JP3682786B2 - 電解コンデンサ封口体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサ封口体の改良に関し、更に詳しくは、高い耐有機溶剤性と優れた気密性および耐熱性を備え、良好な製造性を持つ電解コンデンサ封口体用硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電解コンデンサは、アルミニウム等のバルブ金属箔の表面に誘電体酸化皮膜を設けたものを陽極箔とし、それに対極する陰極箔とをセパレーターを介して巻き回してコンデンサ素子を作り、そのコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させてケース内に収納し、このケースの開口部にコンデンサ素子から引き出されるリード線を貫通させる封口体を封着して内部の駆動用電解液が蒸発乾固しないようにすることにより構成されていた。
このような電解コンデンサにおいては、誘電体皮膜が極めて薄いこと、表面積が拡大されていること、誘電率が高いこと、複雑に入り込んだ電極面へ駆動用電解液が侵入密着し、陰極体として動くこと等により他種のコンデンサと比較すると小形で大容量のものが得られる。また、内部に駆動用電解液を含有しているため、高温になれば蒸発し易く、かつ低温になれば固化し易く、電解コンデンサの作動性も蒸発や固化状態では著しく劣るというように、電解コンデンサの性能は駆動用電解液により左右される。一方、電解コンデンサの寿命を決めるのは、内部の駆動用電解液の蒸発を防止する封口体であり、この封口体の材料により駆動用電解液の構成材料との反応性、溶解性等が決まり制限を受ける。
すなわち封口体により駆動用電解液の特性を決め、その上電解コンデンサの使用最高温度においても封口体によりその特性が決まることから、電解コンデンサの性能を決めるのは封口体であると言っても言い過ぎではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の電解コンデンサに用いられている封口体は、駆動用電解液の蒸発乾固をできるだけ防止できるように、溶媒透過性が小さく、かつ圧縮永久歪率の小さい材料が望まれていた。この一例としてブチルゴム(IIR)は透過性が少なく一般的に用いられる。ところで、このブチルゴムはゴムであるため加硫成型の必要があり、加硫方法として硫黄加硫、キノイド加硫、樹脂加硫が開発されてきた。特にイオウ加硫は従来より種々検討がなされ、最適化がなされてきた。このイオウ加硫は、加硫時間も短く作業性が良いが、熱ストレスに対して、圧縮永久歪が劣る。組立完了済みの電解コンデンサのリード部に外部からねじりや引張り等の物理ストレスを加えた場合また温度サイクルを実施したりすると、電解コンデンサとしての特性に変化を与えたり、内部に含有する駆動用電解液が漏れだし、プリント基板や回路に損傷を与える等の品質上の重大な問題が発生する。さらには、未反応の遊離イオウが駆動用電解液中に溶けだし、腐食を誘発させたり、電極の誘導体皮膜を劣化させ特性変化を生じさせたり、外部リード線の錫や半田メッキと反応し黒化させ、半田付け性を悪くしたりする。さらに、高温になると劣化し耐熱性が劣る。又、キノイド加硫は、イオウより結合力が強く架橋密度も上がり耐熱性も優れるが反応不十分なキノイド基が残りやすかったり、架橋しているキノイド環が大きく溶媒透過性が大きくなる。また、樹脂加硫においては、加硫に時間がかかることと、加硫剤中にハロゲンを含むため、電解コンデンサ用としては不向きである。過酸化物加硫においては炭素結合を起こさすと同時に、直鎖の結合が切れる等の問題が生じる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらの問題を解決するために、新たな電解コンデンサ封口体を与えるものである。本発明においては、従来のゴムに必要であった加硫を必要とせず、ヒドロシリル化反応による架橋により硬化するものである。さらに、飽和炭化水素系樹脂を用いることにより、ブチルゴムと同様の物性を発現することを可能としたものである。
【0005】
すなわち、本発明の目的は、
下記の成分(A)、(B)、(C)を必須成分としてなる硬化性組成物を硬化してなる電解コンデンサ封口体;
(A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基また
はアルキニル基を含有する飽和炭化水素系重合体
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤
(C)ヒドロシリル化触媒
によって達成された。
【0006】
本発明に用いる(A)成分は、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはアルキニル基を有する好ましくは分子量100000以下の飽和炭化水素系重合体である。ここで、飽和炭化水素系重合体とは、芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体を意味する概念であり、該アルケニル基またはアルキニル基を除く主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素から構成されることを意味する。また、ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素多重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、α,α−ジメチルプロパルギル基等が挙げられる。また、本発明においては、(A)成分は、これらヒドロシリル化可能なアルケニル基またはアルキニル基を1分子中に1〜10個有していることが望ましい。
(A)成分である飽和炭化水素系重合体の骨格をなす重合体は、
(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数1〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させる、
(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、上記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させたりした後水素添加する、
などの方法により得ることができるが、末端に官能基を導入しやすい、分子量制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができるなどの点から、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体あるいは水添ポリイソプレン系重合体であるのが望ましい。
前記イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよく、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体中の好ましくは50%(重量%、以下同様)以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下の範囲で含有してもよい。
【0007】
このような単量体成分としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。このような共重合体成分の具体例としては、例えば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、へキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−へキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
前記水添ポリブタジエン系重合体や他の飽和炭化水素系重合体においても、上記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、他の単量体単位を含有させてもよい。
また、本発明中(A)成分として用いる飽和炭化水素系重合体には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレン、1,13−テトラデカジエン、1,9−デカジエン、1,5−へキサジエンのようなポリエン化合物のごとき重合後二重結合の残るような単量体単位を少量、好ましくは10%以下の範囲で含有させてもよい。
前記飽和炭化水素系重合体、好ましくはイソブチレン系重合体、水添ポリイソプレンまたは水添ポリブタジエン系重合体の数平均分子量は500〜100000程度であるのが好ましく、特に1000〜40000程度の液状物、流動性を有するものであるのが取り扱いやすさなどの点から好ましい。
【0008】
アルケニル基またはアルキニル基を(A)成分の飽和炭化水素系重合体に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基またはアルキニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基またはアルキニル基を導入する方法に大別することができる。
重合後にアルケニル基またはアルキニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖、あるいは側鎖の水酸基を−ONaや−OKなどの基にしたのち一般式(1)または(2):
CH2=CH−R1−Y (1)
CH≡C−R1−Y (2)
〔式中、Yは塩素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、R1は−R2−、
−R2−OC(=O)−または−R2−C(=O)−(R2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる)で示される2価の有機基で、
【0009】
【化1】
Figure 0003682786
【0010】
(R3は炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基が特に好ましい。〕で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端、主鎖、あるいは側鎖アルケニル基または末端、主鎖、あるいは側鎖アルキニル基を有する飽和炭化水素系重合体が製造される。
末端ヒドロキシ飽和炭化水素系重合体の末端水酸基をオキシメタル基にする方法としては、Na、Kのごときアルカリ金属;NaHのごとき金属水素化物;
NaOCH3のごとき金属アルコキシド;苛性ソーダ、苛性カリのごとき苛性アルカリなどと反応させる方法が挙げられる。
前記方法では、出発原料として使用した末端ヒドロキシ飽和炭化水素系重合体体とほぼ同じ分子量をもつ、末端アルケニル基または末端アルキニル基含有飽和炭化水素系重合体が得られるが、より高分子量の重合体を得たい場合には、一般式(1)の有機ハロゲン化合物を反応させる前に、塩化メチレン、ビス(クロロメチル)ベンゼン、ビス(クロロメチル)エーテルなどのごとき、1分子中にハロゲン原子を2個以上含む多価有機ハロゲン化合物と反応させれば分子量を増大させることができ、そののち一般式(1)で示される有機ハロゲン化合物と反応させれば、より高分子量でかつ末端にアルケニル基またはアルキニル基を有する水添ポリブタジエン系重合体を得ることができる。
前記一般式(1)で示される有機ハロゲン化合物の具体例としては、例えばアリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−へキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、プロパルギルクロライド、プロパルギルブロマイドなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。これらのうちでは安価で、かつ容易に反応することからアリルクロライドが好ましい。
【0011】
また、共有結合Cl基を有するイソブチレン系ポリマーにアルケニル基を導入する方法としては、特に制限はないが、例えば、種々のアルケニルフェニルエーテル類とCl基のフリーデルクラフツ反応を行う方法、アリルトリメチルシラン等とCl基とをルイス酸存在下、置換反応を行う方法、および種々のフェノール類とCl基のフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上で、さらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法などが、挙げられる。
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、開始剤兼連鎖移動剤としてハロゲン原子を有し、該ハロゲン原子が結合している炭素原子が芳香環炭素に結合している化合物および/またはハロゲン原子を有し、該ハロゲン原子が結合している炭素原子が第3級炭素原子である化合物を使用しかつ、触媒としてルイス酸を使用してイソブチレンを含有するカチオン重合性モノマーをカチオン重合させるにあたり、アリルトリメチルシランを重合系に添加することによるアリル末端を有するイソブチレン系ポリマー製造法や、同じく、1,9−デカジエンのような非共役ジエン類、またはp−へキセニルオキシスチレンのようなアルケニルオキシスチレン類を重合系に添加することによるアルケニル基を主鎖あるいは側鎖の末端に有するイソブチレン系ポリマーの製造法が挙げられる。
尚、カチオン重合触媒として用いられる成分であるルイス酸は、MX′n(Mは金属原子、X′はハロゲン原子)で表されるもの、例えばBCl3、Et2AlCl、EtAlCl2、AlCl3、SnCl4、TiCl4、VCl5、FeCl3、BF3などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのルイス酸のうち、BCl3、SnCl4、BF3などが好ましく、更に好ましいものとしてTiCl4が挙げられる。前記ルイス酸の使用量は開始剤兼連鎖移動剤のモル数に対し0.1〜10倍が好ましく、更に好ましくは2〜5倍である。
【0012】
本発明の(B)成分である好ましくは分子量30000以下である硬化剤としては、分子内に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有するものであれば、制限はない。ここで、ヒドロシリル基1個とはSiH基1個をさす。従って、同一Siに水素原子が2個結合している場合はヒドロシリル基2個と計算する。
(B)成分としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましいものの一つに挙げられる。ここで言うオルガノハイドロジェンポリシロキサンとは、Si原子上に炭化水素基あるいは水素原子を有するポリシロキサンを指し、その構造について具体的に示すと、
【0013】
【化2】
Figure 0003682786
【0014】
などで示される鎖状、環状のものが挙げられる。
また、(B)成分としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサン残基を分子内に少なくとも2個含有する有機系硬化剤も好ましい。ここで言うオルガノハイドロジェンポリシロキサンとは、Si原子上に炭化水素基あるいは水素原子を有するポリシロキサンを指し、この有機系硬化剤の好ましい例としては、下式(2)で表される有機系硬化剤が挙げられる。
4a (2)
(Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン残基、R4は炭素数2〜2000の1〜4価の炭化水素基。aは2〜4から選ばれる整数。)
式(2)中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン残基を表すが、具体的に例示するならば、
【0015】
【化3】
Figure 0003682786
【0016】
などで示される鎖状、環状のものが挙げられる。
上記の各種のヒドロシリル基含有基のうち、本発明の(B)成分であるヒドロシリル基含有硬化剤の(A)成分等の各種有機重合体に対する相溶性を損なう可能性が少ないという点を考慮すれば、特に下記のものが好ましい。
【0017】
【化4】
Figure 0003682786
【0018】
また、式(2)中、R4は炭素数2〜2000の1〜4価の炭化水素基であり制限はないが、各種有機重合体に対する相溶性、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、特に飽和炭化水素基などが好ましい。
また、(B)成分としては分子中にオルガノハイドロジェンポリシロキサン残基以外の少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する有機系硬化剤も好ましい。この有機系硬化剤の好ましい例としては、下式(3)で表される有機系硬化剤が挙げられる。
5b (3)
(Xは少なくとも2個のヒドロシリル基を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン残基以外の基、R5は炭素数2〜2000の1〜4価の炭化水素基。bは1〜4から選ばれる整数。)
式(3)中、Xを具体的に例示するならば、
−Si(H)n(CH33-n、−Si(H)n(C253-n
−Si(H)n(C653-n、(n=1〜3)
−SiH2(C613
などのケイ素原子1個だけ含有する基、
【0019】
【化5】
Figure 0003682786
【0020】
などのケイ素原子2個以上含む基などが挙げられる。
式(3)中、R5は炭素数2〜2000の1〜4価の炭化水素基であり、制限はないが、各種有機重合体に対する相溶性を損なう可能性が少ないという点、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、特に飽和炭化水素基などが好ましい。
式(2)、(3)中に含まれるヒドロシリル基の個数については少なくとも1分子中に2個あればよいが、2〜15個が好ましく、3〜12個が特に好ましい。本発明の組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合には、該ヒドロシリル基の個数が2より少ないと、硬化が遅く硬化不良を起こす場合が多い。また、該ヒドロシリル基の個数が15より多くなると、(B)成分である硬化剤の安定性が悪くなり、その上硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存し、ボイドやクラックの原因となる。
本発明の(B)成分であるヒドロシリル基含有炭化水素系硬化剤の製造方法については、特に制限はなく、任意の方法を用いればよい。例えば、(i)分子内にSi−Cl基をもつ炭化水素系硬化剤をLiAlH4、NaBH4などの還元剤で処理して該硬化剤中のSi−Cl基をSi−H基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xをもつ炭化水素系化合物と分子内に上記官能基Xと反応する官能基Y及びヒドロシリル基を同時にもつ化合物と反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する炭化水素系化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基をもつポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより反応後もヒドロシリル基を該炭化水素系化合物の分子中に残存させる方法などが例示される。上記の方法のうち、(iii)の方法が製造工程が一般に簡便なため好適に用いることができる。この場合、一部のポリヒドロシラン化合物のヒドロシリル基の2個以上が炭化水素系化合物のアルケニル基と反応し、分子量が増大する場合があるが、このような炭化水素系化合物を(B)成分として用いても何ら差し支えない。
【0021】
上記の如くして製造された(A)成分及び(B)成分のヒドロシリル基とアルケニル基との比率はモル比で0.2〜5.0が好ましく、更に0.4〜2.5が特に好ましい。モル比が0.2より小さくなると、本発明の組成物を硬化した場合に硬化が不十分でベトツキのある強度の小さい硬化物しか得られず、またモル比が5.0より大きくとなると硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が多量に残存するので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない傾向がある。
【0022】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。
具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;
白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、
Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n
Pt〔{MeViSiO)4m};
白金−ホスフィン錯体{例えば、
Pt(PPh34、Pt(PBu34};
白金−ホスファイト錯体{例えば、
Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34
(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、アシュビー(AShby)の米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10-1〜10-8mol の範囲で用いるのがよい。好ましくは10-2〜10-6molの範囲で用いるのがよい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で、腐食性を持つ場合があり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10-1モル以上用いない方がよい。
本発明においては、貴金属触媒を用いたアルケニル基に対するSi−H基の付加反応によって硬化性組成物が硬化するので、硬化速度が非常に速く、ライン生産を行う上で好都合である。
【0023】
本発明の(D)成分である接着性付与剤あるいは粘着性付与剤のうち、接着性付与剤としてはイソシアナート系化合物とシランカップリング剤、あるいは窒素原子を含有するエポキシ系化合物とシランカップリング剤を併用するものである。
上記イソシアナート系化合物としては特に制限はないが、より具体的には
【0024】
【化6】
Figure 0003682786
【0025】
に示される化合物やそれらの2量体、3量体、プレポリマー等を使用することができる。接着性付与効果を十分に出すためには分子内にイソシアナート基が2個以上あることが好ましい。
また、上記窒素原子を含有するエポキシ系化合物としては特に制限はないが、より具体的には
【0026】
【化7】
Figure 0003682786
【0027】
に示される化合物を使用することができる。接着性付与のためには分子内にグリシジルアミノ基が含まれていることが好ましく、ジグリシジルアミノ基が2個以上含まれているとさらに好ましい。
これらイソシアナート系化合物と、あるいは窒素原子を含有するエポキシ系化合物の添加量に関して特に制限はないが、(A)成分重合体100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
さらに上記シランカップリング剤についても特に制限はないが、より具体的には
【0028】
【化8】
Figure 0003682786
【0029】
【化9】
Figure 0003682786
【0030】
【化10】
Figure 0003682786
【0031】
に示す化合物を挙げることができる。接着性付与のためには分子内に、ビニル基、アリル基、エポキシ基、イソシアナート基、メタクリロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。このうちでもビニル基、エポキシ基、イソシアナート基を含有する場合がさらに好ましい。また、このシランカップリング剤としては単独で使用しても、2種以上併用してもよい。添加量に関して特に制限はないが、(A)成分重合体100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0032】
また、本発明の(D)成分である接着性付与剤あるいは粘着性付与剤のうち、粘着性付与剤としては、ロジン系、ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系の各種粘着付与樹脂が挙げられるが、本発明に使用する飽和炭化水素系重合体との相溶性、ヒドロシリル化反応に対する阻害の有無を考慮すると、テルペン系、テルペンフェノール系、さらに水素添加された脂環族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が好ましい。これらの粘着付与樹脂は、もちろん単体で添加してもよく、2種以上の混合物として添加してもよい。
【0033】
また、工程の簡略という面で一液性付与を目的として保存安定性改良剤を添加してもよい。この保存安定性改良剤としては、(B)成分であるヒドロシリル基含有の硬化剤の保存安定剤として知られている通常の安定剤で、所期の目的を達成するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。さらに具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、BHT、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられ、特にポットライフ/速硬化性の両立という点でチアゾール、ベンゾチアゾールが好ましいが、これらに限定されるわけではない。保存安定性改良剤の使用量は、(A)成分および(B)成分のSi−H基含有化合物1モルに対して、10-6〜10-1モルの範囲で用いることが好ましい。この量が10-6未満では(B)成分の保存安定性が十分に改良されず、また10-1モルを超えると硬化を阻害することがあるからである。保存安定性改良剤は単独で用いても、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の硬化性組成物の硬化条件は特に制限はないが、一般に室温〜200℃、好ましくは80℃〜150℃である。これらの温度は、上述した触媒及び保存安定性改良剤の種類及び量により任意に設定することができる。
また、本発明の硬化性組成物には各製品に合わせた要求特性に応じて、上記必須成分以外に、必要に応じて補強剤や充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤等を適宜添加することができる。
このうち、補強剤や充填剤の具体例としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム、シリカ微粉末、カーボンブラック等を挙げることができる。
さらに、流動特性を調整し、射出成形等の成形により好ましいものとするための可塑剤を配合してもよい。
この可塑剤としては、本組成物の流動性を改善するために添加するものであり、一般的に使用されている可塑剤が使用できるが、本発明に用いる飽和炭化水素系重合体と相溶性のよいものが好ましい。可塑剤の具体例としては、例えばポリブテン、水添ポリブテン、α−メチルスチレンオリゴマー、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油、アタクチックポリプロピレン等が挙げられるが、その中でも好ましくは不飽和結合を含まない水添ポリブテン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油、アタクチックポリプロピレンなどの炭化水素系化合物類が好ましい。
【0035】
本発明の電解コンデンサ封口体用硬化性組成物は、ポリイソブチレンに代表される飽和炭化水素系重合体を用いることにより、(1)耐候性、(2)耐熱性、(3)経時安定性、(4)耐化学薬品性、(5)耐吸水性、(6)耐ガスバリヤー性、(7)電気絶縁性等に優れた材料である。
また、本発明の硬化性組成物を成形する方法としては、一般に使用されている各種の成型方法を用いることができる。例えば注型成形、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等を挙げることができる。特に自動化、連続化が可能で生産性に優れるという観点から射出成形によるものが好ましい。また、本発明の硬化性組成物は硬化する前は粘稠な液体であるので、これを直接塗布、あるいは流し込みを行い、その後硬化させることも可能である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0037】
製造例1
1Lの耐圧ガラス製オートクレーブに撹拌用羽根、三方コック及び真空ラインを取り付けて、真空ラインで真空に引きながら重合容器を100℃で1時間加熱することにより乾燥させ、室温まで冷却後三方コックを用いて窒素で常圧に戻した。
その後、三方コックの一方から窒素を流しながら、注射器を用いてオートクレーブにモレキュラーシーブ処理によって乾燥させた溶媒、塩化メチレン155mL、n−へキサン348mLを導入した。次いでDCC(下記化合物A)7.5mmolを溶解させた10mLの塩化メチレン溶液を添加した。さらに続いて添加剤α−ピコリン3.0mmolを添加した。
次に、酸化バリウムを充填したカラムを通過させることにより脱水したイソブチレンが112.8g入っているニードルバルブ付耐圧ガラス製液化ガス採取管を三方コックに接続した後、容器本体を−70℃のドライアイス−アセトンバスに浸漬し、重合器内部を撹拌しながら1時間冷却した。冷却後、真空ラインにより内部を減圧した後、ニードルバルブを開け、イソブチレンを耐圧ガラス製液化ガス採取管から重合容器に導入した。その後三方コックの一方から窒素を流すことにより常圧に戻し、さらに撹拌下に1時間冷却を続け、重合容器内を−70℃まで昇温した。
次に、TiCl4 7.1g(37.5mmol)を注射器を用いて三方コックから添加して重合を開始させ、1時間経過した時点で、1,9−デカジエン20.8g(150mmol)を添加した。さらに8時間反応させた後、反応混合物を水に注ぎ込むことにより触媒を失活させた。次に有機層を純水により3回洗浄した後分液し、塩化メチレン、n−へキサン、および1,9−デカジエンを減圧留去することにより、アリル末端のイソブチレンポリマーを得た。
尚、化合物Aの構造は下記に示す通りである。
【0038】
【化11】
Figure 0003682786
【0039】
製造例2
1Lの耐圧ガラス製オートクレーブに撹拌用羽根、三方コック及び真空ラインを取り付けて、真空ラインで真空に引きながら重合容器を100℃で1時間加熱することにより乾燥させ、室温まで冷却後三方コックを用いて窒素で常圧に戻した。
その後、三方コックの一方から窒素を流しながら、注射器を用いてオートクレーブにモレキュラーシーブ処理によって乾燥させた溶媒、塩化メチレン204mL、n−へキサン336mLを導入した。次いでDCC(上記化合物A)5.0mmolを溶解させた10mLの塩化メチレン溶液を添加した。さらに続いて添加剤α−ピコリン1.0mmolを添加した。
次に、酸化バリウムを充填したカラムを通過させることにより脱水したイソブチレンが37.5g入っているニードルバルブ付耐圧ガラス製液化ガス採取管を三方コックに接続した後、容器本体を−70℃のドライアイス−アセトンバスに浸漬し、重合器内部を撹拌しながら1時間冷却した。冷却後、真空ラインにより内部を減圧した後、ニードルバルブを開け、イソブチレンを耐圧ガラス製液化ガス採取管から重合容器に導入した。その後三方コックの一方から窒素を流すことにより常圧に戻し、さらに撹拌下に1時間冷却を続け、重合容器内を−70℃まで昇温した。
次に、TiCl4 13.7g(72.0mmol)を注射器を用いて三方コックから添加して重合を開始させ、1時間経過した時点で、1,9−デカジエン19.9g(144mmol)を添加した。さらに6時間反応させた後、反応混合物を水に注ぎ込むことにより触媒を矢活させた。次に有機層を純水により3回洗浄した後分液し、塩化メチレン、n−へキサン、および1,9−デカジエンを減圧留去することにより、アリル末端のイソブチレンポリマーを得た。
【0040】
製造例3
3Lの耐圧ガラス製オートクレーブに撹拌用羽根、三方コック及び真空ラインを取り付けて、真空ラインで真空に引きながら重合容器を100℃で1時間加熱することにより乾燥させ、室温まで冷却後三方コックを用いて窒素で常圧に戻した。
その後、三方コックの一方から窒素を流しながら、注射器を用いてオートクレーブにモレキュラーシーブ処理によって乾燥させた溶媒、塩化メチレン618mL、n−へキサン1001mLを導入した。次いでDCC(上記化合物A)15mmolを溶解させた50mLの塩化メチレン溶液を添加した。さらに続いて添加剤α−ピコリン6.0mmolを添加した。
次に、酸化バリウムを充填したカラムを通過させることにより脱水したイソブチレンが224g入っているニードルバルブ付耐圧ガラス製液化ガス採取管を三方コックに接続した後、容器本体を−70℃のドライアイス−アセトンバスに浸漬し、重合器内部を撹絆しながら1時間冷却した。冷却後、真空ラインにより内部を減圧した後、ニードルバルブを開け、イソブチレンを耐圧ガラス製液化ガス採取管から重合容器に導入した。その後三方コックの一方から窒素を流すことにより常圧に戻し、さらに撹拌下に1時間冷却を続け、重合容器内を−70℃まで昇温した。
次に、TiCl4 14.2g(75mmol)を注射器を用いて三方コックから添加して重合を開始させ、1時間経過した時点で、アリルシラン10.3g(90mmol)を添加した。さらに1時間反応させた後、反応混合物をメタノールに注ぎ反応を停止させた。しばらく撹拌した後静置し、ポリマーを沈殿分離させた。
このようにして得られたポリマーを再びn−へキサンに溶解させ、純水で3回洗浄した後、溶媒を留去しアリル末端イソブチレン系ポリマーを得た。
製造例1、2、3で得られたポリマーの収量より収率を算出するとともに、Mn及びMw/MnをGPC法により、また末端構造を300MHz1H−NMR分析により各構造に帰属するプロトン(開始剤由来のプロトン:6.5〜7.5ppm、及びポリマー末端由来のビニルプロトン:4.5〜5.9ppm)の共鳴信号の強度を測定、比較することにより求めた。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003682786
【0042】
製造例4
両末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレン(出光石油化学(株)製、商品名エーポル)300gにトルエン50mLを加え共沸脱気により脱水した。t−BuOK 48gをTHF200mLに溶解したものを注入した。50℃で1時間反応させた後、アリルクロライド47mLを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、50℃でさらに1時間反応させた。反応終了後、生成した塩を吸着させるために反応溶液にケイ酸アルミニウム30gを加え、30分間室温で撹拌した。ろ過精製により約250gのアリル末端水添ポリイソプレンを粘稠な液体として得た。300MHz 1H−NMR分折により末端の92%にアリル基が導入されていることが確認された。また、E型粘度計による粘度は302ポイズ(23℃)であった。
*エーポルの代表的物性値(技術資料より)
水酸基含有量(meq/g) 0.90
粘 度(poise/30℃) 700
平均分子量(VPO測定) 2500
【0043】
製造例5
撹拌可能な2Lのガラス製反応容器中に1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン500g(2.08mol)、トルエン600g、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(8.0×10-7mol)を入れ、窒素下80℃に加熱した。十分な攪拌を加えながら1,9−デカジエン28.7g(0.208mol)とトルエン58gの混合物を1時間かけて添加した。全量添加後、ガスクロマトグラフィーで1,9−デカジエンの残存量を定量し、消失するまで80℃で撹拌を続けた。反応混合物を濃縮し、残留物として110gのSi−H基含有硬化剤を得た。この生成物はGPC分析により、下記式の構造を有する化合物Bが主生成物であることが解った。また、既述の各種分析によりこの生成物のSi−H基含量は0.967mol/100gであることがわかった。
【0044】
【化12】
Figure 0003682786
【0045】
実施例1〜4
製造例2で得た(A)成分及び製造例5で得た(B)成分である化合物B、あるいは下記に構造を示す(B)成分である化合物C、
【0046】
【化13】
Figure 0003682786
【0047】
さらに、表2に示す、シリカ微粉末(日本アエロジル(株)製)あるいはカーボンブラック(三菱化学(株)製)、及び触媒としてビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(8.3×10-5mmol/μ1、キシレン溶液)、保存安定性改良剤(ジメチルマレエート)、さらに可塑剤(パラフィン系プロセスオイル)を表2に示すように計量した後混合し、100℃、10分間加熱することにより硬化しサンプルを調製した。
【0048】
【表2】
Figure 0003682786
【0049】
上記各種サンプルについて、ダンベル引張り特性(測定はJIS K6301に準じた)と硬さを測定した。また、動的粘弾性測定により室温での損失正接を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
Figure 0003682786
【0051】
実施例5
実施例1の硬化性組成物を硬化してなる硬化物をJIS Z0208に準拠し、透湿率を測定し、同硬化物をJIS Z1707に準拠し、透過係数を測定した。また、耐熱性を評価するため、同硬化物を150℃、1500時間以上保持し、表面溶融の有無を観察した。結果を表4に示す。
【0052】
実施例6
実施例3の硬化性組成物を用いた他は、実施例5と同様に評価した。結果を表4に示した。
【0053】
【表4】
Figure 0003682786
【0054】
表4に示す通り、この硬化物は、飽和炭化水素系重合体を用いることにより、低気体/水蒸気透過性に優れ、さらに耐熱性にも優れていることが確認できる。
【0055】
実施例7および8
各種材料との接着性を調べるために、製造例1で得た(A)成分及び製造例4で得た(B)成分である化合物B、また、触媒としてビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(8.3×10-5mmol/μ1、キシレン溶液)、保存安定性改良剤(ジメチルマレエート)、さらに粘着性付与剤として、MDIあるいはTETRAD−C、またシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、商品名:A−187)を表5に示すように計量した後混合し、100℃、10分間加熱することにより硬化しサンプルを調製した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
Figure 0003682786
【0057】
得られた試験片についてJIS K6850規定の引張り剪断接着強さ試験方法及びJIS K5400 規定の付着性評価方法の中の碁盤目テープ法により接着性評価を行った。結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
Figure 0003682786
【0059】
実施例9
実施例1の硬化性組成物により製造された封口体を装着した電解コンデンサを作製した。γ−ブチロラクトン系電解液を主溶剤としたぺーストを使用し、常法により、直径12mm、高さ15mm、定格50WV、22μFの電解コンデンサを作製した。
図1に電解コンデンサの断面図を示す。1は封口体、2はリード線、3はケース、4はコンデンサ素子である。
この電解コンデンサを130℃で500時間放置し、その重量変化を測定した。
【0060】
比較例1
実施例9と同様に一般的な封口体であるEPTを用いて電解コンデンサを作製した。封口体の厚みは同じとした。
実施例9と同様の試験を行った。
実施例9及び比較例1の結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
Figure 0003682786
【0062】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の電解コンデンサ封口体の製造に用いられる硬化性組成物は、ポリイソブチレンに代表される飽和炭化水素系重合体を用いることによる優れた耐溶剤性、耐熱性、耐ガスバリヤー性を持つ材料である。さらにこの他、飽和炭化水素系重合体に由来する耐候性や電気絶縁性も兼ね備えており、電解コンデンサ封口体の製造に用いられる硬化性組成物として非常に有用である。
また、前記硬化性組成物は接着性付与剤あるいは粘着性付与剤を必須成分とすることにより、各種構造部材への接着や粘着も可能である。また、成形方法としては、一般に使用されている各種の成型方法を用いることができる他、直接塗布や流し込みといった形態もとれ、生産性にも優れた材料と言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解コンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1 封口体
2 リ−ド線
3 ケ−ス
4 コンデンサ素子

Claims (10)

  1. 下記の成分(A)、(B)、(C)を必須成分とする硬化性組成物を硬化してなる電解コンデンサ封口体。
    (A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはアルキニル基を含有する飽和炭化水素系重合体
    (B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤
    (C)ヒドロシリル化触媒
  2. 前記硬化性組成物が、さらに接着性付与剤あるいは粘着性付与剤を必須成分(D)として含有する請求項1記載の電解コンデンサ封口体。
  3. (D)成分の接着性付与剤としてイソシアナート系化合物とシランカップリング剤、あるいは窒素原子を含むエポキシ系化合物とシランカップリング剤を併用してなる請求項2記載の電解コンデンサ封口体。
  4. (D)成分の粘着付与剤として粘着付与樹脂を使用してなる請求項2記載の電解コンデンサ封口体。
  5. (A)成分の重合体中、イソブチレンに起因する繰り返し単位の総量が50重量%以上である請求項1または2記載の電解コンデンサ封口体。
  6. (A)成分の重合体中、イソブチレンに起因する繰り返し単位の総量が80重量%以上である請求項1または2記載の電解コンデンサ封口体。
  7. (B)成分の硬化剤が分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1、2、5または6記載の電解コンデンサ封口体。
  8. (B)成分の硬化剤が分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを少なくとも2個有する有機系硬化剤である請求項1、2、5または6記載の電解コンデンサ封口体。
  9. (B)成分の硬化剤が分子中にオルガノハイドロジェンポリシロキサン以外の少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する有機系硬化剤である請求項1、2、5または6記載の電解コンデンサ封口体。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の封口体が装着された電解コンデンサ。
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