JP4377773B2 - 電池セパレータおよび電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電池セパレータおよびこれを用いた電池に関する。
従来から、電池セパレータとして種々の構成の不織布が提案されている。電池セパレータに対しては、(1)正極と負極との間で短絡が生じないように緻密な構造を有すること、(2)極板に巻き付けるときに加えられる張力によって破断されないように高い引張強力を有すること、(3)極板が本来的に有する凹凸または電池使用中に生成される極板表面の堆積物に由来する、いわゆる「バリ」が貫通することに起因する短絡を避けるために、高い突き刺し強力を有することが主に要求されている。これまでに提案されてきた不織布の多くは、これらの要求特性の少なくとも1つを向上させることを目的としている。
例えば、特許文献1(特開2003−142061号公報)は、繊維径が細く低目付重量であって、強度等に優れた電池セパレータ用不織布として、メタロセン触媒によって重合された特定の特性を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を芯鞘型複合繊維の鞘成分とする不織布であって、芯鞘型複合繊維の鞘部の割合が30〜70重量%、繊維径が3〜30μm、不織布の目付重量が30〜80g/mである不織布からなる電池セパレータ用不織布を提案している。特許文献2(特開2002−298821号公報)は、破断、突き抜けが生じにくく、かつ地合いの優れる電池セパレータとして、温度140℃における収縮率が8%以下のポリプロピレン系繊維が、プロピレン系共重合体を融着成分とする融着繊維によって融着された不織布を備えている電池セパレータを提案している。特許文献3は、高度にスルホン化でき、かつ不織布強力低下が少ない電池セパレータ用不織布として、繊維表面の少なくとも一部にエチレン含有量が3〜20重量%であるエチレン−プロピレン系共重合体またはその混合体が露出してなる熱可塑性合成繊維と、ポリオレフィン系分割型複合繊維を各々の成分に分割した繊度0.5dtex以下の極細繊維を含有する繊維集合体であって、繊維集合体がスルホン化処理されている電池セパレータ用不織布を提案している。
特開2003−142061号公報 特開2002−298821号公報 特許第3471255号公報
電池用セパレータは、より高い特性を有することが常に望まれており、その意味では前記特許文献1〜3の電池セパレータはなお改善の余地を有するものである。例えば、特許文献1では、電池セパレータ用不織布を製造する方法としてメルトブローン法を具体的に挙げているが、メルトブローン法により製造される不織布の構成繊維は延伸されていないために強力が小さい。したがって、メルトブローン不織布の強度は概して小さく、繊維同士を熱融着させたとしても十分な突き刺し強力を得ることは困難である。また、特許文献2および3に実施例として具体的に記載されている不織布は、融着性繊維の融着力を使用してある程度の引張強力および突き刺し強力を実現しているが、電池製造の分野ではさらに高い引張強力および突き刺し強力が要求されている。
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、より高い機械的強度を有する電池セパレータを提供することを課題とする。
本発明者らは、繊維同士を接合する接着性繊維の繊度に着目し、これを細繊度化することにより、不織布の機械的強度、特に突き刺し強力が向上することを見出し、本発明を案出するに至った。さらに、本発明者らは、特定のエチレン−プロピレン共重合体を使用すれば、熱接着性に優れた細繊度の熱接着性繊維を複合繊維の形態で得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電池セパレータは、エチレン含有量が1mass%以上3mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が97mass%以上99mass%以下の範囲内にある、メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tf1よりも高い紡糸後の融点Tf2を有する熱可塑性重合体を含む第2成分とから成り、かつ第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めており、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後の複合繊維の低温側の融解ピーク温度が140℃以上160℃以下であって、繊度が1.5dtex以下である複合繊維を10mass%以上含む不織布であり、
当該複合繊維の第1成分によって繊維同士が熱接着されており
当該複合繊維が第1成分を鞘成分とし、第2成分を芯成分とする、芯鞘型または偏心芯鞘型複合繊維である
電池セパレータである。
本発明の電池セパレータは、熱接着性繊維として、特定のエチレン−プロピレン共重合体が熱接着性成分であり、その繊度が1.5dtex以下である複合繊維を含むことを特徴とする。このような細い繊度の複合繊維を得る具体的な方法、およびそのような複合繊維を熱接着性繊維として使用して突き刺し強力が向上した電池セパレータを得ることは、従来の技術が教示していなかったことである。また、本発明の電池セパレータは、熱接着性複合繊維が細繊度であるために、より緻密であって、より良好な地合いを有するものとなる。さらにまた、この特定のエチレン−プロピレン共重合体を使用して作製した不織布は種々の親水化処理に適しており、したがって、本発明の電池セパレータは用途等に応じて所望の親水化処理が施された形態にて提供される。
上記特定のエチレン−プロピレン共重合体を熱接着性成分とする熱接着性複合繊維(単に「熱接着性複合繊維」とも呼ぶ)は、第1成分であるエチレン−プロピレン共重合体を鞘成分とし、第2成分を芯成分とする、芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘形態の熱接着性複合繊維は、高い熱接着強力を発揮し、不織布の機械的強度をより高くする。
本発明の電池セパレータは、2以上の成分から成る分割型複合繊維の分割により形成された繊度0.3dtex以下の極細繊維を10mass%以上の割合でさらに含んで成ることが好ましい。そのような極細繊維は、不織布を緻密なものとして、表面の地合いを良好にするとともに、不織布の吸液性および保液性を向上させる。分割型複合繊維として好ましく用いられる繊維は、A成分とB成分とから成る2成分系の複合繊維であって、A成分/B成分の組合せが、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリプロピレン、またはポリメチルペンテン/ポリプロピレンである複合繊維である。
本発明の電池セパレータを構成する不織布は、ポリプロピレンが繊維表面の少なくとも一部を占めて成る繊維(本明細書においてこの繊維を単にポリプロピレン繊維と呼ぶことがある)を10mass%以上さらに含むことが好ましい。ポリプロピレン繊維は、特に後述する湿式抄紙法で不織布を製造する場合に、不織布が製造中に収縮することを防止し、不織布の形態保持性を向上させる。
本発明の電池セパレータを構成する不織布は、繊維長2〜20mmの繊維からなる湿式抄紙法で製造された不織布であって、繊維同士が交絡しているものであることが好ましい。そのような不織布は緻密であって、かつ高い機械的強度を有する。繊維同士は好ましくは水流交絡処理により交絡される。
本発明の電池用セパレータは、前記構成を有することにより、単位目付あたり0.2N以上の突き刺し強力を呈するものとして提供され得る。ここで、突き刺し強力は、ハンディー圧縮試験機(カトーテック社製のKES−G5)を用いて以下の手順で測定される値をいい、単位目付あたりの突き刺し強力は当該値を不織布の目付で除した値をいう。突き刺し強力の測定手順は次のとおりである。まず、縦30mm、幅100mmの大きさに裁断した不織布を試料として準備する。この試料を、ハンディー圧縮試験機の円筒状貫通孔(直径11mm)を有する支持体の上に置き、さらにその上に縦46mm、横86mm、厚さ7mmのアルミ板の中央部に直径11mmの孔を有する押さえ板を、当該孔が支持体の円筒状貫通孔と一致するように載置する。次いで、高さ18.7mm、底面直径2.2mm、先端部形状が1mmの球形である円錐形状の針を、2mm/秒の速度で押さえ板の中央に垂直に突き刺した時の荷重を測定し、測定した荷重のうち最大荷重(N)を突き刺し強力とする。突き刺し強力は、1枚の電池セパレータから4枚の試料を採取し、それぞれの試料について異なる15箇所で測定し、計60箇所で測定した値の平均値とする。
本発明はまた、上記本発明の電池セパレータが組み込まれた電池を提供する。本発明の電池は、高い突き刺し強力を有する本発明の電池セパレータによって正極と負極とが良好に分離され、短絡が有効に防止された、高品質のものとして提供される。
本発明の電池セパレータは、細繊度のポリオレフィン系熱接着性複合繊維を含み、それが繊維同士を加熱により接合することによって、高い突き刺し強力を有することを特徴とする。したがって、この電池セパレータを使用すると、極板の凹凸が突き刺さるために生じる短絡を特に有効に防止できる。また、細繊度の熱接着性複合繊維は、不織布をより緻密にして、不織布の地合いをより均一にするから、本発明の電池セパレータは、不織布の粗密に起因する短絡の発生をも有効に防止するとともに、優れた保液性および吸液性を示す。このような本発明の効果は、細繊度のポリオレフィン系熱接着性複合繊維と、極細繊維およびポリプロピレン繊維とを組み合わせることによって、より顕著なものとなる。
本発明の電池セパレータを構成する不織布は、前述のとおり、
(1)エチレン含有量が1mass%以上3mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が97mass%以上99mass%以下の範囲内にあるエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、
(2)エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tf1よりも高い紡糸後の融点Tf2を有する熱可塑性重合体を含む第2成分とから成り、
(3)第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めてなり、
(4)JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後の複合繊維の低温側の融解ピーク温度が140℃以上160℃以下であって、
(5)繊度が1.5dtex以下である
熱接着性複合繊維を含む。
この熱接着性複合繊維は、紡糸後の複合繊維の低温側ピーク温度(一つだけピークが生じる場合には一つのピーク温度)が比較的高いことを特徴とする。即ち、熱接着性成分であるエチレン−プロピレン系共重合体は、比較的高い融点を有し、それに伴って比較的高い結晶化温度を有するものである。そのため、この熱接着性複合繊維は、溶融紡糸時においてフィラメント間で融着が生じにくく、したがって、紡糸時の引き取り速度を高くして細繊度の繊維として得ることができる。具体的には、この熱接着性複合繊維は、繊度1.5dtex以下、より好ましくは繊度1.3dtex以下の繊維として提供され得る。繊度の好ましい下限は、0.1dtex以上、より好ましくは0.5dtex以上である。繊度がこれを下回ると、繊維同士の接着強力が低下し、引張強力及び突き刺し強力が低下することがある。
さらに、この熱接着性複合繊維は、上記条件を満たすようなエチレン−プロピレン共重合体を選択することにより、比較的低い温度で溶融または軟化を開始する性質を有する。したがって、この熱接着性複合繊維は、その低温側融解ピーク温度が上記のように高いにもかかわらず、ポリエチレンを熱融着性成分とする熱融着性複合繊維において常套的に採用されている温度(例えば130℃〜135℃)にて、接着可能であるという性質を有する。
この熱接着性複合繊維は、エチレン含有量が1mass%以上3mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が97mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸前の樹脂の融点T(℃)および結晶化温度Tc(℃)が下記の条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体が第1成分として繊維表面の少なくとも一部を占めるように、第2成分とともに溶融紡糸することにより得られる。
(A)T≦140℃、
(B)97≦Tc≦(T−20)。
上記条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体として、メタロセン触媒により重合されたプロピレン共重合体が挙げられる。メタロセン触媒により重合されるエチレン−プロピレン共重合体は、熱接着性成分の融点Tf1未満の温度で熱接着処理される場合でも、高い接着強力を示し、好ましい。そのようなエチレン−プロピレン共重合体として、より具体的には、例えば、日本ポリプロ(株)製のOX1066A(商品名)などが挙げられる。即ち、熱接着性複合繊維の熱接着性成分は、メタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレン共重合体であることが好ましい。メタロセン触媒を用いると、従来のエチレン−プロピレン共重合体(例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて得たエチレン−プロピレン共重合体)と比較して、同じ融点であっても高い結晶化温度を有する共重合体が得られやすいので好ましい。さらに核剤を添加することで融点を余り変化させずに結晶化温度だけを高めることができるので(B)の条件を満たしやすい。
エチレン−プロピレン共重合体は、メタロセン触媒の存在下、所望のプロピレン含有量及びエチレン含有量となるよう調整されたモノマー比率のプロピレンとエチレンとを共重合して得られる。エチレン−プロピレン共重合体は造核剤を含んでいてよく、その場合には、より高い結晶化温度を得ることができる。
上述した範囲のQ値は、メタロセン触媒を用いることで容易に達成される。しかし、得られたエチレン−プロピレン共重合体のQ値が小さすぎる場合には、分子量の異なる二種以上のエチレン−プロピレン共重合体をブレンド又は重合ブレンドすることによりQ値を大きくし、また、得られたエチレン−プロピレン共重合体のQ値が大きすぎる場合には、過酸化物の存在下で溶融混練して分子量を減らすことによりQ値を小さくし、それによりQ値を所望の値に調整することも可能である。
第1成分は、エチレン−プロピレン共重合体以外の他の成分を含んでいてよい。その場合、第1成分において、エチレン−プロピレン共重合体の含有率は、好ましくは50mass%以上である。より好ましいエチレン−プロピレン共重合体の含有率は、80mass%以上であり、さらにより好ましくは90mass%以上であり、最も好ましくは95mass%以上である。第1成分において、エチレン−プロピレン共重合体の含有率が50mass%未満であると、十分な機械的強力を得られないことがある。第1成分に混合される他の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリブテン−1である。特に、ポリプロピレンを混合すると、第2成分を後述するようにポリプロピレンとする場合に、第1成分と第2成分との相溶性がより良好となり、層間剥離がより生じにくくなる。
第2成分として用いる熱可塑性樹脂は、紡糸後の融点Tf2がTf1よりも高くなる樹脂である。具体的には、第2成分は、その紡糸前の樹脂融点Tが前記プロピレン共重合体の樹脂融点Tよりも15℃以上高いものであることが好ましい。そのような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびその共重合体などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、およびその共重合体などのポリアミド樹脂、ならびにポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。第2成分は、これらから選択される1種の樹脂を用いて、または2種以上の樹脂を混合して構成される。特に、ポリプロピレン樹脂は、エチレン−プロピレン共重合体との相溶性に優れるため、これを第2成分とした場合には、第1成分との間で層間(または界面)剥離が生じにくい。したがって、第2成分をポリプロピレンとする熱接着性複合繊維を使用して電池用セパレータを作製した場合には、高い引張強力および突き刺し強力が得られる。また、電池用セパレータを耐薬品性に優れるオレフィン系繊維で構成するという観点からも、第2成分としてポリプロピレンの使用することが望ましい。
熱接着性複合繊維の複合形態は、第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めるように配置される限りにおいて特に限定されない。熱接着性複合繊維は、例えば、第1成分を鞘成分とし、第2成分を芯成分とする芯鞘型もしくは偏心芯鞘型、並列型、分割型、または海島型などの複合断面を有するものであってよい。本発明においては、熱接着性複合繊維は特に芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維とする場合には、鞘成分と芯成分の複合比(容積比)は10/90〜90/10であることが好ましい。鞘成分の容積比が10未満であると、不織布に十分な強力を与えることができず、90を越えると繊維自体の強力が低下して、工程性が低下する。
上記エチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、第2成分とを複合紡糸して、繊度1.5dtex以下の芯鞘型の熱接着性複合繊維を得る方法を説明する。当業者であれば、下記に説明する方法を応用して、他の形態の複合繊維を製造できるであろう。
まず、第1成分および第2成分となる樹脂をそれぞれ用意する。次いで、常套の溶融紡糸機を用いて鞘芯型複合ノズルからそれぞれの樹脂を押し出して複合紡糸して、紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントの繊度は、延伸条件にもよるが最終的に1.5dtex以下の繊維を得るには、好ましくは3dtex以上9dtex以下とする。この場合紡糸時の引取速度は、ノズルのホール数や樹脂の吐出量にもよるが、一般には1000m/min以上とされる。このような引取速度を採用する場合、樹脂の結晶化の進行が遅い場合には、冷却不足などに起因するフィラメント間の融着が発生しやすい傾向にある。しかし、所定の結晶化温度を有する前記エチレン−プロピレン共重合体を使用する場合には、引取速度が1500m/min以上であっても、フィラメント間の融着を防止することができる。
エチレン−プロピレン共重合体を紡糸する際の紡糸温度は、200℃以上、260℃以下の範囲内にあることが好ましい。エチレン−プロピレン共重合体の紡糸温度が200℃未満であると、紡糸性に影響を及ぼす恐れがある。一方、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸温度が260℃を超えると、紡糸直後の冷却が不足してフィラメント間の融着が発生する可能性がある。
一方、第2成分の紡糸温度は、用いる樹脂、およびその紡糸性を考慮して適宜設定する。第1成分として、前記所定の融点および結晶化温度を有するエチレン−プロピレン共重合体を用いることにより、第2成分がポリエステル樹脂であって、その紡糸温度を例えば260℃と高くする必要がある場合でも、フィラメント間の融着の発生を防止できる。第2成分の紡糸温度の上限は、好ましくは330℃である。第2成分の紡糸温度が330℃を超えると、紡糸後のフィラメントを十分に冷却することができず、フィラメント間の融着が発生する可能性がある。
次いで、前記紡糸フィラメントを常套の延伸処理機を用いて延伸処理して、延伸フィラメントを得る。延伸処理は、延伸温度を50℃以上、100℃以下の範囲として実施することが好ましい。また延伸倍率は、2倍以上とすることが好ましい。より好ましい延伸倍率の下限は、2.5倍である。より好ましい延伸倍率の上限は、6倍である。延伸温度が50℃未満であると、延伸が不十分となり、単繊維強度や単繊維伸度に影響を及ぼす傾向にある。延伸温度が100℃を超えると、延伸中に破断が生じ易く、十分な延伸ができない。従来、エチレン−プロピレン共重合体繊維を製造する場合には、延伸温度が80℃以上を超えると、フィラメントが延伸中に破断する傾向にあり、単繊維強度が十分に得られないことがあった。これに対し、上記特定のエチレン−プロピレン共重合体を使用する場合には、延伸温度を80℃以上としても延伸を実施できるので、得られる短繊維は単繊維強度に優れ、特に好ましい。また、延伸倍率が2倍未満であると、単繊維強度および単繊維伸度などが小さくなる傾向にあり、得られた繊維のカード通過性が不十分となることがある。延伸方法は、温水または熱水中で実施する湿式延伸法、および乾式延伸法など公知の方法のいずれを採用してもよい。
得られた延伸フィラメントには、必要に応じて所定量の繊維処理剤が付着され、必要に応じてクリンパー(捲縮付与装置)で機械捲縮が与えられる。次いで、フィラメントは、必要に応じてアニーリング処理あるいは乾燥処理に付され、その後、用途等に応じて、所望の繊維長に切断される。例えば、湿式不織布用の繊維を製造する場合には機械捲縮を付与せずに、2〜20mm程度の繊維長にカットして、乾燥させずに(または乾燥処理は施すが若干の水分を残したまま)、不織布製造に使用する。
本発明の電池セパレータを構成する不織布は、上記熱接着性複合繊維を10mass%以上含み、好ましくは10mass%以上80mass%以下の範囲内で含み、より好ましくは20mass%以上60mass%以下の範囲内で含む。熱接着性複合繊維の割合が少ないと、不織布の機械的強度が不十分となる。
本発明の電池用セパレータは、上記熱接着性複合繊維が10mass%以上含まれている限りにおいて、それ以外の繊維は任意の繊維としてよい。前述したとおり、本発明の電池用セパレータは、繊度が0.3dtex以下である極細繊維を10mass%以上含むことが好ましく、あるいはポリプロピレン繊維を10mass%以上含むことが好ましく、極細繊維とポリプロピレン繊維をともに10mass%以上含むことがより好ましい。
極細繊維は、分割型複合繊維が分割して形成されたものであることが好ましい。分割型複合繊維は、2以上の重合体成分が、放射状(もしくは菊花状)または層状に配置されてなる複合繊維である。本発明においては、2成分からなる分割型複合繊維が好ましく用いられ、例えば、ポリオレフィン系重合体/ポリアミド系重合体、ポリプロピレン/エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリメチルペンテン/ポリエチレン等から成る分割型複合繊維が使用される。本発明においては、エチレン−プロピレン共重合体と良好に接着する、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリプロピレン、またはポリメチルペンテン/ポリプロピレンの組合せが好ましく用いられる。
分割型複合繊維の製造方法等は公知であり、したがってここではその製造方法等について詳述しない。分割型複合繊維は、例えば流体流を作用させることによって分割させることができ、後述するように水流交絡処理によって繊維同士を交絡させるときに、分割型複合繊維の分割を同時に進行させることができる。あるいは、湿式抄紙法により不織布を製造する場合には、使用する繊維長が短いために、抄紙の際の離解処理時に受ける衝撃によって分割型複合繊維の分割が生じることもある。
分割型複合繊維は、分割後に各成分が繊度0.3dtex以下の極細繊維を形成するように分割数および分割前の繊度を選択して製造される。具体的には、分割型複合繊維は、分割数6〜30の繊度0.5〜5dtexの複合繊維として製造されることが好ましい。
次にポリプロピレン繊維について説明する。ポリプロピレンが繊維表面の少なくとも一部を占めて成る繊維は収縮しにくいため、本発明の電池セパレータにおいて「骨材」的な役割をして、不織布の形態保持性を向上させる。そのような役割は他の樹脂が繊維表面の少なくとも一部から成る繊維であっても果たしうるが、ポリプロピレンは、エチレン−プロピレン共重合体との接合性が良好であることから、特に好ましく用いられる。ポリプロピレン繊維は、好ましくはポリプロピレンのみから成る単一繊維である。ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンが繊維表面全部を占める芯鞘型複合繊維であってよい。ポリプロピレン繊維は、0.1dtex以上4dtex以下の繊度を有することが好ましい。繊度が0.1dtex未満であると不織布の形態を十分に保持することができないことがあり、繊度が4dtexを越えると不織布の緻密性が損なわれ、地合いが悪くなることがある。可能な場合には、ポリプロピレン繊維に代えて他の樹脂(例えば、ポリメチルペンテン等)が繊維表面の一部または全部を占める繊維を使用して不織布の形態保持性を向上させてよい。
本発明の電池セパレータは、前述のように、極細繊維とポリプロピレン繊維をともに含むことが好ましい。その場合には、熱接着性複合繊維の割合を10mass%以上80mass%以下、極細繊維の割合を10mass%以上80mass%以下、ポリプロピレン繊維の割合を10mass%以上80mass%以下とすることが好ましく、熱接着性複合繊維の割合を20mass%以上60mass%以下、極細繊維の割合を20mass%以上60mass%以下、ポリプロピレン繊維の割合を20mass%以上60mass%以下とすることがより好ましい。
本発明の電池セパレータは、上述した繊維以外の繊維をさらに含んでよい。例えば、他の熱接着性繊維を含んでよく、あるいは、天然繊維、再生繊維、または合成樹脂から成る他の繊維を含んでよい。
次に、上記した繊維を用いて本発明の電池セパレータを製造する方法を説明する。本発明の電池セパレータは、上記した繊維を用いて不織布を作製し、それを好ましくは親水化処理に付すことによって得られる。不織布の製造は常套の方法に従って実施される。具体的には、まず、繊維長が10mm以上80mm以下の範囲内にある上記繊維を用いてカード法またはエアレイ法等の乾式法により、または繊維長が2mm以上20mm以下の範囲内にある上記繊維を用いて湿式抄紙法により繊維ウェブを作製する。本発明においては、湿式抄紙ウェブを作製することが好ましい。湿式抄紙ウェブを使用して作製する不織布は、一般的に緻密であって、良好な地合いを有するからである。さらに、分割型複合繊維を使用する場合には、短い繊維の使用を要する湿式抄紙法は結果的に分割型複合繊維の分割率を高くするので、極細繊維の存在割合がより高い不織布の製造を可能にする。
次いで、繊維ウェブを熱接着処理に付して、熱接着性複合繊維のエチレン−プロピレン共重合体成分により繊維同士を接着する。熱接着処理の条件は、繊維ウェブの目付、熱接着性複合繊維の断面形態および混合割合等に応じて適宜選択され、例えば、熱処理機としては、シリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)、熱風吹き付け加工機、熱ロール加工機、熱エンボス加工機等を用いることができる。特にシリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)は、不織布の厚みを調整しながら、繊維同士を熱接着させることができる点で好ましい。シリンダードライヤーの熱処理温度は、120〜150℃であることが好ましく、125〜145℃であることがより好ましく、125℃以上熱接着性複合繊維のエチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tf1℃未満であることが特に好ましい。
熱接着処理は、後述のように、繊維ウェブを水流交絡処理に付す場合には、水流交絡処理の前に実施することが好ましい。繊維ウェブの繊維同士を予め接合してから水流交絡処理を実施すると、繊維に高圧水流があたるときに繊維の「逃げ」が生じにくくなり、繊維同士を緊密に交絡させることができ、分割型複合繊維を使用する場合には、それがより分割しやすくなる。尤も、熱接着処理は、繊維同士を交絡させた後に実施してもよい。即ち、熱接着処理と水流交絡処理の順序は、所望の不織布が得られる限りにおいて特に限定されない。
本発明の電池用セパレータを構成する不織布においては、繊維同士が交絡していることがより好ましい。繊維同士が交絡することにより、より高い機械的強力を不織布に付与することができる。繊維同士を交絡させる手法としては、高圧水流の作用により繊維同士を交絡させる水流交絡処理が好ましく用いられる。水流交絡処理によれば、不織布全体の緻密さを損なうことなく、繊維同士を強固に交絡させることができる。分割型複合繊維を使用する場合には、前述のように、水流交絡処理によって、繊維同士の交絡と同時に当該分割型複合繊維の分割および分割により生じた極細繊維同士の交絡をも進行させることができる。
水流交絡処理の条件は、使用する繊維ウェブの種類および目付、ならびに繊維ウェブに含まれる繊維の種類および割合等に応じて、適宜選択される。例えば、目付10〜100g/mの湿式抄紙ウェブを水流交絡処理に付す場合には、繊維ウェブを70〜100メッシュ程度の平織り構造等の支持体に載置して、孔径0.05〜0.3mmのオリフィスが0.5〜1.5mmの間隔で設けられたノズルから、水圧1〜15MPa、より好ましくは2〜10MPaの柱状水流を繊維ウェブの片面または両面にそれぞれ1〜10回ずつ噴射するとよい。その後、乾燥処理を施して、親水化処理に付す。乾燥処理は、熱接着性複合繊維の熱接着性成分が溶融しないような温度で実施することが好ましい。具体的には、乾燥処理は、熱接着性成分の融点Tf1よりも5℃以上低い温度で処理することが好ましい。例えば、90〜130℃に設定された熱風を吹き付けることにより実施する。
親水化処理は、電池セパレータの製造において常套的に用いられている任意の方法を用いて実施してよい。親水化処理は、具体的には、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、スルホン化処理、放電処理、界面活性剤処理または親水性樹脂付与処理等である。特に、本発明においては、経時的な親水性低下が小さいことからフッ素ガス処理が好ましく用いられる。
フッ素ガス処理は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)等で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、および二酸化硫黄ガスから選択される少なくとも1種類のガスとを混合した混合ガスに不織布を曝して実施する。
ビニルモノマーのグラフト重合処理は、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドンまたはスチレンを使用し、これを加熱、放射線照射、または紫外線照射等の方法により重合させて実施する。
スルホン化処理は、発煙硫酸反応槽、クロロスルホン酸反応槽、あるいは無水硫酸反応槽に不織布を晒して、スルホン基を導入する方法、または一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガスまたは三酸化硫黄ガス等の存在下で放電を作用させて、不織布にスルホン基を導入する方法により実施される。
放電処理は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理または電子線処理等である。界面活性剤処理は、アニオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤の溶液に不織布を浸漬する、またはこの溶液を不織布に塗布もしくはスプレーする方法で実施される。親水性樹脂付与処理は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸等の親水性樹脂を付着させる方法により実施される。親水性樹脂の不織布への付着は、不織布をこれらの樹脂が溶媒中に分散もしくは溶解した液中に浸漬し、またはこの液を不織布に塗布もしくはスプレーした後、溶媒を乾燥させる方法により実施される。
本発明の電池セパレータを構成する不織布は、好ましくは10g/m以上100g/m以下の範囲内にある目付を有し、より好ましくは20g/m以上90g/m以下の範囲内にある目付を有し、特に好ましくは30g/m以上70g/m以下の範囲内にある目付を有する。目付が10g/m未満であると、不織布に粗密が生じて、電池セパレータとして使用したときに短絡が生じることがある。目付が90g/mを越えると、電池セパレータの厚さが大きくなって、その分、電池内の正極および負極の量が少なくなる。
このようにして得られる本発明の電池セパレータは、高い突き刺し強力を実現することが可能であり、例えば、熱接着性複合繊維を20mass%以上60mass%以下、分割型複合繊維が分割して形成された極細繊維を20mass%以上60mass%以下、ポリプロピレン繊維を20mass%以上60mass%以下含み、10〜100g/m程度の目付を有する場合には、単位目付あたり0.12N以上の突き刺し強力を有し、より好ましくは単位目付あたり0.16N以上の突き刺し強力を有し、より好ましくは単位目付あたり0.2N以上の突き刺し強力を有するものとなる。単位目付けあたりの突き刺し強力の上限は特に限定されるものではないが、0.4N以下であることが好ましい。このように高い突き刺し強力は、繊維同士を接合する熱接着性複合繊維が細繊度であって、例えば極板上の凸部が通過しうる貫通孔となる部分が形成されにくい不織布構造をもたらすために達成されると推察される。
本発明の電池セパレータは各種の電池に組み込まれて、電池を構成する。例えば、円筒型ニッケル水素二次電池においては、ニッケル正極板と水素吸蔵合金負極板とを本発明の電池セパレータを介して渦巻き状に巻回することができる。あるいは、正極板と負極板との間に本発明の電池セパレータを配置して積層体となすことにより、角形のニッケル水素電池を得ることができる。本発明の電池セパレータは、それ以外の電池、例えば、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−鉄二次電池、またはニッケル−亜鉛二次電池に使用してよい。
以下、本発明の内容について実施例を挙げて具体的に説明する。
(実施例1)
[熱接着性複合繊維1の製造]
鞘成分(第1成分)として融点Tが136℃、MFRが25g/10min、Q値が2.6〜2.8、エチレン含有量が2mass%、プロピレン含有量が98mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合したもの(日本ポリプロ(株)製、商品名OX1066A)を使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが26g/10min、Q値が6.5の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03A)を用いた。ここで、融点TおよびTは、セイコー(株)製DSCを使用し、サンプル量を5.0mgとして、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温スピードで冷却し、それから10℃/minの昇温スピードで融解させて得た融解熱量曲線から求めた値である。
鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を315℃として溶融押出し、引き取り速度1350m/minで引き取り、繊度2.2dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で2.4倍に延伸し、繊度1.3dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、フィラメントを10mmの繊維長に切断して、エチレン−プロピレン共重合体を熱接着性成分とする熱接着性複合繊維を湿式不織布用の短繊維として得た。得られた繊維について、セイコー(株)製DSCを使用し、サンプル量を6.0mgとして、10℃/minの昇温スピードで常温から200℃まで昇温し、5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温スピードで冷却して、得られた融解熱量曲線から低温側の融解ピーク温度を測定したところ、143℃であった。
[電池セパレータの製造]
この熱接着性複合短繊維30mass%と、エチレンビニルアルコール/ポリプロピレンから成る菊花状の繊維断面を有する、分割数が16であり、繊維長および繊度がそれぞれ4mmおよび1.4dtexである分割型複合繊維40mass%と、融点163℃のポリプロピレンから成り、繊維長および繊度がそれぞれ10mmおよび2.2dtexであるポリプロピレン繊維(大和紡績(株)製、PNHC)30mass%とを混合した。この混合物が0.5mass%の濃度になるようにスラリーを調製し、パルパーにて30分間攪拌して三つの繊維を離解させた。このとき、分割型複合繊維の分割がある程度発現していた。その後、円網式湿式抄紙機を用いて湿式抄紙し、搬送用支持体で搬送し、131℃に加熱したシリンダードライヤーを用いて、湿式抄紙ウェブ層を乾燥すると同時に熱接着性複合繊維の鞘成分で繊維同士を接着させた。
熱接着性繊維により繊維同士を接着した湿式ウェブを、メッシュ数が80メッシュの平織構造の支持体に載置し、孔径0.5mmのオリフィスが1mm間隔で設けられているノズルから、ウェブの一方の面(第1表面)に1.96MPaの柱状水流を噴射した後、4.9MPaの柱状水流、および7.8MPaの柱状水流を順に噴射し、他方の面(第2表面)に4.9MPaの柱状水流を噴射し、次いで7.8MPaの柱状水流を噴射して繊維同士を交絡させるとともに、分割型複合繊維を分割させて不織布を得た。この不織布においては、分割型複合繊維の分割により約0.08dtexの極細繊維が形成されていた。さらに、水流交絡処理後の不織布は、熱風吹き付け加工機を用いて、125℃で乾燥処理して、親水化処理に付した。
得られた不織布を、フッ素1%および亜硫酸ガス3%を含む(残部は窒素ガス)混合ガスで処理することによりフッ素ガス処理し、不織布に親水性を付与した。フッ素ガス処理した不織布は、5%KOH水溶液を用いて、洗浄速度3.0m/分にてアルカリ洗浄し、乾燥させて、最後にカレンダーロールで厚み加工を実施し、最終的に表1に示す目付および厚さを有する電池セパレータを得た。
(実施例2)
分割型複合繊維として、ポリメチルペンテン/ポリプロピレンから成る菊花状の繊維断
面を有する、分割数が8であり、繊維長および繊度がそれぞれ6mmおよび2.2dtexである繊維を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、表1に示す目付および厚さを有する電池セパレータを得た。
(比較例1)
[熱接着性複合繊維2の製造]
鞘成分(第1成分)として融点Tが138℃、MFRが25g/10min、Q値が4、エチレン含有量が4.4mass%、プロピレン含有量が95.6mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、チーグラー・ナッタを用いて重合したもの(出光石油化学(株)製、商品名Y2045GP)を使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが30g/10min、Q値が3の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03B)を用いた。
鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を270℃として溶融押出し、引き取り速度650m/minで引き取り、繊度5.6dtexの紡糸フィラメントを得た。
前記紡糸フィラメントを70℃の温水中で2.7倍に延伸し、繊度2.2dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、フィラメントを5mmの繊維長に切断して、エチレン−プロピレン共重合体を熱接着性成分とする熱接着性複合繊維を湿式不織布用の短繊維として得た。得られた繊維について、実施例1と同様にして低温側の融解ピーク温度を測定したところ、143℃であった。
[電池セパレータの製造]
熱接着性複合繊維1に代えて熱接着性複合繊維2を使用したこと以外は実施例1と同様にして、電池セパレータを得た。
各電池セパレータの性能を以下に説明する方法で測定した。結果を表1に示す。
[引張強力]
JIS−L−1096に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機((株)エー・アンド・ディー製、テンシロンUCT−1(商品名)を用いて引張速度30cm/分で伸長し、切断時の荷重値を引張強力とした。
[引裂強力]
JIS−L−1085 5.5.A−1法(シングルタング法)に準じ、引張試験機((株)エー・アンド・ディー製、テンシロンUCT−1(商品名)を用いて測定した。本実施例では、試験片として、幅5cm×長さ15cmにカットした長方形片の短辺の中央に辺と直角に8cmの切れ目を入れて2枚の舌をつくったものを用い、つかみ間隔10cmとして、引張速度30cm/分で引き裂いたときの最大荷重を測定した。
[突き刺し強力]
縦30mm、幅100mmの大きさに裁断した不織布を試料として準備した。この試料を、ハンディー圧縮試験機(カトーテック社製のKES−G5)の円筒状貫通孔(直径11mm)を有する支持体の上に置き、さらにその上に縦46mm、横86mm、厚さ7mmのアルミ板の中央部に直径11mmの孔を有する押さえ板を、当該孔が支持体の円筒状貫通孔と一致するように載置した。次いで、高さ18.7mm、底面直径2.2mm、先端部形状が1mmの球形である円錐形状の針を、2mm/秒の速度で押さえ板の中央に垂直に突き刺した時の荷重を測定し、測定した荷重のうち最大荷重(N)を突き刺し強力とした。突き刺し強力は、1枚の電池セパレータから4枚の試料を採取し、それぞれの試料について異なる15箇所で測定し、計60箇所で測定した値の平均値とした。また、単位目付あたりの突き刺し強力は、この値を目付で除すことにより求めた。
[保液率]
試験片の水分平衡状態の質量(W)を1mgまで測定する。次に比重1.30のKOH溶液中に試験片を浸漬し、KOH溶液を1時間吸収させたのち液中から引き上げて10分間放置した後、試験片の質量(W1)mgを測定し、保液率(%)=((W1−W)/W)×100の式より保液率を算出した。
[吸液高さ]
電池セパレータから、幅×長さが25×250mmの試験片をその長さ方向がセパレータの縦(MD)方向と一致するように3枚採取し、水分平衡状態にした。次に、試験片を20℃に保った比重1.30のKOH溶液を入れた水槽上の一定の高さに支えた水平棒にピンでとめた。試験片の下端を一線に揃えて水平棒を下ろし、試験片の下端が5mmだけ液に浸かるように垂直に立て、毛細管現象によりKOH溶液が上昇した高さを30分後に測定し、3枚の試験片についての平均値を算出した。
Figure 0004377773
表1に示すように、実施例1、2および比較例1はいずれも、目付および厚さが略同じであり、吸液率および吸液高さもほぼ同じであり、機械的強力において差が生じた。実施例1のものは、比較例1のものと比較して、引張強力、引裂強力および突き刺し強力が高く、特に突き刺し強力が高くなった。細繊度の熱接着性複合繊維を使用することにより、不織布が緻密かつ均一な構造となり、それにより突き刺し強力が高くなったと考えられる。また、実施例1は、熱接着性成分としてメタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体を用いたので、比較例1のチーグラーナッタにより重合されたエチレン−プロピレン共重合体と融点Tf1は同じであったにもかかわらず、融点未満の温度で熱接着処理を施しても十分な接着強力が得られ、引張強力及び突き刺し強力が高くなった。
実施例2は実施例1のものよりも低い突き刺し強力を有していた。これは、実施例2で使用した分割型複合繊維が分割後に約0.2dtexの極細繊維を形成し、実施例1および比較例1で使用した分割型複合繊維よりも太い極細繊維を与えるものであり、不織布の緻密性が全体として低かったことによると考えられる。この結果もまた、不織布の緻密性が不織布の突き刺し強力に影響を与えることを示している。また、この結果は、本発明に従って細繊度の熱接着性複合繊維を使用することにより、他の構成繊維の繊度が太くなることに起因する突き刺し強力の低下を有効に抑制できることを示している。
本発明の電池セパレータは、繊度の小さい熱接着性複合繊維を使用することによって、より緻密な構造と高い機械的強度(特に突き刺し強力)とを備えたものとなるから、より低目付な形態で提供でき、より小型の又はより容量の大きい電池を製造するのに有用である。

Claims (8)

  1. エチレン含有量が1mass%以上3mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が97mass%以上99mass%以下の範囲内にある、メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tf1よりも高い紡糸後の融点Tf2を有する熱可塑性重合体を含む第2成分とから成り、かつ第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めてなり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後の複合繊維の低温側の融解ピーク温度が140℃以上160℃以下であり、繊度が1.5dtex以下である複合繊維を10mass%以上含む不織布であり、
    当該複合繊維の第1成分によって繊維同士が熱接着されており
    当該複合繊維が第1成分を鞘成分とし、第2成分を芯成分とする、芯鞘型または偏心芯鞘型複合繊維である、
    電池セパレータ。
  2. 2以上の成分から成る分割型複合繊維の分割により形成された、繊度0.3dtex以下の極細繊維を10mass%以上さらに含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
  3. 前記分割型複合繊維が、A成分とB成分とから成り、A成分/B成分の組合せが、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリプロピレンまたはポリメチルペンテン/ポリプロピレンである、請求項に記載の電池セパレータ。
  4. ポリプロピレンが繊維表面の少なくとも一部を占める繊維を10mass%以上さらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池セパレータ。
  5. 不織布を構成する繊維の繊維長が2〜20mmであり、不織布が湿式抄紙法により製造され、繊維同士が交絡されているものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池セパレータ。
  6. 単位目付あたりの突き刺し強力が0.12N以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池セパレータ。
  7. 不織布を構成する繊維の少なくとも一部が親水化処理されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池セパレータ。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電池セパレータが組み込まれている電池。
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