JP2004063633A - 半導体レーザの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体レーザ製造における活性層へのダメージおよび不純物付着を防止する。
【解決手段】活性層上にダミー層を形成し(ステップS3)、ダミー層を、活性層を露出させることなく部分的にエッチングして回折格子構造にし(ステップS5)、次いで、ダミー層を成長装置で気相エッチングにより除去するとともに(ステップS7)、その回折格子構造の形状を活性層に転写して活性層に回折格子を形成し(ステップS8)、活性層を大気に曝すことなく回折格子上に分離層を形成する(ステップS9)。これにより、回折格子構造形成時のエッチングがダミー層に対して行われ、さらに、活性層への回折格子の形成が気相エッチングによるため、いずれの工程においても活性層へのダメージが防止される。また、活性層は分離層形成直前までダミー層で保護されるため、活性層への不純物の付着が防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】活性層上にダミー層を形成し(ステップS3)、ダミー層を、活性層を露出させることなく部分的にエッチングして回折格子構造にし(ステップS5)、次いで、ダミー層を成長装置で気相エッチングにより除去するとともに(ステップS7)、その回折格子構造の形状を活性層に転写して活性層に回折格子を形成し(ステップS8)、活性層を大気に曝すことなく回折格子上に分離層を形成する(ステップS9)。これにより、回折格子構造形成時のエッチングがダミー層に対して行われ、さらに、活性層への回折格子の形成が気相エッチングによるため、いずれの工程においても活性層へのダメージが防止される。また、活性層は分離層形成直前までダミー層で保護されるため、活性層への不純物の付着が防止される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザの製造方法に関し、特に光通信装置、光情報処理装置、光記憶装置などの電気光変換素子として用いられる半導体レーザの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
単一波長性に優れた半導体レーザとして、光導波路内に回折格子構造を有する分布帰還半導体レーザ(Distributed Feedback Laser,以下「DFBレーザ」という)が知られている。現在製品化されているDFBレーザは、主として、活性層近傍の光導波路内に回折格子を有し、屈折率の変調構造により光分布帰還を行う屈折率結合型DFBレーザである。
【0003】
均一な回折格子を持つ屈折率結合型DFBレーザでは、発振波長がブラッグ波長の短波長側になる場合と長波長側になる場合の2つの場合が同じ確率で出現する。そのため、この2つの波長を作り分けることは困難であるという製造上の問題があった。そこで、この問題を解決するために、現在では、回折格子中央に回折格子の位相を1/4波長分だけずらす箇所を設けることによって発振波長を1つに安定化する方法を採るのが一般的となっている。
【0004】
発振波長を1つに安定化する別の方法として、利得または損失の周期的変調構造によって光分布帰還を行う方法がある。このような方法を用いたDFBレーザは利得結合型DFBレーザと呼ばれる。利得結合型DFBレーザのうち、損失の変調構造を利用するものは、光を吸収する層が本質的に光導波路内に形成されるために、素子の光電変換効率が低いという問題がある。一方、利得の変調構造を利用する利得結合型DFBレーザの場合にはこのような問題はない。
【0005】
図9は利得結合型DFBレーザの構成例を示す図である。なお、図9には、利得結合型DFBレーザの基本構造のみを示している。
利得結合型DFBレーザ100は、基板101上の異なる導電型の第1,第2のクラッド層102,103の間に、利得を発生する活性層104を有している。この活性層104は、回折格子状に形成されており、これにより利得の変調構造を実現している。活性層104に形成された回折格子は、分離層105によって埋め込まれており、この分離層105および活性層104が、第1,第2のクラッド層102,103の間に形成されて利得結合型DFBレーザ100の光導波路が構成される。
【0006】
このような利得結合型DFBレーザ100は、従来、例えば以下の図10から図15に示すような工程を経て製造されている。以下にその製造工程を順を追って説明する。
【0007】
ここで、図10は従来の結晶成長工程、図11は従来のレジストマスク形成工程、図12は従来の回折格子形成工程、図13は従来のレジストマスク除去工程、図14は従来の分離層形成工程、図15は従来の第2のクラッド層形成工程の説明図である。なお、図10から図15では、図9に示した構成要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0008】
まず、図10に示すように、基板101上に、有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy,MOVPE)法などの結晶成長法により、第1のクラッド層102および活性層104を順に結晶成長する。
【0009】
活性層104の成長後はウェハを成長装置から取り出し、活性層104上にフォトレジストを塗布し、干渉露光法や電子ビーム露光法などの方法を用いてフォトレジストを所定の周期のストライプパターンに露光する。これを現像することにより、活性層104上に、図11に示すようなストライプ状のレジストマスク106を形成する。
【0010】
次いで、レジストマスク106をマスクにしてリアクティブ・イオン・エッチング(Reactive Ion Etching,RIE)などのドライエッチング法により、図12に示すように活性層104を回折格子状にエッチングする。
【0011】
回折格子の形成後は、活性層104上のレジストマスク106を、図13に示すように、溶剤を用いて除去する。
そして、ウェハを成長装置へと移動して所定の温度まで昇温した後、MOVPE法などの結晶成長法により、図14に示すように分離層105を成長して活性層104に形成した回折格子を埋め込んで平坦化する。
【0012】
最後に、分離層105の成長に連続して、同じ成長装置で、図15に示すように分離層105上に第2のクラッド層103を成長する。
以降は更に電極形成などの工程を経て、半導体レーザの基本構造を形成する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の利得結合型DFBレーザの製造方法には、次のような問題点があった。
【0014】
まず、プラズマプロセスであるドライエッチングにより回折格子の形成を行うために、回折格子が形成される活性層にエッチングのダメージが入り易い。
また、回折格子形成後、その上に分離層および第2のクラッド層を成長するために成長装置へとウェハを移動する際、回折格子が形成された活性層の表面に、空気中の炭素、酸素、シリコンなどの不純物が付着し易い。
【0015】
さらに、回折格子上に分離層および第2のクラッド層を成長する際の昇温時には、回折格子が形成された活性層の表層部に熱によるダメージが入り易い。
これらの問題はいずれも、素子の特性および長期信頼性を劣化させる要因となる。特許第2903321号には、このような問題の解決を目指した方法が開示されている。以下、その製造方法の概略について述べる。この製造方法は概ね次の図16から図21に示した工程を経る。
【0016】
ここで、図16は結晶成長工程、図17は誘電体マスク形成工程、図18は回折格子形成工程、図19は分離層形成工程、図20は誘電体マスク除去工程、図21は第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【0017】
まず、図16に示すように、基板200上に、第1のクラッド層201および活性層202を順に結晶成長する。
次いで、ウェハを成長装置から取り出し、活性層202上にSiO2などの誘電体膜を形成し、干渉露光法や電子ビーム露光法などを用いた通常のフォトリソグラフィ技術とウェットエッチング技術により、図17に示すような周期的なストライプ状の誘電体マスク203を形成する。
【0018】
誘電体マスク203の形成後は、このウェハを成長装置へ移動し、所定のエッチングガスおよび雰囲気ガスを導入し、図18に示すように活性層202を回折格子状に気相エッチングする。
【0019】
この気相エッチングに続き、活性層202を大気に曝すことなく、図19に示すように分離層204を成長する。
分離層204の成長後は、ウェハを成長装置から取り出し、図20に示すように活性層202上の誘電体マスク203をウェットエッチングにより除去する。
【0020】
そして、再びウェハを成長装置へ移動し、図21に示すように、活性層202上および分離層204上に第2のクラッド層205を成長する。
この製造方法では、回折格子を分離層204で埋め込む直前に、成長装置で気相エッチングにより回折格子を形成しているため、RIEを用いた場合と異なり、プラズマによるエッチングのダメージの問題がない。
【0021】
しかし、この製造方法では、SiO2の誘電体マスク203の成膜ダメージが活性層202の表面近傍に導入されるという課題や、従来法に比べて成長回数が1回多くなることによる製造コストの増加といった課題が残されている。
【0022】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、活性層へのダメージおよび不純物の付着を防ぎ、かつ、低コストで製造することのできる半導体レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す製造フローによって実現可能な半導体レーザの製造方法が提供される。本発明の半導体レーザの製造方法は、一定波長の光を帰還発振するための回折格子状の活性層を有する半導体レーザの製造方法において、活性層の上に、前記活性層を一時的に保護するとともに前記活性層への回折格子の形成に用いるダミー層を形成する工程と、前記ダミー層の一部を選択的にエッチングして前記ダミー層を回折格子構造にする工程と、気相エッチングによって前記ダミー層を除去するとともに、前記回折格子構造の形状を前記活性層に転写して前記活性層に前記回折格子を形成する工程と、前記回折格子が形成された前記活性層を大気に曝すことなく、前記回折格子を埋め込む分離層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
このような半導体レーザの製造方法によれば、まず、活性層の上に形成したダミー層の一部をエッチングして回折格子構造にする(ステップS5)。そして、ダミー層を気相エッチングにより除去するとともに(ステップS7)、その回折格子構造の形状を活性層に転写して活性層に回折格子を形成し(ステップS8)、活性層を大気に曝すことなく回折格子を分離層で埋め込む(ステップS9)。これにより、回折格子構造形成時のエッチングが活性層に対してではなくダミー層に対して行われ、さらに、活性層への回折格子形成時の気相エッチングはプラズマによらないため、いずれの工程においても活性層にダメージが入らない。また、活性層は分離層形成直前までダミー層で保護されるため、大気に触れる機会がなく、活性層の表面に不純物が付着しない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は半導体レーザの製造フローを示す図である。
【0026】
半導体レーザの製造は、まず、基板上に、第1の導電型の第1のクラッド層を形成し(ステップS1)、この第1のクラッド層の上に、これよりも屈折率の高い材質の活性層を形成する(ステップS2)。この第1のクラッド層および活性層は、例えばMOVPE法などの結晶成長法により、順に成長する。
【0027】
次いで、活性層の上に、ドライエッチングなどのエッチングによって回折格子構造とすることのできるダミー層を形成する(ステップS3)。このダミー層は、活性層を一時的に保護するとともに、後述するように活性層に回折格子を形成する際に用いられる。
【0028】
ダミー層は、例えば活性層の成長に続けてInGaAsやInGaAsPなどを成長装置で成長させることによって形成し、その膜厚は、活性層に形成すべき回折格子の形状に応じて設定される。通常は、例えば50nm〜200nm程度、より詳しくは70nm〜150nm程度の膜厚となるよう形成される。
【0029】
このようなダミー層の形成後、このウェハを一旦成長装置外に取り出し、ダミー層の上に、レジストの塗布・露光・現像により、周期的なストライプ状のエッチングマスクを形成する(ステップS4)。
【0030】
そして、このエッチングマスクで被覆されていない領域のダミー層を、活性層まで貫通させることなく部分的にエッチングし、ダミー層に回折格子構造を形成する(ステップS5)。そのため、活性層の表面はダミー層で被覆されたままであり、外部に露出しない。また、ダミー層に形成する回折格子構造の形状は、活性層に形成すべき回折格子の形状に従って設定される。
【0031】
ダミー層への回折格子構造の形成後、エッチングマスクは除去する(ステップS6)。
このウェハを再び成長装置に移動して気相エッチングを行う所定の温度まで昇温し、気相エッチングにより、回折格子構造のダミー層を除去する(ステップS7)。
【0032】
さらに、この気相エッチングの際には、ダミー層をすべて除去する過程で、特にダミー層凹部に対応する領域の活性層も除去される。そのため、この気相エッチングにより、ダミー層の回折格子構造の形状が活性層に転写されることになり、活性層に回折格子が形成される(ステップS8)。したがって、活性層に形成される回折格子の深さは、ダミー層が有していた回折格子構造の形状に応じたものとなる。
【0033】
なお、このステップS8における気相エッチングは、エッチングガスの熱分解で発生する活性種によってエッチングを行う。そのため、プラズマによるエッチングの場合とは異なり、活性層の表層部に対してエッチングのダメージが生じることがほとんどない。このような気相エッチングに用いるエッチングガスとしては、塩化水素(HCl)、塩化メチル(CH3Cl)、三塩化リン(PCl3)、四臭化炭素(CBr4)、ヨウ化メチル(CH3I)など、その組成にハロゲン元素を含んだ物質を用いる。
【0034】
また、気相エッチングを行う際の温度は、例えば450℃〜700℃程度、好ましくは550℃〜650℃程度の範囲で設定する。450℃を下回る温度では気相エッチングを効率的かつ良好に行うことが難しくなり、一方、700℃を上回る温度ではダミー層および活性層への熱によるダメージが大きく、これらの層の熱変形も起こり得るためである。
【0035】
ステップS8における活性層への回折格子の形成後は、気相エッチングを行ったのと同じ成長装置で、回折格子が形成された活性層の上に、これを大気に曝すことなく連続して、所定の温度で分離層を形成する(ステップS9)。さらに続けて、この分離層の上に、活性層よりも屈折率の低い第2の導電型の第2のクラッド層を形成する(ステップS10)。
【0036】
以降は、電極形成など従来公知の所定の工程を経て、半導体レーザの形成を終了する。
このような半導体レーザの製造方法によれば、ドライエッチングなどのエッチングが、活性層に対してではなくダミー層に対して行われるので、活性層にエッチングのダメージが入ることがない。そして、活性層に回折格子を形成するに当たっては、ダミー層にエッチングマスクを形成するので、従来のような誘電体マスクの形成に伴う活性層への成膜ダメージも生じない。
【0037】
さらに、この製造方法では、ダミー層に回折格子構造を形成してから気相エッチングを行い、この回折格子構造の形状を転写して活性層に回折格子を形成する。したがって、気相エッチングを行う温度まで昇温する際、活性層はダミー層で保護されており、活性層に熱によるダメージがほとんど入らない。
【0038】
さらに、活性層は、気相エッチングによる回折格子の形成まではダミー層でその表面を被覆され、回折格子の形成以降は成長装置内にあって大気に曝されることなく分離層で埋め込まれる。すなわち、活性層は、回折格子を埋め込む分離層の形成直前まで露出されることがなく、活性層の表面への不純物の付着が防止される。
【0039】
また、この製造方法によれば誘電体マスクの形成や除去が不要であるため、工程数の増加や製造コストの増加も回避することができる。
次に、上記の半導体レーザの製造方法を、光通信に用いられるInP系の利得結合型DFBレーザの製造に適用した場合を例に、図2から図8を参照して具体的に説明する。以下、各製造工程を順を追って説明する。
【0040】
図2は利得結合型DFBレーザ製造における結晶成長工程の説明図である。
まず、n型InP基板(キャリア濃度約2×1018cm−3,厚さ約300μm)1上に、MOVPE法により結晶成長を行うMOVPE成長装置で、n型InP(キャリア濃度約5×1017cm−3,厚さ約0.5μm)からなる第1のクラッド層2を成長する。この第1のクラッド層2上に、発光波長1.55μmのアンドープ歪量子井戸(Strained Multiple Quantum Well,以下「歪MQW」という)構造からなる活性層3、およびアンドープInGaAs(厚さ約100nm)からなるダミー層4を順に成長する。
【0041】
ここで、活性層3の歪MQW構造は、無歪の組成波長1.2μmのInGaAsPバリア層(厚さ約10nm)と、0.8%の圧縮歪を有する組成波長1.6μmのInGaAsPウェル層(厚さ約5nm)とを、順に6周期積層した上に、無歪の組成波長1.2μmのInGaAsPバリア層(厚さ約10nm)を一層積層した構造を有する。
【0042】
ダミー層4は、上記のようにInGaAs単層膜とするほか、InGaAsP単層膜としてもよい。また、アンドープInP(厚さ約99nm)、アンドープGaAs(厚さ約1nm)およびアンドープInP(厚さ約10nm)を順に積層した多層構造のInP/GaAs多層膜としてもよい。
【0043】
このように、ダミー層4にInGaAs単層膜、InGaAsP単層膜またはInP/GaAs多層膜を用いるのは、後述する回折格子形成工程における昇温時に、マストランスポートによってダミー層に形成した回折格子構造の形状が崩れるのを防ぐためである。回折格子構造の形状が崩れると、その形状を転写して形成される活性層の回折格子が、設計通りの形状とならなくなってしまう。
【0044】
ダミー層4の材質として用いるInGaAs、InGaAsPおよびGaAsは、InPに比べてマストランスポートを起こしにくいという性質を有している。そのため、ダミー層4は、InP単層膜とするよりも、InGaAs単層膜、InGaAsP単層膜またはInP/GaAs多層膜とした方がよい。
【0045】
図3は利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク形成工程の説明図である。
結晶成長工程後、ウェハをMOVPE成長装置から取り出し、ダミー層4上にフォトレジストを塗布し、干渉露光法または電子ビーム露光法を用い、光の進行方向に対してピッチ約240nmのライン・アンド・スペース・パターンを露光・現像する。また、必要に応じてこのレジストのポストベークを行う。これにより、ダミー層4をドライエッチングによって回折格子構造にするためのストライプ状のレジストマスク5が形成される。
【0046】
図4は利得結合型DFBレーザ製造におけるダミー層の回折格子構造形成工程の説明図である。
レジストマスク5をマスクにして、メタン(CH4)またはエタン(C2H6)をエッチングガスとした通常のRIE法により、ダミー層4を部分的にエッチングし、回折格子構造にする。エッチング深さは約65nmとし、ダミー層4の下部約35nmはエッチングせずに残す。このように残す部分を設けるのは、プラズマによるエッチングのダメージが活性層3に入らないようにするとともに、活性層3を外部に露出させないためである。
【0047】
図5は利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク除去工程の説明図である。
ダミー層4を回折格子構造にした後、ダミー層4への回折格子構造の形成に用いた図4のレジストマスク5は溶剤により除去する。
【0048】
図6は利得結合型DFBレーザ製造における回折格子形成工程の説明図である。
図4に示したレジストマスク5を除去した後、ウェハをMOVPE成長装置に移動し、ホスフィン(PH3)と水素(H2)の混合雰囲気中で、後述する分離層および第2のクラッド層の形成温度である約600℃まで昇温する。温度が安定したら、CH3Clなどのエッチングガスを導入して気相エッチングを行ってダミー層4をすべて除去するとともに、回折格子形状を活性層3に転写する。エッチング時間は、エッチング量がダミー層4の厚さである約100nmとなるように調節する。これにより、活性層3の上部約65nm(6層のウェル層のうち4層分)がエッチングされ、活性層3に回折格子が形成される。
【0049】
なお、ここでは、気相エッチングの温度を分離層および第2のクラッド層の形成温度と同温度としたが、この気相エッチングの温度は独立に設定してもよい。この場合、その温度での気相エッチング後に、エッチングガスを切り、改めて分離層および第2のクラッド層の形成温度まで昇温あるいは降温し、その後、分離層および第2のクラッド層の成長を行えばよい。
【0050】
図7は利得結合型DFBレーザ製造における分離層形成工程の説明図である。
所定のエッチング時間の経過後、エッチングガスを切り、引き続きMOVPE成長装置で、アンドープInP(厚さ約100nm)からなる分離層6を成長する。これにより、活性層3に形成された回折格子は埋め込まれて平坦化される。この分離層6としては、InPのほか、InAsPまたはInGaAsPを用いることもできる。
【0051】
図8は利得結合型DFBレーザ製造における第2のクラッド層形成工程の説明図である。
分離層6の成長後は、引き続き同じMOVPE成長装置で、p型InP(キャリア濃度約5×1017cm−3,厚さ約150nm)を成長し、第2のクラッド層7を成長する。
【0052】
以降は通常の埋め込み半導体レーザの製造方法と同様に、メサストライプを形成し、埋め込み成長を行い、コンタクト層成長を行った後、電極形成、へき開、端面反射膜形成、素子分離などの工程を経て、半導体レーザを完成する。
【0053】
なお、上記の例では、InP系の利得結合型DFBレーザの製造について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。素子を構成する材料系は上記の例に示したもの以外のものに適当に変更することができ、その材料系に応じて製造条件(温度、雰囲気、時間など)も適当に変更することができる。また、回折格子の深さも、目的の回折格子の深さに応じ、ダミー層の回折格子構造の形状や活性層のエッチングする層数など、適当に設定することが可能である。
【0054】
また、以上の説明において、回折格子の形状は活性層内に凸部と凹部とが形成されている構造としたが、上記の回折格子の凹部に相当する部分の活性層を除去して貫通させた回折格子とし、これを分離層によって埋め込む構造とすることもできる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、活性層上のダミー層を回折格子構造にし、このダミー層を気相エッチングにより除去するとともに、その回折格子構造の形状を活性層に転写して回折格子を形成し、これを大気に曝すことなく、回折格子上に分離層を形成する。これにより、活性層へのダメージや不純物の付着が防止された、良好な特性と長期信頼性を有する半導体レーザを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体レーザの製造フローを示す図である。
【図2】利得結合型DFBレーザ製造における結晶成長工程の説明図である。
【図3】利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク形成工程の説明図である。
【図4】利得結合型DFBレーザ製造におけるダミー層の回折格子構造形成工程の説明図である。
【図5】利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク除去工程の説明図である。
【図6】利得結合型DFBレーザ製造における回折格子形成工程の説明図である。
【図7】利得結合型DFBレーザ製造における分離層形成工程の説明図である。
【図8】利得結合型DFBレーザ製造における第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【図9】利得結合型DFBレーザの構成例を示す図である。
【図10】従来の結晶成長工程である。
【図11】従来のレジストマスク形成工程である。
【図12】従来の回折格子形成工程である。
【図13】従来のレジストマスク除去工程である。
【図14】従来の分離層形成工程である。
【図15】従来の第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【図16】結晶成長工程である。
【図17】誘電体マスク形成工程である。
【図18】回折格子形成工程である。
【図19】分離層形成工程である。
【図20】誘電体マスク除去工程である。
【図21】第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【符号の説明】
1 n型InP基板
2 第1のクラッド層
3 活性層
4 ダミー層
5 レジストマスク
6 分離層
7 第2のクラッド層
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザの製造方法に関し、特に光通信装置、光情報処理装置、光記憶装置などの電気光変換素子として用いられる半導体レーザの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
単一波長性に優れた半導体レーザとして、光導波路内に回折格子構造を有する分布帰還半導体レーザ(Distributed Feedback Laser,以下「DFBレーザ」という)が知られている。現在製品化されているDFBレーザは、主として、活性層近傍の光導波路内に回折格子を有し、屈折率の変調構造により光分布帰還を行う屈折率結合型DFBレーザである。
【0003】
均一な回折格子を持つ屈折率結合型DFBレーザでは、発振波長がブラッグ波長の短波長側になる場合と長波長側になる場合の2つの場合が同じ確率で出現する。そのため、この2つの波長を作り分けることは困難であるという製造上の問題があった。そこで、この問題を解決するために、現在では、回折格子中央に回折格子の位相を1/4波長分だけずらす箇所を設けることによって発振波長を1つに安定化する方法を採るのが一般的となっている。
【0004】
発振波長を1つに安定化する別の方法として、利得または損失の周期的変調構造によって光分布帰還を行う方法がある。このような方法を用いたDFBレーザは利得結合型DFBレーザと呼ばれる。利得結合型DFBレーザのうち、損失の変調構造を利用するものは、光を吸収する層が本質的に光導波路内に形成されるために、素子の光電変換効率が低いという問題がある。一方、利得の変調構造を利用する利得結合型DFBレーザの場合にはこのような問題はない。
【0005】
図9は利得結合型DFBレーザの構成例を示す図である。なお、図9には、利得結合型DFBレーザの基本構造のみを示している。
利得結合型DFBレーザ100は、基板101上の異なる導電型の第1,第2のクラッド層102,103の間に、利得を発生する活性層104を有している。この活性層104は、回折格子状に形成されており、これにより利得の変調構造を実現している。活性層104に形成された回折格子は、分離層105によって埋め込まれており、この分離層105および活性層104が、第1,第2のクラッド層102,103の間に形成されて利得結合型DFBレーザ100の光導波路が構成される。
【0006】
このような利得結合型DFBレーザ100は、従来、例えば以下の図10から図15に示すような工程を経て製造されている。以下にその製造工程を順を追って説明する。
【0007】
ここで、図10は従来の結晶成長工程、図11は従来のレジストマスク形成工程、図12は従来の回折格子形成工程、図13は従来のレジストマスク除去工程、図14は従来の分離層形成工程、図15は従来の第2のクラッド層形成工程の説明図である。なお、図10から図15では、図9に示した構成要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0008】
まず、図10に示すように、基板101上に、有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy,MOVPE)法などの結晶成長法により、第1のクラッド層102および活性層104を順に結晶成長する。
【0009】
活性層104の成長後はウェハを成長装置から取り出し、活性層104上にフォトレジストを塗布し、干渉露光法や電子ビーム露光法などの方法を用いてフォトレジストを所定の周期のストライプパターンに露光する。これを現像することにより、活性層104上に、図11に示すようなストライプ状のレジストマスク106を形成する。
【0010】
次いで、レジストマスク106をマスクにしてリアクティブ・イオン・エッチング(Reactive Ion Etching,RIE)などのドライエッチング法により、図12に示すように活性層104を回折格子状にエッチングする。
【0011】
回折格子の形成後は、活性層104上のレジストマスク106を、図13に示すように、溶剤を用いて除去する。
そして、ウェハを成長装置へと移動して所定の温度まで昇温した後、MOVPE法などの結晶成長法により、図14に示すように分離層105を成長して活性層104に形成した回折格子を埋め込んで平坦化する。
【0012】
最後に、分離層105の成長に連続して、同じ成長装置で、図15に示すように分離層105上に第2のクラッド層103を成長する。
以降は更に電極形成などの工程を経て、半導体レーザの基本構造を形成する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の利得結合型DFBレーザの製造方法には、次のような問題点があった。
【0014】
まず、プラズマプロセスであるドライエッチングにより回折格子の形成を行うために、回折格子が形成される活性層にエッチングのダメージが入り易い。
また、回折格子形成後、その上に分離層および第2のクラッド層を成長するために成長装置へとウェハを移動する際、回折格子が形成された活性層の表面に、空気中の炭素、酸素、シリコンなどの不純物が付着し易い。
【0015】
さらに、回折格子上に分離層および第2のクラッド層を成長する際の昇温時には、回折格子が形成された活性層の表層部に熱によるダメージが入り易い。
これらの問題はいずれも、素子の特性および長期信頼性を劣化させる要因となる。特許第2903321号には、このような問題の解決を目指した方法が開示されている。以下、その製造方法の概略について述べる。この製造方法は概ね次の図16から図21に示した工程を経る。
【0016】
ここで、図16は結晶成長工程、図17は誘電体マスク形成工程、図18は回折格子形成工程、図19は分離層形成工程、図20は誘電体マスク除去工程、図21は第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【0017】
まず、図16に示すように、基板200上に、第1のクラッド層201および活性層202を順に結晶成長する。
次いで、ウェハを成長装置から取り出し、活性層202上にSiO2などの誘電体膜を形成し、干渉露光法や電子ビーム露光法などを用いた通常のフォトリソグラフィ技術とウェットエッチング技術により、図17に示すような周期的なストライプ状の誘電体マスク203を形成する。
【0018】
誘電体マスク203の形成後は、このウェハを成長装置へ移動し、所定のエッチングガスおよび雰囲気ガスを導入し、図18に示すように活性層202を回折格子状に気相エッチングする。
【0019】
この気相エッチングに続き、活性層202を大気に曝すことなく、図19に示すように分離層204を成長する。
分離層204の成長後は、ウェハを成長装置から取り出し、図20に示すように活性層202上の誘電体マスク203をウェットエッチングにより除去する。
【0020】
そして、再びウェハを成長装置へ移動し、図21に示すように、活性層202上および分離層204上に第2のクラッド層205を成長する。
この製造方法では、回折格子を分離層204で埋め込む直前に、成長装置で気相エッチングにより回折格子を形成しているため、RIEを用いた場合と異なり、プラズマによるエッチングのダメージの問題がない。
【0021】
しかし、この製造方法では、SiO2の誘電体マスク203の成膜ダメージが活性層202の表面近傍に導入されるという課題や、従来法に比べて成長回数が1回多くなることによる製造コストの増加といった課題が残されている。
【0022】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、活性層へのダメージおよび不純物の付着を防ぎ、かつ、低コストで製造することのできる半導体レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示す製造フローによって実現可能な半導体レーザの製造方法が提供される。本発明の半導体レーザの製造方法は、一定波長の光を帰還発振するための回折格子状の活性層を有する半導体レーザの製造方法において、活性層の上に、前記活性層を一時的に保護するとともに前記活性層への回折格子の形成に用いるダミー層を形成する工程と、前記ダミー層の一部を選択的にエッチングして前記ダミー層を回折格子構造にする工程と、気相エッチングによって前記ダミー層を除去するとともに、前記回折格子構造の形状を前記活性層に転写して前記活性層に前記回折格子を形成する工程と、前記回折格子が形成された前記活性層を大気に曝すことなく、前記回折格子を埋め込む分離層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
このような半導体レーザの製造方法によれば、まず、活性層の上に形成したダミー層の一部をエッチングして回折格子構造にする(ステップS5)。そして、ダミー層を気相エッチングにより除去するとともに(ステップS7)、その回折格子構造の形状を活性層に転写して活性層に回折格子を形成し(ステップS8)、活性層を大気に曝すことなく回折格子を分離層で埋め込む(ステップS9)。これにより、回折格子構造形成時のエッチングが活性層に対してではなくダミー層に対して行われ、さらに、活性層への回折格子形成時の気相エッチングはプラズマによらないため、いずれの工程においても活性層にダメージが入らない。また、活性層は分離層形成直前までダミー層で保護されるため、大気に触れる機会がなく、活性層の表面に不純物が付着しない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は半導体レーザの製造フローを示す図である。
【0026】
半導体レーザの製造は、まず、基板上に、第1の導電型の第1のクラッド層を形成し(ステップS1)、この第1のクラッド層の上に、これよりも屈折率の高い材質の活性層を形成する(ステップS2)。この第1のクラッド層および活性層は、例えばMOVPE法などの結晶成長法により、順に成長する。
【0027】
次いで、活性層の上に、ドライエッチングなどのエッチングによって回折格子構造とすることのできるダミー層を形成する(ステップS3)。このダミー層は、活性層を一時的に保護するとともに、後述するように活性層に回折格子を形成する際に用いられる。
【0028】
ダミー層は、例えば活性層の成長に続けてInGaAsやInGaAsPなどを成長装置で成長させることによって形成し、その膜厚は、活性層に形成すべき回折格子の形状に応じて設定される。通常は、例えば50nm〜200nm程度、より詳しくは70nm〜150nm程度の膜厚となるよう形成される。
【0029】
このようなダミー層の形成後、このウェハを一旦成長装置外に取り出し、ダミー層の上に、レジストの塗布・露光・現像により、周期的なストライプ状のエッチングマスクを形成する(ステップS4)。
【0030】
そして、このエッチングマスクで被覆されていない領域のダミー層を、活性層まで貫通させることなく部分的にエッチングし、ダミー層に回折格子構造を形成する(ステップS5)。そのため、活性層の表面はダミー層で被覆されたままであり、外部に露出しない。また、ダミー層に形成する回折格子構造の形状は、活性層に形成すべき回折格子の形状に従って設定される。
【0031】
ダミー層への回折格子構造の形成後、エッチングマスクは除去する(ステップS6)。
このウェハを再び成長装置に移動して気相エッチングを行う所定の温度まで昇温し、気相エッチングにより、回折格子構造のダミー層を除去する(ステップS7)。
【0032】
さらに、この気相エッチングの際には、ダミー層をすべて除去する過程で、特にダミー層凹部に対応する領域の活性層も除去される。そのため、この気相エッチングにより、ダミー層の回折格子構造の形状が活性層に転写されることになり、活性層に回折格子が形成される(ステップS8)。したがって、活性層に形成される回折格子の深さは、ダミー層が有していた回折格子構造の形状に応じたものとなる。
【0033】
なお、このステップS8における気相エッチングは、エッチングガスの熱分解で発生する活性種によってエッチングを行う。そのため、プラズマによるエッチングの場合とは異なり、活性層の表層部に対してエッチングのダメージが生じることがほとんどない。このような気相エッチングに用いるエッチングガスとしては、塩化水素(HCl)、塩化メチル(CH3Cl)、三塩化リン(PCl3)、四臭化炭素(CBr4)、ヨウ化メチル(CH3I)など、その組成にハロゲン元素を含んだ物質を用いる。
【0034】
また、気相エッチングを行う際の温度は、例えば450℃〜700℃程度、好ましくは550℃〜650℃程度の範囲で設定する。450℃を下回る温度では気相エッチングを効率的かつ良好に行うことが難しくなり、一方、700℃を上回る温度ではダミー層および活性層への熱によるダメージが大きく、これらの層の熱変形も起こり得るためである。
【0035】
ステップS8における活性層への回折格子の形成後は、気相エッチングを行ったのと同じ成長装置で、回折格子が形成された活性層の上に、これを大気に曝すことなく連続して、所定の温度で分離層を形成する(ステップS9)。さらに続けて、この分離層の上に、活性層よりも屈折率の低い第2の導電型の第2のクラッド層を形成する(ステップS10)。
【0036】
以降は、電極形成など従来公知の所定の工程を経て、半導体レーザの形成を終了する。
このような半導体レーザの製造方法によれば、ドライエッチングなどのエッチングが、活性層に対してではなくダミー層に対して行われるので、活性層にエッチングのダメージが入ることがない。そして、活性層に回折格子を形成するに当たっては、ダミー層にエッチングマスクを形成するので、従来のような誘電体マスクの形成に伴う活性層への成膜ダメージも生じない。
【0037】
さらに、この製造方法では、ダミー層に回折格子構造を形成してから気相エッチングを行い、この回折格子構造の形状を転写して活性層に回折格子を形成する。したがって、気相エッチングを行う温度まで昇温する際、活性層はダミー層で保護されており、活性層に熱によるダメージがほとんど入らない。
【0038】
さらに、活性層は、気相エッチングによる回折格子の形成まではダミー層でその表面を被覆され、回折格子の形成以降は成長装置内にあって大気に曝されることなく分離層で埋め込まれる。すなわち、活性層は、回折格子を埋め込む分離層の形成直前まで露出されることがなく、活性層の表面への不純物の付着が防止される。
【0039】
また、この製造方法によれば誘電体マスクの形成や除去が不要であるため、工程数の増加や製造コストの増加も回避することができる。
次に、上記の半導体レーザの製造方法を、光通信に用いられるInP系の利得結合型DFBレーザの製造に適用した場合を例に、図2から図8を参照して具体的に説明する。以下、各製造工程を順を追って説明する。
【0040】
図2は利得結合型DFBレーザ製造における結晶成長工程の説明図である。
まず、n型InP基板(キャリア濃度約2×1018cm−3,厚さ約300μm)1上に、MOVPE法により結晶成長を行うMOVPE成長装置で、n型InP(キャリア濃度約5×1017cm−3,厚さ約0.5μm)からなる第1のクラッド層2を成長する。この第1のクラッド層2上に、発光波長1.55μmのアンドープ歪量子井戸(Strained Multiple Quantum Well,以下「歪MQW」という)構造からなる活性層3、およびアンドープInGaAs(厚さ約100nm)からなるダミー層4を順に成長する。
【0041】
ここで、活性層3の歪MQW構造は、無歪の組成波長1.2μmのInGaAsPバリア層(厚さ約10nm)と、0.8%の圧縮歪を有する組成波長1.6μmのInGaAsPウェル層(厚さ約5nm)とを、順に6周期積層した上に、無歪の組成波長1.2μmのInGaAsPバリア層(厚さ約10nm)を一層積層した構造を有する。
【0042】
ダミー層4は、上記のようにInGaAs単層膜とするほか、InGaAsP単層膜としてもよい。また、アンドープInP(厚さ約99nm)、アンドープGaAs(厚さ約1nm)およびアンドープInP(厚さ約10nm)を順に積層した多層構造のInP/GaAs多層膜としてもよい。
【0043】
このように、ダミー層4にInGaAs単層膜、InGaAsP単層膜またはInP/GaAs多層膜を用いるのは、後述する回折格子形成工程における昇温時に、マストランスポートによってダミー層に形成した回折格子構造の形状が崩れるのを防ぐためである。回折格子構造の形状が崩れると、その形状を転写して形成される活性層の回折格子が、設計通りの形状とならなくなってしまう。
【0044】
ダミー層4の材質として用いるInGaAs、InGaAsPおよびGaAsは、InPに比べてマストランスポートを起こしにくいという性質を有している。そのため、ダミー層4は、InP単層膜とするよりも、InGaAs単層膜、InGaAsP単層膜またはInP/GaAs多層膜とした方がよい。
【0045】
図3は利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク形成工程の説明図である。
結晶成長工程後、ウェハをMOVPE成長装置から取り出し、ダミー層4上にフォトレジストを塗布し、干渉露光法または電子ビーム露光法を用い、光の進行方向に対してピッチ約240nmのライン・アンド・スペース・パターンを露光・現像する。また、必要に応じてこのレジストのポストベークを行う。これにより、ダミー層4をドライエッチングによって回折格子構造にするためのストライプ状のレジストマスク5が形成される。
【0046】
図4は利得結合型DFBレーザ製造におけるダミー層の回折格子構造形成工程の説明図である。
レジストマスク5をマスクにして、メタン(CH4)またはエタン(C2H6)をエッチングガスとした通常のRIE法により、ダミー層4を部分的にエッチングし、回折格子構造にする。エッチング深さは約65nmとし、ダミー層4の下部約35nmはエッチングせずに残す。このように残す部分を設けるのは、プラズマによるエッチングのダメージが活性層3に入らないようにするとともに、活性層3を外部に露出させないためである。
【0047】
図5は利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク除去工程の説明図である。
ダミー層4を回折格子構造にした後、ダミー層4への回折格子構造の形成に用いた図4のレジストマスク5は溶剤により除去する。
【0048】
図6は利得結合型DFBレーザ製造における回折格子形成工程の説明図である。
図4に示したレジストマスク5を除去した後、ウェハをMOVPE成長装置に移動し、ホスフィン(PH3)と水素(H2)の混合雰囲気中で、後述する分離層および第2のクラッド層の形成温度である約600℃まで昇温する。温度が安定したら、CH3Clなどのエッチングガスを導入して気相エッチングを行ってダミー層4をすべて除去するとともに、回折格子形状を活性層3に転写する。エッチング時間は、エッチング量がダミー層4の厚さである約100nmとなるように調節する。これにより、活性層3の上部約65nm(6層のウェル層のうち4層分)がエッチングされ、活性層3に回折格子が形成される。
【0049】
なお、ここでは、気相エッチングの温度を分離層および第2のクラッド層の形成温度と同温度としたが、この気相エッチングの温度は独立に設定してもよい。この場合、その温度での気相エッチング後に、エッチングガスを切り、改めて分離層および第2のクラッド層の形成温度まで昇温あるいは降温し、その後、分離層および第2のクラッド層の成長を行えばよい。
【0050】
図7は利得結合型DFBレーザ製造における分離層形成工程の説明図である。
所定のエッチング時間の経過後、エッチングガスを切り、引き続きMOVPE成長装置で、アンドープInP(厚さ約100nm)からなる分離層6を成長する。これにより、活性層3に形成された回折格子は埋め込まれて平坦化される。この分離層6としては、InPのほか、InAsPまたはInGaAsPを用いることもできる。
【0051】
図8は利得結合型DFBレーザ製造における第2のクラッド層形成工程の説明図である。
分離層6の成長後は、引き続き同じMOVPE成長装置で、p型InP(キャリア濃度約5×1017cm−3,厚さ約150nm)を成長し、第2のクラッド層7を成長する。
【0052】
以降は通常の埋め込み半導体レーザの製造方法と同様に、メサストライプを形成し、埋め込み成長を行い、コンタクト層成長を行った後、電極形成、へき開、端面反射膜形成、素子分離などの工程を経て、半導体レーザを完成する。
【0053】
なお、上記の例では、InP系の利得結合型DFBレーザの製造について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。素子を構成する材料系は上記の例に示したもの以外のものに適当に変更することができ、その材料系に応じて製造条件(温度、雰囲気、時間など)も適当に変更することができる。また、回折格子の深さも、目的の回折格子の深さに応じ、ダミー層の回折格子構造の形状や活性層のエッチングする層数など、適当に設定することが可能である。
【0054】
また、以上の説明において、回折格子の形状は活性層内に凸部と凹部とが形成されている構造としたが、上記の回折格子の凹部に相当する部分の活性層を除去して貫通させた回折格子とし、これを分離層によって埋め込む構造とすることもできる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、活性層上のダミー層を回折格子構造にし、このダミー層を気相エッチングにより除去するとともに、その回折格子構造の形状を活性層に転写して回折格子を形成し、これを大気に曝すことなく、回折格子上に分離層を形成する。これにより、活性層へのダメージや不純物の付着が防止された、良好な特性と長期信頼性を有する半導体レーザを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体レーザの製造フローを示す図である。
【図2】利得結合型DFBレーザ製造における結晶成長工程の説明図である。
【図3】利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク形成工程の説明図である。
【図4】利得結合型DFBレーザ製造におけるダミー層の回折格子構造形成工程の説明図である。
【図5】利得結合型DFBレーザ製造におけるレジストマスク除去工程の説明図である。
【図6】利得結合型DFBレーザ製造における回折格子形成工程の説明図である。
【図7】利得結合型DFBレーザ製造における分離層形成工程の説明図である。
【図8】利得結合型DFBレーザ製造における第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【図9】利得結合型DFBレーザの構成例を示す図である。
【図10】従来の結晶成長工程である。
【図11】従来のレジストマスク形成工程である。
【図12】従来の回折格子形成工程である。
【図13】従来のレジストマスク除去工程である。
【図14】従来の分離層形成工程である。
【図15】従来の第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【図16】結晶成長工程である。
【図17】誘電体マスク形成工程である。
【図18】回折格子形成工程である。
【図19】分離層形成工程である。
【図20】誘電体マスク除去工程である。
【図21】第2のクラッド層形成工程の説明図である。
【符号の説明】
1 n型InP基板
2 第1のクラッド層
3 活性層
4 ダミー層
5 レジストマスク
6 分離層
7 第2のクラッド層
Claims (5)
- 一定波長の光を帰還発振するための回折格子状の活性層を有する半導体レーザの製造方法において、
活性層の上に、前記活性層を一時的に保護するとともに前記活性層への回折格子の形成に用いるダミー層を形成する工程と、
前記ダミー層の一部を選択的にエッチングして前記ダミー層を回折格子構造にする工程と、
気相エッチングによって前記ダミー層を除去するとともに、前記回折格子構造の形状を前記活性層に転写して前記活性層に前記回折格子を形成する工程と、
前記回折格子が形成された前記活性層を大気に曝すことなく、前記回折格子を埋め込む分離層を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体レーザの製造方法。 - 前記ダミー層は、その材質がInGaAsまたはInGaAsPであることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
- 前記ダミー層は、InP層とGaAs層との積層構造を有していることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
- 前記活性層の上に、前記活性層を一時的に保護するとともに前記活性層への前記回折格子の形成に用いる前記ダミー層を形成する工程においては、
前記ダミー層を、前記活性層に形成すべき前記回折格子の形状に応じた形状の前記回折格子構造を形成することのできる膜厚で形成することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。 - 前記気相エッチングは、組成にハロゲン元素を含む物質の熱分解で生じる活性種によってエッチングを行うことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
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