JP3678478B2 - 新規なフッ素化シリコーン樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック、金属、皮膚等の各種基体の表面に柔軟で強固で、しかも薄く均一な撥水撥油性保護膜を与える被膜剤、特に化粧料用被膜剤として有用な新規なフッ素化シリコーン樹脂及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコーンは従来から撥水性の被膜を与える被膜剤とし広範囲に利用されている。このシリコーンにフッ素置換基を導入することにより、さらに撥油性を付与しようとする試みもなされている。このような例として、ユニット(R)2SiO(但し、Rは有機基を表す。以下同様)及びユニット(R)3SiO1/2からなる高分子シリコーンやこれにユニットRSiO3/2及び/又はユニットSiO2を添加したシリコーン樹脂の側鎖又は末端にフッ素置換基を導入したものが挙げられる(特開昭64−83086号、特開平5−78491号、特開平6−135818号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のフッ素置換シリコーンの多くは二次元型(直鎖状)であり、三次元シリコーンであってもネットワーク構造 が有機基Rによって切断され、分子の連続性が低下するため、得られる撥水撥油性被膜は柔軟性はあるものの被膜強度が不十分で、被膜の耐久性に問題があった。ある程度の被膜強度を得るためには、SiO2ユニットの割合を増加させれば良いが、この方法でも限界がある上、あまりこのユニットの割合を増加させると、分子の可撓性が不足し、ひいては被膜の柔軟性が著しく低下するという欠点があった。また、厚く塗布してもある程度の被膜強度は得られるが、薄く均一に塗布した方が望ましいことは勿論である。
【0004】
なお、従来の代表的な三次元シリコーン樹脂のネットワーク構造を下式に示す。
【0005】
【化1】
【0006】
(但し、Rは互いに独立した有機基、またYは末端封鎖基を表す。)
従って本発明の課題は、各種基体上に柔軟で強固な撥水撥油性被膜を薄く均一に形成できる新規なフッ素化シリコーン樹脂及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは従来技術における以上のような事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、珪素原子−珪素原子間が有機鎖によって結合されたユニットと末端封鎖ユニットを主構成ユニットとするフッ素化シリコーン樹脂を被膜剤として用いれば、各種基体上に柔軟で強固な撥水撥油性被膜を薄く均一に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明のフッ素化シリコーン樹脂は、一般式(I):
Qn(SiO3/2)n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。)
で示されるユニットの少なくとも1種を主構成ユニットとし、末端が式(II):
(R1)3SiO1/2
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。)
で示されるユニット又は式(III):
(R2)3SiO1/2
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表す。)
で示されるユニットで封鎖され、封鎖末端に式(II)で示されるユニット及び式(III)で示されるユニットをそれぞれ少なくとも1つ有するフッ素化シリコーン樹脂である。
【0009】
また本発明の前記フッ素化シリコーン樹脂の製造方法は、一般式(IV):
Qn[Si(X)3]n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。Xは互いに同一でも異なっていてもよく、加水分解性の基を表す。)
で示される加水分解性珪素化合物を加水分解重縮合させた後、これに一般式(V):
(R1)3SiX
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物と、一般式(VI):
(R2)3SiX
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表し、またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物及び/又は一般式(VII):
(R2)3SiOSi(R2)3
(但し、R2は前記一般式(VI)のR2に同じ。)
で示される珪素化合物と、を末端封鎖剤として反応させて前記重縮合物の末端を封鎖することを特徴とするものである。
【0010】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
<フッ素化シリコーン樹脂>
本発明のフッ素化シリコーン樹脂は、基本的には前記一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットの少なくとも1種を主構成ユニットとし、末端を前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は前記一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットで封鎖したものであり、封鎖末端には式(II)で示されるユニット及び式(III)で示されるユニットをそれぞれ少なくとも1つ有するものであるが、更にこの構成分子中にSiO2ユニットを含有させることができる。この場合、SiO2ユニットの含有量はSiO2/Qn(SiO3/2)nモル比で(3/2)以下、特に(1/2)以下が好ましい。(R1)3SiO1/2ユニットのQn(SiO3/2)nユニット及びSiO2ユニットに対するモル比は特に制限されない。
【0011】
一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットにおいて、nは2、3又は4のいずれかであることが好ましい。
一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットにおいて、Qnの具体例としては、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基等の少なくとも1種が例示できる。
【0012】
また、上記6)の前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基として、好ましくは、上記1)〜5)の基の構造中にエーテル、チオエーテル、エステル、ケトン、アミド、イミド、アミン及びイミンからなる群のうちの少なくとも1種の官能基を含んだ基を挙げることができる。
【0013】
更に具体的なQnは、下記の通り例示される。なお、以下の式中、a、b、c、d、e、fは各々1以上の整数を表す。
Q2(2価の有機基):
【0014】
【化2】
−(CH2)a− …(1)、 −CH(CH3)−(CH2)a− …(2)、
−(CH2)a−C(C2H5)(CH3)− …(3)、 −C6H4− …(4)、
−(CH2)a−C6H4−(CH2Cl)− …(5)、
−CH(CH3)-C6H4-(CH2)a- …(6)、
−(CH2)a−S−(CH2)b- …(7)、 −(CH2)a-S-C6H4- …(8)、
−CH(CH3)−S−(CH2)a- …(9)
【0015】
【化3】
【0016】
Q3(3価の有機基):
【0017】
【化4】
【0018】
Q4(4価の有機基):
【0019】
【化5】
【0020】
本発明のフッ素化シリコーン樹脂の主構成ユニットは、この様な上記一般式(I)のユニットの少なくとも1種で構成されるが、本発明において、好ましくは、主構成ユニットは、一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入したユニット及び一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入したユニットで構成される。
【0021】
次に一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニットであるが、このユニットのR1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならないが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基より選ばれる基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0022】
また一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットであるが、このユニットのR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表すが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基より選ばれる基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基等が挙げられ、好ましくはアルキル基(置換されていない)が挙げられる。
【0023】
以上のようなユニットで構成される本発明のフッ素化シリコーン樹脂のネットワーク構造例を、Qnのnが2、すなわち2価の有機基の場合を例にして、下記に示す。
【0024】
【化6】
【0025】
(但し、化6中Q2は2価の有機基を表す。また、Zは前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットを表し、Zの少なくとも1つは式(II)で示されるユニットであり、更に少なくとも1つは式(III)で示されるユニットである。)
【0026】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造方法>
次に本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法について説明する。
本発明方法では、まず一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]nに水を添加し、加水分解重縮合を行う。この場合、必要に応じて珪素化合物Si(X)4 を混合し、前記珪素化合物(IV)との共加水分解重縮合を行ってもよい。水の添加量は、反応の進行を制御するため、用いた珪素化合物の加水分解性の基Xを加水分解させるのに必要な理論量以下の量が好ましい。
【0027】
この時、反応を均一に進行させるため有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒は反応に用いる珪素化合物を溶解できるものであればよく、特に限定されない。反応温度は0〜80℃が好ましい。低すぎると溶媒の凝固が起こったり、高すぎると溶媒の極端な蒸発が起こったりして反応の進行が不均一になる。
【0028】
また、反応の進行を促進するため、塩基及び/又は酸を触媒として用いることが好ましい。塩基及び/又は酸触媒の添加量は反応に用いる珪素化合物の5モル%以下が好ましい。
【0029】
この加水分解重縮合の反応式の一例を化7に、また得られる重縮合体のネットワーク構造の一例を化8に示す。
【0030】
【化7】
【0031】
(但し、化7中Q2は2価の有機基を表す。)
【0032】
【化8】
【0033】
(但し、化8中Q2は2価の有機基を表す。)
【0034】
以上の加水分解重縮合工程で使用される材料の詳細は次の通りである。
一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]n:
公知の珪素化合物の公知の有機反応によって合成される。例えばアミノ基を有するアルコキシシラン、クロロシラン[NH2C3H6Si(OR)3、NH2C3H6Cl3]等と酸クロライド、無水酸等の酸誘導体との反応;不飽和結合を有する化合物へのハイドロジェンシラン又はメルカプトシランの付加反応;アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物とグリニャール試薬又は有機リチウム化合物との反応などにより合成される。この一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]n中におけるQnについては、前述の一般式(I)でのQnと同様である。また、一般式(IV)中においてXは、加水分解性の基であれば特に制限されず、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
本発明の製造方法では、この加水分解性珪素化合物の少なくとも1種を原料として用いるが、好ましくは、加水分解性珪素化合物として、一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物及び一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物を組み合わせて用いる。
【0036】
珪素化合物Si(X)4:
樹脂の固さを調節するために添加する。添加量が多ければ樹脂は固くなり、少なければ柔らかくなる。上記一般式中のXは、加水分解性の基であれば特に制限されず、互いに同一であっても異なっていてもよい。この様な珪素化合物の具体例としては四塩化珪素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等、好ましくは四塩化珪素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。
【0037】
有機溶媒:
上記二種の珪素化合物、水、触媒などを溶解するものであれば特に限定されず、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;テトラヒドロキシフラン;ジメチルスルフォキシド等が挙げられる。
【0038】
塩基及び/又は酸触媒:
塩酸、硝酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、アンモニア水等の無機塩基;アミン、モルフォリン等の有機塩基;3−アミノアルコキシシランのような塩基性基含有シラン等、好ましくはアミノ置換基、4,5−ジヒドロイミダゾール置換基等の塩基性基含有シラン、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾール)プロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
次に、一定時間重縮合反応を行った後、得られた重縮合体の反応末端を封鎖して重縮合体を安定に取り出すため、末端封鎖剤として一般式(V)の珪素化合物(R1)3SiXと、一般式(VI)の珪素化合物(R2)3SiX及び/又は一般式(VII)の珪素化合物(R2)3SiOSi(R2)3と、を添加し反応させる。この時、末端封鎖剤の加水分解を促進して末端封鎖反応を進行しやすくするため、水及び酸触媒も合わせて添加する。水の添加量は特に限定されないが、添加した末端封鎖剤を加水分解するのに必要な理論量以上の量を添加することが望ましい。また酸触媒の添加量は一般式(V)、(VI)、(VII)の末端封鎖剤の合計量の2モル%以上が好ましい。
【0040】
またこの末端封鎖工程は、反応を均一に進行させるため攪拌条件下で行う。反応時間は4〜20時間が好ましい。反応終了後は重縮合体が相分離する場合はデカンテーションで、また相分離しない場合は溶媒留去、凍結乾燥などの方法によって目的物を取り出す。
【0041】
上記重縮合体と末端封鎖剤との反応で得られるフッ素化シリコーン樹脂のネットワーク構造における末端封鎖状況の一例を下記に示す。
【0042】
【化9】
【0043】
(但し、化9中Q2は2価の有機基を表す。また、Zは前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットを表し、Zの少なくとも1つは式(II)で示されるユニットであり、更に少なくとも1つは式(III)で示されるユニットである。)
【0044】
以上の末端封鎖工程で使用される材料の詳細は次の通りである。
一般式(V)の(R1)3SiX :
上記一般式(V)中、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならないが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基より選ばれる基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。また、上記一般式(V)中、Xは加水分解性の基であれば特に制限されないが、アルコキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシアルコキシ基等を好ましく挙げることができる。
【0045】
この様な化合物として具体的には、(CF3CH2)3Si(OCH3)、[CF3(CF2)2]2(CH3)SiCl、[CF3(CF2)5](CH3)2Si(OC2H5)、[CF3(CF2)3(CH2)2]2(C2H5)SiCl等が挙げられ、該当するフルオロアルキル基を有するグリニャール試薬又はリチウム塩と公知の珪素化合物との反応によって容易に合成できる。すなわち
【0046】
【化10】
(R)nSi(OR')4-n+mRfMgA→ (Rf)m(R)nSi(OR')4-n-m+mMg(OR')A
(R)nSiCl4-n+mRfMgA → (Rf)m(R)nSiCl4-n-m+mMgClA
(Rn)SiCl4-n+mRfLi → (Rf)m(R)nSiCl4-n-m+mLiCl
(但し、Rfはフルオロアルキル基、Rは炭化水素基、AはBr又はI、nは0〜2のいずれか、mは1〜3のいずれかを表す。)
【0047】
一般式(VI)の(R2)3SiX :
上記一般式(VI)中、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表すが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基より選ばれる基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基等が挙げられ、好ましくはアルキル基(置換されていない)が挙げられる。また、上記一般式(VI)中、Xは加水分解性の基であれば特に制限されないが、アルコキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシアルコキシ基等を好ましく挙げることができる。この様な化合物として具体的には、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
一般式(VII)の(R2)3SiOSi(R2)3:
上記一般式(VII)中のR2は、上記一般式(VI)中のR2と同様であり、この様な化合物として、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0049】
酸触媒:
具体的には塩酸、硝酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;好ましくは塩酸、硝酸、酢酸等の揮発性の酸が挙げられる。
【0050】
この様にして得られる本発明の三次元フッ素化シリコーン樹脂は、例えば化18に示すように、Qnで示される有機基が樹脂のネットワーク構造の一部となっているので、従来の三次元シリコーン樹脂が化1に示すように、R基によってネットワーク構造が寸断され分子の連続性が低いのに比べ、分子の連続性が向上しており、これにより柔軟で強固で均一な薄い被膜が得られる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
<フッ素化シリコーン樹脂>
まず、上記本発明のフッ素化シリコーン樹脂の具体例であるが、次のイ)〜ヲ)に示す様なフッ素化シリコーン樹脂を挙げることができる。
イ)[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0052】
ロ)[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は下記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ'2SiO3/2](但し、Q'2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0053】
【化11】
【0054】
ハ)[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は下記式(2a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0055】
【化12】
【0056】
ニ)[{CF3(CF2)3}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(C6H5)(CH3)2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(3a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0057】
【化13】
【0058】
ホ)[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C3H7)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(4a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0059】
【化14】
【0060】
ヘ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[{(CH3)3C}{CH3}2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(5a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0061】
【化15】
【0062】
ト)[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(6a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0063】
【化16】
【0064】
チ)[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(7a)で示される4価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0065】
【化17】
【0066】
リ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(8a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0067】
【化18】
【0068】
ヌ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2{C2H5}SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、下記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0069】
【化19】
【0070】
ル)[{CF3(CF2)7(CH2)2}{C2H5}2SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0071】
ヲ)[{CF3(CF2)5}{CH3}2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但しQ2は、前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[O3/2SiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0072】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造方法>
次に、本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造の具体例として、上記イ)に示すフッ素化シリコーン樹脂の製造例を示す。
(1)原料物質Cl3Si(CH2 )3SiCl3(一般式:Qn[Si(X)3]n)の合成
耐圧ビン型の反応容器にアリルトリクロロシラン70.2g、モノハイドロジェントリクロロシラン54.2gを採り混合する。次に、塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加して反応容器を80℃で4時間加熱した後、ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去してCl3Si(CH2)3SiCl3を透明液体として得る。
【0073】
(2)原料物質[CF3(CF2)2]3SiCl(一般式:(R1)3SiX)の合成
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.6gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合する。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロプロピルブロミド52.3gを溶解した溶液を滴下し、さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン100mlにテトラクロロシラン11.9gを溶解した溶液を滴下する。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させ、その後、生成した沈殿をろ別し、分留を行って[CF3(CF2)2]3SiClを単離する。なお、上記全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行うこととする。
【0074】
(3)本発明のフッ素化シリコーン樹脂の合成
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに、上記(1)で得られる加水分解性珪素化合物Cl3Si(CH2 )3SiCl3の64.0gとメチルエチルケトン150mlを採り取り、混合溶解する。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.0gをメチルエチルケトン50mlに溶解した溶液を添加し、その後、攪拌を続けながら40℃で30分間放置することで、前記Cl3Si(CH2 )3SiCl3の加水分解重縮合反応が行われる。
【0075】
この様にして得られる前記珪素化合物の加水分解重縮合物を含有する混合溶液に、この重縮合物の末端を封鎖する目的で、上記(2)で得られる[CF3(CF2)2]3SiClの57.0g、トリメチルクロロシラン43.4g、水40.5g、メチルエチルケトン100ml、濃塩酸1.3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら40℃で4時間放置する。反応終了後、系は二相に分離するので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥することで、重縮合物として、[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂を得る。
【0076】
【実施例】
以下に本発明を一般式(IV)の珪素化合物Qn[Si(X)3]nの製造例及び一般式(V)のフッ素置換型末端封鎖珪素化合物(R1)3SiXの製造例と共にフッ素化シリコーン樹脂の製造実施例によって説明する。
<Qn[Si(X)3]nの製造例>
【0077】
【製造例1】
耐圧ビン型の反応容器にアリルトリクロロシラン70.2g、モノハイドロジェントリクロロシラン54.2gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(1b)で表される化合物であることが確認された。
【0078】
【化20】
Cl3Si(CH2 )3SiCl3 ・・・(1b)
【0079】
【製造例2】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにテレフタル酸ジアリル49.3g、3−メルカプトトリメトキシシラン78.6g、ベンゼン450mlを採り、攪拌混合した。さらに、この溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン50mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(2b)で表される化合物であることが確認された。
【0080】
【化21】
【0081】
【製造例3】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにビニルトリメトキシシラン44.5g、3−メルカプトトリメトキシシラン58.9g、ベンゼン400mlを採り攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン50mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(3b)で表される化合物であることが確認された。
【0082】
【化22】
(CH3O)3Si(CH2)2S(CH2)3Si(OCH3)3 ・・・(3b)
【0083】
【製造例4】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリエトキシシラン110.7g、ジエチルエーテル400ml、トリエチルアミン100mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、3−ブテノイルクロライド45.3gをジエチルエーテル100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して粘性液体を得た。
【0084】
耐圧ビン型の反応容器に上記の液体82.7g、モノハイドロジェントリエトキシシラン49.3gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(4b)で表される化合物であることが確認された。
【0085】
【化23】
【0086】
【製造例5】
耐圧ビン型の反応容器にグリセリントリ10−ウンデセノエート177.3g、モノハイドロジェントリメトキシシラン110.0gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(5b)で表される化合物であることが確認された。
【0087】
【化24】
【0088】
【製造例6】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに1,2,4−トリビニルシクロヘキサン48.7g、3−メルカプトトリス(β−メトキシメトキシ)シラン257.8g、ベンゼン800mlを採り攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.8gをベンゼン100mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(6b)で表される化合物であることが確認された。
【0089】
【化25】
【0090】
【製造例7】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリクロロシラン57.9g、ジエチルエーテル320ml、トリエチルアミン80mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液にトリメゾイルクロライド26.8gをジエチルエーテル100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間を攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(7b)で表される化合物であることが確認された。
【0091】
【化26】
【0092】
【製造例8】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3,3’−ジアミノベンジジン64.3g、テトラヒドロフラン900ml、トリエチルアミン200mlを採り、氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、アクリロイルクロライド108.6gをテトラヒドロフラン400mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターで、テトラヒドロフラントリエチルアミンを除去して白色固体を得た。
【0093】
耐圧ビン型の反応容器に上記の固体86.1g、モノハイドロジェントリメトキシシラン97.8gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して白色固体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(8b)で表される化合物であることが確認された。
【0094】
【化27】
【0095】
【製造例9】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにペンタエリトリトールテトラメタクリレート81.7g、3−メルカプトトリエトキシシラン190.7g、ベンゼン800mlを採り、攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン100mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(9b)で表される化合物であることが確認された。
【0096】
【化28】
【0097】
【製造例10】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにグリセロール−1,3−ジアリルエーテル27.6g、テトラヒドロフラン200ml、トリエチルアミン50mlを採り、氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、アジポイルクロライド14.6gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して粘性液体を得た。
【0098】
耐圧ビン型の反応容器に上記の液体28.2g、モノハイドロジェントリクロロシシラン54.2gを採り混合した。次に、塩化白金酸H2PtCl6・6H2 Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(10b)で表される化合物であることが確認された。
【0099】
【化29】
【0100】
【製造例11】
還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリメトキシシラン107.6g、テトラヒドロフラン600ml、トリエチルアミン200mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、テレフタル酸クロリド60.9gをテトラヒドロフラン200mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフラン、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1 H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(11b)で表される化合物であることが確認された。
【0101】
【化30】
【0102】
【製造例12】
還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリクロロシシラン96.5g、ジエチルエーテル500ml、トリエチルアミン150mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、イソフタル酸クロリド50.8gをジエチルエーテル150mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1 H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が(12b)で表される化合物であることが確認された。
【0103】
【化31】
【0104】
<(R1)3SiXの製造例>
【0105】
【製造例13】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム8.7gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン150mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン200mlに2、2、2−トリフルオロエチルヨーダイド63.0gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン150mlにテトラメトキシシラン15.2gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(13b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0106】
【化32】
(CF3CH2)3Si(OCH3) ・・・(13b)
【0107】
【製造例14】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム3.0gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロヘキシルヨーダイド44.6gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン200mlにジメチルジエトキシシラン14.8gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行って式(14b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0108】
【化33】
[CF3(CF2)5](CH3)2Si(OC2H5) ・・・(14b)
【0109】
【製造例15】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.3g及びよう素0.05gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したジエチルエーテル500mlにパーフルオロブチルヨーダイド69.2g及びエチルトリメトキシラン15.0gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、攪拌を続けながら室温で2時間放置し反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。尚、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(15b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0110】
【化34】
[CF3(CF2)3 ]2(C2H5)Si(OCH3) ・・・(15b)
【0111】
【製造例16】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.6gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロプロピルブロミド52.3gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン100mlにテトラクロロシラン11.9gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(16b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0112】
【化35】
[CF3(CF2)2]3SiCl ・・・(16b)
【0113】
【製造例17】
乾燥窒素ガスで十分置換を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルリチウム50.8gを及び金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したジエチルエーテル400ml採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のジエチルエーテル100mlにエチルトリクロロシラン16.4gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌を続けた後、還流を8時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(17b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0114】
【化36】
[CF3(CF2)3(CH2)2]2(C2H5)SiCl ・・・(17b)
【0115】
【製造例18】
充分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグネシウム5.8gを採り、乾燥窒素ガスで充分置換を行った。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水生成したジエチルエーテル200mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に前述のジエチルエーテル300mlに1H,1H,2H,2Hヘプタデカフルオロデキシルヨーダイド114.8gを溶解した溶液を滴下した。さらに、攪拌を続けながら、氷零下で、前述のジエチルエーテル200mlにジエチルジメトキシシラン29.7gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後ジエチルエーテルの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って、目的の化合物を単離した。なお全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(18b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0116】
【化37】
[CF3(CF2)7(CH2)2][C2H5]2Si(OCH3) ・・・(18b)
<フッ素化シリコーン樹脂の製造実施例>
【0117】
【実施例1】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例1の珪素化合物64.0g、メチルエチルケトン150mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.0gをメチルエチルケトン50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら40℃で30分間放置した。この混合溶液に、製造例16の珪素化合物57.0g、トリメチルクロロシラン43.4g、水40.5g、メチルエチルケトン100ml、濃塩酸1.3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら40℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体は[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0118】
【実施例2】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例2の珪素化合物89.6g、製造例3の珪素化合物48.2g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.8gおよびエチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.1gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら25℃で4時間放置した。この混合溶液に製造例13の珪素化合物31.4g、トリメチルメトキシシシラン31.9g、水100.8g、前述の混合溶媒200ml、濃塩酸2.8mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら25℃で10時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ'2SiO3/2](但し、Q'2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0119】
【実施例3】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例4の珪素化合物44.0g、テトラメトキシシラン22.8g、3−(4,5−ジヒドロイミダゾール)プロピルトリエトキシシラン2.1gおよびイソプロピルアルコール400mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水10.1gをイソプロピルアルコール100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら60℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例14の珪素化合物101.4g、ヘキサエチルジシロキサン118.3g、イソプロピルアルコール200ml、濃硝酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら60℃で16時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、凍結乾燥により水を除去して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は前記式(2a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0120】
【実施例4】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例5の珪素化合物76.6g、トリエチルアミン0.45gおよびエチルセロソルブ300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水3.9gをエチルセロソルブ100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら5℃で2時間放置した。この混合溶液に、製造例15の珪素化合物126.3g、フェニルジメチルクロロシラン41.0g、水43.2g、エチルセロソルブ150ml、濃硝酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で8時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液、水で洗浄後再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(C6H5)(CH3)2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(3a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0121】
【実施例5】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例6の珪素化合物32.2g、テトラエトキシシラン2.8g、酢酸0.18gおよびジメチルスルフォキシド250mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水5.5gをジメチルスルフォキシド50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら60℃で6時間放置した。この混合溶液に、製造例14の珪素化合物11.4g、ヘキサプロピルジシロキサン40.2g、水13.4g、ジメチルスルフォキシド150ml、クエン酸4.0gからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら60℃で18時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、凍結乾燥により水を除去して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C3H7)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(4a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0122】
【実施例6】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例7の珪素化合物88.5g、テトラヒドロフラン500mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水15.6g及び濃アンモニア水1.5mlをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら10℃で1時間放置した。この混合溶液に製造例17の珪素化合物219.6g、tert−ブチルジメチルクロロシラン37.6g、水45.Og、テトラヒドロフラン300ml、酢酸5.0gからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら10℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[{(CH3)3C}{CH3}2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(5a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0123】
【実施例7】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例8の珪素化合物18.1g、製造例3の珪素化合物4.1g、テトラメトキシシラン0.9g、テトラヒドロフラン300ml及び3−アミノプロピルメトキシシラン0.6gを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水6.0gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で3時間放置した。この混合溶液に製造例13の珪素化合物59.7g、トリメチルメトキシシラン18.8g、水59.4g、テトラヒドロフラン250ml、濃塩酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(6a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0124】
【実施例8】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例9の珪素化合物98.1g、テトラエトキシシラン1.7g、イソプロピルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比7/3)700ml及びモルフォリン2.1gを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水3.1gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で4時間放置した。この混合溶液に製造例16の珪素化合物228.2g、トリメチルクロロシラン41.7g、水64.8g、前述の混合溶媒400ml、濃塩酸7.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(7a)で示される4価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0125】
【実施例9】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例10の珪素化合物82.4g、アセトン400mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水21.6gをアセトン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で1時間放置した。この混合溶液に、製造例17の珪素化合物117.3g、ヘキサメチルジシロキサン32.5g、水36.0g、アセトン200ml、濃塩酸7.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(8a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0126】
【実施例10】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例1の珪素化合物24.9g、製造例12の珪素化合物61.9g、テトラヒドロフラン250mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水16.2gをテトラヒドロフラン70mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で1時間放置した。この混合溶液に製造例17の珪素化合物176.0g、トリメチルクロロシラン91.1g、水24.3g、テトラヒドロフラン150ml、濃塩酸3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で8時間放置した。反応終了後水を少量加えると系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところこの重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2{C2H5}SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0127】
【実施例11】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例3の珪素化合物38.8g、製造例11の珪素化合物18.3g、3−アミノプロピルチリメトキシシラン1.1g、エチルアルコール100mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水8.2gをエチルアルコール40mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例18の珪素化合物152.3g、トリメチルメトキシシラン18.8g、水12.2g、エチルアルコール60ml、濃塩酸1.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で16時間放置した。反応終了後系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、5%炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄後、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところこの重縮合体が[{CF3(CF2)7(CH2)2}{C2H5}2SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0128】
【実施例12】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例2の珪素化合物57.5g、製造例11の珪素化合物14.7g、テトラメトキシシラン4.6g、3−アミノプロピルチリメトキシシラン0.3g、エチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)200mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水15.0gを前記の混合溶媒50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例14の珪素化合物228.1g、ヘキサエチルジシロキサン44.4g、水20.0g、前記の混合溶媒100ml、濃硝酸2.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後少量の水の添加で系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、5%炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄後、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}{CH3}2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但しQ2は、前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[O3/2SiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0129】
【比較例1】
<C4F9(CH2)2Si(OCH3)3の製造>
製造例13において、金属マグネシウム8.7gを2.9gに変え、且つ2,2,2−トリフルオロエチルヨーダイド63.0gの代わりに1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルヨーダイド37.4gを用いて同様にして目的化合物を調製した。
【0130】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造>
上記珪素化合物及び下記珪素化合物を用いて実施例2と同様な操作を行う。
すなわち、冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコにC4F9(CH2)2Si(OCH3)3の珪素化合物77.3g、Si(OCH3)4の珪素化合物13.7g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.8gおよびエチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水8.9gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら25℃で4時間放置した。この混合溶液に(CH3)3SiOCH3125.0g、水97.2g、前述の混合溶媒200ml、濃塩酸3.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら25℃で10時間放置した。以下、実施例2と同様に操作して[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[C4F9(CH2)2SiO3/2]及び[SiO2]のユニットからなるシリコーン樹脂を調製した。
【0131】
<被膜の性能試験>
以上のようにして得られた実施例及び比較例の各フッ素化シリコーン樹脂をテトラヒドロフランに溶解して10重量%濃度の溶液を調製した。この溶液を市販のスライドグラス上にスプレー法で塗布し、室温で12時間乾燥後、さらに60℃で12時間乾燥して被膜を形成した。
【0132】
次に、この被膜を流水下、スポンジで一定の強さで強く擦って被膜の撥水撥油性を観察した。その結果、実施例1〜12のシリコーン樹脂から得られた被膜は剥がれ難く、比較例1のシリコーン樹脂から得られた被膜に比べて長時間の撥水撥油性を示した。
【0133】
以上の試験により、本発明のシリコーン樹脂が従来型のシリコーン樹脂と比較して強固で柔軟な撥水撥油性被膜を与えることが証明された。
【0134】
【発明の効果】
本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法によれば、ネットワーク中の全ての珪素−珪素原子間に大部分が有機結合である三次元結合を生じさせ、分子の連続性及びフレキシビリティを向上させることができるので、このような方法で得られるフッ素化シリコーン樹脂を用いれば、プラスチック、金属、皮膚等の各種基体上に柔軟で強固な耐久性のある撥水撥油性被膜を薄く均一に形成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック、金属、皮膚等の各種基体の表面に柔軟で強固で、しかも薄く均一な撥水撥油性保護膜を与える被膜剤、特に化粧料用被膜剤として有用な新規なフッ素化シリコーン樹脂及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコーンは従来から撥水性の被膜を与える被膜剤とし広範囲に利用されている。このシリコーンにフッ素置換基を導入することにより、さらに撥油性を付与しようとする試みもなされている。このような例として、ユニット(R)2SiO(但し、Rは有機基を表す。以下同様)及びユニット(R)3SiO1/2からなる高分子シリコーンやこれにユニットRSiO3/2及び/又はユニットSiO2を添加したシリコーン樹脂の側鎖又は末端にフッ素置換基を導入したものが挙げられる(特開昭64−83086号、特開平5−78491号、特開平6−135818号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のフッ素置換シリコーンの多くは二次元型(直鎖状)であり、三次元シリコーンであってもネットワーク構造 が有機基Rによって切断され、分子の連続性が低下するため、得られる撥水撥油性被膜は柔軟性はあるものの被膜強度が不十分で、被膜の耐久性に問題があった。ある程度の被膜強度を得るためには、SiO2ユニットの割合を増加させれば良いが、この方法でも限界がある上、あまりこのユニットの割合を増加させると、分子の可撓性が不足し、ひいては被膜の柔軟性が著しく低下するという欠点があった。また、厚く塗布してもある程度の被膜強度は得られるが、薄く均一に塗布した方が望ましいことは勿論である。
【0004】
なお、従来の代表的な三次元シリコーン樹脂のネットワーク構造を下式に示す。
【0005】
【化1】
【0006】
(但し、Rは互いに独立した有機基、またYは末端封鎖基を表す。)
従って本発明の課題は、各種基体上に柔軟で強固な撥水撥油性被膜を薄く均一に形成できる新規なフッ素化シリコーン樹脂及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは従来技術における以上のような事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、珪素原子−珪素原子間が有機鎖によって結合されたユニットと末端封鎖ユニットを主構成ユニットとするフッ素化シリコーン樹脂を被膜剤として用いれば、各種基体上に柔軟で強固な撥水撥油性被膜を薄く均一に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明のフッ素化シリコーン樹脂は、一般式(I):
Qn(SiO3/2)n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。)
で示されるユニットの少なくとも1種を主構成ユニットとし、末端が式(II):
(R1)3SiO1/2
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。)
で示されるユニット又は式(III):
(R2)3SiO1/2
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表す。)
で示されるユニットで封鎖され、封鎖末端に式(II)で示されるユニット及び式(III)で示されるユニットをそれぞれ少なくとも1つ有するフッ素化シリコーン樹脂である。
【0009】
また本発明の前記フッ素化シリコーン樹脂の製造方法は、一般式(IV):
Qn[Si(X)3]n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。Xは互いに同一でも異なっていてもよく、加水分解性の基を表す。)
で示される加水分解性珪素化合物を加水分解重縮合させた後、これに一般式(V):
(R1)3SiX
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物と、一般式(VI):
(R2)3SiX
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表し、またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物及び/又は一般式(VII):
(R2)3SiOSi(R2)3
(但し、R2は前記一般式(VI)のR2に同じ。)
で示される珪素化合物と、を末端封鎖剤として反応させて前記重縮合物の末端を封鎖することを特徴とするものである。
【0010】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
<フッ素化シリコーン樹脂>
本発明のフッ素化シリコーン樹脂は、基本的には前記一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットの少なくとも1種を主構成ユニットとし、末端を前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は前記一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットで封鎖したものであり、封鎖末端には式(II)で示されるユニット及び式(III)で示されるユニットをそれぞれ少なくとも1つ有するものであるが、更にこの構成分子中にSiO2ユニットを含有させることができる。この場合、SiO2ユニットの含有量はSiO2/Qn(SiO3/2)nモル比で(3/2)以下、特に(1/2)以下が好ましい。(R1)3SiO1/2ユニットのQn(SiO3/2)nユニット及びSiO2ユニットに対するモル比は特に制限されない。
【0011】
一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットにおいて、nは2、3又は4のいずれかであることが好ましい。
一般式(I)のQn(SiO3/2)nユニットにおいて、Qnの具体例としては、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基等の少なくとも1種が例示できる。
【0012】
また、上記6)の前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基として、好ましくは、上記1)〜5)の基の構造中にエーテル、チオエーテル、エステル、ケトン、アミド、イミド、アミン及びイミンからなる群のうちの少なくとも1種の官能基を含んだ基を挙げることができる。
【0013】
更に具体的なQnは、下記の通り例示される。なお、以下の式中、a、b、c、d、e、fは各々1以上の整数を表す。
Q2(2価の有機基):
【0014】
【化2】
−(CH2)a− …(1)、 −CH(CH3)−(CH2)a− …(2)、
−(CH2)a−C(C2H5)(CH3)− …(3)、 −C6H4− …(4)、
−(CH2)a−C6H4−(CH2Cl)− …(5)、
−CH(CH3)-C6H4-(CH2)a- …(6)、
−(CH2)a−S−(CH2)b- …(7)、 −(CH2)a-S-C6H4- …(8)、
−CH(CH3)−S−(CH2)a- …(9)
【0015】
【化3】
【0016】
Q3(3価の有機基):
【0017】
【化4】
【0018】
Q4(4価の有機基):
【0019】
【化5】
【0020】
本発明のフッ素化シリコーン樹脂の主構成ユニットは、この様な上記一般式(I)のユニットの少なくとも1種で構成されるが、本発明において、好ましくは、主構成ユニットは、一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入したユニット及び一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入したユニットで構成される。
【0021】
次に一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニットであるが、このユニットのR1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならないが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基より選ばれる基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0022】
また一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットであるが、このユニットのR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表すが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基より選ばれる基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基等が挙げられ、好ましくはアルキル基(置換されていない)が挙げられる。
【0023】
以上のようなユニットで構成される本発明のフッ素化シリコーン樹脂のネットワーク構造例を、Qnのnが2、すなわち2価の有機基の場合を例にして、下記に示す。
【0024】
【化6】
【0025】
(但し、化6中Q2は2価の有機基を表す。また、Zは前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットを表し、Zの少なくとも1つは式(II)で示されるユニットであり、更に少なくとも1つは式(III)で示されるユニットである。)
【0026】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造方法>
次に本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法について説明する。
本発明方法では、まず一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]nに水を添加し、加水分解重縮合を行う。この場合、必要に応じて珪素化合物Si(X)4 を混合し、前記珪素化合物(IV)との共加水分解重縮合を行ってもよい。水の添加量は、反応の進行を制御するため、用いた珪素化合物の加水分解性の基Xを加水分解させるのに必要な理論量以下の量が好ましい。
【0027】
この時、反応を均一に進行させるため有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒は反応に用いる珪素化合物を溶解できるものであればよく、特に限定されない。反応温度は0〜80℃が好ましい。低すぎると溶媒の凝固が起こったり、高すぎると溶媒の極端な蒸発が起こったりして反応の進行が不均一になる。
【0028】
また、反応の進行を促進するため、塩基及び/又は酸を触媒として用いることが好ましい。塩基及び/又は酸触媒の添加量は反応に用いる珪素化合物の5モル%以下が好ましい。
【0029】
この加水分解重縮合の反応式の一例を化7に、また得られる重縮合体のネットワーク構造の一例を化8に示す。
【0030】
【化7】
【0031】
(但し、化7中Q2は2価の有機基を表す。)
【0032】
【化8】
【0033】
(但し、化8中Q2は2価の有機基を表す。)
【0034】
以上の加水分解重縮合工程で使用される材料の詳細は次の通りである。
一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]n:
公知の珪素化合物の公知の有機反応によって合成される。例えばアミノ基を有するアルコキシシラン、クロロシラン[NH2C3H6Si(OR)3、NH2C3H6Cl3]等と酸クロライド、無水酸等の酸誘導体との反応;不飽和結合を有する化合物へのハイドロジェンシラン又はメルカプトシランの付加反応;アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物とグリニャール試薬又は有機リチウム化合物との反応などにより合成される。この一般式(IV)の加水分解性珪素化合物Qn[Si(X)3]n中におけるQnについては、前述の一般式(I)でのQnと同様である。また、一般式(IV)中においてXは、加水分解性の基であれば特に制限されず、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
本発明の製造方法では、この加水分解性珪素化合物の少なくとも1種を原料として用いるが、好ましくは、加水分解性珪素化合物として、一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物及び一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物を組み合わせて用いる。
【0036】
珪素化合物Si(X)4:
樹脂の固さを調節するために添加する。添加量が多ければ樹脂は固くなり、少なければ柔らかくなる。上記一般式中のXは、加水分解性の基であれば特に制限されず、互いに同一であっても異なっていてもよい。この様な珪素化合物の具体例としては四塩化珪素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等、好ましくは四塩化珪素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。
【0037】
有機溶媒:
上記二種の珪素化合物、水、触媒などを溶解するものであれば特に限定されず、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;テトラヒドロキシフラン;ジメチルスルフォキシド等が挙げられる。
【0038】
塩基及び/又は酸触媒:
塩酸、硝酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、アンモニア水等の無機塩基;アミン、モルフォリン等の有機塩基;3−アミノアルコキシシランのような塩基性基含有シラン等、好ましくはアミノ置換基、4,5−ジヒドロイミダゾール置換基等の塩基性基含有シラン、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾール)プロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
次に、一定時間重縮合反応を行った後、得られた重縮合体の反応末端を封鎖して重縮合体を安定に取り出すため、末端封鎖剤として一般式(V)の珪素化合物(R1)3SiXと、一般式(VI)の珪素化合物(R2)3SiX及び/又は一般式(VII)の珪素化合物(R2)3SiOSi(R2)3と、を添加し反応させる。この時、末端封鎖剤の加水分解を促進して末端封鎖反応を進行しやすくするため、水及び酸触媒も合わせて添加する。水の添加量は特に限定されないが、添加した末端封鎖剤を加水分解するのに必要な理論量以上の量を添加することが望ましい。また酸触媒の添加量は一般式(V)、(VI)、(VII)の末端封鎖剤の合計量の2モル%以上が好ましい。
【0040】
またこの末端封鎖工程は、反応を均一に進行させるため攪拌条件下で行う。反応時間は4〜20時間が好ましい。反応終了後は重縮合体が相分離する場合はデカンテーションで、また相分離しない場合は溶媒留去、凍結乾燥などの方法によって目的物を取り出す。
【0041】
上記重縮合体と末端封鎖剤との反応で得られるフッ素化シリコーン樹脂のネットワーク構造における末端封鎖状況の一例を下記に示す。
【0042】
【化9】
【0043】
(但し、化9中Q2は2価の有機基を表す。また、Zは前記一般式(II)の(R1)3SiO1/2ユニット又は一般式(III)の(R2)3SiO1/2ユニットを表し、Zの少なくとも1つは式(II)で示されるユニットであり、更に少なくとも1つは式(III)で示されるユニットである。)
【0044】
以上の末端封鎖工程で使用される材料の詳細は次の通りである。
一般式(V)の(R1)3SiX :
上記一般式(V)中、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならないが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基より選ばれる基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。また、上記一般式(V)中、Xは加水分解性の基であれば特に制限されないが、アルコキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシアルコキシ基等を好ましく挙げることができる。
【0045】
この様な化合物として具体的には、(CF3CH2)3Si(OCH3)、[CF3(CF2)2]2(CH3)SiCl、[CF3(CF2)5](CH3)2Si(OC2H5)、[CF3(CF2)3(CH2)2]2(C2H5)SiCl等が挙げられ、該当するフルオロアルキル基を有するグリニャール試薬又はリチウム塩と公知の珪素化合物との反応によって容易に合成できる。すなわち
【0046】
【化10】
(R)nSi(OR')4-n+mRfMgA→ (Rf)m(R)nSi(OR')4-n-m+mMg(OR')A
(R)nSiCl4-n+mRfMgA → (Rf)m(R)nSiCl4-n-m+mMgClA
(Rn)SiCl4-n+mRfLi → (Rf)m(R)nSiCl4-n-m+mLiCl
(但し、Rfはフルオロアルキル基、Rは炭化水素基、AはBr又はI、nは0〜2のいずれか、mは1〜3のいずれかを表す。)
【0047】
一般式(VI)の(R2)3SiX :
上記一般式(VI)中、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表すが、好ましくは、アルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基より選ばれる基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;フェニル基;アリール基;又は、これらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基等が挙げられ、好ましくはアルキル基(置換されていない)が挙げられる。また、上記一般式(VI)中、Xは加水分解性の基であれば特に制限されないが、アルコキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシアルコキシ基等を好ましく挙げることができる。この様な化合物として具体的には、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
一般式(VII)の(R2)3SiOSi(R2)3:
上記一般式(VII)中のR2は、上記一般式(VI)中のR2と同様であり、この様な化合物として、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0049】
酸触媒:
具体的には塩酸、硝酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;好ましくは塩酸、硝酸、酢酸等の揮発性の酸が挙げられる。
【0050】
この様にして得られる本発明の三次元フッ素化シリコーン樹脂は、例えば化18に示すように、Qnで示される有機基が樹脂のネットワーク構造の一部となっているので、従来の三次元シリコーン樹脂が化1に示すように、R基によってネットワーク構造が寸断され分子の連続性が低いのに比べ、分子の連続性が向上しており、これにより柔軟で強固で均一な薄い被膜が得られる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
<フッ素化シリコーン樹脂>
まず、上記本発明のフッ素化シリコーン樹脂の具体例であるが、次のイ)〜ヲ)に示す様なフッ素化シリコーン樹脂を挙げることができる。
イ)[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0052】
ロ)[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は下記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ'2SiO3/2](但し、Q'2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0053】
【化11】
【0054】
ハ)[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は下記式(2a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0055】
【化12】
【0056】
ニ)[{CF3(CF2)3}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(C6H5)(CH3)2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(3a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0057】
【化13】
【0058】
ホ)[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C3H7)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(4a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0059】
【化14】
【0060】
ヘ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[{(CH3)3C}{CH3}2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は下記式(5a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0061】
【化15】
【0062】
ト)[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(6a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0063】
【化16】
【0064】
チ)[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(7a)で示される4価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0065】
【化17】
【0066】
リ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は下記式(8a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0067】
【化18】
【0068】
ヌ)[{CF3(CF2)3(CH2)2}2{C2H5}SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、下記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0069】
【化19】
【0070】
ル)[{CF3(CF2)7(CH2)2}{C2H5}2SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0071】
ヲ)[{CF3(CF2)5}{CH3}2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但しQ2は、前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[O3/2SiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂。
【0072】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造方法>
次に、本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造の具体例として、上記イ)に示すフッ素化シリコーン樹脂の製造例を示す。
(1)原料物質Cl3Si(CH2 )3SiCl3(一般式:Qn[Si(X)3]n)の合成
耐圧ビン型の反応容器にアリルトリクロロシラン70.2g、モノハイドロジェントリクロロシラン54.2gを採り混合する。次に、塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加して反応容器を80℃で4時間加熱した後、ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去してCl3Si(CH2)3SiCl3を透明液体として得る。
【0073】
(2)原料物質[CF3(CF2)2]3SiCl(一般式:(R1)3SiX)の合成
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.6gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合する。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロプロピルブロミド52.3gを溶解した溶液を滴下し、さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン100mlにテトラクロロシラン11.9gを溶解した溶液を滴下する。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させ、その後、生成した沈殿をろ別し、分留を行って[CF3(CF2)2]3SiClを単離する。なお、上記全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行うこととする。
【0074】
(3)本発明のフッ素化シリコーン樹脂の合成
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに、上記(1)で得られる加水分解性珪素化合物Cl3Si(CH2 )3SiCl3の64.0gとメチルエチルケトン150mlを採り取り、混合溶解する。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.0gをメチルエチルケトン50mlに溶解した溶液を添加し、その後、攪拌を続けながら40℃で30分間放置することで、前記Cl3Si(CH2 )3SiCl3の加水分解重縮合反応が行われる。
【0075】
この様にして得られる前記珪素化合物の加水分解重縮合物を含有する混合溶液に、この重縮合物の末端を封鎖する目的で、上記(2)で得られる[CF3(CF2)2]3SiClの57.0g、トリメチルクロロシラン43.4g、水40.5g、メチルエチルケトン100ml、濃塩酸1.3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら40℃で4時間放置する。反応終了後、系は二相に分離するので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥することで、重縮合物として、[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂を得る。
【0076】
【実施例】
以下に本発明を一般式(IV)の珪素化合物Qn[Si(X)3]nの製造例及び一般式(V)のフッ素置換型末端封鎖珪素化合物(R1)3SiXの製造例と共にフッ素化シリコーン樹脂の製造実施例によって説明する。
<Qn[Si(X)3]nの製造例>
【0077】
【製造例1】
耐圧ビン型の反応容器にアリルトリクロロシラン70.2g、モノハイドロジェントリクロロシラン54.2gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(1b)で表される化合物であることが確認された。
【0078】
【化20】
Cl3Si(CH2 )3SiCl3 ・・・(1b)
【0079】
【製造例2】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにテレフタル酸ジアリル49.3g、3−メルカプトトリメトキシシラン78.6g、ベンゼン450mlを採り、攪拌混合した。さらに、この溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン50mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(2b)で表される化合物であることが確認された。
【0080】
【化21】
【0081】
【製造例3】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにビニルトリメトキシシラン44.5g、3−メルカプトトリメトキシシラン58.9g、ベンゼン400mlを採り攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン50mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(3b)で表される化合物であることが確認された。
【0082】
【化22】
(CH3O)3Si(CH2)2S(CH2)3Si(OCH3)3 ・・・(3b)
【0083】
【製造例4】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリエトキシシラン110.7g、ジエチルエーテル400ml、トリエチルアミン100mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、3−ブテノイルクロライド45.3gをジエチルエーテル100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して粘性液体を得た。
【0084】
耐圧ビン型の反応容器に上記の液体82.7g、モノハイドロジェントリエトキシシラン49.3gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(4b)で表される化合物であることが確認された。
【0085】
【化23】
【0086】
【製造例5】
耐圧ビン型の反応容器にグリセリントリ10−ウンデセノエート177.3g、モノハイドロジェントリメトキシシラン110.0gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(5b)で表される化合物であることが確認された。
【0087】
【化24】
【0088】
【製造例6】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに1,2,4−トリビニルシクロヘキサン48.7g、3−メルカプトトリス(β−メトキシメトキシ)シラン257.8g、ベンゼン800mlを採り攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.8gをベンゼン100mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(6b)で表される化合物であることが確認された。
【0089】
【化25】
【0090】
【製造例7】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリクロロシラン57.9g、ジエチルエーテル320ml、トリエチルアミン80mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液にトリメゾイルクロライド26.8gをジエチルエーテル100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間を攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(7b)で表される化合物であることが確認された。
【0091】
【化26】
【0092】
【製造例8】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに3,3’−ジアミノベンジジン64.3g、テトラヒドロフラン900ml、トリエチルアミン200mlを採り、氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、アクリロイルクロライド108.6gをテトラヒドロフラン400mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターで、テトラヒドロフラントリエチルアミンを除去して白色固体を得た。
【0093】
耐圧ビン型の反応容器に上記の固体86.1g、モノハイドロジェントリメトキシシラン97.8gを採り混合した。次に塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。ろ過、分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して白色固体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(8b)で表される化合物であることが確認された。
【0094】
【化27】
【0095】
【製造例9】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにペンタエリトリトールテトラメタクリレート81.7g、3−メルカプトトリエトキシシラン190.7g、ベンゼン800mlを採り、攪拌混合した。さらにこの溶液に、アゾビスイソブチロニトリル0.5gをベンゼン100mlに溶解した溶液を添加し、攪拌混合した。攪拌を続けながら、室温で乾燥窒素ガスによるバブリングを1時間行った後、加熱してベンゼンの沸点で24時間還流を行って反応を完結させた。ロータリーエバポレーターでベンゼンを除去して粘性液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(9b)で表される化合物であることが確認された。
【0096】
【化28】
【0097】
【製造例10】
還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコにグリセロール−1,3−ジアリルエーテル27.6g、テトラヒドロフラン200ml、トリエチルアミン50mlを採り、氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、アジポイルクロライド14.6gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して粘性液体を得た。
【0098】
耐圧ビン型の反応容器に上記の液体28.2g、モノハイドロジェントリクロロシシラン54.2gを採り混合した。次に、塩化白金酸H2PtCl6・6H2 Oをテトラヒドロフラン中で加熱し、白金0.2ミリモルに相当するこの溶液を前述の混合溶液に添加した後、反応容器を80℃で4時間加熱した。分留を行ってテトラヒドロフラン、塩化白金酸を除去して透明液体を得た。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この液体が式(10b)で表される化合物であることが確認された。
【0099】
【化29】
【0100】
【製造例11】
還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリメトキシシラン107.6g、テトラヒドロフラン600ml、トリエチルアミン200mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、テレフタル酸クロリド60.9gをテトラヒドロフラン200mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフラン、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1 H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が式(11b)で表される化合物であることが確認された。
【0101】
【化30】
【0102】
【製造例12】
還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに3−アミノプロピルトリクロロシシラン96.5g、ジエチルエーテル500ml、トリエチルアミン150mlを採り氷冷しつつ攪拌混合した。さらに、氷冷攪拌を続けながらこの溶液に、イソフタル酸クロリド50.8gをジエチルエーテル150mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後さらに1時間攪拌を続けた。生成した白色沈殿をろ別した後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテル、トリエチルアミンを除去して白色固体を得た。IR、1 H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この固体が(12b)で表される化合物であることが確認された。
【0103】
【化31】
【0104】
<(R1)3SiXの製造例>
【0105】
【製造例13】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム8.7gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン150mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン200mlに2、2、2−トリフルオロエチルヨーダイド63.0gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン150mlにテトラメトキシシラン15.2gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(13b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0106】
【化32】
(CF3CH2)3Si(OCH3) ・・・(13b)
【0107】
【製造例14】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム3.0gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロヘキシルヨーダイド44.6gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン200mlにジメチルジエトキシシラン14.8gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行って式(14b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0108】
【化33】
[CF3(CF2)5](CH3)2Si(OC2H5) ・・・(14b)
【0109】
【製造例15】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.3g及びよう素0.05gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したジエチルエーテル500mlにパーフルオロブチルヨーダイド69.2g及びエチルトリメトキシラン15.0gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、攪拌を続けながら室温で2時間放置し反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。尚、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(15b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0110】
【化34】
[CF3(CF2)3 ]2(C2H5)Si(OCH3) ・・・(15b)
【0111】
【製造例16】
十分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグシウム5.6gを採り、乾燥窒素ガスで十分置換を行う。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したテトラヒドロフラン100mlを採り、攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のテトラヒドロフラン300mlにパーフルオロプロピルブロミド52.3gを溶解した溶液を滴下した。さらに攪拌を続けながら、氷冷下で、前述のテトラヒドロフラン100mlにテトラクロロシラン11.9gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフランの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(16b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0112】
【化35】
[CF3(CF2)2]3SiCl ・・・(16b)
【0113】
【製造例17】
乾燥窒素ガスで十分置換を行った還流冷却器、攪拌装置及びガス導入管付き三つ口フラスコに1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルリチウム50.8gを及び金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水精製したジエチルエーテル400ml採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に、前述のジエチルエーテル100mlにエチルトリクロロシラン16.4gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌を続けた後、還流を8時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って目的化合物を単離した。なお、全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(17b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0114】
【化36】
[CF3(CF2)3(CH2)2]2(C2H5)SiCl ・・・(17b)
【0115】
【製造例18】
充分に乾燥を行った還流冷却器、攪拌装置およびガス導入管付き三つ口フラスコに金属マグネシウム5.8gを採り、乾燥窒素ガスで充分置換を行った。さらに、この反応容器に金属ナトリウムによる還流と蒸留とによって脱水生成したジエチルエーテル200mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、この溶液に前述のジエチルエーテル300mlに1H,1H,2H,2Hヘプタデカフルオロデキシルヨーダイド114.8gを溶解した溶液を滴下した。さらに、攪拌を続けながら、氷零下で、前述のジエチルエーテル200mlにジエチルジメトキシシラン29.7gを溶解した溶液を滴下した。滴下終了後ジエチルエーテルの沸点で還流を24時間行って反応を完結させた。生成した沈殿をろ別後、分留を行って、目的の化合物を単離した。なお全ての操作は乾燥窒素ガス気流下で行った。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、式(18b)で表される目的化合物が単離されていることを確認した。
【0116】
【化37】
[CF3(CF2)7(CH2)2][C2H5]2Si(OCH3) ・・・(18b)
<フッ素化シリコーン樹脂の製造実施例>
【0117】
【実施例1】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例1の珪素化合物64.0g、メチルエチルケトン150mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.0gをメチルエチルケトン50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら40℃で30分間放置した。この混合溶液に、製造例16の珪素化合物57.0g、トリメチルクロロシラン43.4g、水40.5g、メチルエチルケトン100ml、濃塩酸1.3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら40℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体は[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0118】
【実施例2】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例2の珪素化合物89.6g、製造例3の珪素化合物48.2g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.8gおよびエチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水9.1gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら25℃で4時間放置した。この混合溶液に製造例13の珪素化合物31.4g、トリメチルメトキシシシラン31.9g、水100.8g、前述の混合溶媒200ml、濃塩酸2.8mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら25℃で10時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[O3/2SiQ'2SiO3/2](但し、Q'2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0119】
【実施例3】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例4の珪素化合物44.0g、テトラメトキシシラン22.8g、3−(4,5−ジヒドロイミダゾール)プロピルトリエトキシシラン2.1gおよびイソプロピルアルコール400mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水10.1gをイソプロピルアルコール100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら60℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例14の珪素化合物101.4g、ヘキサエチルジシロキサン118.3g、イソプロピルアルコール200ml、濃硝酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら60℃で16時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、凍結乾燥により水を除去して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は前記式(2a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0120】
【実施例4】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例5の珪素化合物76.6g、トリエチルアミン0.45gおよびエチルセロソルブ300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水3.9gをエチルセロソルブ100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら5℃で2時間放置した。この混合溶液に、製造例15の珪素化合物126.3g、フェニルジメチルクロロシラン41.0g、水43.2g、エチルセロソルブ150ml、濃硝酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で8時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液、水で洗浄後再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(C6H5)(CH3)2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(3a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0121】
【実施例5】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例6の珪素化合物32.2g、テトラエトキシシラン2.8g、酢酸0.18gおよびジメチルスルフォキシド250mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水5.5gをジメチルスルフォキシド50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら60℃で6時間放置した。この混合溶液に、製造例14の珪素化合物11.4g、ヘキサプロピルジシロキサン40.2g、水13.4g、ジメチルスルフォキシド150ml、クエン酸4.0gからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら60℃で18時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、凍結乾燥により水を除去して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}(CH3)2SiO1/2]のユニット、[(C3H7)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(4a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0122】
【実施例6】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例7の珪素化合物88.5g、テトラヒドロフラン500mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水15.6g及び濃アンモニア水1.5mlをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら10℃で1時間放置した。この混合溶液に製造例17の珪素化合物219.6g、tert−ブチルジメチルクロロシラン37.6g、水45.Og、テトラヒドロフラン300ml、酢酸5.0gからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら10℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[{(CH3)3C}{CH3}2SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)3Q3](但し、Q3は前記式(5a)で示される3価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0123】
【実施例7】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例8の珪素化合物18.1g、製造例3の珪素化合物4.1g、テトラメトキシシラン0.9g、テトラヒドロフラン300ml及び3−アミノプロピルメトキシシラン0.6gを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水6.0gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で3時間放置した。この混合溶液に製造例13の珪素化合物59.7g、トリメチルメトキシシラン18.8g、水59.4g、テトラヒドロフラン250ml、濃塩酸3.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[(CF3CH2)3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[SiO2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(6a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0124】
【実施例8】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例9の珪素化合物98.1g、テトラエトキシシラン1.7g、イソプロピルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比7/3)700ml及びモルフォリン2.1gを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水3.1gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で4時間放置した。この混合溶液に製造例16の珪素化合物228.2g、トリメチルクロロシラン41.7g、水64.8g、前述の混合溶媒400ml、濃塩酸7.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)2}3SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(7a)で示される4価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0125】
【実施例9】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例10の珪素化合物82.4g、アセトン400mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水21.6gをアセトン100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら20℃で1時間放置した。この混合溶液に、製造例17の珪素化合物117.3g、ヘキサメチルジシロキサン32.5g、水36.0g、アセトン200ml、濃塩酸7.0mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で4時間放置した。反応終了後、系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、さらに5%炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄後、再びデカンテーションにより水を除去し、80℃で一昼夜乾燥して重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2(C2H5)SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット及び[(O3/2Si)4Q4](但し、Q4は前記式(8a)で示される4価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0126】
【実施例10】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例1の珪素化合物24.9g、製造例12の珪素化合物61.9g、テトラヒドロフラン250mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水16.2gをテトラヒドロフラン70mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で1時間放置した。この混合溶液に製造例17の珪素化合物176.0g、トリメチルクロロシラン91.1g、水24.3g、テトラヒドロフラン150ml、濃塩酸3mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で8時間放置した。反応終了後水を少量加えると系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところこの重縮合体が[{CF3(CF2)3(CH2)2}2{C2H5}SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0127】
【実施例11】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例3の珪素化合物38.8g、製造例11の珪素化合物18.3g、3−アミノプロピルチリメトキシシラン1.1g、エチルアルコール100mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水8.2gをエチルアルコール40mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例18の珪素化合物152.3g、トリメチルメトキシシラン18.8g、水12.2g、エチルアルコール60ml、濃塩酸1.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で16時間放置した。反応終了後系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、5%炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄後、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、13C−NMR、1H−NMR、29Si−NMR測定を行ったところこの重縮合体が[{CF3(CF2)7(CH2)2}{C2H5}2SiO1/2]のユニット、[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[3/2OSiQ2SiO3/2](但し、Q2は−(CH2)2S(CH2)3−を表す。)のユニット及び[3/2OSiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0128】
【実施例12】
冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコに製造例2の珪素化合物57.5g、製造例11の珪素化合物14.7g、テトラメトキシシラン4.6g、3−アミノプロピルチリメトキシシラン0.3g、エチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)200mlを採り混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水15.0gを前記の混合溶媒50mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後攪拌を続けながら20℃で2時間放置した。この混合溶液に製造例14の珪素化合物228.1g、ヘキサエチルジシロキサン44.4g、水20.0g、前記の混合溶媒100ml、濃硝酸2.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら20℃で12時間放置した。反応終了後少量の水の添加で系は二相に分離したので、デカンテーションにより溶媒相を除去し、5%炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄後、ロータリーエバポレーターで残存する揮発成分を除去し、重縮合物を単離した。IR、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR測定を行ったところ、この重縮合体が[{CF3(CF2)5}{CH3}2SiO1/2]のユニット、[(C2H5)3SiO1/2]のユニット、[O3/2SiQ2SiO3/2](但しQ2は、前記式(1a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット、[O3/2SiQ2'SiO3/2](但しQ2'は、前記式(9a)で示される2価の有機基を表す。)のユニット及び[SiO2]のユニットからなるフッ素化シリコーン樹脂であることが確認された。
【0129】
【比較例1】
<C4F9(CH2)2Si(OCH3)3の製造>
製造例13において、金属マグネシウム8.7gを2.9gに変え、且つ2,2,2−トリフルオロエチルヨーダイド63.0gの代わりに1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルヨーダイド37.4gを用いて同様にして目的化合物を調製した。
【0130】
<フッ素化シリコーン樹脂の製造>
上記珪素化合物及び下記珪素化合物を用いて実施例2と同様な操作を行う。
すなわち、冷却器、攪拌装置付き三つ口フラスコにC4F9(CH2)2Si(OCH3)3の珪素化合物77.3g、Si(OCH3)4の珪素化合物13.7g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.8gおよびエチルアルコール/テトラヒドロフラン混合溶媒(重量比で7/3)300mlを採り、混合溶解した。攪拌を続けながらこの溶液に、水8.9gを前述の混合溶媒100mlに溶解した溶液を添加した。添加終了後、攪拌を続けながら25℃で4時間放置した。この混合溶液に(CH3)3SiOCH3125.0g、水97.2g、前述の混合溶媒200ml、濃塩酸3.5mlからなる溶液を添加し、攪拌をさらに続けながら25℃で10時間放置した。以下、実施例2と同様に操作して[(CH3)3SiO1/2]のユニット、[C4F9(CH2)2SiO3/2]及び[SiO2]のユニットからなるシリコーン樹脂を調製した。
【0131】
<被膜の性能試験>
以上のようにして得られた実施例及び比較例の各フッ素化シリコーン樹脂をテトラヒドロフランに溶解して10重量%濃度の溶液を調製した。この溶液を市販のスライドグラス上にスプレー法で塗布し、室温で12時間乾燥後、さらに60℃で12時間乾燥して被膜を形成した。
【0132】
次に、この被膜を流水下、スポンジで一定の強さで強く擦って被膜の撥水撥油性を観察した。その結果、実施例1〜12のシリコーン樹脂から得られた被膜は剥がれ難く、比較例1のシリコーン樹脂から得られた被膜に比べて長時間の撥水撥油性を示した。
【0133】
以上の試験により、本発明のシリコーン樹脂が従来型のシリコーン樹脂と比較して強固で柔軟な撥水撥油性被膜を与えることが証明された。
【0134】
【発明の効果】
本発明のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法によれば、ネットワーク中の全ての珪素−珪素原子間に大部分が有機結合である三次元結合を生じさせ、分子の連続性及びフレキシビリティを向上させることができるので、このような方法で得られるフッ素化シリコーン樹脂を用いれば、プラスチック、金属、皮膚等の各種基体上に柔軟で強固な耐久性のある撥水撥油性被膜を薄く均一に形成することができる。
Claims (19)
- 一般式(I):
Qn(SiO3/2)n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。)
で示されるユニットの少なくとも1種を主構成ユニットとし、末端が式(II):
(R1)3SiO1/2
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。)
で示されるユニット又は式(III):
(R2)3SiO1/2
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表す。)
で示されるユニットで封鎖され、封鎖末端に式(II)で示されるユニット及び式(III)で示されるユニットをそれぞれ少なくとも1つ有するフッ素化シリコーン樹脂。 - 更にSiO2ユニットがSiO2/Qn(SiO3/2)nモル比で(3/2)以下含まれる請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 一般式(I)のnが2、3、4のいずれかである請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 一般式(I)におけるQnが、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基;よりなる群の1種である請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 一般式(I)におけるQnが、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中にエーテル、チオエーテル、エステル、ケトン、アミド、イミド、アミン及びイミンからなる群のうちの少なくとも1種の官能基を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基;よりなる群の1種である請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 主構成ユニットが、一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入したユニット及び一般式(I)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入したユニットからなる請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 一般式(II)のR1がアルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基よりなる群の1種である請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂。
- 一般式(III)のR2がアルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基よりなる群の1種である請求項1記載のシリコーン樹脂。
- 一般式(IV):
Qn[Si(X)3]n
(但し、Qnはn価の有機基を表し、またnは2〜6の整数のいずれか1つを表す。Xは互いに同一でも異なっていてもよく、加水分解性の基を表す。)
で示される加水分解性珪素化合物を加水分解重縮合させた後、これに一般式(V):
(R1)3SiX
(但し、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、且つ三つのR1の内、少なくとも一つは前記フッ素置換炭化水素基でなければならない。またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物と、一般式(VI):
(R2)3SiX
(但し、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭化水素基、又は水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された炭化水素基を表し、またXは加水分解性の基を表す。)
で示される珪素化合物及び/又は一般式(VII):
(R2)3SiOSi(R2)3
(但し、R2は前記一般式(VI)のR2に同じ。)
で示される珪素化合物と、を末端封鎖剤として反応させて前記重縮合物の末端を封鎖することを特徴とする請求項1記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。 - 重縮合工程で更にSi(X)4(但し、Xは前記一般式(IV)のXに同じ。)が添加される請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(IV)のnが2、3、4のいずれかである請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(IV)におけるQnが、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中に他の置換基と結合しても多重の結合をしてもよい酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群のうちの少なくとも1種を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基;よりなる群の1種である請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(IV)におけるQnが、1)アルキレン基;2)ポリメチレン基;3)フェニレン基;4)アリーレン基;5)前記1)〜4)の基の水素原子の少なくとも一部が更にアルキル基、フェニル基、アリール基、アルキレン基、ポリメチレン基、フェニレン基及びアリーレン基からなる群のうちの少なくとも1種で置換された基;6)前記1)〜5)の基の構造中にエーテル、チオエーテル、エステル、ケトン、アミド、イミド、アミン及びイミンからなる群のうちの少なくとも1種の官能基を含んだ基;及び7)前記1)〜6)の基の水素原子が塩素原子又は臭素原子で置換された基;よりなる群の1種である請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 加水分解性珪素化合物が、一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物及び一般式(IV)にQnとしてジカルボン酸のジアミドを含む2価の有機基以外の2価の有機基を導入した加水分解性珪素化合物からなる請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(V)のR1がアルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基よりなる群の1種である請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(VI)及び(VII)のR2がアルキル基、フェニル基、アリール基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子又は臭素原子で置換された基よりなる群の1種である請求項9記載のシリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(V)のXがアルコキシ基、ハロゲン原子及びアルコキシアルコキシ基よりなる群の1種である請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(VI)のXがアルコキシ基、ハロゲン原子及びアルコキシアルコキシ基よりなる群の1種である請求項9記載のシリコーン樹脂の製造方法。
- 一般式(IV)の珪素化合物を、この化合物の加水分解性の基を完全に加水分解するのに必要な理論量以下の水と、前記珪素化合物の5モル%以下の量のアミノ置換基又は4,5−ジヒドロイミダゾール置換基を有するシランの存在下で加水分解重縮合することを特徴とする請求項9記載のフッ素化シリコーン樹脂の製造方法。
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