の制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の工作機械の制御装置にお
    いて、 前記調整値は時刻に対応して定められていて、前記補正
    量算出手段は時刻に基づいて前記調整値を選択して使用
    することを特徴とする工作機械の制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の工作機械の制御装置にお
    いて、 前記調整値は前記工作機械の環境温度に対応して定めら
    れていて、前記補正量算出手段は該環境温度に基づいて
    前記調整値を選択して使用することを特徴とする工作機
    械の制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか記載の工作
    機械の制御装置において、 前記補正量算出手段は、前記工作機械の稼働が停止され
    ると前記飽和熱変位量を用いて該工作機械の熱変位量を
    演算し、該工作機械が再稼働したときの該熱変位量の演
    算値を前記補正量の初期値として前記補正量を演算する
    ことを特徴とする工作機械の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6234730B1 (en) 1998-10-30 2001-05-22 Brother Industries, Ltd. Thermal change computation apparatus for machine tool
WO2013015124A1 (ja) * 2011-07-27 2013-01-31 シチズンホールディングス株式会社 工作機械用制御装置

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