JP3683924B2 - ダンパ用コイルスプリング - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、クラッチディスク又はトルクコンバータ用のダンパ装置等に用いられるダンパ用コイルスプリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のクラッチディスクやトルクコンバータ用ダンパには、緩衝を目的としたコイルスプリング(以下、ダンパスプリングという。)が適数個、組み込まれている。例えば、図9は自動車のクラッチディスクに利用されたダンパ装置が示されている。ハブ61の外周にはハブフランジ62が径方向へ張り出しているとともに、ここにはハブ61を囲むように等角度毎に円弧状の窓部63が3個形成されており、各窓部63にダンパスプリング64が圧縮された形で収納されている。また、ハブフランジ62を挟むようにしてかつハブ61に対して角変位可能なクラッチプレート65とリテイニングプレート66が相互にピン67によって連結された状態で配されている。このクラッチプレート65およびリテイニングプレート66には、前記各窓部63に対応した位置に開口65a,66aがそれぞれ開設されており、ダンパスプリング64を両開口65a,66aと前記した窓部63とによって保持している。
【0003】
そして、エンジンからの駆動トルクは、クラッチプレート65に作用し、そのトルクはダンパスプリング64を介してハブフランジ62に伝達される。これにより、車両におけるクラッチの接続時の衝撃力が緩和される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、クラッチプレートからハブフランジにトルクの伝達が行われるには、ダンパスプリングの一端部が、クラッチプレート及びリテイニングプレートの開口縁によって押圧される。このような場合、円弧状に収納されたダンパスプリングではその中間部付近が外周側へ膨出するような変形を生じやすい。すると、膨出部分が窓部の開口縁と擦れ合って、それが長期に渡って繰り返されるうちに摩耗してしまう。結果ダンパスプリングのばね作用に支障を来たし円滑なトルク伝達が困難になる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、弾性力の低下を防ぎ耐久性の優れたダンパ用コイルスプリングを提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のダンパ用コイルスプリングは、相互に角変位可能な部材に同心の円弧状をなして開口する窓部に対し、この窓部における周方向に対向する両縁に両端部を当接させた状態で収容されるダンパ用コイルスプリングであって、両端部側には周方向に伸縮変形可能な弾性部が配され、これら弾性部の間であって中央部には圧縮変形不能な非弾性部が配されるとともに、全体として自然状態で前記窓部に沿った一連の円弧状に形成されていることに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0007】
また、非弾性部は部材の径方向に関する寸法が、弾性部の巻線外径より大に設定されていてもよい(請求項2の発明)。
【0008】
【作用】
請求項1の発明では、部材間に角変位が生じると、コイルスプリングが周方向に伸縮変形するが、スプリングの一部はその中心軸からずれて変形する部分を生じる。すると、このずれて変形した部分はスプリング収納空間の開口縁に擦れ合うことになるが、本発明ではこの部分に非弾性部が配置されているため、経時的に非弾性部が摩耗しても全体のばね作用に支障を生じない。
【0009】
また、非弾性部を弾性部に比較して大きく設定しておけば(請求項2の発明)、スプリング収納空間の開口縁との擦れ合いを非弾性部に限定しやすくなる。
【0010】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、スプリングの膨出部分に非弾性部、つまりばね作用に関与しない部分を配置したため、経時的に非弾性部が摩耗してもスプリング全体のばね作用には何等の支障はなく、長期間円滑な機能が保持される。
【0011】
また、請求項2の発明のように非弾性部を弾性部よりも大きく形成しておけば、弾性部をより確実に保護できる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明のダンパ用コイルスプリングを自動車のクラッチディスクに適用した一実施例について図1乃至図4を参照して説明する。
図1の構造について、より詳細に説明すると、1はハブであり、変速機側のクラッチシャフト2にスプライン嵌合しており、これによってハブ1はクラッチシャフト2に対し角回転及び軸方向へ変位可能な状態で連結される。また、ハブ1の外周にはハブフランジ3が径方向へ一体にかつ円盤状をなして突出形成されているとともに、ここには等角度毎に3個の窓部4が形成されており、各窓部4にはダンパスプリング5が収納されている。但し、各窓部4はハブ1と同心でかつ同一の円周上に配置されるとともに、それぞれ円弧状をなして開口している。
【0013】
また、図2に示すように、ハブフランジ3を挟むようにしてその両側には一対のディスクが配されている。両ディスクは一方がクラッチプレート6であり、他方がリテイニングプレート7であり、これらはピン8によって連結されて一体化されている。両プレート6,7は共にリング状をなし、かつハブ1に対して角変位可能な状態で嵌合されている。また、クラッチプレート6およびリテイニングプレート7には前記各窓部4に対応した位置に開口6a,7aがそれぞれ開設されている。各開口6a,7aは窓部4と同様、ハブ1と同心の円弧状をなして開口しており、通常時には対応位置にある開口6a,7aと窓部4とは整合している。ダンパスプリング5は対応する開口6a,7a及び窓部4内に僅かに圧縮された状態で収納されているとともに、その両端は開口6a,7aおよび窓部4における周方向に対向する両縁にそれぞれ当接されている。また、開口6a,7aの内周側及び外周側の縁は外方へそれぞれ張り出し状に折曲げられてダンパスプリング5の脱落を規制するカバー縁9,10となっている。さらに、クラッチプレート6の外周側には複数のクッショニングプレート11が連結されており、かつその両側にはリング状のフェーシング12が配され一体となっている。
【0014】
一方、前記ダンパスプリング5について説明すると(図3及び図4参照)、ダンパスプリング5は自然状態、つまり応力が作用していない状態では、その中心軸線に沿った円弧状をなしており、前記した窓部4および両開口6a,7aと同一の曲率としてあり、したがってこれらに沿ってそのまま組み込みが可能となる。また、ダンパスプリング5のほぼ中央部分の一定範囲は、巻線間隔(ばねピッチ)が密で密着状態にあり、これ以上に圧縮変形しえないようにすることで弾性力を喪失した非弾性部13を形成している。その他の部分は、通常のコイルスプリングとして機能する弾性部14を形成している。さらに、非弾性部13はその両端側から中央部に向けて徐々に巻線径が弾性部14の巻線径より径大となるよな樽状に形成され、なお、この実施例では非弾性部13の高さ寸法は、窓部4の開口高さ(径方向の開口寸法)とほぼ等しく、窓部4に収納した状態でその開口縁に軽く接触する程度に設定されている。また、弾性部14の高さ寸法は、窓部4に収容した状態でその開口縁との間に隙間を生じる程度の寸法に設定がなされている。
【0015】
次に、本実施例の作用について述べる。図示しないフライホィールとプレッシャプレートとによってフェーシング12が挟み付けられると、エンジンの駆動トルクはフェーシング12からクッショニングプレート11を通してクラッチプレート6およびリテイニングプレート7の両プレートへ伝達される。そして、ここへ伝達された駆動トルクはダンパスプリング5を介してハブ1へ伝達され、ハブ1から出力軸であるクラッチシャフト2へと出力される。
【0016】
ここで、一体となった両プレート6,7からハブ1への駆動トルクの伝達経路を詳しく観察してみると、例えば、両プレート6,7が右方向に回動するような駆動トルクを受けたとすると、両プレート6,7の開口6a,7aのうち左縁部がダンパスプリング5の左端部を押圧する。そして、その押圧力は、弾性部14を圧縮しながら非弾性部13を介してダンパスプリング5の右端部に伝わり、ハブフランジ3の窓部4右縁部がダンパスプリング5の右端部によって押圧され、ハブ1は右方向に回動することとなる。また、ダンパスプリング5の左端部が押圧されると、ダンパスプリング5の最も変形を生じやすい部分である中央部分、即ち非弾性部13は外周側に膨出するような変形を生じ、窓部4の上側開口縁に押しつけられて擦れ合う。しかし、弾性部14は、ダンパスプリング5の端部よりに位置し変形をし難いから、ダンパスプリング5の作用する押圧力によって変形を生じて窓部4の開口縁と擦れ合うことはない。従って、ダンパスプリング5のばね作用には何等影響はない。
【0017】
このように本実施例のダンパスプリング5によれば、一端部に作用する駆動トルクによって変形を生じて摩耗しやすい部分にばね作用に関与しない非弾性部13を配置したため、経時的に非弾性部13が摩耗してもスプリング全体のばね作用には何等の支障はなく、長期間円滑な機能が保持される。従って、耐久性に優れたダンプスプリング5を提供することができる。
【0018】
さらに、非弾性部13の巻線径が弾性部14の巻線径より径大であるため、確実に非弾性部13が窓部4の開口縁に圧接されて、弾性部14が保護されるとともに、弾性部14と開口縁との間には隙間が設けられるから、仮に弾性部14が変形したとしても、やはり弾性部14は開口縁に圧接されることはなく摩耗から保護される。また、非弾性部13の巻線径が弾性部14の巻線径より径大であると、非弾性部13が擦り減って来ても弾性部14が窓部4の開口縁に圧接されることがないから、より長期間円滑な機能が保持される。
【0019】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施態様も本発明の技術的範囲に属する。
(1) 本実施例のダンパスプリング5の角範囲は、ハブフランジ3の外周をほぼ3等分した程度であったが、ダンパスプリングの角範囲は任意の設定とすることができ、例えば、図5に示すように、ほぼハブフランジの外周を2等分した程度の180度とすることができる。また、非弾性部は変形を生じやすい部位であれば、任意に配することができるが、例えば図5に示すように、ダンパスプリング21の両端部に対する中央、そして各端部と中央に配された非弾性部22との中央という具合に、中央毎に非弾性部22を配することが最も効果的に弾性部23の摩耗を防止できる。これは、中央が最も変形を生じやすくなるということに鑑みたものである。
【0020】
(2) 本実施例では、ダンパスプリング5の非弾性部13は、その中央部に近づくに従ってその巻線径が弾性部14の巻線径より径大となるように構成されていたが、図6に示すように、ダンパスプリング31の非弾性部32の巻線径を一律に弾性部33の巻線径より径大にしてもよい。また、図7に示すように、ダンパスプリング41の非弾性部42の巻線径を、図中右端部から左端部に渡って徐々に弾性部43の巻線径より径大となるようにしてもよい。
【0021】
(3) 本実施例では、ダンパスプリング5の非弾性部13は、コイルスプリングの巻線間隔を密にして密着させることにより、弾性力を喪失させて形成されたものであったが、図8に示すように、金属片51等を弾性部52に一体となるように交互に連結したものであってもよい。
その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 クラッチディスクの一部を切り欠いた正面図である。
【図2】 図1におけるII−II線での断面図である。
【図3】 ダンパスプリングの斜視図である。
【図4】 ダンパスプリングの軸線方向の断面図である。
【図5】 他の実施例である非弾性部を3箇所設けたダンパスプリングを示す、その軸線方向の断面図である。
【図6】 他の実施例である非弾性部の形状を変えたダンパスプリングを示す、その軸線方向の断面図である。
【図7】 他の実施例である非弾性部の形状を変えたダンパスプリングを示す、その軸線方向の断面図である。
【図8】 他の実施例である非弾性部が金属片からなるダンパスプリングを示す、その軸線方向の断面図である。
【図9】 従来例を示すクラッチディスクの一部を切り欠いた正面図である。
【符号の説明】
3…ハブフランジ(部材)
4…窓部(スプリング収納空間)
5…ダンパスプリング(ダンパ用コイルスプリング)
6…クラッチプレート(部材)
7…リテイニングプレート(部材)
13…非弾性部
14…弾性部
Claims (2)
- 相互に角変位可能な部材に同心の円弧状をなして開口する窓部に対し、この窓部における周方向に対向する両縁に両端部を当接させた状態で収容されるダンパ用コイルスプリングであって、
両端部側には周方向に伸縮変形可能な弾性部が配され、これら弾性部の間であって中央部には圧縮変形不能な非弾性部が配されるとともに、全体として自然状態で前記窓部に沿った一連の円弧状に形成されていることを特徴とするダンパ用コイルスプリング。 - 前記非弾性部は前記部材の径方向に関する寸法が、前記弾性部の巻線外径より大に設定されていることを特徴とする請求項1記載のダンパ用コイルスプリング。
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