JP3681782B2 - ガラス成形品の製造方法および装置 - Google Patents

ガラス成形品の製造方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、加熱軟化したガラス素材を加圧成形することにより、所望の形状の光学素子を成形する光学素子の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学素子の製造方法として、プリフォームを加熱軟化させ、ガラスの転移点以下の温度にした上下成形型により押圧成形する方法が知られている。
また、より安価な平板状ガラス素材を、凹面または凸面の曲率を持つ形状に変形させた後、所望の光学素子を得る方法としては、特開平4−280823号公報に示されているような、光学面相当部外周を上下押圧部材により平板状ガラス素材を押圧し、上下押圧部材により密閉された光学面相当部上下面の空間を増圧または減圧することにより、凹面または凸面の曲率を持つ形状に平板状ガラス素材を変形させた後、上下成形型により押圧成形し、所望の光学素子を得る方法が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の光学素子の成形方法では、成形を大気圧の下で行うため、特に平板状プリフォームを用いて凸レンズを成形する場合、プリフォームの平面と成形型の凹状成形面の間に封じ込められた空気が、成形型による押圧の過程で上記成形型の凹状成形面から外側に抜け切らず内部に部分的に集まることにより、その部分でガラス素材が成形型に密着しないままにガラスが硬化し、空気溜りと称する光学面の窪みを伴う不良が生じる問題点があった。
【0004】
また、特開平4−280823号公報に記載される方法は、平板状ガラス素材を凹面または凸面の曲率を持つ形状に変形させると同時に、所望の光学素子に押圧成形することを目的としたものであり、凹面または凸面の曲率を持つプリフォームを成形するために、上下成形型による被成形部の外周を上下押圧部材で押圧する必要があるため、光学面に対しかなり大きなガラス素材を用いる必要がある。さらに、上下押圧部材およびその内部で摺動する上下成形型の温度をガラスの転移点以下の温度にて押圧成形する場合には、上下押圧部材によりガラス素材の熱が吸収され、光学面の外側に割れが生じ易くなるという問題点があった。また、上下押圧部材およびその内部で摺動する上下成形型をガラスが十分軟化する温度、すなわち転移点以上に加熱して成形する場合は、所望の光学素子を成形した後、上下押圧部材および上下成形型を冷却し、成形した光学素子より離す必要がある。しかし、上下押圧部材および上下成形型を加熱しかつ冷却するためには、上下押圧部材および上下成形型をガラスの転移点以下の温度にて押圧成形する場合に比べて多くの時間を必要とするため、光学素子の成形時間が非常に長くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、必要最小限の大きさのガラス素材を用い、空気溜りおよび割れの無い成形品を短時間で得ることができるガラス成形品の成形方法を提供することを請求項1の目的とし、前記ガラス成形品を製造する装置を提供することを請求項5,6の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のように構成した。
請求項1の発明は、加熱軟化したガラス素材を上下方向に対向配置した一対の上下成形型により加圧成形するガラス成形品の製造方法において、前記上下成形型の外周側に配置した押圧部材によりガラス素材を保持したリング状の搬送部材の上下面を押圧把持し、前記押圧部材と搬送部材と成形型により囲まれたガラス素材の周囲に閉塞される空間を形成し、前記空間を形成した後で前記ガラス素材を成形する前に前記ガラス素材周囲の空間を減圧し、その後に所望の形状の光学素子に押圧成形することとした。
【0007】
請求項5の発明は、加熱軟化したガラス素材を上下方向に対向配置した一対の上下成形型により加圧成形するガラス成形品の製造装置において、上記上下成形型それぞれの外周部に、上下成形型と独立して上下方向に移動可能なリング状からなる上下の押圧部材を対向配置し、この上下の押圧部材により、上記ガラス素材を保持搬送するリング状搬送部材上下面の全外周を押圧把持、密封した際に上下成形型と上下の押圧部材および搬送部材とで閉塞されるガラス素材周囲の微小空間に連通する通孔を上下の押圧部材の双方または一方に設け、上記通孔を介して上記微小空間を減圧する装置を備えて構成した。
【0008】
請求項6の発明は、請求項5にあって、搬送部材に、搬送部材に保持したガラス素材の上下面の間で空気が自在に流動できる通孔を設けて構成した。
【0009】
【作用】
請求項1に記載のガラス成形品の製造方法にあっては、加熱軟化したガラス素材を上下成形型により押圧する直前に、減圧装置によりガラス素材周囲を減圧することにより、上下成形型とガラス素材間に多量に空気が封じ込められるのを防ぎつつ、ガラス素材を押圧成形するものである。
【0010】
請求項5に記載のガラス成形品の製造装置にあっては、加熱軟化したガラス素材を保持した搬送部材の上下面の外周を、上下の押圧部材により押圧把持、密閉することにより、押圧部材、搬送部材および成形型で囲まれたガラス素材周囲の微小空間をつくり、上記空間を上下の押圧部材の双方または一方に設けた通孔を介して減圧装置により減圧した後、成形型によりガラス素材を押圧成形する。
【0011】
請求項6に記載のガラス成形品の製造装置にあっては、ガラス素材の上下面の間で空気が自在に流動できる通孔を設けた搬送部材を用いることにより、上押圧部材または下押圧部材のどちらか一方に設けた通孔を介して減圧装置により減圧することができるようにしたもので、この他の作用は請求項5と同様にして、所望の光学素子を得るものである。
【0012】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
図1は本発明に係るガラス成形品の製造装置の実施例1を示す中央縦断面図である。
図1において、5は上型、6は下型であり、共に光学素子を成形する成形型である。上記上型5および下型6は、それぞれの凹状成形面5aおよび6bを対向させ、円筒状の上押圧部材1および下押圧部材2の内径部に配置されている。上記上型5および下型6は、それぞれ上摺動装置11および下摺動装置12に連結されており、上押圧部材1および下押圧部材2の内径面である摺動面1aおよび2aに沿って、上下方向に摺動可能となっている。
【0013】
上記上押圧部材1および下押圧部材2は上下方向に対向配置されており、それぞれ上押圧装置9および下押圧装置10により同軸上で上下方向へ移動可能に設けられている。上記上押圧部材1の側部には、加熱軟化したガラス素材4を保持した搬送部材3の上面を上押圧部材1の下面で押圧した際に、上押圧部材1、上型5、搬送部材3およびガラス素材4によりガラス素材4の上面方向に形成される微小密閉空間7に連通する複数の通孔13,14が設けられている。一方、下押圧部材2の側部には、搬送部材3の下面を下押圧部材1の上面で押圧した際に、下押圧部材2、下型6、搬送部材3およびガラス素材4によりガラス素材4の下面方向に形成される微小密閉空間8に連通する複数の通孔15,16が、上押圧部材1と同様に設けられている。上記微小密閉空間7,8は、上記通孔13,14,15,16にそれぞれ接続されたパイプ17,18,19,20を介してそれぞれ減圧装置21,22,23,24に通じている。ここで、上記通孔13,14,15,16は、上型5、下型6がガラス素材4を最大限に押圧する成形位置に摺動しても、上型5、下型6により塞がれることのない位置に配設されている。
【0014】
次に、上記構成の製造装置を用いたガラス成形品の製造方法を説明する。
まず、ガラス素材4は、搬送部材3の内壁に設けた凸状の突起3aにより保持された状態で、図示を省略した加熱炉により、搬送部材4と共にガラスの軟化点以上の温度まで加熱された後、図示を省略した搬送装置により、上型5および下型6の間に側方より搬送される。上記搬送部材3が上下両押圧部材1,2および上下両型5,6の軸芯位置に到達した所で、上押圧装置9により上押圧部材1は下方に、下押圧装置10により下押圧部材2は上方に移動し、搬送部材3の上下面外周を金属シール等の手段を用いて押圧把持、密閉すると、上下両押圧部材1,2、搬送部材3、上下両型5,6により囲まれたガラス素材4の周囲には、微小な密閉空間7,8が形成される。
【0015】
上記微小密閉空間7,8は、ガラスの転移点より50℃程度低い温度に加熱された上記上下両押圧部材1,2が搬送部材3を押圧密閉した直後に、減圧装置21,22,23,24により10-2(Torr)以下に減圧される。次いで、上摺動装置11が上型5を下方に、下摺動装置12が下型6を上方に摺動させることにより、ガラスの転移点より50℃程度低い温度に加熱された上下両型5,6の成形面5a,6aがガラス素材4を押圧成形する。この状態でガラスが十分に硬化する温度まで3〜90秒間冷却され、所望の光学素子が成形されると、上型5を上摺動装置11で上方に、下型6を下摺動装置12で下方に移動することにより、上下両型5,6は光学素子より離れる。次いで、上押圧部材1を上押圧装置9で上方に、下押圧部材2を下押圧装置10で下方に移動することにより、上下両押圧部材1,2は搬送部材3より離別し、成形された光学素子は搬送部材3と共に、図示されない搬送装置により側方に搬出される。
【0016】
以上のように、本実施例によれば、上下両型5,6によりガラス素材4を押圧成形する前に、ガラス素材4の周囲に形成される微小密閉空間7,8を減圧することにより、上下両型5,6の凹状成形面5a,6aとガラス素材4の間に空気が封じ込められるのを防ぐことができるため、空気溜りの無い高精度な光学素子を成形することができる。また、減圧により軟化ガラスからの揮発成分が上下両型5,6に付着することが無いため、良好な成形面を得ることができる。
【0017】
また、この成形方法によれば、上下両押圧部材1,2は直接ガラス素材4を押圧することが無いため、余分な径を有するガラス素材4を必要とせず、コストを低減することができ、しかも、上下両押圧部材1,2が搬送部材3を押圧するため、上下両押圧部材1,2の温度がガラスの転移点以下の温度であっても、ガラス素材4の温度が急激に低下することがなく、上下両型5,6によりガラス素材4を押圧する際に、光学面の外側に割れを生じることがない。したがって、ガラス素材4の温度は軟化点以上、上下両型5,6および上下両押圧部材1,2の温度はガラスの転移点以下の一定温度(例えば、「ガラス転移点(Tg)〜(ガラス転移点(Tg)−100℃)」の範囲で)制御すればよい。すなわち、上下両型5,6および上下両押圧部材1,2を、ガラス素材4の押圧前に転移点以上の温度に加熱し、押圧後に転移点以下の温度に冷却する必要がなく、この加熱冷却に伴う成形時間の増加を防ぐことができるため、短時間で光学素子を得ることができる。
なお、微小密閉空間7,8を減圧するは圧力10-1(Torr)が実験的に効果が確認される限界の値である。
【0018】
[実施例2]
図2および図3に本発明に係るガラス成形品の製造装置の実施例2を示す。
図2は製造装置の中央縦断面図、図3は本実施例の製造装置に用いる搬送部材を示し、図3(a)は平面図、図3(b)は中央縦断面図である。
【0019】
本実施例の製造装置に備えた上押圧部材1には、図1と同様の構成で通孔32,33が設けられており、パイプ34,35を介して減圧装置36,37に接続されている。一方、下押圧部材2には、通孔等は設けられていない。その他の装置構成は、実施例1と同様である。
【0020】
搬送部材25の外周部には、上下面に貫通する数箇所の通孔26,27,28,29が設けられている。また、上下押圧部材1,2が搬送部材25の上下面をそれぞれ押圧した場合に、上記通孔26,27,28,29が塞がれないように、搬送部材25の上下面には上記通孔26,27,28,29と連通する段差30,31が設けられている。
【0021】
次に、上記構成の製造装置を用いたガラス成形品の製造方法を説明する。
上記実施例1と同様に、加熱軟化されたガラス素材4を載せた搬送部材25の上下面を上下両押圧部材1,2がそれぞれ押圧し、押圧部材1,2、搬送部材25、成形型5,6により、ガラス素材4の周囲には微小な密閉空間7,8が形成される。上下両押圧部材1,2が搬送部材3を押圧、密閉した直後に、上記微小密閉空間7は、通孔32,33を介して減圧装置36,37により減圧される。この時、上記微小密閉空間8の空気が、搬送部材27に設けられた通孔26,27,28,29を介して圧力の低い微小密閉空間7へ移動するため、微小密閉空間7,8は同時に10-2(Torr)以下に減圧される。次いで、実施例1と同様に光学素子が成形される。
【0022】
本実施例によれば、上記実施例1の効果に加えて、搬送部材25に設けた通孔26,27,28,29により、ガラス素材4の上下面の間で空気が流動できるようになるため、減圧を行うための減圧装置36,36、パイプ34,35、および通孔32,33は、上押圧部材1にのみ設けるだけでよく、装置構成が簡略化できる。しかも、ガラス素材4の上下面の間で空気が流動できるようになり、ガラス素材4の上下面間における圧力差が無くなるため、上記圧力差によるガラス素材4の不要な変形を避けることができる。
【0023】
なお、本実施例では、減圧を行うため減圧装置36,37、パイプ34,35および通孔32,33は上押圧部材1にそれぞれ2個ずつ設けたが、この数はこの限りではなく、さらに、上押圧部材1に代えて、下押圧部材2に設けて構成することも可能である。また、搬送部材25に設ける通孔は26,27,28,29の4箇所としているが、この数もこの限りではない。そして、この構成にあっても、上記本実施例と同様な効果を得ることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は以下の効果を得ることができる。
請求項1に示す成形方法によれば、加熱軟化されたガラス素材を押圧成形する際に生じる空気溜りを防止し、成形品の窪みを無くすことができる。また、減圧により軟化ガラスからの揮発成分が成形型に付着することが無いため、良好な成形面を得ることができる。
【0025】
請求項5に示す成形装置によれば、請求項1の効果を実現するとともに、ガラス素材の搬送にリング状の搬送部材を用いることにより、光学素子成形のために必要な最小限の径のガラス素材から所望の光学素子を得ることができる。また、この搬送部材の上下面を上下の押圧部材により押圧把持するため、上下の押圧部材の温度がガラスの転移点以下の温度であっても、加熱軟化されたガラス素材の熱が直接押圧部材に吸収されることはなく、ガラス素材の急冷を防ぐことができるため、割れの無い良好な光学素子を短時間で成形することができる。
【0026】
請求項6に示す成形装置によれば、請求項1および請求項5の効果に加えて、搬送部材に設けた通孔により、ガラス素材の上下面の間で空気が流動できるようになるため、減圧を行うための減圧装置、パイプおよび通孔は、上下押圧部材のどちらか一方のみに設けるだけでよく、装置構成が簡略化できる。しかも、ガラス素材の上下面間における圧力差が無くなるため、上記圧力差によるガラス素材の不要な変形を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガラス成形品の製造装置の実施例1を示す中央縦断面図である。
【図2】本発明に係るガラス成形品の製造装置の実施例2を示す中央縦断面図である。
【図3】本発明の実施例2の製造装置に用いる搬送部材を示し、図3(a)は平面図、図3(b)は中央縦断面図である。
【符号の説明】
1 上押圧部材
2 下押圧部材
3,25 搬送部材
4 ガラス素材
5 上型
6 下型
7,8 微小密閉空間
13,14,15,16 通孔
21,22,23,24 減圧装置
26,27,28,29 通孔
36,37 減圧装置

Claims (6)

  1. 加熱軟化したガラス素材を上下方向に対向配置した一対の上下成形型により加圧成形するガラス成形品の製造方法において、前記上下成形型の外周側に配置した押圧部材によりガラス素材を保持したリング状の搬送部材の上下面を押圧把持し、前記押圧部材と搬送部材と成形型により囲まれたガラス素材の周囲に閉塞される空間を形成し、前記空間を形成した後で前記ガラス素材を成形する前に前記ガラス素材周囲の空間を減圧し、その後に所望の形状の光学素子に押圧成形することを特徴とするガラス成形品の製造方法。
  2. 前記搬送部材の上下面を押圧把持する前に、前記ガラス素材を保持したリング状の搬送部材は、ガラス素材を保持した状態でガラス素材と共に加熱された後、前記上下成形型の間に前記ガラス素材を搬送することを特徴とする請求項1記載のガラス成形品の製造方法。
  3. 前記所望の形状のガラス成形品に押圧成形した後、前記押圧部材を搬送部材より離別し、成形されたガラス成形品を搬送部材と共に搬出することを特徴とする請求項1または2記載のガラス成形品の製造方法。
  4. 前記減圧は、前記押圧部材に設けた通孔を介して減圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス成形品の製造方法。
  5. 加熱軟化したガラス素材を上下方向に対向配置した一対の上下成形型により加圧成形するガラス成形品の製造装置において、上記上下成形型それぞれの外周部に、上下成形型と独立して上下方向に移動可能なリング状からなる上下の押圧部材を対向配置し、この上下の押圧部材により上記ガラス素材を保持搬送するリング状搬送部材上下面の全外周を押圧把持、密封した際に上下成形型と上下の押圧部材および搬送部材とで閉塞されるガラス素材周囲の微小空間に連通する通孔を上下の押圧部材の双方または一方に設け、上記通孔を介して上記微小空間を減圧する装置を備えたことを特徴とするガラス成形品の製造装置。
  6. 搬送部材には、搬送部材に保持したガラス素材の上下面の間で空気が自在に流動可能な通孔を設けたことを特徴とする請求項5記載のガラス成形品の製造装置。
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