JP3678081B2 - 電池用セパレータおよびこれを用いた電池 - Google Patents

電池用セパレータおよびこれを用いた電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ蓄電池用に好適な電池用セパレータおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電池用セパレータとしては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維からなる不織布が好ましく使用されており、特にポリオレフィン系極細繊維からなる不織布を親水化処理した電池用セパレータが提案されている。例えば、本出願人において特開平5−186911号公報および特開平5−186964号公報には、メチルペンテン系重合体/ポリオレフィン系重合体の組み合わせからなる分割型複合繊維にスルホン基を導入したスルホン化ポリオレフィン系繊維を60重量%以上含有する繊維集合体を提案している。
【0003】
また、特開平7−147154号公報には、ポリオレフィン系分割型複合繊維50重量%以上からなる水流絡合不織布をビニルモノマーのグラフト重合、スルホン化処理などの親水化処理した電池用セパレータが開示されている。また、特開平8−273654号公報には、ポリオレフィン系極細繊維が50重量%以上からなり、極細繊維同士を部分的に融着させた水流絡合不織布を親水化処理した電池用セパレータが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の電池用セパレータには以下の問題点がある。例えば、特開平5−186911号公報および特開平5−186964号公報の繊維集合体を電池用セパレータとして用いると、スルホン化処理後の不織布強力が低くなる傾向にあり、またコスト高となり、十分とはいえない。また、特開平7−147154号公報の電池用セパレータは、ポリプロピレン/ポリエチレンからなる分割型複合繊維を主体とし、ポリプロピレン/低密度ポリエチレンの組合せからなる複合接着繊維により熱接着させているので、不織布強力が低く、効率的に親水化処理できないなど、工程性に劣る。それを解消するために検討がなされた特開平8−273654号公報の電池用セパレータは、分割型複合繊維の1成分である低融点極細繊維同士を融着させた後、分割および絡合させているので、不織布強力においては改善されるものの、極細繊維成分自体を自己融着させるため、空隙の確保が困難となり、保液性の点で不十分である。
【0005】
本発明はこれらの実情に鑑み、優れた保液性および十分な不織布強力を有し、電池寿命を低下させることなく電池容量の向上に寄与しうる電池用セパレータ、および自己放電性の改良など優れた電池特性を有する電池を得ることを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の電池用セパレータは、ポリ(4−メチルペンテン−1)または4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体からなるメチルペンテン系重合体を第1成分とし、第1成分とは異なるポリオレフィン系重合体またはその共重合体を第2成分とし、繊維断面において2成分が交互に隣接して配置され、2成分のうち少なくとも1成分が2個以上に分割されてなる分割型複合繊維と、鞘成分を高密度ポリエチレンとし、芯成分をポリプロピレンとした鞘芯型のポリオレフィン系複合繊維の少なくとも2種類の繊維を含有する不織布であって、前記分割型複合繊維および前記ポリオレフィン系複合繊維の含有量がそれぞれ60重量%を超えない範囲であり、前記不織布が親水化処理されていることを特徴とする。かかる構成を採ることにより、優れた保液性および十分な不織布強力を有し、電池特性に優れた電池用セパレータが得られることが判り本発明に至った。
【0007】
本発明の電池用セパレータにおいて、前記分割型複合繊維の含有量は15〜60重量%、前記ポリオレフィン系複合繊維の含有量は20〜60重量%であることが望ましく、他の合成繊維を40重量%を超えない範囲で含有させてもよい。
【0008】
前記不織布は、分割型複合繊維を構成する2成分において実質的に溶融することなく、ポリオレフィン系複合繊維の成分により熱融着されていることが望ましい。
【0009】
また、不織布を構成する分割型複合繊維、ポリオレフィン系複合繊維、および他の合成繊維の繊維長が3〜25mmであると、緻密な不織布が得られ、保液性の点で有利である。
【0010】
前記不織布は、繊維長の異なる繊維ウェブ同士を積層されてなる複合不織布であることが不織布強力を向上させる点で望ましい。
【0011】
本発明の電池用セパレータの好ましい形態としては、前記不織布の少なくとも一部の層に他のシートを積層してなる複合シートであって、該複合シートが親水化処理されていることが望ましく、不織布強力が向上し、卷回性や耐ショート性の点で有利である。
【0012】
また、本発明の電池用セパレータの好ましい別の形態としては、前記親水化処理された不織布の少なくとも一部の層に他のシートが積層されていることが望ましい。
【0013】
前記分割型複合繊維は、メチルペンテン系重合体を第1成分とし、ポリプロピレン系重合体を第2成分とすることが望ましい。
【0014】
そして、前記親水化処理は、スルホン化処理であることが望ましく、スルホン化処理のうち、発煙硫酸処理、クロロスルホン酸処理、あるいは無水硫酸処理のいずれか1つを用いると、電池の自己放電性を改良できる点で有利である。また、スルホン化度は、0.4〜2重量%であることが望ましい。
【0015】
前記のうち、いずれかの電池用セパレータを組み込んだ電池は、自己放電性を改良し、特に電気自動車(PEV)やハイブリッド車(HEV)用に好適である。
以下、本発明の内容を具体的に説明する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる分割型複合繊維は、ポリ(4−メチルペンテン−1)または4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体からなるメチルペンテン系重合体を第1成分とし、第1成分とは異なるポリオレフィン系重合体またはその共重合体を第2成分とし、繊維断面において2成分が交互に隣接して配置され、2成分のうち少なくとも1成分が2個以上に分割されてなり、その構成単位は長さ方向に連続し、全構成単位の一部は必ず繊維表面に露出している断面形状を有するものである。具体的には、第1成分および第2成分が図1〜図3のように配列されたものを好ましく使用することができる。
【0017】
前記分割型複合繊維の第1成分であるメチルペンテン系重合体としては、ポリ(4−メチルペンテン−1)または4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体が挙げられ、共重合する他のオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテンなどが挙げられる。
【0018】
前記分割型複合繊維の第2成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などの第1成分とは異なるポリオレフィン系重合体またはその共重合体が用いられ、なかでも融点(D2m)が130℃以上、より好ましくは150℃以上のポリオレフィン系重合体またはその共重合体を使用するとよい。前記第1成分および第2成分からなる組み合わせの分割型複合繊維は、耐熱性に優れ、電池内での過激な反応にも、十分対応が可能である。なかでも、メチルペンテン系重合体を第1成分とし、ポリプロピレン系重合体を第2成分とする組み合わせが最も効果的である。
【0019】
前記分割型複合繊維における両成分の分割数は、5〜20が好ましく、両成分の複合比は紡糸工程の容易性の点から第1成分:第2成分が30:70〜70:30程度が好ましい。また、分割型複合繊維の繊度は、分割後の各構成単位の繊度が0.1〜0.5dtexとなるように、分割数や複合比を調整して適宜決定するとよい。分割後の各構成単位の繊度が0.1dtex未満であると、発煙硫酸やクロロスルホン酸での処理を行った場合に急激な劣化を起こし、不織布強力が低下し好ましくない。0.5dtexを超えると、後述する複合繊維あるいは合成繊維との繊度の差が少なくなり、緻密な空隙が確保できないからである。
【0020】
前記分割型複合繊維が本発明の電池用セパレータに占める割合は、60重量%を超えない範囲であり、15〜60重量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜60重量%である。分割型複合繊維の含有量が少なすぎると、メチルペンテン系重合体の比率が少なすぎるため、強い親水化条件でないと十分な親水基の導入ができなくなり、不織布強力の低下を招いたり、コスト高となる。60重量%を超えると、親水化処理後の不織布強力が低くなる傾向にあり、またコスト高となるからである。
【0021】
次に、本発明に用いる高融点成分および低融点成分からなるポリオレフィン系複合繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン系重合体またはその共重合体が用いられる。高融点成分の融点をB1m、低融点成分の融点をB2mとすると、低融点成分は以下の関係を満たすことが好ましい。
(1)B1m>B2m
(2)120℃<B2m<D2m
上記の関係を満たすポリオレフィン系複合繊維としては、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体/ポリプロピレンなどが挙げられ、これらを用いると、繊維強力にも優れ、2成分樹脂間の層間剥離も少なく、十分な融着強力が得られる点で好ましい。
【0022】
複合繊維の繊維形態は特に限定されず、同心円または偏心の鞘芯型複合繊維、並列型複合繊維、あるいは前記素材が2種類以上混合されてなる単一繊維が挙げられ、断面形状も円形、異形などいずれであってもよい。
【0023】
本発明においては、特に、高密度ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせからなる同心円鞘芯型複合繊維が、不織布の熱処理時における加工温度領域が広く、得られた不織布の強力が大きく、耐薬品性、耐酸化劣化に優れている点で好ましい。
【0024】
そして、前記ポリオレフィン系複合繊維は、60重量%を超えない範囲であり、20〜60重量%含有することが好ましい。より好ましくは、40〜60重量%である。ポリオレフィン系複合繊維の含有量が少なすぎると、十分な不織布強力が得られず、60重量%を超えると、空隙の確保が困難となり、保液性の点で不十分であるからである。
【0025】
さらに、本発明の電池用セパレータには、他の合成繊維を40重量%を超えない範囲で混合してもよい。より好ましくは、20〜40重量%である。他の合成繊維の含有量が40重量%を超えると、親水化処理の効果が少なくなり必要な性能が得られないからである。例えば、繊維間で形成される空隙を確保するためであれば、分割型複合繊維の分割により形成される分割後の各構成単位の繊度よりも大きく、ポリオレフィン系複合繊維の繊度と同じまたは小さい合成繊維を使用すればよく、また親水性をさらに向上させるのであれば、親水化剤等を樹脂中に予め混合させた合成繊維を使用してもよい。そして、他の合成繊維は、ポリオレフィン系複合繊維の溶融する温度では実質的に溶融しないものから選ばれ、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等、汎用されている合成繊維を使用することができる。なかでも繊度が0.5〜5dtex、繊維強度が6〜15cN/dtexからなるポリプロピレン繊維が耐薬品性が高い点で好ましい。
【0026】
前記構成繊維を含有してなる繊維ウェブの形態は、カード法、エアレイ法などにより得た乾式ウェブ、湿式法により得た湿式ウェブ、あるいはメルトブロー法やスパンボンド法などの直接法により得た長繊維ウェブが用いられる。なかでも前記構成繊維の繊維長が3〜25mmからなる湿式ウェブが均質なウェブを得る点で好ましい。より好ましい繊維長は5〜15mmである。繊維長が3mm未満では後述する高圧水流処理時に繊維が飛散し、繊維間の交絡が不十分となり、工程上好ましくなく、25mmを超えると特に湿式抄紙法によって不織布を製造する場合、スラリー中における繊維の分散性が悪くなり均一な不織布を得ることができないからである。
【0027】
これらの繊維ウェブは、熱カレンダー処理、熱風加工処理、高圧水流処理等の方法により処理される。このとき、少なくとも分割型複合繊維を構成する2成分において実質的に溶融することなく、ポリオレフィン系複合繊維の低融点成分により熱融着されていることが好ましい。ここでいう、実質的に溶融するとは、熱圧着などにより軟化して扁平し、繊維同士が密着したようなものではなく、完全に繊維の一部が溶融したものを指す。構成繊維同士がポリオレフィン系複合繊維の低融点成分のみの熱融着であると、分割型複合繊維が分割して得られた極細繊維および他の合成繊維が空隙を確保しつつ、複合繊維の高融点成分が繊維強力を維持して融着させるので、不織布強力のばらつきが少なく、緻密な空隙が確保できる。
【0028】
そして、他の不織布の形態としては、上記構成繊維の範囲内で混合率を適宜変更して積層させた、あるいは繊維長の異なる繊維ウェブ同士を積層させた複合不織布であってもよい。例えば、後者であれば、前記繊維長3〜25mmの構成繊維からなる湿式抄紙法による繊維ウェブに、繊維長25mmを超えるステープル繊維からなる繊維ウェブ、あるいは長繊維ウェブを少なくとも一方の面に積層することができる。繊維長の異なる繊維ウェブ同士を積層させると、繊維長の短い繊維ウェブが緻密性に寄与し、繊維長の長い繊維ウェブが不織布強力が向上に寄与して、電池組み込み時の生産性に優れるので都合がよい。これらの繊維ウェブは、カードウェブなどの未結合ウェブ、構成繊維の一部を接着剤や自己接着などで結合させた結合不織布、あるいはニードルパンチや高圧水流処理により交絡させた不織布などいずれの形態であってもよい。積層方法としては、未結合ウェブ同士を積層した後に繊維同士を交絡させてもよいし、少なくとも一方の繊維ウェブを予め上記の結合または交絡方法で不織布化したものを積層した後に繊維同士を交絡させてもよい。
【0029】
さらに、別の不織布の形態としては、前記不織布の少なくとも一部の層に他のシートを積層させてもよい。ここでは、前記不織布の少なくとも一部の層に他のシートを積層して予め複合シートを作製しておいた後、親水化処理を施したものであってもよいし、前記不織布を予め親水化処理しておいた後、少なくとも一部の層に他のシートを積層されたものであってもよい。ここでいう他のシートとは、繊維長が3〜25mmの繊維からなる湿式不織布、繊維長が25mmを超える繊維からなる構成繊維の一部を接着剤や自己接着などで結合させた結合不織布、ニードルパンチや高圧水流処理により交絡させた不織布、あるいは多孔性フィルムなどを指す。前記他のシートのうち繊維長が3〜25mmの繊維からなる湿式不織布を用いると、低目付でありながら貫通孔の発生する割合が少ない不織布が得られ、電池におけるショート率を軽減させることができる。また、繊維長が25mmを超える繊維あるいは多孔性フィルムを用いれば、さらに不織布強力を向上させることができる。
【0030】
前記他のシートの素材としては特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、あるいはポリエステル系樹脂などいずれであってもよい。また、積層方法も少なくとも一部の層に他のシートが積層されていれば特に限定されず、本発明の不織布の片面、あるいは両面に他のシートを積層してもよいし、前記不織布の間に他のシートを挿入しておいてもよい。さらに上記積層体を2層以上に積層してもよい。そして、上記積層体における各層間の結合方法についても特に限定されず、例えば、高圧水流処理により本発明の不織布を予め作製しておき、他のシートと積層させた後、熱風や熱ロールなどの熱処理により結合してもよいし、本発明を構成する繊維ウェブと他のシートを予め積層させた後、高圧水流処理により結合させてもよい。
【0031】
前記不織布あるいは複合シートの目付は、繊維の量によって調節しうるが30〜100g/m2にすることが望ましい。30g/m2未満では不織布の強力が低くなるため、正極と負極の間でショートが発生しやすくなり、100g/m2を超えると通気性等が低下するからである。
【0032】
そして、前述した不織布あるいは複合シートは、親水化処理されていることが好ましい。親水化処理としては、ビニルモノマーのグラフト共重合処理、フッ素ガス処理、スルホン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などが挙げられるが、なかでもスルホン化処理が電池の自己放電性を改良する点で優れており、スルホン化処理としては、濃硫酸処理、発煙硫酸処理、クロロスルホン酸処理、無水硫酸処理などが挙げられ、スルホン化処理のうち、発煙硫酸処理、クロロスルホン酸処理、あるいは無水硫酸処理が反応性が高く、比較的容易にスルホン化処理できるので好ましい。また、スルホン化度は、0.4〜2重量%であることが好ましく、0.7〜1.5重量%がさらに好ましい。スルホン化度が0.4重量%未満であると、電池の自己放電性の改良が不十分であり、2重量%を超えると、処理コストの増大を招くだけでなく、不織布の強力低下に繋がるからである。親水化処理は、不織布形成後に行うのが生産性の面で好ましいが、不織布が積層体の場合、少なくとも分割型複合繊維を含有する不織布が親水化処理されていればよい。
【0033】
次に本発明の電池用セパレータの製造方法の一例について説明する。本発明のセパレータの基材となる不織布の製造方法としては湿式抄紙法が望ましく、湿式抄紙は通常の方法で行えばよい。まず分割型複合繊維15〜60重量%と、ポリオレフィン系複合繊維20〜60重量%と、40重量%を超えない範囲で他の合成繊維を混合して、0.01〜0.6%の濃度になるように水に分散させ、スラリーを調製する。このとき少量の分散剤を加えてもよい。スラリーは短網式、円網式、あるいは両者を組み合わせた抄紙機等を用いて抄紙される。次いで、ポリオレフィン系複合繊維を溶融させて繊維間を軽く結合させておくと、不織布の取り扱い性がよいので好ましい。ポリオレフィン系複合繊維の溶融は、抄紙工程における乾燥処理の際に乾燥と同時に行ってもよく、また一旦、湿式不織布としたのち加熱処理して行ってもよい。
【0034】
そして、ポリオレフィン系複合繊維の溶融により繊維間を軽く結合させ、形態を安定化させた状態にしてから、高圧水流処理を施し、分割型複合繊維を分割させて極細繊維を形成させるとともに繊維間を交絡させるとよい。高圧水流処理は孔径0.05〜0.5mmのオリフィスが0.5〜1.5mmの間隔で設けられたノズルから、水圧5〜20MPa の柱状水流を不織布の表裏にそれぞれ1回以上噴射するとよい。得られた交絡不織布は、120〜D2m℃、好ましくは130〜145℃で乾燥と同時にポリオレフィン系複合繊維の低融点成分で構成繊維同士を熱融着させるとよい。
【0035】
しかるのちに不織布は、発煙硫酸反応槽、クロロスルホン酸反応槽、あるいは無水硫酸反応槽に浸漬され、スルホン基が導入される。スルホン化処理条件は、スルホン化度が0.4〜2重量%となるように適宜設定すればよく、例えば、無水硫酸処理であれば、三酸化イオウのガス濃度が10〜80体積%、反応温度が10〜90℃、反応時間が10〜600秒で処理するとよい。このとき、スルホン化を促進させるために、紫外線または放射線により不織布表面を活性化させた後、スルホン化処理を施してもよい。
【0036】
さらに、不織布に親水化処理を施した後、浸漬法、スプレー法、ロールタッチ法等により親水性界面活性剤を均一に付着させてもよいし、他の親水化処理法を組み合わせてもよい。しかるのち熱カレンダー処理して、所定の厚みに調整され、本発明の電池用セパレータが得られる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例を挙げて説明する。なお、引張強力、保液率、ショート率、容量保存率、サイクル寿命、およびスルホン化度は、以下の方法により測定した。
【0038】
(1)タテ引張強力
JIS L 1096に準じ、不織布のタテ方向に対して、幅5cm、長さ15cmの試料片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機を用いて引張速度30cm/分で伸長し、切断時の荷重値を引張強力とした。
【0039】
(2)保液率
試験片の水分平衡状態の重量(W)を1mgまで測定する。次に比重1.30のKOH溶液中に試験片を浸漬し、KOH溶液を1時間吸収させたのち液中から引き上げて10分間放置した後、試験片の重量(W1) を測定し、保液率(%)=((W1 −W)/W)×100の式より保液率を算出した。
【0040】
(3)円筒形密閉ニッケル水素電池
負極は、水素吸蔵合金、カルボニルニッケル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に水を加え混練りしスラリーを調整した。このスラリーをニッケルメッキしたパンチングメタルに浸漬塗りした後80℃で乾燥し、加圧成型して水素吸蔵合金負極を作成した。、正極は、公知の焼結式ニッケル極を使用した。上記の負極、正極の間に各セパレーターを挟み電槽缶に挿入し、電解液を注液することで、円筒形密閉ニッケル水素電池を作製した。
【0041】
(4)容量保存率
前記作製した円筒形密閉ニッケル水素電池を、充電0.1C率で12時間、休止0.5時間、放電0.1C率で終止電圧1.0Vとし、10サイクル充放電を繰り返し、電池初期活性を行った。
そして、初期活性を行った後、充電0.1C率で12時間、休止0.5時間、放電0.1C率で終止電圧1.0Vとし、5サイクル繰り返した後の放電容量に対し、同条件(0.1C率)で充電後、45℃下で14日間放置したときの残存容量(0.1C率放電、終止電圧1.0V)の比を自己放電後の容量保存率とした。充放電は25℃で行った。
【0042】
(5)ショート率
円筒形密閉ニッケル水素電池を100個組み立てたときに、短絡が起きた割合をショート率とした。
【0043】
(6)サイクル寿命
初期活性を行った円筒形密閉ニッケル水素電池を、充電0.1C率で、10時間、休止時間0.5時間、放電0.1C率(終止電圧1.0V)で理論容量に対する利用率が90%以下になったときのサイクル数を求めた。充放電は25℃で行った。
【0044】
(7)スルホン化度
試料より5cm×5cmの試験片を採取し、13%KOH水溶液に30分間浸漬した。その後、水道水で30分間洗浄し、さらに純水で30分間洗浄した試料を60℃にて1時間乾燥させて試料を調整した。そして、蛍光X線測定装置を用いて、不織布中の硫黄元素濃度を測定し、全元素濃度で除して100倍したものをスルホン化度とした。
【0045】
(8)繊維の準備
原料として、以下の繊維を準備した。
[繊維1] 第1成分を融点(D1m)240℃のメチルペンテン系共重合体(三井化学(株)製)とし、第2成分を融点(D2m)163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)として、複合比が50:50、図1に示す繊維断面を有する繊度2.3dtex、繊維長6mmの分割型複合繊維。
【0046】
[繊維2] 第1成分を融点(D1m)240℃のメチルペンテン系共重合体(三井化学(株)製)とし、第2成分を融点(D2m)163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)として、複合比が50:50、図1に示す繊維断面を有する繊度2.3dtex、繊維長45mmの分割型複合繊維。
【0047】
[繊維3] 鞘成分を融点(B2m)132℃の高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製)とし、芯成分を融点(B1m)163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)として、複合比が50:50、繊度1.7dtex、繊維長10mmの同心円鞘芯型複合繊維。
【0048】
[繊維4] 鞘成分を融点(B2m)105℃の低密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製)とし、芯成分を融点(B1m)163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)として、複合比が50:50、繊度1.7dtex、繊維長10mmの同心円鞘芯型複合繊維。
【0049】
[繊維5] 鞘成分を融点(B2m)132℃の高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製)とし、芯成分を融点(B1m)163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)として、複合比が50:50、繊度1.7dtex、繊維長51mmの同心円鞘芯型複合繊維。
【0050】
[繊維6] 融点163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)からなり、繊度0.8dtex、繊維長10mmのポリプロピレン繊維。
【0051】
[繊維7] 融点163℃のポリプロピレン(日本ポリケム(株)製)からなり、繊度0.8dtex、繊維長51mmのポリプロピレン繊維。
【0052】
[繊維8] 第1成分をエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量38モル%)とし、第2成分をポリプロピレンとして、複合比が50:50、図2に示す繊維断面を有する繊度3.3dtex、繊維長6mmの分割型複合繊維。
【0053】
[実施例1]
繊維1を40重量%、繊維3を40重量%、繊維6を20重量%を混合して0.5%の濃度になるようにスラリーを調製し、湿式抄紙して目付80g/m2の原紙を得た。そして原紙の表裏面より10MPaの圧力で高圧柱状水流を噴射することにより、繊維1を分割させて極細繊維を形成させるとともに繊維間を交絡させ、135℃で乾燥と同時に熱融着させ不織布を得た。
【0054】
得られた不織布をクロロスルホン酸50重量%、濃硫酸50重量%を混合した液温40℃の処理浴で1時間浸漬処理し、その後希硫酸中に10分間浸漬後KOH溶液に1時間浸漬して中和を行った。その後水洗・乾燥させた後、熱カレンダー処理を施して、目付65g/m2、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0055】
[実施例2]
処理液としてクロロスルホン酸100%を用いた以外は、実施例1と同じ方法で目付65g/m2、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0056】
[実施例3]
処理液として、発煙硫酸20重量%、濃硫酸80重量%の混合液とした以外は、実施例1と同じ方法で目付65g/m2、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た
【0057】
[実施例4]
繊維1を40重量%、繊維3を40重量%、繊維6を20重量%を混合して0.5%の濃度になるようにスラリーを調製し、湿式抄紙して目付55g/m2の原紙を得た。そして原紙の表裏面より10MPaの圧力で高圧柱状水流を噴射することにより、繊維1を分割させて極細繊維を形成させるとともに繊維間を交絡させ、135℃で乾燥と同時に熱融着させ不織布を得た。
【0058】
得られた不織布を、アクリル酸水溶液に浸漬した後、紫外線を照射してアクリル酸モノマーをグラフト共重合させた。この不織布を洗浄して未反応のアクリル酸を除去した後、乾燥して熱カレンダー処理を施して、目付65g/m2、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0059】
参考例1
繊維2を40重量%、繊維4を40重量%、繊維7を20重量%を混合してセミランダムカード機を用いて目付30g/mの繊維ウェブを作製した。そして、前記繊維ウェブの表裏面より5MPaの圧力で高圧柱状水流を噴射することにより、繊維2を分割させて極細繊維を形成させるとともに繊維間を交絡させ、135℃で乾燥と同時に熱融着させ目付30g/mの乾式不織布を得た。
【0060】
次に、湿式抄紙機において、ヤンキードライヤーの入り口側に前記不織布を設置し、実施例1の構成繊維からなる0.5%濃度のスラリーを調整し、目付が50g/m2となるように湿式抄紙しながら、予め設置した乾式不織布を積層し、135℃のヤンキードライヤーで熱処理を施し、両層の熱融着性繊維を融着させて複合不織布を得た。
【0061】
得られた不織布をクロロスルホン酸50重量%、濃硫酸50重量%を混合した液温40℃の処理浴で1時間浸漬処理し、その後希硫酸中に10分間浸漬後KOH溶液に1時間浸漬して中和を行った。その後水洗・乾燥させた後、熱カレンダー処理を施して、目付65g/m2、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0062】
参考例2
原料として繊維3の代わりに繊維4を使用した以外は、実施例1と同じ方法で目付65g/m、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0063】
[実施例
繊維の混合割合を、繊維1を10重量%、繊維3を50重量%、繊維6を40重量%とした以外は、実施例1と同じ方法で目付65g/m、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0064】
[実施例
実施例1の不織布を三酸化イオウガス中で30秒間処理した後、水酸化ナトリウムで中和しイオン交換水で洗浄した後、60℃で乾燥させた。熱カレンダー処理を施して、目付65g/m、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
【0065】
[比較例1]
原料として繊維1の代わりに繊維8を使用した以外は、実施例1と同じ方法で目付65g/m、厚み0.15mmの電池用セパレータを得た。
以下、実施例1〜参考例1および2、比較例1の物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 0003678081
【0067】
実施例4は、スルホン基を有しないため、サイクル寿命がやや短く、実施例は、メチルペンテン系重合体とポリオレフィン系重合体からなる分割型複合繊維の混合量が少ないため、親水基の導入量が少ないだけでなく、セパレータの緻密性に欠き、容量保存率およびサイクル寿命がやや低くなったものの、実施例1〜3、6においては、親水化処理の後でも十分な強力を保持し、かつ電池に組み込んだ際の容量保存率も80%近くを保持し、自己放電性の改良に寄与していた。一方、比較例1は、スルホン化処理のような過酷な親水化処理によって、必要以上に繊維が損傷し、タテ方向の引張強力が極端に低下して組み立て時に破損が生じ、ショート率が高くなり生産性が著しく低下した。
【0068】
【発明の効果】
本発明の電池用セパレータは、メチルペンテン系重合体とポリオレフィン系重合体からなる分割型複合繊維、および高融点成分および低融点成分からなるポリオレフィン系複合繊維を主体とし、親水化処理を施すことにより、耐熱性を有するとともに、優れた保液性および十分な不織布強力を有し、電池寿命を低下させることなく電池容量を向上させることができる。親水化処理がスルホン化処理であると、特に自己放電性の改良に寄与する。
【0069】
そして、前記電池用セパレータを組み込んだ電池は、自己放電性が改良され、特に電気自動車(PEV)やハイブリッド車(HEV)用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する分割型複合繊維の繊維断面図の一例を示す。
【図2】本発明に使用する分割型複合繊維の繊維断面図の一例を示す。
【図3】本発明に使用する分割型複合繊維の繊維断面図の一例を示す。
【符号の説明】
1.第1成分
2.第2成分

Claims (13)

  1. 繊維(分子構造がシンジオタクチックポリ(1,2−ブタジエン)構造である樹脂から成るものを除く)から成る不織布が親水化処理されている電池用セパレータであって、当該不織布が、ポリ(4−メチルペンテン−1)または4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体からなるメチルペンテン系重合体を第1成分とし、第1成分とは異なるポリオレフィン系重合体またはその共重合体を第2成分とし、繊維断面において2成分が交互に隣接して配置され、2成分のうち少なくとも1成分が2個以上に分割されてなる分割型複合繊維と、鞘成分を高密度ポリエチレンとし、芯成分をポリプロピレンとした鞘芯型のポリオレフィン系複合繊維の少なくとも2種類の繊維を含有し、該分割型複合繊維および該ポリオレフィン系複合繊維の含有量がそれぞれ60重量%を超えない範囲であことを特徴とする電池用セパレータ。
  2. 分割型複合繊維の含有量が15〜60重量%、ポリオレフィン系複合繊維の含有量が20〜60重量%であることを特徴とする請求項1記載の電池用セパレータ。
  3. 他の合成繊維40重量%を超えない範囲で含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の電池用セパレータ。
  4. 不織布が、分割型複合繊維を構成する2成分において実質的に溶融することなく、ポリオレフィン系複合繊維の成分により熱融着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  5. 分割型複合繊維、ポリオレフィン系複合繊維、および他の合成繊維の繊維長が、3〜25mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  6. 不織布が、繊維長の異なる繊維ウェブ同士を積層されてなる複合不織布であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の不織布の少なくとも一部の層に他のシートを積層してなる複合シートであって、該複合シートが親水化処理されていることを特徴とする電池用セパレータ。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の親水化処理された不織布の少なくとも一部の層に他のシートが積層されていることを特徴とする電池用セパレータ。
  9. 分割型複合繊維が、メチルペンテン系重合体を第1成分とし、ポリプロピレン系重合体を第2成分とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  10. 親水化処理が、スルホン化処理であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  11. スルホン化処理が、発煙硫酸処理、クロロスルホン酸処理、あるいは無水硫酸処理のいずれか1つであることを特徴とする請求項10記載の電池用セパレータ。
  12. スルホン化度が、0.4〜2重量%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の電池用セパレータを組み込んだ電池。
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