JPH1131495A - アルカリ電池用セパレータ - Google Patents

アルカリ電池用セパレータ

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JPH1131495A
JPH1131495A JP10124050A JP12405098A JPH1131495A JP H1131495 A JPH1131495 A JP H1131495A JP 10124050 A JP10124050 A JP 10124050A JP 12405098 A JP12405098 A JP 12405098A JP H1131495 A JPH1131495 A JP H1131495A
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Masanao Tanaka
政尚 田中
Nobutoshi Tokutake
信利 徳武
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電解液の保持性に優れ、更に、引張強さ、引
き裂き強度、及び剛軟度にも優れ、安定して製造するこ
とができ、しかも極板のバリがセパレータを突き抜けて
極板間でショートすることもないアルカリ電池用セパレ
ータを提供する。 【解決手段】 繊維長1〜25mm未満の短繊維からな
る繊維ウエブと繊維長25mm以上の長繊維からなる繊
維ウエブとを絡合して得られる混合層の1又はそれ以上
が、不織布全体の厚さの1/3以上である不織布からな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ電池用セ
パレータに関する。
【0002】
【従来の技術】アルカリ電池においては、従来から、正
極と負極とを分離して短絡を防止すると共に、電解液を
保持して起電反応を円滑に行なわせるために、正極と負
極との間にセパレータが使用されている。
【0003】近年、電子機器の小型軽量化に伴って、電
池の占めるスペースも小さくなっているにもかかわら
ず、電池には従来と同程度以上の性能が要求されるた
め、電池の高容量化が必要になっている。そのために
は、電極の活物質量を増加する必要があるので、必然的
に前記セパレータの占める体積が少なくならざるを得な
い。すなわち、セパレータの厚さを薄くする必要があ
る。しかしながら、従来のセパレータを単純に薄くする
だけでは、電解液の保持性が悪化したり、繊維の分散ム
ラが生じやすい。そこで、例えば、特開平7−2956
1号公報や特開平8−138645号公報には、分割し
て線密度60μg/m以下程度の極細繊維を発生可能な
分割性複合繊維を使用して、湿式法により繊維ウエブを
形成することにより、電解液の保持性を向上させたり、
繊維の分散性を向上させることが記載されている。この
ようなセパレータは、電解液の保持性や繊維の分散性の
点においては効果があるものの、電池製造での極板群組
立工程における張力によって破断したり、また、極板の
バリ及び/又は活物質がセパレータを突き抜けて極板間
でショートする場合があるため、歩留まりの悪いもので
あった。また、引き裂き強度や剛軟度が低いなどの問題
もあり、これらの点からも歩留まりが悪化していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、前記の従来技術の欠点を解消し、電解液の保持性に
優れ、更に、引張強さ、引き裂き強度、及び剛軟度にも
優れ、電池を安定して製造することができ、しかも極板
のバリなどがセパレータを突き抜けて極板間でショート
することもないアルカリ電池用セパレータを提供するこ
とにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題は、本発明によ
る、繊維長1〜25mm未満の短繊維と繊維長25mm
以上の長繊維とが絡合した混合層の合計の厚さが、不織
布全体の厚さの1/3以上である不織布からなることを
特徴とする、アルカリ電池用セパレータによって解決す
ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のアルカリ電池用セパレー
タは、繊維長1〜25mm未満の短繊維と、繊維長25
mm以上の長繊維とが絡合した混合層を少なくとも1つ
含む不織布であって、前記の混合層の厚さ(不織布が2
つ以上の混合層を含む場合には、各混合層の厚さの合
計)が、不織布全体の厚さの1/3以上である前記不織
布からなる。本明細書において、「混合層」とは、繊維
長1〜25mm未満の短繊維と繊維長25mm以上の長
繊維とが、絡合すると共に混在している層を意味する。
前記の混合層は、例えば、繊維長1〜25mm未満の短
繊維からなる繊維ウエブ(以下、短繊維ウエブと称する
ことがある)と、繊維長25mm以上の長繊維からなる
繊維ウエブ(以下、長繊維ウエブと称することがある)
とから積層体を形成し、その積層体に対して少なくとも
1回の絡合処理を実施することによって得ることができ
る。短繊維のみからなる層や長繊維のみからなる層と、
前記の混合層とは、例えば、セパレータの断面を顕微鏡
によって観察することによって明確に区別することがで
きる。例えば、短繊維のみからなる層1つ以上と、混合
層1つ以上と、長繊維のみからなる層1つ以上とからな
る不織布について、その断面を顕微鏡によって観察する
と、短繊維のみからなる層と混合層との境界、及び長繊
維のみからなる層と混合層との境界は、それぞれ明確に
確認することができる。
【0007】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成
することのできる不織布は、混合層を少なくとも1つ含
み、その合計の厚さが不織布全体の厚さの1/3以上で
ある限り、例えば、不織布中に含まれる混合層の数、混
合層以外の層(例えば、短繊維のみからなる層、又は長
繊維のみからなる層)の有無、又は混合層とそれ以外の
層との配置状態、若しくはそれらの種類(例えば、構成
繊維の種類)は、特に限定されるものではない。
【0008】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成
することのできる不織布は、後記の製造方法の説明にお
いて詳述するように、例えば、短繊維ウエブと長繊維ウ
エブとから積層体を形成し、その積層体を絡合処理する
ことによって得ることができるので、絡合した混合層以
外の層としては、例えば、絡合した短繊維層(すなわ
ち、繊維長1〜25mm未満の短繊維のみからなる層)
又は絡合した長繊維層(すなわち、繊維長25mm以上
の長繊維のみからなる層)を挙げることができる。例え
ば、短繊維ウエブ1つと長繊維ウエブ1つとからなる積
層体を絡合処理すると、短繊維ウエブ及び長繊維ウエブ
のそれぞれの厚さ、並びに絡合処理の程度に応じて、短
繊維層、混合層、及び長繊維層がこの順に配置された不
織布、短繊維層及び混合層からなる不織布、長繊維層及
び混合層からなる不織布、又は混合層のみからなる不織
布を得ることができる。混合層においては、短繊維層又
は長繊維層に比べて、電解液の分布が均一であるので、
本発明のアルカリ電池用セパレータを構成することので
きる不織布においては、不織布全体に占める混合層の割
合が高いほど好ましく、混合層の厚さが不織布全体の厚
さの2/3以上である不織布がより好ましく、混合層の
みからなる不織布が特に好ましい。
【0009】本発明のアルカリ電池用セパレータの製造
に用いる短繊維ウエブを構成する短繊維は、繊維長1〜
25mm未満の繊維である。繊維長1〜25mm未満の
短繊維は、繊維の分散性に優れており、繊維長がこの範
囲をはずれると、均一な繊維ウエブ自体を形成するのが
困難になったり、繊維の分散性が悪くなることがある。
短繊維ウエブを構成する短繊維として、繊維長5〜20
mmの繊維を用いることがより好ましく、繊維長10〜
20mmの繊維を使用することが特に好ましい。
【0010】本発明のアルカリ電池用セパレータの製造
に用いる長繊維ウエブを構成する長繊維は、繊維長25
mm以上の繊維である。繊維長25mm以上の長繊維
は、セパレータの引張強度、引き裂き強度、及び剛軟度
を向上させることができ、繊維長が25mm未満である
と、引張強度、引き裂き強度、又は剛軟度が充分に向上
しないことがある。長繊維ウエブを構成する長繊維とし
て、繊維長25〜110mmの繊維を用いることがより
好ましく、繊維長25〜60mmの繊維を使用すること
が特に好ましい。本発明のアルカリ電池用セパレータの
製造に用いる短繊維ウエブ又は長繊維ウエブの少なくと
も一方(より好ましくは両方)が、(1)ポリオレフィ
ン系極細繊維を発生可能な分割性複合繊維(以下、単に
「分割性複合繊維」と称することがある)と、(2)単
繊維強度が5g/d以上の高強度繊維と、(3)前記分
割性複合繊維の構成樹脂成分及び前記高強度繊維の構成
樹脂成分の融点よりも低い融点を有する樹脂成分を少な
くとも繊維表面に有する融着繊維とを含むことが好まし
い。
【0011】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成
する不織布に、ポリオレフィン系極細繊維が含まれてい
ると、電解液の保持性を向上させることができる。この
ポリオレフィン系極細繊維は、「ポリオレフィン系極細
繊維を発生可能な分割性複合繊維」、すなわち「分割性
複合繊維」から物理的作用(例えば、水流作用)及び/
又は化学的作用(例えば、溶媒による樹脂成分の除去)
により形成される。本発明のアルカリ電池用セパレータ
に用いることのできる分割性複合繊維(すなわち、分割
性複合短繊維及び/又は分割性複合長繊維)とは、2種
類以上の樹脂成分(その内の少なくとも1種類の樹脂成
分がポリオレフィン系樹脂成分である)からなり、各樹
脂成分が複合繊維の長さ方向と略平行に配置されている
と共に、異なる種類の樹脂成分が相互に接触するように
配置している複合繊維であって、前記複合繊維を水流な
どで処理することによって、個々の樹脂成分からなる極
細繊維にまで分割することができる複合繊維である。
【0012】本発明のアルカリ電池用セパレータに使用
することのできる分割性複合繊維における樹脂成分の配
置状態は、特に限定されるものではなく、例えば、2種
類の樹脂成分からなる場合には、図1又は図2に示すよ
うに、或る樹脂成分11、及びそれとは異なる樹脂成分
12からなり、横断面の中心部から放射状に延びる直線
(図1)又は曲線(図2)で相互に分割されている横断
面を有する分割性複合繊維1;図3又は図4に示すよう
に、或る樹脂成分11、及びそれと異なる樹脂成分12
からなり、横断面の中心部から放射状に延びる直線(図
3)又は曲線(図4)で相互に分割される横断面であっ
て、かつ横断面の中心部付近に樹脂成分11若しくは樹
脂成分12のいずれかの樹脂成分を有する横断面を有す
る分割性複合繊維1;又は図5に示すように、或る樹脂
成分11、及びそれとは異なる樹脂成分12が層状に積
層されている横断面を有する分割性複合繊維1などを用
いることができる。分割して発生する極細繊維の直径の
均一性に優れている点で、図1〜図4に示す横断面を有
する分割性複合繊維を用いることが好ましい。
【0013】前記の分割性複合繊維は、2種類以上のポ
リオレフィン系樹脂成分のみからなるのが好ましい。2
種類以上のポリオレフィン系樹脂成分のみからなるポリ
オレフィン系分割性複合繊維を用いると、セパレータの
耐アルカリ性が向上する。前記の分割性複合繊維を構成
することのできるポリオレフィン系樹脂成分としては、
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペ
ンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−
ブテン−プロピレンコポリマー、又はエチレン−ビニル
アルコールコポリマーなどを挙げることができ、1種類
以上のポリオレフィン系樹脂成分、特には2種類以上の
ポリオレフィン系樹脂成分のみを適宜組み合わせて、ポ
リオレフィン系分割性複合繊維を構成することができ
る。これらの中でも耐アルカリ性及び耐酸化性に優れて
いるポリプロピレン又はポリエチレンを含んでいるのが
好ましい。ポリオレフィン系樹脂成分の組合せは、特に
限定されるものではないが、耐アルカリ性及び耐酸化性
に優れている点で、ポリエチレンとポリプロピレンとの
組合せが好ましく、高密度ポリエチレンとポリプロピレ
ンとの組合せがより好ましい。
【0014】また、ポリオレフィン系樹脂成分としてエ
チレン−ビニルアルコールコポリマーを含んでいる分割
性複合繊維を用いると、エチレン−ビニルアルコールコ
ポリマー自身が電解液の高保持性を有するので、得られ
るセパレータ内部における電解液の保持性が向上し、過
充電時における酸素吸収性が向上するため、内圧特性を
改善することができる。エチレン−ビニルアルコールコ
ポリマーは、耐アルカリ性に優れるポリプロピレンと組
み合わせるのが好適である。また、本発明においては、
分割性複合繊維として、(1)エチレン−ビニルアルコ
ールコポリマー極細繊維とそれ以外の1種又はそれ以上
のポリオレフィン系極細繊維とを発生可能な第1の分割
性複合繊維(すなわち、第1のポリオレフィン系分割性
複合繊維)と、(2)2種又はそれ以上のポリオレフィ
ン系極細繊維(但し、エチレン−ビニルアルコールコポ
リマー極細繊維を除く)のみを発生可能な第2の分割性
複合繊維(すなわち、第2のポリオレフィン系分割性複
合繊維)との組合せを使用することにより、耐アルカリ
性及び電解液の保持性を更に向上させることができる。
【0015】前記の分割性複合繊維において、ポリオレ
フィン系樹脂成分以外の樹脂成分としては、例えば、ポ
リアミド系樹脂成分(例えば、ナイロン6、ナイロン6
6、又はナイロン12など)又はポリ酢酸ビニル樹脂成
分を用いることができる。なお、極細繊維の線密度が低
い程、電解液の保持性に優れ、しかもデンドライトの防
止性に優れているため、極細繊維の線密度は45μg/
m以下であるのが好ましく、一方で、或る程度の繊維強
度を有するように、1μg/m以上であるのが好まし
い。より好ましい線密度は2.5μg/m〜35μg/
mである。
【0016】前記のような極細繊維は、前記の分割性複
合繊維を物理的作用及び/又は化学的作用によって分割
することにより発生させることができる。この物理的作
用としては、例えば、水流などの流体流、ニードルパン
チング、カレンダー処理、又はフラットプレス処理など
がある。これらの中でも、流体流は後述の分割性複合繊
維の分割処理と絡合処理とを同時に行なうことができる
ので、好適な物理的作用である。また、前記化学的作用
としては、例えば、溶媒による樹脂成分の除去、あるい
は、溶媒による樹脂成分の膨潤などがある。
【0017】本発明のアルカリ電池用セパレータにおけ
る分割性複合繊維(すなわち、分割性複合短繊維である
か分割性複合長繊維であるかを問わない)の含有率は、
特に限定されるものではないが、不織布構成繊維の合計
質量に対して、好ましくは35〜50mass%、より
好ましくは35〜45mass%の分割性複合繊維を用
いることができる。35mass%未満であると、加圧
下における電解液の保持性が不充分になることがあり、
50mass%を超えると、他の繊維の比率が低くな
り、引張強度が低くなったり、切断強度が低くなること
があるからである。分割性複合繊維(すなわち、分割性
複合短繊維であるか分割性複合長繊維であるかを問わな
い)として、エチレン−ビニルアルコールコポリマー極
細繊維とそれ以外の1種又はそれ以上のポリオレフィン
系極細繊維とを発生可能な第1のポリオレフィン系分割
性複合繊維と、2種又はそれ以上のポリオレフィン系極
細繊維(但し、エチレン−ビニルアルコールコポリマー
極細繊維を除く)のみを発生可能な第2のポリオレフィ
ン系分割性複合繊維とを使用する場合には、不織布構成
繊維の合計質量に対して、第1のポリオレフィン系分割
性複合繊維を5〜40mass%(より好ましくは5〜
35mass%、最も好ましくは10〜30mass
%)の量で、そして第2のポリオレフィン系分割性複合
繊維を10〜45mass%(より好ましくは10〜4
0mass%、最も好ましくは15〜35mass%)
の量で含有するのが好ましい。
【0018】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成
する不織布に、単繊維強度(引張強さ)が5g/d以上
の高強度繊維(すなわち、高強度短繊維であるか高強度
長繊維であるかを問わない)が含まれていると、本発明
のセパレータを使用して電池を製造する際に、極板のバ
リなどがセパレータを突き抜けて極板間でショートする
ことをより防止することができる。単繊維強度が5g/
d未満の繊維では、充分なショート防止効果の向上を期
待することができない。高強度繊維としては、好ましく
は7g/d以上、より好ましくは9g/d以上の高強度
繊維を使用する。この単繊維強度はJIS L 101
5(化学繊維ステープル試験法)によって測定した値を
いう。
【0019】高強度繊維としては、単繊維強度が5g/
d以上である繊維であれば特に限定されず、汎用の合成
繊維、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊
維、又はポリアミド繊維などを用いることができ、前記
のポリオレフィン系極細繊維と同様のポリオレフィン系
樹脂成分を、少なくとも繊維表面に含んでいる合成繊維
が好ましい。長期的な耐アルカリ性及び耐酸化性の点か
ら、繊維表面を構成する樹脂として、ポリプロピレン又
はポリエチレンを用いることが好ましい。この高強度繊
維の線密度は、電解液の保持性を低下させないように、
線密度40〜650μg/mであるのが好ましい。高強
度繊維として、特に、25g/デニール以上(より好ま
しくは30g/デニール以上)の単繊維強度を有する高
強力ポリエチレン繊維(すなわち、高強力ポリエチレン
短繊維であるか高強力ポリエチレン長繊維であるかを問
わない)を用いると、弾性にも優れており、電池を製造
する際の張力によって破断したり、極板のバリなどがセ
パレータを突き抜けて極板間でショートしたり、あるい
は極板等のエッジによりセパレータが引き裂かれにくく
なるので好適である。
【0020】本発明のアルカリ電池用セパレータにおけ
る高強度繊維(すなわち、高強度短繊維であるか高強度
長繊維であるかを問わない)の含有率は、特に限定され
るものではないが、不織布構成繊維の合計質量に対し
て、好ましくは30〜45mass%、より好ましくは
30〜40mass%、最も好ましくは35〜40ma
ss%の高強度繊維を用いることができる。本発明のア
ルカリ電池用セパレータの電池特性(例えば、寿命又は
内圧など)は、分割性複合繊維の分割により得られる極
細繊維量、及び融着繊維の融着状態によって主に左右さ
れるので、高強度繊維の量が45mass%を越える
と、充分な電池特性を得ることができないことがある。
また、高強度繊維の量が30mass%未満では、充分
なショート防止効果を得ることができないことがある。
高強度繊維として、25g/デニール以上(より好まし
くは30g/デニール以上)の繊維強度を有する前記の
高強力ポリエチレン繊維(すなわち、高強力ポリエチレ
ン短繊維であるか高強力ポリエチレン長繊維であるかを
問わない)を用いる場合には、不織布構成繊維の合計質
量に対して、前記の高強力ポリエチレン繊維を好ましく
は1〜45mass%、より好ましくは5〜40mas
s%の量で含んでいることができる。なお、高強力ポリ
エチレン繊維の量が30mass%に満たない場合に
は、別の高強度繊維を追加して、高強度繊維の合計含有
率が不織布構成繊維の合計質量の30〜45mass%
となるように調整することが好ましい。
【0021】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成
する不織布に、融着繊維(すなわち、融着短繊維である
か融着長繊維であるかを問わない)が含まれていると、
セパレータの引張強さや剛軟度が向上する。この融着繊
維としては、分割性複合繊維から発生する極細繊維によ
る保液性や、高強度繊維の強度を低下させないように、
分割性複合繊維構成樹脂成分及び高強度繊維構成樹脂成
分の融点よりも低い融点を有する樹脂成分(以下、「低
融点成分」ということがある)を、少なくとも繊維表面
に有する融着繊維を使用する。融着繊維を構成する低融
点成分の融点は、分割性複合繊維構成樹脂成分の融点、
及び高強度繊維構成樹脂成分の融点のいずれよりも、好
ましくは10℃以上、好適には15℃以上低い。この融
着繊維も耐アルカリ性に優れるように、前記のポリオレ
フィン系極細繊維と同様の樹脂成分(例えば、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン
−プロピレンコポリマー、又はエチレン−ブテン−プロ
ピレンコポリマー)を繊維表面に含むことが好ましい。
なお、分割性複合繊維として、ポリエチレンとポリプロ
ピレンとを含む分割性複合繊維を用いる場合は、この分
割性複合繊維を構成するポリエチレンとして高密度ポリ
エチレンを使用し、融着繊維の低融点成分として低密度
ポリエチレンを使用するのが好ましい。なお、融着繊維
は単一成分からなることも、2種類以上の樹脂成分から
なることもできるが、後者の方が、セパレータの引張強
さをより向上させることができるため、好適に使用する
ことできる。前記融着繊維としては、例えば、ポリオレ
フィン系融着成分のみからなる全融型繊維、又は2種類
以上の樹脂成分を含み、ポリオレフィン系融着成分を繊
維表面に含む一部溶融型繊維を挙げることができる。単
一成分からなる全融型繊維としては、例えば、ポリエチ
レン繊維、又はポリプロピレン繊維などを挙げることが
できる。前記の2種類以上の樹脂成分からなる一部溶融
型繊維としては、例えば、芯鞘型複合繊維、サイドバイ
サイド型複合繊維、海島型複合繊維、オレンジ型複合繊
維、多重バイメタル型複合繊維、又は偏芯型複合繊維な
どを挙げることができる。
【0022】前記融着繊維の線密度は、電解液の保持性
を低下させないように、55μg/m〜650μg/m
であるのが好ましい。本発明のアルカリ電池用セパレー
タにおいては、融着繊維(すなわち、融着短繊維である
か融着長繊維であるかを問わない)の含有率は、特に限
定されるものではないが、不織布構成繊維の合計質量に
対して、好ましくは20〜35mass%、より好まし
くは20〜30mass%の融着繊維を用いることがで
きる。20mass%未満であると、引張強度や剛軟度
が低下することがあり、35mass%を超えると、他
の繊維の比率が低くなり、加圧下における電解液の保持
性が低下したり、切断強度が低下することがある。
【0023】本発明のアルカリ電池用セパレータにおけ
る分割性複合繊維(すなわち、分割性複合短繊維である
か分割性複合長繊維であるかを問わない)、高強度繊維
(すなわち、高強度短繊維であるか高強度長繊維である
かを問わない)、及び融着繊維(すなわち、融着短繊維
であるか融着長繊維であるかを問わない)のそれぞれの
含有率は、特に限定されるものではないが、不織布構成
繊維の合計質量に対して、分割性複合繊維35〜50m
ass%、高強度繊維30〜45mass%、及び融着
繊維20〜35mass%の割合で用いることが好まし
く、分割性複合繊維35〜45mass%、高強度繊維
30〜40mass%、及び融着繊維20〜30mas
s%の割合で用いることがより好ましく、分割性複合繊
維35〜45mass%、高強度繊維35〜40mas
s%、及び融着繊維20〜30mass%の割合で用い
ることが最も好ましい。
【0024】本発明のアルカリ電池用セパレータは、前
記のポリオレフィン系極細繊維、高強度繊維、及び融着
繊維を含み、更に場合により未分割の分割性複合短繊維
及び/又は長繊維を含むことができる。また、必要によ
り、これらの繊維に加え、前記の繊維以外の第4の短繊
維及び/又は長繊維を含んでいることができる。この第
4の短繊維及び/又は長繊維も、耐アルカリ性に優れる
ように、極細繊維を構成する樹脂成分と同様のポリオレ
フィン系の樹脂成分を繊維表面に含む繊維であるのが好
ましい。また、第4の短繊維及び/又は長繊維の配合量
は、分割性複合短繊維及び/又は長繊維、高強度短繊維
及び/又は長繊維、及び融着短繊維及び/又は長繊維の
配合比率との関係から、15mass%以下であるのが
好ましく、10mass%以下であることがより好まし
い。本発明のアルカリ電池用セパレータに用いる不織布
を構成する短繊維と長繊維との混合質量比率としては、
短繊維による繊維の分散性などに優れているように、あ
るいは、長繊維による引張強度、引き裂き強度、又は剛
軟度などに優れているように、20:80〜80:20
であるのが好ましく、30:70〜70:30であるの
がより好ましい。
【0025】本発明のアルカリ電池用セパレータは、例
えば、以下の方法によって得ることのできる不織布から
なる。すなわち、(1)繊維長1〜25mm未満の短繊
維からなる繊維ウエブの少なくとも1つと繊維長25m
m以上の長繊維からなる繊維ウエブの少なくとも1つと
から積層体を形成し、(2)前記積層体を絡合処理し
て、短繊維からなる繊維ウエブの短繊維と長繊維からな
る繊維ウエブの長繊維とが絡合された混合層を、その合
計の厚さが不織布全体の厚さの1/3以上になるように
形成することによって、不織布を得ることができ、この
不織布をセパレータとして用いることができる。繊維長
1〜25mm未満の短繊維からなる短繊維ウエブを形成
する方法としては、湿式法を用いることが好ましく、湿
式法として、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型長
網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方
式を使用することができる。一方、繊維長25mm以上
の長繊維からなる長繊維ウエブを形成する方法として
は、乾式法を用いることが好ましく、乾式法として、例
えば、カード法、スパンボンド法又はエアレイ法を使用
することができる。
【0026】続いて、短繊維ウエブ1つ以上と長繊維ウ
エブ1つ以上とを積層して積層体を形成する。この際
に、短繊維ウエブの層数と長繊維ウエブの層数との合計
が3層以上である積層体、すなわち、短繊維ウエブ又は
長繊維ウエブの少なくとも一方を2層以上含む積層体を
形成する場合には、短繊維ウエブと長繊維ウエブの積層
順序は、特に限定されるものではなく、製造しようとす
るアルカリ電池用セパレータの構造に応じて適宜決定す
ることができる。すなわち、後述する、短繊維ウエブと
長繊維ウエブとを積層した積層体から、混合層を形成す
る工程においては、前記積層体における短繊維ウエブと
長繊維ウエブとの接触面を挟んでその両側に混合層が形
成されるので、例えば、短繊維ウエブ、短繊維ウエブ、
及び長繊維ウエブをこの順に積層した積層体からは、混
合層1つを含む不織布を得ることができ、一方、短繊維
ウエブ、長繊維ウエブ、及び短繊維ウエブをこの順に積
層した積層体からは、混合層2層を含む不織布を得るこ
とができる。なお、後者の場合には、絡合処理の程度を
高める(例えば、高いエネルギーを有する流体流で処理
する)ことにより、混合層のそれぞれが占める割合を大
きくすることができ、絡合処理の程度が或るレベルを越
えた場合には、混合層2層が一体化して混合層1つを含
む不織布とすることができる。なお、短繊維ウエブ及び
/又は長繊維ウエブを2枚以上積層する場合には、短繊
維と長繊維とが均一に絡合するように、短繊維ウエブと
長繊維ウエブとを交互に積層するのが好ましい。
【0027】次に、得られた積層体に絡合処理を施し
て、混合層を形成する。前記絡合処理としては、例え
ば、流体流(特に水流)による処理、又はニードルパン
チングを挙げることができる。前記絡合処理の中でも、
流体流による処理を使用することが好ましい。流体流に
よる処理では、より均一に混合しやすいからである。な
お、短繊維ウエブ及び/又は長繊維ウエブが分割性複合
繊維を含んでいる場合には、絡合処理と同時に分割性複
合繊維を分割することができるが、別に、分割処理を行
なうこともできる。前記分割処理としては、例えば、ニ
ードルパンチ処理、カレンダー処理、フラットプレス処
理、又は流体流処理を挙げることができ、絡合処理及び
分割処理の処理順序、及び処理回数は特に制限されるも
のではなく、適宜決定することができる。例えば、前記
絡合処理の前、前記絡合処理と同時、又は前記絡合処理
後に実施することができる。
【0028】前記絡合処理として流体流処理を実施する
場合には、既にある程度絡み合っている長繊維ウエブを
構成する長繊維が、繊維配置を変えて短繊維と絡合する
ように、通常の絡合処理に用いる流体流よりも高いエネ
ルギーを有する流体流を少なくとも一度、作用させるの
が好ましい。通常の絡合処理に用いる流体流よりも高い
エネルギーを有する前記流体流として、式: E=R×P2 [式中、Rはノズル径(単位;mm)を意味し、Pはノ
ズルの内圧(単位;MPa)を意味する]で定義される
E値が、10以上、好ましくは15以上、より好ましく
は18以上、最も好ましくは20以上である流体流を使
用することができる。前記流体流を少なくとも1度、積
層体に作用させることによって、短繊維と長繊維とが絡
合している混合層を含む不織布を製造することができ
る。前記の数式は、運動エネルギーは質量と速度の二乗
とに比例するため、(1)ノズル径が大きければ大きい
ほど噴出されて作用する流体の質量が大きくなること、
そして、(2)ノズルの内圧が高ければ高いほど噴出さ
れる流体の速度が速いことから、流体流の運動エネルギ
ーを疑似的に表現したものである。
【0029】流体流処理におけるその他の条件として
は、特に限定されるものではなく、例えば、ノズル径が
0.05〜0.3mmで、ピッチが0.2〜3mmで1
列又は2列以上に配列したノズルプレートを使用して処
理することができる。また、流体流(特に、水流)絡合
処理は、1回である必要はなく、必要であれば、2回以
上実施することができる。また、流体流(特に、水流)
処理は、積層体の片面からのみである必要はなく、両面
から処理することもできる。流体流絡合処理を2回以上
実施する場合には、各E値の合計が、好ましくは30以
上、より好ましくは40以上、更に好ましくは60以
上、最も好ましくは80以上となるように流体流を作用
させることができる。また、流体流(特に、水流)絡合
処理を実施する際に、積層体を置く支持体、例えば、ネ
ット又は多孔板などが大きな孔を有していると、得られ
る不織布も大きな孔を有するものとなり、アルカリ電池
用セパレータとして使用した場合に短絡が生じやすくな
るので、例えば、目の細かい(例えば、目の開きが0.
295mm以下)平織ネット、又は径の小さい(例え
ば、孔径が0.295mm以下)多孔板などを使用する
ことが好ましい。
【0030】短繊維ウエブ及び/又は長繊維ウエブが融
着繊維を含んでいる場合には、前記絡合処理と、場合に
より実施することのできる前記分割処理とに加え、更に
融着処理を実施することができる。融着処理を実施する
ことによって、不織布の引張強さ、ショート防止性、引
き裂き強度、及び剛軟度を向上させることができる。前
記の融着処理は、分割性複合繊維及び高強度繊維を含む
場合、融着繊維を構成する低融点成分の軟化温度よりも
高く、しかも、分割性複合繊維の各構成樹脂成分及び高
強度繊維の融点よりも低い温度で、例えば、絡合不織布
を熱処理することにより実施することができる。融着処
理は、1回である必要はなく、必要に応じて2回以上実
施することもできる。2回以上実施する場合には、それ
ぞれの処理を同じ条件で実施することもできるし、一部
又はすべて異なる条件で実施することもできる。複数回
実施する場合には、最初の融着処理工程、あるいは最初
の融着処理工程を含み最後の融着処理工程を除く2つの
融着処理工程又はそれ以上の融着処理工程が、それぞれ
仮融着処理となる。高強度繊維として前記高強力ポリエ
チレン繊維を含んでいる場合には、高強力ポリエチレン
繊維の強度を低下させないように、高強力ポリエチレン
繊維の軟化温度(例えば、125℃)以下の温度で融着
処理を実施するのが好ましい。
【0031】融着処理及び絡合処理を実施する順序は、
特に限定されず、一方の処理を実施した後にもう一方の
処理を実施することによって、あるいは、一方の処理を
実施した後にもう一方の処理を実施し、更に、再び最初
に実施した処理を、同じ条件又は一部若しくはすべて異
なる条件で実施することによって、融着絡合不織布を得
ることができる。例えば、仮融着処理を実施し、次に、
流体流絡合処理を実施し、更に、再び融着処理を実施す
ることができる。
【0032】前記の融着処理は、無圧下又は加圧下で行
なうか、あるいは無圧下で溶融させた後に加圧すること
もできる。厚さを調整することができるので、加圧下で
融着処理を行うか、又は無圧下で溶融させた後に加圧す
るのが好ましい。融着装置としては、例えば、熱カレン
ダー、熱風貫通式熱処理器、又はシリンダ接触型熱処理
器などを用いることができる。なお、加熱と加圧を同時
に行なう場合の加熱温度は、融着繊維の低融点成分の軟
化温度から融点までの範囲内の温度であるのが好まし
く、加熱後に加圧を行なう場合の加熱温度は、融着繊維
の低融点成分の軟化温度から融点よりも20℃以上高い
温度までの範囲内であるのが好ましい。また、加圧条件
は、いずれの場合も、線圧力5〜30N/cmであるの
が好ましい。
【0033】短繊維ウエブ及び/又は長繊維ウエブが、
耐アルカリ性を向上させる目的でポリオレフィン系の繊
維を主体として含んでいる場合には、前記絡合処理と、
場合により実施することのできる前記分割処理及び/又
は前記融着処理とに加え、更に親水化処理を施すことに
より、電解液の保持性を向上させることができる。絡合
処理、分割処理、融着処理、及び親水化処理を実施する
順序は、特に限定されるものではない。前記親水化処理
としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、
ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、
親水性樹脂付与処理、又は放電処理などを挙げることが
できる。
【0034】スルホン化処理としては、特に限定するも
のではなく、例えば、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、
クロロ硫酸、又は塩化スルフリルなどによる処理を挙げ
ることができる。これらの中でも、発煙硫酸によるスル
ホン化処理は、反応性が高く、比較的容易にスルホン化
することができるため、好適に実施することができる。
このようにしてスルホン化処理したセパレータは、自己
放電抑制作用を有する点で好ましい。フッ素ガス処理に
ついても、特に限定するものではなく、例えば、不活性
ガス(例えば、窒素ガス、又はアルゴンガスなど)で希
釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び
二酸化硫黄ガス等から選んだ少なくとも1種類のガスと
を混合したガスなどによる処理を挙げることができる。
なお、不織布に二酸化硫黄ガスを予め付着させた後に、
前記の希釈フッ素ガスを接触させると、より効率的で、
恒久的な親水化処理を実施することができる。
【0035】ビニルモノマーのグラフト重合処理におい
ては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メ
タクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステ
ル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、又はスチレン
などを使用することができる。なお、スチレンをグラフ
ト重合した場合には、電解液との親和性を付与するため
に、スルホン化するのが好ましい。これらの中でも、ア
クリル酸は電解液との親和性に優れているため、好適に
使用することができる。これらのビニルモノマーの重合
方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤と
を含む溶液を不織布に付与し、加熱する方法、不織布に
ビニルモノマーを付与した後、放射線を照射する方法、
不織布に放射線を照射した後にビニルモノマーと接触さ
せる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を不織布に
付与した後、紫外線を照射する方法などがある。なお、
ビニルモノマー溶液を不織布に付与する前に、紫外線照
射、コロナ放電、又はプラズマ放電などにより、不織布
表面を処理すると、ビニルモノマー溶液との親和性が向
上し、しかも、その前処理により生成した極性親水基に
よりラジカルの生成が容易となるため効率的にグラフト
重合することができる。
【0036】界面活性剤処理としては、例えば、アニオ
ン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属
塩、アルキルスルホン酸塩、若しくはスルホコハク酸エ
ステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、若しくはポリオ
キシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液
中に不織布を浸漬したり、この溶液を不織布に散布した
り、コーティングして、付着させる方法を挙げることが
できる。
【0037】親水性樹脂付与処理としては、親水性樹
脂、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニル
アルコール、又はポリアクリル酸などを付着させる方法
を挙げることができる。これらの親水性樹脂は、適当な
溶媒に溶解又は分散させた後、この溶液又は分散液中に
不織布を浸漬したり、あるいはこの溶液又は分散液を散
布したり、コーティングした後、乾燥して、前記不織布
に付着させることができる。また、親水性樹脂付与処理
として、架橋化ポリビニルアルコールを付着させること
もできる。前記架橋化ポリビニルアルコールは、例え
ば、水酸基の一部を感光性基で置換した感光性ポリビニ
ルアルコールを架橋することにより、あるいは、前記感
光性ポリビニルアルコールの水酸基の一部がアシル化さ
れているアシル化感光性ポリビニルアルコールを架橋す
ることにより形成することができる。架橋化ポリビニル
アルコールの付着手段としては、例えば、架橋する前の
感光性ポリビニルアルコール又はアシル化感光性ポリビ
ニルアルコールを適当な溶媒に溶解又は分散させた後、
得られた溶液又は分散液中に不織布を浸漬したり、この
溶液又は分散液を散布したり、コーティングし、乾燥し
た後、光照射によって架橋することにより、前記の不織
布に付着させることができる。
【0038】従来公知の親水性樹脂の中でも、スチリル
ピリジニム系、スチリルキノリニウム系、又はスチリル
ベンゾチアゾリウム系の感光性基を有する感光性ポリビ
ニルアルコール又はアシル化感光性ポリビニルアルコー
ルを架橋することにより形成した架橋化ポリビニルアル
コールは、耐アルカリ性に優れ、しかもイオンとキレー
トを形成することができる官能基、すなわち、水酸基を
多く有しており、電池の放電時及び/又は充電時に、極
板上に樹枝状に金属が析出する前のイオンとキレートを
形成し、電極間の短絡を生じにくいので、好適に使用す
ることができる。このような親水性樹脂の付着量は、通
気性を損なわないように、セパレータ全体の0.3〜3
mass%であることが好ましい。
【0039】放電処理としては、例えば、コロナ放電処
理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理、又
は電子線処理などがある。これらの放電処理の中でも、
空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体層を担持する一
対の電極(それぞれの対向表面側に誘電体層を設ける)
の間に、前記誘導体層のそれぞれと外側表面が直接に接
触するように(但し、前記の一対の電極とはそれぞれ直
接に接触しない)不織布を配置し、前記両電極間に交流
電圧を印加して、両電極間に挟まれた前記不織布の内部
空隙で放電を発生させるプラズマ処理は、不織布の外側
表面だけでなく、不織布の内部の繊維表面も効率的に処
理することができ、しかも、スパーク放電等による不織
布の損傷が起こりにくく、任意の種類の表面処理用ガス
を利用することができるため、好適に実施することがで
きる。このようにして得られる本発明のアルカリ電池用
セパレータの面密度は、好ましくは30〜100g/m
2 、より好ましくは40〜80g/m2 である。面密度
が30g/m2 未満であると、引張強度が充分でなく、
100g/m2 を越えると、厚さが厚くなり過ぎ、セパ
レータの占める割合が高くなり、高容量の電池を得るこ
とが困難になることがある。また、本発明のアルカリ電
池用セパレータの厚さは、0.05mm〜0.3mmで
あることが好ましい。
【0040】本発明のアルカリ電池用セパレータの縦方
向(長さ方向)における引張強さは、電池製造での極板
群組立工程における張力によって破断しないように、8
0N/50mm以上であるのが好ましく、100N/5
0mm以上であるのがより好ましい。この引張強さは、
幅50mmのセパレータを引張強さ試験機(オリエンテ
ック製;テンシロンUTM−III−100)に固定し
(チャック間の距離100mm)、引張速度300mm
/minで測定した値をいう。本発明のアルカリ電池用
セパレータの縦方向における引き裂き強度は、電池製造
での極板群組立工程において、極板等のエッジによりセ
パレータが引き裂かれるのを防ぐために、10N/50
mm以上であるのが好ましく、20N/50mm以上で
あるのがより好ましく、25N/50mm以上であるの
が最も好ましい。なお、この引き裂き強度はJIS L
1096-1990 (一般織物試験方法、トラペゾイド
法)により得られる値をいう。
【0041】本発明のアルカリ電池用セパレータの縦方
向における剛軟度は、電池製造での極板群組立工程にお
いて、セパレータの形状を保ち、極板とセパレータとが
巻きずれを生じないように、10mg以上であるのが好
ましく、15mg以上であるのがより好ましい。なお、
この剛軟度はJIS L 1096〔曲げ反発性;A法
(ガーレー法)〕により得られる値をいう。このよう
に、本発明のアルカリ電池用セパレータは電解液の保持
性に優れているだけでなく、引張強さ、ショート防止
性、引き裂き強度、及び剛軟度の点でも優れているた
め、安定して電池を製造することができる。なお、本発
明のアルカリ電池用セパレータは、例えば、アルカリマ
ンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、空気電池などの一
次電池、ニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀
−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水
素電池などの二次電池に使用することができる。
【0042】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。
【実施例1】 (1)図3に示す型の断面構造を有し、極細繊維(線密
度=8.9μg/m,融点=160℃)を発生すること
が可能なポリプロピレン成分(図3の成分12)と、極
細繊維(線密度=8.9μg/m,融点=132℃)を
発生することが可能な高密度ポリエチレン成分(図3の
成分11)とが、横断面の中心部から放射状にのびて、
互いに8分割し、しかも極細繊維(線密度=2.2μg
/m,融点=160℃)を発生することが可能な円形状
のポリプロピレン成分を中心部に有する横断面を有する
分割性複合短繊維(線密度=144μg/m,繊維長=
15mm)40mass%と、(2)単繊維強度9g/
デニールのポリプロピレン高強度短繊維(線密度=22
2μg/m,繊維長=10mm,融点=160℃)35
mass%と、(3)ポリプロピレンを芯成分とし、低
密度ポリエチレン(融点=115℃)を鞘成分とする芯
鞘(同芯)型融着短繊維(線密度=222μg/m,繊
維長=10mm)25mass%とを混合分散させたス
ラリーから、常法の湿式抄造法により短繊維ウエブ(面
密度=30g/m2 )を形成した。 (1)繊維長が25mmであること以外は前記分割性複
合短繊維と同じである分割性複合長繊維40mass%
と、(2)繊維長が45mmであること以外は前記高強
度短繊維と同じである高強度長繊維35mass%と、
(3)繊維長が38mmであること以外は前記融着短繊
維と同じである融着長繊維25mass%とを混綿し、
カード機により開繊して一方向性長繊維ウエブ(面密度
=20g/m2 )を形成した。
【0043】次いで、この一方向性長繊維ウエブ1つと
前記の短繊維ウエブ1つとを積層し、この積層体を12
0℃で10秒間熱処理(仮融着処理)した後に、目の開
きが0.175mmの平織ネット上に載置し、ノズルプ
レート(ノズル径=0.15mm;ピッチ=0.8m
m)から圧力12MPaの水流を両面に対して交互に2
回ずつ噴出して、分割性複合繊維を分割し、同時に繊維
を絡合した。その後、絡合不織布を120℃で10秒間
熱処理した後に、線圧9.8N/cmでカレンダー処理
し、融着短繊維及び融着長繊維の低密度ポリエチレン成
分のみを融着した融着絡合不織布を形成した。更に、こ
の融着絡合不織布をフッ素ガス、酸素ガス、及び二酸化
硫黄ガスの混合ガスによりフッ素ガス処理を行い、本発
明のアルカリ電池用セパレータ(面密度=50g/
2 ;厚さ=0.12mm)を製造した。このセパレー
タの断面における電子顕微鏡写真を撮影して絡合状態を
観察したところ、セパレータ全体が混合層であった。
【0044】
【実施例2】長繊維ウエブとして、面密度が20g/m
2 の一方向性長繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1
の一方向性長繊維ウエブと全く同じ配合からなる、面密
度が10g/m2 の一方向性長繊維ウエブの上に、実施
例1の一方向性長繊維ウエブと全く同じ配合からなる、
面密度が10g/m2 の一方向性長繊維ウエブをクロス
レイヤーにより交差させながら積層した二層体を用いた
こと以外は、実施例1と同じ操作を繰り返すことによ
り、本発明のアルカリ電池用セパレータ(面密度=50
g/m2 ;厚さ=0.12mm)を製造した。このセパ
レータの断面における電子顕微鏡写真を撮影して絡合状
態を観察したところ、セパレータ全体が混合層であっ
た。
【0045】
【実施例3】短繊維ウエブとして、面密度が30g/m
2 の短繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1の短繊維
ウエブと全く同じ配合からなる、面密度が40g/m2
の短繊維ウエブを用いたこと以外は、実施例1と同じ操
作を繰り返すことにより、本発明のアルカリ電池用セパ
レータ(面密度=60g/m2 ;厚さ=0.15mm)
を製造した。このセパレータの断面における電子顕微鏡
写真を撮影して絡合状態を観察したところ、セパレータ
全体が混合層であった。
【0046】
【実施例4】短繊維ウエブとして、面密度が30g/m
2 の短繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1の短繊維
ウエブと全く同じ配合からなる、面密度が40g/m2
の短繊維ウエブを用いたこと以外は、実施例2と同じ操
作を繰り返すことにより、本発明のアルカリ電池用セパ
レータ(面密度=60g/m2 ;厚さ=0.15mm)
を製造した。このセパレータの断面における電子顕微鏡
写真を撮影して絡合状態を観察したところ、セパレータ
全体が混合層であった。
【0047】
【実施例5】長繊維ウエブとして、面密度=20g/m
2 の一方向性長繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1
の長繊維ウエブと全く同じ配合からなる、面密度が15
g/m2 の一方向性長繊維ウエブの上に、実施例1の長
繊維ウエブと全く同じ配合からなる、面密度が15g/
2 の一方向性長繊維ウエブをクロスレイヤーにより交
差させながら積層した二層体を用いたこと以外は、実施
例1と同じ操作を繰り返すことにより、本発明のアルカ
リ電池用セパレータ(面密度=60g/m2 ;厚さ=
0.15mm)を製造した。このセパレータの断面にお
ける電子顕微鏡写真を撮影して絡合状態を観察したとこ
ろ、セパレータ全体が混合層であった。
【0048】
【実施例6】短繊維ウエブとして、(1)実施例1で用
いた分割性複合短繊維55mass%と、(2)実施例
1で用いた高強度短繊維10mass%と、(3)実施
例1で用いた融着短繊維35mass%とを混合分散さ
せたスラリーから、常法の湿式抄造法により形成した短
繊維ウエブ(面密度=35g/m2 )を用いたこと、及
び長繊維(フィラメント)ウエブとして、ポリプロピレ
ン(線密度=111μg/m)からなるスパンボンドウ
エブ(面密度=15g/m2 )を用いたこと以外は、実
施例1と同じ操作を繰り返すことにより、本発明のアル
カリ電池用セパレータ(面密度=50g/m2 ;厚さ=
0.12mm)を製造した。このセパレータの断面にお
ける電子顕微鏡写真を撮影して絡合状態を観察したとこ
ろ、セパレータ全体が混合層であった。
【0049】
【実施例7】短繊維ウエブとして、(1)図1に示す型
の断面構造を有し、極細繊維(線密度=20.8μg/
m,融点=160℃)を発生することが可能なポリプロ
ピレン成分(図1の成分12)と、極細繊維(線密度=
20.8μg/m,融点=160℃)を発生することが
可能なエチレン−ビニルアルコールコポリマー成分(図
1の成分11)とが、横断面の中心部から放射状にのび
て、互いに8分割している分割性複合短繊維(線密度=
333μg/m,繊維長=6mm)40mass%と、
(2)実施例1で用いた高強度短繊維と同じ高強度短繊
維35mass%と、(3)実施例1で用いた芯鞘(同
芯)型融着短繊維と同じ芯鞘(同芯)型融着短繊維25
mass%とを混合分散させたスラリーから、常法の湿
式抄造法により形成した短繊維ウエブ(面密度=30g
/m2 )を用いたこと、長繊維ウエブとして、実施例2
で用いた二層体(面密度=20g/m2 )を用いたこ
と、及び絡合処理前の熱処理、及び絡合処理後の熱処理
を125℃で実施したこと以外は、実施例1と同じ操作
を繰り返すことにより、本発明のアルカリ電池用セパレ
ータ(面密度=50g/m2 ;厚さ=0.12mm)を
製造した。このセパレータの断面における電子顕微鏡写
真を撮影して絡合状態を観察したところ、セパレータ全
体が混合層であった。
【0050】
【実施例8】短繊維ウエブとして、実施例7の短繊維ウ
エブと全く同じ配合からなり、面密度が40g/m2
短繊維ウエブを用いたこと以外は、実施例7と同じ操作
を繰り返すことにより、本発明のアルカリ電池用セパレ
ータ(面密度=60g/m2;厚さ=0.15mm)を
製造した。このセパレータの断面における電子顕微鏡写
真を撮影して絡合状態を観察したところ、セパレータ全
体が混合層であった。
【0051】
【実施例9】高強度短繊維として、単繊維強度33g/
デニールの高強力ポリエチレン短繊維(線密度=111
μg/m,繊維長=10mm,融点=148℃)35m
ass%を用いたこと、及び絡合処理前の熱処理、及び
絡合処理後の熱処理を115℃で実施したこと以外は、
実施例2と同じ操作を繰り返すことにより、本発明のア
ルカリ電池用セパレータ(面密度=50g/m2 ;厚さ
=0.12mm)を製造した。このセパレータの断面に
おける電子顕微鏡写真を撮影して絡合状態を観察したと
ころ、セパレータ全体が混合層であった。
【0052】
【比較例1】短繊維ウエブとして、面密度が30g/m
2 の短繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1の短繊維
ウエブと全く同じ配合からなり、面密度が50g/m2
の短繊維ウエブを用いたこと、及び長繊維ウエブを用い
なかったこと以外は、実施例1と同じ操作を繰り返すこ
とにより、比較用のアルカリ電池用セパレータ(面密度
=50g/m2 ;厚さ=0.12mm)を製造した。
【0053】
【比較例2】長繊維ウエブとして、面密度が20g/m
2 の一方向性長繊維ウエブを用いる代わりに、実施例1
の長繊維ウエブと全く同じ配合からなり、面密度が50
g/m2 の一方向性長繊維ウエブを用いたこと、及び短
繊維ウエブを用いなかったこと以外は、実施例1と同じ
操作を繰り返すことにより、比較用のアルカリ電池用セ
パレータ(面密度=50g/m2;厚さ=0.12m
m)を製造した。
【0054】
【比較例3】高強度長繊維を用いる代わりに、単繊維強
度4g/デニールのポリプロピレン長繊維(線密度=2
22μg/m,繊維長=45mm,融点=160℃)3
5mass%を用いたこと以外は、比較例2と同じ操作
を繰り返すことにより、比較用のアルカリ電池用セパレ
ータ(面密度=50g/m2 ;厚さ=0.12mm)を
製造した。
【0055】
【比較例4】実施例1と同じ短繊維ウエブを120℃で
10秒間熱処理した後に、実施例1と同じ条件で水流絡
合した絡合短繊維ウエブと、実施例1と同じ一方向性長
繊維ウエブを120℃で10秒間熱処理した後に、実施
例1と同じ条件で水流絡合した絡合長繊維ウエブとを積
層した。次いで、この積層繊維ウエブに対して、圧力1
MPaの水流を噴出したこと以外は、実施例1と同じ操
作を繰り返すことにより、比較用のアルカリ電池用セパ
レータ(面密度=50g/m2 ;厚さ=0.12mm)
を製造した。このセパレータの断面における電子顕微鏡
写真を撮影して絡合状態を観察したところ、混合層の厚
さは不織布の1/3には到底とどかず、しかも、長繊維
層と短繊維層とに手で容易に分離することができるもの
であった。
【0056】《物性評価》 (1)縦方向における引張強さ 前記実施例1〜9及び前記比較例1〜4で製造したセパ
レータを引張強さ試験機(オリエンテック製;テンシロ
ンUCT−500)に固定し(チャック間の距離100
mm)、引張速度300mm/minで、縦方向におけ
る引張強さを測定した。なお、セパレータの幅を50m
mとして測定した。結果(単位=N/50mm)を表1
に示す。 (2)耐貫通指数 耐貫通指数は、ハンディー圧縮試験機(カトーテック
製,KES−G5)を使用して測定した。前記実施例1
〜9及び前記比較例1〜4で製造した各アルカリ電池用
セパレータを重ねて合計約2mmの厚さとし、その一番
上のセパレータに対して、ハンディー圧縮試験機に取り
付けられたステンレス製ジグ(厚さ=0.5mm,先端
の刃先角度=60°)を、0.01cm/秒の速度で垂
直に突き刺し、一番上のセパレータを切断するのに要す
る力を測定した。比較例3のセパレータを切断するのに
要した力を基準(100)とした場合の、各セパレータ
を切断するのに要する力の比率を、そのセパレータの耐
貫通指数(単位=%)とした。結果を表1に示す。 (3)縦方向における引き裂き強度 前記実施例1〜9及び前記比較例1〜4のセパレータの
縦方向における引き裂き強度を、JIS L 1096
-1990 (一般織物試験方法、トラペゾイド法)により測
定した。結果(単位=N/50mm)を表1に示す。 (4)縦方向における剛軟度 前記実施例1〜9及び前記比較例1〜4のセパレータの
縦方向における剛軟度を、JIS L 1096〔曲げ
反発性;A法(ガーレー法)〕により測定した。結果
(単位=mg)を表1に示す。
【0057】(5)加圧保液率 前記実施例1〜9及び前記比較例1〜4で製造した各ア
ルカリ電池用セパレータを、直径30mmの円板状に裁
断し、温度20℃かつ相対湿度65%の条件下で水分平
衡に至らせた後、質量(M0 )を測定した。次に、各ア
ルカリ電池用セパレータを、比重1.3(20℃におい
て)の水酸化カリウム溶液中に1時間浸漬することによ
り、アルカリ電池用セパレータ中の空気を水酸化カリウ
ム溶液で置換した。水酸化カリウム溶液を保持させた状
態のまま、各アルカリ電池用セパレータを上下各3枚ず
つの直径30mmの濾紙で挟み、加圧ポンプにより、
5.7MPaの圧力を30秒間作用させた後、各アルカ
リ電池用セパレータの質量(M1 )を測定した。加圧保
液率X(%)は、式: X=[(M1 −M0 )/M0 ]×100 により計算した。なお、測定は、1つのアルカリ電池用
セパレータに対して4回ずつ行ない、その平均値を加圧
保液率として表1に示す。 (6)ショート率 前記実施例1〜9及び前記比較例1〜4で製造した各ア
ルカリ電池用セパレータを使用して、実際に電池を製造
する際に、電極のバリなどによってショートしてしま
い、電池を製造できなかった割合をショート率(単位=
%)とした。結果を表1に示す。
【0058】(7)サイクル寿命試験 本評価は、前記実施例1、2、7、及び9並びに前記比
較例1及び4で製造した各アルカリ電池用セパレータに
ついてのみ実施した。電極の集電体として、発泡ニッケ
ル基材を用いたペースト式ニッケル正極[33mm
(幅)×182mm(長)]と、ペースト式水素吸蔵合
金負極[メッシュメタル系合金;33mm(幅)×24
7mm(長)]とを作成した。次いで、実施例1、2、
7、及び9並びに比較例1及び4のセパレータからサン
プル[33mm(幅)×410mm(長)]を裁断し、
それぞれを正極と負極との間に挟み込み、渦巻き状に巻
回して、SC(sub−C)型対応の電極群を作成し
た。この電極群を外装缶に収納し、電解液として5N水
酸化カリウム及び1N水酸化リチウムを外装缶に注液
し、封缶して円筒型ニッケル−水素電池を作成した。次
いで、それぞれの円筒型ニッケル−水素電池について、
(1)0.2Cでの150%充電と、(2)1Cで、終
止電圧1.0Vまで放電することからなる充放電サイク
ルを繰り返し、放電容量が初期容量の50%となった時
点で、充放電サイクル寿命が尽きたと判断し、充放電サ
イクル寿命を測定した。実施例1のセパレータのサイク
ル数を基準(100)とした場合の比率を、表1に示
す。
【0059】(8)電池内圧試験 本評価も、前記実施例1、2、7、及び9並びに前記比
較例1及び4で製造した各アルカリ電池用セパレータに
ついてのみ実施した。前記のサイクル寿命試験で用いた
ものと同様に形成した円筒型ニッケル−水素電池を、
0.5Cで20℃にて放電を行い、容量の150%での
電池内圧を測定した。実施例1のセパレータの内圧を基
準(100)とした場合の比率を、表1に示す。
【0060】
【表1】 縦方向 引裂き 耐貫通 剛軟度 加圧 ショート率 サイクル 内圧 引張強さ 強度 指数 保液率 寿命 (実施例) 1 172 49 156 25.2 18 0.001〜0.002 100 100 2 143 45 156 20.5 18 0.001〜0.002 100 100 3 177 52 160 27.9 19 0.001〜0.002 4 174 50 160 22.3 19 0.001〜0.002 5 191 58 160 28.0 19 0.001〜0.002 6 132 42 138 19.2 18 0.001〜0.002 7 132 51 163 14.8 18 0.001〜0.002 100 70 8 149 54 163 15.5 18 0.001〜0.002 9 145 45 200 21.2 18 0.001〜0.002 100 100 (比較例) 1 119 22 156 20.8 15 0.01〜0.05 100 100 2 202 78 138 20.0 15 0.01〜0.05 3 202 78 100 20.2 15 0.01〜0.054 120 30 138 21.0 15 0.001〜0.005 50 200
【0061】
【発明の効果】本発明のアルカリ電池用セパレータは、
繊維長が25mm以上の長繊維と、繊維長が25mm未
満の短繊維とが混在し、絡合している混合層を含んでい
るため、破断することなく安定して電池を製造すること
ができ、また、電解液の保持性に優れ、更に、引張強
さ、引き裂き強度、及び剛軟度にも優れている。しかも
極板のバリなどがセパレータを突き抜けて極板間でショ
ートすることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ電池用セパレータに用いるこ
とができる分割性複合繊維の断面を模式的に示す断面図
である。
【図2】本発明のアルカリ電池用セパレータに用いるこ
とができる別の分割性複合繊維の断面を模式的に示す断
面図である。
【図3】本発明のアルカリ電池用セパレータに用いるこ
とができる更に別の分割性複合繊維の断面を模式的に示
す断面図である。
【図4】本発明のアルカリ電池用セパレータに用いるこ
とができる更に別の分割性複合繊維の断面を模式的に示
す断面図である。
【図5】本発明のアルカリ電池用セパレータに用いるこ
とができる更に別の分割性複合繊維の断面を模式的に示
す断面図である。
【符号の説明】
1・・・分割性複合繊維;11,12・・・樹脂成分。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01M 6/06 H01M 6/06 C 10/24 10/24 12/06 12/06 Z

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維長1〜25mm未満の短繊維と繊維
    長25mm以上の長繊維とが絡合した混合層の合計厚さ
    が、不織布全体の厚さの1/3以上である不織布からな
    ることを特徴とする、アルカリ電池用セパレータ。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002298821A (ja) * 2001-03-30 2002-10-11 Japan Vilene Co Ltd 電池用セパレータ及び電池
JP2007516363A (ja) * 2003-12-23 2007-06-21 キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド 柔らかく嵩高い複合布
JP2008144298A (ja) * 2006-12-08 2008-06-26 Asahi Kasei Fibers Corp ポリケトン短繊維とその製造方法
JP2013540344A (ja) * 2010-10-21 2013-10-31 イーストマン ケミカル カンパニー 電池セパレータ
JP2017155385A (ja) * 2016-03-04 2017-09-07 東レ株式会社 エアクリーナー用不織布

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