JP3678280B2 - 複合構造を有する高塩水吸収性繊維及びその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は両イオン性側鎖基を有するビニル系共重合体(I)の架橋体と補強重合体(II)からなる、複合構造を有する高塩水吸収性繊維に関する。この繊維は海水等の電解質を高濃度で含有する水溶液を吸収するのに有用である。また、複合構造を有するために優れた繊維物性を有しており、その加工性を利用して種々の用途への応用が容易に行えるという利点をも併せ持っている。
【0002】
【従来の技術】
自重の数百倍もの水分を吸収する吸水性樹脂は紙おむつや生理用品等の吸収剤、農園芸用の保水材、土壌改良剤、止水剤等に使用されている。この様な吸水性樹脂としては例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架橋物、酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体加水分解物、ポリアクリル酸塩架橋物等が一般的に使用されている。
【0003】
また、吸水性樹脂は主に粉体で供給されるが、一部で繊維状のものが上市されており、その加工性の良さを生かして不織布、成形体(棒状、円盤状)、エレメント等に加工して農園芸用保水剤(材)、吸水シート、生鮮食品用ドリップ吸収シート、油水分離フィルター、止血パッド、血液用フローストッパー、結露防止シート、消火・防災用資材、地中及び海底ケーブル用止水剤(材)、鋼管矢板工法用止水剤(材)、涼感材料等の種々の用途に展開されている。この様な吸水性繊維としては、特開昭54−138693号公報にアクリロニトリル系繊維を内層、ポリアクリル酸塩架橋体を外層とした芯−鞘2層構造の繊維が良好な繊維物性を維持しながら高吸水性を発現するものとして開示されている。また、特開平6−65810号公報にカルボキシル基を有するビニルモノマーとヒドロキシル基及び/またはアミノ基を有するビニルモノマーとの共重合体からなる高吸水性繊維が開示されている。
【0004】
しかし、これらの吸水性樹脂や吸水性繊維は純水やイオン交換水あるいは低濃度の電解質水溶液に対しては非常に優れた吸収性を示すが、海水や塩水、血液、汗、尿等の電解質を含んだ水溶液に対してはその吸収能力が低下するという欠点を有している。特に海水等の高濃度の電解質水溶液あるいは多価金属塩水溶液に対しては極端に吸収性能が低下するため、その用途が制限される。
【0005】
電解質水溶液に対する吸収能力を高めるためには例えば、特開昭61−36309号公報にはスルホアルキル(メタ)アクリレートを含む架橋重合体が、また、特開昭62−266140号公報にはポリエーテルを側鎖に有する(メタ)アクリレートとスルホン酸基を有する単量体との架橋共重合体等が耐塩性吸水剤として提案されている。しかし、これらの吸水樹脂でも高濃度の電解質水溶液、あるいは多価金属塩水溶液に対しては吸収能力が低下してしまう。
【0006】
この様な高吸水性樹脂は一般には粉体状で供給されることが多いが、かかる樹脂を直接繊維状に成形できれば、その加工性の高さを生かして不織布、各種成形体、エレメント等に加工して種々の用途への展開が容易になる。しかし、高吸水性樹脂に高吸収性を維持したまま、繊維形成能及び良好な繊維物性を付与することは非常に困難であり、繊維物性の向上を図れば吸水性能の低下は免れない。また、この様な高吸水性繊維は非常に吸湿性が強く、吸湿した場合に繊維が粘着性を帯びて合着しやすくなるため、製造工程及び加工時の取扱いが非常に困難になるという欠点を有している。
【0007】
また、吸水性樹脂を単純に繊維状に成形したとしても強度の低い極めて脆弱な繊維となるため、繊維加工が困難となり、繊維としての優位性が発揮できない。さらに、加工できたとしても吸水時の膨潤ゲルの強度が低く、ゲルが簡単に分解して繊維状の形態を維持できないという欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記の様な問題点を克服するために、電解質水溶液に対して高度に吸収性であり、繊維物性及び吸水後のゲル強度の優れた吸水性繊維について鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。電解質水溶液、特に高濃度の電解質水溶液、及び多価金属塩水溶液に対して優れた吸収性を有する繊維を開発することは、これまで吸水樹脂あるいは吸水繊維を使用することができなかった分野への応用、特に海水等の高濃度の電解質を含有する媒体を吸収させる様な用途への応用が可能となり、また、吸収能力の増大は電解質水溶液を吸収するのに必要な繊維量を大幅に少なくすることができるため、吸収材の小型化や省資源化と共に使用者にとって経費の節約となる。さらに、繊維状であるため直接不織布や各種成形体等に加工することができ、容易に各種用途に展開することができる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、両イオン性ビニル系単量体(A)好ましくはカルボキシベタイン型官能基を有するビニル系単量体を10重量%〜99重量%の範囲内で共重合成分として含有する共重合体(I)の架橋体と、補強重合体(II)が複合構造を有することを特徴とする高塩水吸収性繊維によって達成することができ、電解質水溶液に対して優れた吸収性を有し、且つ優れた物性を有する繊維を提供することができる。ここで電解質とは、水その他の溶媒に溶解してその溶液がイオン電導を行うような物質を言い、電解質水溶液とはそのような物質が1種類以上溶解した水溶液をいう。尚、ここで言う複合構造とは、吸水性成分と補強成分とが繊維中で不均一に分布しているような構造をいい、例えば芯−鞘型構造、海−島型構造、サイドバイサイド型構造が挙げられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。まず、両イオン性ビニル系単量体(A)は、同一単量体単位中にアニオン性基とカチオン性基の両者を併せ有するものであって、単量体1種類以上が採用される。アニオン性基とは水性媒体中において電離し陰イオンとなる性質を有するもので例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基があり、カチオン性基とは水性媒体中において電離し陽イオンとなる性質を有するもので例えば、アミノ基、2級及び3級アミノ基、4級アンモニウム基が例示できる。
【0011】
かかる単量体(A)としては、化2(但し、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は炭素数0から6の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R3 及びR4 はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、R5 は炭素数1から10の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Xはエステル基またはアミド基または置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。)で表されるカルボキシベタイン型官能基を有するビニル系単量体が好適に採用される。
【0012】
【化2】
Figure 0003678280
【0013】
また、化2におけるXがアミド基、R3 及びR4 がメチル基、R5 が炭素数1から3のアルキレン基である(メタ)アクリルアミド型のカルボキシベタイン型単量体を両イオン性ビニル系単量体(A)として用いることにより、さらに高度に電解質水溶液吸収性の繊維を得ることができる。すなわち、単量体側鎖基中に導入された親水性の強いアミド結合の存在により重合体の親水性が上がるために吸収能力が向上する。
【0014】
カルボキシベタイン型単量体は多くの場合、対応する3級アミン型単量体とモノハロアルキルカルボン酸類との反応によって合成することができる。例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸ナトリウムをメタノール中で反応させることによってN,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩が合成できる。また、3級アミン型単量体とプロピオラクトン等の環状エステルとの反応によっても本発明の両イオン性ビニル系単量体(A)を合成することができる。その他、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(カルボキシエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(カルボキシエチル)アンモニウム内部塩等のカルボキシベタイン型単量体が本発明における両イオン性ビニル系単量体(A)として好適に使用することができる。
【0015】
また、両イオン性ビニル系単量体(A)として、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシエチル)アンモニウム内部塩等の(メタ)アクリルアミド型のカルボキシベタイン型単量体が本発明においてさらに好適に使用することができる。
【0016】
本発明において、カルボキシベタイン型単量体以外に両イオン性ビニル系単量体(A)として、スルホベタイン型単量体も好適に採用することができる。スルホベタイン型単量体はアニオン性基としてスルホン酸基、カチオン性基として4級アンモニウム基を同一単量体単位中に有する単量体であり、例えば、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(2−スルホエチル)アンモニウム内部塩等が挙げられる。
【0017】
本発明は重合体及びそれからなる繊維に対する高分子反応によって両イオン性官能基を導入し高塩水吸収性とした繊維も包含する。すなわち、3級アミノ基を有する重合体又は繊維とモノハロアルキルカルボン酸類との高分子反応によって両イオン性官能基を導入する方法、あるいは重合体又は繊維と両イオン性官能基を有する化合物との反応によって導入する方法、重合体又は繊維に両イオン性ビニル系単量体(A)をグラフト重合する方法等の採用によっても電解質水溶液に対して高度に吸収性である繊維を得ることができる。
【0018】
共重合体(I)中に両イオン性ビニル系単量体(A)を10重量%〜99重量%の範囲内で共重合成分として含有することによって、本発明の課題である電解質水溶液に対して高度に吸収性である繊維が得られる。両イオン性ビニル系単量体(A)が10重量%未満では十分な電解質水溶液吸収性が得られないため、両イオン性ビニル系単量体(A)は10重量%以上、好ましくは20重量%以上であることが望ましい。
【0019】
本発明において、共重合体(I)中に両イオン性ビニル系単量体(A)以外の単量体を繊維物性を向上させる等の理由により使用することができ、繊維の吸収性能を大きく妨げない範囲内ではその種類に制限はない。すなわち、使用目的に合わせて重合体の強度等の物性を改良する等の理由でラジカル重合性のビニル系単量体の中から1種以上を適宜選択し使用することができる。特に繊維に可塑性、柔軟性、強靱性を付与するために可塑化単量体(B)を使用することが望ましい。
【0020】
かかる可塑化単量体(B)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、スチレン等のラジカル重合性単量体が好適に使用することができる。
【0021】
特に可塑化単量体(B)の少なくとも1種類としてアクリロニトリルを使用することにより、本発明の繊維に良好な物性を付与することができる。すなわち、アクリロニトリルを共重合することにより、共重合体(I)に柔軟性と物理的強度及び低吸湿性を付与することができ、さらに吸水後のゲル強度も向上させることができる。
【0022】
共重合体(I)中に10重量%〜40重量%の範囲内で少なくとも1種類以上の可塑化単量体(B)を共重合成分として含有させることにより繊維物性が向上する。ただし、可塑化単量体(B)の共重合体(I)中の組成が高いほど繊維物性の向上が図れるが、繊維の吸水性能を大きく低下させないために40重量%以下、好ましくは35重量%以下であることが望ましい。また、可塑化単量体(B)の組成が低いと十分な繊維物性が得られ難いため、10重量%以上、好ましくは20重量%以上であることが望ましい。
【0023】
また、繊維の吸収性能を向上させる、繊維物性を改良する、架橋成分として使用する、製造原価を低下させる等の理由により、親水性単量体(C)を共重合体(I)中に含有させることは、塩水に対する吸収性能を極端に低下させない範囲内において推奨される。この様な親水性単量体(C)としては、カルボキシル基、アミド基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、1級・2級・3級アミノ基、4級アンモニウム基、ポリエチレングリコール基等の親水性の官能基を有するビニル系単量体が挙げられる。また、加水分解等により容易に親水性官能基を導入しうる単量体も同様に使用することができる。
【0024】
この様な親水性官能基を有する、及び導入可能な単量体としては、例えば、アクリル酸及びそのアルカリ塩、メタクリル酸及びそのアルカリ塩、イタコン酸、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−置換アルキルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸及びそのアルカリ塩、メタアリルスルホン酸及びそのアルカリ塩、スチレンスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのアルカリ塩、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸及びそのアルカリ塩、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、3−メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩、2−メタクリロイルオキシエチルジメチルアミン及びその塩、2−メタクリロイルオキシエチルジエチルアミン及びその塩、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ビニル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられ、これらの単量体を1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
親水性単量体(C)の共重合体(I)中の組成は、電解質水溶液に対する高吸収性を発現させるために70重量%以下、好ましくは5重量%〜50重量%の範囲内であることが望ましい。
【0026】
吸水樹脂あるいは吸水繊維が水性媒体を吸収し、媒体に溶解する事無く膨潤状態を維持するためには、共有結合、静電結合、あるいは水素結合等によって重合体に架橋構造を導入することが必要である。本発明において、共重合体(I)に架橋構造を導入するために、架橋性単量体(D)としてジビニル化合物の様な多官能ラジカル重合性単量体を用いることができるが、その場合、重合後に繊維状に成形することは事実上不可能であり、重合と同時に成形が行われる必要がある。例えば、単量体組成物を毛細管に注型した後、その状態で重合し繊維化する様な注型重合法が採用される。尚、繊維を複合構造にする方法としては、芯−鞘型構造の場合は芯成分、あるいは海−島型構造の場合は島成分となる繊維(補強重合体(II)からなる)を毛細管内に予め挿入しておいて、鞘成分あるいは海成分を注型して重合する方法が例示できるが、複合構造が形成されれば特に制限はない。
【0027】
多官能ラジカル重合性単量体としては、ビスアクリルアミド類、ジ(メタ)アクリル酸エステル類、ジアリル化合物類等が挙げられ、具体的には、N,N−ジアリルメタクリルアミド、ジアリルアミン、N,N−ビスアクリルアミド酢酸、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸メチルエステル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ベンジリデンビスアクリルアミド、ジアリルスクシネート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジアリルアクリルアミド等があり、本発明において使用することができる。
【0028】
この様な多官能ラジカル重合性単量体の共重合体(I)中の組成は、水性媒体を吸収した重合体が媒体に溶解せず、且つ流動性あるいは粘着性を持たないために、好ましくは0.01重量%以上である。また、多官能ラジカル重合性単量体の組成が高くなると吸収能力が低下してしまうため、1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の組成であることが望ましい。
【0029】
重合体に架橋構造を導入する他の方法として、重合後後架橋可能な官能基を有する単量体の架橋化処理がある。すなわち、共重合体(I)と補強重合体(II)を複合構造を有する繊維状に形成した後、架橋化処理を行い架橋構造を導入する方法である。本発明において架橋化処理可能な、すなわち後処理により架橋構造を導入することが可能な単量体を架橋性単量体(D)として採用するときは、該単量体と化学的に結合し架橋構造を形成するような化合物を用いる場合があり、この化合物を架橋助剤と称する。また、熱処理等によって自己架橋する様な単量体を用いる場合は架橋助剤は必ずしも必要としない。
【0030】
尚、架橋性単量体(D)は親水性単量体(C)と同一の単量体であってもよく、その場合、架橋性単量体(D)は親水性単量体(C)中の架橋化処理後の架橋構造に寄与した単量体成分と見なす。すなわち、親水性単量体(C)が後処理により架橋構造を導入することが可能であり、架橋化処理によりその一部が架橋構造を形成する場合、架橋構造を形成している単量体成分を架橋性単量体(D)とする。
【0031】
かかる架橋構造を導入可能な単量体としては、カルボキシル基、アミド基、ニトリル基、メチロール基、グリシジル基、水酸基、イミノ基を含有する単量体、酸無水物系単量体が本発明において好適に使用することができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イミノールメタクリレート等の単量体が挙げられる。
【0032】
架橋助剤としては例えば、架橋性単量体(D)がカルボキシル基を有する場合には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基等のカルボキシル基と反応して化学結合を形成しうる官能基を2個以上有する多官能性化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、グリシジルアルコール、ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ポリエチレンイミン、尿素等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドによる架橋化も挙げられる。さらに、カルボキシル基と化学結合を形成しうる官能基を有する単量体をカルボキシル基を有する単量体と共に架橋性単量体(D)として併用して、両者間の結合により架橋化することもできる。
【0033】
架橋性単量体(D)が水酸基を有する場合には、カルボキシル基、酸無水物、アルデヒド基、イソシアネート基の様な水酸基と反応して化学結合を形成し得る官能基を2個以上有する多官能性化合物、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸及びそれらの酸無水物、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が架橋助剤として挙げられる。さらに、水酸基と化学結合を形成しうる官能基を有する単量体を水酸基を有する単量体と共に架橋性単量体(D)として併用して、両者間の結合により架橋化することもできる。
【0034】
また、水酸基が水酸基同志、あるいはカルボキシル基と水素結合により架橋構造を形成する様な場合は架橋助剤を使用する必要はない。例えば、可塑化単量体(B)として酢酸ビニルあるいは(メタ)アクリル酸エステル等を用い、エステルの加水分解により水酸基あるいはカルボキシル基を生成させれば、熱処理によって水素結合性の微結晶構造を架橋点として、特に共有結合による架橋構造を導入しなくとも水性媒体を吸収し膨潤状態を維持することができ、この様な架橋構造の導入方法も本発明において採用することができる。
【0035】
また、カルボキシル基同志、カルボキシル基と水酸基、あるいは水酸基同志を脱水触媒を用いて、酸無水物を形成することによる架橋化、エステル結合による架橋化、あるいはエーテル結合による架橋化を行うことによっても架橋構造を導入することができる。
【0036】
架橋性単量体(D)がニトリル基を有する場合には、アミノ基の様なニトリル基と反応して化学結合を形成しうる官能基を2個以上有する多官能性化合物、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、両末端アミノ化ポリエチレングリコール等が架橋助剤として挙げられる。さらに、ニトリル基と化学結合を形成しうる官能基を有する単量体をニトリル基を有する単量体と共に架橋性単量体(D)として併用して、両者間の結合により架橋化することもできる。
【0037】
これらの後架橋性を有する架橋性単量体(D)を1種または2種以上用いて共重合体(I)を合成し、重合後任意の方法により繊維状に成形した後、架橋化処理を行い架橋構造を導入するという方法により容易に本発明の高塩水吸収性繊維が作製できる。尚、本発明における架橋化処理は用いた架橋性単量体(D)の種類に応じて適宜選択すればよいが、乾熱処理による方法が簡便であるため好適に採用される。
【0038】
特に、カルボキシル基を有する単量体と水酸基を有する単量体を架橋性単量体(D)として併用した共重合体(I)を繊維状に成形した後、乾熱処理により架橋構造を導入する方法は、架橋化処理の容易さ、処理条件の設定範囲が広いことから本発明においてさらに好適に採用される。
【0039】
本発明の共重合体(I)は従来より行われているラジカル重合法のいずれの方法を用いて調整してもよい。すなわち、塊状重合、水系沈殿重合、懸濁重合、逆相懸濁重合、乳化重合、溶液重合のいずれの方法を用いてもよく、目的に応じて、得られる重合体の形態を考慮して適宜選択すればよい。しかし、一般には水を媒体とした重合系がコスト、環境面から望ましい。ラジカルの発生方法はラジカル重合触媒を用いる方法、放射線、電子線、紫外線を照射する方法等が挙げられる。ラジカル重合触媒としては例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等のラジカル発生剤、及びこれらのラジカル発生剤と亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等の還元剤との組み合わせからなるレドックス系開始剤が挙げられる。重合媒体としては例えば、水、電解質水溶液、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、重合方法に応じて適宜選択すればよい。
【0040】
本発明において、共重合体(I)と補強重合体(II)との複合構造を有する繊維とすることにより、乾燥時はもちろん吸水時の繊維物性をも飛躍的に向上させることができる。すなわち、共重合体(I)を鞘成分、補強重合体(II)を芯成分とした芯−鞘型構造、共重合体(I)を海成分、補強重合体(II)を島成分とした海−島型構造、両成分によるサイドバイサイド型構造等の複合構造を有する繊維とすることにより共重合体(I)が高吸水性を発現し、補強重合体(II)が高繊維物性を発現する極めて優れた吸水性繊維を得ることができる。尚、繊維中の共重合体(I)が形成している成分に補強重合体(II)を混合することにより、さらに優れた繊維物性を発揮できる。例えば、芯−鞘型構造の繊維において、補強重合体(II)を芯成分とし、共重合体(I)と補強重合体(II)の混合物を鞘成分として高繊維物性を発現させることができる。
【0041】
この様な補強重合体(II)としては、共重合体(I)との親和性、溶解性を考慮する必要があり、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等の水溶性の重合体が望ましい。また、ポリビニルアルコールの様な水酸基を多数有する重合体は、共重合体(I)中に水酸基と反応して化学結合を形成するような官能基を有する単量体を架橋性単量体(D)として採用していれば、架橋化処理により架橋構造を形成することができるため、吸水時のゲルの脱離がさらに抑制されるという利点も併せ有する。尚、ポリビニルアルコールの重合度及びケン化度、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドの重合度は繊維物性、吸収性能、繊維への成形性等を考慮して目的に応じて適宜選択すればよい。特に、補強重合体(II)としてポリビニルアルコールを用いると繊維強度が大きく向上し、吸湿性が大きく低下するため、本発明においてさらに好ましい。
【0042】
これらの補強重合体(II)の繊維全体に対する組成は、良好な繊維物性を発現させるために5重量%以上であることが望ましい。また、繊維の吸収性能を大きく低下させないために20重量%以下、好ましくは15重量%以下の組成であることが望ましい。
【0043】
また、補強重合体(II)として水溶性の重合体を用いる場合、吸水時に溶解あるいは膨潤して繊維物性が低下しないように、化学的あるいは物理的に架橋構造を導入するか、あるいは非水溶性になるよう化学変成する必要がある。例えば、補強重合体(II)としてポリビニルアルコールを用いる場合、熱処理による水酸基間での水素結合性の架橋構造の導入、または適当な架橋剤を用いた架橋構造の導入、あるいはホルマール化による非水溶性化等が挙げられる。架橋剤としては、カルボキシル基、酸無水物、アルデヒド基、イソシアネート基の様な水酸基と反応して化学結合を形成し得る官能基を2個以上有する多官能性化合物、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸及びそれらの酸無水物、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して使用することができる。尚、これらの架橋剤は繊維形態に成形する前に混合して用いることが望ましい。
【0044】
本発明における繊維の作製方法としては、前述した注型重合法と通常の紡糸方法があるが、本発明においては通常の紡糸法による繊維化がより好適に採用される。紡糸法としては、共重合体(I)及び補強重合体(II)の溶液を原液とした湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法のいずれの紡糸方法も採用できる。また、繊維の構造としては前述した様に、芯−鞘型構造、海−島型構造、サイドバイサイド型構造が好適に採用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0045】
湿式紡糸法及び乾湿式紡糸法では、共重合体(I)と補強重合体(II)及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解し適当な粘度に調整して原液とし、貧溶媒中に多孔ノズルから複合紡糸し、必要に応じて延伸した後、架橋化処理することにより本発明の複合構造を有する高塩水吸収性繊維が製造できる。この時、溶媒としては、例えば水、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらを単独、あるいは複合して使用することができる。貧溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン等が挙げられ、これらを単独又は混合して、あるいは溶媒と複合して使用することもできる。尚、ノズルの形状によって芯−鞘型、海−島型、サイドバイサイド型等の構造を選択すればよい。
【0046】
乾式紡糸法では、共重合体(I)と補強重合体(II)及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解し適当な粘度に調整して原液とし、加熱雰囲気中に複合紡糸して溶媒を蒸発させ、必要に応じて延伸操作を行い、その後架橋化処理することにより本発明の複合構造を有する高塩水吸収性繊維を製造することができる。溶媒としては、例えば水、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらを単独、あるいは複合して使用することができる。本発明においては、特に水を溶媒とした乾式紡糸法による繊維化がコスト、安全性、作業環境等の利点から特に好ましい。
【0047】
以下、乾式紡糸法を用いた本発明の高塩水吸収性繊維の作製法について説明する。紡糸原液としては、水を溶媒とした重合系で、重合した後の溶液がそのまま原液となるものが好ましい。共重合体(I)及び補強重合体(II)の原液中での濃度は、紡糸に適した粘度になるように調整する必要があり、一般的には15重量%〜50重量%、好ましくは18重量%〜25重量%である。原液の粘度は、加熱雰囲気中での伸長粘度が十分にあり糸切れせずに安定した紡糸が可能であれば特に制限はないが、一般的には25℃におけるB型粘度計での粘度が100ポイズ〜4000ポイズの範囲内である。
【0048】
原液の紡出温度は一般的には30℃〜80℃の範囲内である。加熱雰囲気の温度は使用する溶媒に応じて適宜選択すればよいが、一般的には100℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃に設定するのがよい。尚、乾燥工程の後に繊維を延伸する場合、加熱雰囲気から出た時の繊維の溶媒分率を5重量%〜15重量%程度に設定することにより延伸工程が円滑に行える。繊維の延伸倍率は良好な繊維物性を付与する様に適宜設定すればよいが、一般的には1.5倍〜10倍程度である。
【0049】
繊維に架橋構造を付与するための架橋化処理は、本発明において乾熱処理による方法が好適に採用される。すなわち、共重合体(I)中の架橋性単量体(D)として熱処理によって架橋構造を形成する様な単量体を1種以上採用する。この時、補強重合体(II)も同時に架橋構造を形成することが工程上望ましい。乾熱処理の温度は、所望の時間で架橋化ができる様に設定すればよいが、一般的には150℃〜300℃の範囲内である。尚、架橋化処理の条件(温度、時間)を変更する事により繊維の吸収性能を制御することができ、所望の性能に応じて、条件を適宜設定すればよい。但し、架橋構造が少なすぎる場合、吸水した繊維からの重合体の溶出が多くなるため注意する必要がある。
【0050】
最終繊維の直径は一般的には、5〜100μm、好ましくは15〜50μm程度である。繊維原綿は連続したフィラメント状、あるいは適当な長さに切断したステープル状の形態で供され、そこから必要に応じて、ヤーン、不織布、各種成形体、エレメント等に加工され、使用される。
【0051】
【作用】
本発明の高塩水吸収性繊維が電解質水溶液に対して高度に吸収性である理由は十分に解明するに至っていないが、以下のことが言える。すなわち、架橋していない線状のカルボキシベタイン型モノマーの単独重合体が純水だけでなく電解質水溶液に対しても良溶解性を示し、さらに高濃度の電解質水溶液及び多価イオンを含有する電解質水溶液に対しても優れた溶解性を示すことから、架橋構造を有する重合体においても電解質水溶液に対して膨潤し、高吸収性を示す。従って、その様な重合体を含有する繊維も電解質水溶液に対して高吸収性を示す。また、補強重合体(II)と複合構造を形成することにより、高塩水吸収性を維持しつつ良好な繊維物性を有する優れた繊維となる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
実施例1
本実施例において両イオン性ビニル系単量体(A)として、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩(以下、DAPMBと略す)は興人株式会社から入手した。また、N,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩(DMPMB)、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(カルボキシメチル)アンモニウム内部塩(DMEMB)は各単量体の対応する3級アミン型単量体とモノクロロ酢酸ナトリウムをメタノール中、60℃で反応させることにより合成した。さらに、N,N−ジメチル−N−(3−アクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム内部塩(DAPPS)は3級アミン型単量体とプロパンスルトンをジメチルホルムアミド中、30℃で反応させることにより合成した。
【0054】
可塑化単量体(B)としてはアクリロニトリル(AN)、メチルアクリレート(MA)、酢酸ビニル(VAc)を用いた。親水性単量体(C)としてはアクリル酸(AA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を用いた。また、後架橋性を有する架橋性単量体(D)として、単量体(C)であるAAとHEAとを併せて使用した。また、N−メチロールアクリルアミド(NMAM)も親水性単量体(C)であるが、架橋性単量体(D)としても使用した。尚、AAは全てNaOH水溶液を用いて添加量の約70モル%を中和してから重合に使用した。補強重合体(II)としては、ポリビニルアルコール(PVA−217(平均重合度:1700、鹸化度:88%)、PVA−205(重合度:500、鹸化度:88%)、PVA−117(平均重合度:1700、鹸化度:98.5%)、PVA−117H(平均重合度:1700、鹸化度:99.6%)、クラレ(株)製)を用いた。
【0055】
共重合体(I)は、所定量の各種単量体を蒸留水に溶解あるいは懸濁させ、開始剤として総単量体重量に対し0.6重量%の過硫酸カリウム(KPS)を添加し、70℃で5時間攪拌下に重合した。また、補強重合体(II)を添加した系も同様に、所定量の補強重合体(II)を添加して重合を行った。重合した溶液を減圧下に脱泡し、そのまま原液として使用した。原液固形分は、原液約1gを120℃で4時間乾燥して乾燥体の重量を測定して求めた。原液の粘度はビスメトロン粘度計(芝浦システム(株)製)を用い25℃で測定した。尚、比較のために両イオン性ビニル系単量体(A)を含まない共重合体も同様に重合し、原液とした。表1に各種組成で重合した原液の単量体仕込み組成と重合時の補強重合体(II)の添加量及び原液の固形分、原液粘度を示す。
【0056】
【表1】
Figure 0003678280
【0057】
乾式紡糸は定法に従って行った。尚、複合繊維の形態としては芯−鞘型を選択し、通常の芯−鞘型の紡糸法により紡糸した。鞘成分として共重合体(I)を、芯成分として補強重合体(II)を用いた。補強重合体(II)の原液は使用する補強重合体(II)と架橋剤を28重量%の濃度で蒸留水に添加し、攪拌下に加熱溶解することによって調製した。補強重合体(II)用の架橋剤としてはコハク酸(SA)を用い、使用する補強重合体(II)に対し5重量%添加した。各々の原液を紡糸ノズル(5ホール)から約200℃の加熱雰囲気中に紡出し、約2倍に延伸して巻き取った。その後、250℃で15秒〜30秒間緊張下に乾熱処理を行い、乾燥繊維を得た。乾熱処理の時間は、繊維が水性媒体を吸収した後に溶解せず良好なゲル状態になるように設定した。得られた繊維を約100mmに切断し、以下の各種評価に供した。尚、比較のために複合構造を有さない繊維についても同様に作製し評価した。
【0058】
繊維の引張強度、伸度はJIS L 1015に記載の方法に準じて測定した。繊維のデニールは繊維重量と繊維長から計算により求めた。繊維の吸収性能は、以下の方法によって純水及び各種電解質水溶液に対する吸収倍率を測定し評価した。乾燥した繊維1gを純水及び各種電解質水溶液500ml中に2時間浸漬した後、200メッシュ金網で濾過し、10分間水切りした後、水性媒体を吸収した膨潤繊維の重量を測定し、繊維1g当たりの吸収した水性媒体のグラム数を吸収倍率とした。電解質水溶液としては、0.9重量%のNaCl水溶液、人工海水(アクアマリンS、八州薬品(株)製)を用いた。また、比較のために市販品である高吸水性繊維(ランシールF、東洋紡績(株)製)も同様に評価した。表2に芯成分として使用した補強重合体(II)の繊維全体に対する組成、各繊維の強伸度及び各種水性媒体に対する吸収倍率を示す。
【0059】
【表2】
Figure 0003678280
【0060】
繊維1は両イオン性ビニル系単量体(A)であるDAPMBと架橋性単量体(D)であるNMAMとの共重合体からなり、補強重合体(II)との複合構造を有しない本願発明の範囲を充たさない繊維である。この繊維は吸収倍率は純水、及び各種電解質水溶液ともに高いものであるが、繊維物性は非常に低いものであった。一方、繊維2は繊維1と同じ原液を用い、補強重合体(II)であるPVA−217と複合構造を有した繊維であり、繊維1に比べ繊維物性が飛躍的に向上している。また、電解質水溶液に対する吸収性能も大きくは低下しておらず、特に多価イオンを含有する人工海水に対しても高い吸収性能を維持しており、単量体(A)の効果がわかる。繊維3〜8は親水性単量体(C)及び架橋性単量体(D)としてAAとHEAを併用し、可塑化単量体(B)として用いて各単量体の組成を変えた系である。ANの組成が高くなるほど繊維物性は向上するが、吸収性能は低下する傾向にある。さらに単量体(A)の組成が低下するに従い人工海水に対する吸収性能は低下し、本願発明の範囲を充たさない繊維8ではかなり低いものとなっている。繊維9〜11は親水性単量体(C)及び架橋性単量体(D)の組成を変化させた系であり、繊維物性はそれほど高くないが、純水及び電解質水溶液ともに高い吸収性能を発揮している。繊維12〜26は原液重合時に補強重合体(II)を添加した系であり、条件により異なるがいずれも高い繊維物性と良好な吸収性能を両立している。尚、繊維21は両イオン性ビニル系単量体(A)としてスルホベタイン型単量体であるDAPPSを用いた繊維であるが、純水に対しては比較的低い吸収性能であるものの、人口海水に対しては非常に優れた吸収性能を発揮している。一方、比較例である両イオン性ビニル系単量体(A)を含まない繊維27、28及び市販品であるランシールFでは、いずれも純水に対しては高い吸収性能を発揮するが多価イオンを含有する人口海水に対しては著しく吸収性能が低下しており、本願発明の繊維の優位性が明確である。尚、両イオン性ビニル系単量体(A)の中では、分子内に親水性の強いアミド結合を有するDAPMBとDMPMB及びDAPPSの方がアミド結合を持たないDMEMBよりも比較的高い吸収性能を示し、これらの単量体の優位性が認められる。
【0061】
次に、いくつかの繊維について平衡吸湿率を測定した。乾燥した繊維を20℃、65%RHの恒温恒湿器に入れ、48時間後の重量増加分から下式に従って吸湿率を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0003678280
また、吸湿した状態での繊維の粘着性を触感により評価した。結果を表2に示す。尚、粘着性評価での各記号の意味は次の通りである。
○:粘着性小
△:粘着性中
×:粘着性大
−:評価せず
【0062】
繊維2は34%と高い吸湿率を示すが、可塑化単量体(B)であるANを共重合することにより吸湿率は18%に低下し粘着性も低下した。さらに、繊維13では重合系にPVA−217を添加することにより、吸湿率は13%と大きく低下すると共に粘着性も大きく減少し、非常に扱いやすい繊維となる。従って、これらの可塑化単量体(B)及び補強重合体(II)を原液重合時に使用することの有効性が認められる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の高塩水吸収性繊維は、高い塩水吸収性能と共に繊維であるがゆえの加工性の高さを利用して、これまで使用することができなかったような分野、用途へ極めて有効に使用することができる。特に、海水、尿、血液、セメント水、塩類土壌地下水等の電解質を高濃度で含有する水性媒体を吸収させる様な用途に絶大な効果を発揮するため、生活用品だけでなく、一般土木用止水材、各種資材用途にも有用である。例えば、紙おむつや生理用品等の吸収材、止水パッド、血液用フローストッパー、農園芸用保水材、生鮮食品用ドリップ吸収シート、塩類土壌改良材、地中及び海中土木用止水材、鋼管矢板工法用止水材等の用途が挙げられるが、もちろんこれら用途に限定されるものではない。さらに、本発明の高塩水吸収性繊維は、繊維状であるために不織布、各種成形体、エレメント等に容易に成形加工することができるため、任意の形態に加工して種々の用途に容易に応用展開することができる。

Claims (7)

  1. 両イオン性ビニル系単量体(A)を10重量%〜99重量%の範囲内で共重合成分として含有する共重合体(I)の架橋体と、少なくとも1種類以上の補強重合体(II)が複合構造を有する高塩水吸収性繊維であって、前記 両イオン性ビニル系単量体(A)が化1(但し、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素数0から6の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R 3 及びR 4 はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、R 5 は炭素数1から10の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Xはエステル基またはアミド基または置換もしくは無置換のフェニレン基を示す。)で示されるカルボキシベタイン型官能基を有するビニル系単量体から選ばれたものであることを特徴とする高塩水吸収性繊維。
    Figure 0003678280
  2. 両イオン性ビニル系単量体(A)が、化1におけるXがアミド基、R3 及びR4 がメチル基、R5 が炭素数1から3のアルキレン基である(メタ)アクリルアミド型単量体から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の高塩水吸収性繊維。
  3. 共重合体(I)が10重量%〜40重量%の範囲内で少なくとも1種類以上の可塑化単量体(B)を共重合成分として含有することを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の高塩水吸収性繊維。
  4. 可塑化単量体(B)の少なくとも1種類がアクリロニトリルであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の高塩水吸収性繊維。
  5. 共重合体(I)が5重量%〜50重量%の範囲内で少なくとも1種類以上の親水性単量体(C)を共重合成分として含有することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の高塩水吸収性繊維。
  6. 補強重合体(II)がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の高塩水吸収性繊維。
  7. 共重合成分としての両イオン性ビニル系単量体(A)を10重量%〜99重量%の範囲内と、後架橋性を有する架橋性単量体(D)を共重合せしめて共重合体(I)とし、これと補強重合体(II)とを複合構造を有する繊維形態に形成し、同時または次いで架橋性単量体(D)に架橋化処理を施すことを特徴とする、高塩水吸収性繊維の製造法。
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