JP3678872B2 - 分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法及び分布帰還型半導体レーザ素子 - Google Patents

分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法及び分布帰還型半導体レーザ素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分布帰還型(Distributed FeedBack:DFB)半導体レーザ素子の製造方法及びその製造方法によって形成される分布帰還型半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
分布帰還型半導体レーザ素子は、光CATV等の光通信システムや、SHG(Second Harmonic Generation)素子を用いた短波長レーザ、又は小型固体レーザのポンプ光源や、光計測分野等に応用され得る素子として知られている。従来の分布帰還型半導体レーザ素子はいわゆる2段階エピタキシャル成長によって、形成されている。2段階エピタキシャル成長では、レーザ素子の導波層にグレーティング(回折格子)を設け、その後導波路上にその他の層をエピタキシャル成長させて形成する。
【0003】
図4及び図5は、従来の分布帰還型半導体レーザ素子の製造工程を示す図であり、図5は、図4の後工程を示す。図4(a)において、InP基板301を用い、所定のエピタキシャル成長方法、液相成長法、有機金属気相成長法、分子線成長法等で1回目の結晶成長によりn−InP下部クラッド層302、グレーティング提供層303aを形成する。
【0004】
次に図4(b)に示すように、グレーティング提供層303aを光干渉露光によりグレーティングが施された層303bを形成する(グレーティング形成工程)。次に図4(c)に示すように、グレーティングが形成された層303bの上に2回目の結晶成長(再成長工程)によりグレーティングを埋め込んだ活性層304、p−InP上部クラッド層305、コンタクト層306を形成する。
【0005】
次に図4(d)に示すように、図示しないリッジ形成用のマスクをコンタクト層306上に形成して、コンタクト層306及びクラッド層をエッチングして、両側平坦部308とこれらから突出する所定高さで平坦上面部を有するストライプ方向に伸長したリッジ307とを形成する。
【0006】
次に、図4(a)〜(d)の工程後、図5(a)に示すように、両側平坦部308及びリッジ307の平坦上面部全体にわたって、SOG(Spin on Glass )膜またはポリイミド膜等の絶縁膜309を形成する。
【0007】
次に、図5(b)に示すように、エッチングによってコンタクト層306上の絶縁膜309をコンタクト層306が現れるまで除去し、図5(c)に示すように、例えば、Au/Zn等の金属導電層を電極310として真空蒸着等により形成してリッジストライプ型DFB半導体レーザ素子は完成する。もちろん、図示しないが電極310に対向する基板301側にも電極を形成する。
【0008】
また、2段階エピタキシャル成長の煩雑性を回避するために、平坦な基板上に1段階エピタキシャル成長によって作製されるすなわち再エピタキシャル成長の無い、いわゆる無再成長分布帰還型半導体レーザ素子も開発されている。
【0009】
例えば、基板に活性層、クラッド層等をエピタキシャル成長させ、リッジストライプを形成し、リッジストライプ上面部及びその両側平坦部にグレーティングを設けた屈折率結合のみの分布帰還型半導体レーザ素子が開示されている。
【0010】
かかる無再成長分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、グレーティングは、電子ビーム描画法、あるいはシンクロトロン放射X線(SOR−X線)描画法等によって形成されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように従来の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法では、グレーティングを形成する場合に、上述した描画法により、グレーティングが有するストライプ状の格子を1本1本形成していくため、レーザ素子の作成に時間がかかり、また製造装置も高価である。このことがコスト高の一因にもなっている。
【0012】
また、光干渉露光(2光束干渉)においては、光の回折の影響のため、リッジ近傍では均一なグレーティングが形成できないという問題がある。
【0013】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、簡単な工程によって容易に製造することのできる分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法及び分布帰還型半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、レーザ基板を形成する工程と、レーザ基板をエッチングしてリッジを形成する工程と、リッジ上に平坦化層を形成する工程と、平坦化層上にグレーティングを形成する工程と、リッジが形成されたレーザ基板にグレーティングを転写する工程と、平坦化層を除去する工程と、電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、平坦化層は、前記リッジを埋没させると共に前記リッジが形成されたレーザ基板の全面に形成されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1乃至2記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、平坦化層上に強化層を形成したことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至2に記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、平坦化層上にグレーティングを形成する工程は、平坦化層上にレジスト層を塗布する工程と、レジスト層にグレーティングを形成する工程と、レジスト層に形成されたグレーティングを平坦化層に転写する工程と、からなることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項3に記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、平坦化層上にグレーティングを形成する工程は、強化層上にレジスト層を塗布する工程と、レジスト層にグレーティングを形成する工程と、レジスト層に形成されたグレーティングを強化層に転写する工程と、強化層に形成されたグレーティングを平坦化層に転写する工程と、からなることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法において、グレーティングは、2光束干渉により形成されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7記載の発明は、レーザ基板を形成する工程と、レーザ基板をエッチングしてリッジを形成する工程と、リッジ上に平坦化層を形成する工程と、平坦化層上にグレーティングを形成する工程と、リッジが形成されたレーザ基板にグレーティングを転写する工程と、平坦化層を除去する工程と、電極を形成する工程と、を含む工程により製造される分布帰還型半導体レーザ素子であることを特徴とする。
【0021】
【作用】
本発明は以上のように構成したので、リッジを形成した後に、リッジ上に平坦化層を形成することによって一旦表面を平坦化し、しかる後に平坦化層上にグレーティングを形成し、この形状に対しエッチング等の処理を施すことによりグレーティングをレーザ基板に転写し、その後にリッジ上に残存する平坦化層を除去するようにしたので、グレーティングが有する各格子を容易に確実に形成することができ、分布帰還型半導体レーザ素子の生産効率が上がる。
【0022】
また、平坦化層上にグレーティングを形成する工程において、2光束干渉を用いることにより、グレーティングが有する各格子を容易に確実に一括形成することができ、分布帰還型半導体レーザ素子の生産効率が上がる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に好適な実施形態について図面を基に以下に説明する。
図1〜3は、分布帰還型半導体レーザ素子の一形態である横結合型( Laterally-Coupled)分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法を各工程順に示した図であり、図2は図1の後工程を示し、図3は図2の後工程を示す。
【0024】
まず、図1(a)に示すように、n+ −InP基板上に、所定のエピタキシャル成長方法、液相成長法、有機金属気相成長法、分子線成長法等を用いてn−InPからなる下部クラッド層、InGaAsPからなる活性層、を順次積層形成し、SCH(Separate Confinement Heterostructure)構造、MQW(Multi Quantum Well:多重量子井戸構造)又はストレインMQW(歪多重量子井戸構造)等の構造を形成する。
【0025】
また、上記活性層は、組成の異なるInGaAsPの材料からなるガイド層(上部ガイド層、下部ガイド層)で上下を挟むように構成して積層形成され、上部ガイド層上にp−InPからなる上部クラッド層を、InGaAsPからなるコンタクト層、キャップ層をそれぞれ積層する。これらにより、レーザ基板1が、1回のみの結晶成長で形成される。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、SiO2 、TiO2 等を用いて、レーザ基板1上に、リッジ形成用のマスクのための酸化膜2を全面に亘り形成する。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、酸化膜2上に、レジストを所定幅のストライプ状に塗布し、次いで露光、現像することにより、リッジパターン3を形成する。
【0028】
次に、リッジパターン3が形成された酸化膜2をドライエッチング処理すると、図1(d)に示すように、酸化膜2は、リッジパターン3が形成された部分を除く部分がレーザ基板1上から除去される。
【0029】
次に、図1(e)に示すように、レジストであるリッジパターン3を剥離すると、表面にリッジパターン3に対応するパターンを有するリッジ形成の際のエッチング用マスク4が積層形成されたレーザ基板1が形成される。
【0030】
次に、このエッチング用マスク4が積層形成されたレーザ基板1に対し、ドライエッチング処理を行うと、図1(f)に示すように、レーザ基板1は、エッチング用マスク4に対応する部分を除いて、InGaAsPからなるコンタクト層、キャップ層、及び、p−InP上部クラッド層の一部が取り除かれることによって、エッチング用マスク4下部にはリッジパターン3に対応するストライプ方向に伸長した所定高さを有するリッジ5aが形成され、リッジ5aの両側には、リッジ5aと連続して形成される平坦な半導体部5bが形成される。
【0031】
図1(f)からわかるように、リッジ5aは、エッチング用マスク4、及び、エッチング用マスク4が有するパターンに対応する、InGaAsPからなるコンタクト層、キャップ層、及び、p−InP上部クラッド層の一部によって形成され、レーザ基板1からInGaAsPからなるコンタクト層、キャップ層、及び、p−InP上部クラッド層の一部が取り除かれて形成され表面がほぼ平坦となる半導体部5bと一体に形成される。
【0032】
次に、図2(a)に示すように、リッジ5a上及び半導体部5b上に平坦化層6を形成する。平坦化層6は、例えば、水ガラスやポリイミド等の充填剤を用いてリッジ5aを埋没させて固化して形成したものであり、表面がほぼ平坦に形成される。
【0033】
次に、図2(b)において、平坦化層6の表面にレジストを塗布し、2光束干渉法により、ホログラッフィック露光、現像処理を行うことにより、グレーティングを有するレジスト7を形成する。
【0034】
次に、図2(c)において、レジスト7が形成された平坦化層6に対し、ドライエッチング処理を行うことにより、レジスト7が有するグレーティングが、平坦化層6に一括転写され、さらにドライエッチング処理を行うと、平坦化層6に転写されたグレーティングが、半導体部5bに一括転写される。
【0035】
この場合に、マスク4の材料を構成するマスク用酸化膜2と平坦化層6との組み合わせは、マスク4の材料を構成するマスク用酸化膜2のエッチングレートが、平坦化層6のエッチングレートよりも小さくなるように設定されるので、このエッチングによって形成されるグレーティングは、リッジ5aのマスク用酸化膜2より下層の半導体(ここではキャップ層)までエッチング処理されることない。
【0036】
したがって、このドライエッチング処理によってグレーティングが半導体部5bに一括転写されても、リッジ5aのマスク用酸化膜2より下層の半導体(ここではキャップ層)にはエッチングされない。
【0037】
次に、図2(d)に示すように、上述したドライエッチング処理後に残存するレジスト7、平坦化層6、マスク4をそれぞれ除去すると、半導体部5bの表面にグレーティング8が形成される。
【0038】
このように、2光束干渉法を用いて平坦化層6上にグレーティングを形成し、このグレーティングをドライエッチング処理することによりリッジ5aの両側に形成された半導体部5bに転写するので、リッジ5aによる光の回折の影響を受けることなくリッジ5aの立上がり部分まで確実に形成される。したがって、グレーティング8は、半導体部5b上において、図2(d)に示すようにリッジ5aの立上がり部分まで均一に形成される。
【0039】
次いで、図2(e)に示すように、リッジ5a、及び、グレーティング8が形成された半導体部5b上に絶縁膜9を形成する。絶縁膜9は、例えば、水ガラスやポリイミド等の充填剤を用いてリッジ5aを埋没させて固化して形成したものであり、表面がほぼ平坦に形成される。
【0040】
次に、図3(a)に示すように、絶縁膜9に対し、セルフアライン法によるドライエッチング処理を行って、リッジ5aの上面を絶縁膜9から露出させる。
【0041】
次いで図3(b)において、リッジ5aの上面及び絶縁膜9上にp電極に対応する金属10を蒸着させる。
【0042】
次に、図3(c)において、レーザ基板1の底部(n+ −InP基板)を研磨して、n+ −InP基板を所定の厚さに調整した後、図3(d)において、研磨後のn+ −InP基板上にn電極に対応する金属11を蒸着させる。
【0043】
次に、図3(e)において、上記金属10、11に対しAR、HRコーティング処理を施し、所定の形状にへき開すると、p電極12及びn電極13が形成され、横結合型分布帰還型半導体レーザ素子が形成される。
【0044】
なお、本実施形態においては、横結合型分布帰還型半導体レーザ素子の製造工程において、図2(a)に示すように、平坦化層6は、例えば、水ガラスやポリイミド等の充填剤を用いてリッジ5aを埋没させて固化して形成したが、平坦化層6は、その強度を向上させるために、一旦水ガラスやポリイミド等を用いてリッジ5aを埋没させて固化した後、さらにその上にアルミニウム等の金属薄膜を形成するようにしてもよい。
【0045】
このことにより、平坦化層6は、表面が金属薄膜によって強化されるので、平坦化層6の表面にレジストを塗布し、2光束干渉法により、ホログラッフィック露光、現像処理を行う場合に、グレーティングを有するレジスト7を精度良く形成することができる。
【0046】
なお、上述したように、平坦化層6の表面に金属薄膜を設けた場合には、グレーティングを有するレジスト7はこの金属薄膜上に形成されるが、金属薄膜上に形成されたグレーティングが半導体部5bに一括転写される工程は以下のように行われる。
【0047】
即ち、先に述べた図2(c)に対応する製造工程においてドライエッチング処理を行うことにより、レジスト7が有するグレーティングが、一旦金属薄膜に一括転写され、さらにドライエッチング処理を行うと、金属薄膜に転写されたグレーティングが、金属薄膜の下層に形成された固化した充填剤(水ガラスやポリイミド等)に一括転写され、さらにドライエッチング処理を行うと、固化した充填剤に転写されたグレーティングが半導体部5bに一括転写される。
【0048】
上記実施例では、グレーティングは、2光束干渉法を用いて形成するように説明したが、他の方法を用いても良い。なお、上記実施例のごとく2光束干渉を用いてグレーティングを形成する場合には、グレーティングが有する各格子を容易に確実に一括形成することができ、製造装置も安価となり、分布帰還型半導体レーザ素子のコストも安くなる。
【0049】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したため、リッジを形成した後に、リッジ上に平坦化層を形成することによって一旦表面を平坦化し、しかる後に平坦化層上にグレーティングを形成し、この形状に対しエッチング等の処理を施すことによりグレーティングをレーザ基板に転写し、その後にリッジ上に残存する平坦化層を除去するようにしたので、グレーティングが有する各格子を容易に確実に形成することができ、分布帰還型半導体レーザ素子の生産効率が上がる。
【0050】
また、平坦化層上にグレーティングを形成する工程において、2光束干渉を用いることにより、グレーティングが有する各格子を容易に確実に一括形成することができ、分布帰還型半導体レーザ素子の生産効率が上がる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法を各工程順に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態における分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法を各工程順に示した図である。
【図3】本発明の一実施形態における分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法を各工程順に示した図である。
【図4】従来の分布帰還型半導体レーザ素子の製造工程を示す図である。
【図5】従来の分布帰還型半導体レーザ素子の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・・レーザ基板
2・・・・・酸化膜
3・・・・・リッジパターン
4・・・・・マスク
5a・・・・リッジ
5b・・・・半導体部
6・・・・・平坦化層
7・・・・・レジスト
8・・・・・グレーティング
9・・・・・絶縁膜
10・・・・金属
11・・・・金属
12・・・・p電極
13・・・・n電極

Claims (6)

  1. レーザ基板を形成する工程と、前記レーザ基板をエッチングしてリッジを形成する工程と、前記リッジ上に平坦化層を形成する工程と、前記平坦化層上にグレーティングを形成する工程と、前記グレーティングを、前記リッジが形成されたレーザ基板に転写する工程と、前記平坦化層を除去する工程と、電極を形成する工程と、を含む分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
  2. 前記平坦化層は、前記リッジを埋没させると共に前記リッジが形成されたレーザ基板の全面に形成されることを特徴とする請求項1記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
  3. 前記平坦化層上に強化層を形成したことを特徴とする請求項1乃至2記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
  4. 前記平坦化層上にグレーティングを形成する工程は、前記平坦化層上にレジスト層を塗布する工程と、前記レジスト層にグレーティングを形成する工程と、前記レジスト層に形成されたグレーティングを前記平坦化層に転写する工程と、からなることを特徴とする請求項1乃至2に記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 前記平坦化層上にグレーティングを形成する工程は、前記強化層上にレジスト層を塗布する工程と、前記レジスト層にグレーティングを形成する工程と、前記レジスト層に形成されたグレーティングを前記強化層に転写する工程と、前記強化層に形成されたグレーティングを前記平坦化層に転写する工程と、からなることを特徴とする請求項3に記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 前記グレーティングは、2光束干渉により形成されることを特徴とする請求項1乃至5記載の分布帰還型半導体レーザ素子の製造方法。
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