JP3683382B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転角速度センサを用いないで誘導電動機を可変速駆動する誘導電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図13は従来の誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、1は誘導電動機、2は電流検出手段、3は回転角速度推定手段、4はトルク制御手段、5は適応観測器、6はゲイン演算器である。
【0003】
次に動作について説明する。
図13において、トルク制御手段4は、誘導電動機1が出力すべきトルク指令τ* を入力し、誘導電動機1の出力トルクがそのトルク指令τ* に追従するように回転角速度推定手段3から得られた推定回転角速度ωr0と電流検出手段2から得られた三相一次電流ius,ivsに基づいて三相一次電圧vus,vvs,vwsを供給する。
【0004】
例えば、特開平8−84500号公報(或は、電気学会論文誌D,111巻11号954頁,平成3年発行)に示された従来の回転角速度推定手段3は、適応観測器5およびゲイン演算器6から構成される。適応観測器5は、トルク制御手段4から得られた一次電圧指令vus* ,vvs* に基づいて、下記(26)式より推定一次電流Is0および推定二次磁束Φr0を演算し、一次電流誤差の大きさ|E|が0に収束するように(3)式より(26)式で用いられている推定回転角周波数ωr0を修正し、そして推定回転角周波数ωr0を出力する。但し、(26)式で用いられるフィードバックゲインGは、ゲイン演算器6から得る。
【0005】
【数4】
なお、一次電圧指令Vs* のa−b軸(静止座標)成分vas* ,vbs* は、三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,−(vus* +vvs* )を三相/二相変換することによって得られる。ゲイン演算器6は、適応観測器5から得られた推定回転角速度ωr0に基づいて、
【数5】
の演算を行い、フィードバックゲインGを出力する。kは任意の正数であり、(37)式のフィードバックゲインGを用いると適応観測器5の極は誘導電動機1の極のk倍になる。
以上によって、回転角速度推定手段3は推定回転角速度ωr0を出力する。
【0006】
図14は例えばモータドライブエレクトロニクス(上山直彦編著オーム社,58頁)に示された従来のトルク制御手段4を示すブロック構成図であり、図において、7は電流振幅演算器、8は電流位相演算器、9はすべり角速度演算器、10,11は加算器、12は積分器、13は三相電流指令演算器、14は電流制御器、15はPWMインバータである。
【0007】
定常状態の誘導電動機1において、励磁電流i0は二次磁束の大きさ|Φr|に比例し、トルク電流iTは出力トルクτに比例する。また、励磁電流i0とトルク電流iTは直交し、励磁電流i0は二次磁束Φrと同位相である。なお、励磁電流i0,トルク電流iTと電流振幅|I|の間、励磁電流i0,トルク電流iTと電流と磁束の位相差Δθcの間、励磁電流i0,トルク電流iTとすべり周波数ωsの間には、それぞれ以下の関係がある。
|I|=√(i02 +iT2 ) (43)
Δθc=tan-1(iT/i0) (44)
ωs=(Rr/Lr)(iT/i0) (45)
【0008】
そこで、電流振幅演算器7は、励磁電流i0を定数、トルク電流iTをトルク指令τ* に比例した値とし、(43)式から電流振幅指令|I|* を出力する。同様に電流位相演算器8は、励磁電流i0を定数、トルク電流iTをトルク指令τ* に比例した値とし、(44)式から一次電流と二次磁束の位相差指令Δθc* を出力する。同様にすべり角速度演算器9は、励磁電流i0を定数、トルク電流iTをトルク指令τ* に比例した値とし、(45)式からすべり角速度指令ωs* を出力する。加算器10は、推定回転角速度ωr0とすべり角速度指令ωs* を加算し、一次角速度ωを出力する。積分器12は、一次角速度ωを積分し位相θを出力する。加算器11は、積分器12から得られた位相θに電流位相演算器8から得られた位相差指令Δθc* を加算し、一次電流位相指令θc* を出力する。
【0009】
三相電流指令演算器13は、極座標上の一次電流振幅指令|I|* および一次電流位相指令θc* を三相静止座標上に座標変換して三相一次電流指令値ius* ,ivs* ,iws* を出力する。電流制御器14は、三相一次電流指令ius* ,ivs* ,iws* に、電流検出手段2によって検出された三相一次電流ius,ivs,−(ius+ivs)がそれぞれ三相一次電流指令ius* ,ivs* ,iws* に追従するように三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,vws* を出力する。PWMインバータ15は、三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,vws* に基づいて三相一次電圧vus,vvs,vwsを誘導電動機1に供給する。
このような従来の誘導電動機の制御装置においては、回転角速度センサを用いないでトルク指令τ* に追従するように誘導電動機の出力トルクを制御することが可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の誘導電動機の制御装置は以上のように構成されているので、運転状況によって応答性が変化したり、場合によっては不安定現象を発生する課題があった。
これは、回転角速度推定手段3が出力する推定回転角速度の応答性が著しく劣化していたり、推定回転角速度が発散したりすることがあり、この推定回転角速度に基づいて、トルク制御手段4が動作することが原因である。回転角速度推定手段3が起因するこの課題は、以下のように説明できる。
【0011】
回転角速度推定手段3において、推定回転角速度の演算は(3)式で行うが、(3)式の被積分項
(JΦr0T E) (46)
は推定二次磁束Φr0と一次電流誤差Eとの外積である。即ち、推定二次磁束の振幅|Φr0|が一定の場合、この被積分項は電流誤差Eの推定二次磁束Φr0と直交する成分に比例する値を意味する。ベクトルJΦr0は推定二次磁束Φr0と直交するベクトルであり、図15は誘導電動機1の回転角速度と推定回転角速度の間に偏差がある場合のベクトルJΦr0と一次電流誤差Eとの関係を示すものである。
【0012】
例えば、ベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの位相差がξ1の時の一次電流誤差をE1とする。また、ベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの位相差がξ2の時の一次電流誤差をE2とする。位相差がξ1の場合、一次電流誤差E1の大きさに対し、位相差ξが90°に近いために(46)式の値は小さくなってしまい、結果、(3)式の演算を行うに当たって、その推定応答性が著しく劣化する。位相差がξ2の場合では、(46)式の値の符号は反転してしまうので、この値を(3)式に従って演算すると推定回転角速度は正帰還となり発散する。なお、位相差ξが±90°の時、誤差ベクトルEはベクトルJΦr0と同位相(或は逆位相)となるので、推定二次磁束Φr0と一次電流誤差Eとの外積値、即ち、被積分項(46)式は0となる。従って、回転角速度推定の演算式に(3)式を用いることは不可能となる。つまり、一次電流誤差EがベクトルJΦr0と同位相(位相差ξ=0°)であることが望ましく、この時、回転角速度推定を良好な応答性で安定に行うことが可能である。
【0013】
図2(b)は誘導電動機1の回転角速度と推定回転角速度の間に偏差がある場合の回転角速度推定手段3で演算する場合のベクトルJΦr0と誤差ベクトルEの関係の一例であり、図において、横軸はベクトルJΦr0の角速度(即ち一次角速度ω)、縦軸はベクトルJΦr0と誤差ベクトルEの位相差ξを示している。図中のkは(38)〜(41)式のパラメータkであり、図2(b)から分かる通り、kの値によってその特性は変化する。(38)〜(41)式のkが小さいときには位相差ξが90°を越える場合がある。また、大き過ぎても小さ過ぎてもいけないkの値を決定する方法は不明であり、ベクトルJΦr0の角速度、即ち一次角速度が高くなるとkの値に関わらず位相差ξの値は0°から遠ざかる。
【0014】
図2(b)に示す通り、従来の誘導電動機の制御装置では一次角速度ωによっては位相差ξが望ましい値(0°一定)にならないために回転角速度推定の応答性が悪かったり、不安定現象を起こすことがあった。その結果、トルク制御手段4に誤差を含む推定回転角速度ωr0が入力されることになり、誘導電動機1の出力トルクの応答性が運転状況によって劣化したり、不安定現象を起こしたりする課題が発生した。
【0015】
また、図16は誘導電動機のT型等価回路として知られているが、図において、一次電圧Vsが直流、即ち、一次角速度が零の場合、相互インダクタンスMが短絡し二次側回路に電流が流れないために、回転角速度ωrは一次電流Isに対し干渉しない。従って、一次角速度が零の場合、回転角速度ωrが変化しても、一次電圧と一次電流との関係は変わらないので、一次電圧と一次電流から回転角速度を推定することは不可能である。従来装置では運転状況によって一次角速度が零の場合があり、この時には推定回転角速度の演算が不可能となり、誘導電動機1を安定に制御できない課題があった。
【0016】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、出力トルクや回転角速度といった運転状況に関わらず安定で、且つ高応答な回転角速度の推定を行い、結果、誘導電動機の回転角速度または出力トルクを安定、且つ高応答に制御することができる誘導電動機の制御装置を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機の回転角速度指令を入力し、推定回転角速度が回転角速度指令に追従するように推定回転角速度に基づいて一次電圧を制御する速度制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うようにしたものである。
【0018】
請求項2記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令を入力し、誘導電動機の出力トルクがそのトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次電圧を制御するトルク制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うようにしたものである。
【0019】
請求項3記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令および二次磁束指令を入力し、誘導電動機の出力トルクがトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次角速度を演算し、一次電圧を制御するベクトル制御手段と、一次角速度および推定回転角速度に基づいて二次磁束指令を演算する磁束指令演算手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいて適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うようにしたものである。
【0020】
請求項4記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令、誘導電動機の一次角速度および推定回転角速度に基づいて第二のトルク指令および二次磁束指令を演算する指令値演算手段と、第二のトルク指令および二次磁束指令を入力し、誘導電動機の出力トルクが第二のトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次角速度を演算し、一次電圧を制御するベクトル制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいて適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うと共に、指令値演算手段は、通常は第二のトルク指令としてトルク指令を出力し、推定回転角速度および一次角速度の各々の値が所定値より小さい場合は、その第二のトルク指令としてそのトルク指令に補助トルク信号を加算した値を発生するようにしたものである。
【0021】
請求項5記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、誘導電動機が制御されるべき回転角速度指令を入力とし、その回転角速度指令と推定回転角速度との偏差を増幅した値をトルク指令として出力するトルク指令演算手段を備えたものである。
【0022】
請求項6記載の発明に係る誘導電動機の制御装置は、適応観測器において、(1),(2),(3)式に従って演算を行い、ゲイン演算器はフィードバックゲインHを(4)式で与えるようにしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、1は誘導電動機、2は電流検出手段、3aは回転角速度推定手段、4はトルク制御手段、5aは適応観測器、6aはゲイン演算器である。
なお、誘導電動機1、電流検出手段2およびトルク制御手段4は、従来装置と同一のものである。
【0024】
次に動作について説明する。
回転角速度推定手段3aは、適応観測器5aとゲイン演算器6aとから構成され、誘導電動機1の回転角速度を推定しその値を推定回転角速度ωr0として出力する。トルク制御手段4は、誘導電動機1が出力すべきトルク指令τ* を入力し、誘導電動機1の出力トルクがそのトルク指令τ* に追従するように回転角速度推定手段3から得られた推定回転角速度ωr0と電流検出手段2から得られた三相一次電流ius,ivsに基づいて三相一次電圧vus,vvs,vwsを供給する。適応観測器5aは、(1)式の誘導電動機1の一次電圧のa−b軸(静止座標)上の成分vas,vbsの代わりに、三相一次電圧指令vus* ,vvs* を三相/二相変換することによって得られる一次電圧指令Vs* のa−b軸(静止座標)上の成分vas* ,vbs* を用いて(1),(2)式から推定一次電流Is0、推定一次磁束Φs0および推定二次磁束Φr0を演算し、(3)式より推定回転角速度ωr0を出力する。但し、(1)式で用いられるフィードバックゲインHは、ゲイン演算器6aから得る。
【0025】
(26)式に基づいて一次電流と二次磁束を状態変数に持つ適応観測器5と(1)式に基づいて一次磁束と二次磁束を状態変数に持つ適応観測器5aは、状態変数変換をすれば、その構成は等価であるが、この実施の形態では、適応観測器5aのフィードバックゲインHをゲイン演算器6aから適応観測器5aへ適切に与えることによって、回転角速度推定手段3aの特性を向上させるものである。
【0026】
従来装置のゲイン演算器6では、誘導電動機1の極に対して適応観測器5の極がk倍になるようにフィードバックゲインGの演算を行っていた。しかし、上述したとおり、このフィードバックゲインGを用いると一次角速度が変化するなどの運転状況によってベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの位相差ξが大きく変化する課題があった。このために従来装置では、推定回転角速度の応答性や安定性に問題が生じていたので、この実施の形態では、ゲイン演算器6aにおいて、一次電流誤差EがベクトルJΦr0との位相差ξが運転状況によって変化しないようなフィードバックゲインHの演算を行う。位相差ξは零が望ましいので、ゲイン演算器6aは上記推定一次電流Is0と上記一次電流Isの偏差信号(一次電流誤差)Eに含まれる推定二次磁束Φdr0と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインHの演算を行う。例えば、(18)式に十分に小さいεを与え、(4),(25)式によって得られるフィードバックゲインHは、位相差ξを零に収束させる一手法である。この手法は、回転角速度の誤差が起因して発生する一次電流誤差Eを周波数領域で平均的にするものである。なお、(25)式はリッカチ方程式として知られている方程式である。
【0027】
この手法の有効性を確認するために、ベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの関係を検証してみる。従来のフィードバックゲインGを用いた場合のベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの関係を図2(b)に示したが、(4),(25)式によって得られるフィードバックゲインHを用いた場合のベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの関係を図2(a)に示す。図を見て分かるように、εを小さくしていくと一次角速度を問わず位相差ξが零に収束していく。なお、(4)式の値は回転角速度によって異なるのでゲイン演算器6aは、推定回転角速度ωr0に基づいてフィードバックゲインHを適応観測器5aに出力する。
【0028】
以上のように、この実施の形態1によれば、運転状況に関わらず安定で、且つ高応答に推定された推定回転角速度ωr0を適応観測器5aから得ることができる。従来装置においては、フィードバックゲインGを演算するために必要なkは大きくても小さくてもいけなかったが、この実施の形態で用いられるεは十分小さい値を用いるだけで良い。このような誘導電動機の制御装置は、安定で、且つ高応答な回転角速度推定手段3aに基づいて制御しているために、運転状況を問わずに安定で、且つ高応答に誘導電動機1の出力トルクをトルク指令τ* に追従させることができる。
【0029】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、誘導電動機1が出力すべきトルク指令τ* を入力し、誘導電動機1の出力トルクがトルク指令τ* に追従するように制御していたが、図3の構成をとることによって、誘導電動機1の回転角速度指令ωr* を入力し、誘導電動機1の回転角速度ωrが回転角速度指令ωr* に追従するように制御することができる。
図3はこの発明の実施の形態2による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、21は誘導電動機1の回転角速度指令ωr* を入力し、誘導電動機1の回転角速度ωrが回転角速度指令ωr* に追従するように制御する速度制御手段である。
なお、その他の構成は、実施の形態1と同一のものであり、その説明を省略する。
【0030】
次に動作について説明する。
図4は速度制御手段21を示すブロック構成図であり、図において、22は減算器、23は速度調整器、24は加算器、25はV/Fパターン発生器、26は三相電圧指令演算器、15はPWMインバータであり、PWMインバータ15は従来装置と同一のものである。
減算器22は、回転角速度指令ωr* から回転角速度推定手段3aより得られた推定回転角速度ωr0を減算する。速度調整器23は、減算器22の出力を増幅しすべり角速度指令ωs* として出力する。加算器24は、回転角速度推定手段3aから得られた推定回転角速度ωr0と速度調整器23から得られたすべり角速度指令ωs* を加算し、一次角速度ωとして出力する。V/Fパターン発生器25は、加算器24から得られた一次角速度ωに基づいて一次電圧振幅指令|V|* を発生する。三相電圧指令演算器26は、一次電圧振幅指令|V|* と一次角速度ωに基づいて、三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,vws* を発生する。PWMインバータ15は、三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,vws* に基づいて三相電圧vus,vvs,vwsを誘導電動機1に供給する。
【0031】
以上のように、この実施の形態2によれば、回転角速度推定手段3aが回転角速度ωrに追従するように推定回転角速度ωr0を安定に推定し、速度制御手段21が推定回転角速度ωr0を回転角速度指令ωr* に追従するように制御するので、回転角速度指令ωr* に回転角速度ωrが安定に追従するように制御できる。
【0032】
実施の形態3.
図16に示した誘導電動機のT型等価回路から分かる通り、一次角速度ωが零の場合、推定回転角速度ωr0が回転角速度ωrと一致していなくても一次電流Isに一致する推定一次電流Is0を誤差なく演算することが可能であり、結果、この時の一次電流誤差の振幅|E|は零である。
上記実施の形態1では、ベクトルJΦr0と一次電流誤差Eの位相差ξに注目して、回転角速度推定手段3aを構成したが、一次角速度ωが零の場合は一次電流誤差の振幅|E|が零であるため、位相差ξに関わらず推定回転角速度ωr0の演算を(3)式で行うことは不可能である。しかし、図5の構成をとれば、一次角速度ωと推定回転角速度ωr0に基づいて二次磁束指令Φdr* を変化させて一次角速度ωを一定値以上に保つことが可能なので、回転角速度と推定回転角速度の間に偏差がある場合、一次電流誤差の振幅|E|が零にならず、運転状況に関わらず推定回転角速度ωr0の演算を安定、且つ高応答に行える。その結果、運転状況に関わらず安定、且つ高応答に誘導電動機1の出力トルクを制御することが可能である。
【0033】
図5はこの発明の実施の形態3による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、4aは誘導電動機1が出力するべきトルク指令τ* と二次磁束指令Φdr* と電流検出手段2から得られた三相一次電流ius,ivsと回転角速度推定手段3aから得られた推定回転角速度ωr0に基づいて、一次角速度ωを演算し、一次電圧を誘導電動機1に供給するベクトル制御手段、27はベクトル制御手段4aから得られた一次角速度ωと回転角速度推定手段3aから得られた推定回転角速度ωr0に基づいて、二次磁束指令Φdr* を演算する磁束指令演算手段である。
なお、その他の構成は、実施の形態1と同一のものであり、その説明を省略する。
【0034】
次に動作について説明する。
磁束指令演算手段27では、二次磁束指令Φdr* の候補として、ΦdrH* とΦdrL* の二種類(但し、ΦdrH* >ΦdrL* >0)を予め用意してあり、図6に示す表に従ってΦdr* としてΦdrH* またはΦdrL* を出力する。ここで、Δωは任意の正数とする。図6に示した表において、例えば、ωr0の符号が正でω>Δωの場合、ΦdrH* をΦdr* として出力するが、一次角速度ωが0<ω≦Δωの範囲に変化するとΦdrL* をΦdr* として出力する。Φdr* が変化すると、(45)式から分かるようにすべり角速度ωsが変化する。すべり角速度ωsが変化するように二次磁束指令を切替えれば、一次角速度ωはωs+ωrであるので、ω自身も変化し、結果−Δω≦ω≦Δω以外の範囲に一次角速度ωを保つことが可能である。
【0035】
従来装置では運転状況によっては一次角速度ωが零になることがあったが、この様な構成にすることにより、常に一次角速度が−Δω≦ω≦Δω以外の範囲で運転することができる。
【0036】
図7はベクトル制御手段4aを示すブロック構成図であり、図において、31は回転座標(d−q軸)上の一次電流のd軸成分idsに対して一次遅れ演算を施すことによって、二次磁束Φdr1を出力する磁束演算器、32はi0=MΦdr1,iT=iqsとし、(45)式に基づいてd−q軸上の一次電流のq軸成分iqsと二次磁束Φdr1からすべり角速度ωsを演算するすべり角速度演算器、33は回転角速度推定手段3aから得られた推定回転角速度ωr0とすべり角速度ωsとを加算して一次角速度ωを出力する加算器、34は二次磁束指令Φdr* と二次磁束Φdr1との偏差を出力する減算器、35は減算器34の出力を増幅し、d−q軸上の一次電流指令のd軸成分ids* を出力する磁束制御器、36はids* とidsとの偏差を出力する減算器、37は減算器36の出力を増幅し、d−q軸上の一次電圧のd軸成分指令vds* を出力するd軸電流制御器である。
【0037】
38はトルク指令τ* に比例し、二次磁束指令Φdr* に反比例する値をd−q軸上の一次電流のq軸成分指令iqs* として出力するq軸電流指令演算器、39はiqs* とiqsとの偏差を出力する減算器、40は減算器39の出力を増幅し、d−q軸上の一次電圧のq軸成分指令vqs* を出力するq軸電流制御器、41は一次角速度ωを積分し位相θを出力する積分器、42は三相一次電流ius,ivsおよび位相θに基づいて回転座標(d−q軸)上の一次電流ids,iqsを出力する座標変換器、43は回転座標(d−q軸)上の一次電圧指令vds* ,vqs* および位相θに基づいて三相一次電圧指令vus* ,vvs* ,vws* を出力する座標変換器である。
これらの構成により、三相一次電流ius,ivsと推定回転角速度ωr0に基づいて、誘導電動機1の出力トルクをトルク指令τ* に、二次磁束の振幅を二次磁束指令Φdr* に、それぞれ追従するように制御可能である。
【0038】
以上のように、この実施の形態3によれば、従来装置では一次角速度ωが零になるような運転状況でも、この実施の形態では、一次角速度ωが零になることがないので、安定に誘導電動機1を制御することができる。
【0039】
実施の形態4.
上記実施の形態では、回転角速度ωrが零の場合は、二次磁束Φdrの値に関わらず無負荷時に一次角速度が零になる問題があった。この問題は(45)式において、iT(即ちiqs)が零の場合は二次磁束Φdr(即ちi0)の値に関わらず、すべり角速度ωsは零となり、回転角速度ωrが零ならば一次角速度ωも零になることから説明できる。従って、回転角速度ωrが零、且つd−q軸上の一次電流のq軸成分iqsが零の場合は、iqsが発生するようなトルク指令を与えれば良い。
【0040】
図8はこの発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、4bはベクトル制御手段、28は誘導電動機1が出力するべきトルク指令τ* とベクトル制御手段4bから得られた一次角速度ωと推定回転角速度ωr0に基づいて二次磁束指令Φdr* と第二のトルク指令τ2* を出力する指令値演算手段である。ベクトル制御手段4bは、ベクトル制御手段4aと同一構成であるが、トルク指令τ* を入力する代わりに第二のトルク指令τ2* を入力する。
その他の構成は、実施の形態3と同一のものであり、その説明を省略する。
【0041】
図9は指令値演算手段28を示すブロック構成図であり、図において、27は磁束指令演算手段であり、上記実施の形態3と同一のものである。51はトルク指令τ* と補助トルク信号Δτ* の加算値を出力する加算器、52は一次角速度ωと推定回転角速度ωr0に基づいて補助トルク信号Δτ* を発生する補助トルク信号発生器である。
【0042】
次に動作について説明する。
補助トルク信号発生器52では、Δω2を任意の実数とし、
ω2 +ωr02 ≧Δω22 (47)
の場合はΔτ* に補助トルク信号として、例えばランダム信号を与え、それ以外の場合はΔτ* =0とする。図10は補助トルク信号発生器52が補助トルク信号としてΔτ* をランダム信号で与える範囲の一例である。図において、破線は二次磁束指令がΦdrL* の場合の一次角速度ω=0の軌跡であり、一点鎖線は二次磁束指令がΦdrH* の場合の一次角速度ω=0の軌跡である。図10より、出力トルクが零、且つ回転速度が零の場合は、二次磁束指令を変化させてもω=0になることが回避できないことが分かる。そこで、この実施の形態では、回転角速度および一次角速度が小さい楕円内部ではω=0にならないように補助トルク信号を発生させるものである。
【0043】
以上のように、この実施の形態4によれば、回転角速度が低い範囲でも一次角速度ωが零にならないように運転することができる。したがって、回転角速度が低い範囲でも回転角速度推定器は安定、且つ正確に推定回転角速度ωr0を演算することができ、その結果、誘導電動機1を安定、且つ高応答に制御することができる。
【0044】
実施の形態5.
実施の形態2では、速度制御手段21は、電流検出手段2から得られた一次電流をフィードバックしないために、回転角速度指令に対する回転角速度の応答性は十分でなく、更に、インパクト負荷等の急変する負荷に対して過電流が発生し装置がトリップする問題がある。一方、実施の形態1では、電流検出手段2から得られた一次電流をフィードバックするので、過電流に関する問題を解決することができる。しかしながら、トルク制御手段4はトルクを制御することは可能であるが、回転角速度を直接制御することはできない。この実施の形態は、過電流に関する問題を解決しながら、誘導電動機1の回転角速度を制御するものである。
【0045】
図11はこの発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、61は誘導電動機1が制御されるべき回転角速度指令ωr* を入力とし、回転角速度推定手段3aから得られた推定回転角速度ωr0との偏差を増幅した値をトルク指令τ* として指令値演算手段28に出力するトルク指令演算手段である。
その他の構成は、実施の形態4と同一のものであり、その説明を省略する。
【0046】
以上のように、この実施の形態5によれば、一次電流のフィードバックループを持つので過電流を抑制することが可能であり、安定、且つ高応答に回転角速度が回転角速度指令に追従するように誘導電動機を制御することができる。
【0047】
実施の形態6.
上記実施の形態では、適応観測器5aを静止座標(a−b軸)上で構成していたが、回転座標(d−q軸)上で構成してもその効果は同じである。図12はこの発明の実施の形態6による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図であり、図において、3bは回転角速度推定手段、4cはベクトル制御手段である。このベクトル制御手段4cは、上記実施の形態5のベクトル制御手段4bと同一構成であるが、回転座標(d−q軸)上の一次電圧指令vds,vqs* と一次電流ids,iqsを出力する点が異なる。回転角速度推定手段3bは、適応観測器5bとゲイン演算器6aから構成される。ゲイン演算器6aは上記実施の形態5と同一であり、その説明は省略する。
【0048】
次に動作について説明する。
適応観測器5bでは、
【数6】
の演算を行う。但し、
【数7】
Is′ 誘導電動機の一次電流
Is0′ 誘導電動機の推定一次電流
Φs0′ 誘導電動機の推定一次磁束
Φr0′ 誘導電動機の推定二次磁束
Vs′ 誘導電動機の一次電圧
E′ 誘導電動機の一次電流誤差
ids0 誘導電動機の推定一次電流のd−q軸(回転座標)上のd軸成分
iqs0 誘導電動機の推定一次電流のd一q軸(回転座標)上のq軸成分
Φds0 誘導電動機の推定一次磁束のd−q軸(回転座標)上のd軸成分
Φqs0 誘導電動機の推定一次磁束のd−q軸(回転座標)上のq軸成分
Φdr0 誘導電動機の推定二次磁束のd−q軸(回転座標)上のd軸成分
Φqr0 誘導電動機の推定二次磁束のd−q軸(回転座標)上のq軸成分
【0049】
以上のように、この実施の形態6によれば、適応観測器5bは上記実施の形態の適応観測器5aと構成する座標軸が異なるだけであり、その本質は等価である。従って、この実施の形態6により実施の形態5と同一の効果を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の発明によれば、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機の回転角速度指令を入力し、推定回転角速度が回転角速度指令に追従するように推定回転角速度に基づいて一次電圧を制御する速度制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うように構成したので、ゲイン演算器は推定一次電流と一次電流の偏差が二次磁束に直交する成分にのみ発生するようなフィードバックゲインの演算を行うので、回転角速度推定手段から推定回転角速度を安定に、且つ高応答に得られ、回転角速度を安定に制御できる効果がある。
【0051】
請求項2記載の発明によれば、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令を入力し、誘導電動機の出力トルクがそのトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次電圧を制御するトルク制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うように構成したので、ゲイン演算器は推定一次電流と一次電流の偏差が二次磁束に直交する成分にのみ発生するようなフィードバックゲインの演算を行うので、回転角速度推定手段から推定回転角速度を安定に、且つ高応答に得られるで、誘導電動機の出力トルクがトルク指令に安定、且つ高応答に追従させることができる効果がある。
【0052】
請求項3記載の発明によれば、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令および二次磁束指令を入力し、誘導電動機の出力トルクがトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次角速度を演算し、一次電圧を制御するベクトル制御手段と、一次角速度および推定回転角速度に基づいて二次磁束指令を演算する磁束指令演算手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいて適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うように構成したので、一次角速度と推定回転角速度に基づいて磁束指令を演算するので、回転角速度が推定不可能になる一次角速度が零という状態になることを防止し、誘導電動機のトルク指令に出力トルクを安定に追従させることができる効果がある。
【0053】
請求項4記載の発明によれば、誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、誘導電動機に供給される一次電圧と一次電流とに基づいて誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、誘導電動機が出力すべきトルク指令、誘導電動機の一次角速度および推定回転角速度に基づいて第二のトルク指令および二次磁束指令を演算する指令値演算手段と、第二のトルク指令および二次磁束指令を入力し、誘導電動機の出力トルクが第二のトルク指令に追従するように一次電流および推定回転角速度に基づいて一次角速度を演算し、一次電圧を制御するベクトル制御手段とを備え、回転角速度推定手段は、一次電流および一次電圧に基づいて誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた推定回転角速度に基づいて適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、ゲイン演算器は、推定一次電流と一次電流の偏差信号に含まれる推定二次磁束と同位相成分が零となるようにフィードバックゲインの演算を行うと共に、指令値演算手段は、通常は第二のトルク指令としてトルク指令を出力し、推定回転角速度および一次角速度の各々の値が所定値より小さい場合は、その第二のトルク指令としてそのトルク指令に補助トルク信号を加算した値を発生するように構成したので、一次角速度と推定回転角速度に基づいて推定回転角速度と一次角速度の各々の値が所定値より小さい場合は、第二のトルク指令としてトルク指令に補助トルク信号を加算した値を発生するので、回転角速度が零の場合でも、回転角速度が推定不可能になる一次角速度が零という状態になることを防止するので、誘導電動機のトルク指令に出力トルクを安定に追従させることができる効果がある。
【0054】
請求項5記載の発明によれば、誘導電動機が制御されるべき回転角速度指令を入力とし、その回転角速度指令と推定回転角速度との偏差を増幅した値をトルク指令として出力するトルク指令演算手段を備えるように構成したので、一次電流をフィードバックする構成でありながら、回転角速度指令からトルク指令が得られるので、過電流といった問題を解決しながら誘導電動機の回転速度を制御することができる効果がある。
【0055】
請求項6記載の発明によれば、適応観測器において、(1),(2),(3)式に従って演算を行い、フィードバックゲインHを(4)式で与えるように構成したので、推定一次電流と一次電流の偏差が二次磁束に直交する成分にのみ発生するので、安定に、且つ高応答で推定回転角速度の演算が行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図2】 実施の形態1および従来装置における一次角速度と位相差の関係を示す特性図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図4】 速度制御手段を示すブロック構成図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図6】 磁束指令演算手段の入力および出力の関係を示す表図である。
【図7】 ベクトル制御手段を示すブロック構成図である。
【図8】 この発明の実施の形態4による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図9】 指令値演算手段を示すブロック構成図である。
【図10】 補助トルク信号発生器が補助トルク信号を発生する範囲を示した特性図である。
【図11】 この発明の実施の形態5による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図12】 この発明の実施の形態6による誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図13】 従来の誘導電動機の制御装置を示すブロック構成図である。
【図14】 トルク制御手段を示すブロック構成図である。
【図15】 従来の誘導電動機の制御装置の推定一次電流と一次電流の偏差信号とベクトルと位相差を示す説明図である。
【図16】 誘導電動機のT型等価回路図である。
【符号の説明】
1 誘導電動機、2 電流検出手段、3a 回転角速度推定手段、4 トルク制御手段、4a,4b ベクトル制御手段、5a 適応観測器、6a ゲイン演算器、21 速度制御手段、27 磁束指令演算手段、28 指令値演算手段、61 トルク指令演算手段。
Claims (6)
- 誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、上記誘導電動機に供給される一次電圧と上記一次電流とに基づいてその誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、上記誘導電動機の回転角速度指令を入力し、上記推定回転角速度が上記回転角速度指令に追従するようにその推定回転角速度に基づいて上記一次電圧を制御する速度制御手段とを備え、上記回転角速度推定手段は、上記一次電流および上記一次電圧に基づいて上記誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および上記推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた上記推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、上記ゲイン演算器は、上記推定一次電流と上記一次電流の偏差信号に含まれる上記推定二次磁束と同位相成分が零となるように上記フィードバックゲインの演算を行うことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
- 誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、上記誘導電動機に供給される一次電圧と上記一次電流とに基づいてその誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、上記誘導電動機が出力すべきトルク指令を入力し、その誘導電動機の出力トルクがそのトルク指令に追従するように上記一次電流および上記推定回転角速度に基づいて上記一次電圧を制御するトルク制御手段とを備え、上記回転角速度推定手段は、上記一次電流および上記一次電圧に基づいて上記誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および上記推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた上記推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、上記ゲイン演算器は、上記推定一次電流と上記一次電流の偏差信号に含まれる上記推定二次磁束と同位相成分が零となるように上記フィードバックゲインの演算を行うことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
- 誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、上記誘導電動機に供給される一次電圧と上記一次電流とに基づいてその誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、上記誘導電動機が出力すべきトルク指令および二次磁束指令を入力し、その誘導電動機の出力トルクがそのトルク指令に追従するように上記一次電流および上記推定回転角速度に基づいて上記一次角速度を演算し、その一次電圧を制御するベクトル制御手段と、上記一次角速度および上記推定回転角速度に基づいて上記二次磁束指令を演算する磁束指令演算手段とを備え、上記回転角速度推定手段は、上記一次電流および上記一次電圧に基づいて上記誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および上記推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた上記推定回転角速度に基づいてその適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、上記ゲイン演算器は、上記推定一次電流と上記一次電流の偏差信号に含まれる上記推定二次磁束と同位相成分が零となるように上記フィードバックゲインの演算を行うことを特徴とする誘導電動機の制御装置。
- 誘導電動機の一次電流を検出する電流検出手段と、上記誘導電動機に供給される一次電圧と上記一次電流とに基づいてその誘導電動機の推定回転角速度を演算する回転角速度推定手段と、上記誘導電動機が出力すべきトルク指令、その誘導電動機の一次角速度および上記推定回転角速度に基づいて第二のトルク指令および二次磁束指令を演算する指令値演算手段と、上記第二のトルク指令および上記二次磁束指令を入力し、上記誘導電動機の出力トルクがその第二のトルク指令に追従するように上記一次電流および上記推定回転角速度に基づいて上記一次角速度を演算し、上記一次電圧を制御するベクトル制御手段とを備え、上記回転角速度推定手段は、上記一次電流および上記一次電圧に基づいて上記誘導電動機の推定二次磁束,推定一次電流および上記推定回転角速度を演算する適応観測器と、その適応観測器から得られた上記推定回転角速度に基づいて上記適応観測器内のフィードバックゲインを演算するゲイン演算器とから構成され、上記ゲイン演算器は、上記推定一次電流と上記一次電流の偏差信号に含まれる上記推定二次磁束と同位相成分が零となるように上記フィードバックゲインの演算を行うと共に、上記指令値演算手段は、通常は第二のトルク指令として上記トルク指令を出力し、上記推定回転角速度および上記一次角速度の各々の値が所定値より小さい場合は、その第二のトルク指令としてそのトルク指令に補助トルク信号を加算した値を発生することを特徴とする誘導電動機の制御装置。
- 誘導電動機が制御されるべき回転角速度指令を入力とし、その回転角速度指令と推定回転角速度との偏差を増幅した値をトルク指令として出力するトルク指令演算手段を備えたことを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか1項記載の誘導電動機の制御装置。
- 適応観測器は、
H=PCT R-1 (4)
で与えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の誘導電動機の制御装置。
但し、
ε 任意の正数
Rs 誘導電動機の一次抵抗値
Rr 誘導電動機の二次低抗値
M 誘導電動機の相互インダクタンス値
Ls 誘導電動機の一次インダクタンス値
Lr 誘導電動機の二次インダクタンス値
ωr0 誘導電動機の推定回転角速度
Is 誘導電動機の一次電流
Is0 誘導電動機の推定一次電流
Φs0 誘導電動機の推定一次磁束
Φr0 誘導電動機の推定二次磁束
Vs 誘導電動機の一次電圧
E 誘導電動機の一次電流誤差
ias 誘導電動機の一次電流のa−b軸(静止座標)上のa軸成分
ibs 誘導電動機の一次電流のa−b軸(静止座標)上のb軸成分
ias0 誘導電動機の推定一次電流のa−b軸(静止座標)上のa軸成分
ibs0 誘導電動機の推定一次電流のa−b軸(静止座標)上のb軸成分
vas 誘導電動機の一次電圧のa−b軸(静止座標)上のa軸成分
vbs 誘導電動機の一次電圧のa−b軸(静止座標)上のb軸成分
Φas0 誘導電動機の推定一次磁束のa−b軸(静止座標)上のa軸成分
Φbs0 誘導電動機の推定一次磁束のa−b軸(静止座標)上のb軸成分
Φar0 誘導電動機の推定二次磁束のa−b軸(静止座標)上のa軸成分
Φbr0 誘導電動機の推定二次磁束のa−b軸(静止座標)上のb軸成分
s 微分演算子(ラプラス演算子)
P 方程式(25)式の解
PAT +AP−PCT R-1CP+GQGT =0 (25)
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