JP3683383B2 - 容器兼用注射器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス製シリンダ内に、予め薬剤が充填されるとともに該薬剤の密封性を保つラバーストッパが挿入されてなる、いわゆる容器兼用注射器にかかわり、特願昭53−158143号に代表される1室式、あるいは特願昭61−147223に代表される2室式を問わず幅広く適用される容器兼用注射器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年開発された容器兼用注射器には、左右対称の円筒状のガラス製シリンダの一方端に、該シリンダの外径とほぼ等しいかあるいはそれよりわずかに小さい内径とされたプラスチック製の筒先を圧入・嵌着させ、この筒先を介して注射針が取り付けられるようになっているものがある。
【0003】
ここで、筒先にはシリンダとの嵌着方向先端部分に円筒部が形成されている。この円筒部は、その内部空間にラバーストッパを遊嵌させ得るように、該円筒部の内径がラバーストッパの外径よりもわずかに大きめに設定され、しかも、円筒部の内側には1本以上の縦溝が形成されている。
【0004】
このような構造であるために、当該容器兼用注射器を使用する際、プランジャーロッドの前進に伴い、シリンダに封止されていた薬剤が筒先方向へ移動し、同時にシリンダの前部に挿入されているラバーストッパがシリンダから筒先の円筒部内へ移動・嵌入し、薬剤が円筒部の内側縦溝を伝わって注射針に導かれ、これにより、シリンダ内の薬液が注射針へ導かれるようになっている。したがって、このような容器兼用注射器では、前側のラバーストッパを針で穿刺しなければならなかったこれまでの容器兼用注射器に比べて、ゴム栓の切り屑(コアリング)の発生を防止するという大きな長所を備えていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した容器兼用注射器のうち、1mlまたはそれ以下の容量の注射器に使用される場合、ガラス製シリンダの外径が細く、医師がこれを取り扱う際、操作しにくいという欠点があった。
また、注射針取付用筒先には使用時に注射針が内圧の上昇によって不意に抜けてしまうことを防止するために、雌ねじを設け、注射針の針もとをねじ込んで取り付ける機構(ルアーロックタイプ)としているが、使用される注射針によっては、ねじ込んで取付けられたとき注射針の刃先の向きが大変に重要な意味を持つ場合が多い。特に、眼科の手術に使用されるもののように注射針の針管が湾曲しているものの場合、注射器の筒先に針をねじ込んだ後、注射針刃先の向きに合わせて使い易いように注射器を回して使用するケースが出てくる。その場合、使用者の指を係止するフランジが従来のように矩形や楕円形をしていると位置によっては、指を係止することができない場合が出てくる。上記眼科の手術のように微妙な感触が要求される場合には、このようなことが大変に重要な要素となってくるため、これを解決する必要があることが指摘されていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小容量の注射薬に使用する場合でも注射器全体を使い易い太さとすると同時に、注射器をどの位置に回しても使用者の指が注射器を十分に保持し得る容器兼用注射器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、両端が開口してなる円筒状のガラス製シリンダと、このシリンダ内を気密・液密的に封止して薬液を充填・保管する空間を形成する互いに離間して配される少なくとも2つの弾性ストッパと、前記シリンダの一端に外嵌された注射針取付用の筒先とを備え、前記筒先と前記シリンダとの嵌合部並びに前記シリンダの外方を覆うように筒状のホルダが設けられ、該ホルダの前記筒先とは反対側の端部に使用者の指を係止するためのフランジが外方へ突出して設けられ、該ホルダは、一端に径方向内方に設けられた内フランジが前記筒先の外周に形成されたリング状の段部に係合されるとともに、他端がホルダの他端と前記シリンダとの間に介装されたリング状の係合部材に係合することで、前記ガラス製シリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、前記筒先と前記シリンダとの前記嵌合部が、前記筒先の内周面に設けられた凹部と、前記シリンダの外周面に設けられた凸部とを備えて嵌合され、前記筒先の外周に形成されたリング状の段部が、前記筒先の前記凹部と前記シリンダの前記凸部とによる嵌合部分の一端側に形成されていることを特徴とする。請求項2記載の発明では、前記係合部材は、ホルダとシリンダとの間に差し入れられる先端部分が先細りとされた断面くさび状に形成されていることを特徴とする。請求項3記載の発明では、前記係合部材は前記シリンダの後端に凹凸嵌合されて該シリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、かつ、前記ホルダの他端には内フランジが設けられ、この内フランジが前記係合部材の後端に係合されて係合部材に対し軸方向の相対移動が規制されていることを特徴とする。請求項4記載の発明では、前記係合部材は前記シリンダの後端に凹凸嵌合されてシリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、かつ、ホルダの後端は係合部材に凹凸嵌合されて係合部材に対し軸方向の相対移動が規制されていることを特徴とする。請求項5記載の発明では、前記ホルダに設けられる使用者の指を係止するためのフランジ(11)が多角形に形成されていることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
〈発明の第1の実施の形態〉
図1は本発明の第1の実施の形態を示す容器兼用注射器の全体断面図である。すなわち、図中符号1は両端が開口してなる円筒状のガラス製シリンダであり、このシリンダ1内には前後2つのラバーストッパ2a、2bが互いに離間して嵌合されている。そして、このラバーストッパ2a、2bによってシリンダ1内には気密・液密的に封止された空間3が形成され、この空間3には薬液4が充填・保管される。
【0009】
シリンダ1の一端(図1において左端)には注射針取付用の筒先5が外嵌されている。
筒先5は、注射針を取り付けるためのテーパー部6が中央に設けられ、このテーパー部6の外方に注射針の針基フランジ(図示略)と係合する雌ねじ部7が設けられている。なお、ここでは、雌ねじ部7には注射針の針基フランジがねじ合わされておらず、雌ねじ部7の先端部分に形成された係合部を利用してキャップ8が係合されている。なお、筒先5のシリンダ1との嵌着部分の先端側(図1における左側)には円筒部9が形成されている。円筒部9は、その内部空間にラバーストッパ2aを遊嵌させ得るように、該円筒部9の内径がラバーストッパ2aの外径よりもわずかに大きな値に設定されるとともに、その長さをラバーストッパ2aの全長よりも長く設定され、しかも、円筒部9の内側には1本以上の縦溝9aが形成されている。
【0010】
筒先5とシリンダ1との嵌合部並びにシリンダ1の外方を覆うように筒状のホルダ10が設けられている。
ホルダ10は、内径がシリンダ1並びに筒先5の外径よりもやや大きく、かつ長さがシリンダ1の全長よりも長く設定されていて、シリンダ1並びに筒先5のシリンダ1との嵌合部を完全に外側から覆い得るように形成されている。ホルダ10の筒先5とは反対側の端部(図1における右端部)には使用者の指を係止するためのフランジ11が外方へ突出して設けられている。
フランジ11の形状としては、図2(a)、(b)にそれぞれ示すように、略正五角形、正六角形等の多角形が採用される。
【0011】
ホルダ10の一端には内フランジ10aが設けられ、この内フランジ10aは筒先5の外周であってシリンダ1への嵌合部よりもさらに先端側(図1において左端側)に形成されたリング状の段部5aに係合されている。なお、ホルダ10は透明なプラスチック材料から作られる。
【0012】
また、ホルダ10の他端(図1における右端)と前記シリンダ1の端部との間にはリング状の係合部材13が介装されている。係合部材13はホルダ10とシリンダ1との間に挿入される円筒状の挿入部14とシリンダ1の端部に突き当たる内方突出リング部15とから構成されている。内方突出リング部15の中央には後側のラバーストッパ2bに先端を螺合されるプランジャーロッド16が移動自在に挿入される。円筒状の挿入部14の挿入方向先端部分14aは先細りとされた断面くさび状に形成されている。
【0013】
シリンダ1の後端部にはリング状の凸部1aが設けられ、係合部材13の円筒状の挿入部14にはリング状の凹部14bが形成されている。そして、これら互いに対応するリング状の凸部1aと凹部14aとが嵌合することにより、係合部材13は、シリンダ1に対し軸方向の相対移動が規制されている。また、前記ホルダ10の後端には内フランジ10bが形成され、この内フランジ10bは係合部材13の後端13aに当接している。
そして、前記したようにホルダ10は、一端に設けられた内フランジ10aが筒先5のリング状の段部5aに係合されるとともに、後端に設けられた内フランジ10bが係合部材13の後端13aに当接することにより、シリンダ1に対し軸方向の相対移動が規制されている。
【0014】
次に、上記構成の容器兼用注射器の作用について説明する。当該容器兼用注射器を使用する場合、まず、キャップ8を取り外し注射針を雌ねじ部7を利用して取り付けるとともに図に示すように後側のラバーストッパ2aにプランジャーロッド16の先端をねじ込む。そして、使用者は注射針の刃先の位置に合わせて注射器を回し、中指及び人差し指をそれぞれ前記フランジ11に係合すると共に親指の腹部分をプランジャーロッド16の後端面に当て、該プラジャーロッド16を前方へ押し出す。このとき、シリンダ1とホルダ5とは軸方向の相対移動が規制されているため、後側のラバーストッパ2bがプランジャロッド16の移動に伴い前方へ移動する。これと同時に、シリンダ1内の空間3に封止されている薬剤4が前方へ移動し、また、シリンダ1の前部に挿入されている前側のラバーストッパ2aも前方へ移動して、筒先5の円筒部9内に移動・嵌入する。
【0015】
その後、さらにプランジャーロッド16を押し続けることにより、薬剤4が円筒部9の内側の縦溝9aを伝わり、さらに筒先5に取り付けられた図示せぬ注射針に導かれる。つまり、シリンダ1内の薬液4が注射針へ導かれることとなる。
【0016】
ここで、シリンダ1の外方にホルダ10を固定的に取り付けており、ホルダ10は医師が操作しやすい適宜径に設定されているので、医師の注射作業は円滑に行われる。
また、ホルダ10の一端に設けられるフランジ11は多角形に形成されているので、当該容器兼用注射器がいずれの回転位置にあるときでも、その角度位置で医師等の使用者の指を係止できることとなり、特に、眼科の手術に使用されるもののように注射針の針管が湾曲しており、注射器の筒先に針をねじ込んだ後、注射針の刃先の向きに合わせて使い易いように注射器を回して使用する場合に有利になる。
【0017】
〈発明の第2の実施の形態〉
図3は本発明の第2の実施の形態を示す。
図3はこの実施の形態の要部を示す断面図であり、この図からもわかるように、この実施の形態の特徴は、係合部材20とホルダ30とが凹凸嵌合されていること、及び、係合部材20の後端に形成された外フランジ22がホルダ30の後端30aに当接されていることである。
【0018】
すなわち、係合部材20の外周にはリング状の凸部21が形成され、ホルダ30の内周にはリング状の凹部31が形成され、それら互いに対応するリング状の凸部21と凹部31が嵌合することにより、ホルダ30は係合部材20並びにそれと凹凸嵌合しているシリンダ1に対して軸方向の相対移動が規制されている。なお、他の構成は前記した第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0019】
この実施の形態では、係合部材20に外フランジ22を設けているので、係合部材20をホルダ30とシリンダ1との間に押し込む際に、外フランジ22がホルダ30の後端30aに当接することで係合部材20の挿入位置がわかり、これにより、係合部材の挿入作業が容易になる利点が得られる。
なお、この実施の形態では、係合部材20側にリング状の凸部21をホルダ30側にリング状の凹部31をそれぞれ設けているが、これとは逆に係合部材側にリング状の凹部をホルダ30側にリング状の凸部を設けても良い。
【0020】
〈発明の第3の実施の形態〉
図4は本発明の第3の実施の形態を示す。
この実施の形態の特徴は、係合部材40の後端が外方前方へ折り返されて、この折り返し部41と係合部材本体42との間でホルダ50の後端を挟み込むようにした点である。
なお、ここでは、ホルダ50の後端部に拡径部50aを設け、この拡径部51を折り返し部41と係合部材42との間に形成される奥方が広がる凹部43に挿入することで、ホルダ50と係合部材の嵌合が容易に外れないように工夫されている。
この実施の形態でも、ホルダ50のシリンダ1に対する軸方向の相対移動を規制できる。
【0021】
〈変形例〉
なお、前記した実施の形態はあくまで例示であり、実施に当たり、適宜変形可能である。
例えば、前記実施の形態では、1室式を例に挙げて説明したが、本発明は勿論これに限られることなく、2室式あるいはそれ以上の複数式の容器兼用注射器でも、本発明が適用可能であるのは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、シリンダの外方にホルダを固定的に取り付けており、このホルダを医師が操作しやすい適宜径に設定することで、例え、注射する薬の量が微量であっても、医師の注射作業は円滑に行われる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、係合部材を、ホルダとシリンダとの間に差し入れられる先端部分が先細りとされた断面くさび状に形成したから、係合部材の挿入作業が容易になり、かつ、確実な挿入が行える。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、係合部材がシリンダの後端に凹凸嵌合されて該シリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、かつ、ホルダの他端には内フランジが設けられ、この内フランジが前記係合部材の後端に係合されて係合部材に対し軸方向の相対移動が規制されているから、簡単な構造でホルダのシリンダに対する軸方向の相対移動を規制することができる。
【0025】
請求項4記載の発明でも、請求項3に記載された発明と同様に、簡単な構造でホルダのシリンダに対する軸方向の相対移動を規制することができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、ホルダの一端に設けられるフランジが多角形に形成しているので、当該容器兼用注射器がいずれの回転位置にあるときでも、その角度位置で医師等の使用者の指を係止できることとなり、特に、眼科の手術に使用されるもののように注射針の針管が湾曲しており、注射器の筒先に針をねじ込んだ後、注射針の刃先の向きに合わせて使い易いように注射器を回して使用する場合に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す容器兼用注射器を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1の実施の形態の容器兼用注射器のフランジを示す正面図であり、(b)は他の例を示す正面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す容器兼用注射器の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す容器兼用注射器の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2a、2b ラバーストッパ
3 空間
4 薬液
5 筒先
5a リング状の段部
10、30、50 ホルダ
10a、10b 内フランジ
11 フランジ
13、20、40 係合部材
14a 係合部材の先端部分
13a 係合部材の後端
Claims (5)
- 両端が開口してなる円筒状のガラス製シリンダ(1)と、このシリンダ内を気密・液密的に封止して薬液(4)を充填・保管する空間(3)を形成する互いに離間して配される少なくとも2つの弾性ストッパ(2a,2b)と、前記シリンダの一端に外嵌された注射針取付用の筒先(5)とを備え、前記筒先と前記シリンダとの嵌合部並びに前記シリンダの外方を覆うように筒状のホルダ(10、30、50)が設けられ、該ホルダの前記筒先とは反対側の端部に使用者の指を係止するためのフランジ(11)が外方へ突出して設けられ、該ホルダは、一端に径方向内方に設けられた内フランジ(10a)が前記筒先の外周に形成されたリング状の段部(5a)に係合されるとともに、他端がホルダの他端と前記シリンダとの間に介装されたリング状の係合部材(13、20、40)に係合することで、前記ガラス製シリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、
前記筒先と前記シリンダとの前記嵌合部が、前記筒先の内周面に設けられた凹部と、前記シリンダの外周面に設けられた凸部とを備えて嵌合され、
前記筒先の外周に形成されたリング状の段部が、前記筒先の前記凹部と前記シリンダの前記凸部とによる嵌合部分の一端側に形成されていることを特徴とする容器兼用注射器。 - 前記係合部材は、ホルダとシリンダとの間に差し入れられる先端部分(14a)が先細りとされた断面くさび状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の容器兼用注射器。
- 前記係合部材は前記シリンダの後端に凹凸嵌合されて該シリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、かつ、前記ホルダの他端には内フランジ(10b)が設けられ、この内フランジが前記係合部材の後端(13a)に係合されて係合部材に対し軸方向の相対移動が規制されていることを特徴とする請求項1または2記載の容器兼用注射器。
- 前記係合部材は前記シリンダの後端に凹凸嵌合されてシリンダに対し軸方向の相対移動が規制され、かつ、ホルダの後端は係合部材に凹凸嵌合されて係合部材に対し軸方向の相対移動が規制されていることを特徴とする請求項1または2記載の容器兼用注射器。
- 前記ホルダに設けられる使用者の指を係止するためのフランジ(11)が多角形に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器兼用注射器。
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